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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】膜状起伏ゲート
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
E02B7/20 103A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021044788
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143971
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241290
【氏名又は名称】豊国工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】下見 広司
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-106231(JP,U)
【文献】米国特許第04229119(US,A)
【文献】特開2009-035984(JP,A)
【文献】特開平11-229357(JP,A)
【文献】特開平03-069712(JP,A)
【文献】特開2005-344486(JP,A)
【文献】特表2017-520698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路の径間方向に亘って配置された可撓性を有する膜体の上流側端部が前記水路の底壁部に固定されると共に、前記膜体の径間方向両端部が前記水路の一対の側壁部にそれぞれ固定され、前記膜体の下流側端部が昇降自在で、且つ水路方向に沿って移動自在に構成される膜状起伏ゲートであって、
前記膜体の下流側端部を上昇させつつ、前記水路の上流側に移動させることで止水する構成であり、
前記膜体の径間方向両端部と前記水路の一対の側壁部との最も上側の最上固定点が、前記膜体の下流側端部を最大限上昇させた最上昇点よりも上方に位置して、
前記膜体の下流側端部が前記水路の底壁部に当接される最下降点と、前記最上昇点とを結ぶ線分に対して垂直2等分線上に沿って、前記膜体の径間方向両端部が前記水路の一対の側壁部にそれぞれ固定されることを特徴とする膜状起伏ゲート。
【請求項2】
水路の径間方向に亘って配置された可撓性を有する膜体の上流側端部が前記水路の底壁部に固定されると共に、前記膜体の径間方向両端部が前記水路の一対の側壁部にそれぞれ固定され、前記膜体の下流側端部が昇降自在で、且つ水路方向に沿って移動自在に構成される膜状起伏ゲートであって、
前記膜体の下流側端部を上昇させつつ、前記水路の上流側に移動させることで止水する構成であり、
前記膜体の径間方向両端部と前記水路の一対の側壁部との最も上側の最上固定点が、前記膜体の下流側端部を最大限上昇させた最上昇点よりも上方に位置して、
前記膜体は、その上流側端部は上流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、また、その下流側に設けられる吊り上げ端部は下流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、
前記上流側端部及び前記吊り上げ端部をそれぞれクランプするクランプ部材を有し、
前記各クランプ部材は、楔状に形成された前記上流側端部及び前記吊り上げ端部の傾斜面に当接する傾斜部を有することを特徴とする膜状起伏ゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路の径間方向に亘って配置された可撓性を有する膜体を起伏させることで止水または通水可能とする膜状起伏ゲートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の膜状起伏ゲートとして、特許文献1には、膜体(シート)の上流側端部を水路の底壁部に固定して、その下流側端部に水路の幅方向(径間方向)に亘って設けられた棒体を上流側からウインチで吊り上げることで、堰上げ、堰下げする構造を採用したシート状堰が開示されている。この特許文献1に記載のシート状堰は、施工された水路に容易に取付が可能となる特徴があり、短時間で施工できる簡易な起伏ゲートとして使用されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のシート状堰では、止水する際、水路の側壁部において膜体が折り返されて複雑に変形する影響により、この部分から漏水が発生する等の課題がある。詳しくは、特許文献1に記載のシート状堰では、膜体を吊り上げるにしたがって、膜体の下流側端部が吊上げ点として、上流側に、且つ上方に移動する。これに伴い、水路の側壁部に沿って配置された膜体の径間方向両側の部位が、水路の底壁部に沿って配置された膜体の上方への移動に追従して折り畳まれながら変形していく。その際、水路内の水位上昇により、この変形した部分にも上流側からの水圧が作用して、さらなる変形が生じることになる。そして、このような変形により、水路の側壁部に沿って配置された膜体の径間方向両側の部位が、膜体の吊上げ点よりも低い位置に配される場合が生じて、この部分から漏水が発生する課題がある。
【0004】
また、膜体の機能は止水すると共に、膜体に作用する水圧により膜体に発生する張力を安全に水路の底壁部や、膜体の吊り上げ部位に伝達する必要がある。このため、例えば、膜体の材料としてゴム引き布が採用されている。ゴム引き布は、繊維をゴムでコーティングした材料であって、コーティングしたゴムにより止水すると共に、内部の繊維により水圧による張力を伝達する構成となっている。膜体は、上述したように、発生する張力を水路の底壁部や、吊り上げ部位に伝達する必要があるが、そこで、膜体の上流側端部を水路の底壁部に固定する固定構造や、膜体の吊り上げ部位を吊り上げ支持する支持構造としては、一般に、取付金物および取付ボルトを用いて、膜体を水平圧着する方式が採用されている。しかしながら、膜体を、取付金物および取付ボルトを用いて、水平圧着した場合には、膜体の変形等の影響により、膜体に作用する張力を、取付金具に対して均等に伝達することが困難になる等の問題が発生する。
【0005】
すなわち、前述のゴム引き布の事例では、ゴムの経年変形により初期の圧着力が保てず抜けが発生する不具合が発生している。また、膜体の局部に荷重が集中して、膜体が損傷する不具合も発生している。これに対処するために、取付金物の圧着面に凹凸を設けたり、取付金物の剛性を向上させたり、多数のボルトを配置するなどの工夫が成されているが、コストアップやボルト配置のために膜体の孔が増えて、逆に強度的な弱点となる問題が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-229357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、止水時、漏水を抑制すると共に、安価で、且つ強度的な弱点を克服した膜体の固定構造を備えることで信頼性を向上させる膜状起伏ゲートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、水路の径間方向に亘って配置された可撓性を有する膜体の上流側端部が前記水路の底壁部に固定されると共に、前記膜体の径間方向両端部が前記水路の一対の側壁部にそれぞれ固定され、前記膜体の下流側端部が昇降自在で、且つ水路方向に沿って移動自在に構成される膜状起伏ゲートであって、前記膜体の下流側端部を上昇させつつ、前記水路の上流側に移動させることで止水する構成であり、前記膜体の径間方向両端部と前記水路の一対の側壁部との最も上側の最上固定点が、前記膜体の下流側端部を最大限上昇させた最上昇点よりも上方に位置して、前記膜体の下流側端部が前記水路の底壁部に当接される最下降点と、前記最上昇点とを結ぶ線分に対して垂直2等分線上に沿って、前記膜体の径間方向両端部が前記水路の一対の側壁部にそれぞれ固定されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明では、止水時、膜体の下流側端部を最大限上昇させると、膜体の径間方向両端部と水路の一対の側壁部との最も上側の最上固定点が、膜体の下流側端部を最大限上昇させた最上昇点よりも上方に位置する。これにより、下流側端部を最大限上昇させた膜体により止水する際、水路の側壁部に沿って配置された膜体の径間方向両側の部位からの漏水を抑制することができる。
また、請求項1の発明では、膜体の下流側端部が水路の底壁部に当接される最下降点と、最上昇点とを結ぶ線分に対して垂直2等分線上に沿って、膜体の径間方向両端部が水路の一対の側壁部にそれぞれ固定されるので、止水時、膜体の下流側端部を最大限上昇させつつ、上流側に移動させると、膜体の径間方向両側の部位は、膜体の径間方向両端部と水路の側壁部との固定範囲を起点として水路の上流側及び鉛直方向上方に張力が付与された状態で吊り上げられる。その結果、膜体の径間方向両側の部位における上端部が、膜体の最上昇点から下方に垂れ下がるような現象を抑制することができ、膜体の径間方向両側の部位からの漏水をさらに抑制することができる。
【0012】
請求項の発明は、水路の径間方向に亘って配置された可撓性を有する膜体の上流側端部が前記水路の底壁部に固定されると共に、前記膜体の径間方向両端部が前記水路の一対の側壁部にそれぞれ固定され、前記膜体の下流側端部が昇降自在で、且つ水路方向に沿って移動自在に構成される膜状起伏ゲートであって、前記膜体の下流側端部を上昇させつつ、前記水路の上流側に移動させることで止水する構成であり、前記膜体の径間方向両端部と前記水路の一対の側壁部との最も上側の最上固定点が、前記膜体の下流側端部を最大限上昇させた最上昇点よりも上方に位置して、前記膜体は、その上流側端部は上流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、また、その下流側に設けられる吊り上げ端部は下流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成され、前記上流側端部及び前記吊り上げ端部をそれぞれクランプするクランプ部材を有し、前記各クランプ部材は、楔状に形成された前記上流側端部及び前記吊り上げ端部の傾斜面に当接する傾斜部を有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の発明では、止水時、膜体の下流側端部を最大限上昇させると、膜体の径間方向両端部と水路の一対の側壁部との最も上側の最上固定点が、膜体の下流側端部を最大限上昇させた最上昇点よりも上方に位置する。これにより、下流側端部を最大限上昇させた膜体により止水する際、水路の側壁部に沿って配置された膜体の径間方向両側の部位からの漏水を抑制することができる。
また、請求項2の発明では、膜体の上流側端部(水路の底壁部との固定部位)、及び吊り上げ端部(吊り上げ支持部位)は、楔状に形成されているので、膜体の上流側端部及び吊り上げ端部に対して引張荷重による変形や経年劣化による変形が生じた場合でも、各クランプ部材の傾斜部が上流側端部及び吊り上げ端部の傾斜面に順次追従するように当接することで、傾斜面における比較的広範囲な面でほぼ均一に荷重が分散されて、局所的な損傷を抑制することができる。言い換えれば、膜体の上流側端部及び吊り上げ端部は、楔状に形成されているので、膜体の上流側端部及び吊り上げ端部に対して引張荷重による変形や経年劣化による変形が生じた場合でも、これらの変形に対して、各クランプ部材の傾斜部が楔状の傾斜面に安定して当接するので、各クランプ部材と取付相手側との間から膜体の上流側端部及び吊り上げ端部が抜け出すことを抑制することができる。これにより、コストアップせず、強度的にも安定した膜体の固定構造(支持構造)を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る膜状起伏ゲートによれば、止水時、漏水を抑制すると共に、安価で、且つ強度的な弱点を克服した、膜体の固定構造を備えることができ、ひいては、その信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲートの全体像を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲートの径間方向端部が水路の側壁部に固定された状態を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲートに採用された膜体の上流側端部が第1クランプ部材により水路の底壁隆起部の上面に固定された状態を示す側面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲートに採用された膜体の吊り上げ端部に吊り上げ金具が接続された状態を示す側面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲートに採用された膜体の下流側端部を最大限上昇させた止水状態を示す斜視図である。
図6図6は、図5の一部拡大図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲートに採用された膜体の下流側端部を最大限上昇させた止水状態を示す側面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲートに採用された膜体の下流側端部を最大限上昇させた止水状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図1図8に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲート1は、水路5内に設置される。該水路5は、底壁部3と、該底壁部3の径間方向両端から鉛直方向上方に沿って延び、互いに対向する一対の側壁部4、4と、を備えている。図7も参照して、水路5の底壁部3には、上方に若干隆起する底壁隆起部3Aが水路方向に沿って所定範囲設けられている。本実施形態に係る膜状起伏ゲート1は、膜体10が起伏することで、止水または通水する構成である。以下の説明においては、水路5の幅方向を径間方向と称し、水路5内の水の流れに沿って、その上流側及び下流側と称する。図において、その左側が上流側に相当し、右側が下流側に相当する。
【0017】
図1及び図5に示すように、本実施形態に係る膜状起伏ゲート1は、水路5の径間方向全域に亘って配置された膜体10の上流側端部が水路5の底壁隆起部3Aの上流側に固定されると共に、膜体10の径間方向両端部が水路5の一対の側壁部4、4にそれぞれ固定され、膜体10の下流側端部が昇降自在で、且つ水路方向に沿って移動自在に構成される。膜体10は、ゴム引き布製である。膜体10は、比較的重量が軽く、可撓性を有するシート状に形成される。なお、図1図2図5及び図6においては、膜体10はグレーで示されている。また、図3及び図4では、膜体10は黒塗りで示されている。膜体10は、ゴム引き布を採用することで、ゴムにより遮水機能を発揮すると共に、内挿された繊維により膜体10の張力を安全、確実に伝達する構成としている。図1を参照して、膜体10が倒伏された通水状態では、膜体10は、中央の略矩形状の部位が水路5の底壁隆起部3Aに当接され、また、その径間方向両側から鉛直方向上方に延びる略三角形状の部位13、13が水路5の一対の側壁部4、4にそれぞれ当接されている。
【0018】
図1及び図4に示すように、膜体10が倒伏された通水状態にて、膜体10には、水路5の底壁隆起部3Aに沿って配置される部位であって、その下流側端部から下流側に向かって延長される吊り上げ端部15が形成される。この吊り上げ端部15には、後述する吊り上げ金具30が接続される。膜体10の上流側端部は、後述する複数の第1クランプ部材17により水路5の底壁隆起部3Aでその上流側の上面に固定される。さらに、膜体10の径間方向両端部は、後述する第3クランプ部材76、76により水路5の一対の側壁部4、4にそれぞれ固定される。なお、図1図2及び図8を参照して、水路5の一対の側壁部4にそれぞれ当接されている膜体10の径間方向両側の部位13には、第3クランプ部材76により側壁部4に固定された範囲より下流側に延長される自由側端部16が形成される。この自由側端部16は、吊り上げ端部15から連続して形成される。
【0019】
図1及び図3を参照して、膜体10の上流側端部は、上流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成される。膜体10の上流側端部は、上述したように、複数の第1クランプ部材17により水路5の底壁隆起部3Aの上流側でその上面に当接されて固定される。第1クランプ部材17は、径間方向に沿って複数配置される。言い換えれば、第1クランプ部材17は、径間方向に沿って複数に分割して設けられている。第1クランプ部材17は、平面視矩形状に形成される。第1クランプ部材17は、その長手方向が径間方向に一致するように配置される。
【0020】
第1クランプ部材17は、板材を折り曲げて構成される。第1クランプ部材17は、膜体10の楔状の上流側端部の傾斜面20に当接する傾斜部23と、該傾斜部23を境に上流側及び下流側にそれぞれ配置される一対の固定部24、24と、を備えている。傾斜部23は、膜体10の楔状の上流側端部の傾斜面20に当接するように、上流側に向かって若干上方に傾斜して延びている。一対の固定部24、24は、互いに平行であって、水路5の底壁隆起部3Aとほぼ平行で、ほぼ水平方向に沿って延びている。
【0021】
そして、膜体10の楔状の上流側端部を水路5の底壁隆起部3Aの上流側でその上面に当接させて、その上から第1クランプ部材17の上流側の固定部24全体が、膜体10の上流側端よりも上流側に突出するように載置する。そして、上流側アンカボルト26を、第1クランプ部材17の上流側の固定部24に挿通すると共に水路5の底壁隆起部3Aに固定する。このとき、第1クランプ部材17の上流側の固定部24と、水路5の底壁隆起部3Aの上面との間には、膜体10の楔状の上流側端部の最大厚み相当の空間が設けられる。なお、図1及び図2を参照して、上流側アンカボルト26は、一枚の第1クランプ部材17に対して径間方向に沿って間隔を置いて複数設けられる。
【0022】
また、図3を参照して、第1クランプ部材17の下流側の固定部24が、膜体10の楔状に形成される上流側端部の起点よりも下流側の上面に当接される。そして、下流側アンカボルト27を、第1クランプ部材17の下流側の固定部24に挿通すると共に膜体10に挿通して、且つ水路5の底壁隆起部3Aに固定する。その結果、膜体10の楔状の上流側端部は、第1クランプ部材17と水路5の底壁隆起部3Aの上面との間に挟持された状態で、各上流側アンカボルト26及び各下流側アンカボルト27により押圧、固定される。言い換えれば、膜体10の楔状の上流側端部は、その傾斜面20が第1クランプ部材17の傾斜部23に押圧された状態で、水路5の底壁隆起部3Aの上面に押圧、固定される。なお、第1クランプ部材17を分割して設けたことで、水路5の底壁隆起部3Aの上面の不陸についても対応し易くなり、結果として、良好な止水性を確保することができる。
【0023】
図1及び図2を参照して、下流側アンカボルト27は、上流側アンカボルト26に対応して、一枚の第1クランプ部材17の長手方向に沿って間隔を置いて複数設けられる。そこで、図3を参照して、第1クランプ部材17は、板材を折り曲げて傾斜部23及び一対の固定部24、24を成形して構成されているので、断面剛性を確保することができる。その結果、径間方向に沿って配置される上流側アンカボルト26及び下流側アンカボルト27の数量を増加させることなく、膜体10に対して、比較的均一に押圧力を付与することができる。さらに、第1クランプ部材17に形成されるボルト孔の削減にも繋がり、強度低下を抑制することもできる。
【0024】
図1図2及び図4を参照して、膜体10の下流側端部から下流側に延長された吊り上げ端部15には、吊り上げ金具30が接続される。なお、図2図6図8では、膜体10が倒伏された通水状態において、膜体10の下流側端部が水路5の底壁隆起部3Aに当接される最下降点(水路5の底壁隆起部3Aの下流端付近)をB点にて示している。図4を参照して、膜体10の吊り上げ端部15は、下流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成される。図1及び図4を参照して、吊り上げ金具30は、径間方向に沿って延びるベース板材33と、ベース板材33との間に膜体10の吊り上げ端部15を挟持する第2クランプ部材34と、を備えている。ベース板材33は、その長手方向が径間方向に一致する平面視矩形状に形成される。
【0025】
ベース板材33の背面(膜体10側とは反対側の面)には、断面コ字状の補強部材36が固定されている。補強部材36の開放側がベース板材33側に位置する。図5も参照して、補強部材36は、ベース板材33の長手方向略全域に固定される。図4及び図5を参照して、ベース板材33の径間方向両端部に近接してその背面側に、円筒状の第1パイプ部材38、38がそれぞれ配置されている。第1パイプ部材38は、その軸方向がベース板材33の短手方向に一致するように配置される。
【0026】
そして、図5を参照して、膜体10の下流側端部を最大限上昇させて止水する際には、膜体10の自由側端部16と吊り上げ端部15との間の部位が折り返されて第1パイプ部材38の外周面に接触するようになる。これにより、膜体10が、補強部材36の径間方向両端面等に接触して損傷することを抑制することができる。本実施形態では、円筒状の第1パイプ部材38が採用されているが、断面円形状のシャフト材や、外周面に曲率を有する部材等、膜体10を損傷させない他のものを採用してもよい。なお、図1及び図4を参照して、膜体10が倒伏された通水状態では、膜体10が水路5の底壁隆起部3Aに当接して、膜体10の吊り上げ端部15に接続された吊り上げ金具30が、水路5の底壁隆起部3Aより下流側で高さの低い底壁部3上に配置される。これにより、吊り上げ金具30により、通水障害を引き起こすことを抑制することができる。
【0027】
図1図2及び図4を参照して、ベース板材33の背面で、各第1パイプ部材38、38よりも若干内側の位置に、吊上げ板材40、40が立った状態でそれぞれ固定されている。各吊上げ板材40は、ベース板材33の背面の補強部材36から下流側に向かって延び、ベース板材33から下流側に突設される。吊上げ板材40には、吊上げ孔41が貫通して形成される。この吊上げ孔41に、後述する開閉装置60のワイヤーロープ65の他端に設けた連結シャフト69が回動自在に挿通される。第2クランプ部材34は、径間方向に沿って、ベース板材33と対向して配置される。第2クランプ部材34は、平面視矩形状に形成される。第2クランプ部材34は、その長手方向が径間方向と一致するように配置される。
【0028】
第2クランプ部材34は、板材を折り曲げて構成される。第2クランプ部材34は、膜体10の楔状の吊り上げ端部15の傾斜面45に当接する傾斜部48と、該傾斜部48を境に上流側及び下流側にそれぞれ配置される一対の固定部49、49と、を備えている。傾斜部48は、膜体10の楔状の吊り上げ端部15の傾斜面45に当接するように、ベース板材33に対して、下流側に向かって、ベース板材33から次第に離れる方向に若干傾斜している。一対の固定部49、49は互いに平行であって、ベース板材33とほぼ平行に延びている。
【0029】
そして、図4を参照して、膜体10が倒伏された通水状態において、膜体10の楔状の吊り上げ端部15を、ベース板材33の下流側端から間隔を置いた内側の上面に当接させて、その上から第2クランプ部材34の下流側の固定部49全体が、膜体10の吊り上げ端部15よりも下流側に突出するように載置する。そして、下流側取付ボルト52を、第2クランプ部材34の下流側の固定部49に挿通すると共にベース板材33に挿通して固定する。このとき、第2クランプ部材34の下流側の固定部49とベース板材33との間には、膜体10の楔状の吊り上げ端部15の最大厚み相当の空間が設けられる。図1を参照して、下流側取付ボルト52は、第2クランプ部材34に対して径間方向に沿って間隔を置いて複数設けられる。
【0030】
また、図4を参照して、第2クランプ部材34の上流側の固定部49が、膜体10の楔状に形成される吊り上げ端部15の起点よりも上流側の上面に当接される。そして、下流側取付ボルト52を、第2クランプ部材34の下流側の固定部49に挿通すると共に膜体10に挿通して、且つベース板材33に固定する。その結果、膜体10の楔状の吊り上げ端部15は、第2クランプ部材34とベース板材33との間に挟持された状態で、上流側取付ボルト53及び下流側取付ボルト52により押圧、固定される。言い換えれば、膜体10の楔状の吊り上げ端部15は、その傾斜面45が第2クランプ部材34の傾斜部48に押圧された状態で、ベース板材33に押圧、固定される。図1を参照して、下流側取付ボルト52は、上流側取付ボルト53に対応して、第2クランプ部材34(ベース板材33)の長手方向に沿って間隔を置いて複数設けられる。
【0031】
なお、図4を参照して、第2クランプ部材34も、第1クランプ部材17と同様に、板材を折り曲げて傾斜部48及び一対の固定部49、49を成形して構成されているので、断面剛性を確保することができる。その結果、径間方向に沿って配置される上流側取付ボルト53及び下流側取付ボルト52の数量を増加させることなく、膜体10に対して、比較的均一に押圧力を付与することができる。さらに、第2クランプ部材34に形成されるボルト孔の削減にも繋がり、強度低下を抑制することもできる。また、当該吊り上げ金具30は、その径間方向両端部が後述する開閉装置60の一対のワイヤーロープ65、65に支持される梁構造として機能するために、断面剛性を確保した第2クランプ部材34を有すると共に、ベース板材33の背面に断面コ字状の補強部材36を有し、その強度及び剛性が得られる断面性能とされている。また、ベース板材33の不陸の程度が僅かであるために、第2クランプ部材34は、径間方向に沿って分割せず、径間方向に沿う梁として剛性を高めている。
【0032】
図1及び図7を参照して、膜体10の上流側端部が、第1クランプ部材17により水路5の底壁隆起部3Aの上流側に固定された位置の直上には、水路5の一対の側壁部4、4の上面を架け渡すように支持台55が設けれる。該支持台55上に開閉装置60が配置される。当該開閉装置60は、手動ハンドル(図示略)が着脱自在に連結される減速機62と、該減速機62からの回転が伝達される回転軸63と、回転軸63の軸方向両端部付近に相対回転不能に連結される一対の巻取ドラム64、64と、各巻取ドラム64、64に巻回されるワイヤーロープ65、65と、を備えている。減速機62は、支持台55の長手方向一端上に配置される。回転軸63は、支持台55の上方に間隔を開けて配置される。一対の巻取ドラム64、64は、回転軸63の軸方向両端部付近に相対回転不能に連結される。当該巻取ドラム64に、ワイヤーロープ65の一端が連結される。回転軸63の回転に伴う巻取ドラム64の正方向または逆方向への回転により、ワイヤーロープ65を巻き取りまたは繰り出すことができる。
【0033】
図1及び図4を参照して、ワイヤーロープ65の他端には、一対の支持板68、68が対向するように連結される。一対の支持板68、68間に連結シャフト69が架け渡される。この連結シャフト69が、膜体10の吊り上げ端部15に接続された吊り上げ金具30(一対の吊上げ板材40、40)の吊上げ孔41、41に回転自在に挿通される。その結果、開閉装置60の一対のワイヤーロープ65、65の他端(一対の連結シャフト69、69)が、膜体10の吊り上げ端部15に接続された吊り上げ金具30(径間方向両端部に位置する一対の吊上げ孔41、41)にそれぞれ回動自在に連結される。なお、本実施形態では、ワイヤーロープ65が採用されているが、チェーンを採用してもよい。
【0034】
そして、膜体10の下流側端部を最大限上昇させて止水する場合には、図5を参照して、開閉装置60を作動させ、すなわち、作業者が手動ハンドルを減速機62に連結して、手動ハンドルを正方向に回転させることで、回転軸63の正方向への回転に伴って、一対の巻取ドラム64、64が正方向にそれぞれ回転する。その結果、一対の巻取ドラム64、64の正方向への回転より、各ワイヤーロープ65、65が一対の巻取ドラム64、64に巻き取られて、膜体10の下流側端部が上昇しつつ、上流側に移動する。一方、この止水状態から通水する場合には、開閉装置60を作動させ、すなわち、作業者が手動ハンドルを逆方向に回転させることで、回転軸63の逆方向への回転に伴って、一対の巻取ドラム64、64が逆方向にそれぞれ回転する。その結果、一対の巻取ドラム64、64の逆方向への回転より、各ワイヤーロープ65、65が繰り出されて、膜体10の下流側端部が水路5の底壁隆起部3Aに沿って当接される。なお、本実施形態では、作業者が手動ハンドルにより回転軸63を回転させて、膜体10を起伏させているが、減速機62に電動機を連結して、電動にて膜体10を起伏させるように構成してもよい。
【0035】
図1及び図2を参照して、膜体10の径間方向両端部は、第3クランプ部材76、76により水路5の一対の側壁部4、4にそれぞれ固定される。膜体10の径間方向端部には、その上流側に、水路5の底壁隆起部3Aと略平行に延びる水平延在部72と、該水平延在部72から下流側に上方に向かって傾斜して延びる傾斜延在部73と、が設けられている。この傾斜延在部73の具体的な方向等は後で詳述する。第3クランプ部材76は、膜体10の径間方向端部に備えた水平延在部72及び傾斜延在部73を、水路5の側壁部4に押圧、固定するためのものである。第3クランプ部材76は、所定幅を有する板材にて構成される。第3クランプ部材76は、膜体10の水平延在部72及び傾斜延在部73に沿うように、水平延在部72と傾斜延在部73との境目付近にて屈曲して延びている。本実施形態では、第3クランプ部材76は、膜体10の傾斜延在部73の途中部位を境に2分割したものを一体的に接合して構成される。
【0036】
第3クランプ部材76の下方には、円筒状の第2パイプ部材77が一体的に接合される。第2パイプ部材77は、第3クランプ部材76の延在方向に沿うように、膜体10の水平延在部72と傾斜延在部73との境目付近にて屈曲して延びている。本実施形態では、第2パイプ部材77は、膜体10の水平延在部72と傾斜延在部73との境目付近の部位、及び第3クランプ部材76の分割位置と略同じ部位を境に3分割したものを一体的に接合して構成される。そして、膜体10の下流側端部を最大限上昇させて止水する場合には、図5及び図6を参照して、膜体10の特に、径間方向両側の部位(略三角形状の部位)13、13が折り返されて第2パイプ部材77の外周面に接触するようになる。これにより、膜体10が、後述の各側部アンカボルト78等に接触して損傷することを抑制することができる。本実施形態では、円筒状の第2パイプ部材77が採用されているが、第1パイプ部材38と同様に、断面円形状のシャフト材や、外周面に曲率を有する部材等、膜体10を損傷させない他のものを採用してもよい。
【0037】
そして、膜体10の径間方向端部の水平延在部72及び傾斜延在部73を水路5の側壁部4に当接させる共に、水平延在部72及び傾斜延在部73上に第3クランプ部材76を載置する。続いて、側部アンカボルト78を、第3クランプ部材76及び膜体10の径間方向端部(水平延在部72及び傾斜延在部73)に挿通して、水路5の側壁部4に固定する。当該側部アンカボルト78は、第3クランプ部材76の延在方向に沿って間隔を置いて複数設けられる。これにより、膜体10の径間方向端部の水平延在部72及び傾斜延在部73が、第3クランプ部材76及び複数の側部アンカボルト78により水路5の側壁部4に押圧、固定される。なお、第3クランプ部材76(第2パイプ部材77)の上端付近が、膜体10の径間方向端部と水路5の側壁部4との最も上側に位置する最上固定点となり、図2図6図8ではC点にて示されている。
【0038】
そこで、上述したように、膜体10の下流側端部を最大限上昇させて止水する場合には、図5図8を参照して、開閉装置60を作動させると、一対のワイヤーロープ65、65が一対の巻取ドラム64、64に巻き取られることで、膜体10の下流側端部が吊り上げ金具30と共に上昇しつつ、上流側に移動して最上昇点(A点)に到達する。その結果、膜体10の径間方向両側の部位(略三角形状の部位)13、13が、第3クランプ部材76、76により折り返されるようにして、水路5の側壁部4、4に沿って張力が付与され、通水時に水路5の底壁隆起部3Aに当接されていた膜体10の部位(略矩形状の部位)が下流側に膨出するように変形した状態となる。なお、図2図6図8では、この最上昇点がA点にて示されている。最上昇点(A点)の高さが最大設計水位となる。
【0039】
そして、本実施形態に係る膜状起伏ゲート1では、図6図8から解るように、膜体10の径間方向両端部と水路5の側壁部4との最も上側の最上固定点(C点)が、膜体10の下流側端部を最大限上昇させた最上昇点(A点)よりも上方に位置するようになる。本実施形態に係る膜状起伏ゲート1では、最上固定点(C点)の高さH1が、最上昇点(A点)の高さH2の1.1倍となる。その結果、水路5の側壁部4に沿って配置される膜体10の径間方向両側の部位13からの漏水を抑制することができる。また、膜体10の水路方向に沿う全長Lは、最上昇点(A点)の高さH2の1.3倍となる。さらに、膜体10の上流側端から最上昇点(A点)までの水平方向の距離Dは、最上昇点(A点)の高さH2の0.2倍となる。
【0040】
換言すると、膜体10の構造は、膜体10の水流方向に沿う全長L(最上昇点(A点)の高さH2の1.3倍)、最上昇点(A点)の高さH2、及び膜体10の上流側端から最上昇点(A点)までの水平方向の距離Dを適宜設計することにより、所定の水圧が膜体10に作用した際、図8に示すように、膜体10が変形して、最上昇点(A点)において、膜体10の変形曲線接線方向(図8の矢印)に吊り上げ力F(膜体10の張力F)が発生して安定させるようにする。また、図2及び図8を参照して、膜体10の径間方向端部である傾斜延在部73は、膜体10の下流側端部が水路5の底壁隆起部3Aに当接される最下降点(B点)と、最上昇点(A点)とを結ぶ線分(AB)に対して垂直2等分線(図8の線分MC)上に沿って、第3クランプ部材76により水路5の側壁部4に固定される。なお、図7及び図8を参照して、膜体10の上流側端から前記最下降点(B点)までの水平方向の距離と、膜体10の上流側端から前記最上固定点(C点)までの水平方向の距離とは略同じである。
【0041】
また、膜体10の下流側端部を最大限上昇させた止水状態では、図6図8から解るように、膜体10の径間方向両側の部位13であって、第3クランプ部材76により側壁部4に固定された範囲より下流側に延長される自由側端部16が最上昇点(A点)よりも上方に位置するようになる。また、膜体10の径間方向両側の自由側端部16を含む部位が第3クランプ部材76(膜体10の傾斜延在部73の範囲)により折り返され、自由側端部16が上部に位置した折り返し部位が、水路5の側壁部4との間に浸入した水により水路5の内側に膨出するように変形する。しかしながら、折り返し部位の上部に位置する自由側端部16には、膜体10の下流側端部(吊り上げ端部15を含む)を吊り上げる力F(図6及び図8の矢印)の分力である鉛直方向上方への力が付与されるために、下方への変形を抑制することができる。その結果、水路5の側壁部4に沿って配置される膜体10の径間方向両側の部位13からの漏水をさらに抑制することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲート1では、止水時には、膜体10の下流側端部を上昇させつつ、水路5の上流側に移動させる構成であって、膜体10の下流側端部を最大限上昇させると、膜体10の径間方向両端部と水路5の側壁部4との最も上側の最上固定点(C点)が、膜体10の下流側端部を最大限上昇させた最上昇点(A点)よりも上方に位置する。これにより、下流側端部を最大限上昇させた膜体10により止水する際、水路5の側壁部4に沿って配置された膜体10の径間方向両側の部位13からの漏水を抑制することができる。
【0043】
また、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲート1では、膜体10の下流側端部が水路5の底壁隆起部3Aに当接される最下降点(B点)と、最上昇点(A点)とを結ぶ線分(AB)に対して垂直2等分線(図8の線分MC)上に沿って、膜体10の径間方向両端部の傾斜延在部73が、第3クランプ部材76(膜体10の傾斜延在部73の範囲)により、水路5の一対の側壁部4にそれぞれ固定される。そして、膜体10の下流側端部を最大限上昇させて止水する際には、膜体10の径間方向両側の部位13は、膜体10の径間方向両端部と水路5の側壁部4との固定範囲を起点として水路5の上流側及び鉛直方向上方に張力が付与された状態で吊り上げられる。その結果、膜体10の径間方向両側の部位13における上端部(本実施形態では自由側端部16)が、膜体10の最上昇点(A)から下方に垂れ下がるなどの変形を抑制することができる。これにより、特に、水路5の側壁部4に沿って配置された膜体10の径間方向両側の部位13からの漏水をさらに抑制することができる。
【0044】
さらに、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲート1では、膜体10の径間方向両側の部位13であって、第3クランプ部材76により側壁部4に固定された範囲より下流側に延長される自由側端部16が形成されている。そして、膜体10の下流側端部を最大限上昇させた止水状態では、膜体10の径間方向両側の部位13である自由側端部16が最上昇点(A点)よりも上方に位置するようになる。そこで、上端部に位置する自由側端部16には、膜体10の下流側端部(吊り上げ端部15を含む)を吊り上げる力F(図6及び図8の矢印)の分力である鉛直方向上方への力が付与されるために、下方への変形、すなわち、膜体10の自由側端部16が、膜体10の最上昇点(A)から下方に垂れ下がるような現象を抑制することができる。その結果、水路5の側壁部4に沿って配置された膜体10の径間方向両側の部位13からの漏水をさらに抑制することができる。
【0045】
さらにまた、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲート1では、膜体10の上流側端部は、上流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成されており、膜体10の上流側端部を水路5の底壁隆起部3Aにクランプずる第1クランプ部材17は、膜体10の楔状に形成された上流側端部の傾斜面20に当接する傾斜部23と、該傾斜部23を境に上流側及び下流側にそれぞれ配置される一対の固定部24、24と、を備えている。そして、経年により楔状部分のゴム材料が変形して接触圧力が低下しても、膜体10に張力が発生すると、楔効果により膜体10の上流側端部の傾斜面20と第1クランプ部材17の傾斜部23との間に、比較的に広範囲に、且つ均等で高い押圧力が付与される。そして、膜体10に発生した張力は、安全に膜体10の上流側端部から第1クランプ部材17、上流側アンカボルト26及び下流側アンカボルト27を介して、または直接に水路5の底壁隆起部3Aに伝達され、膜体10の上流側端部の内部においても、ゴム引き布内部の繊維に無理なく伝達される。
【0046】
これにより、膜体10の上流側端部において局所的な損傷を抑制することができる。また、膜体10の上流側端部に対して引張荷重による変形や経年劣化による変形が生じた場合でも、これらの変形に対して、第1クランプ部材17の傾斜部48が楔状の傾斜面20に安定して当接できるので、第1クランプ部材17と水路5の底壁隆起部3Aとの間から膜体10の上流側端部が抜け出すことを抑制することができる。
【0047】
さらにまた、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲート1では、膜体10の吊り上げ端部15は、下流側に向かってその厚みが厚くなる楔状に形成されており、膜体10の吊り上げ端部15をベース板材33にクランプする第2クランプ部材34は、膜体10の楔状に形成された吊り上げ端部15の傾斜面45に当接する傾斜部48と、該傾斜部48を境に上流側及び下流側にそれぞれ配置される一対の固定部49、49と、を備えている。これにより、膜体10の吊り上げ端部15を、吊り上げ金具30において、ベース板材33と第2クランプ部材34との間に挟持する際には、上述したような、第1クランプ部材17により膜体10の上流側端部を水路5の底壁隆起部3Aに固定する際の作用効果と同等の作用効果を得ることができる。これにより、本発明の実施形態に係る膜状起伏ゲート1では、コストアップすることなく、強度的にも安定した膜体10の固定構造(支持構造)を採用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 膜状起伏ゲート,3 底壁部,3A 底壁隆起部,4 側壁部,5 水路,10 膜体,15 吊り上げ端部,17 第1クランプ部材(クランプ部材),20 傾斜面,23 傾斜部,34 第2クランプ部材(クランプ部材),45 傾斜面,48 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8