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特許7586405マイクロフォンを備える携帯用装置を有する実験室システム、およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】マイクロフォンを備える携帯用装置を有する実験室システム、およびその方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20241112BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20241112BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20241112BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G06F3/16 650
G10L15/00 200L
G10L15/00 200R
G10L15/22 453
G10L15/22 470
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021556359
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020056962
(87)【国際公開番号】W WO2020187789
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】19163512.7
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロール、オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ブランダ、ガエタノ
(72)【発明者】
【氏名】シルバー、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シェーネベルク、ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】フセン、インガ
(72)【発明者】
【氏名】バルダス、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ティム、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ビットトーフ、サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】イスケン、フィリップ
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0105877(US,A1)
【文献】特表2014-500132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G10L 15/00
G10L 15/22
G06F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験室システムであって、
-化学物質を分析および/または合成するために設計された少なくとも1つの実験室装置と、
-前記少なくとも1つの実験室装置から得られたデータを処理するために設計された少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールと、
-前記少なくとも1つの実験室装置および/または前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを操作するためのインターフェースを提供する制御ソフトウェアを有するデータ処理装置と、
-マイクロフォンを有する携帯用装置であって、ネットワークを介して前記制御ソフトウェアへと相互操作可能に接続され、前記制御ソフトウェアと相互操作の状態で、ユーザーが、前記少なくとも1つの実験室装置および/または前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを、手動の介入を有しないで、前記マイクロフォンへと話すことによって操作できるように設計された、装置と、を備え、
前記制御ソフトウェアが、
-前記携帯用装置から、音声入力の基準で、前記マイクロフォンによってピックアップされた音声信号を受信し、前記音声信号は、前記ユーザーによって話される一般的な言語および技術的言語を含み、
-前記受信した音声信号を音声テキスト変換システムへと入力し、前記音声テキスト変換システムは、音声信号の前記技術的言語を含まない標的語彙への変換のみをサポートし、
-前記音声テキスト変換システムから、前記音声信号から前記音声テキスト変換システムによって作成されたテキストを受信し、
-前記受信したテキストから訂正されたテキストを発生し、前記訂正されたテキストは、前記制御ソフトウェア単独によって、または前記制御ソフトウェアがこれに操作可能なように接続される、解釈においてテキスト訂正ソフトウェアを用いる前記制御ソフトウェアによって発生し、前記訂正されたテキストは、テキスト形態になっている単語の割り当てテーブルに従って前記受信したテキスト内の前記標的語彙の単語および句を技術的言語によって自動的に置き換えることによって発生し、前記割り当てテーブルは、前記標的語彙からの少なくとも1つの単語を、複数の技術的言語の各々へと割り当て、技術的言語へと割り当てられた前記標的語彙のうちの前記少なくとも1つの単語は、その技術的言語が音声信号の形態で入力されたときに前記音声テキスト変換システムが間違って認識する単語または句であり、
-前記少なくとも1つの実験室装置および/または前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールが、前記訂正されたテキストにおける仕様に従って、前記分析、合成、および/またはソフトウェア機能を実施するように促すために、前記訂正されたテキストを使用するように構成される、実験室システム。
【請求項2】
前記制御ソフトウェアが、前記少なくとも1つの実験室装置および前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールの前記操作のために仮想実験室アシスタントとして設計された、請求項1に記載の実験室システム。
【請求項3】
前記携帯用装置が、
-前記ユーザーの音声信号を前記マイクロフォンを介して受信し、
-前記受信した音声信号を、前記制御ソフトウェアによる、またはそれに操作可能なように接続される音声テキスト変換システムによる、前記音声信号のテキストへの変換のために、前記制御ソフトウェアへと転送するように構成される、請求項1または2に記載の実験室システム。
【請求項4】
前記携帯用装置が、スピーカーをさらに備え、前記携帯用装置が、
-前記音声信号の送信に応答して、前記制御ソフトウェアからの機能の実行の結果を受信し、前記機能は、前記少なくとも1つの実験室装置によって、かつ/または前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールによって、前記テキストに従って実行され、かつ
-前記結果を、前記スピーカーを介して前記ユーザーに対して出力するように構成される、請求項3に記載の実験室システム。
【請求項5】
前記携帯用装置が、前記少なくとも1つの実験室装置と同じ部屋の中に位置付けられ、かつ/または前記少なくとも1つの実験室装置を備える実験室施設の主制御コンピューターと同じ部屋の中に位置付けられる、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の実験室システム。
【請求項6】
前記携帯用装置が、シングルボードコンピューターである、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の実験室システム。
【請求項7】
前記技術的言語が、以下の範疇、
-化学物質、特にペンキおよびワニスの名称、
-化学物質の物理的、化学的、機械的、光学的、または触覚的特性、
-実験室装置および化学薬品業界の装置の名称、
-実験室の消耗品および供給品の名称、
-前記ペンキおよびワニスの分野における商品名、のうちの1つからの単語である、請求項1~6のいずれか一項に記載の実験室システム。
【請求項8】
前記割り当てテーブル内に保存された標的言語の単語および句が、複数の異なる人員による技術的単語の音声入力の前記基準で作成された前記音声テキスト変換システムの間違ったテキスト出力を表す、請求項1~7のいずれか一項に記載の実験室システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの実験室装置が、複数の実験室装置であり、前記実験室装置が、
-化学物質もしくは物質混合物を分析するために設計された分析ステーション、および/または、
-化学物質または物質混合物の合成を実施するために設計された合成ステーション、および/または、
-後続の処理工程または搬送工程を可能にするように、分析工程または合成工程の前もしくは後に化学物質を修飾するために設計された前処理もしくは後処理ステーション、から成る群から各々選択される、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の実験室システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの実験室装置が、各々化学物質の処理ステーションとして役割を果たす、複数の実験室装置であって、
-前記処理ステーションが各事例において前記化学物質を少なくとも1つの処理工程に供することを可能にするために、合成または分析のために使用される前記化学物質を前記処理ステーションへと搬送するために設計された搬送ユニットと、
-複数の実験室装置を含む実験室施設の主制御コンピューターであって、構造化されたテキストの形態の命令に基づいて前記化学物質の前記処理工程および前記搬送を統合するように構成された制御ソフトウェアを含む主制御コンピューターと、をさらに備える、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の実験室システム。
【請求項11】
前記制御ソフトウェアが、NLPプロセッサを備え、または前記制御ソフトウェアが、NLPプロセッサと相互操作可能であり、かつ前記制御ソフトウェアが、
-前記訂正されたテキストを標的システムによって解釈することができる構造化されたテキストへと変形するために前記NLPプロセッサを使用し、前記標的システムが前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュール、前記少なくとも1つの実験室装置、および/または前記少なくとも1つの実験室装置を備える実験室施設の主制御コンピューターの制御ソフトウェアであり、かつ、
-前記標的システムが実験室関連ソフトウェアおよび/またはハードウェア機能を実施するように促すために、前記構造化されたテキストを標的システムへと入力するように構成される、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の実験室システム。
【請求項12】
手動の介入を有しない前記操作が、前記音声入力をテキストへと変換することを含み、
-前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールが、入力テキストを検索入力として解釈し、データベースにおける前記検索入力に関する情報を決定し、かつ前記制御ソフトウェアに対してこれを結果として返すように設計された化学物質データベースであり、
-前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールが、化学製品、特にワニスおよびペンキの特性を所定の物質混合物仕様に基づいてシミュレートするように設計された、シミュレーションソフトウェアであり、前記シミュレーションソフトウェアが前記入力テキストを、特性をシミュレートする前記化学製品の仕様として解釈するように設計され、
-前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールが、前記少なくとも1つの実験室装置を含む実験室システムの主制御コンピューターの制御ソフトウェアであり、前記制御ソフトウェアが、前記入力テキスト内に含まれる前記仕様により、前記少なくとも1つの実験室装置および搬送ユニットが複数の処理工程、および前記化学物質の前記実験室装置間の前記搬送を実施するように促すように設計された、請求項10に記載の実験室システム。
【請求項13】
前記制御ソフトウェアが、制御ソフトウェアを用いて登録された複数のユーザーのアカウントのレジストリを含み、前記制御ソフトウェアが、前記登録されたユーザーの各々をその声によって認識するための音声認識機能を備え、前記制御ソフトウェアが、前記ユーザーが手動の介入を有しないで、前記マイクロフォンに向かって話すことのみによって、前記ユーザーが操作する権限を与えられた前記実験室装置および/または前記実験室ソフトウェアモジュールを操作できるように設計された、請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の実験室システム。
【請求項14】
実験室装置および/または実験室ソフトウェアモジュールを制御するための方法であって、
-少なくとも1つの実験室装置および少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを提供することであって、前記少なくとも1つの実験室装置が、化学物質を分析および/または合成するように設計され、前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールが、前記少なくとも1つの実験室装置から得られたデータを処理するための実験室ソフトウェアモジュールである、ことと、
-制御ソフトウェアを有するデータ処理装置を提供することであって、前記制御ソフトウェアが、前記少なくとも1つの実験室装置および/または前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを操作するためのインターフェースをユーザーに提供する、ことと、
-マイクロフォンを有する携帯用装置を提供することであって、前記携帯用装置が、ネットワークを介して前記制御ソフトウェアへと相互操作可能に接続され、前記携帯用装置が、前記制御ソフトウェアと相互操作の状態で、ユーザーが、前記少なくとも1つの実験室装置および/または前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを、手動の介入を有しないで、前記マイクロフォンへと話すことによって操作できるように設計される、ことと、を含み、
前記制御ソフトウェアが、
-前記携帯用装置から、音声入力の基準で、前記マイクロフォンによってピックアップされた音声信号を受信し、前記音声信号は、前記ユーザーによって話される一般的な言語および技術的言語を含み、
-前記受信した音声信号を音声テキスト変換システムへと入力し、前記音声テキスト変換システムは、音声信号の前記技術的言語を含まない標的語彙への変換のみをサポートし、
-前記音声テキスト変換システムから、前記音声信号から前記音声テキスト変換システムによって作成されたテキストを受信し、
-前記受信したテキストから訂正されたテキストを発生し、前記訂正されたテキストは、前記制御ソフトウェア単独によって、または前記制御ソフトウェアがこれに操作可能なように接続される、解釈においてテキスト訂正ソフトウェアを用いる前記制御ソフトウェアによって発生し、前記訂正されたテキストは、テキスト形態になっている単語の割り当てテーブルに従って前記受信したテキスト内の前記標的語彙の単語および句を技術的言語によって自動的に置き換えることによって発生し、前記割り当てテーブルは、前記標的語彙からの少なくとも1つの単語を、複数の技術的言語の各々へと割り当て、技術的言語へと割り当てられた前記標的語彙のうちの前記少なくとも1つの単語は、その技術的言語が音声信号の形態で入力されたときに前記音声テキスト変換システムが間違って認識する単語または句であり、
-前記少なくとも1つの実験室装置および/または前記少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールが、前記訂正されたテキストにおける仕様に従って、前記分析、合成、および/またはソフトウェア機能を実施するように促すために、前記訂正されたテキストを使用するように構成される、方法。
【請求項15】
前記携帯用装置を提供することが、前記携帯用装置を、前記少なくとも1つの実験室装置と同じ部屋の中、および/または前記少なくとも1つの実験室装置を含む実験室施設の主制御コンピューターと同じ部屋の中に定置することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験室装置の制御に関し、特に複雑な実験室システムの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
化学実験室では、物質および装置からの様々な危険に起因して、そこでの安全な作業を確保するための様々な規則が適用される。したがって、実験室、そこで実行される活動、および使用される物質のタイプに応じて、安全規制は、以下、すなわち、実験用白衣に加えて、防護眼鏡または防護マスクおよび防護手袋も含まれる可能性がある、個人用保護具を着用する義務を含む可能性がある。規則として、食品および飲料は持ち込みまたは消費されてはならず、また、汚染を回避するために、机、マニュアル、紙形態の製品書類、コンピューターワークステーションおよびインターネットアクセスを有するオフィス区域と、実験室の作業区域とは、互いに物理的に分離される。物理的分離は、オフィス区域と実験室区域との間をセキュリティーゲートを介してのみ乗り換えることが可能であると規定される場合がある。実験室区域を離れるときに安全服を脱ぐことが必須である場合もある。
【0003】
安全対策は、ワークフローを複雑な、時として、非常に複雑なものにする。実験室装置、特に複雑な実験室システムは、いくつかの実験室装置を備え、ユーザーに、しばしば画面、マウス、およびキーボード、ならびに/またはタッチスクリーンから成るユーザー自身のユーザーインターフェースを提供する。これらは、しばしば、実験室用手袋で操作するのが困難または不可能な、標準的な装置の構成要素である。間違った入力の発生の増加があり、これはワークフローを遅れさせ、かつ実験室装置の間違った制御および操作につながる場合がある。実験室システムを操作する前に手袋を外すことは、汚染の危険をともない、作業を遅れさせ、かつ時として安全上の理由のために、まったく不可能である。
【0004】
個々の事例では、手袋での入力を容易にするために、例えば、大きいタッチスクリーンの形態の、特に大きいキーボードを有する実験室装置がある。しかしながら、この特殊なハードウェアは高価で、またすべての実験室装置に対して利用可能なわけではない。特に、標準的なコンピューターおよび標準的なノートブックは、こうした「手袋対応型」キーボードを有しない。しかしながら、例えば、実験室の状況で、オンラインで利用可能な化学データベースを研究することが可能なように、従来のインターネットブラウザーを有する標準的なコンピューターも操作する能力は、ますます重要になってきている。
【0005】
実験室装置および実験室システムを制御する、またはこれらと対話するための現在利用可能な選択肢は、化学または生物学実験室の状況では、非常に限られており、また非効率的である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、独立請求項による少なくとも1つの実験室装置または実験室ソフトウェアモジュールを制御するための改善された実験室システムおよび方法を提供することであり、これは、実験室関連、特に実験室状況におけるハードウェアおよびソフトウェア機能の改善された制御を可能にする。本発明の実施形態は、従属請求項に記載される。本発明の実施形態は、それらが相互に排他的でない場合には、互いに自由に組み合わせることができる。
【0007】
一態様では、発明は実験室システムに関する。実験室システムは、化学物質を分析および/または合成するために設計された少なくとも1つの実験室装置を含む。実験室システムは、少なくとも1つの実験室装置から得られたデータを処理するために設計された少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールをさらに含む。実験室システムは、少なくとも1つの実験室装置および/または少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを操作するためのインターフェースを提供する制御ソフトウェアを有するデータ処理装置をさらに含む。実験室システムは、マイクロフォンを有する携帯用装置をさらに含む。装置は、ユーザーが、手動の介入を有することなく、マイクロフォンに向かって話すことによって、少なくとも1つの実験室装置および/または少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを操作するのを可能にするために、ネットワークを介して制御ソフトウェアへと相互操作可能に接続され、かつ制御ソフトウェアとの相互操作のために設計される。
【0008】
本発明の実施形態は、例えば、生物学実験室および化学実験室において、1人以上の人員による実験室装置の、容易にされかつ改善された制御および管理を、可能にするので、有利である。実験室装置および関連付けられた実験室ソフトウェアモジュールの制御は、音声入力を介するため、制御コマンドを入力するために手袋を外す、または時間のかかる手段をとる必要はない。音声に基づく入力は、情報を、携帯用装置の音響範囲内の、特に実験室区域内のどこででも入力することを可能にする。したがって、音声入力を行う人員は、自分の実験室のワークステーションを離れる必要はなく、または実験室区域内の異なるワークステーションの間を、携帯用装置のマイクロフォンの受信範囲から離れない限り自由に移動することが可能である。
【0009】
標的システムの音声入力による制御は、それ自体公知である。市場では、コマンドの音声ベースの入力のためのマイクロフォンおよびパワフルなアプリケーションを有する低価格帯の端末装置、例えば、Alexa(Amazon(登録商標))のEcho Dot、Cortana(Microsoft(登録商標))を有する様々なメーカーからのスマートスピーカー、Googleアシスタント(Google(登録商標))のGoogle Home(登録商標) Max/Mini、およびSiri(Apple(登録商標))のHomePod(登録商標)が提供されている。しかしながら、これらは、ショッピング、ラジオ番組の選択、またはホテルの予約などのようなエンドユーザーの日常の活動をサポートするように設計されている。当該端末装置およびアプリケーションは、それ故に日常の状況のため、および標準的な言語のみをサポートするために設計されている。既存の端末装置は、実験室での使用のため、または技術的単語の認識のために設計されていないだけでなく、これらのために適していない。さらに、現在市販されている端末装置は、その後ユーザーによって修正されるように設計されていない。そのため、ユーザーは実験室のセッティングで現在市販されている音声認識を有するSmartSpeakerシステム使用できる可能性がない。本発明の実施形態によれば、単独でまたは他の構成要素との相互操作で技術的言語を含む音声入力もテキストへと正しく変換する能力を有する、制御ソフトウェアが開発されており、またこの制御ソフトウェアと相互操作可能なマイクロフォンを有する携帯用装置が開発されている。このようにして、実験室装置の音声ベースの制御を可能にする実験室システム、および関連付けられた実験室ソフトウェアモジュールが、同様に単純なやり方で、今日ではスマートホームの分野で、例えば、AmazonのEcho Dot(登録商標)の基盤では可能な、手動の介入を有しないで提供されている。
【0010】
実施形態によれば、制御ソフトウェアは、少なくとも1つの実験室装置および少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールの操作のための仮想実験室アシスタントとして設計されている。
【0011】
これは、ユーザーによる制御コマンドの入力、およびユーザーと実験室装置または実験室ソフトウェアモジュールとの間の対話をさらに容易にするので有利である場合がある。例えば、仮想実験室アシスタントは、その各々がコンピューター発生の、しかし自然の音響の音声を発生し、そして実験室装置または実験室ソフトウェアモジュールによる特定の機能の成果の結果をユーザーに対して自然な音声で読み上げる、1つ以上の音声発生器を実装することができる。仮想実験室アシスタントについては、特定の名前を「聴く」こと、つまり、音声入力または音声入力から作成されたテキストを調べてその名前が表されているかどうかを見て、表されている場合、ある特定機能をそれ自体が実施すること、または標的システムによって実施させることも可能である。実験室研究者は、それ故に制御ソフトウェアおよびそれによって実装される仮想実験室アシスタントと、人間の同僚と行うことになるのと同様のやり方で対話することができる。
【0012】
実施形態によれば、携帯用装置は、マイクロフォンを介してユーザーから音声信号を受信し、そして受信した音声信号を制御ソフトウェアへと転送するように構成される。音声信号は、制御ソフトウェアによる、または制御ソフトウェアへと操作可能に接続された音声テキスト変換システムによる音声信号のテキストへの変換を可能にするために転送される。
【0013】
本発明の実施形態によれば、携帯用装置は、スピーカーをさらに備える。携帯用装置は、音声信号の送信に応答して、制御ソフトウェアからの機能の実行の結果を受信するように構成される。テキストにより、当該機能は、少なくとも1つの実験室装置によっておよび/または少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールによって実施される。携帯用装置は、受信した結果をスピーカーを介してユーザーに出力するようにさらに構成される。
【0014】
例えば、受信した結果は、装置のテキスト読み上げ変換ソフトウェアを介して可聴信号へと変換されたテキストとすることができる。代替的な実施形態によれば、制御ソフトウェアは、テキスト読み上げ変換機能を含み、そして結果はすでに電子的な可聴信号の形態で携帯用装置へと送信され、そのため一部の実施形態では限られたコンピューティング能力しか有しない端末装置は、もはやテキスト読み上げ変換を実施する必要はない。
【0015】
スピーカーを介した音響信号としての結果の出力は、ユーザーの移動の自由を制限しないので、有利である場合があり、これはコマンドの音声ベースの入力によって達成される。ユーザーは、それ故にマイクロフォンの検出範囲内で、かつスピーカーの音響出力の可聴性内の実験室内の任意の点から自由に動くことができ、これによって音声入力による制御コマンドおよび研究リクエストの発令と、これらのコマンドの実行および/または情報検索の結果の受信との両方を行う。実験室の人員は、例えば、機械の再装填または再設定、プロセス工程の進捗状況のチェック、閉塞した構成要素もしくは搬送ボックスの開放、およびこれに類するもののために、頻繁に異なる装置および実験室区域の間を入れ替わる必要があるので、これは実験室作業の状況では特に有用である。
【0016】
一部の実施形態によれば、音声入力による実験室ソフトウェアモジュールまたは実験室装置によって実施されたソフトウェアまたはハードウェア機能の結果は、ユーザーに対して画面を介して表示される。これは、スピーカーを介した出力に加えてまたはその代わりに行うことができる。特に複雑な結果および広範囲に及ぶ結果の事例、例えば、データベースまたはインターネットクエリの過程において決定される文書では、スピーカーを介した出力のみの場合、ユーザーは長いテキストのすべての情報を受け入れ、かつ理解することができない場合があるため、画面上の出力は有利である場合がある。
【0017】
実施形態によれば、携帯用装置は、少なくとも1つの実験室装置と同じ室内に位置付けられ、かつ/または少なくとも1つの実験室装置を含む実験室施設の主制御コンピューターと同じ室内に位置付けられる。
【0018】
これは、ほとんどのタイプのマイクロフォン、そして特に携帯用装置のマイクロフォンは、室内の音声入力を録音する能力を有するので、そして/またはほとんどの一般的なスピーカーの音量、そして特に携帯用装置のスピーカーの音量は、同じ室内の人員が聞き、かつ理解するために十分であるので、有利である場合がある。
【0019】
一部の実施形態によれば、実験室システムは、2つ以上の本明細書に記載されるマイクロフォンおよび随意のスピーカーを有する携帯用装置を備える。これらの装置は、好ましくは実験室内で均等に分散して位置する。これは、音声入力の受信およびスピーカーを介した結果の出力の両方に関して良好な受信可能範囲を可能にするので、有利である場合がある。
【0020】
本発明の実施形態によれば、携帯用装置は、シングルボードコンピューター、特にRaspberry Piコンピューターである。
【0021】
こうしたシングルボードコンピューターは、例えば、エンドユーザーによって、自由に定義可能なサーバーサイドソフトウェアと相互操作可能なクライアントのソフトウェア、例えば、制御ソフトウェアをネットワーク上でインストールすることによって適合され、かつ修正されるように設計された、ユーザーが音声入力を介して制御ソフトウェアの機能性を使用できるようにするための低コスト装置であるので、これは有利である場合がある。
【0022】
例えば、「GoogleアシスタントSDK」は、Raspberry Piなどの端末装置へと統合されるGoogleの音声認識サービスを可能にする。これに関する多数のビデオチュートリアルをYoutube(登録商標)上で見つけることができる。
【0023】
しかしながら、本発明の実施形態によれば、携帯用装置は、Googleサービスまたは他の音声テキスト変換サービスに直接的に接続されず、その代わりにクライアントソフトウェアのみがインストールされ、これは携帯用装置を、データの交換をネットワーク接続された音声テキスト変換システムおよび変換システムから受信したテキストの訂正とコーディネートする制御ソフトウェアと相互操作可能にする。
【0024】
例えば、ソフトウェア「Google Assistant on Raspberry Pi」をRaspberry Pi上にインストールし、そして携帯用装置によって受信された音声信号を制御ソフトウェアへと送信するように構成することができる。したがって制御ソフトウェアのアドレスは、予め定義され、かつ携帯用装置内に保存される。これは携帯用の、そして非常に安価な端末装置を、実験室内のデータ処理装置との対話およびサービスを容易にする目的で提供し、この端末装置は、任意のソフトウェアアプリケーション、例えば、仮想実験室アシスタントを実装する制御ソフトウェアと相互操作するために構成することができるので、これは、有利である場合がある。
【0025】
Raspberry Piコンピューターは、低い演算能力のみを有し、したがって音声信号のテキストへの変換のコーディネーションだけでなく任意の後続のテキスト訂正も、他のよりパワフルな装置によってより迅速に実行することができるので、制御ソフトウェアに対するこのコーディネーション機能をアウトソーシングすることは、有利である場合がある。
【0026】
本発明の実施形態によれば、制御ソフトウェアは、携帯用装置からの音声入力に基づいてマイクロフォンによってピックアップされた音声信号を受信するように構成される。音声信号は、ユーザーによって話される標準的な言語および技術的言語を含む。制御ソフトウェアは、受信した音声信号を音声テキスト変換システムへと入力するようにさらに構成され、音声テキスト変換システムは、音声信号の技術的言語を含まない標的語彙への変換のみをサポートする。次いで、制御ソフトウェアは、音声テキスト変換システムから音声信号の基準で音声テキスト変換システムによって作成されたテキストを受信する。制御ソフトウェアは、受信したテキストから訂正されたテキストを作成するようにさらに構成され、訂正されたテキストは、制御ソフトウェアによって単独で、または制御ソフトウェアによって局所的にまたはネットワークを介して制御ソフトウェアが操作可能なように接続されるテキスト訂正ソフトウェアを用いた解釈で作成される。訂正されたテキストは、テキスト形態になっている単語の割り当てテーブルに従って、受信したテキスト内の標的語彙の単語および句を技術的言語で自動的に置き換えることによって作成される。割り当てテーブルは、標的語彙からの少なくとも1つの単語を複数技術的言語の各々に割り当てる。技術的言語に割り当てられた標的語彙のうちの少なくとも1つの単語は、技術的言語が音声信号の形態で入力されたときに、音声テキスト変換システムが誤って認識した単語または句である。制御ソフトウェアは、少なくとも1つの実験室装置および/または少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールに分析、合成および/または訂正されたテキストで指定されるようなソフトウェア機能を実施させるために訂正されたテキストを使用するように構成される。
【0027】
割り当てテーブルに基づくテキストの後続の訂正と組み合わせた、技術的単語をサポートしない音声テキスト変換システムの使用は、いくつかの理由で有益である可能性がある。
【0028】
一方で、数多くの一般的な言語の音声テキスト変換システム、例えば、Googleの「Speech to Text」がすでに存在し、これは一般的な言語の単語および句に対しては少なくとも高度な正確さを有する。そしてこれは、部分的に無料で使用することができ、かつ開放したAPIを介して占有のソフトウェアプログラムへと統合することができる。実験室状況での音声入力は、通常技術的単語と一般的な言語の単語との混合を含み、そのため、少なくとも一般的な言語の単語のテキストへの正しい変換が保証される。Googleおよび他のクラウドサービスプロバイダーの音声テキスト変換システムが、継続的に開発されているが、これは実験室装置および実験室管理システムのメーカーは、通常Google、Amazon、およびAppleなどの大手のクラウドサービスプロバイダーと同じ品質で提供することのできないサービスである。
【0029】
当該一般的な言語の音声テキスト変換システムは、しかしながら、技術的言語(「技術的単語」)が音声テキスト変換システムによってサポートされていないため、それだけでは実験室の状況で使用するのに好適ではない。生物学および特に化学業界では、実験室の状況では、多数の技術的単語が使用される。これは一般的な言語では生じない。これらは音声テキスト変換システムによって認識されないので、その代わりに類似の音響を有する一般的な言語の単語が間違って認識され、そしてテキストへと変換される。しかしながら、特に化学実験室の状況では、高精度の音声認識が特に重要である。日常の言語では、細かい間違いは、しばしばそのように認識可能であり、ユーザーまたはレシーバーシステムによって簡単に訂正する、または補うことができる(例えば、単数形/複数形の間違った認識は、異なるインターネット検索エンジンにおいて著しく異なる結果を返すような対応するエントリーを生じない)が、化学合成の文脈では、最小限の逸脱(例えば、「トリス」のかわりに「ビス」)でさえも、話し手が実際に意味したものとまったく異なる物質が「認識される」ことにつながる可能性があり、結果として得られる製品が使用不能になることにつながる可能性がある。日常の使用のための当該音声テキスト変換システムは、したがって生物学実験室および化学実験室での使用のためには適さない。
【0030】
既存の音声テキスト変換システムのうちの一部は、必要性および特定の専門家の分野の語彙のために特に設計されている。例えば、Nuance社は、法律家用のソフトウェア「Dragon Legal」を提供している。これは、日常の言語の語彙に加えて法律用語を含む。しかしながら、特定の実験室(例えば、ペンキおよびワニスの製造および分析の分野における)で必要とされる語彙は、大変特異的であり、例えば、標準的な化学の教科書から採られた可能性がある化学用語を有する音声認識ソフトウェアでさえ、大幅に変化するという欠点があり、多くの事例では、実験室では物質の商品名を用いて作業しているため、しばしば特定の企業または化学業界の特定の部門の実務には適さないことになる。これらの商品名は、変更される可能性があり、または関連する製品に対して毎年多数の新しい商品名が追加される。特に、毎年多数のペンキおよびワニスの製造のために使用することができる追加的な製品および製品のバリエーションが新しい商品名で市場に現れる。たとえGoogleまたはAppleの日常の言語システムの正確さに近く、かつほとんどの重要な化学用語(この場合には当てはまらない)を含む、言語テキスト変換システムがあったとしても、このシステムは、特にペンキおよびワニスの製造では、化学実験室において役割を果たす名前の動態および数の多さに起因して、実務において関連するほとんどの単語は、サポートされていないことになり、または少なくとも数年後には語彙は完全に時代遅れのものになることになるので、実務での使用のためにあまり適切ではないことになる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、この問題は、関連する技術用語をサポートしないことが知られている音声テキスト変換システムを使用することによって上述のように解決される。それ故に、ここでは最初から、非常に小さい市場のみに応えることになり、したがって音声入力において、技術化学用語に加えて、これらも考慮する必要があり、かつ正しく認識される必要がある一般的な言語用語に関与する限り、ほぼ確実に公知の大手の変換システム(Amazon(登録商標)、Google(登録商標)、Microsoft(登録商標) Azure(登録商標)、またはApple(登録商標)からの)の認識の正確さを達成しないことになる、高価で複雑な特定の開発を実施しようとしない。その代わりに、本発明の実施形態は、一般的な言語用語に対しては、既存のサービスプロバイダーのすでに非常に良好な認識の正確さを活用し、そして認識されたテキストを出力する前に訂正を実行する。訂正の過程で間違って認識された単語は、割り当てテーブルの基準で技術的単語によって置き換えられ、そのため最終的に出力される訂正されたテキストが生成される。ソフトウェアを実用的な使用に対して好適に保つために、分野の動態ならびに多数の市場参加者、製品、および製品名に起因して継続的に更新されなければならない、高度に特異的な技術的語彙が、最終的に割り当てテーブル内に収容される。これは、ごくわずかな労力で最新に保つことができる。統計的言語モデルのプログラムソースコードの修正、再コンパイル、および/または機械学習プログラムのリトレーニングは、したがって本発明の実施形態によれば必要ない。テーブルの修正または追加で十分である。
【0032】
各々の場合に、その技術的単語に対して間違って認識された1つ以上の標的語彙の単語と一緒に、新しい技術的単語を割り当てテーブルに単純に追加することによって、新しい技術的単語を追加することができる。技術的な観点から、技術的単語の保存および更新は、それ故に実際の音声認識の論理から完全に切り離されている。これは、音声認識サービスの特定のプロバイダーに依存するのを回避する利点も有する。音声認識の分野は、依然として歴史が浅く、認識の正確さおよび/または価格に関して長い目で数多くの並列のソリューションのうちのどれが最良の選択になるのか予測できない。本発明の実施形態によれば、特定の音声テキスト変換システムとのつながりは、受信した音声信号をこの変換システムへと最初に送信し、そして(間違った)テキストを受信したときにのみ確立する。加えて、割り当てテーブルは、この特定の変換システムによって特定の技術的用語に対して(間違って)返された標的語彙の間違って認識された単語を収容する。しかしながら、(間違った)テキストを作成するために異なる音声テキスト変換システムを使用することによって、これらは両方とも簡単に変更することができ、そしてこの目的のために、他の変換システムを使用して割り当てテーブルも再生成する。例えば、構文パーサおよび/またはニューラルネットワークの論理に対する複雑な変更は必要ない。
【0033】
本発明の実施形態による日常の言語の音声テキスト変換システムの組み合わせは、化学業界または化学薬品製造における販売代理店のためにも有利である場合がある。これらの人々は、いずれにしても仕事の過程でコンピューターまたは少なくともスマートフォンをしばしば使用し、かつ、例えば、キーボードを介したテキスト入力によるよりもアプリまたはブラウザープラグインとしての設計された訂正ソフトウェアへの音声入力によって、顧客または自分の仕事から注意をそらすことがあまりないためである。これらのユーザーは、音声信号をこれらのユーザーから音声テキスト変換システムへと制御ソフトウェアを介して送るために、彼らの端末装置上でクライアントのソフトウェアを介して実験室システムの実験室装置および/または実験室ソフトウェアモジュールの機能へのアクセスまたは制御も与えられる可能性があり、このクライアントのソフトウェアは、制御ソフトウェアと相互操作可能である。
【0034】
別の利点は、実施形態による携帯用装置が、音声信号を受信する、これを制御ソフトウェアへと送る、そして随意に音声入力の仕様による機能の実行の結果を受信および出力するのみであることとすることができる。音声信号からテキストへの実際の音声テキスト変換、つまり間違いなく最も演算的に集約的な工程は、音声テキスト変換システムによって実施される。音声テキスト変換システムは、例えば、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して制御ソフトウェアへと接続されるサーバーとすることができる。それ故に、低い処理能力を有する携帯用装置、例えば、スマートフォンまたはシングルボードコンピューターも、長く、かつ複雑な音声入力の入力のために使用することができ、またその上に制御ソフトウェアがインストールされたコンピューターのリソースも保存される。
【0035】
本発明の実施形態によれば、技術的言語は、以下の範疇のうちの1つからの単語である。
-化学物質の名称、特にペンキおよびワニス、特に化学命名規則、例えば、IUPAC命名法による化学名も指す、
-化学物質の物理的、化学的、機械的、光学的、または触覚的特性、
-実験室装置および化学業界由来の装置(例えば、商品名またはユーザーによって実験室の実験室装置に対して割り当てられた固有名)、
-実験室の消耗品および供給品の名称、
-ペンキおよびワニスの分野における商品名。
【0036】
本発明の実施形態によれば、技術的言語は、化学の分野、特に化学業界、特にペンキおよびワニスの化学からの単語である。
【0037】
本発明の実施形態によれば、標的語彙は、一般的な言語の単語の組から成る。
【0038】
本発明の他の実施形態によれば、標的語彙は、一般的な言語の単語の組だけでなく、それらから派生した単語からも成る。これらの派生語は、例えば、2つ以上の一般的な言語の単語の動的に作成された連結とすることができる。ドイツの言語では、例えば、多くの単語、特に名詞は、いくつかの他の名詞を組み合わせることによって形成される。例えば、ドイツ語の単語「Schiffsschraube」(船のスクリュー)は、とても一般的であり、通常ほとんどのドイツ語の一般的な言語の辞書に載っている。対照的に、「Besfestigungsschraube」(締結ねじ)などのやや稀にしか使用されないドイツ語の用語は、ほとんどのドイツ語の一般的な言語の辞書には載っていない。しかしながら、一部の音声テキスト変換システムは、経験則および/またはニューラルネットワークにより、個々の単語の構成要素である「Besfestigung」および「Schraube」が標的語彙の一部であるという条件で「Besfestigungsschraube」のような単語も認識することができる。この意味では、単語「Besfestigungsschraube」も、そのためこのタイプの音声テキスト変換システムの標的語彙に属する。
【0039】
本発明の他の実施形態によれば、標的語彙は、認識される音節を組み合わせることによって形成された単語によって補完された一般的な言語の単語の組から成る。これらの音声テキスト変換システムは、それ故に、認識を、単に個々の単語のレベルではなく、個々の音節のレベルで(少なくとも個々の音節のレベルでも)行うことができるため、単語を認識することができることに関してより柔軟である。しかしながら、音節に基づく認識は、いかなる公知の語彙にも載っていない単語を間違って認識するリスクが特に高いため、特にエラーを起こしやすくもある。サポートされている音節の組、または既知の音節の組の有限性、および典型的な単語の長さによる組み合わせることができる音節の組の限度に起因して、音節に基づいて作成することができる標的単語の組もまた有限である。それ故に、音節に基づく単語の作成をサポートする音声テキスト変換システムでさえも、より大きい柔軟性にもかかわらず有限の標的語彙を有する。こうしたシステムでさえも、柔軟性に起因して、理論上は動的に認識することができる多くの化学用語は、予め知られている辞書に載っておらず、実務における認識の正確さは、実用的な使用に関してはとても低く、これらの最終的に標的語彙を有するシステムでさえ、これらの化学用語を含まない、またはサポートしない。
【0040】
本発明の一部の実施形態では、標的語彙は、それらから派生した単語によって補完された、および認識される音節を組み合わせることによって形成された単語によって補完された一般的な言語の単語の組を含む。これらの変換システムは、技術的単語を収容しない、または実用的な使用においてそれらを十分な正確さで認識することができず、しかしその代わりに他の単語、典型的に一般的な言語の単語、を間違って認識し、そしてそれらをテキストへと変換する、標的語彙にも基づく。
【0041】
それ故に、現在すでに利用可能である様々な異なる音声テキスト変換システムを、これらのシステムが実質的に日常の言語のみを「サポートする」(すなわち、それらを十分な正確さで正しく認識し、かつテキストへと変換することができる)場合でさえも、本発明の実施形態に対して使用することができる。
【0042】
本発明の実施形態によれば、テキスト訂正を実施するコンピューターシステム、例えば、制御ソフトウェアまたは訂正コンピューターを有するコンピューターは、音声信号から音声テキスト変換システムによって作成された少なくともテキスト内の一部の単語について頻度情報を受信または計算する。頻度情報は、このテキスト内の各単語についてこのテキスト内でこの単語の発生がどれくらいの頻度であると予想されるかを統計的に示す。
【0043】
訂正されたテキストを作成するとき、受信した頻度情報によるその統計的に予想される発生の頻度が予め定義された閾値より低い受信したテキスト内の標的語彙の単語のみが割り当てテーブルに従って技術的言語によって選択的に置き換えられる。
【0044】
これは、ユーザーからの音声入力は通常一般的な言語の単語と技術的単語との混合を含むので、有利である場合がある。それ故に、変換システムによって受信されたテキストが、割り当てテーブル内で技術的単語に割り当てられた標的語彙の、そして通常は置換されることになる単語を含む場合がある。例えば、返されたテキストは、「ポリマーイノベーション」という句を含む場合がある。この用語「ポリマーイノベーション」は、割り当てテーブル内で技術的単語「ポリメリゼーション」に割り当てられているため、この用語はテキスト訂正の過程で通常「ポリメリゼーション」によって置き換えられる。しかしながら、この用語「ポリマーイノベーション」に発生の高い確率を表す頻度が割り当てられる場合、訂正ソフトウェアは、この発生の頻度に基づいて、割り当てテーブル内で技術的単語に割り当てられているが、この用語「ポリマーイノベーション」は正しいと仮定し、そして結果としてこの用語「ポリマーイノベーション」をテキスト内で変更しないままにする。例えば、文の中の単語の、または音声入力全体の中の文脈上の分析は、例えば、テキストが特定のポリマー製品の恩恵を説明している販売代理店に由来するため、単語「イノベーション」が、テキスト内で単独で頻繁に発生することを明らかにする場合がある。この文脈では、用語「ポリマーイノベーション」は、正しく認識される句である場合もある。「ポリマー」も「イノベーション」も単独では述べられない文脈では、確率は低減する。単語は、文脈とは無関係の異なる発生の確率も有し、これは、例えば、大きいテキストコーパスから派生した可能性がある。
【0045】
受信したテキスト内の単語の発生の確率に応じて割り当てテーブルによって単語を置き換えることは、数少ない個々の事例において、それ自身で、または問題のテキストの文脈で高い発生の確率を有する標的言語の単語が、誤って技術的単語によって置き換えられ、そして置き換えによって訂正される代わりにエラーが生じる状況を回避するため、有利である場合がある。
【0046】
一実施形態によれば、テキストの単語の発生の頻度は、音声テキスト変換システムによって計算され、そして音声テキスト変換システムからのテキストと一緒に制御ソフトウェアへと返される。例えば、音声テキスト変換システムは、文の文脈における特定の単語の発生の確率を計算するために、隠れマルコフモデル(HMM)を使用してもよい。追加的にまたは代替的に、音声テキスト変換システムは、単語の発生の頻度を、大きい参照コーパスにおける単語の発生の頻度と同等に見なすことができる。例えば、数年にわたる新聞のテキストの全体、または他の何らかの大きいテキストのデータセットは、参照コーパスとして役割を果たすことができる。コーパスにおける計数した単語の数とコーパスにおける単語の総数との比は、この参照コーパスにおける観察されたこの単語の発生の頻度である。頻度データを、テキストとともに音声テキスト変換システムから制御ソフトウェアへと送信することができる。
【0047】
さらなる実施形態によれば、テキストの単語の発生の頻度は、テキストの受信の後、制御ソフトウェアまたは訂正ソフトウェアによって計算される。すでに以前に記述したように、個々の単語または句の発生の確率の計算は、単語のテキストの文脈を考慮して、または参照コーパスにおける単語の頻度を使用して、HMMにより実施することができる。参照コーパスは、例えば、音声テキスト変換システムによって制御ソフトウェアまたは訂正ソフトウェアへと以前に送信されたテキスト全体とすることができる。
【0048】
それ故に、実施形態によれば、頻度データの計算(例えば、制御ソフトウェアまたは訂正ソフトウェアによる)は、隠れマルコフモデルを使用して実施される。例えば、予想される発生の頻度、すなわち、発生の確率は、例えば、B.Cestnik"Estimating probabilities:A crucial task in machine learning"In Proceedings of the Ninth European Conference on Artificial Intelligence,pages147-150,Stockholm,Sweden,1990.に記載のように、単語の連続の中の個々の単語の発出確率の積として計算することができる。
【0049】
本発明の実施形態によれば、音声テキスト変換システムによって音声信号から発生したテキストの中の少なくとも単語の一部に対しては、テキストに加えて、テキスト訂正を実施するプログラムは、品詞タグ(POSタグ)も受信する。POSタグは、音声テキスト変換システムによって制御ソフトウェアから直接的に、または訂正ソフトウェアから制御ソフトウェアを介して受信され、そして少なくとも名詞タグ、形容詞タグ、および動詞タグを含む。POSタグが、構文タグまたは意味的タグという追加的なタイプを含むことも可能である。考慮されるPOSタグの厳密な組み立ては、言語にもよる可能性がある。割り当てテーブルでは、技術的言語は、POSタグと一緒に結合して保存される。訂正されたテキストを作成するとき、受信したテキスト内の標的語彙のそのPOSタグが一致するこれらの単語のみが割り当てテーブルにより技術的言語と置き換えられる。
【0050】
これはテキスト訂正工程の正確さを増加させるので、有利である場合がある。テーブル内のエントリーは、技術的言語の単語または句をマイクロフォンへと入力する1人以上の話し手によって半自動的に作成されるので、割り当てテーブルにおけるPOSタグの正確性を、仮定することができ、結果として得られる可聴信号は、音声テキスト変換システムによって標的語彙の(間違った)単語または(間違った)句へと変換され、そしてこの間違った単語またはこの間違った句は、技術的言語の句と結合した割り当てテーブルの中に保存される。技術的言語の用語が何を表すか、またそれが例えば、名詞か、動詞か、または形容詞かは知られているため、技術的言語の用語は、テーブルが作成または更新されるのと同時に正しいPOSタグとも結合して保存されてもよい。そのため、割り当てテーブルによって、テキスト内のある特定の単語および句を技術的言語によって置き換える必要があり、しかしテキストの置き換えられるべきPOSタグが、技術的言語のPOSタグと一致しない場合、これはテキスト内の対応する単語が結局は正しい場合があるという兆候である。POSタグの認識率は、比較的高く、そのためこの尺度は、訂正工程の品質を向上することができる。例えば、技術的言語は、商品名「Platilon(登録商標)」とすることができる。これは、Covestro社製の熱可塑性ポリウレタンフィルムを指定する。テーブルでは、この技術的単語に対してはPOSタグ「名詞」が割り当てられる。音声テキスト変換システムから、話された単語「Platilon」をしばしば標的語彙の単語「プラチナ」へと間違って変換することが知られている。したがって標的語彙の単語「プラチナ」は、割り当てテーブルにおいて技術的単語「Platilon」へと割り当てられる。しかしながら、ユーザーによる最近の音声入力では、この単語は形容詞的に使用されていた:「プラチナ系触媒または亜鉛系触媒の添加[...]」。変換システムによって返されたテキスト内の「プラチナ」のPOSタグに基づいて、単語「プラチナ」はここでは正しく、「Platilon」によって置き換えられるべきではないことを認識することが可能である場合がある。
【0051】
実施形態によれば、制御ソフトウェアは、クラウドコンピューターシステムまたはシングルサーバーコンピューターシステムからクラウドサービスとして提供される。このクラウドコンピューターシステムまたはサーバーシステムは、例えば、実験室(例えば、大学または企業)のオペレーターによって操作されるシステムであってもよい。
【0052】
一実施形態によれば、制御ソフトウェアは、テキスト訂正をそれ自身で、または制御ソフトウェアと同じコンピューター上にローカルにインストールされたプログラムと相互操作で実施する。
【0053】
別の実施形態によれば、音声テキスト変換システムから受信したテキストの訂正は、ネットワークを介して制御ソフトウェアのコンピューターに接続された別のコンピューターによって実施される。他のコンピューターは、例えば、クラウドシステムまたはシングルサーバー(例えば、これも実験室のオペレーターによって操作される)であってもよい。制御ソフトウェアは、受信したテキストを、これによって配分テーブルの基準で訂正が実施されるソフトウェアおよびコンピューターへと送信し、そして訂正されたテキストをこのソフトウェアまたはコンピューター(「訂正ソフトウェア」または「訂正コンピューター」)から受信する。制御ソフトウェアをリモートの訂正ソフトウェアへと接続するネットワークは、例えば、インターネットまたは組織のイントラネットであってもよい。この実施形態は、一方では制御ソフトウェアの機能およびデータのアクセス権のより良好な分離が可能であり、もう一方では訂正ソフトウェアが可能なので、有利である場合がある。テキスト訂正が別個の訂正コンピューターまたは訂正クラウドシステム上で実行される場合、ユーザーは、制御ソフトウェアの機密データ(例えば、実験室装置の機密機能を制御することができる)に対するアクセスを許可する必要なしに、テーブルを更新する目的のために、訂正コンピューターまたは訂正クラウドシステムに対して選択的なアクセスを許可することができる。
【0054】
それ故に、本発明の実施形態によれば、データ交換の、音声テキスト変換システム、テキスト訂正、および訂正されたテキストの実行システムへの伝達とのコーディネーションは、制御ソフトウェアによって完全に実施され、またはオーガナイズおよびコーディネートされる。それ故に、一部の方法の実施形態によれば、携帯用装置は、基本的にマイクロフォンと、訂正されたテキストの実行の結果のための随意の出力インターフェースとを有する装置である。
【0055】
本発明の実施形態によれば、音声テキスト変換システムは、インターネット上で複数の端末装置へと提供されるサービスとして実装される。例えば、音声テキスト変換システムは、Googleのspeech-to-textクラウドサービスを使用するクラウドコンピューティングシステムとすることができる。これは、これに対する(例えば、.NET用)機能的にパワフルなAPIクライアントライブラリが利用可能なので、有利である場合がある。
【0056】
携帯用装置は、データを制御ソフトウェアと交換するための予め構成されたクライアントソフトウェアを含んでもよい。つまり、携帯用装置上のクライアントソフトウェアは、音声信号をネットワーク上で制御ソフトウェアへと送信するように構成され、そのため制御ソフトウェアは、音声信号のテキストへの変換と、テキストの技術的言語訂正と、訂正されたテキストによる機能の実行とをもたらすことができる。訂正されたテキストの実行の結果は、音声信号の送信に応答して携帯用装置によって受信することができ、またスピーカーを通して出力することができる。
【0057】
本発明の実施形態によれば、割り当てテーブル内に保存された標的言語の単語および句は、複数の異なる個人による技術的単語の音声入力に基づいて作成された音声テキスト変換システムの間違ったテキスト出力を表す。
【0058】
本発明の実施形態によれば、方法は、割り当てテーブルを作成する工程を含む。複数の技術的言語の各々に対して、その技術的言語を選択的に表す少なくとも1つの参照音声信号が録音される。参照音声信号は、少なくとも1つの話し手から発せられる。技術的言語の句についても、この技術的言語の句を選択的に再生成する少なくとも1つの参照音声信号を、各事例において少なくとも1人の話し手が話し、かつ録音することができる。さらなる工程は、単語および句に対して実質的に同一であり、そのため以下では、技術的言語が述べられるときには、技術的言語の句が含まれる。録音された参照音声信号の各々は、音声テキスト変換システムに対する入力である。入力は、特にネットワーク(例えば、インターネット)を介して行われてもよい。入力参照音声信号の各々に対しては、参照信号を入力する装置は、入力参照音声信号から音声テキスト変換システムによって作成された標的語彙の少なくとも1つの単語を受信する。この装置は、例えば、マイクロフォンおよび音声テキスト変換を有する任意のデータ処理システムへの接続であってもよい。好ましくは、参照音声信号は、そのマイクロフォンのタイプおよび/または同じエラーが再現可能に発生することを確実にするための雑音源に対するその位置決めに関して、携帯用装置と可能な限り同様な装置を介した入力である。音声テキスト変換システムの標的語彙は、技術的言語をサポートしないので、技術的言語の各々に対して受信した標的語彙の少なくとも1つの単語(これは句であってもよい)は、エラー変換を表す。最終的に、割り当てテーブルは、それに対して少なくとも1つの参照音声信号が録音されている技術的言語の各々に対して、技術的言語に対して音声テキスト変換システムから返されたテキスト形態にある標的語彙の少なくとも1つの単語を割り当てるテーブルとして作成される。
【0059】
これは、ソースコードの変更、プログラムの再コンパイル、またはニューラルネットワークのリトレーニングの必要なくテーブルを非常に簡単に修正および補完することができるので、有利である場合がある。別の音声テキスト変換システムが使用される場合でさえも、適切なクライアントインターフェースのみを適合することが必要であり、テーブルの技術的言語の句は、1人以上の話し手によってマイクロフォンを介して再入力され、そして新しい音声テキスト変換システムへと送信される。標的言語の間違った単語および句は、この新しいシステムによって返され、新しい割り当てテーブルのための基盤を形成する。それ故に、任意の日常の言語の音声テキスト変換システムを、技術的言語の単語および句を含む話されるテキストもテキストへと正しく変換されるようなやり方で、徹底的なまたは複雑な変更を有しないで、またスピーチソフトウェアのリトレーニングを有しないで、機能的に延長することが可能である。
【0060】
割り当てテーブルは、例えば、リレーショナルデータベースのテーブルとして、またはタブ区切りテキストとして、または別の機能的匹敵するデータ構造として保存することができる。
【0061】
本発明の実施形態によれば、技術的言語(または技術的言語の句)の各々のうちの少なくとも一部に対して、各々異なる話し手からの複数の参照音声信号が録音される。複数の参照音声信号は、その技術的言語(または句)を再生成する。割り当てテーブルは、技術的言語(または句)のうちの少なくとも一部の各々を、標的語彙の複数の単語(または句)にテキスト形態で割り当てる。標的語彙の複数の単語(または句)は、音声テキスト変換システムによって生成されたその声による異なる話し手に対するミスコミュニケーションを表す。
【0062】
例えば、「1,2メチレンジオキシベンゼン」などの特異的な技術的単語を、100人の異なる人員によって声に出して読ませ、各々マイクロフォンを用いて参照音声信号として録音することができる。好ましくは、これらの人員は、化学的な句の発音を熟知した人員である。こうして、この1つの物質名に対して100個の参照音声信号ができる。これらの100個の参照音声信号の各々は、音声テキスト変換システムへ送信され、応答して標的語彙の100個の単語または句が返されるが、そのすべてが実際の技術的な言語の名称を表すわけではない。しばしば返された100個の単語は同一であるが、常にそうなるわけではない。異なる人員は、異なる声を有し、すなわち、音声入力は、強調、音量、音程、および発音の仕方に関して異なる。したがって、所与の技術的言語(または句)に対して所与の音声テキスト変換システムがいくつかの異なる、間違った単語または句を返すことになる可能性があり、そのすべては割り当てテーブルに含まれることになる
【0063】
割り当てテーブルの作成のために数多くの異なる人員の音声入力を考慮することは、有利である場合がある。これは、人の声のばらつきをより良好に考慮し、そしてそれ故に改善されたエラー訂正率を達成することができるからである。
【0064】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの実験室装置は、複数の実験室装置である。実験室装置は、以下から成る群から各々選択される。
-化学物質もしくは物質の混合物を分析するために設計された分析ステーション、および/または、
-化学物質または物質の混合物の合成を実施するために設計された合成ステーション、および/または、
-後続の処理工程または搬送工程を可能にするように、分析または合成工程の前もしくは後に精製、他の物質との組み合わせ、希釈、濃縮、または別の方法で化学物質を修飾するために設計された前処理ステーションまたは後処理ステーション。
【0065】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの実験室装置は、その各々が化学物質のための処理ステーションとして役割を果たす、複数の実験室装置である。実験室装置および随意に少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールは、追加的に搬送ユニットも備える実験室施設の一部であってもよい。搬送ユニットは、処理ステーションが物質を少なくとも1つの処理工程に供することを可能にするために、合成または分析のために使用される物質を処理ステーションへと搬送するために設計される。
【0066】
本発明の実施形態によれば、実験室システムは、少なくとも1つの実験室装置を備える実験室施設の主制御コンピューターをさらに備える。主制御コンピューターは、構造化されたテキストの形態の命令に基づいて、実験室施設の実験室装置によって処理工程および化学物質の搬送を統合するように構成された制御ソフトウェアを含む。
【0067】
本発明の実施形態によれば、制御ソフトウェアは、NLPプロセッサ(NLP=自然言語処理)を備える、またはネットワークを介して接続されたNLPプロセッサと相互操作可能である。ここで、別のソフトウェアアプリケーションと相互操作可能であるソフトウェアアプリケーションについては、これは、2つの相互操作可能なソフトウェアアプリケーションのインターフェースおよびルーチンが互いにコーディネートされ、かつ適合されることを意味し、これにより両方がともにリクエスト、制御コマンド、およびデータをコーディネーションされた様態で交換することができ、その結果このコーディネートされた交換を通して、特定のソフトウェアベースの機能が実施され、かつその結果がリクエストしたソフトウェアアプリケーションへと返される。制御ソフトウェアは、訂正されたテキストを標的システムによって解釈することができる構造化されたテキストへと変形するためにNLPプロセッサを使用するように構成される。標的システムは、少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュール、および/または少なくとも1つの実験室装置、および/または少なくとも1つの実験室装置を備える実験室施設の主制御コンピューターの制御ソフトウェアである。制御ソフトウェアは、NLPプロセッサによって訂正されたテキストの基準で形成された構造化されたテキストをNLPプロセッサから受信し、そして標的システムへと入力するように構成される。構造化されたテキストの標的システムへの入力は、標的システムに実験室関連ソフトウェアおよび/またはハードウェア機能を実施させる。
【0068】
例えば、M.Hummel、D.Porcincula、およびE.Sapperは、European Coatings Journal(01.02.2019)の「NATURAL LANGUAGE PROCESSING.A semantic framework for coatings science-robots reading formulationsという記事に、構文パーサ、POSタグ付け、および他の技法を使用する自然言語テキスト入力の構造化されたテキストへの変形を記載している。
【0069】
例えば、標的システムは、少なくとも1つの実験室装置および搬送ユニットであってもよく、これらは構造化されたテキストの入力によって、複数の処理工程および化学物質の実験室装置間の搬送を構造化されたテキスト内に含まれる情報により実施するように促される。
【0070】
別の実施例によれば、標的システムは、実験室施設の制御ソフトウェアであり、構造化されたテキストの入力は、構造化されたテキスト内に含まれる情報によりソフトウェア機能を実施するようにこれを促す。ソフトウェア機能は、例えば、実験室装置を適宜に構成または較正するために、またはpH値および粘度を調整するために、例えば、テキスト内で定義されるある特定の分析および/または合成を実施する過程で使用されるある特定の濃度または他のパラメータの計算である。
【0071】
別の実施例によれば、標的システムは、施設によってすでに実施された分析および合成の結果を含む、実験室施設の化学データベースである。構造化されたテキストの入力は、構造化されたテキスト内に収容される情報および用語についてのデータベース検索をこれに実施させる。検索結果を、結果として制御ソフトウェアを介してユーザーへと直接的に返すことができ、または、例えば、検索した物質に基づく有利な調合のシミュレーションおよび予測のために、さらなるデータ処理工程のための入力を含んでもよい。
【0072】
実施形態によれば、実験室システムは、化学物質の分析および/もしくは合成のための化学施設、ならびに/または物質混合物、特にペンキおよびワニスの製造のための施設を含む。システムは、制御ソフトウェアを有する主制御コンピューターも含む。少なくとも1つの実験室装置および少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールは、ハイスループット施設の一部であり、また制御ソフトウェアによって制御ソフトウェアを介して制御および管理されてもよい。施設は、訂正されたテキストを、合成の仕様として、または物質混合物の構成成分の仕様としてまたは、実施される分析の仕様として解釈するように設計される。
【0073】
施設は、ハイスループット施設(HTE施設)、例えば、ペンキおよびワニスの分析および製造のためのハイスループット施設であってもよい。例えば、HTE施設は、国際公開第2017/072351 A2号に記載のような化学製品の自動的な試験および製造のためのシステムであってもよい。
【0074】
訂正されたテキストが施設の制御ソフトウェアへと変換される、訂正されたテキストまたは構造化されたテキストの出力は、訂正されたテキスト内で指定されるように、施設の1つ以上の実験室装置および/または1つ以上の実験室ソフトウェアモジュールを、制御ソフトウェアに制御させる。音声入力は、例えば、この目的で、ユーザーが手袋を外す必要なしに、技術的システムへと直接的に転送することができ、かつ技術的システムによって正しく解釈することができるようなやり方で処理されるので、生物学実験室または化学実験室の状況では、これは特に有益である場合がある。例えば、実験室装置は、顔料のオイル値を決定するための装置、またはワニスの粘度を決定するための装置であってもよい。
【0075】
施設は、例えば、訂正されたテキストまたはマシンマシンインターフェースを介してそれらから得られた構造化されたテキストの入力に応答して、以下の処理工程のうちの1つ以上を完全に自動的に実施するように設計されてもよい。
-物質および物質混合物のレオロジー的な分析、
-物質および物質混合物の貯蔵安定性の測定、特に不均質性および液体物質混合物の沈殿傾向の基準で、例えば、これらの分析は、サンプリング後のキュベット内で光学測定を使用して実行することができる、
-物質および物質混合物のpH値の決定、
-物質および物質混合物の発泡試験、特に消泡効果の測定および泡分解動態の測定、
-物質および物質混合物の粘度測定、粘度測定は、特に高粘性物質または混合物の事例では、希釈した溶液の粘度は決定がより簡単なため、自動希釈工程を含むことができ、元物質または物質混合物の粘度は、希釈された溶液の基準で計算される、
-物質または物質混合物の、特に完成した製品の、こすり取り挙動の測定(摩耗試験)、
-例えば、光散乱(いわゆるL-A-B値)、ヘイズ、およびグロスで作動する分光光度計を使用する物質および物質混合物の色価の測定、
-様々な定義されたパラメータ(温度、湿度、表面の表面条件等)の下で表面へと塗布された物質および物質混合物の層厚さ測定、
-物質および物質混合物の画像の画像分析方法、特に、ペンキおよびワニスにおいて物質表面を特徴付けるための、例えば、気泡、擦り傷の数、サイズ、および分布。
【0076】
物質および物質混合物は、特に、ペンキおよびワニスの製造のために使用される物質および物質混合物であってもよい。加えて、物質および物質混合物は、最終製品、例えば、液体または乾燥形態にあるペンキおよびワニスだけでなく、中間製品および使用される溶剤であってもよい。
【0077】
本発明の実施形態によれば、手動の介入を有しない操作は、音声入力をテキストへと変換することを含む。特に、変換は自然言語テキストへの変換である。
【0078】
少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールは、例えば、入力テキストを検索入力として解釈し、データベースでの検索入力についての情報を決定し、そして制御ソフトウェアに対してこれを結果として返すように設計された化学物質データベースとして設計されてもよい。データベースは、特に、データベース管理システム(DBMS)は、例えば、MySQLまたはPostgreSQLであってもよい。
【0079】
追加的にまたは代替的に、実験室システムは、実験室ソフトウェアモジュールを含んでもよく、これはシミュレーションソフトウェアである。シミュレーションソフトウェアは、所与の物質混合物の仕様に基づいて、化学製品、特にワニスおよびペンキの特性をシミュレートするために設計されている。シミュレーションソフトウェアは、特性をシミュレートする製品の仕様として、入力テキストを解釈するように設計されている。
【0080】
追加的にまたは代替的に、実験室システムは、少なくとも1つの実験室装置を含む実験室施設の制御ソフトウェアとして構成される実験室ソフトウェアモジュールを含んでもよい。制御ソフトウェアは、主制御コンピューター上にインストールされる。例えば、これは、すでに本明細書で実施形態に対して記述した制御ソフトウェアであってもよい。制御ソフトウェアは、入力テキスト内に含まれる情報に従って、実験室施設の実験室装置および搬送ユニットが複数の処理工程および化学物質の実験室装置間の搬送を実施および統合するように促すように設計される。実験室施設は、化学分析および/もしくは合成を制御するため、ならびに/または物質混合物、特にペンキおよびワニスを製造するためのHTE施設として設計されてもよい。制御ソフトウェアは、訂正されたテキストまたは分析もしくは合成の、または物質混合物の構成成分の仕様としてそれから抽出された構造化されたテキストを解釈するように設計される。
【0081】
追加的に、または代替的に、実験室システムは、分析または合成の状況における実験室システムの構成要素の間で交換されたデータの単純なデータ処理工程を実施するように設計された実験室ソフトウェアモジュールを含んでもよい。これは、例えば、制御ソフトウェアから実験室装置への制御コマンドの変換、チェック、および/もしくは追加、測定データの保存、チェック、もしくは正規化、または同様のデータ処理工程であってもよい。
【0082】
各事例における実験室装置または実験室ソフトウェアモジュールへのテキスト入力は、訂正されたテキストからNLPプロセッサによって作成された訂正されたテキストまたは構造化されたテキストであってもよい。
【0083】
実施形態によれば、制御ソフトウェアは、少なくともいくつかの訂正されたテキスト、例えば、特定のキーワード(「インターネット検索」などの)をインターネットサーチエンジンへの入力として含むテキストを使用するように構成される。制御ソフトウェアは、例えば、ブラウザーウィンドウを構文解析することによって検索の結果を受信し、そしてユーザーの近くの標的システム、例えば、スピーカーを有する携帯用装置へと出力するために結果を転送する。
【0084】
本発明の実施形態によれば、制御ソフトウェアは、制御ソフトウェアで登録された複数のユーザーのアカウントのレジストリを含む。制御ソフトウェアは、ユーザーの声によって登録されたユーザーの各々を認識するための音声認識機能を含む。制御ソフトウェアは、ユーザーが、マイクロフォンに向かって話すことによって、このユーザーが操作するための権限を与えられた実験室装置および/または実験室ソフトウェアモジュールのみを、手動の介入を有しないで操作することを可能にするように設計される。
【0085】
これは、実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールのアクセス制御および管理が、両方がユーザーの声に依存するようにすることによってシームレスに織り合わされるので有利である場合がある。パスワードまたは特別なアクセストークンを記憶する、または安全に保管する必要はない。
【0086】
本発明の実施形態によれば、制御ソフトウェアは、キーワード、特に実験室装置の名称および/または部屋の名称を音声入力の一部として入れることによって、ユーザーが複数の実験室装置から実験室装置を選択し、そして音声入力を通してその機能を選択的に制御することを可能にする。例えば、制御ソフトウェアは、訂正されたテキストを予め定義されたキーワードに対して分析するように構成される。キーワードが認識された場合、制御ソフトウェアは、訂正されたテキストを自然言語テキストまたは構造化されたテキストとして、正確にこの認識された実験室装置またはその制御ソフトウェアへと転送する。同じ言語に基づくインターフェースを使用して様々な異なる実験室装置を制御することできるので、これは、有利である場合がある。
【0087】
本発明の実施形態によれば、制御ソフトウェアは、ユーザーの音声入力に基づいて作成された訂正されたテキストを、このテキスト入力に対して標的システムとして意図される標的システムによって、正しく解釈される構造へと自動的に変換するように構成される。例えば、制御ソフトウェアは、ユーザーが、音声入力で、特定の実験室装置または実験室施設の名称を述べることによって、特定の機能を実施するために、様々な使用可能な標的システムからこれを標的システムとして選択したことを動的に認識する。標的システムの各々に対して、制御システムは、特定の標的システムによって入力フォーマットとして必要とされる、保存されたフォーマットを有し、そしてそれから得られた訂正されたテキストまたは構造化されたテキストを動的に認識される標的システムの必要とされるフォーマットへと自動的に転送する。例えば、第1の実験室装置は、入力として、XMLファイルの形態のある特定のパラメータを必要とする場合がある。別のものは、NLPプロセッサを有し、そして訂正されたテキストを入力として直接的に使用してもよい。別の実験室装置は、テーブルの形態のある特定のパラメータ値または調合を必要とする。ユーザーは音声入力を自然言語の文の通常の構文で入力することができるので、これは、有利である場合がある。したがって、ユーザーは、個々の実験室装置の必要とされる構文を苦労して記憶すること、および各個々の装置に対して「異なるように」話す必要がない。特定の実験室装置の語彙または構文に対するユーザーの言語構造の特別な適合は、したがって必要ない。ユーザーは、自分の入力を、同僚との会話でもしようすることになる自分の慣れている発話の構文で入力することができる。個々の実験室装置のインターフェースの特別な要件に対する適合は、制御ソフトウェアによって実行される。
【0088】
別の態様では、本発明は、実験室装置および/または実験室ソフトウェアモジュールを制御するための方法に関する。方法は、
-少なくとも1つの実験室装置および少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを提供することであって、少なくとも1つの実験室装置が、化学物質を分析および/または合成するように設計され、少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールが、少なくとも1つの実験室装置から得られたデータを処理するために設計される、ことと、
-少なくとも1つの実験室装置および/または少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを操作するためのインターフェースをユーザーに提供する、制御ソフトウェアを有する、データ処理装置を提供することと、
-マイクロフォンを有する携帯用装置であって、ネットワークを介して制御ソフトウェアへと相互操作可能に接続され、制御ソフトウェアと相互操作の状態で、ユーザーが、少なくとも1つの実験室装置および/または少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを、手動の介入を有しないで、マイクロフォンへと話すことによって操作できるように設計された、装置を提供することと、を含む。
【0089】
実施形態によれば、装置を提供することは、携帯用装置を少なくとも1つの実験室装置と同じ空間内に定置すること、および/または携帯用装置を少なくとも1つの実験室装置を含む実験室施設の主制御コンピューターと同じ空間内に定置することを含む。
【0090】
「構造化されたテキスト」は、ここではテキスト、特に予め定義された位置にある特定の意味の単語および句を含むASCIIテキストであることが理解される。構造化されたテキストは、例えば、コンマ区切りファイル、テーブル、XMLドキュメント、またはこれに類するものの形態をとることができる。構造化されたテキストは、機械およびコンピューターによって自然言語テキストより簡単に解釈および処理することができる。
【0091】
「自然言語テキスト」は、ここでは、テキスト、特に人によって話される、そして典型的に完全な文から成る言語で書かれたASCIIテキストであると理解される。
【0092】
「NLPプロセッサ」は、「自然言語」テキストを理解すること、すなわち、それをテキストに含まれる関連する情報をテキストから抽出することができるようなやり方で処理することができ、そして随意に他のフォーマット、例えば、構造化されたテキストフォーマットへと変形することができるソフトウェアプログラムまたは機能である。NLPツールは、それ故に完全な文から成るテキストを処理するだけでなく、単一の文から情報を抽出することができる。
【0093】
「搬送ユニット」は、ここでは、液体形態および/または個体形態にある化学物質、および随意に消耗品または容器などの他の物体もまた、1つの処理ステーションから次へと搬送することができる1つ以上の構成要素から成る自動システムであると理解される。搬送ユニットは、例えば、ロボットアーム、ロボットアームの集合体、コンベヤベルト、コンベヤベルトの集合体、またはこれらの組み合わせとすることができる。搬送ユニットは、ハイスループットシステムの一部とすることができ、また制御ソフトウェアによって制御することができる。処理ユニットは、化学物質の分析もしくは合成のための実験室装置、またはこれらの物質の前処理および後処理(希釈、濃縮、染色、混合等)のための装置とすることができる。
【0094】
「音声テキスト変換システム」は、人からの音声信号をテキストへと変換するように設計されたデータ処理システムである。データ処理システムは、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせから成ることができ、例えば、ネットワーク上で音声テキスト変換サービスを1つ以上のクライアント装置へと提供するクラウドベースのコンピューターシステムまたはサーバーベースのコンピューターシステムとすることができる。
【0095】
装置の「手動の介入を有しない操作」は、部分に対するユーザーの装置またはこの装置のヒューマンマシンインターフェースとのいかなる手動の相互操作も関与しない操作である。したがって、これは「接触しない」、「非接触」操作である。
【0096】
「シングルボードコンピューター」または「シングルボードプロセッサ」は、操作のために必要とされるすべての電子的な構成要素が単一のプリント基板の上に組み合わせられているコンピューターシステムである。典型的に、電源は、唯一の別個に収容されている構成要素である。
【0097】
「音声信号」は、人がマイクロフォンへと話したときに、マイクロフォンによって録音される電子的な信号である。
【0098】
「仮想実験室アシスタント」は、実験室内に位置付けられた1つ以上の実験室装置および/またはソフトウェアプログラムへと、これらの実験室装置および実験室ソフトウェアプログラムから情報を受信することができ、かつ実験室アシスタントから実験室装置および実験室ソフトウェアプログラムへと機能を実施するためのコマンドを送信することができるようなやり方で、操作可能なように接続されるソフトウェアまたはソフトウェアルーチンである。実験室アシスタントは、それ故に、1つ以上の実験室装置および実験室ソフトウェアプログラムとデータを交換するため、およびこれらを制御するためのインターフェースを有する。実験室アシスタントは、ユーザーに対するインターフェースも有し、そしてこれは、ユーザーが、実験室装置および実験室ソフトウェアプログラムのインターフェースを介した使用、モニター、および/または制御を容易にすることを可能にするように構成される。例えば、ユーザーに対するインターフェースは、音響インターフェースまたは自然言語テキストインターフェースとすることができる。
【0099】
好ましくは、「仮想実験室アシスタント」は、仮想アシスタントと人との間で、人と人との対話と可能な限り同様な対話を行う機能を含む。例えば、仮想実験室アシスタントは、実質的に自然な声でテキストを声に出して読むソフトウェア機能を有することができる。声に出して読むテキストは、例えば、携帯用装置のスピーカーを通して出力される、機能の実行の結果を含むことができる。追加的にまたは代替的に、仮想実験室アシスタントは、受信した音声信号またはそれから作成したテキストでキーワードを検索し、そしてそのキーワードに応じて特定のハードウェアまたはソフトウェア機能を呼び出すように構成することができる。例えば、これのキーワードのうちの1つは、名前、例えば、一般的な人の下の名前とすることができ、これは、仮想実験室アシスタントによってそれ自身の名前として解釈され、かつ特定の機能を実施する、または呼び出すようにこれに対処するコマンドとして理解される。
【0100】
ここで、用語「実験室装置」は、次の/前の処理工程の視点で物質を調製または後処理するために、合成もしくは分析などの化学処理工程、または他の処理工程を実行するために実験室で使用される電子的装置を意味する。
【0101】
ここで、「実験室施設」は、化学ワークフローを自動的にまたは半自動的に実行するために実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールを統合された様態で一緒に制御する能力を有する、複数の実験室装置、搬送ユニット、および1つ以上のソフトウェアモジュールから成るシステムであると理解される。ワークフローは、例えば、合成ワークフローもしくは分析ワークフロー、または両方のワークフローの組み合わせとすることができる。
【0102】
「実験室ソフトウェアモジュール」は、ここでは、実験室装置によって測定データとして供給されたデータ、または入力パラメータとして使用されたデータを処理するように構成される、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアアプリケーションのサブモジュール、またはソフトウェアルーチンであると理解される。好ましくは、実験室ソフトウェアモジュールは、実験室装置もしくは実験室設備の手動および/または機能的構成要素である。
【0103】
「語彙」は、ここでは、言語空間、すなわち、エンティティ、例えば、音声テキスト変換システム、を活用することができる単語の組を意味すると理解される。
【0104】
「単語」は、ここで、ある特定の語彙内で発生し、かつ独立した言語的なユニットを表す文字のコヒーレントな連続として理解される。自然言語では、単語は、音声または音節とは対照的に、独立した意味を有する。
【0105】
「句」は、ここで、2つ以上の単語から成る言語的なユニットとして理解される。
【0106】
「技術的言語」または「技術的単語」は、ここで、技術的な語彙からの単語として理解される。技術的言語は、標的語彙に属さず、また典型的に一般的な言語語彙の一部ではない。
【0107】
音声テキスト変換システムのみが音声信号の標的語彙への変換をサポートする句は、別の語彙の単語をテキストへと変換することがまったくできない、またはエラー率が非常に高いテキストへのみ変換されることを意味し、エラー率は、発話からテキストへの機能する変換の最大許容値と考えられる必要がある、エラー率の変換された単語または句当たりの制限値を上回る。例えば、この制限値は、50%を超える、好ましくはすでに10%を超える、単語または句当たりのエラー確率とすることができる。
【0108】
POSタグ(すなわち、品詞タグ)は、ここで、テキストコーパスにおいて、品詞、そしてしばしばこの単語がこの特定のテキストの文脈で表す時制、数(複数/単数)、大文字にすること等などの他の文法的な範疇を示すために、各単語に割り当てられた特別なマーキング(「ラベル」)として理解される。コーパスで使用されるすべてのPOSタグの組は、タグセットと呼ばれる。異なる言語に対するタグセットは、典型的には異なる。基本的なタグセットは、最も一般的な言語構成要素に対するタグを含む(例えば、名詞に対してN、動詞に対してV、形容詞に対してA等)。
【0109】
「携帯用装置」は、ここで、自由に位置付けることができ、かつネットワーク、例えば、インターネットまたは組織のイントラネットへと、好ましくはワイヤレスで接続することができる、携帯用の、好ましくは電池式の、データ処理装置であることが理解される。例えば、いわゆるマイクロフォンを有する「スマートスピーカー」、および/またはRaspberry Piコンピューターなどのシングルボードシステムは、「携帯用装置」として使用される。しかしながら、ユーザーに対しては、自分のスマートフォンを携帯用装置として使用することも可能であり、スマートフォンは、マイクロフォンおよび制御ソフトウェアと相互操作可能なクライアントソフトウェアを有する。
【0110】
以下の図では、本発明の実施形態が、例示的な様態でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1図1は、実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールを制御するための方法のフロー図を示す。
図2図2は、実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールの音声ベースの制御のための分散システムのブロック図を示す。
図3図3は、実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールの音声ベースの制御のための代替的な分散システムのブロック図を示す。
図4図4は、実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールの音声ベースの制御のための別の分散システムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図1は、実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールの音声ベースの制御のためのコンピューター実装された方法のフロー図を示す。
【0113】
第1の工程102では、1つ以上の実験室装置および1つ以上の実験室ソフトウェアモジュールが提供される。
【0114】
実験室装置は、複雑な実験室施設内の個々の装置または処理ユニットとすることができる。実験室装置は、物質または物質混合物の分析および/もしくは合成の状況において、または物質および物質混合物の調製および後処理のための1つ以上の処理工程を複雑な分析または合成ワークフロー内で実施するために、各々構成および装備することができる。
【0115】
類似的に、実験室ソフトウェアモジュールは、個々にインストール可能なソフトウェアアプリケーション、例えば、シミュレーションソフトウェアとすることができ、これはそれらから得られたデータに基づいて、実験室装置の化学的、物理的、触覚的、光学的、または他の特性に関して意見を出す、または予測を行うことができる。ソフトウェアモジュールも、DBMSの形態でデータベースを有して提供することができ、データベースは、実験室装置の以前の分析および合成の結果を保存しており、その内容は、例えば、すでに製造された物質(例えば、ペンキおよびワニス)および特性が知られているものに対するデータベース検索を実施するために使用することができる。検索クエリは、例えば、検索クエリで指定される制限値を下回る粘度を有するすべてのワニスに対する検索とすることができる。ソフトウェアモジュールは、例えば、複雑な実験室施設の制御ソフトウェアの、より大きいソフトウェアアプリケーションのモジュールおよび機能とすることもできる。
【0116】
さらなる工程104では、制御ソフトウェアを有するデータ処理装置が提供される。制御ソフトウェアは、1人以上のユーザーに、少なくとも1つの実験室装置および/または少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュール操作するためのインターフェースを提供する。制御ソフトウェアを有するデータ処理装置は、実験室装置を含む実験室装置または実験室施設と同じ室内または実験室区域内に位置付けることができる。例えば、データ処理装置は、デスクトップコンピューターまたはサーバーとすることができる。しかしながら、好ましくはデータ処理装置は、別の空間、例えば、実験室を運営している組織のデータセンターまたは外部のクラウドストレージプロバイダーのデータセンター内にセットアップされる。しかしながら、このデータ処理装置および制御ソフトウェアへの、例えば、メンテナンスの目的のための、アクセスは、例えば、実験室区域内のコンピューターから提供することができる。
【0117】
工程106では、マイクロフォンを有する携帯用装置が、ネットワーク、例えば、インターネットまたは当該組織のイントラネットを介して制御ソフトウェアと接続され、かつ相互操作可能となるように、提供され、かつセットアップされる。装置は、ユーザーが、制御ソフトウェアとの相互操作で、手動の介入を有することなく、マイクロフォンに向かって話すことによって、少なくとも1つの実験室装置および/または少なくとも1つの実験室ソフトウェアモジュールを操作することを可能にするように設計される。携帯用装置は、好ましくは、装置がこの実験室研究者がそこから実験室装置を制御することを望む、または別の方法でその研究者の実験室作業を実行する、実験室研究者の作業区域の近くに定置されるようなやり方で提供される。マイクロフォンを有する装置を、そこから部屋または実験室区域のすべての区域からの音声入力を大体において等しく良好に受信することができ、かつマイクロフォンによって録音することができる、実験室区域内の中央の場所に位置決めすることも可能である。
【0118】
実施形態によれば、装置を提供することは、マイクロフォンを有する携帯用装置、例えば、シングルボードコンピューターを、少なくとも1つの実験室装置と同じ部屋の中に定置すること、および/または携帯用装置を少なくとも1つの実験室装置を含む実験室施設の主制御コンピューターと同じ部屋の中に定置することを含む。
【0119】
当該工程は任意の順番で実施することができる。これは、この目的で手袋を外す必要を有することのない、実験室の任意の区域からの音声入力による1つ以上の実験室装置および関連付けられた実験室ソフトウェアモジュールの手動の介入を有しない操作を可能にする。次いで特別なテキスト訂正工程によって、そのようなやり方でその後訂正される、音声テキスト変換システムによってマイクロフォンによって録音された音声信号を自然言語テキストへと変換する制御ソフトウェアを有することによって、例えば、化学業界またはペンキおよびワニス製造などの特別な下位分野の技術的言語でさえも、音声入力のテキストにおいて正しく反映される。
【0120】
制御ソフトウェア、実験室装置、および実験室ソフトウェアモジュールによって実施される工程は、実験室システムの異なる実施形態では若干変えることができ、また実験室システムは、訂正された自然言語テキストを構造化されたテキストへと変形するために、他の構成要素、例えば、外部のテキスト訂正システムおよび/またはNLPプロセッサを含むことができる。しかしながら、一部の実施形態では、実験室施設自体が、この変形を実施するこうしたNLPプロセッサを含み、そのため訂正された自然言語テキストを、実験室施設制御ソフトウェアへと直接的に入力することができる。
【0121】
図2は、実験室装置252、254および実験室ソフトウェアモジュール248、250の音声ベースの制御のための分散システム200のブロック図を示す。システム200は、実験室装置252、254および実験室ソフトウェアモジュール248、250、制御ソフトウェアを有する制御コンピューター213、ならびにマイクロフォンを有する携帯用装置212を備える。随意に、システムは、構築および機能に関して実質的に同一である他の携帯用装置212を含むことができる。随意に、システムは、実験室装置を制御するための制御ソフトウェアを有する主制御コンピューターも含むことができる。随意に、システム200は、制御ソフトウェアの機能として、またはローカルもしくはリモートでインストールされたスタンドアロンソフトウェアアプリケーションとして実装することができる訂正ソフトウェア225を含むことができる。随意に、システム200は、NLPプロセッサ258も含むことができる。随意に、システム200は、音声テキスト変換システム226も含むことができる。
【0122】
システム200に含まれる実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールは、ユーザー202、例えば、物理的にマイクロフォン214を有する携帯用装置212の近くにいる実験室研究者、によって、音声入力204によって制御される。例えば、ユーザーは、「<ワニスの名称>というワニスを合成し、合成後のワニスのレオロジー特性を決定する!」というコマンドをマイクロフォンへと入力することができる。音声入力マイクロフォンによって録音された音声信号206は、携帯用装置212によって、インターネットまたはイントラネットなどのネットワーク236上で、制御コンピューター213上にインストールされた制御ソフトウェア222へとルーティングされる。これは、音声信号206をネットワーク上で、受信した音声信号206をテキスト208へと変換する一般的な言語音声テキスト変換システム226へと転送し、その単語および句は、独占的に、ワニスの名称または「レオロジー的な」という単語などの技術的言語を含まない、一般的な言語標的語彙234から取られる。例えば、音声テキスト変換システム226は、本明細書で「音声認識プロセッサ」232と呼ばれる、ソフトウェアベースのサービスの形態で複数のクライアントへと変換を提供するクラウドベースのコンピューターシステムとして構成することができる。音声テキスト変換システム226は、例えば、Googleのspeech-to-textクラウドサービスをインターネット上で提供する、Googleのクラウドコンピューターシステムとすることができる。それ故に、この事例では、インターフェース224は、GoogleのクラウドベースのAPIである。音声テキスト変換システムは、認識されたテキスト208を制御ソフトウェア222へと返す。
【0123】
図2に示す実施形態によれば、制御ソフトウェアは、訂正機能225を含む。これは、割り当てテーブル238へのアクセスを有し、ここで、複数の技術的単語および句は、各々標的語彙の1つ以上の単語または句に割り当てられる。
【0124】
割り当てテーブル238では、テキスト形態の単語が互いに割り当てられる。より具体的には、割り当てテーブルは、標的語彙からの少なくとも1つの単語を、複数の技術的言語または技術的言語句の各々へと割り当てる。技術的言語(または技術的言語の句)と関連付けられた標的語彙の少なくとも1つの単語は、その技術的言語が音声テキスト変換システムに可聴信号の形態で入力されたときに、音声テキスト変換システムが誤って認識する(そして以前にテーブルが作成されたときに誤って認識された)単語または句である。
【0125】
随意に、POSタグを技術的な句にも割り当てることができ、またテキスト訂正の過程で訂正機能225によって随意に評価および考慮することもできる。訂正機能225を、制御コンピューター213上にインストールされ、かつこれによって制御ソフトウェア222が相互操作可能になる、別個の訂正ソフトウェアアプリケーション225として形成することもできる。
【0126】
制御ソフトウェア222は、受信したテキスト208を訂正機能または訂正ソフトウェア225へと転送し、そして割り当てテーブル238を使用してテキスト208を訂正するように促す。訂正の過程で、テーブルによって間違って認識された標的言語の単語および句は、各事例において割り当てられた技術的言語句によって置き換えられる。結果は、制御ソフトウェア222によって特定の標的システム、例えば、化学施設244へと直接的に送信されたか、またはNLPプロセッサ258へと最初に転送されたかのいずれかである、訂正されたテキスト210である。
【0127】
図2に示すNLPプロセッサは、制御コンピューター213上にインストールされる。しかしながら、例えば、図3に示すような代替的な実施形態によれば、NLPプロセッサは、ネットワーク上のサービスとして提供することもできる。NLPプロセッサは、訂正されたテキストの意味的内容を検出するため、およびそれから関連する情報を抽出するために、訂正されたテキスト210の構文構造を分析し、そしてそれを構造化されたテキスト211へと変換する。現在市販されている数多くの実験室システムおよび実験室ソフトウェアモジュールは、未だ自然言語テキストを正しく解釈することができないので、訂正されたテキスト210を訂正された構造化されたテキスト211へと転送する工程は、有利である可能性がある。しかしながら、数多くの標的システムは、構造化されたテキストのための、例えば、ある特定の所定の構造のテーブルまたはXMLファイルのための入力インターフェースを有する。他の実施形態では、標的システムは、その独自のNLPプロセッサを含み、そのため訂正されたテキスト210は、標的システムへの自然言語形態での入力とすることができる。この事例では、制御ソフトウェアは、訂正されたテキスト210を、標的システムへと直接的に送信する。
【0128】
例えば、標的システムは、単一の実験室装置または複数の実験室装置を含む実験室施設とすることができる。図2に示す実験室施設244は、複数の実験室装置252、254および1つ以上の実験室ソフトウェアモジュール250、248を含む、ハイスループット環境(HTE)施設とすることができる。
【0129】
例えば、実験室装置252、254は、様々な化学分析(例えば、粘度、pH、色、表面構造、層厚さ)を実施するように構成された分析装置とすることができる。例えば、ソフトウェアモジュール250は、入力テキスト211または210を検索クエリとして解釈し、化学物質データベース内で対応する検索を実施する化学データベースとすることができる。実験室ソフトウェアモジュール248は、化学施設244の主制御コンピューター246上にインストールされた制御ソフトウェアであり、また施設の個々の実験室装置によって実施されるように処理工程をコーディネートするように構成される。例えば、制御ソフトウェア248は、分析装置によって実施される分析工程だけでなく、物質および中間製品を化学施設244内で1つの処理ステーションから次へと搬送する搬送ユニット256の動作も制御する。
【0130】
これらの施設は、ここでは特定の化学製品、例えば、特定のペンキまたは特定のワニスを、ほとんど自動的に特定の調合の基準で製造することが可能なため、音声入力による化学施設の制御は特に有利である可能性がある。それ故に、特定の化学物質または物質混合物の製造のための調合を音声入力によって入力し、これによって化学施設244が対応する物質または物質混合物を自動的に製造するように促すことが可能である。同様に、物質の対応する分析を音声入力によって開始すること、またはその実行を制御する、必要な場合にそれを中断、修正、または停止することが可能である。
【0131】
内部データベース250を、化学物質および物質混合物、ならびにその特性を保存するためだけでなく、対応する調合を保存するためにも使用することができる。データベース250は、それ故に、例えば、ペンキおよびワニスの調合だけでなく、その原材料およびそのそれぞれの物理的、化学的、光学的、ならびにその他の特性を含むことができる。加えて、その他の関連するデータ、例えば、物質のメーカーの製品データシート、安全データシート、ある特定の物質もしくは製品の分析または合成のためのHTEシステムの個々のモジュールを構成するためのパラメータ、およびこれに類するもの、をデータベース内に保存することができる。HTEシステムは、テキスト形態で入力された調合および命令に基づいて分析および合成を実施するように設計される。
【0132】
一部の実施形態では、化学施設の1つ以上の実験室装置は、それを通して制御ソフトウェアから自然言語または構造化された訂正されたテキスト210、211を直接的に受信することができる、その独自のインターフェースを有する。一部の他の実施形態では、化学施設の実験室装置は、訂正されたテキスト210、211を制御ソフトウェア222から制御ソフトウェア248を介して間接的にのみ受信することができる。
【0133】
実施形態によれば、音声入力は、制御ソフトウェア222が各必要とされる標的システムの数およびアイデンティティーを決定するために使用するキーワードを含む。次いで、訂正されたテキストは、制御ソフトウェアによって、自然言語または構造化された形態で、識別された標的システムの各々へと送信される。例えば、ユーザーは、制御ソフトウェアがどの標的装置に訂正されたテキストを送信するかを、「標的システム」というキーワードの後に続けて特定の標的システム(実験室装置またはソフトウェアモジュール)の名前を入力することによって決定することができる。しかしながら、追加的に、または代替的に、制御ソフトウェア自体は、キーワードを検索し、そしてこのキーワードに基づいて好適な標的システムを自律的に決定することができる。例えば、音声入力は、単純に特定の合成のタイプを指定することができ、制御ソフトウェアは、リクエストされた合成に対して、合成のために使用することができる様々な実験室装置のうちのどれを使用するかを動的に決定する。例えば、決定は、現在の作業負荷に基づいて行うことができ、そのため、現在十分に利用されていない、またはまったく使用されていない実験室装置が選択される。
【0134】
好ましくは、特定のハードウェアまたはソフトウェア機能の実行の結果242は、標的システムから制御ソフトウェア222へと返される。ここで、制御ソフトウェアは、機能の実行の結果をユーザー202へと返すことができる。この目的では、様々な道筋が可能である。例えば、ユーザーは、機能の実行の結果を含む電子メール、SMS、または他のフォーマットのメッセージを送信することができる。図2に示す実施形態によれば、結果242は、少なくとも携帯用装置212で、およびそのスピーカー218を介したスピーカーでも(または独占的に)返される。これは実験室研究者202に入力制御コマンド、化学調合、および検索クエリに関して、ならびに対応するハードウェアまたはソフトウェア機能の実行の結果の受信に関して、の両方の移動の最大限の自由度を許容するので、これは、特に有利である。例えば、ユーザーは、実験室の特定の作業区域にいることができ、かつ自身の手動の活動と並行して、音声コマンドによって、特定の物質の分析を開始することができる。分析の結果は、スピーカーを介して音響的に伝えられる。したがって、ユーザーに対しては、結果をリクエストするために本人の手動の活動を邪魔する必要がない。むしろ、ユーザーは、制御ソフトウェアと普通の会話に入ることができ、そして、例えば、ある特定の合成が完了したという結果を受信した後、音声入力によって、発生した物質に対する対応する分析工程を開始することもできる。ユーザーは並行して作業することが大幅に可能なので、実験室作業の効率を、それ故に劇的に向上することができ、例えば、他の実験室作業と並行して、複雑な合成および分析の制御を開始し、かつ制御することができる。
【0135】
本発明の実施形態による音声入力によって制御することができる実験室内の一般的な活動は、例えば、以下のその実施例として所与の活動および音声入力に関する。
-実験室研究者は、ある特定のワニスのそのレオロジー的な特性についての分析を前の日に開始し、そして今は、HTEシステムのデータベースに保存されている結果をクエリしたいと思っている。可能性のある音声入力:「制御コンピューター、2019年2月24日の22号室のHTE施設によるレオロジー分析の結果を見せてください」。
-実験室研究者は、コストを節約したいとおもっており、そしてある特定の溶剤<<SLV EXP>>をより経済的なもの<<SLV ECO>>と置き換えることを考えている。<<SLV ECO>>という名称は、メーカーの商品名である。しかしながら、実験室研究者は、より経済的な溶剤が製造されるワニスに対して好適かどうか確信が持てず、そしてより経済的な溶剤の化学的特性および物理的特性に関するさらなる情報が指定されている製品データシートを調べたい。可能性のある音声入力:「制御コンピューター、<<SLV ECO>>の製品データシートを見せてください」または「制御コンピューター、22号室のHTEデータベースに保存されている<<SLV ECO>>の製品データシートを見せてください」。
-溶剤<<SLV ECO>>の製品データシートを検討した後、実験室研究者は、特定のワニスの製造のために、おそらくより高価な溶剤の代わりにこの溶剤を使用することができる、という意見である。しかしながら、pH、レオロジー的な特性、極性、および他のものなどのいくつかのパラメータは、より高価な溶剤のものとは異なることになるので、調合には、何らかの調整が必要になる可能性がある。これらの特性は互いに相互関連しているため、実験室研究者にとっては、理論上の考慮に基づく調合に対して必要な調整を識別することができない。試験シリーズを実行することは、手間がかかり、時間を費やす。しかしながら、実験室は化学製品、例えば、ペンキおよびワニスの特性を特定の調合に基づいて予想(シミュレート)することができるソフトウェアを有する。シミュレーションは、例えば、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)に基づくことができる。実験室研究者は、高価な溶剤が経済的なものによって置き換えられているワニスの予測される特性を既知の調合に基づいてシミュレートするために、このシミュレーションソフトウェアを使用したい。可能性のある音声入力:「制御コンピューター、HTEシミュレーションソフトウェアが以下の調合によるワニスの特性を計算するように促してください。70.2gのナフテン油、4gのメトールn-アミルケトン、1.5gのn-ペンチルプロピオネート、1gのウルトラソルブ(Ultrasorb)、50gの<<SLV ECO>>、[...]」。
-シミュレーションは、ワニスの製造のためには経済的な溶剤は、好適でないことを示す。実験室の従業員は、ここでコストを低減するために、製品の品質に影響を有することなく高価な溶剤と置き換えることができる他の溶剤についてインターネットで検索したいと思う。可能性のある音声入力:「制御コンピューター、インターネットで検索してください:<<ペンキ製造用の高粘度溶剤>>」。
【0136】
本発明の実施形態によれば、様々な実行システムに対するこれらの入力およびコマンドはすべて、この目的のためにユーザーが実験室を離れる必要なく、かつ/または手袋を外す必要なく行うことができる。
【0137】
上記の実施例として所与の音声入力はほとんど、一般的な言語と技術的言語との両方の単語および句を含んでいる。例えば、「レオロジー的な」、「ナフテン油」、「メトールn-アミルケトン」、「n-ペンチルプロピオネート」、という単語または句は、技術的化学的な用語であり、また<<SLV ECO>>は、化学製品の商品名である。これらの単語または句は、典型的に、現在の一般的な言語の音声テキスト変換システム(「標的語彙」)によってサポートされている語彙には含まれない。訂正ソフトウェアによる後続の訂正のおかげで、一般的な言語の音声テキスト変換システム226の使用にもかかわらず、音声入力がテキストへと確実に正しく変換される。制御ソフトウェアは、システムアーキテクチャに応じてわずかに異なる、音声信号およびそれから発生したテキストの管理および処理に関する様々なコーディネーションおよび制御活動を実施する。
【0138】
図3は、実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールの音声ベースの制御のための代替的な分散システム300のブロック図を示す。システム300は、図2に示すものと実質的に同じ構成要素および機能を含むことができる。図2に示すシステムとは異なり、訂正ソフトウェア225は、制御ソフトウェアの構成要素ではなく、別個のソフトウェアアプリケーションとして制御コンピューター213上でローカルにインストールされてはおらず、インターネット上でクラウドサービスとしてクラウドコンピューターシステム302から提供される。制御ソフトウェア222は、対応するインターフェース304を介して、音声テキスト変換システムから受信したテキスト208を、ここではクラウドコンピューターシステム302上に保存される割り当てテーブルを使用して訂正するように構成され、そして訂正されたテキスト210を受信する。
【0139】
図4は、実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールの音声ベースの制御のための代替的な分散システム400のブロック図を示す。HTEシステム244の個々の実験室装置406~414を制御するためのデータ交換は、図4でより詳細に図示される。
【0140】
実験室は、様々なスタンドアロン実験室装置416(例えば、遠心分離機)およびHTE施設418がある実験室区域404を含む。
【0141】
HTE施設は、主制御コンピューター246上で制御ソフトウェアによって管理および制御される複数のモジュールおよびハードウェアユニット406~414を含む。この実施形態の制御ソフトウェアは、HTE施設内に含まれる装置を外部でモニターおよび制御するための中央インターフェースとしての役割を果たす。制御コンピューター213上の制御ソフトウェア222は、制御ソフトウェアへのアクセスを有し、また訂正されたテキスト210、211を入力として自然言語で、または構造化された形態で制御ソフトウェアへ、そして随意に実験室装置416および/またはインターネットサーチエンジン402などの他の標的システムにも送信するように構成される。ユーザー202の音声入力204からの訂正されたテキスト210、211の作成は、本発明の実施形態によってすでに記述されているように実施される。
【0142】
制御ソフトウェア222は、「仮想実験室アシスタント」223として実施することができる。例えば、仮想実験室アシスタントは、「制御コンピューター」、「ルイーザ」、または「エヴァ」などの名前に応答することができる。制御ソフトウェアは、訂正されたテキスト210に対してキーワードを検索し、そしてこれらのキーワードに応じて標的システムの特定のハードウェアまたはソフトウェア機能を呼び出すように構成される。例えば、制御ソフトウェアは、テキスト210について「制御コンピューター」または「エヴァ」などのキーワードを検索する。訂正されたテキストがこのキーワードを含む場合、仮想実験室アシスタント223は、訂正されたテキストがハードウェア機能またはソフトウェア機能を実施するためのコマンドを含むかどうか、そして含む場合には、制御ソフトウェアもしくは実験室アシスタントの制御下にあるどのハードウェアまたはソフトウェアによって、これらのコマンドが実施されるかを決定するために、訂正されたテキストをさらに分析するように促される。例えば、訂正されたテキストは、どの装置およびソフトウェアにコマンドが転送されるかを指定する装置または実験室の名称を含むことができる。
【0143】
音声入力における「制御コンピューター」という言い回しまたは仮想アシスタントの他の名称は、したがって化学実験室の分野において、ハードウェアおよびソフトウェア機能のより効率的かつより信頼性の高い制御を可能にするために、「日常の問題」のための周知の仮想アシスタントの「Siri」および「Alexa」という名前と類似的に使用することができる。
【0144】
1つの可能な実装例では、仮想実験室アシスタントによる訂正されたテキスト210の評価は、結果として、技術的言語または句として訂正されたテキスト210で指定された特定の物質を検索するインターネットサーチエンジン402をもたらす。訂正されたテキスト、または指定されたその部分は、仮想アシスタントによるインターネットを介したサーチエンジンへの入力である。インターネット検索の結果424は、これらの結果をユーザー202の近くの好適な出力装置、例えば、マイクロフォンおよびスピーカー214を有する携帯用装置212へと転送する、制御ソフトウェアまたはアシスタントへと返される。結果は、好ましくは、仮想実験室アシスタント、つまり制御ソフトウェアが、結果424を自然な音響の音声でスピーカー214を介してユーザーに対して読み上げるように、転送される。
【0145】
別の可能な実装例では、仮想実験室アシスタントによる訂正されたテキスト210の評価は、スタンドアロン実験室装置416、遠心分離機は、特定の速度において特定の物質をペレット化することを明らかにする。遠心分離機の名称および物質は、訂正されたテキスト210において技術的言語または句として指定され、遠心分離機は自動的に、持続時間、回転数などの使用される遠心分離のパラメータを物質名に基づいて内部データベースから読み出すので、これで十分である。訂正されたテキストまたはそのある特定の部分は、仮想アシスタントによってインターネットを介して遠心分離機416へと送信される。遠心分離機は、物質と関連付けられた遠心分離プログラムを開始し、そして遠心分離の成功または不成功についてのメッセージをテキストメッセージ422の形態で返す。結果422は、結果424に対して記載されるように、スピーカー214を介して、および随意に他の出力インターフェース、例えば、画面も介して、これを出力するアシスタント223へと返される。
【0146】
別の可能な実装例では、仮想実験室アシスタントによる訂正されたテキストの評価210は、HTEシステム244が特異的なワニスの合成のためのものであることを明らかにする。ワニスの構成成分も訂正されたテキストで指定され、また化学製品の商品名およびIUPAC物質名の混合から成る。HTE施設は、訂正されたテキスト210を受信し、そして合成ユニット414において合成を実施することを自律的に決定する。順調な合成についてのメッセージまたはエラーメッセージが結果426として合成ユニット414からHTEユニットの制御ソフトウェアへと返され、そしてその結果、制御ソフトウェアは結果426を制御ソフトウェアまたは仮想実験室アシスタントへと返し、これは結果を好適な出力装置、例えば、結果424について記述したようにスピーカー214を介し、そして随意にさらなる出力インターフェース、例えば、画面も介してこれらの結果426を出力する端末装置(携帯用端末212)に転送する。
【0147】
訂正されたテキスト210、211が出力されるソフトウェアおよび/またはハードウェアは、好ましくは実験室404内に位置付けられるソフトウェアおよびハードウェアである。しかしながら、その結果が、設計された、または化学分析または合成のための使用のために好適である、テキストまたはその部分を、実験室の外側の標的システムに追加的に送信することも可能である。
【0148】
これに関連付けられた実験室装置および実験室ソフトウェアモジュールの音声制御は、実験室においてすでに実行された分析および合成の結果、実験室プロトコル、ならびに実験室のデータベースに対応する製品データシートを研究および出力するために使用することができ、また音声制御によって、補完的な検索をインターネットおよびインターネットを介してアクセス可能なパブリックまたは占有のデータベースで実行することもできる。化学薬品または実験室装置もしくは実験室の消耗品の特別な商品名を含む音声コマンド、および/または化学の専門用語の名称および形容詞も、テキストへと正しく変換され、そしてそれ故に標的システムによって正しく解釈することができる。本発明の実施形態によれば、大部分が音声制御された、化学実験室もしくは生物学実験室または実験室HTE施設の高度に統合された操作がそれ故に可能になる。
【0149】
周知の音声テキストクラウドサービスプロバイダーのハードウェア(スマートスピーカー)は、直接的な制御の目的を追求し、かつクラウドプロバイダー自身によって開発されたサービスを使用する。技術的な語彙の分野でのアプリケーションは、現在のところ開発されていないか、または非常に限られた範囲でのみ開発されている。ここに示されるシステムアーキテクチャ200、300、400はすべて、実験室においてこの基盤で対象に特異的な実験室装置および電子的な検索サービスの音声認識および制御を可能にするために、様々なクラウドプロバイダーの既存の音声テキストAPIの、その独自のクラウドプロバイダーに依存しないハードウェアによる使用を可能にする。
【0150】
ペンキおよびワニスの化学合成の状況では、ペンキおよびワニスの製造には幅広く様々な出発材料が必要で、これらの特性は、複雑な様態で互いに相互作用し、かつ製品の特性に強い影響を及ぼすので、化学物質に関する情報の効率的な検索、ならびに実験室装置およびHTE施設音声ベースの制御は、特に有利である。それ故に、ペンキおよびワニスの製造の状況では、多数の分析、制御工程、および試験シリーズが必要とされる。ペンキおよびワニスは、最高20種の原材料およびより多くのもの、例えば、溶剤、樹脂、硬化剤、顔料、賦形剤、および多数の多数の添加物(分散剤、湿潤剤、接着促進剤、消泡剤、殺生物剤、難燃剤、およびその他)の非常に複雑な混合物である。個々の構成成分および対応する分析および合成システムの制御に関する情報の効率的な入手は、製造プロセスおよび製品の確実さを著しく加速することができる。
【符号の説明】
【0151】
102~106 工程
200 分散システム
202 ユーザー
204 音声入力
206 音声信号
208 認識されたテキスト
210 訂正されたテキスト(自然言語)
211 訂正されたテキスト(構造化されたテキスト)
212 携帯用装置
213 制御コンピューター
214 マイクロフォン
218 スピーカー
222 制御ソフトウェア
223 仮想実験室アシスタント
224 音声テキストインターフェース(クライアントサイド)
224' 音声テキストインターフェース(サーバーサイド)
225 訂正ソフトウェア
226 音声テキスト変換システム/クラウドシステム
232 音声認識プロセッサ
234 標的語彙
236 ネットワーク
238 割り当てテーブル
242 訂正されたテキストの実行の結果
246 主制御コンピューター
248 制御ソフトウェア
250 化学データベース(DBMS)
252 分析装置
254 分析装置
256 搬送ユニット
300 分散システム
302 テキスト訂正サービスを有するサーバー
304 訂正サービスインターフェース(クライアントサイド)
304' 訂正サービスインターフェース(サーバーサイド)
308 NLPインターフェース
310 実験室施設制御インターフェース
400 分散システム
402 インターネットサーチエンジン
404 実験室区域/実験室
406 分析装置
408 分析装置
410 ミキサー
412 合成ユニット
414 合成ユニット
414 制御コンピューター
416 スタンドアロン実験室装置
422 訂正されたテキストの実行の結果(テキスト形態)
424 訂正されたテキストの実行の結果(テキスト形態)
426 訂正されたテキストの実行の結果(テキスト形態)
図1
図2
図3
図4