IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タキロン株式会社の特許一覧 ▶ 大日本プラスチックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図1
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図2
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図3
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図4
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図5
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図6
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図7
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図8
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図9
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図10
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図11
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図12
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図13
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図14
  • 特許-内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20241112BHJP
   F16L 55/163 20060101ALI20241112BHJP
   E03F 3/06 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 63/34 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F16L1/00 J
F16L55/163
E03F3/06
B29C63/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021010949
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114603
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】建部 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晋康
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直也
(72)【発明者】
【氏名】竹下 賢
(72)【発明者】
【氏名】森田 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃司
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123855(JP,A)
【文献】特開2019-104145(JP,A)
【文献】特表2003-533385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
F16L 55/163
E03F 3/06
B29C 63/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内に固定され、管心側に被嵌着部を有する内面材固定部材に、
管内面側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、管心側に管軸方向に延びる被係止部を有する内面材を、
管軸方向に移動しながら嵌着するための内面材嵌着装置であって、
前記内面材の被係止部に係止する係止部と、
前記係止部より管軸方向の前側に設けられ、前記内面材を押圧可能な押圧部と、
前記押圧部より前側及び管心側に設けられ、前記管の内面側に加圧することにより、前記押圧部によって未嵌着の内面材の嵌着部の近傍を押圧するようにする加圧部とを有し、
前記係止部、前記押圧部及び前記加圧部は、連結杆を介して相互に連結されてなる、
ことを特徴とする内面材嵌着装置。
【請求項2】
前記加圧部から前記押圧部までの距離は、前記押圧部から前記係止部までの距離よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の内面材嵌着装置。
【請求項3】
前記係止部の長さは、前記内面材固定部材の被嵌着部の長さと同等以上である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内面材嵌着装置。
【請求項4】
管内に固定され、管心側に被嵌着部を有する内面材固定部材に、
管内面側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、管心側に管軸方向に延びる被係止部を有する内面材を、
管軸方向に移動しながら嵌着するための内面材嵌着装置を用いた内面材の嵌着方法であって、
前記内面材嵌着装置が、
前記内面材の被係止部に係止する係止部と、
前記係止部より管軸方向の前側に設けられ、前記内面材を押圧可能な押圧部と、
前記押圧部より前側及び管心側に設けられる加圧部とを有し、
前記係止部、前記押圧部及び前記加圧部は、連結杆を介して相互に連結されてなり、
前記係止部が既に内面材固定部材に嵌着された内面材の被係止部の近傍に位置した状態で、前記加圧部を前記管の内面側に加圧することにより、前記押圧部によって未嵌着の内面材の嵌着部の近傍を押圧するようにする、
ことを特徴とする内面材嵌着装置を用いた内面材の嵌着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、既設管の補修や新設管の内表面の仕上げ等のために、管の内周面側に内面材を内張りするために用いられる内面材嵌着装置に関し、特に、管の内周面に設置された内面材固定部材に内面材を嵌着するために用いられる内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既設管の補修工法として、既設管の内周面に剛性リングや剛性直材等からなる内面材固定部材を設置し、該内面材固定部材に嵌着される内面材を既設管の周方向に順次配設して筒状体を形成し、該筒状体と既設管との間に硬化性充填材を充填して既設管の補修・補強を施すようにしたものがある(特許文献1参照。)。
【0003】
上記のライニング体を用いた既設管の補修工法において、内面材固定部材に対して内面材を嵌着するためには該内面材を内面材固定部材へと押圧する必要があるが、本件出願人らは、先に、この内面材を押圧して、内面材固定部材に対して内面材を嵌着するために用いられる内面材嵌着装置を提案した(特許文献2参照。)。
【0004】
この内面材押圧装置は、管の内周面に設置された内面材固定部材に、内部に係合爪が形成され、かつ表面に管の長手方向に延びる溝を備えた内面材を嵌着するために用いられる内面材嵌着装置であって、前記管の長手方向に移動する移動体と、前記移動体に設けられ、内面材の表面を内面材固定部材に対して押圧する圧力伝達部と、前記移動体の圧力伝達部より後側に設けられ、内面材の溝に沿って移動するとともに、溝に形成された係合爪に係止して反力を得る嵌入摺動部とを備え、前記嵌入摺動部によって案内されることで移動体を管の長手方向に移動しながら、嵌入摺動部によって反力を得るとともに、圧力伝達部によって内面材の表面を内面材固定部材に向けて押圧することで内面材を内面材固定部材に嵌着するようにしたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-316539号公報
【文献】特開2018-123855号公報
【文献】特開2017-198305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載の内面材押圧装置によれば、管の内周面に設置された内面材固定部材に内面材を嵌着する作業を、必ずしも作業者が管内に入ることなく、効率よく、安全に、かつ、確実性を以て行うことができ、かつ、小径(呼び径:800~1000mm以下)の管にも適用できる利点を有する反面、内面材の表面を内面材固定部材に対して押圧する押圧部のために、移動体にエアシリンダ等のアクチュエータ、ターンバックル等のねじ機構等の伸縮機構を備えることで、装置が大がかりなものになるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の内面材押圧装置の有する問題点に鑑み、伸縮機構等の駆動部を必要とせず、コンパクトな装置で、管の内周面に設置された内面材固定部材に内面材を嵌着する作業を、作業者が管内に入って行う場合でも小さい力で容易に行うことができる内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の内面材嵌着装置は、
管内に固定され、管心側に被嵌着部を有する内面材固定部材に、
管内面側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、管心側に管軸方向に延びる被係止部を有する内面材を、
管軸方向に移動しながら嵌着するための内面材嵌着装置であって、
前記内面材の被係止部に係止する係止部と、
前記係止部より管軸方向の前側に設けられ、前記内面材を押圧可能な押圧部と、
前記押圧部より前側及び管心側に設けられる加圧部とを有する、
ことを特徴とする。
ここで、管軸方向に延びる被係止部とは、連続的に延びる態様のみならず、断続的に延びる態様をも含むものである。
【0009】
この場合において、前記加圧部から前記押圧部までの距離は、前記押圧部から前記係止部までの距離よりも大きくすることができる。
【0010】
また、前記係止部の長さは、前記内面材固定部材の被嵌着部の長さと同等以上にすることができる。
【0011】
また、同じ目的を達成するため、本発明の内面材嵌着装置を用いた内面材の嵌着方法は、
管内に固定され、管心側に被嵌着部を有する内面材固定部材に、
管内面側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、管心側に管軸方向に延びる被係止部を有する内面材を、
管軸方向に移動しながら嵌着するための内面材嵌着装置を用いた内面材の嵌着方法であって、
前記内面材嵌着装置が、
前記内面材の被係止部に係止する係止部と、
前記係止部より管軸方向の前側に設けられ、前記内面材を押圧可能な押圧部と、
前記押圧部より前側及び管心側に設けられる加圧部とを有し、
前記係止部が既に内面材固定部材に嵌着された内面材の被係止部の近傍に位置した状態で、前記加圧部を前記管の内面側に加圧することにより、前記押圧部によって未嵌着の内面材の嵌着部の近傍を押圧するようにする、
ことを特徴とする。
ここで、管軸方向に延びる被係止部とは、連続的に延びる態様のみならず、断続的に延びる態様をも含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法によれば、伸縮機構等の駆動部を必要としないため、コンパクトな装置で、管の内周面に設置された内面材固定部材に内面材を嵌着する作業を、作業者が管内に入って行う場合でもてこの原理を利用することで、小さい力で容易に行うことができる。
【0013】
また、前記加圧部から前記押圧部までの距離は、前記押圧部から前記係止部までの距離よりも大きくすることにより、例えば、作業者が管内に入って行う場合における管の内周面に設置された内面材固定部材に内面材を嵌着する作業を、より小さい力で容易に行うことができる。
【0014】
また、前記係止部の長さは、前記内面材固定部材の被嵌着部の長さと同等以上にするこ
とにより、内面材固定部材の被嵌着部の位置に対する係止部の位置合わせをラフにしても、内面材を介して、内面材固定部材から安定して反力をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】内面材取付用骨格構造を用いた管の内層構造の例を示し、(a)は断面図(連結スペーサは省略。)、(b)は要部の断面図である。
図2】同内面材取付用骨格構造に用いる固定部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は底面図である。
図3】同内面材取付用骨格構造に用いる固定部材の変形例を示し、(a1)~(d1)は側面図、(a2)~(d2)は正面図である。
図4】同内面材取付用骨格構造に用いる連結スペーサを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は連結スペーサを固定部材に取り付けた状態(固定部材の一部透視。)を示す平面図、(d)はその正面図である。
図5】本発明の内面材嵌着装置の第1実施例を示す正面図である。
図6】同内面材嵌着装置を示し、(a)は左側面図、(b)は図5のA-A断面図である。
図7】同内面材嵌着装置のガイドを示し、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
図8】本発明の内面材嵌着装置の第2実施例を示す正面図である。
図9】同内面材嵌着装置を示し、(a)は左側面図、(b)は図8のA-A断面図である。
図10】同内面材嵌着装置のガイドを示し、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
図11】本発明の内面材嵌着装置の第3実施例を示す正面図である。
図12】本発明の内面材嵌着装置の第4実施例を示す正面図である。
図13】同内面材嵌着装置を示し、(a)は左側面図、(b)は図12のA-A断面図である。
図14】同内面材嵌着装置のガイドを示し、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
図15】本発明の内面材嵌着装置の第5実施例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
まず、本発明の内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法を適用する内面材及び内面材取付用骨格構造の例について、図1図4を用いて説明する。
【0018】
<内面材の説明>
内面材21は、ファスナ22と組み合わせて用いることによって、内面材構造体2を構成するもので、管Pの長手方向に沿って延びる、例えば、合成樹脂製の帯板状部材よりなり、表面に管Pの長手方向に延びる溝21aを備えるようにしている。
すなわち、内面材構造体2は、内面材固定部材4に嵌着して取り付けられる内面材21と、内面材固定部材4に取り付けられた隣接する内面材21同士を接続するファスナ22とからなる。
そして、内面材21には、ファスナ22を取り付けるための溝21aが設けられるとともに、溝21aの内部には、ファスナ22と係合する係合爪21bが形成されている。また、内面材21には、内面材固定部材4に形成された内面材装着部42に嵌着される嵌着部21cを形成するようにする。
【0019】
<内面材取付用骨格構造の説明>
ここで、内面材21を取り付けるための骨格構造としては、特許文献2~3に記載のものを適用することができる。
この骨格構造は、管Pの長手方向に間隔をあけて、管Pの内周面に沿って設けられるリング状支持部材3と、背面側にリング状支持部材3に沿って取り付けるための嵌合部41を備え、表面側に内面材21を取り付けるための内面材装着部42を備えた内面材固定部材4と、この内面材固定部材4を介して管Pの長手方向に沿って取り付けられることによって、隣接するリング状支持部材3間の距離を規定する連結スペーサ5とからその主要部が構成されている。
【0020】
リング状支持部材3は、環状となる支持部材であって、管Pの長手方向から見た外形の形状が円形であるが、管Pの形状や構築される内層構造の形状に合わせて、矩形、多角形、アーチ形等、任意の形状のものを用いることができる。
なお、リング状支持部材3には、鉄製棒材や異形鉄筋を用いることが好ましいが、断面形状が四角形や多角形の棒状部材や中空体(パイプ部材)を用いることもでき、また、金属製の部材以外の合成樹脂製や複合材料製の部材も使用することができる。
【0021】
内面材固定部材4は、図2に示すように、背面側にリング状支持部材3に沿って取り付けるための嵌合部41を備え、表面側に内面材21を取り付けるための内面材装着部42を備えたもので、合成樹脂や金属製の成形品からなる。
ここで、内面材固定部材4の嵌合部41には、リング状支持部材3に嵌合した内面材固定部材4の嵌合部41が外れないようにするための突起41a、41bを形成するようにしている。
【0022】
また、内面材固定部材4には、図2及び図4に示すように、連結スペーサ5を挿通するための矩形の断面形状をした挿通空間43を形成し、この挿通空間43に挿通した連結スペーサ5を、連結スペーサ5に形成した嵌着部51を介して、内面材固定部材4に対して挿通方向に摺動しないように固定することができるようにしている。なお、挿通空間43には、必要に応じて、挿通空間43に挿通された連結スペーサ5の下面を支持する受片43aを設けるようにする。
これにより、連結スペーサ5の内面材固定部材4への取り付けを簡易に行うことができる。
【0023】
ここで、内面材固定部材4に取り付けるようにした連結スペーサ5と、隣接するリング状支持部材3側の内面材固定部材4に取り付けられる連結スペーサ5とを、連結スペーサ5に備えた連結部52a、52bによって連結するようにしている。
そして、連結スペーサ5に備えた連結部52bを、その幅を他の部分より大きくなるように段状に形成して、内面材固定部材4の挿通空間43に挿通した連結スペーサ5がこの位置で止まるようにするとともに、連結スペーサ5の中間位置に連結スペーサ5の挿通空間43の反対側の開口縁に当接する係止爪51aを形成して、連結スペーサ5の嵌着部51を構成するようにしている。
これにより、連結スペーサ5同士を連結することによって、相互に隣接するリング状支持部材3間の距離を規定することができる。
なお、連結スペーサ5を、内面材固定部材4に対して挿通方向に摺動しないように固定するための手段は、これに限定されず、例えば、嵌着部51の両側に係止爪51aを形成して、連結スペーサ5をいずれの側からも内面材固定部材4に挿通できるようにしたり(この場合、連結スペーサ5に備えた連結部52bの幅を他の部分と同一にする。)、内面材固定部材4側に連結スペーサ5に嵌着する嵌着部を形成するようにしたり、内面材固定部材4及び連結スペーサ5の所定位置にピン孔を形成し、ピン孔に固定ピンを挿入する等、任意の固定方式を採用することができる。
なお、係止爪51aは、連結スペーサ5の中間位置の側面に形成するほか、連結スペーサ5の中間位置の上面に形成することもでき、また、係止爪51aを含めて嵌着部51を形成する位置も、自由に設定することができる。
【0024】
また、リング状支持部材3に沿って取り付けた内面材固定部材4のすべての挿通空間43に連結スペーサ5を挿通して取り付ける必要はなく、数箇所、例えば、管Pの内周面の底端位置を挟んだ対称の位置に2箇所、天端位置に1箇所というように、相互に隣接するリング状支持部材3間の距離を規定するために必要な箇所に選択的に挿通して取り付けるようにする。
そして、連結スペーサ5を挿通しない挿通空間43には、必要に応じて、鉄製棒材や異形鉄筋等からなる補強部材(図示省略)を挿通して、管Pの長手方向に沿って取り付けることができる。
この補強部材は、管Pの内周面と内面材21によって区画された環状の隙間に充填される硬化材6中に埋設され、管Pの強度を高めることができる。
【0025】
また、内面材固定部材4は、その底面44を、管Pの内周面に接地して設けるようにする。
これにより、管Pの内周面に沿って設けられるリング状支持部材3を、内面材固定部材4を介して、安定して設置することができる。
ここで、内面材固定部材4は、そのすべてを管Pの内周面に接地して設ける必要はなく、内面材固定部材4を介してリング状支持部材3を安定して設置することができる限りにおいて、リング状支持部材3に沿って取り付けた内面材固定部材4の内の任意の位置の内面材固定部材4を接地して設けるようにすればよい。
【0026】
この場合、図3に示すように、内面材固定部材4の嵌合部41から底面44までの寸法Ha~Hdを適正に設定した複数種類の内面材固定部材4を用意し、これを選択して用いることができる。すなわち、寸法Ha~Hdが、管Pの半径とリング状支持部材3の半径との差と同じ内面材固定部材4を用いることによって、内面材固定部材4の底面44が管Pの内周面に接地するようにでき、併せて、管Pの中心にリング状支持部材3の中心を合わせることができ、これにより、管Pの内周面と内面材21によって区画された環状の隙間に充填される硬化材6の層の厚みを、周方向で均一にすることができ、強固で安定的な管Pの内層構造を構築することができるものとなる。
【0027】
このように、この内面材21を取り付けるための骨格構造によれば、管Pの長手方向に間隔をあけて、管Pの内周面に沿って設けられるリング状支持部材3と、背面側にリング状支持部材3に沿って取り付けるための嵌合部41を備え、表面側に内面材21を取り付けるための内面材装着部42を備えた内面材固定部材4と、この内面材固定部材4を介して管Pの長手方向に沿って取り付けられることによって、隣接するリング状支持部材3間の距離を規定する連結スペーサ5とからなるようにすることにより、内面材固定部材4を介して管Pの長手方向に沿って取り付けられる連結スペーサ5によって、相互に隣接するリング状支持部材3間の距離を正確に規定することができるとともに、内面材固定部材4をリング状支持部材3に簡易に固定することができ、これにより、内面材固定部材4を介して内面材21を精度高く配設することを可能にしながら、構成部材の組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化することができる。
【0028】
次に、本発明の内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法について説明する。
【0029】
[第1実施例]
<内面材嵌着装置の説明>
図5図7に、本発明の内面材嵌着装置の第1実施例を示す。
この内面材嵌着装置1は、管P内に固定され、管心側に内面材装着部42(被嵌着部)を有する内面材固定部材4に、管内面側に内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)と嵌着する嵌着部21cと、管心側に管軸方向に延びる溝21aの係合爪21b(被係止部)を有する内面材21を、管軸方向に移動しながら嵌着するためのもので、内面材21の溝21aの係合爪21b(被係止部)に係止するガイド11(係止部)と、ガイド11(係止部)より管軸方向の前側(内面材嵌着装置1の移動方向側(以下、本明細書において同じ。))に設けられ、内面材21を押圧可能なコネクタ12(押圧部)と、コネクタ12(押圧部)より前側及び管心側に設けられるコネクタピース13(加圧部)とを有するようにしている。
【0030】
この場合において、ガイド11(係止部)は、アルミニウム等の金属製の板部材からなり、下端縁に、内面材21の溝21a内に入り込んで係合爪21b(被係止部)に係止する係合爪11aを備えるようにしている。
ガイド11(係止部)は、2枚構成で、管状部材(この管状部材には、本実施例に示す、ステンレススチール等の金属製で、異形断面形状の管材のほか、金属製以外の管材を使用したり、丸形断面形状等の管材を使用したりすることができる。以下の「管状部材」も同じ。)からなる連結部材14aを介して、内面材21の溝21aの係合爪21b(被係止部)の間隔に合わせて並設され、ボルト14bによって固定されるようにしている。
このように、ガイド11(係止部)を2枚構成とし、2箇所で係止を行うようにすることで、反力を安定してとるようにしている。
なお、ガイド11(係止部)の係合爪11aは、本実施例においては、固定爪にしたが、内面材21の溝21aの係合爪21b(被係止部)に対して管周方向に可動して係止を解除できる可動爪で構成することもできる。これにより、内面材嵌着装置1を移動する際に、ガイド11(係止部)の係合爪11aと内面材21の溝21aの係合爪21b(被係止部)とのクリアランスを確保することができ、移動をスムーズにできる。
また、ガイド11(係止部)の構成枚数は、本実施例にいては、2枚構成としたが、内面材21の溝21aの係合爪21b(被係止部)の数に合わせて、適宜枚数を変更することができる。
【0031】
連結部材14aには、ステンレススチール等の金属製等のコネクタ15aが、間隔をあけて2個取り付けられ、各コネクタ15aには、約200mmの長さの管状部材からなる連結杆15bを介して、ステンレススチール等の金属製等のコネクタ12(押圧部)が、さらに、管状部材からなる連結杆15cを介して、ステンレススチール等の金属製等のコネクタピース13(加圧部)が取り付けられることにより、全体として略「く」の字形状を呈するようにしている。
これにより、コネクタピース13(加圧部)からの加圧力が直接下方に伝達でき、小さい力で、内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)に内面材21の嵌着部21cを嵌着することができる。
なお、連結部材14aとコネクタ15aとの取付は、本実施例においては、固定状態で取り付けるようにしたが、連結部材14aに対してコネクタ15aが揺動可能となるように取り付けるようにしたり、コネクタ15aを取り付ける連結部材14aの軸をガイド11(係止部)に回動可能に取り付けるようにしたりすることにより、コネクタ15aが揺動可能となるようにすることもできる。
また、コネクタピース13(加圧部)やコネクタ12(押圧部)は、管周方向における内面材21の嵌着部21cと対応する数を備えることが好ましい。本実施例では、内面材21が管周方向に並んだ2つの嵌着部21cを備えるのに対応して、コネクタピース13(加圧部)やコネクタ12(押圧部)をそれぞれ2つ備える。そうすることで、2つの嵌着部21cを1つずつ順番に押圧することができるため、作業者が手作業で加圧する場合でも、より小さな力で内面材の嵌着を行うことができる。
【0032】
コネクタピース13(加圧部)からコネクタ12(押圧部)までの距離は、コネクタ12(押圧部)からガイド11(係止部)までの距離よりも大きくする、すなわち、連結杆15cの長さは、連結杆15bの長さよりも長いものを使用するようにすることが好ましい。
これにより、例えば、作業者が管P内に入って行う場合における管Pの内周面に設置された内面材固定部材4に内面材21を嵌着する作業を、より小さい力で容易に行うことができる。
また、連結杆15bの長さに対する連結杆15cの長さは、1.8倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。このような長さに設定することで、管内に水が溜まった状態でも嵌合作業をよりしやすくすることができる。また、連結杆15bの長さに対する連結杆15cの長さは、7.1倍以下であることが好ましく、4.2倍以下であることがより好ましい。このような長さに設定することで、作業者による加圧部の操作をより容易にすることができる。
なお、連結杆15cの長さは、これに限定されず、連結杆15bの長さよりも短いものを使用するようにしてもよい。
これにより、管径の小さい管での作業において、内面材嵌着装置の管径方向の長さが短縮できるため、作業性を向上させることができる。
【0033】
また、ガイド11(係止部)の長さL1は、内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)の長さL2と同等以上にすることが好ましい。
これにより、内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)の位置に対するガイド11(係止部)の位置合わせをラフにしても、内面材21を介して、内面材固定部材4から安定して反力をとることができる。
【0034】
<内面材嵌着装置を用いた内面材の嵌着方法の説明>
この内面材嵌着装置1を用いて、ガイド11(係止部)が既に(直前に)内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)に嵌着された内面材21の溝21aの係合爪21b(被係止部)の近傍に位置した状態で、2つあるコネクタピース13(加圧部)(連結杆15cの先端部)の内、1つを管Pの内面側に加圧することにより、コネクタ12(押圧部)によって未嵌着の内面材21の嵌着部21cの近傍を押圧するようにすることにより、内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)に内面材21の嵌着部21cを嵌着するようにする。
ここで、内面材固定部材4は、管周に沿って敷設したリング状支持部材3に固定されているが、内面材嵌着装置1のコネクタピース13(加圧部)(連結杆15cの先端部)を管Pの内面側に加圧した際に、ガイド11(係止部)を介して、当該箇所の内面材21及び内面材固定部材4が、リング状支持部材3と共に変形し管心側へ変位する。この変形により、相対的にコネクタ12(押圧部)が管内面側へ変位し、内面材21を押圧することができる。ただし、リング状支持部材3の変形は、リング状支持部材3の剛性によって制限され、加圧した際にリング状支持部材3にかかる力とリング状支持部材3の応力が釣り合うことによって反力を得ることができる。
そして、もう1つのコネクタピース13(加圧部)も同様に加圧し、対応する内面材21の嵌着部21cを嵌着させた後、内面材嵌着装置1を管軸方向に移動させながら、同じ動作を繰り返すことで、内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)に内面材21の嵌着部21cを順次嵌着するようにする。
なお、本実施例において、内面材固定部材4は、管軸方向に間隔をあけて配置されているが、管軸方向に連続して延びている場合にも、内面材嵌着装置1を管軸方向に移動させながら動作を繰り返すことで、この内面材嵌着装置1を用いて内面材21の嵌着を行うことができる。
【0035】
この内面材嵌着装置1は、従来の内面材嵌着装置のような伸縮機構等の駆動部を必要と
しないため、コンパクトな装置で、例えば、作業者が管P内に入って行う場合における管Pの内周面に設置された内面材固定部材4に内面材21を嵌着する作業を、てこの原理を利用することで、小さい力で容易に行うことができる。
【0036】
[第2実施例]
図8図10に、本発明の内面材嵌着装置の第2実施例を示す。
本実施例は、第1実施例において、コネクタ12を押圧部としていたのに代えて、押圧部として、コネクタピース16を、コネクタピース13の近傍の連結杆15bの管内面側に取り付けるようにしたものである。
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、第1実施例の内面材嵌着装置と同様である。
【0037】
[第3実施例]
図11に、本発明の内面材嵌着装置の第3実施例を示す。
本実施例は、第2実施例において、ガイド11(係止部)とコネクタピース16(押圧部)の間隔が、内面材固定部材4の1ピッチになる長さの連結杆15bを使用していたのに対して、内面材固定部材4の2ピッチになる長さの連結杆15bを使用したものである。
この内面材嵌着装置1は、ガイド11(係止部)が既に(2つ前に)内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)に嵌着された内面材21の溝21aの係合爪21b(被係止部)の近傍に位置した状態で、コネクタピース13(加圧部)(連結杆15cの先端部)を管Pの内面側に加圧することにより、コネクタピース16(押圧部)によって未嵌着の内面材21の嵌着部21cの近傍を押圧するようにすることにより、内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)に内面材21の嵌着部21cを嵌着するようにするものである。
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、第1及び第2実施例の内面材嵌着装置と同様である。
【0038】
[第4実施例]
図12図14に、本発明の内面材嵌着装置の第4実施例を示す。
本実施例は、第2実施例において、ガイド11(係止部)を、2軸を連結した構造の管状部材からなる連結部材14aで連結していたのに代えて、1軸構造の管状部材からなる連結部材14aで連結するようにしたものである。
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、第1及び第2実施例の内面材嵌着装置と同様である。
【0039】
[第5実施例]
図15に、本発明の内面材嵌着装置の第5実施例を示す。
本実施例は、第4実施例において、ガイド11(係止部)とコネクタピース16(押圧部)の間隔が、内面材固定部材4の1ピッチになる長さの連結杆15bを使用していたのに対して、内面材固定部材4の2ピッチになる長さの連結杆15bを使用したものである。
この内面材嵌着装置1は、ガイド11(係止部)が既に(2つ前に)内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)に嵌着された内面材21の溝21aの係合爪21b(被係止部)の近傍に位置した状態で、コネクタピース13(加圧部)(連結杆15cの先端部)を管Pの内面側に加圧することにより、コネクタピース16(押圧部)によって未嵌着の内面材21の嵌着部21cの近傍を押圧するようにすることにより、内面材固定部材4の内面材装着部42(被嵌着部)に内面材21の嵌着部21cを嵌着するようにするものである。
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、第1、第2及び第4実施例の内面材嵌着装
置と同様である。
【0040】
以上、本発明の内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の内面材嵌着装置及び内面材の嵌着方法は、コンパクトな装置で、管の内周面に設置された内面材固定部材に内面材を嵌着する作業を、作業者が管内に入って行う場合でも小さい力で容易に行うことができることから、老朽化した下水道管等の既設管の補修の際に用いられる内面材の内張り作業の用途に好適に用いることができるほか、例えば、新設管の内表面の仕上げの際に用いられる内面材の内張り作業の用途にも用いることができ、特に、内面材が合成樹脂製である場合に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
P 管
1 内面材嵌着装置
11 ガイド(係止部)
11a 係合爪
12 コネクタ(押圧部)
13 コネクタピース(加圧部)
14a 連結部材
14b ボルト
15a コネクタ
15b 連結杆
15c 連結杆
16 コネクタピース(押圧部)
2 内面材構造体
21 内面材
21a 溝
21b 係合爪
21c 嵌着部
22 ファスナ
3 リング状支持部材
4 内面材固定部材
41 嵌合部
42 内面材装着部
5 連結スペーサ
6 硬化材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15