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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光学フィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20241112BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241112BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20241112BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20241112BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G02B5/22
B32B7/023
G02B1/115
G02B5/26
G02B5/28
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024552073
(86)(22)【出願日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2023045813
【審査請求日】2024-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022210260
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 崇
(72)【発明者】
【氏名】坂上 貴尋
(72)【発明者】
【氏名】塩野 和彦
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111965(WO,A1)
【文献】特開2021-015269(JP,A)
【文献】特開2015-221751(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189039(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20 - 5/28
B32B 7/023
G02B 1/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体多層膜1と、近赤外線吸収ガラスおよび樹脂膜を有する基材と、誘電体多層膜2とをこの順に備えた光学フィルタであって、
前記樹脂膜は、近赤外線吸収色素および樹脂を含有し、
前記近赤外線吸収ガラスが、P、Cu、及びFを含有するフツリン酸ガラスであり、
前記光学フィルタが下記分光特性(i-1)~(i-3)、(i-5)、および(i-13)をすべて満たす光学フィルタ。
(i-1)波長440~600nm、入射角0度での平均透過率T440-600(0deg)AVEと、波長440~600nm、入射角60度での平均透過率T440-600(60deg)AVEとの差の絶対値が15%以下
(i-2)前記平均透過率T440-600(0deg)AVEが75%以上
(i-3)入射角0度で透過率が50%になる波長IR_T50(0deg)が波長580~640nmの領域にある
(i-5)波長800~1200nm、入射角0度での平均透過率T800-1200(0deg)AVEが5%以下
(i-13)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長750~900nmの領域において入射角5度で反射率が50%になる波長IR_R 50(5deg) と、波長580~640nmの領域において入射角5度で透過率が50%になる波長IR_T 50(5deg) との差の絶対値が160nm以上
【請求項2】
前記光学フィルタが下記分光特性(i-4)を満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(i-4)波長700~800nm、入射角0度での平均透過率T 700-800(0deg)AVE が1.1%以下
【請求項3】
前記光学フィルタが下記分光特性(i-6)~(i-7)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(i-6)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角5度での平均反射率R1440-650(5deg)AVEが1.5%以下
(i-7)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長850~1200nm、入射角5度での平均反射率R1850-1200(5deg)AVEが60%以上
【請求項4】
前記光学フィルタが下記分光特性(i-8)を満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(i-8)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角60度での平均反射率R1440-650(60deg)AVEが10%以下
【請求項5】
前記光学フィルタが下記分光特性(i-9)~(i-10)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(i-9)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角5度での平均反射率R2440-650(5deg)AVEが2.0%未満
(i-10)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長700~850nm、入射角5度での平均反射率R2700-850(5deg)AVEが1.2%以下
【請求項6】
前記光学フィルタが下記分光特性(i-11)~(i-12)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(i-11)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角60度での平均反射率R2440-650(60deg)AVEが10%未満
(i-12)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長700~850nm、入射角60度での平均反射率R2700-850(60deg)AVEが8%以下
【請求項7】
前記光学フィルタが下記分光特性(i-14)~(i-15)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長X~Ynmにおける吸収損失量X-Yを以下に定義する。
(吸収損失量X-Y)[%]=100-(入射角5度における透過率)―(入射角5度における反射率)
(i-14)波長700~800nmにおける吸収損失量700-800の平均値が25%以上
(i-15)波長850~1000nmにおける吸収損失量850-1000の平均値が17%以上
【請求項8】
前記近赤外線吸収ガラスの厚みが0.4mm以下であり、
前記近赤外線吸収ガラスが下記分光特性(ii-1)~(ii-3)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(ii-1)入射角0度で透過率が50%になる波長IR_T50(0deg)が波長590~640nmの領域にある
(ii-2)波長700nm、入射角0度での透過率T700(0deg)が25%以下
(ii-3)波長700~800nm、入射角0度での平均透過率T700-800(0deg)AVEが10%以下
【請求項9】
前記基材が下記分光特性(iii-1)~(iii-3)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(iii-1)波長440~600nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)440-600(0deg)AVEが75%以上
(iii-2)波長700~800nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)700-800(0deg)AVEが1.2%以下
(iii-3)波長800~1000nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)800-1000(0deg)AVEが5%以下
【請求項10】
前記近赤外線吸収色素が、前記樹脂中で740~800nmに最大吸収波長を有するスクアリリウム色素を含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記樹脂膜が、下記分光特性(iv-1)~(iv-4)をすべて満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
(iv-1)波長440~600nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)440-600(0deg)AVEが90%以上
(iv-2)入射角0度で内部透過率が50%になる波長IR_T(in)50(0deg)が波長630~645nmの領域にある
(iv-3)波長500~700nmにおいて、入射角0度で内部透過率が70%になる波長IR_T(in)70(0deg)と、入射角0度で透過率が20%になる波長IR_T(in)20(0deg)との差の絶対値が60nm以下
(iv-4)波長700~800nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)700-800(0deg)AVEが5%以下
【請求項12】
前記近赤外線吸収ガラスが、
質量%表示で、
5+:30~70%
Al3+:0~20%
Li:0~20%
Na:0~25%
:0~25%
Mg2+:0~10%
Ca2+:0~20%
Sr2+:0~30%
Ba2+:0~40%
ΣR:0.1~30%(Rは、Li、Na、及びKから選ばれる1つ以上の成分)
ΣR2+:10~45%(R2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、及びBa2+から選ばれる1つ以上の成分)、および
Cu2+:1~20%
を含有し、ガラス中に含まれるFの以外の成分元素を100質量%としたときに、Fを外割で5~70質量%含有するフツリン酸ガラスである、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の光学フィルタを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を透過し、近赤外光を遮断する光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた撮像装置には、色調を良好に再現し鮮明な画像を得るため、可視域の光(以下「可視光」ともいう)を透過し、近赤外波長領域の光(以下「近赤外光」ともいう)を遮断する光学フィルタが用いられる。
【0003】
このような光学フィルタとしては、例えば、透明基板の片面または両面に、屈折率が異なる誘電体薄膜を交互に積層(誘電体多層膜)し、光の干渉を利用して遮蔽したい光を反射する反射型のフィルタや、特定の波長領域の光を吸収するガラスや色素を用いて遮蔽したい光を吸収する吸収型のフィルタや、反射型と吸収型を組み合わせたフィルタ等、様々な方式が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、近赤外線領域の光を吸収する銅錯体を含む光学フィルタが記載されている。
特許文献2には、近赤外線領域の光を吸収する色素を含む光学フィルタが記載されている。
特許文献3には、近赤外線領域の光を吸収するガラスと、誘電体多層膜からなる反射層とを備えた光学フィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第6802938号公報
【文献】国際公開第2019/168090号
【文献】国際公開第2019/151348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の光学フィルタは、光を吸収する銅錯体をリン酸ガラスに塗工しており、耐湿性が弱く、耐候性の点で改善の余地があった。
【0007】
特許文献2に記載の光学フィルタは、色素の吸収特性のみによって近赤外領域を広範囲に遮光することで、可視光領域の透過率が低下してしまう点で改善の余地がある。
【0008】
また特許文献3に記載される光学フィルタのように、誘電体多層膜の反射を利用した光学フィルタは、光の入射角度により誘電体多層膜の光学膜厚が変化するために、入射角による分光透過率曲線、分光反射率曲線の変化が懸念される。たとえば高入射角度で可視光領域の光の取り込み量が変化すると、画像再現性が低下する問題が生じる。特に、近年のカメラモジュール低背化に伴い高入射角条件での使用が想定されるため、入射角の影響を受けにくい光学フィルタが求められている。
【0009】
本発明は、優れた耐候性を有し、可視光領域の透過性に優れ、近赤外光領域の遮蔽性、特に1200nm付近も含む広範囲の遮蔽性に優れ、高入射角でも分光特性の変化が小さい光学フィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を有する光学フィルタ等を提供する。
〔1〕誘電体多層膜1と、近赤外線吸収ガラスおよび樹脂膜を有する基材と、誘電体多層膜2とをこの順に備えた光学フィルタであって、
前記樹脂膜は、近赤外線吸収色素および樹脂を含有し、
前記近赤外線吸収ガラスが、P、Cu、及びFを含有するフツリン酸ガラスであり、
前記光学フィルタが下記分光特性(i-1)~(i-5)をすべて満たす光学フィルタ。
(i-1)波長440~600nm、入射角0度での平均透過率T440-600(0deg)AVEと、波長440~600nm、入射角60度での平均透過率T440-600(60deg)AVEとの差の絶対値が15%以下
(i-2)前記平均透過率T440-600(0deg)AVEが75%以上
(i-3)入射角0度で透過率が50%になる波長IR_T50(0deg)が波長580~640nmの領域にある
(i-4)波長700~800nm、入射角0度での平均透過率T700-800(0deg)AVEが1.1%以下
(i-5)波長800~1200nm、入射角0度での平均透過率T800-1200(0deg)AVEが5%以下
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた耐候性を有し、可視光領域の透過性に優れ、近赤外光領域の遮蔽性、特に1200nm付近も含む広範囲の遮蔽性に優れ、高入射角でも分光特性の変化が小さい光学フィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は一実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
図2図2は例1の光学フィルタの分光透過率曲線(0度透過率、60度透過率)を示す図である。
図3図3は例1の光学フィルタの分光反射率曲線(5度反射率、60度反射率、誘電体多層膜1側)を示す図である。
図4図4は例1の光学フィルタの分光反射率曲線(5度反射率、60度反射率、誘電体多層膜2側)を示す図である。
図5図5は例2の光学フィルタの分光透過率曲線(0度透過率、60度透過率)を示す図である。
図6図6は例2の光学フィルタの分光反射率曲線(5度反射率、60度反射率、誘電体多層膜1側)を示す図である。
図7図7は例3の光学フィルタの分光透過率曲線(0度透過率、60度透過率)を示す図である。
図8図8は例4の光学フィルタの分光透過率曲線(0度透過率、60度透過率)を示す図である。
図9図9は例5の光学フィルタの分光透過率曲線(0度透過率、60度透過率)を示す図である。
図10図10は例6の光学フィルタの分光透過率曲線(0度透過率、60度透過率)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
本明細書において、式(I)で示される化合物を化合物(I)という。他の式で表される化合物も同様である。化合物(I)からなる色素を色素(I)ともいい、他の色素についても同様である。また、式(I)で表される基を基(I)とも記し、他の式で表される基も同様である。
【0014】
本明細書において、内部透過率とは、{実測透過率(入射角0度)/(100-反射率(入射角5度))}×100の式で示される、実測透過率から界面反射の影響を引いて得られる透過率である。
【0015】
本明細書において、特定の波長域について、透過率が例えば90%以上とは、その全波長領域において透過率が90%を下回らない、すなわちその波長領域において最小透過率が90%以上であることをいう。同様に、特定の波長域について、透過率が例えば1%以下とは、その全波長領域において透過率が1%を超えない、すなわちその波長領域において最大透過率が1%以下であることをいう。内部透過率においても同様である。特定の波長域における平均透過率および平均内部透過率は、該波長域の1nm毎の透過率および内部透過率の相加平均である。誘電体多層膜側を入射方向としたときの反射率とは、光学フィルタに設けられた誘電体多層膜の表面に向けて測定光を入射させ、反射した光の光学特性をいうものである。
分光特性は、紫外可視分光光度計を用いて測定できる。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
【0016】
<光学フィルタ>
本実施形態に係る光学フィルタは、誘電体多層膜1と、近赤外線吸収ガラスおよび樹脂膜を有する基材と、誘電体多層膜2とをこの順に備える。前記樹脂膜は、近赤外線吸収色素および樹脂を含有し、前記近赤外線吸収ガラスが、P、Cu、及びFを含有するフツリン酸ガラスである。
本発明において、後述するように光学フィルタの遮光性は近赤外線吸収ガラスと近赤外線吸収色素の吸収特性と、誘電体多層膜の反射特性とにより担保されることが好ましい。吸収特性は光の入射角による影響が比較的軽微であるため、高入射角でも分光特性の変化が小さい光学フィルタが得られる。
【0017】
図面を用いて本実施形態に係る光学フィルタの構成例について説明する。図1は、一実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
【0018】
図1に示す光学フィルタ1Bは、誘電体多層膜21と、近赤外線吸収ガラス10および樹脂膜30を有する基材40と、誘電体多層膜22とを備えた例である。
【0019】
本実施形態に係る光学フィルタは、下記分光特性(i-1)~(i-5)をすべて満たす。
(i-1)波長440~600nm、入射角0度での平均透過率T440-600(0deg)AVEと、波長440~600nm、入射角60度での平均透過率T440-600(60deg)AVEとの差の絶対値が15%以下
(i-2)前記平均透過率T440-600(0deg)AVEが75%以上
(i-3)入射角0度で透過率が50%になる波長IR_T50(0deg)が波長580~640nmの領域にある
(i-4)波長700~800nm、入射角0度での平均透過率T700-800(0deg)AVEが1.1%以下
(i-5)波長800~1200nm、入射角0度での平均透過率T800-1200(0deg)AVEが5%以下
【0020】
分光特性(i-1)~(i-5)を全て満たす本実施形態に係る光学フィルタは、特性(i-2)に示すように可視光の高い透過性と、特性(i-4)、(i-5)に示すように800~1200nmの広範囲に高い近赤外光遮蔽性を有する。また特性(i-3)に示すように特定の波長範囲内に入射角0度で透過率が50%になる波長があり、さらに特性(i-1)に示すように高入射角でも可視光の分光特性の変化が小さい。
【0021】
分光特性(i-1)および(i-2)を満たすことは、高入射角でも可視光透過率が低下せず可視光透過性に優れることを意味する。
分光特性(i-1)における差の絶対値は好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。
平均透過率T440-600(0deg)AVEは好ましくは76%以上、より好ましくは77%以上である。
分光特性(i-1)および(i-2)は、たとえば、可視光領域の反射率が低い誘電体多層膜を用いること、可視光領域の透過率が高い近赤外線吸収色素および近赤外線吸収ガラスとしてフツリン酸ガラスを用いることにより達成できる。
【0022】
分光特性(i-3)を満たすことは近赤外光領域を遮光して効率的に可視透過光を取り込めることを意味する。
波長IR_T50(0deg)は好ましくは580~630nm、より好ましくは590~625nmにある。
分光特性(i-3)は、例えば、近赤外線吸収ガラスとして後述するフツリン酸ガラスを用いることにより達成できる。
【0023】
分光特性(i-4)を満たすことは、近赤外光遮蔽性に優れることを意味する。
平均透過率T700-800(0deg)AVEは好ましくは0.6%以下、より好ましくは0.3%以下、特に好ましくは0.1%以下である。
分光特性(i-4)は、たとえば、近赤外線吸収色素として後述するスクアリリウム色素を用い、近赤外線吸収ガラスとして後述するフツリン酸ガラスを用いることにより達成できる。
【0024】
分光特性(i-5)を満たすことは、1200nm付近の広範囲まで近赤外光領域の遮光性に優れることを意味する。
平均透過率T800-1200(0deg)AVEは好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下である。
分光特性(i-5)は、たとえば、近赤外線吸収ガラスとして後述するフツリン酸ガラスを用いることにより達成できる。
【0025】
本実施形態に係る光学フィルタは、下記分光特性(i-6)~(i-7)をすべて満たすことが好ましい。
(i-6)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角5度での平均反射率R1440-650(5deg)AVEが1.5%以下
(i-7)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長850~1200nm、入射角5度での平均反射率R1850-1200(5deg)AVEが60%以上
分光特性(i-6)~(i-7)は、誘電体多層膜1の反射特性が実質的に反映され、誘電体多層膜1が、可視光反射特性が小さく、近赤外光領域に反射特性を有することを意味する。
平均反射率R1440-650(5deg)AVEはより好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは1.2%以下、特に好ましくは1.1%以下である。
平均反射率R1850-1200(5deg)AVEはより好ましくは63%以上、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。また、近赤外光領域の反射特性が強すぎると高入射角において可視光透過率変化が生じやすいため、平均反射率R1850-1200(5deg)AVEは好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。
【0026】
本実施形態に係る光学フィルタは、下記分光特性(i-8)を満たすことが好ましい。
(i-8)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角60度での平均反射率R1440-650(60deg)AVEが10%以下
分光特性(i-8)は、誘電体多層膜1の反射特性が実質的に反映され、誘電体多層膜1が、高入射角であっても可視光反射特性が小さいことを意味する。
平均反射率R1440-650(60deg)AVEはより好ましくは9%以下、さらに好ましくは8.5%以下である。
【0027】
本実施形態に係る光学フィルタは、下記分光特性(i-9)~(i-10)をすべて満たすことが好ましい。
(i-9)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角5度での平均反射率R2440-650(5deg)AVEが2.0%未満
(i-10)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長700~850nm、入射角5度での平均反射率R2700-850(5deg)AVEが1.2%以下
分光特性(i-9)~(i-10)は、誘電体多層膜2の反射特性が実質的に反映され、誘電体多層膜2が、可視光領域および近赤外光領域のいずれにおいても反射特性が小さい反射防止膜であることを意味する。
平均反射率R2440-650(5deg)AVEはより好ましくは1.70%以下、さらに好ましくは1.53%以下である。
平均反射率R2700-850(5deg)AVEはより好ましくは1.1%以下、さらに好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.8%以下である。
【0028】
本実施形態に係る光学フィルタは、下記分光特性(i-11)~(i-12)をすべて満たすことが好ましい。
(i-11)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角60度での平均反射率R2440-650(60deg)AVEが10%未満
(i-12)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長700~850nm、入射角60度での平均反射率R2700-850(60deg)AVEが8%以下
分光特性(i-11)~(i-12)は、誘電体多層膜2の反射特性が実質的に反映され、誘電体多層膜2が、高入射角であっても、可視光領域および近赤外光領域のいずれにおいても反射特性が小さい反射防止膜であることを意味する。
平均反射率R2440-650(60deg)AVEはより好ましくは9%以下、さらに好ましくは8.5%以下である。
平均反射率R2700-850(60deg)AVEはより好ましくは7.5%以下、さらに好ましくは7.0%以下、特に好ましくは6%以下である。
【0029】
本実施形態に係る光学フィルタは、下記分光特性(i-13)を満たすことが好ましい。
(i-13)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長750~900nmの領域において入射角5度で反射率が50%になる波長IR_R50(5deg)と、波長500~700nmの領域において入射角5度で透過率が50%になる波長IR_T50(5deg)との差の絶対値が160nm以上
分光特性(i-13)を満たすことは、反射特性の遮光領域と、吸収特性の遮光領域とが離れていることを意味する。
分光特性(i-13)における差の絶対値はより好ましくは165nm以上、さらに好ましくは170nm以上、特に好ましくは185nm以上である。
【0030】
本実施形態に係る光学フィルタは、下記分光特性(i-14)~(i-15)をすべて満たすことが好ましい。
前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長X~Ynmにおける吸収損失量X-Yを以下に定義する。
(吸収損失量X-Y)[%]=100-(入射角5度における透過率)―(入射角5度における反射率)
(i-14)波長700~800nmにおける吸収損失量700-800の平均値が25%以上
(i-15)波長850~1000nmにおける吸収損失量850-1000の平均値が17%以上
吸収損失量が大きいほど、かかる波長領域の光が吸収されていることを意味する。
分光特性(i-14)~(i-15)を満たすことは、吸収損失によって分光特性を形成している割合が一定以上あることを意味する。この割合が大きいほど、垂直入射光と斜入射光で分光特性の変動が少なくなる効果が期待できる。
吸収損失量700-800の平均値はより好ましくは26.5%以上、さらに好ましくは28%以上である。
吸収損失量850-1000の平均値はより好ましくは18%以上、さらに好ましくは20%以上である。
分光特性(i-14)~(i-15)は、たとえば、波長700~800nmに最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素を用いることにより達成できる。
【0031】
<近赤外線吸収ガラス(フツリン酸ガラス)>
本実施形態に係る光学フィルタにおける近赤外線吸収ガラスはP、Cu、及びFを含有するフツリン酸ガラス(以下、本実施形態のフツリン酸ガラス、または単にフツリン酸ガラス若しくはガラスともいう)である。
【0032】
PおよびFを含有するフツリン酸ガラスにおいて、Cuを含有させることにより、可視領域の光の透過率を高く維持しつつ、近赤外域の光の透過率を低く抑えることができる。また、ガラスにFを含有することで耐湿性等の耐候性を向上できる。
【0033】
本実施形態のフツリン酸ガラスを構成しうる各成分およびその好適な含有量について以下に説明する。本願明細書において、特記しない限り、各成分の含有量、および合計含有量は、質量%表示とする。また、本実施形態のガラスの透過率は、ガラス表面の反射特性を含むものとする(すなわち、ガラスの内部透過率ではない)。
【0034】
本実施形態のフツリン酸ガラスにおいて、PはP5+として含有される。
5+は、フツリン酸ガラスを形成する主成分であり、かつ近赤外線カット性を高めるための必須成分である。P5+の含有量が30%以上であれば、その効果が十分得られ、70%以下であれば、ガラスが不安定になったり、耐候性が低下したりする等の問題が生じにくい。そのため、P5+の含有量は、好ましくは30~70%である。より好ましくは31%以上であり、さらに好ましくは32%以上であり、さらに一層好ましくは33%以上であり、また、より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは50%以下であり、さらに一層好ましくは45%以下であり、最も好ましくは43%以下である。
なお、P5+の原料は、白金るつぼの侵食を抑制し、成分の揮発抑制の観点から、リン酸またはその塩の使用が好ましい。
【0035】
本実施形態のフツリン酸ガラスにおいて、FはFとして含有される。
は、ガラスを安定化させるため、耐候性を向上させるための必須成分である。本明細書中では、ガラス中に含まれるFの以外の成分元素を100質量%としたとき、ガラス中に含まれるFの含有量を外割で表示した。Fの含有量は外割で5~70%が好ましい。Fの含有量が外割で5%以上であれば、耐候性の効果が十分得られ、外割で70%以下であると可視領域の光の透過率が低下したり、強度や硬度や弾性率といった機械的特性が低下したり、紫外線透過率が高まったりする等の問題が生じにくい。より好ましくは外割で6%以上であり、さらに好ましくは外割で8%以上であり、さらに一層好ましくは外割で8.5%以上であり、最も好ましくは外割で10%以上であり、また、より好ましくは外割で60%以下であり、さらに好ましくは外割で50%以下であり、さらに一層好ましくは外割で40%以下であり、最も好ましくは外割で25%以下である。
【0036】
本実施形態のフツリン酸ガラスにおいて、CuはCuまたはCu2+として含有されるが、本願明細書中では全てCu2+として存在した場合の含有量を記載している。
Cu2+は、近赤外線カットのための必須成分である。Cu2+の含有量は1~20%が好ましい。Cu2+の含有量が1%以上であれば、その効果およびMoと共添加した際に得られるガラスの可視領域の光の透過率を高める効果が十分に得られ、また20%以下であれば、ガラスに失透異物が発生したり、可視領域の光の透過率が低下したりする等の問題が生じにくい。より好ましくは4.5%以上であり、さらに好ましくは6%以上であり、さらに一層好ましくは7.5%以上であり、最も好ましくは7.8%以上であり、また、より好ましくは18%以下であり、さらに好ましくは16%以下であり、さらに一層好ましくは13%以下であり、最も好ましくは12%以下である。
【0037】
また、全Cu量は、1価、2価、その他の存在する価数も含め、質量%表示のCuの合量であり、本実施形態のガラス(但し、Fの含有量を除く)を100質量%とした場合、当該ガラスにおいて、全Cu量の含有量の範囲は、1~20質量%であるのが好ましい。全Cu量が1質量%以上であると、ガラスの板厚を薄くしても近赤外線カットの効果が十分に得られ、また20質量%以下であると可視域透過率の低下を抑制できる。より好ましく4.5%以上であり、さらに好ましくは6%以上であり、さらに一層好ましくは7.5%以上であり、最も好ましくは9%以上であり、また、より好ましくは18%以下であり、さらに好ましくは16%以下であり、さらに一層好ましくは13%以下であり、最も好ましくは11.5%以下である。なお、Cuの質量%表示の含有量は、(Cu/全Cu量)×100[%]が、0.01~4.0%となるような範囲で決めることができる。
【0038】
Al3+は、ガラスを形成する成分であり、ガラスの強度を高める、ガラスの耐候性を高める等のための成分である。ガラスがAl3+を含有する場合、Al3+の含有量が2%以上であれば、その効果が十分得られ、20%以下であれば、ガラスが不安定になったり、近赤外線カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。Al3+の含有量は、好ましくは0~20%である。より好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは3%以上であり、さらに一層好ましくは3.5%以上であり、最も好ましくは5%以上であり、また、より好ましくは18%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらに一層好ましくは13%以下であり、最も好ましくは10%以下である。
なお、Al3+の原料として、AlF、Al、Al(OH)等を用いることができ、なかでも溶解温度の上昇や未融物の発生、及びFの仕込み量が減少してガラスが不安定になる等の問題が生じにくいという点で、AlFを用いることが好ましい。
【0039】
Liは、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための成分である。Liの含有量は0~20%が好ましい。Liの含有量が20%以下であれば、ガラスが不安定になったり、近赤外性カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。より好ましくは18%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらに一層好ましくは12%以下であり、最も好ましくは10%以下である。
【0040】
本実施形態のフツリン酸ガラスにおいて、NaはNaとして含有されうる。
Naは、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための成分である。また、ガラスがNaを含有することで、Moと共添加した際に得られるガラスの可視領域の光の透過率を高める効果が十分に得られる。そのメカニズムは次のように説明される。フツリン酸ガラス中のCuの周囲には酸素イオンが存在し、それら酸素イオンは負の電荷を帯びている。負の電荷によって生じる電場は前記CuとMo6+の間で行われる電子(e)の移動(Cu→Cu2++e)および(Mo6++e→Mo5+)を阻害する働きがある。フツリン酸ガラス中にNaが存在することで、Naが帯びている正の電荷により、酸素イオンの負の電荷が電気的に中和される。その結果、前記CuとMo5+間で行われる電子の移動が助長され、可視領域の光吸収特性を持つCuの存在割合が減少し、可視領域の光透過率が高まる。
【0041】
ガラスがNaを含有する場合、Naの含有量は0.1~25%が好ましい。Naの含有量が25%以下であれば、ガラスが不安定になりにくい。より好ましくは0.5%以上であり、さらに好ましくは1%以上であり、さらに一層好ましくは2%以上であり、最も好ましくは3%以上であり、また、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは18%以下であり、さらに一層好ましくは14%以下であり、最も好ましくは10%以下である。
【0042】
は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、などの効果がある成分である。Kの含有量としては、0~25%が好ましい。Kの含有量が25%以下であれば、ガラスが不安定になりにくいため好ましい。より好ましくは23%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに一層好ましくは18%以下であり、最も好ましくは15%以下である。
【0043】
(Li、Na、及びKから選ばれる1つ以上の成分)は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための成分である。Rの合計量、すなわちLi、Na、及びKの合計量(ΣR)が0.1%以上であれば、その効果が十分得られ、30%以下であれば、ガラスが不安定になりにくいため好ましい。そのため、ΣRの含有量は、好ましくは0.1~30%である。より好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは3%以上であり、さらに一層好ましくは5%以上であり、最も好ましくは8%以上であり、また、より好ましくは28%以下であり、さらに好ましくは27%以下であり、さらに一層好ましくは26%以下であり、最も好ましくは25%以下である。
【0044】
Mg2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させる、ガラスの強度を高める等のための成分である。Mg2+の含有量としては0~10%が好ましい。Mg2+の含有量が10%以下であれば、ガラスが不安定になったり、近赤外線カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは6%以下であり、さらに一層好ましくは5%以下であり、最も好ましくは3%以下である。
【0045】
Ca2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させる、ガラスの強度を高める等のための成分である。Ca2+の含有量としては0~20%が好ましい。Ca2+の含有量が20%以下であれば、ガラスが不安定となったり、近赤外線カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。より好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは1%以上であり、さらに一層好ましくは2%以上であり、最も好ましくは3%以上であり、また、より好ましくは18%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらに一層好ましくは10%以下であり、最も好ましくは6%以下である。
【0046】
Sr2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための成分である。Sr2+の含有量としては0~30%が好ましい。Sr2+の含有量が30%以下であれば、ガラスが不安定となったり、近赤外線カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。より好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは1%以上であり、さらに一層好ましくは3%以上であり、最も好ましくは5%以上であり、また、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに一層好ましくは15%以下であり、最も好ましくは10%以下である。
【0047】
Ba2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させる等のための成分である。Ba2+の含有量としては0~40%が好ましい。Ba2+の含有量が40%以下であれば、ガラスが不安定となったり、近赤外線カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。より好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは5%以上であり、さらに一層好ましくは10%以上であり、最も好ましくは15%以上であり、また、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、さらに一層好ましくは25%以下であり、最も好ましくは23%以下である。
【0048】
2+(Mg2+、Ca2+、Sr2+、及びBa2+から選ばれる1つ以上の成分)は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させる等のための成分である。R2+の合計量、すなわちMg2+、Ca2+、Sr2+、及びBa2+の合計量(ΣR2+)が10%以上であれば、その効果が十分得られ、45%以下であれば、ガラスが不安定になりにくい。そのため、ΣR2+の含有量は、好ましくは10~45%である。より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、さらに一層好ましくは23%以上であり、最も好ましくは25%以上であり、また、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは35%以下であり、さらに一層好ましくは33%以下であり、最も好ましくは30%以下である。
【0049】
Zn2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする等の効果がある。Zn2+の含有量は0~30%が好ましい。Zn2+の含有量が30%以下であれば、ガラスが不安定になったり、ガラスの溶解性が悪化したり、近赤外線カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。より好ましく20%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらに一層好ましくは10%以下であり、最も好ましくは5%以下である。
【0050】
Rbは、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする等の効果がある成分である。Rbの含有量としては、0~10%が好ましい。Rbの含有量が10%以下であれば、ガラスが不安定になりにくい。より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは6%以下であり、さらに一層好ましくは4%以下であり、最も好ましくは2%以下である。
【0051】
Csは、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする等の効果がある成分である。Csの含有量としては、0~10%が好ましい。Csの含有量が10%以下であれば、ガラスが不安定になりにくい。より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは6%以下であり、さらに一層好ましくは4%以下であり、最も好ましくは2%以下である。
【0052】
3+は、ガラスを安定化させるために20%以下の範囲で含有してもよい。B3+の含有量が20%以下であれば、ガラスの耐候性が悪化したり、近赤外線カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに一層好ましくは8%以下であり、最も好ましくは5%以下である。
【0053】
Moは、Mo5+またはMo6+として含有されるが、本願明細書では全てMo6+として存在した場合の含有量を記載している。
Mo6+は、ガラスの可視領域の光の透過率を高めるための成分である。
Moは、ガラス中でMo6+(6価)で存在することが知られている。しかしながら、リン酸ガラスにおいてMoとCuとを共添加すると、ガラス中のCuが電子(e)を放出しCu2+となり(Cu → Cu2+ +e)、Cuが放出した電子をMo6+が受け取りMo5+(5価)となる(Mo6+ +e → Mo5+)。これにより、波長300nm~600nm付近に吸収特性を有するCu(1価)の存在割合が減少し、波長400nm~540nmの光の透過率が増加する。Mo5+は、波長400nm前後の光を吸収する特性があると考えられるため、波長400nm前後の光の透過率は増加しないと考えられる。
【0054】
Mo6+の含有量は、0~4%が好ましい。Mo6+を含有する場合、その含有量は0.01~4%が好ましい。Mo6+は、その含有量が0.01%以上であればガラスの可視領域の光の透過率を高める効果が十分に得られ、また4%以下であれば、近赤外線カット性が低下したり、ガラスに失透異物が発生したりする等の問題が生じにくい。より好ましくは0.05%以上であり、さらに好ましくは0.1%以上であり、さらに一層好ましくは0.2%以上であり、最も好ましくは0.3%以上であり、また、より好ましくは3.5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、さらに一層好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
【0055】
Mo6+を含有する場合、Mo6+及びCu2+の含有量比(Mo6+/Cu2+)は質量基準で0.01~0.39であることが好ましい。0.01以上であることで、Cuによる可視光域の波長の光の吸収を十分抑制できるとともに、Cu2+による近赤外域の波長の光の吸収を十分促進できる。また、0.39以下であることで、Mo5+による可視域の透過率の低下を抑制できる。より好ましくは0.02以上であり、さらに好ましくは0.03以上であり、さらに一層好ましくは0.05以上であり、最も好ましくは0.1以上であり、また、より好ましくは0.35以下であり、さらに好ましくは0.3以下であり、さらに一層好ましくは0.25以下であり、最も好ましくは0.2以下である。
【0056】
本実施形態のフツリン酸ガラスにおいて、SiO、GeO、ZrO、SnO、TiO、CeO、WO、Y、La、Gd、Yb、Nbは、ガラスの耐候性を上げるために10%以下の範囲で含有してもよい。これら成分の含有量が10%以下であれば、ガラスに失透異物が発生したり、近赤外線カット性が低下したりする等の問題が生じにくい。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、さらに一層好ましくは1%以下である。
【0057】
Fe、Cr、Bi、NiO、V、MnOおよびCoOは、いずれもガラス中に存在することで、可視領域の光の透過率を低下させる成分である。よって、これらの成分は、実質的にガラス中に含有しないことが好ましい。ここで、実質的にガラス中に含有しないとは、不可避的不純物を除き含有させないことを意味し、その成分は積極的には添加されないことを意味する。具体的には、これらの成分の含有率がガラス中にそれぞれ100質量ppm程度以下であることを意味する。
【0058】
本実施形態のフツリン酸ガラスは30℃~300℃の範囲における熱膨張係数が60×10-7/℃~180×10-7/℃であることが好ましく、65×10-7/℃~175×10-7/℃がより好ましく、70×10-7/℃~170×10-7/℃がさらに好ましい。
【0059】
本実施形態に係る光学フィルタにおけるフツリン酸ガラスは、下記分光特性(ii-1)~(ii-3)をすべて満たすことが好ましい。
(ii-1)入射角0度で透過率が50%になる波長IR_T50(0deg)が波長590~640nmの領域にある
(ii-2)波長700nm、入射角0度での透過率T700(0deg)が25%以下
(ii-3)波長700~800nm、入射角0度での平均透過率T700-800(0deg)AVEが10%以下
【0060】
分光特性(ii-1)~(ii-3)に示すように、近赤外線吸収ガラスは、可視光を透過し、590~640nmの領域が透過帯域と吸収帯域の境界であり、700nm以降から吸収帯域となる。これにより、可視光の透過性と近赤外光の遮蔽性に優れた光学フィルタが得られる。
波長IR_T50(0deg)はより好ましくは590~630nm、さらに好ましくは590~624nmにある。
透過率T700(0deg)はより好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。
平均透過率T700-800(0deg)AVEはより好ましくは9.8%以下、さらに好ましくは9.7%以下である。
【0061】
本実施形態に係る光学フィルタにおけるフツリン酸ガラスは、下記分光特性(ii-4)を満たすことが好ましい。これにより、800nm以降の近赤外光の遮蔽性に優れた光学フィルタが得られる。
(ii-4)波長800~1200nm、入射角0度での平均透過率T800-1200(0deg)AVEが10%以下
平均透過率T800-1200(0deg)AVEはより好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。
【0062】
本実施形態に係る光学フィルタにおけるフツリン酸ガラスは、厚みが好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.4mm以下である。また素子強度維持の観点から厚みは0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.15mm以上である。
【0063】
<誘電体多層膜>
本実施形態に係る光学フィルタは、誘電体多層膜1および誘電体多層膜2を備える。誘電体多層膜の少なくとも一つは、近赤外光の一部を反射する反射膜(以下「NIR反射膜」とも記載する。)として設計されることが好ましい。他の誘電体多層膜は、近赤外域以外の反射域を有する反射膜や、または反射防止膜として設計されてもよい。
【0064】
NIR反射膜は、例えば、可視光を透過し、吸収層の透過領域の近赤外光を透過し、それ以外の近赤外光を主に反射する波長選択性を有することが好ましい。
【0065】
上記光学フィルタの分光特性(i-5)および分光特性(i-7)に示したように、誘電体多層膜の少なくとも一方は波長850~1200nmの近赤外光領域に反射特性を有する反射膜であって、かかる特性により遮光されることが好ましい。
かかる特定波長領域の反射特性と、740~800nmに最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素と、波長700~1200nmを主に吸収するフツリン酸ガラスの吸収特性と組み合わせることで、波長700~1200nmの近赤外光領域を広範囲に遮光できる。
一方、上記光学フィルタの分光特性(i-6)および分光特性(i-8)に示したように、当該反射膜としての誘電体多層膜は可視光領域の反射特性変化が小さいことが好ましい。これにより可視光領域の分光特性が入射角によって変化しにくく、リップルが低減された光学フィルタが得られる。
以上より、少なくとも一つの誘電体多層膜は、可視光は反射せず、光の入射角が0度ないし60度で近赤外光(波長800~1200nm)を反射する反射膜として設計されることが好ましい。
他の誘電体多層膜は、上記光学フィルタの分光特性(i-9)~分光特性(i-12)に示したように、可視光領域および近赤外光領域のいずれも反射特性が小さい、反射防止層として設計されることが好ましい。
【0066】
誘電体多層膜は、例えば、屈折率の異なる誘電体膜を積層した誘電体多層膜から構成される。より具体的には、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)、中屈折率の誘電体膜(中屈折率膜)、高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)が挙げられ、これらのうち2以上を積層した誘電体多層膜から構成される。
高屈折率膜は、好ましくは、波長500nmにおける屈折率が1.6以上であり、より好ましくは1.8~2.5であり、特に好ましくは2.2~2.5である。高屈折率膜の材料としては、例えばTa、TiO、TiO、Nbが挙げられる。その他市販品としてキヤノンオプトロン社製、OS50(Ti)、OS10(Ti)、OA500(TaとZrOの混合物)、OA600(TaとTiOの混合物)などが挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiOが好ましい。
【0067】
中屈折率膜は、好ましくは、波長500nmにおける屈折率が1.6以上2.2未満である。中屈折率膜の材料としては、例えばZrO、Nb、Al、HfOや、キヤノンオプトロン社が販売しているOM-4、OM-6(AlとZrOとの混合物)、OA-100、Merck社が販売しているH4、M2(アルミナランタニア)等が挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、Al系の化合物やAlとZrOとの混合物が好ましい。
【0068】
低屈折率膜は、好ましくは、波長500nmにおける屈折率が1.6未満であり、より好ましくは1.38~1.5である。低屈折率膜の材料としては、例えばSiO、SiOy、MgF等が挙げられる。その他市販品としてキヤノンオプトロン社製、S4F、S5F(SiOとAlの混合物)が挙げられる。これらのうち、成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiOが好ましい。
【0069】
誘電体多層膜は、〔屈折率が相対的に高い誘電体膜のQWOTの総和T(H)〕/〔屈折率が相対的に低い誘電体膜のQWOTの総和T(L)〕が、好ましくは1.6以上である。これにより、波長800~1100nmの近赤外光を反射し、可視光は反射を抑えた上記分光特性を満たす誘電体多層膜が得られやすく、また、少なくとも光の入射側に積層される誘電体多層膜はかかる比率関係を満たすことが好ましい。
なお、ここでQWOT(Quater Wave Optical Thickness)とは、波長のλ/4の光学膜厚であり、下記式により物理膜厚から算出される。
QWOT=物理膜厚/中心波長(500nm)×4×波長500nmにおける屈折率
【0070】
誘電体多層膜が、低屈折率膜と高屈折率膜との積層体である場合、QWOTの総和T(H)は高屈折率膜のQWOTの総和であり、QWOTの総和T(L)は低屈折率膜のQWOTの総和である。
また、誘電体多層膜が、低屈折率膜と中屈折率膜との積層体である場合、QWOTの総和T(H)は中屈折率膜のQWOTの総和であり、QWOTの総和T(L)は低屈折率膜のQWOTの総和である。
誘電体多層膜が、中屈折率膜と高屈折率膜との積層体である場合、QWOTの総和T(H)は高屈折率膜のQWOTの総和であり、QWOTの総和T(L)は中屈折率膜のQWOTの総和である。
【0071】
また、誘電体多層膜は、下記に定義するH層とM層とが交互にそれぞれ10層以上積層された多層膜であることが好ましい。H層:屈折率が1.8以上2.5以下、QWOTが1.1以上3.5以下である単層M層:2つのH層間に存在し、QWOTの総和が1.2以上1.8以下である単層または複数の層
【0072】
上記特定の積層構造は、屈折率と光学膜厚の大きい単層(H層)と、光学膜厚の総和が所定範囲内の層(M層)とが交互に10以上積層された構造である。かかる構造により、波長800~1200nmの近赤外光を反射し、可視光の反射率が低い誘電体多層膜が得られやすい。
なおM層は所定の光学膜厚を満たせば、単層であっても複数の層であってもよいが、より滑らかな分光特性が得られる観点から、複数の層から構成されることが好ましく、また単層の膜厚の最小は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。またM層を構成する誘電体膜の屈折率は、H層の屈折率と同一であるか、またはH層の屈折率よりも低いことが好ましい。
【0073】
上記特定の積層構造を有するのは、少なくとも反射膜として設計される誘電体多層膜であることが好ましい。
反射膜として設計される誘電体多層膜が上記積層構造を有する場合、H層とM層のうち近赤外線吸収ガラスに最も近い層はH層であることが好ましい。近赤外線吸収ガラスに最も近いH層は近赤外線吸収ガラスに直接積層されていてもよいし、近赤外線吸収ガラスに最も近いH層と近赤外線吸収ガラスとの間に、H層にもM層にも該当しない他の層が存在してもよい。
【0074】
反射膜として設計される誘電体多層膜としては、誘電体多層膜の合計積層数が、好ましくは10層以上、より好ましくは20層以上、さらに好ましくは30層以上である。ただし、合計積層数が多くなると、反り等が発生したり、膜厚が増加したりするため、合計積層数は110層以下が好ましく、80層以下がより好ましく、60層以下がより一層好ましい。
また、反射膜として設計される誘電体多層膜の膜厚(物理膜厚)は、全体として1~6μmが好ましい。
【0075】
光学フィルタを撮像装置に実装する際にセンサ側となる誘電体多層膜は、通常、反射防止層として設計されることが好ましい。反射防止層として設計される誘電体多層膜の合計積層数は、好ましくは40層以下、より好ましくは30層以下、さらに好ましくは20層以下であり、また好ましくは6層以上である。
また、反射防止層として設計される誘電体多層膜の膜厚(物理膜厚)は、全体として0.2~1.0μmが好ましい。
【0076】
誘電体多層膜の形成には、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0077】
光学フィルタを撮像装置に実装する際は、通常、ガラス面に積層された誘電体多層膜がレンズ側に、樹脂膜面に積層された誘電体多層膜がセンサ側となるようにする。したがって、本実施形態に係る光学フィルタは、誘電体多層膜1がレンズ側、誘電体多層膜2がセンサ側となるように実装することが好ましい。
【0078】
<樹脂膜>
本実施形態に係る光学フィルタにおける樹脂膜は、樹脂と、近赤外線吸収色素とを含む。ここで、樹脂とは、樹脂膜を構成する樹脂を指す。
【0079】
近赤外線吸収色素としては、樹脂中で波長740~800nmに最大吸収波長を有する色素が好ましい。740~800nmに最大吸収波長を有することで、Cu等を含有するフツリン酸ガラスの近赤外光吸収領域が短波長側となるため、ガラスと組み合わせた際に色素の分光特性をより効果的に活用できる。
【0080】
近赤外線吸収色素としては、たとえば、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、ナフタロシアニン色素、およびジイモニウム色素からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられ、単独もしくは複数を混合して用いることができる。中でも、740~800nmの領域を急峻に吸収でき、本発明の効果が発揮されやすい観点から、スクアリリウム色素、シアニン色素が好ましい。
【0081】
樹脂膜における近赤外線吸収色素の含有量は、樹脂100質量部に対し好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.1~20質量部である。なお、2種以上の化合物を組み合わせる場合、上記含有量は各化合物の総和である。
【0082】
樹脂膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の色素、例えば紫外光吸収色素を含有してもよい。
紫外光吸収色素としては、オキサゾール色素、メロシアニン色素、シアニン色素、ナフタルイミド色素、オキサジアゾール色素、オキサジン色素、オキサゾリジン色素、ナフタル酸色素、スチリル色素、アントラセン色素、環状カルボニル色素、トリアゾール色素等が挙げられる。この中でも、メロシアニン色素が特に好ましい。また、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
樹脂としては、透明樹脂であれば制限されず、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリスチレン樹脂等から選ばれる1種以上の透明樹脂が用いられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
樹脂膜の分光特性やガラス転移点(Tg)、密着性の観点から、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂が好ましい。
【0084】
複数の色素を用いる場合、これらは同一の樹脂膜に含まれてもよく、また、それぞれ別の樹脂膜に含まれてもよい。
【0085】
樹脂膜は、色素と、樹脂または樹脂の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを支持体に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。この際の支持体は、本フィルタに用いられる近赤外線吸収ガラスでもよいし、樹脂膜を形成する際にのみ使用する剥離性の支持体でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
【0086】
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を支持体上に塗工後、乾燥させることにより樹脂膜が形成される。また、塗工液が透明樹脂の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
【0087】
また、樹脂膜は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもある。得られたフィルム状樹脂膜をリン酸ガラスに積層し熱圧着等により一体化させることにより基材を製造できる。
【0088】
樹脂膜は、光学フィルタの中に1層有してもよく、2層以上有してもよい。2層以上有する場合、各層は同じ構成であっても異なってもよい。また樹脂膜を2層以上有する場合は、近赤外線吸収ガラスの同一主面側に全て積層されてもよく、異なる主面側にそれぞれ積層されていてもよい。
【0089】
樹脂膜の厚さは、塗工後の基板内の面内膜厚分布、外観品質の観点から10μm以下、好ましくは5μm以下であり、また、適切な色素濃度で所望の分光特性を発現する観点から好ましくは0.5μm以上である。なお、光学フィルタが樹脂膜を2層以上有する場合は、各樹脂膜の総厚が上記範囲内であることが好ましい。
【0090】
本実施形態に係る光学フィルタにおける上記樹脂膜は、下記分光特性(iv-1)~(iv-4)をすべて満たすことが好ましい。
(iv-1)波長440~600nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)440-600(0deg)AVEが90%以上
(iv-2)入射角0度で内部透過率が50%になる波長IR_T(in)50(0deg)が波長630~645nmの領域にある
(iv-3)波長500~700nmにおいて、入射角0度で内部透過率が70%になる波長IR_T(in)70(0deg)と、入射角0度で透過率が20%になる波長IR_T(in)20(0deg)との差の絶対値が60nm以下
(iv-4)波長700~800nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)700-800(0deg)AVEが5%以下
樹脂膜は、分光特性(iv-1)に示すように可視光透過率が高く、分光特性(iv-2)に示すように波長630~645nmが透過領域と吸収領域の境界領域であり、分光特性(iv-3)に示すように境界領域における吸収特性が急峻であり、分光特性(iv-4)に示すように波長700~800nmの近赤外光の遮蔽性が高い。
【0091】
平均内部透過率T(in)440-600(0deg)AVEはより好ましくは90.5%以上、さらに好ましくは91%以上である。
波長IR_T(in)50(0deg)はより好ましくは632~640nm、さらに好ましくは634~640nmである。
(iv-3)における差の絶対値はより好ましくは57nm以下、さらに好ましくは55nm以下である。
平均内部透過率T(in)700-800(0deg)AVEはより好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下である。
【0092】
また、上記近赤外線吸収ガラスおよび樹脂膜を有する基材は、下記分光特性(iii-1)~(iii-3)をすべて満たすことが好ましい。
(iii-1)波長440~600nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)440-600(0deg)AVEが75%以上
(iii-2)波長700~800nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)700-800(0deg)AVEが1.2%以下
(iii-3)波長800~1000nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)800-1000(0deg)AVEが5%以下
分光特性(iii-1)~(iii-3)に示すように、ガラスと近赤外線吸収色素を合わせた基材は、高い可視光透過性と、高い700~1000nmの近赤外吸収特性を有する。
平均内部透過率T(in)440-600(0deg)AVEはより好ましくは76%以上、さらに好ましくは77%以上である。
平均内部透過率T(in)700-800(0deg)AVEはより好ましくは1.1%以下、さらに好ましくは1.05%以下である。
平均内部透過率T(in)800-1000(0deg)AVEはより好ましくは4.5%以下、さらに好ましくは4.0%以下である。
【0093】
本実施形態の光学フィルタは、他の構成要素として、例えば、特定の波長域の光の透過と吸収を制御する無機微粒子等による吸収を与える構成要素(層)などを備えてもよい。無機微粒子の具体例としては、ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタン等が挙げられる。ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域の広範囲に光吸収性を有するため、かかる赤外光の遮蔽性を必要とする場合に使用できる。
【0094】
本実施形態の光学フィルタは、例えば、デジタルスチルカメラ等の撮像装置に使用した場合に、色再現性に優れる撮像装置を提供できる。かかる撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、本実施形態の光学フィルタとを備える。本実施形態の光学フィルタは、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置されたり、撮像装置の固体撮像素子、撮像レンズ等に粘着剤層を介して直接貼着されたりして使用できる。
【0095】
以上に記載した通り、本明細書には下記の光学フィルタ等が開示されている。
〔1〕誘電体多層膜1と、近赤外線吸収ガラスおよび樹脂膜を有する基材と、誘電体多層膜2とをこの順に備えた光学フィルタであって、
前記樹脂膜は、近赤外線吸収色素および樹脂を含有し、
前記近赤外線吸収ガラスが、P、Cu、及びFを含有するフツリン酸ガラスであり、
前記光学フィルタが下記分光特性(i-1)~(i-5)をすべて満たす光学フィルタ。
(i-1)波長440~600nm、入射角0度での平均透過率T440-600(0deg)AVEと、波長440~600nm、入射角60度での平均透過率T440-600(60deg)AVEとの差の絶対値が15%以下
(i-2)前記平均透過率T440-600(0deg)AVEが75%以上
(i-3)入射角0度で透過率が50%になる波長IR_T50(0deg)が波長580~640nmの領域にある
(i-4)波長700~800nm、入射角0度での平均透過率T700-800(0deg)AVEが1.1%以下
(i-5)波長800~1200nm、入射角0度での平均透過率T800-1200(0deg)AVEが5%以下
〔2〕前記光学フィルタが下記分光特性(i-6)~(i-7)をすべて満たす、〔1〕に記載の光学フィルタ。
(i-6)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角5度での平均反射率R1440-650(5deg)AVEが1.5%以下
(i-7)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長850~1200nm、入射角5度での平均反射率R1850-1200(5deg)AVEが60%以上
〔3〕前記光学フィルタが下記分光特性(i-8)を満たす、〔1〕または〔2〕に記載の光学フィルタ。
(i-8)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角60度での平均反射率R1440-650(60deg)AVEが10%以下
〔4〕前記光学フィルタが下記分光特性(i-9)~(i-10)をすべて満たす、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
(i-9)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角5度での平均反射率R2440-650(5deg)AVEが2.0%未満
(i-10)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長700~850nm、入射角5度での平均反射率R2700-850(5deg)AVEが1.2%以下
〔5〕前記光学フィルタが下記分光特性(i-11)~(i-12)をすべて満たす、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
(i-11)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長440~650nm、入射角60度での平均反射率R2440-650(60deg)AVEが10%未満
(i-12)前記誘電体多層膜2側を入射方向としたとき、波長700~850nm、入射角60度での平均反射率R2700-850(60deg)AVEが8%以下
〔6〕前記光学フィルタが下記分光特性(i-13)を満たす、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
(i-13)前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長750~900nmの領域において入射角5度で反射率が50%になる波長IR_R50(5deg)と、波長580~640nmの領域において入射角5度で透過率が50%になる波長IR_T50(5deg)との差の絶対値が160nm以上
〔7〕前記光学フィルタが下記分光特性(i-14)~(i-15)をすべて満たす、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
前記誘電体多層膜1側を入射方向としたとき、波長X~Ynmにおける吸収損失量X-Yを以下に定義する。
(吸収損失量X-Y)[%]=100-(入射角5度における透過率)―(入射角5度における反射率)
(i-14)波長700~800nmにおける吸収損失量700-800の平均値が25%以上
(i-15)波長850~1000nmにおける吸収損失量850-1000の平均値が17%以上
〔8〕前記近赤外線吸収ガラスの厚みが0.4mm以下であり、
前記近赤外線吸収ガラスが下記分光特性(ii-1)~(ii-3)をすべて満たす、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
(ii-1)入射角0度で透過率が50%になる波長IR_T50(0deg)が波長590~640nmの領域にある
(ii-2)波長700nm、入射角0度での透過率T700(0deg)が25%以下
(ii-3)波長700~800nm、入射角0度での平均透過率T700-800(0deg)AVEが10%以下
〔9〕前記基材が下記分光特性(iii-1)~(iii-3)をすべて満たす、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
(iii-1)波長440~600nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)440-600(0deg)AVEが75%以上
(iii-2)波長700~800nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)700-800(0deg)AVEが1.2%以下
(iii-3)波長800~1000nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)800-1000(0deg)AVEが5%以下
〔10〕前記近赤外線吸収色素が、前記樹脂中で740~800nmに最大吸収波長を有するスクアリリウム色素を含む、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
〔11〕前記樹脂膜が、下記分光特性(iv-1)~(iv-4)をすべて満たす、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
(iv-1)波長440~600nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)440-600(0deg)AVEが90%以上
(iv-2)入射角0度で内部透過率が50%になる波長IR_T(in)50(0deg)が波長630~645nmの領域にある
(iv-3)波長500~700nmにおいて、入射角0度で内部透過率が70%になる波長IR_T(in)70(0deg)と、入射角0度で透過率が20%になる波長IR_T(in)20(0deg)との差の絶対値が60nm以下
(iv-4)波長700~800nm、入射角0度での平均内部透過率T(in)700-800(0deg)AVEが5%以下
〔12〕前記近赤外線吸収ガラスが、
質量%表示で、
5+:30~70%
Al3+:0~20%
Li:0~20%
Na:0~25%
:0~25%
Mg2+:0~10%
Ca2+:0~20%
Sr2+:0~30%
Ba2+:0~40%
ΣR:0.1~30%(Rは、Li、Na、及びKから選ばれる1つ以上の成分)
ΣR2+:10~45%(R2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、及びBa2+から選ばれる1つ以上の成分)、および
Cu2+:1~20%
を含有し、ガラス中に含まれるFの以外の成分元素を100質量%としたときに、Fを外割で5~70質量%含有するフツリン酸ガラスである、〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の光学フィルタ。
〔13〕〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の光学フィルタを備えた撮像装置。
【実施例
【0096】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
各分光特性の測定には、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ社製、UH-4150型)を用いた。
なお、入射角度が特に明記されていない場合の分光特性は入射角0度(光学フィルタ主面に対し垂直方向)で測定した値である。
【0097】
各例で用いた色素は下記のとおりである。
化合物1(シアニン化合物):Dyes and Pigments、73、344-352(2007)に記載の方法に基づき合成した。
化合物2(スクアリリウム化合物):国際公開第2017/135359号に基づき合成した。
化合物3(メロシアニン化合物):独国特許公報第10109243号明細書に基づき合成した。
化合物4(スクアリリウム化合物):日本国特開2017-110209号公報に基づき合成した。
化合物5(スクアリリウム化合物):国際公開第2014/088063号および国際公開第2016/133099号に基づき合成した。
【0098】
【化1】
【0099】
各色素のポリイミド樹脂中における最大吸収波長を後述の表2に示す。
【0100】
<ガラスの分光特性>
実施例および比較例に用いるガラスとして、表1に示すガラスA1、ガラスA2、ガラスB、ガラスC、ガラスD1、ガラスD2を準備した。
なお、上記ガラスA1、ガラスA2、ガラスB、ガラスD1およびガラスD2はフツリン酸ガラス、ガラスCはリン酸ガラスである。
【0101】
各ガラスの分光特性を下記表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
上記に示すように、フツリン酸ガラスは、可視光領域の透過率が高く、近赤外領域の遮光性に優れ、特に波長700nm~800nmの光の遮光性に優れていることが分かる。
【0104】
<例1:光学フィルタ>
フツリン酸ガラス基板A1の一方の主面に、下記に示す方法で樹脂膜を形成し、ガラス基板と樹脂膜とを有する基材を製造した。まず、ポリイミド樹脂(三菱ガス化学株式会社製「C3G30G」(商品名)、屈折率1.59)をγ-ブチロラクトン(GBL):シクロヘキサノン=1:1(質量比)に溶解して、樹脂濃度8.5質量%のポリイミド樹脂溶液を調製した。上記の各色素をそれぞれ樹脂100質量部に対して、下記表2に記載の濃度で樹脂溶液に添加し、50℃、2時間撹拌・溶解することで塗工液を得た。得られた塗工液をガラス基板にスピンコート法により塗布し、およそ膜厚が3μmになるように樹脂膜1を形成した。
ガラス基板の他方の主面に、TiOとSiOとを下記表3に示す構成で蒸着により積層して、誘電体多層膜1を形成した。また、樹脂膜の表面に、TiOとSiOとを下記表4に示す構成で蒸着により積層して、誘電体多層膜2形成した。
このようにして、誘電体多層膜1(表3)/フツリン酸ガラスA1/樹脂膜1/誘電体多層膜2(表4)の構成を備えた光学フィルタを作製した。
【0105】
<例2~12:光学フィルタ>
ガラス、樹脂膜、誘電体多層膜1、誘電体多層膜2を、下記に示す構成に変更したこと以外は例1と同様にして、光学フィルタを作製した。各誘電体多層膜の構成は、表3~表6に示す。
例2:誘電体多層膜1(表3)/フツリン酸ガラスA2/樹脂膜1/誘電体多層膜2(表4)
例3:誘電体多層膜1(表3)/フツリン酸ガラスB/樹脂膜1/誘電体多層膜2(表4)
例4:誘電体多層膜1(表3)/リン酸ガラスC/樹脂膜1/誘電体多層膜2(表4)
例5:誘電体多層膜1(表5)/フツリン酸ガラスA1/樹脂膜1/誘電体多層膜2(表4)
例6:誘電体多層膜1(表3)/フツリン酸ガラスA1/樹脂膜2/誘電体多層膜2(表4)
例7:誘電体多層膜1(表3)/フツリン酸ガラスD2/樹脂膜1/誘電体多層膜2(表4)
例8:誘電体多層膜1(表3)/フツリン酸ガラスD1/樹脂膜3/誘電体多層膜2(表4)
例9:誘電体多層膜1(表6)/フツリン酸ガラスD1/樹脂膜3/誘電体多層膜2(表4)
例10:誘電体多層膜1(表6)/フツリン酸ガラスD2/樹脂膜3/誘電体多層膜2(表4)
例11:誘電体多層膜1(表6)/フツリン酸ガラスD1/樹脂膜4/誘電体多層膜2(表4)
例12:誘電体多層膜1(表6)/フツリン酸ガラスD2/樹脂膜4/誘電体多層膜2(表4)
【0106】
各樹脂膜について、紫外可視分光光度計を用いて300~1200nmの波長範囲における入射角0度での分光透過率曲線を測定した。なお、各樹脂膜の分光特性については、透明ガラス基板上に形成した樹脂膜について、空気界面とガラス界面での反射の影響を回避するため、内部透過率で評価した。
結果を下記表2に示す。
【0107】
各基材(樹脂膜およびガラス基板)について、紫外可視分光光度計を用いて300~1200nmの波長範囲における入射角0度での分光透過率曲線を測定した。なお、各基材の分光特性については、空気界面とガラス界面での反射の影響を回避するため、内部透過率で評価した。
結果を下記表6に示す。
【0108】
各光学フィルタについて、紫外可視分光光度計を用いて300~1200nmの波長範囲における入射角0度および60度での分光透過率曲線、入射角5度での分光反射率曲線を測定した。
結果を下記表7、表8に示す。
【0109】
また、例1の光学フィルタの分光透過率曲線を図2に示し、入射方向が誘電体多層膜1側の分光反射率曲線を図3に示し、入射方向が誘電体多層膜2側の分光反射率曲線を図4に示す。例2の光学フィルタの分光透過率曲線を図5に示し、入射方向が誘電体多層膜1側の分光反射率曲線を図6に示す。例3~例6の光学フィルタの分光透過率曲線を図7図10にそれぞれ示す。
なお、例1~例2、例4および例6~例12は実施例であり、例3、例5比較例である。
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
【表6】
【0115】
【表7】
【0116】
【表8】
【0117】
上記結果より、例1、例2、例4および例6~例12の光学フィルタは、平均透過率T440-600(0deg)AVEと平均透過率T440-600(60deg)AVEとの差の絶対値が15%以下であり、60度の高入射角であっても可視光透過率の変化が小さく、また平均透過率T440-600(0deg)AVEが75%以上であり高い可視光透過率を維持している。また入射角0度で透過率が50%になる波長IR_T50(0deg)が580~640nmにあり、近赤外光領域を遮光して効率的に可視透過光を取り込めている。さらに平均透過率T700-800(0deg)AVEが1.1%以下かつ平均透過率T800-1200(0deg)AVEが5%以下であり、広範囲において近赤外光の遮蔽性に優れる。
一方、例3の光学フィルタは平均透過率T800-1200(0deg)AVEが5%を超えており、近赤外光の遮蔽性が低い。これはガラス基板の吸収が不足していることによる。
例5の光学フィルタは、平均透過率T440-600(0deg)AVEと平均透過率T440-600(60deg)AVEとの差の絶対値が15%を超えており、高入射角において可視光透過率の変化が大きい。これは誘電体多層膜1の近赤外領域の反射率が高すぎることによる。
【0118】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2022年12月27日出願の日本特許出願(特願2022-210260)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本実施形態の光学フィルタは、優れた耐候性を有し、高入射角でも分光特性の変化が小さく、可視光領域の透過性に優れ、近赤外光領域の遮蔽性、特に1200nmも含む広範囲の遮蔽性に優れた分光特性を有する。近年、高性能化が進む、例えば、輸送機用のカメラやセンサ等の撮像装置の用途に有用である。
【符号の説明】
【0120】
1B…光学フィルタ
10…近赤外線吸収ガラス
21、22…誘電体多層膜
30…樹脂膜
40…基材
【要約】
本発明は、誘電体多層膜1と、近赤外線吸収ガラスおよび樹脂膜を有する基材と、誘電体多層膜2とをこの順に備えた光学フィルタであって、前記樹脂膜は、近赤外線吸収色素および樹脂を含有し、前記近赤外線吸収ガラスが、P、Cu、及びFを含有するフツリン酸ガラスであり、前記光学フィルタが特定の分光特性(i-1)~(i-5)をすべて満たす光学フィルタに関する。
図1
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