(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/00 20060101AFI20241112BHJP
H01H 89/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01H25/00 E
(21)【出願番号】P 2023569099
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2022039124
(87)【国際公開番号】W WO2023119829
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2021208702
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小池 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】石澤 康宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0262832(US,A1)
【文献】特開2018-87706(JP,A)
【文献】特開2008-140697(JP,A)
【文献】特開2010-32234(JP,A)
【文献】特開2008-218199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0379377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 25/00
G01D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作およびプッシュ操作が可能に構成された操作部と、
初期状態から、前記回転操作に伴う回転移動が可能、且つ、前記プッシュ操作に伴うスライド移動が可能に設けられた1つの磁石と、
基板に配置され、前記磁石が発生する磁界を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記回転操作の操作内容、および、前記プッシュ操作の操作内容を判定する判定部と
を備え、
前記磁石は、前記回転移動を行う際に回転中心となる回転軸が通るように設けられており、当該磁石のN極とS極の着磁の方向が、前記回転移動の前記回転軸および前記スライド移動の方向に対して傾いて
おり、
2つの前記磁気センサを備え、
2つの前記磁気センサのうちの一方の前記磁気センサの検出値が前記スライド移動に伴って正値側に増加し、2つの前記磁気センサのうちの他方の前記磁気センサの検出値が前記スライド移動に伴って負値側に増加するように、2つの前記磁気センサが前記基板に配置されている
ことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
回転操作およびプッシュ操作が可能に構成された操作部と、
初期状態から、前記回転操作に伴う回転移動が可能、且つ、前記プッシュ操作に伴うスライド移動が可能に設けられた1つの磁石と、
基板に配置され、前記磁石が発生する磁界を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記回転操作の操作内容、および、前記プッシュ操作の操作内容を判定する判定部と
を備え、
前記磁石は、前記回転移動を行う際に回転中心となる回転軸が通るように設けられており、当該磁石のN極とS極の着磁の方向が、前記回転移動の前記回転軸および前記スライド移動の方向に対して傾いており、
前記基板は、
前記回転移動の前記回転軸、および、前記スライド移動の方向に対して、平行に設けられている
ことを特徴とす
る入力装置。
【請求項3】
回転操作およびプッシュ操作が可能に構成された操作部と、
初期状態から、前記回転操作に伴う回転移動が可能、且つ、前記プッシュ操作に伴うスライド移動が可能に設けられた1つの磁石と、
基板に配置され、前記磁石が発生する磁界を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記回転操作の操作内容、および、前記プッシュ操作の操作内容を判定する判定部と
を備え、
前記磁石は、前記回転移動を行う際に回転中心となる回転軸が通るように設けられており、当該磁石のN極とS極の着磁の方向が、前記回転移動の前記回転軸および前記スライド移動の方向に対して傾いており、
前記基板は、切り欠き部を有し、
前記基板と垂直な方向から視て、前記切り欠き部は、内側に前記磁石が配置され、且つ、前記磁石の前記回転移動および前記スライド移動に干渉しない
ことを特徴とす
る入力装置。
【請求項4】
前記磁気センサは、
前記基板と平行な方向、且つ、前記回転移動の前記回転軸と直交する方向から視て、前記切り欠き部の内側で待機する前記初期状態の前記磁石と重なる位置に配置されている
ことを特徴とする請求項
3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記磁気センサは、
前記基板と垂直な方向から視て、前記基板における前記切り欠き部の側方となる位置において、前記切り欠き部の内側で待機する前記初期状態の前記磁石に近接対向して配置されている
ことを特徴とする請求項
3に記載の入力装置。
【請求項6】
前記磁石の前記回転移動の角度は、前記初期状態から両方向に30度以下であり、
前記磁石の前記N極と前記S極の前記着磁の方向の前記回転軸および前記スライド移動の方向に対する傾きの角度は、45度である
ことを特徴とする請求項1
から5のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項7】
回転操作およびプッシュ操作が可能に構成された操作部と、
初期状態から、前記回転操作に伴う回転移動が可能、且つ、前記プッシュ操作に伴うスライド移動が可能に設けられた1つの磁石と、
基板に配置され、前記磁石が発生する磁界を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記回転操作の操作内容、および、前記プッシュ操作の操作内容を判定する判定部と
を備え、
前記磁石は、前記回転移動を行う際に回転中心となる回転軸が通るように設けられており、当該磁石のN極とS極の着磁の方向が、前記回転移動の前記回転軸および前記スライド移動の方向に対して傾いており、
前記磁石を保持し、且つ、前記操作部に対して回転可能およびスライド移動可能に支持された保持部材と、
前記回転操作の際に、前記保持部材の回転角度を前記操作部の回転角度より増速する増速機構と
を備えることを特徴とす
る入力装置。
【請求項8】
前記増速機構は、
前記保持部材に設けられた外歯車と、
前記操作部に設けられた内歯車とを有し、
前記回転操作の際に、前記外歯車が前記内歯車によって増速駆動される
ことを特徴とする請求項
7に記載の入力装置。
【請求項9】
回転操作およびプッシュ操作が可能に構成された操作部と、
初期状態から、前記回転操作に伴う回転移動が可能、且つ、前記プッシュ操作に伴うスライド移動が可能に設けられた1つの磁石と、
基板に配置され、前記磁石が発生する磁界を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記回転操作の操作内容、および、前記プッシュ操作の操作内容を判定する判定部と
を備え、
前記磁石は、前記回転移動を行う際に回転中心となる回転軸が通るように設けられており、当該磁石のN極とS極の着磁の方向が、前記回転移動の前記回転軸および前記スライド移動の方向に対して傾いており、
2つの前記磁気センサを備え、
2つの前記磁気センサの対向する方向が、前記回転軸と交差する方向である
ことを特徴とする入力装置。
【請求項10】
回転操作およびプッシュ操作が可能に構成された操作部と、
初期状態から、前記回転操作に伴う回転移動が可能、且つ、前記プッシュ操作に伴うスライド移動が可能に設けられた1つの磁石と、
基板に配置され、前記磁石が発生する磁界を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記回転操作の操作内容、および、前記プッシュ操作の操作内容を判定する判定部と
を備え、
前記磁石は、前記回転移動を行う際に回転中心となる回転軸が通るように設けられており、当該磁石のN極とS極の着磁の方向が、前記回転移動の前記回転軸および前記スライド移動の方向に対して傾いており、
2つの前記磁気センサを備え、
前記回転移動に伴って、2つの前記磁気センサのうちの一方の前記磁気センサの検出値が正値側に増加し、2つの前記磁気センサのうちの他方の前記磁気センサの検出値が負値側に増加するように、2つの前記磁気センサが前記基板に配置されている
ことを特徴とする入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、操作部による回転操作およびプッシュ操作が可能な回転プッシュスイッチに関し、操作部にカウンター磁石を設け、回転操作およびプッシュ操作に伴い、磁気センサによって、カウンター磁石の磁界の方向の変化を検出し、磁気センサの検出結果に基づいて、プッシュ操作に基づく回転軸方向の任意の位置ポジション、および、回転操作に基づく任意の回転ポジションを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている回転プッシュスイッチは、回転操作およびプッシュ操作の双方を検出するために、回転操作の検出用の2つの磁気センサと、プッシュ操作の検出用の2つの磁気センサとを設ける必要があり、すなわち、4つの磁気センサを設ける必要がある。このため、特許文献1に開示されている回転プッシュスイッチは、回転操作およびプッシュ操作の各々を少数の磁気センサを用いて高精度に検出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る入力装置は、回転操作およびプッシュ操作が可能に構成された操作部と、初期状態から、回転操作に伴う回転移動が可能、且つ、プッシュ操作に伴うスライド移動が可能に設けられた1つの磁石と、基板に配置され、磁石が発生する磁界を検出する磁気センサと、磁気センサの検出結果に基づいて、回転操作の操作内容、および、プッシュ操作の操作内容を判定する判定部とを備え、回転移動を行う際に回転中心となる回転軸が通るように設けられており、当該磁石のN極とS極の着磁の方向が、回転移動の回転軸およびスライド移動の方向に対して傾いている。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によれば、回転操作およびプッシュ操作の各々を少数の磁気センサを用いて高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】第1実施形態に係る入力装置における磁石および磁気センサの配置を示す外観斜視図
【
図4】第1実施形態に係る入力装置における磁石および磁気センサの配置を示す平面図
【
図5】第1実施形態に係る入力装置における磁石および磁気センサの配置を示す側面図
【
図6】第1実施形態に係る入力装置が備える制御系の構成を示す図
【
図7A】第1実施形態に係る入力装置における回転操作時の磁石の回転移動の一例を示す図
【
図7B】第1実施形態に係る入力装置における回転操作時の磁石の回転移動の一例を示す図
【
図7C】第1実施形態に係る入力装置における回転操作時の磁石の回転移動の一例を示す図
【
図8】第1実施形態に係る入力装置における回転操作時の第1の磁気センサの検出値の一例を示す図
【
図9】第1実施形態に係る入力装置における回転操作時の第2の磁気センサの検出値の一例を示す図
【
図10】第1実施形態に係る入力装置における回転操作時の磁気センサの検出値の比較例を示す図
【
図11A】第1実施形態に係る入力装置におけるプッシュ操作時の磁石のスライド移動の一例を示す図
【
図11B】第1実施形態に係る入力装置におけるプッシュ操作時の磁石のスライド移動の一例を示す図
【
図12】第1実施形態に係る入力装置におけるプッシュ操作時の第1の磁気センサの検出値の一例を示す図
【
図13】第1実施形態に係る入力装置におけるプッシュ操作時の第2の磁気センサの検出値の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
【0009】
〔第1実施形態〕
(入力装置100の構成)
図1は、第1実施形態に係る入力装置100の平面図である。
図2は、第1実施形態に係る入力装置100の正面図である。なお、以降の説明では、便宜上、X軸方向を左右方向とし、Y軸方向を前後方向とし、Z軸方向を上下方向とする。但し、X軸正方向を右方向とし、Y軸正方向を前方向とし、Z軸正方向を上方向とする。これらは、装置内の相対的な位置関係を示すものであり、装置の設置方向や操作方向を限定するものではなく、装置内の相対的な位置関係が同等なものは、設置方向や操作方向が異なっているものも全て、本発明の権利範囲に含まれるものである。
【0010】
図1に示す入力装置100は、操作部110と本体部120とを備える。操作部110と本体部120とは、回転軸AXの軸方向(Y軸方向)に並べて設けられている。操作部110は、回転操作およびプッシュ操作が可能に構成されている。具体的には、操作部110は、回転操作ノブ111およびプッシュ操作ノブ112を有しており、回転操作ノブ111による回転軸AXの軸回り方向である回転移動の方向Bへの回転操作と、プッシュ操作ノブ112によるスライド移動の方向A(Y軸正方向)へのプッシュ操作とが可能に構成されている。
【0011】
<操作部110の構成>
図1および
図2に示すように、操作部110は、回転操作ノブ111、プッシュ操作ノブ112、保持部材114、およびコイルスプリング115を備える。
【0012】
回転操作ノブ111は、回転軸AXを中心とする、筒状且つ樹脂製の部材である。回転操作ノブ111は、回転軸AXの軸回り方向に回転可能に設けられ、ユーザによって回転操作がなされる。
図1および
図2に示す例では、回転操作ノブ111は、後端部(Y軸負側の端部)から前端部(Y軸正側の端部)に向けて徐々に直径が大きくなる円錐台形状を有する。回転操作ノブ111の前側(Y軸正側)の開口部は、隔壁部111Aによって閉塞されている。隔壁部111Aの中心には、当該隔壁部111Aを前後方向(Y軸方向)に貫通する貫通孔111Bが形成されている。
【0013】
プッシュ操作ノブ112は、回転軸AXを中心とする概ね円筒状且つ樹脂製の部材である。プッシュ操作ノブ112は、回転操作ノブ111の筒内に、回転軸AXの軸方向(Y軸方向)にスライド移動可能に設けられる。プッシュ操作ノブ112の後端部は、回転操作ノブ111の後側(Y軸負側)の開口部111Cから後方(Y軸負方向)に突出している。プッシュ操作ノブ112の後端面は、プッシュ操作を受け付けるための操作面112Aとなっている。プッシュ操作ノブ112は、ユーザによって操作面112Aが前方(Y軸正方向)へ押し込まることにより、プッシュ操作がなされて、回転軸AXに沿って前方(Y軸正方向)にスライド移動する。
【0014】
保持部材114は、回転部114A、一対の保持腕部114B、および軸部114Cを有する樹脂製の部材である。
【0015】
回転部114Aは、回転軸AXを中心として、回転操作ノブ111の隔壁部111Aと、ケース121の隔壁部121Aとの間に配置される、円盤状の部分である。
【0016】
一対の保持腕部114Bは、回転軸AXを間に挟んで、回転部114Aから前方(Y軸正方向)に直線状に延在し、ケース121の隔壁部121Aに形成されている挿通孔121Bを貫通して、基板122の切り欠き部122A内まで延在する、腕状の部分である。一対の保持腕部114Bは、基板122の切り欠き部122Aの内側において、磁石123を保持する。
【0017】
軸部114Cは、回転軸AX上において、回転部114Aから後方(Y軸負方向)に直線状に延在し、回転操作ノブ111の隔壁部111Aに形成されている貫通孔111Bを貫通して、プッシュ操作ノブ112に連結される断面形状がD字状の棒状の部分である。
【0018】
保持部材114は、軸部114Cにおいて、同じく断面形状がD字状の回転操作ノブ111の貫通孔111Bにスプライン結合されている。これにより、保持部材114は、回転操作ノブ111と一体に回転移動するように支持されている。
【0019】
また、保持部材114は、軸部114Cの後端部において、プッシュ操作ノブ112に連結されている。これにより、保持部材114は、プッシュ操作ノブ112と一体に、前後方向(Y軸方向)にスライド移動するように支持されている。
【0020】
コイルスプリング115は、保持部材114の回転部114Aと、ケース121の隔壁部121Aとの間に配置されている。コイルスプリング115は、保持部材114の回転部114Aを、プッシュ操作の復帰方向(Y軸負方向)に付勢する。これにより、コイルスプリング115は、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作が解除されたとき、プッシュ操作ノブ112をプッシュ操作前の初期位置に復帰させることができる。
【0021】
<本体部120の構成>
図1および
図2に示すように、本体部120は、ケース121、基板122、磁石123、および、2つの磁気センサ124(第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124B)を備える。
【0022】
ケース121は、中空構造を有する容器状且つ樹脂製の部材である。本実施形態では、ケース121は、円筒形状を有するが、ケース121の形状は円筒形状に限らない。ケース121の内部には、基板122、磁石123、第1の磁気センサ124A、および第2の磁気センサ124Bが収容される。ケース121の後側(Y軸負側)の開口部は、隔壁部121Aによって閉塞されている。隔壁部121Aには、保持部材114が備える左右一対の保持腕部114Bが挿通される挿通孔121Bが形成されている。
【0023】
基板122は、平板状の部材である。基板122は、ケース121の内部において、XY平面に対して水平な姿勢で設置される。基板122は、上方(Z軸正方向)からの平面視において四角形状を有する。但し、基板122の形状は四角形状に限らない。基板122としては、例えば、PWB(Printed Wiring Board)が用いられる。
【0024】
磁石123は、いわゆる永久磁石であり、中央から両端部に亘って一対のN極とS極が隣接して着磁されており、当該磁石123の周囲にN極からSに向かう概略円弧状の磁界を発生する。磁石123は、基板122の後側(Y軸負側)の端部に形成されている切り欠き部122Aの内側に配置されている。磁石123は、切り欠き部122Aの内側において、保持部材114が備える左右一対の保持腕部114Bによって保持されている。これにより、磁石123は、切り欠き部122Aの内側において、回転操作ノブ111による回転操作に伴う回転移動、および、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作に伴うスライド移動が可能である。
【0025】
第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、基板122において、磁石123および切り欠き部122Aを間に挟んで対向配置されている。第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bを通るXY平面上の磁界の向きを検出することで磁石123の発生する磁気の向きを検出する。そして、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、検出された磁気の向きを示す検出信号を制御装置130(
図6参照)へ出力する。なお、本実施形態では、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bとして、GMR(Giant Magneto Resistive effect)センサを用いている。
【0026】
<入力装置100の動作>
入力装置100は、回転操作ノブ111による回転操作がなされたとき、回転操作ノブ111とともに保持部材114が回転することで、保持部材114の一対の保持腕部114Bによって保持され、回転中心となる回転軸AXが通るように設けられている磁石123が、回転軸AXを中心として、回転移動の方向Bへ回転移動する。そして、入力装置100は、磁石123の回転移動によって生じる、磁石123が発生する磁界の方向の変化を、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bによって移動前後の磁界の方向を検出することにより、回転操作ノブ111による回転操作として検出することができる。
【0027】
また、入力装置100は、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作がなされたとき、プッシュ操作ノブ112とともに保持部材114がスライド移動の方向A(Y軸正方向)へスライド移動することで、保持部材114の一対の保持腕部114Bによって保持されている磁石123が、回転軸AXに沿って、スライド移動の方向A(Y軸正方向)へスライド移動する。そして、入力装置100は、磁石123のスライド移動によって生じる、磁石123が発生する磁界の方向の変化を、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bによって移動前後の磁界の方向を検出することにより、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作として検出することができる。
【0028】
(磁石123および磁気センサ124A,124Bの配置)
図3は、第1実施形態に係る入力装置100における磁石123および磁気センサ124A,124Bの配置を示す外観斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る入力装置100における磁石123および磁気センサ124A,124Bの配置を示す平面図である。
図5は、第1実施形態に係る入力装置100における磁石123および磁気センサ124A,124Bの配置を示す側面図である。
図3~
図5は、基板122、磁石123、および磁気センサ124A,124Bを抜粋して図示することで、磁石123および磁気センサ124A,124Bの配置を表している。
【0029】
図3および
図4に示すように、基板122の後側(Y軸負側)の端部、且つ、左右方向(X軸方向)における中央部には、前方(Y軸正方向)に向かって部分的に切り欠かれた切り欠き部122Aが形成されている。切り欠き部122Aは、上方(Z軸正方向)からの平面視において四角形状を有する。但し、切り欠き部122Aの形状は四角形状に限らない。
【0030】
切り欠き部122Aの内側では、磁石123が配置され、且つ、磁石123が回転移動およびスライド移動する。このため、切り欠き部122Aは、磁石123の回転移動およびスライド移動に基板122が干渉しないように、前後方向(Y軸方向)および左右方向(X軸方向)ともに、十分なサイズを有して形成されている。
【0031】
具体的には、切り欠き部122Aの内側において、磁石123は、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作に伴って、前方(Y軸正方向)であるスライド移動の方向Aにスライド移動する(
図3~
図5に示す矢印A参照)。
【0032】
また、切り欠き部122Aの内側において、磁石123は、回転操作ノブ111による回転操作に伴って、後方(Y軸負方向)から見て、前後方向(Y軸方向)に直線状に延び、且つ、磁石123の中心を通る回転軸AXを中心として、回転軸AXの軸回り方向である回転移動の方向Bに回転移動する(
図3に示す矢印B参照)。
【0033】
なお、
図3~
図5に示すように、磁石123のスライド移動の方向A、磁石123の回転移動の回転軸AX、および、基板122は、互いに平行である。
【0034】
また、
図3~
図5は、磁石123の初期状態(すなわち、スライド移動および回転移動していない状態)を示している。
図3~
図5に示すように、磁石123は、直方体形状を有する。また、
図5に示すように、磁石123は、上下方向における中央部を境界として、上部がN極に着磁されており、下部がS極に着磁されている。
【0035】
但し、
図3~
図5に示すように、磁石123は、初期状態において、磁石123のN極とS極の着磁の方向は、回転移動の回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して所定角度傾いている。ここで、N極とS極の着磁の方向とは、N極とS極の並びの方向である。
【0036】
なお、本実施形態では、磁石123は、初期状態において、X軸負側から見てY軸方向から反時計回りに45°回転した状態で設けられている。すなわち、磁石123のN極とS極の着磁の方向は、回転移動の回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して傾き角度θが45°である。(
図5参照)
【0037】
また、基板122において、切り欠き部122Aの右側(X軸正側)には、第1の磁気センサ124Aが配置されている。また、基板122において、切り欠き部122Aの左側(X軸負側)には、第2の磁気センサ124Bが配置されている。すなわち、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、磁石123および切り欠き部122Aを間に挟んで、互いに対向して配置されている。
【0038】
図5に示すように、第2の磁気センサ124Bは、左側(X軸負側)から側方視したときに、磁石123の中心と重なる位置に配置されている。同様に、第1の磁気センサ124Aは、右側(X軸負側)から側方視したときに、磁石123の中心と重なる位置に配置されている。すなわち、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、基板122と平行な方向、且つ、回転軸AXと直行する方向から視て、切り欠き部122Aの内側で待機する初期状態の磁石123と重なる位置に配置されている。
【0039】
また、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bの各々は、基板122における切り欠き部122Aの側方(X軸正方向およびX軸負方向)となる部分において、切り欠き部122A内で待機する初期状態の磁石123に近接対向して配置されている。
【0040】
第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bには、同仕様の磁気センサが用いられている。但し、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、磁石123に対して相対的に互いに逆向きに配置されている。具体的には、第1の磁気センサ124Aは、当該第1の磁気センサ124Aから見て磁石123のある方向である左方向(X軸負方向)を向いて配置されている。一方、第2の磁気センサ124Bは、当該第2の磁気センサ124Bから見て磁石123のない方向である左方向(X軸負方向)を向いて配置されている。
【0041】
これにより、第1実施形態に係る入力装置100では、2つの磁気センサ124A,124Bのうちの一方の磁気センサの検出値が磁石123のスライド移動に伴って増加し、2つの磁気センサ124A,124Bのうちの他方の磁気センサの検出値が磁石123のスライド移動に伴って減少するようになっている(後述する
図12、および
図13参照)。また、磁石123の回転移動に伴って、2つの磁気センサ124A,124Bの検出値は、いずれも減少或いは増加する(後述する
図8および
図9参照)。
【0042】
(入力装置100が備える制御系の構成)
図6は、第1実施形態に係る入力装置100が備える制御系の構成を示す図である。
図6に示すように、入力装置100は、制御装置130を備える。制御装置130は、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bの各々と、電気的に接続されている。
【0043】
図6に示すように、制御装置130は、検出信号取得部131、判定部132、および出力部133を備える。
【0044】
検出信号取得部131は、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bの各々から、磁石123が発生する磁界の方向の検出結果を示す検出信号を取得する。
【0045】
判定部132は、検出信号取得部131によって取得された検出信号に基づいて、回転操作ノブ111による回転操作の操作内容、および、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作の操作内容を判定する。回転操作の操作内容とは、例えば、回転方向および回転角度である。プッシュ操作の操作内容とは、例えば、スライド移動の方向Aへのスライド移動量である。
【0046】
なお、判定部132は、判定された回転操作の回転角度に基づいて、複数の操作ポジションのうちのいずれの操作ポジションに回転操作がなされたかを、回転操作の操作内容として判定してもよい。
【0047】
また、判定部132は、判定されたプッシュ操作のスライド移動量に基づいて、複数の操作ポジションのうちのいずれの操作ポジションにプッシュ操作がなされたかを、プッシュ操作の操作内容として判定してもよい。
【0048】
出力部133は、判定部132によって判定された、回転操作ノブ111による回転操作の操作内容、および、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作の操作内容を外部(例えば、入力装置100による操作対象の装置)へ出力する。
【0049】
なお、制御装置130は、例えば、プロセッサ(例えば、CPU)、記憶媒体(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)等)、外部インタフェース等を備えたコンピュータ(例えば、IC(Integrated Circuit))によって実現される。例えば、
図6に示す制御装置130の各機能部は、制御装置130において、記憶媒体に記憶されているプログラムを、プロセッサが実行することによって実現される。
【0050】
(磁石123の回転移動の一例)
図7は、第1実施形態に係る入力装置100における回転操作時の磁石123の回転移動の一例を示す図である。
図7Aは、磁石123の回転移動前の状態(すなわち、初期状態)を示している。
図7Bは、磁石123の反時計回り方向への回転移動後の状態を示している。
図7Cは、磁石123の時計回り方向への回転移動後の状態を示している。
【0051】
図7Aは、
図5に示す磁石123の回転移動前の初期状態(すなわち、回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して45°傾いた状態)を回転軸AX方向から視た際の状態を示している。
【0052】
図7Bに示すように、第1実施形態に係る入力装置100は、回転操作ノブ111による反時計回り方向への回転操作に伴って、磁石123を、回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して45°傾いた状態のまま、回転軸AXを中心として反時計回り方向B1へ回転移動させることできる。
【0053】
また、
図7Cに示すように、第1実施形態に係る入力装置100は、回転操作ノブ111による時計回り方向への回転操作に伴って、磁石123を、回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して45°傾いた状態のまま、回転軸AXを中心として時計回り方向B2へ回転移動させることできる。
【0054】
そして、第1実施形態に係る入力装置100は、基板122に設けられている第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bにより、磁石123の回転移動時に変化する、磁石123が発生する磁界の向きを検出することができる。
【0055】
ここで、第1実施形態に係る入力装置100では、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bとして、GMR(Giant Magneto Resistive effect)センサを用いている。このため、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、磁石123の回転移動時に変化する、XY平面上における磁石123が発生する磁界の向きを検出することができる。
【0056】
この際、磁石123の回転移動の角度が増加するに伴って、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bの各々に対する磁石123の相対的な角度が増加する。このため、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bによって検出される磁界の向きを示す角度は、磁石123の回転移動の角度が増加するに伴って増加する(後述する
図8、および
図9参照)。
【0057】
(回転操作時の磁気センサ124A,124Bの検出値の一例)
図8は、第1実施形態に係る入力装置100における回転操作時の第1の磁気センサ124Aの検出値の一例を示す図である。
図9は、第1実施形態に係る入力装置100における回転操作時の第2の磁気センサ124Bの検出値の一例を示す図である。
図10は、第1実施形態に係る入力装置100における磁石123のN極とS極の着磁方向の傾きを変化させた際の回転操作時の磁気センサ124の検出値の比較例を示す図である。各図において、グラフの横軸は、磁石の実回転角度であり、またグラフの縦軸は、磁気センサ124Aもしくは124Bによる磁界の向きの検出結果であり、横軸は磁石が初期状態にある場合をO°としている。なお、
図8および
図9は、いずれも磁石123のN極とS極の着磁方向の傾き角度θを回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して45°とした場合の、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bの検出値の一例を示す。
【0058】
図8に示すように、磁石123の時計回り方向B2への回転移動の角度が増えるにつれて、第1の磁気センサ124Aによって検出される、磁石123が発生する磁界のXY平面上における向きを示す角度は正値側に増加する。
【0059】
また、
図8に示すように、磁石123の反時計回り方向B1への回転移動の角度が増えるにつれて、第1の磁気センサ124Aによって検出される、磁石123が発生する磁界のXY平面上における向きを示す角度は負値側に増加する。
【0060】
同様に、
図9に示すように、磁石123の時計回り方向B2への回転移動の角度が増えるにつれて、第2の磁気センサ124Bによって検出される、磁石123が発生する磁界のXY平面上における向きを示す角度は正値側に増加する。
【0061】
また、
図9に示すように、磁石123の反時計回り方向B1への回転移動の角度が増えるにつれて、第2の磁気センサ124Bによって検出される、磁石123が発生する磁界のXY平面上における向きを示す角度は負値側に増加する。
【0062】
このため、制御装置130の判定部132は、第1の磁気センサ124Aの検出値が正値側に増加し、且つ、第2の磁気センサ124Bの正値側に増加した場合、「回転操作ノブ111による時計回り方向B2へ回転操作が行われた」と判定することで、回転操作ノブ111による時計回り方向B2へ回転操作が行われたことを高精度に判定することができる。すなわち、磁気センサの多重化によって、磁気センサの故障時等に誤判断をしづらくなる。
【0063】
また、制御装置130の判定部132は、第1の磁気センサ124Aの検出値が負値側に増加し、且つ、第2の磁気センサ124Bの負値側に増加した場合、「回転操作ノブ111による反時計回り方向B1へ回転操作が行われた」と判定することで、回転操作ノブ111による反時計回り方向B1へ回転操作が行われたことを高精度に判定することができる。すなわち、磁気センサの多重化によって、磁気センサの故障時等に誤判断をしづらくなる。
【0064】
さらに、制御装置130の判定部132は、第1の磁気センサ124Aの検出値(すなわち、磁界の向きを示す角度)および第2の磁気センサ124Bの検出値(すなわち、磁界の向きを示す角度)の少なくもいずれか一方に基づいて、所定の変換式または所定の変換テーブルを用いて、磁石123の時計回り方向B2または反時計回り方向B1への回転移動の角度を高精度に判定することができる。つまり、どちらか一方の磁気センサのみを設置することによって、スペース及び価格を低減することができる。
【0065】
なお、
図8および
図9に示すように、磁石123のN極とS極の着磁方向の傾き角度θを回転軸AXおよびスライド移動の方向に対して45°とした場合、磁石123の回転移動の角度が初期状態から両方向に30度以下であれば、磁石123の回転移動に対して、第1の磁気センサ124Aの検出値(すなわち、磁界の向きを示す角度)および第2の磁気センサ124Bの検出値(すなわち、磁界の向きを示す角度)は、略リニアに変化する。
【0066】
一方、N極とS極の着磁方向の傾き角度θを45°から変更した際の磁石123の実回転角度と磁気センサ124の検出値の関係を示した
図10から明らかなように、傾き角度θを45°よりも小さくした場合には、磁気センサ124の検出値の初期からの変化量が45°の場合よりも小さくなってしまい、回転操作の量の判定が困難である。また、傾き角度θを45°よりも大きくした場合には、初期から回動操作量の小さい範囲で磁気センサ124の検出値は実回転角度よりも大きくなるが、その後徐々に変化量が小さくなり全体としてリニアリティがなく、途中の操作ポジション判定が困難である。
【0067】
このため、第1実施形態に係る入力装置100は、磁石123のN極とS極の着磁方向の傾き角度θを回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して45°としており、さらに、磁石123の回転移動の角度が初期状態から両方向に30度以下となるように、回転操作ノブ111による回転操作角度を物理的に規制し、途中の操作ポジションも精度良く検出可能とされている。
【0068】
(磁石123のスライド移動の一例)
図11は、第1実施形態に係る入力装置100におけるプッシュ操作時の磁石123のスライド移動の一例を示す図である。
図11Aは、磁石123のスライド移動前の状態(すなわち、初期状態)を示している。
図11Bは、磁石123のスライド移動後の状態を示している。
【0069】
図11に示すように、第1実施形態に係る入力装置100は、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作に伴って、磁石123のN極とS極の着磁方向の傾き角度θを、X軸負側から視て回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して反時計方向に45°傾いた初期状態のまま、回転軸AXと平行な方向A(Y軸正方向)へスライド移動させることができる。
【0070】
そして、第1実施形態に係る入力装置100は、基板122に設けられている第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bにより、磁石123のスライド移動時に変化する、磁石123が発生する磁界の向きを検出することができる。
【0071】
ここで、第1実施形態に係る入力装置100では、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bとして、GMRセンサを用いている。このため、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、磁石123のスライド移動時に変化する、XY平面上における磁石123が発生する磁界の向きを検出することができる。
【0072】
この際、磁石123の方向Aへのスライド移動量が増加するに伴って、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bの各々に対する磁石123の相対的な角度が増加する。このため、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bによって検出される磁界の向きを示す角度は、磁石123の方向Aへのスライド移動量が増加するに伴って増加する。
【0073】
但し、第1の磁気センサ124Aおよび第2の磁気センサ124Bは、磁石に対して相対的に互いに逆方向を向いて基板122に配置されている。このため、第1実施形態に係る入力装置100では、
図12および
図13に示すように、2つの磁気センサ124A,124Bのうちの一方の磁気センサの検出値が、磁石123のスライド移動に伴って正値側に増加し、2つの磁気センサ124A,124Bのうちの他方の磁気センサの検出値が、磁石123のスライド移動に伴って負値側に増加するようになっている。
【0074】
(プッシュ操作時の磁気センサ124A,124Bの検出値の一例)
図12は、第1実施形態に係る入力装置100におけるプッシュ操作時の第1の磁気センサ124Aの検出値の一例を示す図である。
図13は、第1実施形態に係る入力装置100におけるプッシュ操作時の第2の磁気センサ124Bの検出値の一例を示す図である。
【0075】
図12に示すように、磁石123のスライド移動の方向Aへのスライド移動量が増えるにつれて、第1の磁気センサ124Aによって検出される、磁石123が発生する磁界のXY平面上における向きを示す角度は正値側に増加する。
【0076】
一方、
図13に示すように、磁石123のスライド移動の方向Aへのスライド移動量が増えるにつれて、第2の磁気センサ124Bによって検出される、磁石123が発生する磁界のXY平面上における向きを示す角度は負値側に増加する。
【0077】
このため、制御装置130の判定部132は、第1の磁気センサ124Aの検出値が正値側に増加し、且つ、第2の磁気センサ124Bの検出値が負値側に増加した場合、「プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作が行われた」と判定することで、プッシュ操作ノブ112によるプッシュ操作が行われたことを高精度に判定することができる。すなわち、磁気センサ124の多重化によって、磁気センサ124の故障時等に誤判断をしづらくなる。
【0078】
さらに、制御装置130の判定部132は、第1の磁気センサ124Aの検出値(すなわち、磁界の向きを示す角度)および第2の磁気センサ124Bの検出値(すなわち、磁界の向きを示す角度)の少なくもいずれか一方に基づいて、所定の変換式または所定の変換テーブルを用いて、磁石123のスライド移動の方向Aへのスライド移動量(すなわち、プッシュ操作ノブ112の押し込み量)を高精度に判定することができる。つまり、どちらか一方の磁気センサ124のみを設置することによって、スペース及び価格を低減することができる。
【0079】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態に係る入力装置100は、回転操作およびプッシュ操作が可能に構成された操作部110と、初期状態から、回転操作に伴う回転移動可能、且つ、プッシュ操作に伴うスライド移動可能に設けられた1つの磁石123と、基板122に配置され、磁石123が発生する磁界を検出する磁気センサ124と、磁気センサ124の検出結果に基づいて、回転操作の操作内容、および、プッシュ操作の操作内容を判定する判定部132とを備え、磁石123は、回転移動を行う際に回転中心となる回転軸AXが通るように設けられており、当該磁石123が発生する磁界の方向が、回転移動の回転軸AXおよびスライド移動の方向Aに対して傾いている。
【0080】
これにより、第1実施形態に係る入力装置100は、回転操作およびプッシュ操作のいずれがなされた場合であっても、操作部110の操作に伴う磁石123の移動を磁界の方向の変化として検出できるため、回転操作とプッシュ操作の両方を少なくとも1つの磁気センサ124で検出できる。したがって、第1実施形態に係る入力装置100によれば、回転操作およびプッシュ操作の各々を少数の磁気センサ124を用いて高精度に検出することができる。
【0081】
また、第1実施形態に係る入力装置100は、2つの磁気センサ124を備え、2つの磁気センサ124のうちの一方の磁気センサ124の検出値がスライド移動に伴って正値側に増加し、2つの磁気センサ124のうちの他方の磁気センサ124の検出値がスライド移動に伴って負値側に増加するように、2つの磁気センサ124が基板122に配置されている。
【0082】
これにより、第1実施形態に係る入力装置100は、2つの磁気センサ124の検出値が互いに正負が逆方向に増加したことをもって、プッシュ操作が行われたことを、より高精度に判定することができる。
【0083】
また、第1実施形態に係る入力装置100において、基板122は、回転移動の回転軸AX、および、スライド移動の方向Aに対して、平行に設けられている。
【0084】
これにより、第1実施形態に係る入力装置100は、回転操作およびプッシュ操作がなされたときに、磁石123と磁気センサ124の検出面とを近接対向させることができるため、磁気センサ124の検出感度を高めることができる。
【0085】
また、第1実施形態に係る入力装置100において、基板122は、切り欠き部122Aを有し、切り欠き部122Aは、内側に磁石123が配置され、且つ、磁石123の回転移動およびスライド移動に干渉しない。
【0086】
これにより、第1実施形態に係る入力装置100は、磁石123を基板122に干渉させることなく、基板122の外枠内に磁石123を配置できるため、入力装置100全体の小型化を実現できる。
【0087】
また、第1実施形態に係る入力装置100において、磁気センサ124は、基板122と平行な方向、且つ、回転軸AXと直交する方向から視て、切り欠き部122Aの内側で待機する初期状態の磁石123と重なる位置に配置されている。
【0088】
これにより、第1実施形態に係る入力装置100は、基板122の厚さ方向に関して、磁石123と磁気センサ124とを互いに近接させることができるため、磁気センサ124の検出感度を高めることができる。
【0089】
また、第1実施形態に係る入力装置100において、磁気センサ124は、基板122における切り欠き部122Aの側方となる位置において、切り欠き部122Aの内側で待機する初期状態の磁石123に近接対向して配置されている。
【0090】
これにより、第1実施形態に係る入力装置100は、基板122の水平方向に関して、磁石123と磁気センサ124とを互いに近接させることができるため、磁気センサ124の検出感度を高めることができる。
【0091】
また、第1実施形態に係る入力装置100において、磁石123の回転移動の角度は、初期状態から両方向に30度以下であり、磁石123のN極とS極の着磁の方向の回転軸AXに対する傾きの角度θは、45度である。
【0092】
これにより、第1実施形態に係る入力装置100は、磁石123の回転移動の範囲内において、磁気センサ124の検出値を略リニアに変化させることができるため、磁気センサ124の検出値に基づく回転操作の角度の判定を高精度に行うことができる。
【0093】
〔第2実施形態〕
(入力装置100-2の構成)
図14は、第2実施形態に係る入力装置100-2の平面図である。
図15は、第2実施形態に係る入力装置100-2の正面図である。以下、第2実施形態に係る入力装置100-2に関し、第1実施形態に係る入力装置100からの変更点について説明する。
【0094】
図14および
図15に示すように、第2実施形態に係る入力装置100-2は、回転操作ノブ111の前側(Y軸正側)の開口部の内周面の全周に亘って、内歯車141が設けられている。
【0095】
また、第2実施形態に係る入力装置100-2は、保持部材114の回転部114Aの外周面の全周に亘って、外歯車142が設けられている。そして、保持部材114は、回転部114Aが、回転操作ノブ111の内歯車141の内側に配置され、回転部114Aの外歯車142が、常に回転操作ノブ111の内歯車141に噛み合うよう回転可能およびスライド可能に支持されている。
【0096】
このため、保持部材114の回転中心となる第2の回転軸AX2は、回転操作ノブ111の回転中心となる回転軸AXよりも半径方向における外側に設けられている。
【0097】
これに伴い、磁石123を通る回転移動を行う際に回転中心となる回転軸が第2の回転軸AX2となるように、磁石123、切り欠き部122A、第1の磁気センサ124A、および第2の磁気センサ124Bは、基板122において、左右方向(X軸方向)における中央よりも、左側(X軸負側)にシフトした位置に設けられている。
【0098】
第2実施形態に係る入力装置100-2は、回転操作ノブ111の内歯車141で、この内歯車141よりも歯数の少ない保持部材114の外歯車142を回転駆動することにより、保持部材114の回転角度を回転操作ノブ111の回転角度より増速する増速機構140を構成する。
【0099】
これにより、第2実施形態に係る入力装置100-2は、保持部材114の回転角度を回転操作ノブ111の回転角度より増速することで、回転操作ノブ111によって小さな回転角度の回転操作が行われた場合であっても、磁石123の回転角度をより大きくできるため、磁気センサ124の検出感度を高めることができる。
【0100】
特に、第2実施形態に係る入力装置100-2は、増速機構140が、保持部材114に設けられた外歯車142と、回転操作ノブ111に設けられた内歯車141とを有し、回転操作の際に、外歯車142が内歯車141によって増速駆動される構成を採用している。このため、第2実施形態に係る入力装置100-2は、増速機構140をスペース効率よく配置でき、確実に回転操作を増速することができる。
【0101】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0102】
例えば、2つ磁気センサ124は、磁石123を間に挟んで基板122の片方の面に互いに対向して配置されているものに限らず、磁石123の一の側方において、基板122の両方の面に配置されてもよい。
【0103】
また、例えば、磁気センサ124は、磁石123の一の側方に、1つだけ設けられてもよい。
【0104】
また、例えば、磁気センサ124は、GMRセンサに限らず、少なくとも磁界の方向を検出可能であれば、その他の磁気センサ(例えば、ホール素子、3Dセンサ等)であってもよい。
【0105】
また、例えば、基板122の切り欠き部122Aは、周縁部の一部が開放した形状(すなわち、切り欠き形状)を有するものに限らず、周縁部が閉じた形状(すなわち、開口形状)を有するものであってもよい。
【0106】
また、本実施例においては2つの磁気センサ124のうちの一方の磁気センサ124の検出値がスライド移動に伴って正値側に増加し、2つの磁気センサ124のうちの他方の磁気センサ124の検出値がスライド移動に伴って負値側に増加するように、2つの磁気センサ124が基板122に配置されているが、これに限らない。例えば、2つの磁気センサ124の検出値が双方とも、スライド移動に伴って正値側または負値側の同方向に増加するように、2つの磁気センサ124を基板122に配置しても良い。この場合、2つの磁気センサ124のうちの一方の磁気センサ124の検出値を回転移動に伴って正値側に増加させ、2つの磁気センサ124のうちの他方の磁気センサ124の検出値を回転移動に伴って負値側に増加させることができる。
【0107】
本国際出願は、2021年12月22日に出願した日本国特許出願第2021-208702号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0108】
110 操作部
111 回転操作ノブ
111A 隔壁部
111B 貫通孔
112 プッシュ操作ノブ
114 保持部材
114A 回転部
114B 保持腕部
114C 軸部
115 コイルスプリング
120 本体部
121 ケース
121A 隔壁部
121B 挿通孔
122 基板
122A 切り欠き部
123 磁石
124 磁気センサ
124A 第1の磁気センサ
124B 第2の磁気センサ
130 制御装置
131 検出信号取得部
132 判定部
133 出力部
140 増速機構
141 内歯車
142 外歯車
A スライド移動の方向
AX 回転軸
AX2 第2の回転軸
B 回転移動の方向
B1 反時計回り方向
B2 時計回り方向