(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】管の内層構造及びその内層構造を構成する内面材の敷設方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
E03F7/00
(21)【出願番号】P 2021035207
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】建部 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】森田 佳伸
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5746443(JP,B2)
【文献】特開2020-100098(JP,A)
【文献】特開平03-169617(JP,A)
【文献】米国特許第05152263(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00- 7/12
B29C 63/00-63/48
F16L 1/00- 1/26
F16L 5/00- 7/02
F16L 51/00-55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向に延びる複数の内面材が、該内面材同士の端部が重なりながら管周方向の一方側に向かって敷設されることで形成される管の内層構造であって、
内側に被嵌着部を備え、管周方向に配設され、管内に固定される内面材固定部材と、
一の内面材と、
該一の内面材に対して、管周方向の一方側に配設される他の内面材を有し、
前記一の内面材は、
外側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、
管周方向の一方側の端部において、内側に向かって延び、さらに管周方向の他方側に突出する突片を備える第一の被係合部を備え、
前記他の内面材は、
外側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、
管周方向の他方側の端部において、外側に向かって延び、さらに管周方向の一方側に突出する突片を備える第一の係合部を備え、
前記一の内面材の第一の被係合部と、前記他の内面材の第一の係合部とが係合して、第一の係合部位を構成し、
一対の係合部と被係合部との関係において、係合部は被係合部の管周方向の他方側にのみ配置される、
ことを特徴とする管の内層構造。
【請求項2】
前記一の内面材は第二の被係合部を、前記他の内面材は第二の係合部を備えることで、第二の係合部位を有し、
前記第二の係合部位は、前記第一の係合部位よりも管周方向の一方側に配設され、
前記第一の係合部位と第二の係合部位との間に、弾性材が配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載の管の内層構造。
【請求項3】
前記他の内面材の嵌着部は、前記第二の係合部位よりも管周方向の一方側に配置され、
前記弾性材は、前記第一の係合部位よりも、前記第二の係合部位に近接して配設される、
ことを特徴とする請求項2に記載の管の内層構造。
【請求項4】
前記他の内面材は、前記第一の係合部の他方側において、管周方向の
他方側及び内側に向かって延び、前記一の内面材に対して摺動可能な摺動部を備える、
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の管の内層構造。
【請求項5】
管軸方向に延びる複数の内面材が、該内面材同士の端部が重なりながら管周方向の一方側に向かって敷設されることで形成される管の内面材の敷設方法であって、
内側に被嵌着部を備え、管周方向に配設され、管内に固定される内面材固定部材と、
一の内面材と、
該一の内面材に対して、管周方向の一方側に配設される他の内面材を有し、
前記一の内面材は、
外側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、
管周方向の一方側の端部において、内側に向かって延び、さらに管周方向の他方側に突出する突片を備える第一の被係合部とを備え、
前記他の内面材は、
外側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、
管周方向の他方側の端部において、外側に向かって延び、さらに管周方向の一方側に突出する突片を備える第一の係合部とを備え、
前記一の内面材の第一の被係合部と、前記他の内面材の第一の係合部とが係合して、第
一の係合部位を構成し、
一対の係合部と被係合部との関係において、係合部は被係合部の管周方向の他方側にのみ配置され、
前記他の内面材の嵌着部が前記内面材固定部材に嵌着された後に、
前記一の内面材の第一の被係合部と他の内面材の第一の係合部とが係合するようにする、
ことを特徴とする内面材の敷設方法。
【請求項6】
前記一の内面材は第二の被係合部を、前記他の内面材は第二の係合部を備えることで、第二の係合部位を有し、
前記第二の係合部位は、前記第一の係合部位よりも管周方向の一方側に配設され、
前記第一の係合部位と第二の係合部位との間に、弾性材が配設され、
前記他の内面材の嵌着部が前記内面材固定部材に嵌着された後に、
前記一の内面材の第二の被係合部と他の内面材の第二の係合部とが係合し、その後、
前記一の内面材の第一の被係合部と他の内面材の第一の係合部とが係合するようにする、
ことを特徴とする請求項5に記載の内面材の敷設方法。
【請求項7】
前記他の内面材の嵌着部は、前記第二の係合部位よりも管周方向の一方側に配置され、
前記弾性材は、前記第一の係合部位よりも、前記第二の係合部位に近接して配設される、
ことを特徴とする請求項6に記載の内面材の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、既設管の補修や新設管の内表面の仕上げ等のために、管の内周面側に内面材を内張りするようにした管の内層構造及びその内層構造を構成する内面材の敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した下水道管等の既設管の補修構造として、既設管の内面を内張り材で全面的に覆う既設管の補修構造が数多く提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
このうち、特許文献1に記載のものは、組み立てることにより管状、角形又は馬蹄形の筒状体を構成する、内周面を構成する内面板と、該内面板の周縁に立設された外周板とをプラスチックによって一体に形成した流路施設修復用ブロック体を用いて施工されるものであり、また、特許文献2に記載のものは、既設管路内に、当該既設管路内面に略沿った中空骨組み状補強材が配置され、その補強材の内側に、既設管路の筒長方向並びに周方向にそれぞれ複数の内面部材が連続的に取り付けられて筒状に組み立てられているとともに、既設管路の筒長方向に隣接している内面部材同士は、互いの端面が当接した状態で、双方の内面部材に跨って配置された内面材連接材により相互に連結されてなり、内面部材と既設管路内面との間に硬化性充填材が充填されてなるものである。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、合成樹脂製のブロック体を使用するために高価な金型を必要とすることから、コストがかかり、また、数多くのブロック体の組み立てに多大な手間を要するものであり、また、特許文献2に記載のものは、既設管路の補修長が長くなるに従い、内面部材及び嵌合部材を筒長方向に連続したものを使用しようとする場合の輸送上又は製造設備上、製造現場における設置スペース等の問題を解決するものの、既設管路内に中空骨組み状の補強材を配置するのに補強材が多数の部材からなり補強材を既設管路内で組み立てるのに多大な手間を要し、また、内面部材の数も多くこれを同様に数の多い嵌合部材に係止するのに多大な手間を要するものとなっている。
【0004】
一方、このような実情に鑑み、経済的な部材を用い、その組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化し、かつ、作業完了後においても長期に亘って耐久性のある既設管の補修構造として、既設管の内周面の周方向に沿って、管軸方向に所定の間隔をあけて配設した剛性リングと、これら剛性リングの内側に跨るように管軸方向に、剛性リングの周方向に所定の間隔をあけて配設した既設管の中心側に所定の間隔をあけて形成した切欠きを有する剛性直材と、該剛性直材の切欠きに対応する突条を有する帯状の合成樹脂製内面材とからなり、前記合成樹脂製内面材の突条を剛性直材の切欠きに嵌着することにより、合成樹脂製内面材を既設管の内周面の周方向に沿って、かつ、管軸方向に隙間なく順次配設し、既設管と合成樹脂製内面材との間に生じる空隙に硬化性充填材を充填したものも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載のものは、合成樹脂製内面材が既設管の内周面の周方向に沿って配設されるものであるため、内面材を管軸方向に凹凸を生じないように精度高く配設することができず、既設管路の補修長が長くなるに従い、内面材の配設の手数がかかるという問題があった。
【0006】
この問題に対処するため、本件出願人らは、
図1~
図2に示すように、管1の内周面に沿って、管軸方向に間隔をあけて設置した固定部材2と、固定部材2に配設した内面材固定部材3と、管軸方向に隣接する内面材固定部材3間に架設した帯状の内面材4とからな
る管の内層構造を提案した(特許文献4参照。)。
【0007】
ところで、この管の内層構造は、内面材を精度高く配設することを可能にしながら、内面材を含む、構成部材の組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化し、かつ、作業完了後においても長期に亘って耐久性のある管の内層構造を提供するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-286742号公報
【文献】特開2002-310378号公報
【文献】特開2006-316539号公報
【文献】特許第5746443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献4に記載の管の内層構造は、
図1~
図2に示すように、既設管1の内周面に沿って、既設管1の管軸方向に間隔をあけて設置した固定部材2と、この固定部材2に配設した、内面材4が嵌着される被嵌着部31及び固定部材2に設置するための嵌着部32を備えた内面材固定部材3と、この内面材固定部材3の被嵌着部31に嵌着して、既設管1の管軸方向に隣接する固定部材2に架設した内面材4とからなり、既設管1の内周面と内面材4によって区画された環状の隙間にモルタル6を注入、硬化させて、施工を完了するようにしている。
【0010】
内面材4は、既設管1の周方向に隣接する内面材4の既設管1の周方向の両端部同士を突き合わせた状態で内面材連接材5を介して連結するようにしたり(
図2(a)~(c))、既設管1の周方向に隣接する内面材4同士を、内面材4の既設管1の周方向の両端部に形成した嵌合部を介して連結するようにしたり(
図2(d))するようにするとともに、内面材4の連結部40には、弾性材7を配設し、止水を行うようにしている。
このうち、
図2(d)に記載の構造は、内面材連接材5を使用しないため、内面材4の構成を簡略化できる利点を有しているが、嵌合部は、管周方向の一方側と他方側とから挟み込むように係合されるため、内面材の係合に大きな力を要し、作業性の点において改善の余地があった。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、内面材連接材を使用しないようにすることで、内面材の構成を簡略化できるようにするとともに、内面材を係合する作業に大きな力を要さず、作業性を向上することができる管の内層構造及びその内層構造を構成する内面材の敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の管の内層構造は、
管軸方向に延びる複数の内面材が、該内面材同士の端部が重なりながら管周方向の一方側に向かって敷設されることで形成される管の内層構造であって、
内側に被嵌着部を備え、管周方向に配設され、管内に固定される内面材固定部材と、
一の内面材と、
該一の内面材に対して、管周方向の一方側に配設される他の内面材を有し、
前記一の内面材は、
外側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、
管周方向の一方側の端部において、内側に向かって延び、さらに管周方向の他方側に突出する突片を備える第一の被係合部を備え、
前記他の内面材は、
外側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、
管周方向の他方側の端部において、外側に向かって延び、さらに管周方向の一方側に突出する突片を備える第一の係合部を備え、
前記一の内面材の第一の被係合部と、前記他の内面材の第一の係合部とが係合して、第一の係合部位を構成し、
一対の係合部と被係合部との関係において、係合部は被係合部の管周方向の他方側にのみ配置される、
ことを特徴とする。
【0013】
この場合において、前記一の内面材は第二の被係合部を、前記他の内面材は第二の係合部を備えることで、第二の係合部位を有し、
前記第二の係合部位は、前記第一の係合部位よりも管周方向の一方側に配設され、
前記第一の係合部位と第二の係合部位との間に、弾性材が配設されるようにすることができる。
【0014】
また、前記他の内面材の嵌着部は、前記第二の係合部位よりも管周方向の一方側に配置され、
前記弾性材は、前記第一の係合部位よりも、前記第二の係合部位に近接して配設されるようにすることができる。
【0015】
また、前記他の内面材は、前記第一の係合部の他方側において、管周方向の一方側及び内側に向かって延び、前記一の内面材に対して摺動可能な摺動部を備えるようにすることができる。
【0016】
また、同じ目的を達成するため、本発明の管の内面材の敷設方法は、
管軸方向に延びる複数の内面材が、該内面材同士の端部が重なりながら管周方向の一方側に向かって敷設されることで形成される管の内層構造であって、
内側に被嵌着部を備え、管周方向に配設され、管内に固定される内面材固定部材と、
一の内面材と、
該一の内面材に対して、管周方向の一方側に配設される他の内面材を有し、
前記一の内面材は、
外側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、
管周方向の一方側の端部において、内側に向かって延び、さらに管周方向の他方側に突出する突片を備える第一の被係合部とを備え、
前記他の内面材は、
外側に前記内面材固定部材の被嵌着部と嵌着する嵌着部と、
管周方向の他方側の端部において、外側に向かって延び、さらに管周方向の一方側に突出する突片を備える第一の係合部とを備え、
前記一の内面材の第一の被係合部と、前記他の内面材の第一の係合部とが係合して、第一の係合部位を構成し、
一対の係合部と被係合部との関係において、係合部は被係合部の管周方向の他方側にのみ配置され、
前記他の内面材の嵌着部が前記内面材固定部材に嵌着された後に、
前記一の内面材の第一の被係合部と他の内面材の第一の係合部とが係合するようにする、
ことを特徴とする。
【0017】
この場合において、前記一の内面材は第二の被係合部を、前記他の内面材は第二の係合部を備えることで、第二の係合部位を有し、
前記第二の係合部位は、前記第一の係合部位よりも管周方向の一方側に配設され、
前記第一の係合部位と第二の係合部位との間に、弾性材が配設され、
前記他の内面材の嵌着部が前記内面材固定部材に嵌着された後に、
前記一の内面材の第二の被係合部と他の内面材の第二の係合部とが係合し、その後、
前記一の内面材の第一の被係合部と他の内面材の第一の係合部とが係合するようにすることができる。
【0018】
また、前記他の内面材の嵌着部は、前記第二の係合部位よりも管周方向の一方側に配置され、
前記弾性材は、前記第一の係合部位よりも、前記第二の係合部位に近接して配設されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の管の内層構造及びその内層構造を構成する内面材の敷設方法によれば、内面材連接材を使用しない、単一構造の内面材を使用することで、内面材の構成を簡略化できるとともに、内面材を係合する作業に大きな力を要さず、作業性を向上することができる。
【0020】
また、第一の係合部位と第二の係合部位を有するとともに、その間に、弾性材が配設されるようにすることにより、より強固な内層構造を形成でき、良好な止水性を発現することができる。
【0021】
また、他の内面材の嵌着部は、第二の係合部位よりも管周方向の一方側に配置され、弾性材は、前記第一の係合部位よりも、前記第二の係合部位に近接して配設されるようにすることにより、第二の係合部位により弾性材の反発力を吸収でき、第一の係合部位の係合を容易に行うことができる。
【0022】
また、他の内面材は、第一の係合部の他方側において、管周方向の一方側及び内側に向かって延び、一の内面材に対して摺動可能な摺動部を備えるようにすることにより、他の内面材の係合動作をサポートし、容易に係合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来の管の内層構造の一実施例を示し、(a)は管の横断面図、(b)は管の横断面の拡大図、(c)は管の縦断面の拡大図である。
【
図2】同固定部材、内面材固定部材、内面材及び内面材連接材を組み立てた状態を示し、(a)は管の横断面方向の説明図(固定部材省略)、(b)は管の縦断面方向の説明図(内面材及び内面材連接材省略)、(c)は管の横断面方向の要部の説明図、(d)は異なる例の管の横断面方向の要部の説明図である。
【
図3】本発明の管の内層構造の内面材固定部材及び内面材を組み立てた状態の一実施例を示す管の横断面方向の説明図である。
【
図4】同内面材を示し、(a)は全体図、(b)は(a)のB部の拡大図、(c)は(a)のC部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の管の内層構造及びその内層構造を構成する内面材の敷設方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明の管の内層構造は、
図1~
図2に示す、従来の管の内層構造と同様の基本構造を有するとともに、内面材連接材を使用しないようにすることで、内面材の構成を簡略化できるようにしたものである。
【0026】
本発明の管の内層構造及びその内層構造を構成する内面材の敷設方法の一実施例を、図
3~
図4に示す。
【0027】
<管の内層構造の説明>
以下、管の内層構造について説明する。
この管の内層構造は、管軸方向に延びる複数の内面材4が、内面材4同士の端部が重なりながら管周方向の一方側に向かって敷設されることで形成されるもので、内側に被嵌着部31を備え、管周方向に配設され、嵌着部32を介して固定部材2に設置されることで管1内に固定される内面材固定部材3と、一の内面材4Aと、一の内面材4Aに対して、管周方向の一方側に配設される他の内面材4Bを有するものである。
ここで、「一の内面材4A」、「他の内面材4B」は、内面材4同士の端部が重なりながら管周方向の一方側に向かって周状に敷設される複数の内面材4のうちの管周方向の他方側の内面材4を「一の内面材4A」と、一方側の内面材4を「他の内面材4B」と、便宜的に定義したものである。
そして、一の内面材4Aは、外側に内面材固定部材3の被嵌着部31と嵌着する嵌着部41と、管周方向の一方側の端部において、内側に向かって延び、さらに管周方向の他方側に突出する突片42aを備える第一の被係合部42を備えるようにしている。
また、他の内面材4Bは、外側に内面材固定部材3の被嵌着部31と嵌着する嵌着部41と、管周方向の他方側の端部において、外側に向かって延び、さらに管周方向の一方側に突出する突片43aを備える第一の係合部43を備えるようにしている。
これにより、一の内面材4Aの第一の被係合部42と、他の内面材4Bの第一の係合部43とが係合して、第一の係合部位を構成し、一対の係合部43と被係合部42との関係において、係合部43は被係合部42の管周方向の他方側にのみ配置されるようにしている。
【0028】
これにより、管1内で内面材4の内面材固定部材3に対する固定と、内面材4同士の連結が、内面材連接材を使用することなく、内面材のみで可能となり、単一構造の内面材4を使用することで、内面材4の構成を簡略化できるとともに、内面材4を係合する作業に大きな力を要さず、作業性を向上することができる。
【0029】
ところで、本実施例において、一の内面材4Aは第二の被係合部44を、他の内面材4Bは第二の係合部45を備えることで、第二の係合部位を有し、第二の係合部位は、第一の係合部位よりも管周方向の一方側に配設され、さらに、第一の係合部位と第二の係合部位との間に、内面材4の連結部40の止水を行う弾性材7を配設するようにしている。
ここで、一の内面材4Aの第二の被係合部44は、管周方向の他方側に突出する突片44aを備え、他の内面材4Bの第二の係合部45は、管周方向の一方側に突出する突片45aを備えるようにしている。
これにより、一の内面材4Aの第二の被係合部44と、他の内面材4Bの第二の係合部45とが係合して、第二の係合部位を構成し、一対の係合部45と被係合部44との関係において、係合部45は被係合部44の管周方向の他方側にのみ配置されるようにしている。
また、弾性材7は、他の内面材4Bの第一の係合部43と第二の係合部45の間に配設されるようにし、これに対向するように、一の内面材4Aの第一の被係合部42と第二の被係合部44の間に弾性材7に当接して押圧する突条部46を形成するようにしている。なお、弾性材7と突条部46は、一の内面材と他の内面材のどちらに設けられてもよい。
ここで、弾性材7には、突条部46によって押圧されることで圧縮され、止水性を発現するエラストマ材を好適に用いることができる。
これにより、より強固な内層構造を形成でき、良好な止水性を発現することができる。
【0030】
ここで、内面材固定部材3の被嵌着部31と嵌着する他の内面材4Bの嵌着部41は、第二の係合部位である第二の係合部45よりも管周方向の一方側に配置され、弾性材7は
、第一の係合部位である第一の係合部43よりも、第二の係合部位である第二の係合部45に近接して配設するようにしている。
これにより、第二の係合部位の係合作用によって、弾性材7の反発力を吸収でき、第一の係合部位の係合を容易に行うことができる。
【0031】
また、他の内面材4Bは、第一の係合部である第一の係合部43の他方側において、管周方向の他方側及び内側に向かって延び、一の内面材4Aの被摺動部48に対して摺動可能な摺動部47を備えるようにしている。
この摺動部47(及び被摺動部48)は、本実施例に示すような、傾斜部のほか、曲面部等で構成することができる。
これにより、他の内面材4Bの係合動作をサポートし、係合を容易に行うことができる。
【0032】
<管の内層構造を構成する内面材の敷設方法の説明>
以下、この管の内層構造を構成する内面材の敷設方法について説明する。
まず、一の内面材4Aの嵌着部41を内面材固定部材3の被嵌着部31に嵌着することにより、一の内面材4Aを敷設する。
次に、他の内面材4Bを以下の工程で敷設する。
工程1:他の内面材4Bの嵌着部41を内面材固定部材3の被嵌着部31に嵌着する。
工程2:一の内面材4Aの第二の被係合部44と他の内面材4Bの第二の係合部45とが係合するようにする。
工程3:一の内面材4Aの第一の被係合部42と他の内面材4Bの第一の係合部43とが係合するようにする。
このように、一の内面材4A及び他の内面材4Bを内面材固定部材3に嵌着することで、内面材4A、4Bの位置決めをした状態で、内面材4A、4B同士の係合を行うようにすることにより、内面材4A、4B同士の係合を正確かつ円滑に行うことができる。
また、一の内面材4Aの第一の被係合部42と他の内面材4Bの第一の係合部43とが係合する第一の係合部位と、一の内面材4Aの第二の被係合部44と他の内面材4Bの第二の係合部45とが係合する第二の係合部位を有するとともに、その間に、弾性材7が配設されるようにすることにより、より強固な内層構造を形成でき、良好な止水性を発現することができる。
そして、他の内面材4Bの嵌着部41は、一の内面材4Aの第二の被係合部44と他の内面材4Bの第二の係合部45とが係合する第二の係合部位よりも管周方向の一方側に配置され、弾性材7は、一の内面材4Aの第一の被係合部42と他の内面材4Bの第一の係合部43とが係合する第一の係合部位よりも、第二の係合部位に近接して配設されるようにすることにより、第二の係合部位の係合作用によって、弾性材7の反発力を吸収でき、第一の係合部位の係合を容易に行うことができる。
以下同様に、複数の内面材4を、内面材4同士の端部が重なりながら管周方向の一方側に向かって周状に敷設するようにする。
【0033】
以上、本発明の管の内層構造及びその内層構造を構成する内面材の敷設方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の管の内層構造及びその内層構造を構成する内面材の敷設方法は、内面材の構成を簡略化できるようにするとともに、内面材を係合する作業に大きな力を要さず、作業性を向上することができることから、老朽化した下水道管等の既設管の補修の際に用いられる内面材の内張り作業の用途に好適に用いることができるほか、例えば、新設管の内表面
の仕上げの際に用いられる内面材の内張り作業の用途にも用いることができ、特に、内面材が合成樹脂製である場合に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 既設管
2 固定部材
3 内面材固定部材
31 被嵌着部
32 嵌着部
4 内面材
40 連結部
41 嵌着部
42 第一の被係合部
43 第一の係合部
44 第二の被係合部
45 第二の係合部
46 突条部
47 摺動部
48 被摺動部
5 内面材連接材
6 モルタル
7 弾性材