(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両用スライドドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/643 20150101AFI20241112BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20241112BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20241112BHJP
E05F 15/655 20150101ALI20241112BHJP
【FI】
E05F15/643
B60J5/04 C
B60J5/06 A
E05F15/655
(21)【出願番号】P 2021029399
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直登
(72)【発明者】
【氏名】佐和 立章
(72)【発明者】
【氏名】張 暁明
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-255724(JP,A)
【文献】特開2007-9515(JP,A)
【文献】特開2015-148101(JP,A)
【文献】特開2019-100081(JP,A)
【文献】特開2005-290701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0060942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/04- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドドアを車体パネルにスライド可能に支持するためのガイドレールの上面に沿うように前記車体パネルに固定されるガイド部材と、
モータにより回転する回転ドラムに巻取り・送り出し可能に巻回されると共に、前記ガイド部材の一端部及び他端部にそれぞれ掛け回されて、前記回転ドラムの回転により前記ガイド部材の長手方向に沿って移動可能なケーブルと、
前記ケーブルに連結されると共に、前記ガイドレールに長手方向へ移動可能に組付けられるガイドローラユニットを介して前記スライドドアに連結されるケーブル接続部材と、を備え、
前記ガイド部材を、下端面が前記ガイドレールの上面に対向する垂直壁部と、前記垂直壁部の上端から車内方向へ向けて延出する水平部とを有して、縦断面形状を略倒立L字状としたことを特徴とする車両用スライドドア開閉装置。
【請求項2】
前記ケーブルにおける前記ガイド部材の車内側に配索される部分を、前記ガイド部材の前記水平部と前記ガイドレールの上面との間に配索したことを特徴とする請求項1記載の車両用スライドドア開閉装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記ケーブルに連結され、かつ前記ガイドローラユニットに未接続状態の前記ケーブル接続部材を所定位置に着脱自在に仮保持可能な保持部を有することを特徴とする請求項1または2記載の車両用スライドドア開閉装置。
【請求項4】
前記保持部を、前記ガイド部材の前記垂直壁部を貫通し、かつ前記ケーブル接続部材に設けた仮保持係合部が嵌合する開口孔としたことを特徴とする請求項3記載の車両用スライドドア開閉装置。
【請求項5】
前記ケーブル接続部材は、前記保持部に仮保持された状態にあるとき、前記ガイドローラユニットの移動軌跡外に退避した位置に保持されることを特徴とする請求項3または4記載の車両用
スライドドア開閉装置。
【請求項6】
前記ケーブルを、長さ方向の略中間部が前記回転ドラムに複数回巻き付けられると共に、前記ガイド部材の一端部に掛け回されて前記ケーブル接続部材に連結されるクローズ側ケーブル部と、前記ガイド部材の他端部に掛け回されて前記ケーブル接続部材に連結されるオープン側ケーブル部とを単一のケーブルにより構成したことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の車両用スライドドア開閉装置。
【請求項7】
前記ケーブル接続部材に、前記ケーブルの伸びを吸収するための伸び取り部を設けたことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の車両用スライドドア開閉装置。
【請求項8】
前記伸び取り部は、前記ケーブル接続部材の上下方向を向く支持部に設けられ、前記ケーブルに対して緊張方向への付勢力を付与するコイルスプリングを有することを特徴とする請求項7記載の車両用スライドドア開閉装置。
【請求項9】
前記ガイド部材を合成樹脂製としたことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の車両用スライドドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスライドドアを自動開閉させるための車両用スライドドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体パネルに固定されるガイドレールと、ガイドレールに開閉方向へ移動可能に支持されると共に、スライドドアに連結される移動部材と、ガイドレールの一端部及び他端部にそれぞれ掛け回されて移動部材に連結されることで、モータの回転を移動部材に対して開閉方向への力として伝達可能なケーブルと、を備えて、モータの動力によるケーブルの移動により、スライドドアを開閉移動させるようにした車両用スライドドア開閉装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、車体パネルに固定されると共に、スライドドアを開閉方向へ移動可能に支持するためのガイドレールと別体構造で、かつ縦断面形状が略C字状のベルトガイド部と、ベルトガイド部により循環移動するようにガイドされる無端ベルトと、無端ベルトに接続されるベルト接続具と、無端ベルトを駆動させるモータと、を備えて、無端ベルトに接続されたベルト接続具をガイドレールに移動可能に組み付けられるアームを介してスライドドアに連結することによって、モータの動力による無端ベルトの循環移動により、スライドドアを開閉移動させるようにした車両用スライドドア開閉装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5796238号公報
【文献】特許第6697826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の車両用スライドドア開閉装置においては、モータを含むドア開閉駆動ユニット及びケーブルを、スライドドアを支持可能な剛性を有して極めて大重量の金属製のガイドレールに直接組み付ける構成であるため、車両用スライドドア開閉装置が大型化して、車両用スライドドア開閉装置の搬送及び車体パネルへの取り付け時におけるハンドリング性の悪化を招く問題がある。
【0006】
特許文献2に開示の車両用スライドドア開閉装置においては、無端ベルトをベルトガイド部に支持する構成であるため、ガイドレールの上側に配置されるベルトガイド部の高さを少なくともベルトを循環移動可能に支持し得る程度のものとしなければならない。そのため、ガイドレールに組み付けられるアームに対して、無端ベルトが上方に大きく離れるため、ベルト接続具を下方へ大きく延出させた形状とする必要がある。しかし、ベルト接続具を下方へ大きく延出させると、無端ベルトの循環移動をアームに効率的に伝達可能とするために、ベルト接続具の強度を高める必要があるが、これは、車両用スライドドア開閉装置の重量増を招き、車両用スライドドア開閉装置の搬送及び車体パネルへの取り付け時におけるハンドリング性の悪化を招くこととなる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、運搬及び車体パネルへの取り付け作業時におけるハンドリング性の向上を可能とした車両用スライドドア開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
車両用スライドドア開閉装置において、スライドドアを車体パネルにスライド可能に支持するためのガイドレールの上面に沿うように前記車体パネルに固定されるガイド部材と、モータにより回転する回転ドラムに巻取り・送り出し可能に巻回されると共に、前記ガイド部材の一端部及び他端部にそれぞれ掛け回されて、前記回転ドラムの回転により前記ガイド部材の長手方向に沿って移動可能なケーブルと、前記ケーブルに連結されると共に、前記ガイドレールに長手方向へ移動可能に組付けられるガイドローラユニットを介して前記スライドドアに連結されるケーブル接続部材と、を備え、前記ガイド部材を、下端面が前記ガイドレールの上面に対向する垂直壁部と、前記垂直壁部の上端から車内方向へ向けて延出する水平部とを有して、縦断面形状を略倒立L字状としたことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記ケーブルにおける前記ガイド部材の車内側に配索される部分を、前記ガイド部材の前記水平部と前記ガイドレールの上面との間に配索する。
【0010】
好ましくは、前記ガイド部材は、前記ケーブルに連結され、かつ前記ガイドローラユニットに未接続状態の前記ケーブル接続部材を所定位置に着脱自在に仮保持可能な保持部を有する。
【0011】
好ましくは、前記保持部を、前記ガイド部材の前記垂直壁部を貫通し、かつ前記ケーブル接続部材に設けた仮保持係合部が嵌合する開口孔とする。
【0012】
好ましくは、前記ケーブル接続部材は、前記保持部に仮保持された状態にあるとき、前記ガイドローラユニットの移動軌跡外に退避した位置に保持される。
【0013】
好ましくは、前記ケーブルを、長さ方向の略中間部が前記回転ドラムに複数回巻き付けられると共に、前記ガイド部材の一端部に掛け回されて前記ケーブル接続部材に連結されるクローズ側ケーブル部と、前記ガイド部材の他端部に掛け回されて前記ケーブル接続部材に連結されるオープン側ケーブル部とを単一のケーブルにより構成する。
【0014】
好ましくは、前記ケーブル接続部材に、前記ケーブルの伸びを吸収するための伸び取り部を設ける。
【0015】
好ましくは、前記伸び取り部は、前記ケーブル接続部材の上下方向を向く支持部に設けられ、前記ケーブルに対して緊張方向への付勢力を付与するコイルスプリングを有する。
【0016】
好ましくは、ガイド部材を合成樹脂製とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、モータの動力をスライドドアに伝達するための要素をケーブルとし、ガイド部材をガイドレールと別構造とし、かつ縦断面形状を略倒立L字型にしたことにより、ガイド部材をガイドレールの上面に近接させて配置して、上下方向においてケーブルとガイドローラユニットとを互いに接近させることができるため、ケーブル接続部材を下方へ大きく延出させた形状とする必要性がないことから、車両用スライドドア開閉装置の軽量化及び小型化を可能にして、ハンドリング性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る車両用スライドドア開閉装置を装着した車両の側面図である。
【
図2】車両用スライドドア開閉装置の分解斜視図及びセンターガイドレールの斜視図である。
【
図3】車両用スライドドア開閉装置及びセンターガイドレールを車外側から見た側面図である。
【
図4】車両用スライドドア開閉装置の車外側から見た側面図である。
【
図5】車両用スライドドア開閉装置の車内側から見た側面図である。
【
図6】
図4において矢示VI方向から見た平面図である。
【
図7】図
3においてVII-VII線拡大縦断面図である。
【
図8】ケーブル接続部材が仮保持状態にあるときの
図7と同様な部位の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではなく、以下の実施形態から当業者が自明の範囲内で適宜変更したものも含む。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用スライドドア開閉装置1は、小型ワゴンタイプの車両2における左側の車体パネル4の内側に配置されると共に、車体パネル4に前後方向へ開閉自在に支持される左側のスライドドア3を後述のモータ8の動力により自動開閉させるものである。
なお、以下の説明における方位は、断りのない限り、車両用スライドドア開閉装置1を車両2に取り付けた状態での方位を指す。
【0021】
スライドドア3は、前上部に取り付けられたアッパーガイドローラユニット31が車体パネル4上部に固定された前後方向へ延伸するアッパーガイドレール41、中央後部に取り付けられたセンターガイドローラユニット32が車体パネル4の上下方向中央部に固定された前後方向へ延伸するセンターガイドレール42、また前下部に取り付けられたロアガイドローラユニット33が車体パネル4下部に固定された前後方向へ延伸するロアガイドレール43にそれぞれ前後方向へ移動自在に組み付けられることにより前後方向に開閉可能に支持される。
【0022】
図2~6に示すように、車両用スライドドア開閉装置1は、車体パネル4の内側に配置され、スライドドア3を自動開閉させるための動力を出力するモータモジュール5と、モータモジュール5が組み付けられると共に、モータモジュール5から出力されるモータ8の動力をスライドドア3に伝達して、スライドドア3を自動開閉作動させるガイドモジュール6とを備える。なお、
図3は、ガイドモジュール6の一部を構成する後述のケーブル接続部材14をセンターガイドローラユニット32に連結した状態の車両用スライドドア開閉装置1及びセンターガイドレール42を示し、
図4~6は、車両用スライドドア開閉装置1のみを示している。
【0023】
(モータモジュール5)
モータモジュール5は、略円筒状の上下方向を向く合成樹脂製のアッパーケーシング7と、当該アッパーケーシング7の上部に取り付けられるモータ8と、アッパーケーシング7内に収容される減速機構9と、を含んで構成される。
【0024】
アッパーケーシング7は、ガイドモジュール6の後述のロアケーシング11の上部に固定される。
【0025】
モータ8は、回転軸が下方へ向くようにアッパーケーシング7の上部に取り付けられる。減速機構9は、モータ8の回転を減速するものであって、モータ8の回転軸に固着された太陽歯車を中心として、複数の遊星歯車が自転しつつ公転する構造の遊星歯車機構によって構成される。好ましくは、モータ8の回転軸と減速機構9との間には、動力伝達経路を接続/切断可能な図示略の電磁クラッチが設けられる。
【0026】
(ガイドモジュール6)
図2~8に示すように、ガイドモジュール6は、センターガイドレール42の上側に配置されて、車体パネル4に固定される合成樹脂製のガイド部材10と、ガイド部材10の車内側を向く部分に設けられるロアケーシング11と、ロアケーシング11内に上下方向を向く軸回りに回転可能に支持される回転ドラム12と、回転ドラム12の外周面に設けられた螺旋溝に巻取り・送り出し可能に巻回されるケーブル13と、ケーブル13をスライドドア3に連結するためのケーブル接続部材14とを有する。
【0027】
ガイド部材10は、平面視においてセンターガイドレール42の長手方向(前後方向)に沿った形状を呈すると共に、特に
図7、8に示すように、センターガイドレール42の上側に配置されると共に、センターガイドレール42の長手方向に沿うように形成されてケーブル13を長手方向にガイドする垂直壁部102と、垂直壁部102の上端から車内方向へ向けて延出する水平部103とを有することで、縦断面形状が略倒立L字状に形成される。
【0028】
さらに、ガイド部材10は、
図7、8に示すように、垂直壁部102の下端面102aがセンターガイドレール42の上面42aに対向するような形態で車体パネル4に固定される。車体パネル4に対するガイド部材10の固定は、ガイド部材10の前部に形成された湾曲部101の前端部(一端部)に設けたフロントブラケット15及びガイド部材10の後端部(他端部)に設けたリアブラケット16を図示略のボルトにより車体パネル4に固定することにより達成される。
【0029】
ガイド部材10の垂直壁部102の後部には、特に、
図2、7、8に示すように、ケーブル13に連結されたケーブル接続部材14をガイド部材10に着脱自在に仮保持するための保持部104が設けられる。保持部104は、垂直壁部102を左右方向(車内外方向)に貫通し、前後方向に所定の開口幅を有する矩形状の開口孔により形成される。保持部104には、ケーブル13に連結されたケーブル接続部材14をセンターガイドローラユニット32に連結するまでの期間、ケーブル接続部材14が
図8に示すような姿勢で仮保持される。ケーブル接続部材14は、上部に設けた仮保持係合部143を保持部104に嵌合させることによりガイド部材10に対して着脱自在に仮保持される。
【0030】
上述のように、ガイド部材10を縦断面略倒立L字状とすることにより、垂直壁部102の下端面102aをセンターガイドレール42の上面42aに接近させることができるため、従来技術のようにガイド部材を縦断面略C字状としたものに比して、ケーブル13をセンターガイドローラユニット32のアーム部32cに対して接近させることが可能となる。これにより、ケーブル接続部材14を下方へ大きく延出させた形状とすることなくセンターガイドローラユニット32のアーム部32cに連結することができるため、車両用スライドドア開閉装置1の小型化、重量を軽減して、ハンドリング性の向上を可能にする。さらには、ガイド部材を縦断面略C字状としたものに比して、ガイド部材10の高さを低くしても、ガイド部材10の水平部103とセンターガイドレール42の上面42aとの間に十分な空間を確保して、当該空間に例えばケーブル13における後述のアウタチューブ13a、13bを配索することができる。
【0031】
回転ドラム12は、ロアケーシング11内に上下方向を向く軸回りに回転可能に支持されると共に、中心部がモータモジュール5における減速機構9の出力軸に連結されることにより、モータ8の回転に伴う減速機構9の減速回転に連動して回転する。
【0032】
ケーブル13は、撓曲可能なアウタチューブ13a、13b内にインナーケーブルが軸方向へ移動可能に挿入されたボーデンケーブルにより構成される。本実施形態の説明においては、ケーブル13は、ボーデンケーブルのインナーケーブルに相当する。
【0033】
ケーブル13は、長さ方向の略中間部が回転ドラム12の外周面に設けられた螺旋溝に複数回巻き付けられて、回転ドラム12が回転することにより、回転ドラム12から前方へ延出するクローズ側ケーブル131、及び後方へ延出するオープン側ケーブル132が巻き取られたり、送り出されたりする。
【0034】
ケーブル13の一端側、すなわちクローズ側ケーブル部131は、ロアケーシング11に設けられたクローズ側導出部111を挿通して前側のアウタチューブ13aから前方へ向けて導出されて、ガイド部材10の湾曲部101の前端に上下方向の軸回りに回転可能に支持されたフロントプーリ17に掛け回されることにより方向転換して後方へ延出すると共に、ガイド部材10の垂直壁部102に案内されてケーブル接続部材14に連結される。本実施形態においては、前側のアウタチューブ13aは、ガイド部材10の水平部103とセンターガイドレール42の上面42aとの間の隙間に収容されるように、前端がガイド部材10に固定され、後端がクローズ側導出部111に固定される。
【0035】
ケーブル13の他端側、すなわちオープン側ケーブル部132は、ロアケーシング11に設けられたオープン側導出部112を挿通して後側のアウタチューブ13bから後方へ向けて導出されて、ガイド部材10の後端に上下方向の軸回りに回転可能に支持されたリアプーリ18に掛け回されることにより方向転換して前方へ延出すると共に、ガイド部材10の垂直壁部102に案内されてケーブル接続部材14に連結される。本実施形態においては、後側のアウタチューブ13bは、ガイド部材10の水平部103とセンターガイドレール42の上面42aとの間の隙間に収容されるように、後端がガイド部材10に固定され、前端がオープン側導出部112に固定される。
【0036】
上述のように、アウタチューブ13a、13b、すなわちケーブル13のうちガイド部材10の車内側に沿って配索される部分を、ガイド部材10の水平部103とセンターガイドレール42の上面42aとの間の隙間に配置することにより、ケーブル13を狭いスペースに配索して、車両用スライドドア開閉装置1のハンドリング性の向上を図ることができる。
【0037】
回転ドラム12は、モータ8の動力により一方向へ回転することにより、クローズ側ケーブル部131を巻き取り、オープン側ケーブル部132を送り出し、また、モータ8の動力により他方向へ回転することにより、オープン側ケーブル部132を巻き取り、クローズ側ケーブル部131を送り出す。
【0038】
クローズ側ケーブル部131が回転ドラム12に巻き取られた場合には、ケーブル接続部材14は、クローズ側ケーブル部131が前方に引っ張られることで、ガイド部材10の長手方向に沿って前方移動する。オープン側ケーブル部132が回転ドラム12に巻き取られた場合には、ケーブル接続部材14は、オープン側ケーブル部132が後方に引っ張られることで、ガイド部材10の長手方向に沿って後方移動する。
【0039】
本実施形態のケーブル13は、長さ方向の略中間部が回転ドラム12に複数回巻き付けられると共に、クローズ側ケーブル部131とオープン側ケーブル部132とを単一のケーブルにより構成される。好ましくは、ケーブル13において、回転ドラム12に巻回される部分に回転ドラム12の外周面に対して回転方向に係合する図示略の係合部を固着する。このように、ケーブル13を単一のケーブルにより構成することにより、回転ドラム12に対する組付け作業を効率的に行うことができ、かつコストの低減を図ることができる。
【0040】
ケーブル接続部材14は、上下方向を向く支持部141と、支持部141の下端から車外方向へ延伸する連結部142と、支持部141の上端から車外方向へ突出する仮保持係合部143と、クローズ側ケーブル部131の端部及びオープン側ケーブル部132の端部がそれぞれ連結される伸び取り部19とを有する。すなわち、クローズ側ケーブル部131及びオープン側ケーブル部132は、伸び取り部19を介してケーブル接続部材14に連結される。
【0041】
ケーブル接続部材14は、センターガイドローラユニット32のアーム部32cに連結されるまでの期間、
図8に示すように、仮保持係合部143が保持部104に着脱自在に嵌合した状態で仮保持され、最終的に、
図7に示すように、連結部142がアーム部32cに図示略のボルトにより連結されることによって、ケーブル13とスライドドア3とを互いに連結する。
【0042】
伸び取り部19は、ケーブル接続部材14における支持部141の車外側を向く側面に固着されると共に、
図4の拡大図で示すように、上向き円弧状の2本の案内溝191と、案内溝191の前後両下部から下方へ真直ぐに延伸する前筒状部192及び後筒状部193とを有する。前筒状部192及び後筒状部193の向きは、本実施形態に限定されるものでなく、後斜め下方または前斜め下方としても良い。
【0043】
クローズ側ケーブル部131は、伸び取り部19の案内溝191にガイドされつつ端部に固着されたエンド部131aが後筒状部193内に挿入されることによって伸び取り部19に連結される。本実施形態においては、エンド部131aを後筒状部193内に上下方向へ移動自在に挿入すると共に、後筒状部193の内部にコイルスプリング194を設けることで、クローズ側ケーブル部131に対して緊張力を付与して、クローズ側ケーブル部131の弛みを吸収可能な構成を備えている。
【0044】
オープン側ケーブル部132は、伸び取り部19の案内溝191にガイドされつつ端部に固着されたエンド部132aが前筒状部192内に挿入されることによって伸び取り部19に連結される。本実施形態においては、エンド部132aを前筒状部192内に上下方向へ移動自在に挿入すると共に、前筒状部192の内部にコイルスプリング195を設けることで、オープン側ケーブル部132に対して緊張力を付与して、オープン側ケーブル部132の弛みを吸収可能な構成を備えている。
【0045】
ケーブル接続部材14は、車両用スライドドア開閉装置1を搬送する期間、及び車体パネル4に対して組付け作業を行う期間、ガイド部材10に対して
図8に示すような仮保持姿勢で保持される。これにより、ケーブル13及びケーブル接続部材14が振れて他部品やスライドドア3に接触する等して傷付けることを未然に防止すると共に、車両用スライドドア開閉装置1のハンドリング性の向上を図ることができる。
【0046】
ケーブル接続部材14は、仮保持姿勢にある場合には、センターガイドローラユニット32の移動軌跡外に退避した位置にある。これにより、車両用スライドドア開閉装置1を車体パネル4に組付けた後、センターガイドローラユニット32をセンターガイドレール42に組み付ける際、センターガイドローラユニット32がケーブル接続部材14に干渉しないので、センターガイドローラユニット32をセンターガイドレール42に容易に組み付けることができる。
【0047】
ケーブル接続部材14をガイド部材10の保持部104に仮保持するには、
図8に示すように、ケーブル接続部材14を正規姿勢(
図7に示す姿勢)から上方へ略120度回転させた姿勢として、この状態で、ケーブル保持部材14の仮保持係合部143をガイド部材10の保持部104に車外側から嵌合すると共に、仮保持係合部143の先端を保持部104の上縁に車内側から係合させ、根元部を保持部104の下縁に車外側から係合させることで、
図8に示すように、車外側へ上斜め方向に略30度に傾いた仮保持姿勢で保持される。
【0048】
ケーブル接続部材14を保持部104から外す場合は、ケーブル保持部材14を
図8に示す仮保持姿勢から上方へ若干回転させつつ車外方向へ引き抜く。これにより、ケーブル接続部材14を保持部104から簡単に外すことができる。この後、ケーブル接続部材14を正規姿勢として、センターガイドレール42に組付けられたセンターガイドローラユニット32のアーム部32cに連結することで、ケーブル13は、ケーブル接続部材14及びセンターガイドローラユニット32を介してスライドドア3に連結される。
【0049】
上述のように、ケーブル接続部材14をガイド部材10に仮保持した場合には、ケーブル13のエンド部131a、132aが正規の軌道経路よりも外側に偏位するため、クローズ側ケーブル部131及びオープン側ケーブル部132をそれぞれ緊張状態として、ケーブル13の振れ、及びケーブル接続部材14の前後方向の不要な移動を抑えることができる。これにより、車両用スライドドア開閉装置1の搬送時及び車体パネル4への組付け時におけるハンドリング性をより向上させることができる。
【0050】
(車両用スライドドア開閉装置1のスライドドア3に対する連結作業)
先ず、ガイド部材10を車体パネル4に予め固定されたセンターガイドレール42の上側に配置して、フロントブラケット15及びリアブラケット16を図示略のボルトにより車体パネル4に固定することで、車両用スライドドア開閉装置1を車体パネル4に組み付ける。
【0051】
車両用スライドドア開閉装置1を車体パネル4に組み付ける作業を行うときには、ケーブル接続部材14は、ガイド部材10の保持部104に仮保持されている。ケーブル接続部材14を保持部104に仮保持することで、車両用スライドドア開閉装置1の搬送、及び車体パネル4への組み付け作業時において、ケーブル13及びケーブル接続部材14の不要な動きが抑えられて、車両用スライドドア開閉装置1のハンドリング性の向上が図られる。また、ケーブル13及びケーブル接続部材14が車体パネル4やスライドドア3に接触して傷付けることも防止できる。
【0052】
車体パネル4に対する車両用スライドドア開閉装置1の組み付けは、モータモジュール5をガイドモジュール6に予め組み付けた状態で行っても良いし、従来技術と同様にモータモジュール5とガイドモジュール6とを分離した形態で、先に、ガイドモジュール6を車体パネル4に組み付け、その後に、モータモジュール5をガイドモジュール6に組み付けるようにしても良い。
【0053】
次いで、スライドドア3に取り付けられた各ガイドローラユニット31、32、33の図示略ガイドローラ(センターガイドローラユニット32については、
図7、8に示す垂直軸回りに回転可能なガイドローラ32a及び水平軸回りに回転可能なガイドローラ32bを示している)をそれぞれ対応する各レール41、42、43に対して後端から挿入する。そして、スライドドア3を前方、すなわち閉方向へ移動させて、センターガイドローラユニット32を保持部104に仮保持されたケーブル接続部材14の位置に合わせる。この場合、ケーブル接続部材14は、仮保持姿勢にあって、センターガイドローラユニット32の移動軌跡外に退避した位置にあるため、センターガイドローラユニット32がケーブル接続部材14に衝突するような事態を回避できる。これにより、センターガイドローラユニット32及びケーブル接続部材14の損傷を防止できる。
【0054】
次いで、専用の治具を車体パネル4とスライドドア3の後端の間の隙間に差し込んで、ケーブル接続部材14を保持部104から取り外して、ケーブル接続部材14を正規姿勢にする。そして、ケーブル接続部材14の連結部142をセンターガイドローラユニット32のアーム部32cに図示略のボルトにより連結する。これにより、ケーブル13とスライドドア3とは、ケーブル接続部材14及びセンターガイドローラユニット32を介して連結される。
【0055】
(車両用スライドドア開閉装置1の作用)
モータ8は、ユーザ携帯のワイヤレスリモートスイッチ又はスライドドア3に設けられるドア開用のドアハンドルの操作に応じて駆動する。また、これに伴って、モータモジュール5のアッパーケーシング7内に設けられた図示略の電磁クラッチは、接続状態になる。これにより、モータ8の動力は、電磁クラッチ、減速機構9及び回転ドラム12を経由して、ケーブル13に伝達される。これにより、クローズ側ケーブル部131またはオープン側ケーブル部132のいずれか一方が回転ドラム12に巻き込まれて、いずれか他方が回転ドラム12から送り出されることで、スライドドア3は、ケーブル接続部材14の移動に伴って、閉位置にあれば開移動し、全開位置にあれば閉移動する。
【0056】
スライドドア3を手動で開閉する場合には、電磁クラッチは非接続状態にある。したがって、スライドドア3の開閉作動は、ケーブル13及び減速機構9には伝達されるが、モータ8には伝達されない。これにより、スライドドア3を軽力で手動開閉移動できる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更及び組み合わせを施すことが可能である。
【0058】
(1)ケーブル接続部材14の仮保持姿勢を、車外側斜め上方を向く姿勢に代えて、垂直方向、又は水平方向とする。
【0059】
(2)保持部104を車内外方向に貫通する開口孔に代えて、上下方向又は斜め方向を向く開口孔とする。
【0060】
(3)車両用スライドドア開閉装置1を車体下部に設けて、ケーブル13をロアガイドローラユニット33に連結する。
【符号の説明】
【0061】
1 車両用スライドドア開閉装置 2 車両
3 スライドドア 31 アッパーガイドローラユニット
32 センターガイドローラユニット 32a、32b ガイドローラ
32c アーム部 33 ロアガイドローラユニット
4 車体パネル 41 アッパーガイドレール
42 センターガイドレール 42a 上面
43 ロアガイドレール 5 モータモジュール
6 ガイドモジュール 7 アッパーケーシング
8 モータ 9 減速機構
10 ガイド部材 101 湾曲部
102 垂直壁部 102a 下端面
103 水平部 104 保持部
11 ロアケーシング 111 クローズ側導出部
112 オープン側導出部 12 回転ドラム
13 ケーブル 13a、13b アウタチューブ
131 クローズ側ケーブル部 131a エンド部
132 オープン側ケーブル部 132a エンド部
14 ケーブル接続部材 141 支持部
142 連結部 143 仮保持係合部
15 フロントブラケット 16 リアブラケット
17 フロントプーリ 18 リアプーリ
19 伸び取り部 191 案内溝
192 前筒状部 193 後筒状部
194、195 コイルスプリング