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特許7586395到達圏提示装置、到達圏提示方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】到達圏提示装置、到達圏提示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20241112BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G09B29/00 F
G09B29/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020129332
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026053
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡 正和
(72)【発明者】
【氏名】金城 陽平
(72)【発明者】
【氏名】中西 紀子
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-044256(JP,A)
【文献】特開2010-236869(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145184(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00-29/14
G01C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動開始地点と移動時間とユーザの属性に応じた移動手段とが少なくとも指定された要求を受信すると、予め決められた地図上の範囲を覆うように重畳なく定義されているメッシュ領域のうち、前記移動開始地点が含まれるメッシュ領域を特定する特定部と、
前記メッシュ領域を通過する際の所要時間を用いて、前記特定部により特定されたメッシュ領域を起点として、前記ユーザの属性に応じた移動手段により前記移動時間内に到達可能なメッシュ領域の集合を計算する計算部と、
前記計算部により計算されたメッシュ領域の集合によって表される領域を、前記要求の送信元の装置に返信する返信部と、
を有し、
前記ユーザの属性に応じた移動手段は、前記ユーザの性別及び年齢層の少なくとも一方が少なくとも含まれる属性と前記移動手段との組で表される、到達圏提示装置。
【請求項2】
前記メッシュ領域を通過する際の所要時間は、前記メッシュ領域を通過する際の方向毎に定義されている、請求項に記載の到達圏提示装置。
【請求項3】
前記計算部は、
前記特定部により特定されたメッシュ領域を起点として、前記起点から自身に到達するまでに通過する他のメッシュ領域の所要時間の合計が前記移動時間以内であるメッシュ領域の集合を計算する、請求項1又は2に記載の到達圏提示装置。
【請求項4】
移動開始地点と移動時間とユーザの属性に応じた移動手段とが少なくとも指定された要求を受信すると、予め決められた地図上の範囲を覆うように重畳なく定義されているメッシュ領域のうち、前記移動開始地点が含まれるメッシュ領域を特定する特定手順と、
前記メッシュ領域を通過する際の所要時間を用いて、前記特定手順で特定されたメッシュ領域を起点として、前記ユーザの属性に応じた移動手段により前記移動時間内に到達可能なメッシュ領域の集合を計算する計算手順と、
前記計算手順で計算されたメッシュ領域の集合によって表される領域を、前記要求の送信元の装置に返信する返信手順と、
をコンピュータが実行し、
前記ユーザの属性に応じた移動手段は、前記ユーザの性別及び年齢層の少なくとも一方が少なくとも含まれる属性と前記移動手段との組で表される、到達圏提示方法。
【請求項5】
移動開始地点と移動時間とユーザの属性に応じた移動手段とが少なくとも指定された要求を受信すると、予め決められた地図上の範囲を覆うように重畳なく定義されているメッシュ領域のうち、前記移動開始地点が含まれるメッシュ領域を特定する特定手順と、
前記メッシュ領域を通過する際の所要時間を用いて、前記特定手順で特定されたメッシュ領域を起点として、前記ユーザの属性に応じた移動手段により前記移動時間内に到達可能なメッシュ領域の集合を計算する計算手順と、
前記計算手順で計算されたメッシュ領域の集合によって表される領域を、前記要求の送信元の装置に返信する返信手順と、
をコンピュータに実行させ
前記ユーザの属性に応じた移動手段は、前記ユーザの性別及び年齢層の少なくとも一方が少なくとも含まれる属性と前記移動手段との組で表される、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、到達圏提示装置、到達圏提示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動開始地点と移動時間と移動手段(例えば、自動車や徒歩等)とが指定されると、当該移動開始地点から出発して、当該移動手段によって当該移動時間内に到達可能な範囲内の領域(以下、「到達圏」ともいう。)を提示する技術が従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-156377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、経路ネットワークのリンクコストを用いた経路探索処理を並列に実行させることで到達圏を計算している。このため、指定された移動時間が長い場合には多くの計算コストが必要となり、到達圏を提示するまでに時間を要することがある。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記の点に鑑みてなされたもので、迅速に到達圏を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、一実施形態に係る到達圏提示装置は、移動開始地点と移動時間とが少なくとも指定された要求を受信すると、予め決められた地図上の範囲を覆うように重畳なく定義されているメッシュ領域のうち、前記移動開始地点が含まれるメッシュ領域を特定する特定部と、前記メッシュ領域を通過する際の所要時間を用いて、前記特定部により特定されたメッシュ領域を起点として前記移動時間内に到達可能なメッシュ領域の集合を計算する計算部と、前記計算部により計算されたメッシュ領域の集合によって表される領域を、前記要求の送信元の装置に返信する返信部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
迅速に到達圏を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一の実施形態に係る到達圏提示システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】第一の実施形態に係る到達圏提示サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】第一の実施形態に係る到達圏提示サーバの機能構成の一例を示す図である。
図4】メッシュDBの一例を示す図である。
図5】所要時間の一例を説明するための図である。
図6】第一の実施形態に係る到達圏提示処理の一例を示すフローチャートである。
図7】到達圏内メッシュID列の計算の一例を説明するための図である。
図8】到達圏の一例を示す図である。
図9】第二の実施形態に係る到達圏提示サーバの機能構成の一例を示す図である。
図10】到達圏内メッシュID列DBの一例を示す図である。
図11】第二の実施形態に係る到達圏提示処理の一例を示すフローチャートである。
図12】応用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態については説明する。以降では、移動開始地点と移動時間と移動手段(例えば、自動車や徒歩等)とが指定された場合に、迅速に到達圏を提示することができる到達圏提示システム1について説明する。
【0010】
[第一の実施形態]
まず、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0011】
<到達圏提示システム1の全体構成>
本実施形態に係る到達圏提示システム1の全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、第一の実施形態に係る到達圏提示システム1の全体構成の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る到達圏提示システム1には、到達圏提示サーバ10と、クライアント20とが含まれる。これらは、任意の通信ネットワーク(例えば、インターネットや構内LAN(Local Area Network)等)を介して相互に通信可能に接続される。
【0013】
到達圏提示サーバ10は、クライアント20からの要求に応じて、到達圏を提示するコンピュータ又はコンピュータシステムである。すなわち、到達圏提示サーバ10は、当該要求で指定されている移動開始地点と移動時間と移動手段とを用いて、当該移動開始地点から出発して、当該移動手段によって当該移動時間内に到達可能な範囲内の領域を到達圏としてクライアント20に提示する。このとき、到達圏提示サーバ10は、メッシュ領域(以下、単に「メッシュ」ともいう。)に定義されている移動手段毎の所要時間を用いて、移動開始地点を含むメッシュからの所要時間の合計が移動時間を超えないメッシュの集合で表される領域を到達圏とする。なお、メッシュとは予め決められた矩形領域(例えば、25m×25m領域)のことであり、予め決められた地図上の全ての範囲を覆うように重畳なく定義される。
【0014】
クライアント20は、到達圏提示サーバ10から返信された到達圏を地図上に表示するコンピュータ又はコンピュータシステムである。クライアント20としては、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)、スマートフォン、タブレット端末等が用いられる。なお、クライアント20には地図及びこの地図上に重畳される到達圏を表示可能なアプリケーション(例えば、Webブラウザや専用のアプリケーション等)がインストールされているものとする。
【0015】
<到達圏提示サーバ10のハードウェア構成>
次に、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10のハードウェア構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、第一の実施形態に係る到達圏提示サーバ10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0016】
図2に示すように、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は一般的なコンピュータ又はコンピュータシステムにより実現され、ハードウェアとして、入力装置101と、表示装置102と、外部I/F103と、通信I/F104と、プロセッサ105と、メモリ装置106とを有する。これら各ハードウェアは、それぞれがバス107を介して通信可能に接続されている。
【0017】
入力装置101は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等である。表示装置102は、例えば、ディスプレイ等である。なお、到達圏提示サーバ10は、入力装置101及び表示装置102のうちの少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0018】
外部I/F103は、記録媒体等の外部装置とのインタフェースである。なお、記録媒体としては、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、SDメモリカード(Secure Digital memory card)、USB(Universal Serial Bus)メモリカード等が挙げられる。
【0019】
通信I/F104は、到達圏提示サーバ10を通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。プロセッサ105は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算装置である。メモリ装置106は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の各種記憶装置である。
【0020】
本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は、図2に示すハードウェア構成を有することにより、後述する到達圏提示処理を実現することができる。なお、図2に示すハードウェア構成は一例であって、到達圏提示サーバ10は、他のハードウェア構成を有していてもよい。例えば、到達圏提示サーバ10は、複数のプロセッサ105を有していてもよいし、複数のメモリ装置106を有していてもよい。
【0021】
<到達圏提示サーバ10の機能構成>
次に、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10の機能構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、第一の実施形態に係る到達圏提示サーバ10の機能構成の一例を示す図である。
【0022】
図3に示すように、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は、機能部として、通信部201と、起点特定部202と、到達圏計算部203と、表示情報作成部204とを有する。これら各機能部は、到達圏提示サーバ10にインストールされた1以上のプログラムが、プロセッサ105に実行させる処理等により実現される。
【0023】
また、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は、記憶部として、メッシュDB301を有する。当該記憶部は、例えば、メモリ装置106等により実現される。ただし、当該記憶部は、例えば、到達圏提示サーバ10と通信ネットワークを介して接続されるデータベースサーバ等により実現されてもよい。
【0024】
通信部201は、クライアント20からの要求を受信したり、この要求に対する返信を当該クライアント20に送信したりする。クライアント20からの要求には、到達圏の表示要求がある。到達圏の表示要求は、クライアント20で到達圏表示サービスの利用開始操作が行われた場合等に、クライアント20から到達圏提示サーバ10に送信される。また、到達圏の表示要求に対する返信としては、クライアント20のディスプレイ上に表示されている地図上に到達圏を重畳表示させるための表示情報がある。
【0025】
ここで、到達圏の表示要求には、移動開始地点と、移動時間と、移動手段とが少なくとも指定されているものとする。なお、移動開始地点とは到達圏の起点となる位置を示す情報であり、例えば、緯度及び経度で表される。移動時間とは到達圏を計算する際に用いられる時間であり、移動開始地点を起点として、この移動時間内に到達可能な範囲が到達圏となる。移動手段とは到達圏を計算する際に用いられるメッシュの所要時間を特定するための情報であり、ユーザが移動する際に用いる移動の手段又は方法を表す。移動手段としては、例えば、自動車、徒歩、自転車等がある。ただし、移動手段としては、これら以外にも、例えば、ユーザの属性を考慮した移動手段(具体的には、徒歩(男)、徒歩(女)、徒歩(子ども)、徒歩(ゆっくり)、徒歩(早歩き)等)があってもよい。
【0026】
起点特定部202は、メッシュDB301を参照して、通信部201によって受信された到達圏の表示要求に指定されている移動開始地点を含むメッシュ(以下、「起点メッシュ」ともいう。)を特定する。なお、後述するように、メッシュDB301には、メッシュ毎に、当該メッシュを識別する識別情報(以下、「メッシュID」という。)と、当該メッシュが表す領域を特定するための情報と、当該メッシュを各移動手段で通過する際に要する所要時間とが格納されている。また、後述するように、メッシュを通過する際に要する所要時間は通過方向によって異なり得る。
【0027】
到達圏計算部203は、メッシュDB301を参照して、起点特定部202によって特定された起点メッシュを起点として当該表示要求に指定されている移動手段で、当該表示要求に指定されている移動時間内に到達可能なメッシュを計算する。すなわち、到達圏計算部203は、起点メッシュからの所要時間の合計が移動時間を超えないメッシュのメッシュID列(以下、「到達圏内メッシュID列」ともいう。)を計算する。到達圏内メッシュID列は起点メッシュから移動時間内にある或るメッシュまでの1つのルートを表し、到達圏は、これらの到達圏内メッシュID列によって識別されるメッシュの集合により表される。
【0028】
表示情報作成部204は、到達圏計算部203によって計算されたメッシュID列を用いて、クライアント20のディスプレイ上に表示されている地図に到達圏を重畳表示させるための表示情報を作成する。これにより、クライアント20のディスプレイ上には、地図上に到達圏が重畳表示される。なお、表示情報は、例えば、到達圏を構成するメッシュの集合を表すポリゴン情報等である。
【0029】
メッシュDB301には、メッシュ毎に、当該メッシュのメッシュIDと、当該メッシュが表す領域を特定するための情報と、当該メッシュを各移動手段で通過する際に要する所要時間とが対応付けて格納されている。ここで、メッシュDB301に格納されている情報の一例を図4に示す。図4に示す例では、メッシュが表す領域を特定するための情報として緯度経度(例えば、メッシュの緯度方向及び経度方向の長さは既知であるとして当該領域の中心の緯度及び経度、当該領域の対角線上にある頂点の緯度及び経度等)がメッシュIDに対応付けられてる。また、移動手段としては徒歩及び自動車があり、メッシュを北から南に通過するルートの所要時間と、東から西に通過するルートの所要時間と、南から北に通過するルートの所要時間と、西から東に通過するルートの所要時間とがメッシュIDに対応付けられている。
【0030】
ここで、或る移動手段の所要時間の一例について、図5を参照しながら説明する。図5に示すように、メッシュの移動方向及び経度方向の長さをそれぞれ25m及び25mとして、メッシュ001~メッシュ012が存在するものとする。このとき、各メッシュには、移動手段毎に、この移動手段でメッシュを各ルートで通過する際の所要時間が定義される。例えば、図5に示すように、或る移動手段でメッシュ006を北から南に通過するルートの所要時間は1分、東から西に通過するルートの所要時間は3分、南から北に通過するルートの所要時間は2分、西から東に通過するルートの所要時間は1分と定義される。このように、各メッシュには4方向のルートで通過する際の所要時間が定義される。
【0031】
なお、例えば、或る方向からはメッシュを通過することができない場合はその方向のルートの所要時間を無限大(具体的には、予め決められた最大値)と定義すればよい。例えば、東西に延びる道路上に重畳表示されるメッシュは北→南ルートや南→北ルートで通過することができないため、北→南ルートの所要時間及び南→北ルートの所要時間を無限大と定義すればよい。
【0032】
また、図4及び図5に示す例では各メッシュを4方向のルート(北→南ルート、東→西ルート、南→北ルート、西→東ルート)で通過する際の所要時間を示しているが、これは一例であって、更に多くのルートで通過する際の所要時間が各メッシュに定義されていてもよいし、方向に関わらず1つの所要時間のみが各メッシュに定義されていてもよい。上記の4方向のルート以外のルートとしては、例えば、メッシュの各頂点から対角線上の頂点に斜めに通過するルート等が挙げられる。
【0033】
また、メッシュDB301に格納されている所要時間は定期的又は不定期に更新されてもよい。特に、メッシュが重畳表示される地図のデータが更新された場合、この更新に合わせてメッシュDB301に格納されている各情報を更新したり、削除したり、新たなメッシュの情報が追加されたりしてもよい。
【0034】
<到達圏提示処理>
次に、クライアント20からの要求に応じて、当該クライアント20に対して到達圏を提示するための到達圏提示処理について、図6を参照しながら説明する。図6は、第一の実施形態に係る到達圏提示処理の一例を示すフローチャートである。なお、以降では、クライアント20のディスプレイ上には或る範囲内の地図が表示されており、このクライアント20のユーザによって移動開始地点と移動時間と移動手段とが少なくとも指定され、到達圏の表示要求が到達圏提示サーバ10に送信されたものとする。
【0035】
まず、通信部201は、到達圏の表示要求を受信する(ステップS101)。なお、上述したように、到達圏の表示要求には、移動開始地点と移動時間と移動手段とが少なくとも指定されている。
【0036】
次に、起点特定部202は、メッシュDB301を参照して、起点メッシュ及びそのメッシュIDを特定する(ステップS102)。すなわち、起点特定部202は、上記のステップS101で受信された到達圏の表示要求に指定されている移動開始地点を含むメッシュ及びそのメッシュIDを、それぞれ起点メッシュ及びそのメッシュIDとして特定する。なお、移動開始地点を含むメッシュは、メッシュDB301に格納されている、メッシュが表す領域を特定するための情報から特定することができる。なお、以降では、簡単のため、起点メッシュのメッシュIDを「起点メッシュID」ともいう。
【0037】
次に、到達圏計算部203は、メッシュDB301を参照して、上記のステップS102で特定された起点メッシュを起点として、上記のステップS101で受信された到達圏の表示要求に指定されている移動手段で、当該表示要求に指定されている移動時間内に到達可能なメッシュのメッシュID列を計算する(ステップS103)。
【0038】
ここで、上記のステップS101で受信された到達圏の表示要求には或る移動手段が指定されているもして、到達圏内メッシュID列を計算する方法について、図7を参照しながら説明する。図7に示すように、メッシュ001~メッシュ0036が存在し、起点メッシュはメッシュ021であるものとする。このとき、到達圏計算部203は、起点メッシュを起点として、起点メッシュからの所要時間の合計が移動時間以内であるメッシュ(以下、「到達圏内メッシュ」ともいう。)のメッシュID列を到達圏内メッシュID列とする。なお、到達圏内メッシュ以外のメッシュを「到達圏外メッシュ」ともいう。
【0039】
例えば、起点メッシュからメッシュ005までの所要時間は、メッシュ022の西→東ルートの所要時間と、メッシュ023の南→北ルートの所要時間と、メッシュ017の南→北ルートの所要時間と、メッシュ011の南→北ルートの所要時間との合計で計算される。この合計が移動時間内であればメッシュ005は到達圏内メッシュであり、{起点メッシュのメッシュID,メッシュ022のメッシュID,メッシュ023のメッシュID,メッシュ017のメッシュID,メッシュ011のメッシュID,メッシュ006のメッシュID}は到達圏内メッシュID列となる。なお、到達圏内メッシュID列の末尾から任意個のメッシュIDを除いたメッシュID列も同様に到達圏内メッシュID列となるが、到達圏計算部203は、これらのうち最も長い到達圏内メッシュID列(つまり、その要素数が最も多い到達圏内メッシュID列)のみを計算結果として出力すればよい。
【0040】
これにより、少なくとも一部のメッシュIDが異なる複数の到達圏内メッシュID列が得られる。ただし、到達圏の表示要求に指定されている移動開始地点、移動時間及び移動手段によっては、到達圏内メッシュID列が得られない場合や1つの到達圏内メッシュID列のみが得られる場合もあり得る。
【0041】
このように、到達圏計算部203は、起点メッシュからの所要時間の合計が移動時間以内であるメッシュのメッシュID列を到達圏内メッシュID列とする。このとき、到達圏計算部203は、メッシュDB301を参照して、起点メッシュから順に隣り合うメッシュの所要時間(該当の移動手段における該当のルートの所要時間)を足し合わせていくことで、到達圏内メッシュID列を計算することができる。したがって、高速に到達圏内メッシュID列を計算することができる。
【0042】
なお、起点メッシュから或るメッシュに向かう経路が複数存在する場合は、いずれか1つの経路の所要時間が移動時間以内であれば、当該メッシュは到達圏内メッシュとなる。また、メッシュ間の隣接関係はメッシュDB301に格納されているメッシュID又は緯度経度により特定可能であるものとする。
【0043】
例えば、メッシュDB301に格納されている緯度経度が、緯度方向及び経度方向の長さが既知であるメッシュの中心の緯度及び経度である場合やメッシュの対角線上にある頂点の緯度及び経度等である場合には、各メッシュに隣接するメッシュを容易に特定することが可能である。
【0044】
また、例えば、メッシュIDが「Y-X」といった形式であり、緯度方向に1つ上にあるメッシュはYの値が1高く、緯度方向に1つ下にあるメッシュはYの値が1低く、経度方向に1つ右にあるメッシュはXの値が1高く、経度方向に1つ左にあるメッシュはXの値が1低くなるように定義されている場合には、メッシュIDから容易に隣接関係を特定することが可能である。この場合、図7に示す例で、メッシュ021のメッシュIDを「1234-5678」とすれば、メッシュ015のメッシュIDは「1235-5678」、メッシュ027のメッシュIDは「1233-5678」、メッシュ020のメッシュIDは「1234-5677」、メッシュ022のメッシュIDは「1234-5679」となる。
【0045】
また、例えば、到達圏内メッシュID列の計算に用いられるメッシュが、隣接関係が既知のより大きなメッシュの部分メッシュとして表される場合は、このより大きなメッシュ中の相対的な位置をメッシュIDとすることで、メッシュIDから容易に隣接関係を特定することが可能である。例えば、隣接関係が既知のメッシュが250m×250mのメッシュで、到達圏内メッシュID列の計算に用いられるメッシュが25m×25mであり、かつ、25m×25mメッシュが250m×250mメッシュの部分メッシュである場合、250m×250mメッシュのメッシュIDと、250m×250mメッシュ中における25m×25mメッシュの相対的な位置を示すメッシュIDとにより、各25m×25mメッシュの隣接関係を特定することが可能である。具体的には、例えば、250m×250m中における各25m×25mメッシュの相対位置を上記と同様に「Y-X」という形式で表して、一番左下の25m×25mメッシュのメッシュIDを「0-0」とすれば、各25m×25mメッシュのメッシュIDは「0-0」~「9-9」と表すことができる。したがって、250m×250mメッシュのメッシュIDと25m×25mメッシュのメッシュIDとによって到達圏内メッシュID列の計算に用いられるメッシュの隣接関係を特定することができる。
【0046】
図6に戻る。ステップS103に続いて、表示情報作成部204は、上記のステップS103で計算された到達圏内メッシュID列を用いて、クライアント20のディスプレイ上に表示されている地図に到達圏を重畳表示させるための表示情報を作成する(ステップS104)。すなわち、表示情報作成部204は、例えば、上記のステップS103で計算された各到達圏内メッシュID列の和集合を計算した上で、この和集合に含まれる全てのメッシュIDのメッシュの集合を表すポリゴン情報等を表示情報として作成する。
【0047】
そして、通信部201は、上記のステップS104で作成された表示情報を、到達圏の表示要求に対する返信としてクライアント20に送信する(ステップS105)。これにより、クライアント20のディスプレイ上には、地図の上に到達圏が重畳表示される。地図の上に重畳表示された到達圏の一例を図8に示す。図8に示す例では、メッシュ1100を起点メッシュとした到達圏1200が地図上に重畳表示されている場合を示している。
【0048】
なお、図8に示す例では、各メッシュの境界が表示されているが、この境界は表示されていなくてもよい。また、クライアント20側で到達圏を地図上に重畳表示する際に、到達圏の全てが画面内に表示されるように自動的に地図の縮尺が調整されてもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は、メッシュ毎に予め定義された所要時間を用いて、所要時間の合計が移動時間内となる範囲内のメッシュを到達圏として計算する。このため、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は、到達圏を計算する際に、所要時間を足し合わせる計算とその結果が移動時間内であるか否かの判定とを行えばよく、従来技術のような経路探索処理を行う場合と比べて、迅速に到達圏を提示することが可能となる。
【0050】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。なお、第二の実施形態では、主に、第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0051】
ここで、例えば、「駅から徒歩5分以内の到達圏」や「駅から徒歩10分以内の到達圏」等といった或る特定の条件を満たす到達圏は、商圏分析等の用途に用いられることが多い。このため、このような条件を指定した到達圏の表示要求は比較的多く行われると考えられる。そこで、第二の実施形態では、このような条件を満たす到達圏の到達圏内メッシュID列を予め保持しておくことで、当該到達圏をより迅速に提示する場合について説明する。
【0052】
<到達圏提示サーバ10の機能構成>
次に、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10の機能構成について、図9を参照しながら説明する。図9は、第二の実施形態に係る到達圏提示サーバ10の機能構成の一例を示す図である。
【0053】
図9に示すように、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は、記憶部として、到達圏内メッシュID列DB302を更に有する。当該記憶部は、例えば、メモリ装置106等により実現される。ただし、当該記憶部は、例えば、到達圏提示サーバ10と通信ネットワークを介して接続されるデータベースサーバ等により実現されてもよい。
【0054】
到達圏内メッシュID列DB302には、起点メッシュIDと移動時間と移動手段との条件毎に、この条件を満たす到達圏の表示要求に対して提示する到達圏の到達圏内メッシュID列が格納されている。ここで、到達圏内メッシュID列DB302に格納されている情報の一例を図10に示す。図10に示すように、到達圏内メッシュID列DB302には、或る特定の起点メッシュIDと特定の移動手段と特定の移動時間とに対して、到達圏内メッシュIDが格納されている。このような到達圏内メッシュID列は、例えば、「〇〇駅から徒歩5分以内の到達圏」や「〇〇駅から車で5分以内の到達圏」等といった比較的多く表示要求が行われる到達圏を表し、予め計算された上で到達圏内メッシュID列DB302に格納される。
【0055】
また、本実施形態に係る到達圏計算部203は、起点特定部202によって特定された起点メッシュIDと、通信部201によって受信された到達圏の表示要求に指定されている移動手段及び移動時間とを満たす条件の到達圏内メッシュID列が到達圏内メッシュID列DB302に格納されているか否かを判定する。そして、条件を満たす到達圏内メッシュID列が到達圏内メッシュID列DB302に格納されている場合は、到達圏内メッシュID列の計算は行わずに、該当の到達圏内メッシュID列を到達圏内メッシュID列DB302から取得する。これにより、或る特定のメッシュに含まれる移動開始地点と特定の移動時間と特定の移動手段とが到達圏の表示要求に指定されている場合は、到達圏内メッシュID列の計算が不要となるため、第一の実施形態と比較してより迅速に到達圏を提示することが可能となる。
【0056】
<到達圏提示処理>
次に、本実施形態に係る到達圏提示処理について、図11を参照しながら説明する。図11は、第二の実施形態に係る到達圏提示処理の一例を示すフローチャートである。なお、図11のステップS201~ステップS202は図6のステップS101~ステップS102とそれぞれ同様であり、図11のステップS207は図6のステップS105と同様であるため、その説明を省略する。
【0057】
ステップS202に続いて、到達圏計算部203は、到達圏内メッシュID列DB302を参照して、ステップS202で特定された起点メッシュIDとステップS201で受信された到達圏の表示要求に指定されている移動手段及び移動時間との条件を到達圏内メッシュID列が存在するか否かを判定する(ステップS203)。すなわち、到達圏計算部203は、当該起点メッシュIDと当該移動手段と当該移動時間とに合致する条件が到達圏内メッシュID列DB302に格納されているか否かを判定する。
【0058】
上記のステップS203で条件を満たす到達圏内メッシュID列が存在すると判定された場合、到達圏計算部203は、到達圏内メッシュID列DB302から当該到達圏内メッシュID列を取得する(ステップS204)。
【0059】
一方で、上記のステップS203で条件を満たす到達圏内メッシュID列が存在しないと判定された場合、到達圏計算部203は、図6のステップS103と同様に到達圏内メッシュID列を計算する(ステップS205)。
【0060】
そして、ステップS204又はステップS205に続いて、表示情報作成部204は、上記のステップS204で取得された到達圏内メッシュID列又は上記のステップS205で計算された到達圏内メッシュID列を用いて、図6のステップS104と同様に、表示情報を作成する(ステップS206)。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は、到達圏の表示要求に指定されている移動開始地点と移動手段と移動時間とが、予め定義された条件を満たす場合には、この条件に対応する到達圏内メッシュID列を用いて到達圏を提示する。このため、本実施形態に係る到達圏提示サーバ10は、このような条件を満たす移動開始地点と移動手段と移動時間とが指定された到達圏の表示要求を受信した場合には、到達圏内メッシュID列を計算する必要がないため、第一の実施形態よりも迅速に到達圏を提示することが可能となる。
【0062】
なお、到達圏内メッシュID列DB302には予め条件と到達圏内メッシュID列とを格納しておく必要があるが、どれだけの条件及び到達圏内メッシュID列を格納しておくかは到達圏内メッシュID列DB302の容量や表示情報がクライアント20に返信されるまでの待ち時間等から適宜決定すればよい。
【0063】
<応用例>
ここで、本実施形態に係る到達圏提示システム1の応用例について説明する。本実施形態に係る到達圏提示システム1によって提示される到達圏は一般に商圏分析等に用いられるが、例えば、イベント会場周辺の警備計画の策定等にも応用可能である。例えば、図12に示すように、イベント会場Aが含まれるメッシュを起点メッシュ2100として、イベント会場Aから徒歩5分以内に到達可能な範囲を到達圏2200とする。同様に、イベント会場Bが含まれるメッシュを起点メッシュ3100として、イベント会場Bから徒歩5分以内に到達可能な範囲を到達圏3200とする。このとき、到達圏2200と到達圏3200の両方を地図上に重畳表示させることで、イベント会場Aとイベント会場Bの両方から5分以内に到達可能な領域(つまり、到達圏2200と到達圏3200で重複している領域)を知ることができる。したがって、例えば、イベント会場Aとイベント会場Bの両方から5分以内に到達可能な領域に警備員を配置することで、効率的な警備を実現することが可能となる。
【0064】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 到達圏提示システム
10 到達圏提示サーバ
20 クライアント
101 入力装置
102 表示装置
103 外部I/F
104 通信I/F
105 プロセッサ
106 メモリ装置
107 バス
201 通信部
202 起点特定部
203 到達圏計算部
204 表示情報作成部
301 メッシュDB
302 到達圏内メッシュID列DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12