(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】体調変化検知装置、体調変化管理プログラム及び体調変化管理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20241112BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241112BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241112BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20241112BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241112BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61B5/01 350
A61B5/11 200
A61B5/00 102A
A61B5/02 310F
G08B25/04 K
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2022524491
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2021018820
(87)【国際公開番号】W WO2021235442
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2020087745
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513158081
【氏名又は名称】島崎 拓則
(73)【特許権者】
【識別番号】595151501
【氏名又は名称】株式会社メッツ
(73)【特許権者】
【識別番号】520173196
【氏名又は名称】有限会社エムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】島崎 拓則
(72)【発明者】
【氏名】福田 充宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 大和
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-090894(JP,A)
【文献】特開2006-263002(JP,A)
【文献】特開2020-016528(JP,A)
【文献】特表2019-501389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0054250(US,A1)
【文献】特表2006-509576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
A61B 5/11
A61B 5/00
A61B 5/02
G08B 25/04
G08B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の熱中症等の体調不良の発生リスクを検知する体調変化検知装置において、
前記対象者に装着可能なケーシングと、
前記ケーシング内に設けられる基板と、
前記ケーシング内に設けられ、前記対象者の体表面から得られる生体情報の変動を検知する体表面側生体情報検知部と、
前記ケーシング内に設けられ、前記対象者の前記体表面から離れた外部の熱変動を検知する外部熱変動検知部と、を備え、
前記体表面側生体情報検知部と前記外部熱変動検知部は、互いに前記基板の異なる面に配置されている
体調変化検知装置。
【請求項2】
前記体表面側生体情報検知部は、前記対象者の前記体表面からの輻射熱の変動を検知する輻射熱検知部である
請求項1に記載の体調変化検知装置。
【請求項3】
前記輻射熱検知部は、前記体表面から離隔して設けられるサーモパイルセンサである
請求項2に記載の体調変化検知装置。
【請求項4】
前記外部熱変動検知部は、少なくとも前記対象者の前記体表面の外部の温度と湿度の変動を検知する温湿度センサである
請求項1~3の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項5】
前記温湿度センサは、前記対象者が着用する衣類の内部の少なくとも温度と湿度の変動を検知する
請求項4に記載の体調変化検知装置。
【請求項6】
前記体表面側生体情報検知部及び前記外部熱変動検知部の検知データ又は前記検知データを演算処理した処理済みデータの少なくとも何れかを所定時間毎に外部機器に送信するように制御する送信部を更に備える
請求項1~5の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項7】
前記体表面側生体情報検知部は、前記対象者の心拍数を計測する脈波センサを含む
請求項1~6の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項8】
少なくとも前記対象者の主観的データを入力操作可能な操作部を更に備える
請求項1~7の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項9】
前記対象者に前記体調変化を含むアラートを報知する警報部を更に備える
請求項1~8の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項10】
前記ケーシングには、前記ケーシングの内側に突出する筒状壁でなる開口部が設けられており、
前記開口部の内側には、前記体表面側生体情報検知部が配置されており、
前記開口部には、その開口を塞ぐ熱伝導性を有する熱伝導シートが設けられている
請求項1~9の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項11】
前記体表面側生体情報検知部によって検知される前記生体情報の変動と、前記外部熱変動検知部によって検知される前記外部の熱変動とを示す測定データに基づいて、対象者個人の暑さ指数の評価指標であるpWBGT(personal Wet Bulb Globe Temperature:パーソナル湿球黒球温度)により前記対象者個人の体調不良の発生リスクの有無を判定する判定部を更に備える
請求項1~10の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項12】
少なくとも1つのプロセッサを、少なくとも受信部、判定部として機能させ、対象者の熱中症等の体調不良の発生リスクを検知する体調変化管理プログラムであって、
前記受信部は、前記対象者に装着可能なケーシング内
の基板に設けられた体表面側生体情報検知部によって検知される対象者の体表面から得られた生体情報の変動と、前記ケーシング内
の前記基板の前記体表面側生体情報検知部が設けられた面と互いに異なる面に設けられた外部熱変動検知部によって検知される前記体表面と離れた外部の熱変動とを示す測定データを取得可能に構成され、
前記判定部は、少なくとも前記測定データに基づいて、対象者個人の暑さ指数の評価指標であるpWBGT(personal Wet Bulb Globe Temperature:パーソナル湿球黒球温度)により前記対象者個人の体調不良の発生リスクの有無を判定可能に構成される
体調変化管理プログラム。
【請求項13】
さらに前記体調変化管理プログラムは、前記プロセッサを送信部として機能させるものであり、
前記送信部は、前記判定部の判定結果を少なくとも外部機器に送信可能に構成される、
請求項12に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項14】
前記受信部は、前記対象者が体感した体調に関する主観的データを取得可能に構成されており、
前記判定部は、前記測定データと前記主観的データとに基づいて、前記発生リスクの有無を判定可能に構成される
請求項12又は13に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項15】
前記主観的データは、前記対象者の体調変化に関するアンケートの回答データを含む
請求項14に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項16】
前記判定部は、前記対象者ごとに、前記回答データに基づいて、
少なくとも前記
測定データを含む客観的データに対して体調変化を識別するためのアノテーション処理を実行し、前記対象者ごとに固有の体調変化の比較判定するためのラベル付き客観的データを生成する
請求項15に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項17】
さらに前記体調変化管理プログラムは、前記プロセッサを生成部として機能させるものであり、
前記生成部は、前記測定データを含む表示用データを生成可能に構成される
請求項12~16の何れか1項に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項18】
前記外部熱変動検知部によって検知される前記測定データは、前記対象者が着用する衣類の内部の少なくとも温度と湿度の変動データである
請求項12~17の何れか1項に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項19】
請求項12~18の何れか1項に記載の体調変化管理プログラムを格納した
非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記プロセッサを少なくとも受信部、判定部として機能させる体調変化管理プログラムと、を備え、対象者の熱中症等の体調不良の発生リスク体調変化を検知する体調変化管理システムであって、
前記受信部は、前記対象者に装着可能なケーシング内
の基板に設けられた体表面側生体情報検知部によって検知される対象者の体表面から得られた生体情報の変動と、前記ケーシング内
の前記基板の前記体表面側生体情報検知部が設けられた面と互いに異なる面に設けられた外部熱変動検知部によって検知される前記体表面と離れた外部の熱変動とを示す測定データを取得可能に構成され、
前記判定部は、少なくとも前記測定データに基づいて、対象者個人の暑さ指数の評価指標であるpWBGT(personal Wet Bulb Globe Temperature:パーソナル湿球黒球温度)により前記対象者個人の体調不良の発生リスクの有無を判定可能に構成される
体調変化管理システム。
【請求項21】
前記外部熱変動検知部によって検知される前記測定データは、前記対象者が着用する衣類の内部の少なくとも温度と湿度の変動データである
請求項20に記載の体調変化管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体調変化を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場や建設現場等においては、作業者は、高温の環境下で作業に従事することがあるので、作業者の熱中症を予防することが必要となる。熱中症リスクを判定する指標として、湿球温度、黒球温度及び乾球温度を基準として算出されるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)が知られている。WBGTは、気温のほか、湿度と輻射熱の影響をも考慮した熱中症リスクの基準値として使用される。
【0003】
WBGTに基づいて熱中症リスクを判定する関連技術として、例えば、特許文献1には、対象者の居室内の室温及び湿度の測定結果からWBGT値を演算し、その演算結果から熱中症リスクの有無を判断して熱中症アラートを出力するシステムが開示されている。一方、特許文献2には、対象者ごとに適切な熱中症リスクを判定するために、対象者が着用するヘルメットや衣服等の着用物の外側と内側にそれぞれ気温と湿度を測定するWBGTセンサを設けて、これらのセンサの測定値に基づいて対象者の熱中症リスクを判定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-168098号公報
【文献】特開2020-016528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱中症が発生するリスクは、対象者の体格、体質、体調、及び置かれた環境・状況等により、変動し得るものとなっている。また、対象者の体調を管理するには、熱中症以外にも低体温症や肉体疲労等の体調変化も検知できることが好ましい。すなわち、対象者の体調変化を判定するに際して、変動し得る体調変化の発生要因に応じて、体調変化を検知できることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、対象者の体調変化を検知可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、対象者の体調変化を検知する体調変化検知装置において、前記対象者の体表面から得られる生体情報の変動を検知する体表面側生体情報検知部と、前記対象者の前記体表面から離れた外部の熱変動を検知する外部熱変動検知部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様によれば、対象者の体表面から得られる生体情報の変動と対象者の体表面から離れた外部の熱変動に基づいて、対象者の体調変化を検知できるようになる。
【0009】
本発明の一態様は、少なくとも1つのプロセッサを、少なくとも受信部、判定部として機能させる体調変化管理プログラムであって、前記受信部は、対象者の体表面から得られた生体情報の変動と前記体表面と離れた外部の熱変動とを示す測定データを取得可能に構成され、前記判定部は、少なくとも前記測定データに基づいて、前記対象者の前記体調変化の発生リスクの有無を判定可能に構成される。これによれば対象者の体調変化を管理できる。
【0010】
本発明の一態様は、少なくとも1つのプロセッサと、前記プロセッサを少なくとも受信部、判定部として機能させる体調変化管理プログラムと、を備える体調変化管理システムであって、前記受信部は、対象者の体表面から得られた生体情報の変動と前記体表面と離れた外部の熱変動とを示す測定データを取得可能に構成され、前記判定部は、少なくとも前記測定データに基づいて、前記対象者の前記体調変化の発生リスクの有無を判定可能に構成される。これによれば対象者の体調変化を管理できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、対象者の体調変化を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の操作部の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置を対象者に装着した状態を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の機能の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】(A)は、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の要部の配置を示す説明図であり、(B)は、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の動作説明図である。
【
図6】(A)乃至(C)は、本発明の他の実施形態に係る体調変化検知装置の要部の配置を示す説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムの要部の詳細な構成を示すブロック図である。
【
図9】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムを使用する対象者に送信されるアンケートの一例を示す説明図である。
【
図10】指尖部に装着した脈波センサを発光光色RGBでそれぞれ5段階の圧力変化示す説明図である。
【
図11】波長による脈波波形と体動ノイズの違いを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0014】
体調変化検知装置100の概略構成:
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の概略構成について、図面を使用しながら説明する。
図1(A)は、体調変化検知装置の外側から見た斜視図であり、
図1(B)は、体調変化検知装置の内側から見た斜視図であり、
図2(A)及び
図2(B)は体調変化検知装置の操作部の一例を示す斜視図である。なお、
図1(A)、
図2(A)及び
図2(B)は、体調変化検知装置のケーシング内の構成要素の配置が視認できるように、ケーシングの表面側の一部を破断した状態を示している。
【0016】
本実施形態の体調変化検知装置100は、体調が変化し得る環境にいる人を「対象者」として、熱中症や低体温症、肉体疲労、過労等の体調変化を検知するために用いることができる。その対象者としては、例えば(1)工事現場や建設現場等の現場作業者や交通整理の警察官等の「屋外で働く労働者」、(2)病院や事業会社等の「屋内で働く労働者」、(3)行楽地等の屋外で活動する未就学者、学生、大人等の「屋外で活動する人」、(4)寝たきりや要介護者等の高齢者等の「屋内で活動をする人」などが挙げられる。
【0017】
体調変化検知装置100は、ケーシング110の中に温湿度センサ120と、加速度センサ130と、サーモパイルセンサ140と、脈波センサ150とを備える。なお、これらのセンサの配置形態については、
図6を参照しつつ後述する。
【0018】
ケーシング110は、樹脂成形体で構成されている。材質とする樹脂は、硬質樹脂や軟質樹脂を用いることができ、それらを部分ごとに併用することもできる。ケーシング110は、湾曲形状に形成されている。このためケーシング110は、対象者の上腕にフィットするように装着することができる(
図3)。ケーシング110の内部には、バッテリ(図示せず)や、通信部113、操作部114、表示部115、ROM116、RAM117、及び制御部160(図
4参照)を備える。操作部114、表示部115は、ケーシング110の外部に表出している。
【0019】
温湿度センサ120は、
図1(A)に示すように、ケーシング110内に有する基板110cに設けられている。温湿度センサ120は、基板110cの表面側に設けられている。温湿度センサ120は、基板110cの外側、すなわち、体調変化検知装置100を装着した対象者の体表面から離れた外部の熱変動を検知する「外部熱変動検知部」として機能する。温湿度センサ120は、基板110cの外側の熱変動として、少なくとも基板110cの外部の温度と湿度を検知する機能を有する。すなわち、温湿度センサ120は、対象者の体表面から離れた外部の温度と湿度として、ケーシング110の表面110a側の温度と湿度を検知する機能を有する。温湿度センサ120は、対象者が着用する衣類の内部の少なくとも温度と湿度を検知可能になっている。
【0020】
加速度センサ130は、体調変化検知装置100を装着する対象者の運動量を検知する機能を有する。具体的には、加速度センサ130は、例えば、3軸方向(上下、左右及び奥行方向)における加速度に応じた信号を出力して、対象者の運動量を検知する。なお、加速度センサ130は、基板110cの表面側に設けられているが、少なくともケーシング110内に設ければよい。したがって加速度センサ130は基板110cの裏面側に設けてもよい。
【0021】
サーモパイルセンサ140は、対象者の体表面から得られる生体情報の変動を検知する「体表面側生体情報検知部」として機能する。サーモパイルセンサ140は、熱起電力効果により温度の絶対値の検出が可能な非接触温度センサであり、対象者の体表面から得られる生体情報の変動の一つである輻射熱の変動を検知する。したがってサーモパイルセンサ140は、「輻射熱検知部」としての機能を有する。サーモパイルセンサ140は、基板110cの裏面側に設けられており、対象者の体表面に対向するように、体表面から離隔して設けられている。換言すると、サーモパイルセンサ140は、検知方向を体表面に向けて設置されている。そして、前述の温湿度センサ120は、検知方向がサーモパイルセンサ140と逆方向、即ち体表面から見た外側方向に向けて設置されている。
【0022】
ケーシング110の裏面110bには、ケーシング110の内側に突出する筒状壁でなる開口部110b1が設けられている。開口部110b1の内側には、サーモパイルセンサ140が配置されている。開口部110b1の基板110cの側の端は、基板110cに突き当たっている。基板110cは、図示しないボルトによってケーシング110に固定されている。そして、開口部110b1には、その開口を塞ぐように熱伝導性を有する熱伝導シート142が設けられている。熱伝導シート142は、体表面からの汗や水分の浸入を防止して、かつ、対象者の体表面からサーモパイルセンサ140への熱伝導性を高めるために設けられている。なお、熱伝導シート142の詳細は後述する。
【0023】
脈波センサ150は、対象者の体表面から得られる生体情報の変動を検知する「体表面側生体情報検知部」を構成する。脈波センサ150は、対象者の心拍数を計測する機能を有する。本実施形態では、脈波センサ150は、
図1(B)で示すようにケーシング110の裏面110b側に設けられている。これにより脈波センサ150は、対象者の心拍数を光電脈波法で計測することができる。脈波センサ150は、光の3原色であるRGBで構成されているカラーLEDで発した光を、RGBのフォトダイオード等で構成されているカラーセンサで受光することにより心拍数を計測可能に構成されている。
【0024】
具体的には、脈波センサ150は、基板110cの裏面側に設けられている照射光源となるカラーLEDと、受光部となるカラーセンサが並列して設けられている反射型脈波センサで構成されている。本実施形態の脈波センサ150は、カラーLEDから発した光を生体に向けて照射し、その反射光をカラーセンサで受光して、心臓の脈動に伴って変化する血流量(血管の容量変化)を時系列にセンシングすることで脈波信号を計測して、心拍数を計測可能となっている。なお、脈波センサ150は、反射型の脈波センサに限定されず、透過型の脈波センサとしてもよい。
【0025】
また、脈波センサ150に備わるカラーLEDは、光の3原色であるRGBで構成されているため、黄色や水色等の多くの色調を表現できるようになっている。一方、脈波センサ150に備わるカラーセンサは、RGBのフォトダイオード等で構成されているため、ヒトの視覚と同じように多くの色調を判別できるようになっている。すなわち、脈波センサ150は、カラーLEDの照射光の波長を変更可能に構成されており、かつ、カラーセンサが各波長の照射光を受光可能に構成されている。
【0026】
脈波センサ150は、カラーLEDが照射光の波長を変更して、赤色から橙色、黄色、緑色、青色、紫色等と変更可能となっており、受光部となるカラーセンサが各波長の反射光を受光可能になっている。このため、適応的に運動時、個体差、脈波センサ150の固定圧等の状況に適した色のカラーLEDで発した光をカラーセンサで受光することにより、光電容積で状況に左右され難い心拍数を得ることが可能になっている。
【0027】
脈波センサ150は、複数設ける構成としてもよい。例えば2つ設ける構成としてもよい。具体的には、ケーシング110の裏面110b側に第1の脈波センサ150を設置する。第2の脈波センサ150は、第1の脈波センサ150から所定の距離を介してケーシング110内に設ける。第1の脈波センサ150は、ケーシング110の対象者の体表面に接する表面に設けられ、体調変化検知装置100を装着する対象者の皮膚に密着させて通常の心拍数計(PPG:Photo Plethysmo Gram)として使用できる。これに対して、第2の脈波センサ150は、第1の脈波センサ150が設置されているケーシング110の表面から離隔してケーシング110内に設けられ、対象者の皮膚から浮かせて配置させることによって、体動ノイズセンサ(MA:Motion Artifact)として使用できる。
【0028】
このように、2つの脈波センサ150を近接させて設けることによって、対象者の安静時には、体動ノイズが発生しないため、PPGとして機能する第1の脈波センサ150から脈波波形のみが出力される。これに対して、対象者の運動時になると、PPGとして機能する第1の脈波センサ150には、脈波に体動ノイズが混入した波形が出力され、MAとして機能する第2の脈波センサ150には、体動ノイズだけが出力される。これを不図示の適応フィルタで処理して、差分だけを抽出することによって脈波だけを抽出することができる。したがってこれによれば、運動中でも正確に心拍数を取得できるようになる。
【0029】
ケーシング110の表面側には、体調変化検知装置100を動作させる際に、所定の命令や各種データを入力する機能を有する操作部114が設けられている。操作部114は、例えば、
図2(A)に示すような押釦式の入力ボタン114aや、
図2(B)に示すタッチパネル114bで構成することができる。それらの入力ボタン114aとタッチパネル114bの双方を備えてもよい。操作部114は、少なくとも対象者の「主観的データ」を入力操作可能になっている。「主観的データ」や操作部114で行う主観的データの入力操作の詳細は、後述する。
【0030】
ケーシング110の両端側(長手方向端部)には、ベルト112を装着可能なスリット111が設けられている。
図3に示すように、ケーシング110がベルト112をスリット111に通すことで、ケーシング110を対象者P1の上腕に装着することができる。なお、体調変化検知装置100の装着箇所は、対象者P1の上腕以外の部位でも良い。
【0031】
体調変化検知装置100の機能構成:
【0032】
次に、体調変化検知装置100の機能構成を説明する。
図4は、本実施形態の体調変化検知装置100のハードウェアに基づく機能の概略構成を示すブロック図である。
【0033】
体調変化検知装置100は、前述した温湿度センサ120、加速度センサ130、サーモパイルセンサ140、脈波センサ150の複数のセンサを備える。さらに体調変化検知装置100は、
図4で示すように、通信部113と、操作部114と、表示部115と、制御部160と、ROM116と、RAM117と、警報部118とを備える。
【0034】
通信部113は、ネットワーク2(
図7参照)を介して、外部とのデータの送受信をする際のインターフェースとしての機能を有する。通信部113の通信方式は、例えば、LTE(long term evolution)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信を用いることができる。操作部114は、前述の入力ボタン114aやタッチパネル114b等で構成され(
図2参照)、制御部160に所定の命令やデータの入力を行うものである。本実施形態では、操作部114は、対象者の体調変化に関するアンケートの回答データや性別、年齢、BMI等の個人情報等を集計した主観的データを入力操作する機能も有する。表示部115は、制御部160による演算結果や操作部114の入力結果等を画面表示で出力する機能を有し、例えば、液晶画面等から構成される。警報部118は、音や振動によって対象者に情報を報知する機能を有する。なお、警報部118による体調変化のアラートを報知する動作の詳細については、後述する。
【0035】
制御部160は、ROM116に記憶されている各種プログラムを実行することによって、体調変化検知装置100に備わる各構成要素の動作を制御する機能を有する。また、制御部160は、これら各種処理を実行する際に、必要なデータ等を一時的に記憶するRAM117に適宜記憶させる機能を有する。このため、制御部160による制御動作によって、ROM116、RAM117へのアクセス、表示部115に対するデータの画面表示動作、操作部114に対する操作動作、外部と通信する際に通信部113をインターフェースとしてネットワーク2を介した各種情報の送受信動作等を行えるようになる。
【0036】
さらに制御部160は、温湿度センサ120、加速度センサ130、サーモパイルセンサ140、脈波センサ150のセンサからの検知データを受信して、その検知データに基づいて対象者の体調変化の有無等を判定して、その判定結果を外部に送信する機能を有するようにしてもよい。制御部160は、
図4に示すように、受信部162と、判定部164と、送信部166とを備える。
【0037】
受信部162は、温湿度センサ120、加速度センサ130、サーモパイルセンサ140、脈波センサ150の各検知用のセンサからの検知データの受信を制御する機能を有する。また、受信部162は、外部機器からの各種データの受信を制御する機能を有する。さらに、受信部162は、外部機器から体調変化検知装置100に送信される対象者の体調変化に関するアンケートデータの受信を制御する機能も有する。
【0038】
判定部164は、体調変化検知装置100の各種動作を実行する際に必要となる判定動作を行う機能を有する。具体的には、判定部164は、体調変化検知装置100の通信部113を介して外部機器との各種データの送受信の有無を判定する機能を有する。また、判定部164は、温湿度センサ120、加速度センサ130、サーモパイルセンサ140、脈波センサ150の各検知用のセンサが測定した検知データを演算処理して対象者の体調変化の有無等を判定する機能を有することができる。
【0039】
具体的には、判定部164は、温湿度センサ120から受信したケーシング110の外側の温度データと湿度データ、サーモパイルセンサ140から受信した対象者の体表面からの輻射熱の検知データに基づいて、その差分結果から、対象者が熱中症を患うリスクの有無を判定する。その際に、加速度センサ130が検知した対象者の運動量や、脈波センサ150が検知した対象者の心拍数も含めて総合的にリスクの有無を判定することによって、対象者の体格、体質、体調、及び置かれた環境・状況等により、変動し得る体調変化の発生要因に応じて、より確実に体調変化を検知できるようになっている。
【0040】
送信部166は、外部機器への各種データの送信を制御する機能を有する。本実施形態では、送信部166は、温湿度センサ120、加速度センサ130、サーモパイルセンサ140、脈波センサ150の各検知用のセンサの検知データを、例えば管理者端末30(
図7参照)やサーバ装置10(
図7参照)、対象者端末40(
図7参照)に送信するように制御している。また、送信部166は、判定部164の判定結果を、例えば管理者端末30やサーバ装置10(
図7参照)、対象者端末40に送信するように制御している。さらに、送信部166は、管理者端末30から送信された対象者の体調変化に関するアンケートに対する回答データを管理者端末30やサーバ装置10(
図7参照)、対象者端末40に送信するように制御する機能も有する。なお、送信部166が各種データを送る送信先は、送信部166の機能や通信環境によって異なる。すなわち、送信部166がデータを管理者端末30又はサーバ装置10に送信する構成としても、送信部166が対象者端末40にデータを送信してから、対象者端末40がデータを管理者端末30又はサーバ装置10に送信する構成としてもよい。
【0041】
送信部166は、温湿度センサ120、加速度センサ130、サーモパイルセンサ140、脈波センサ150の各検知用のセンサの検知データ(測定データ)を、所定時間毎に外部機器に送信する機能を有する。その所定時間は、例えば一定の時間間隔毎(例えば1分毎)、任意長の時間間隔毎に設定することができる。また、送信部166は、バッテリ残量に応じて、その所定時間を可変としてもよい。例えばバッテリ残量が50%を超える場合は1分毎に送信し、50%以下の場合は10分毎に送信してもよい。そのバッテリ残量の数値と送信時間は任意に設定できる。さらに、送信部166は、データを送信するまでの間に検知した複数の検知データを蓄積しておき、蓄積した複数の検知データを所定時間毎に一括して送信してもよい。これによればバッテリ消費を低減できる。送信部166が送信する検知データは、(1)各検知用のセンサが測定した実測データ、(2)実測データを演算処理した処理済みデータ、(3)実測データと処理済みデータの双方、の何れとしてもよい。どの形態でセンサの検知データを送信するかは、判定部164の機能やバッテリ残量等に応じて変えてもよい。
【0042】
このように体調変化検知装置100は、温湿度センサ120、加速度センサ130、サーモパイルセンサ140、脈波センサ150の各検知用のセンサの検知データに基づいて、体調変化検知装置100を装着した対象者の体調変化の有無(体調変化が発生するリスク)を判定できるようになっている。また、体調変化検知装置100は、管理者端末30(
図7参照)やサーバ装置10との間で、体調変化検知装置100を装着する対象者の体調変化に関するアンケートに関するデータを送受信できるようになっている。なお、本実施形態の体調変化検知装置100を用いた対象者の体調変化の有無の判定や体調変化を管理する詳細は、後述する。
【0043】
体調変化検知装置100のセンサの使用形態:
【0044】
次に、体調変化検知装置100のセンサの使用形態を説明する。
図5(A)は、体調変化検知装置100のセンサの使用形態を示す説明図であり、
図5(B)は、体調変化検知装置100の動作説明図である。なお、
図5(A)、
図5(B)は、基板110cに対する温湿度センサ120とサーモパイルセンサ140の配置、及びケーシング110の裏面110b側に設けられる開口部110b1に貼付された熱伝導シート142の配置が分かるように、これらの構成要素のみを抜粋した簡略断面図となっている。
【0045】
体調変化検知装置100は、
図5(A)に示すように、基板110cの外側の面に温湿度センサ120を設け、かつ、基板110cの体表面と対向する内側の面にサーモパイルセンサ140を設けている。温湿度センサ120は、対象者の体表面から離れた外部の熱変動を検知するために、基板110cの外側の面に設けられている。サーモパイルセンサ140は、対象者の体表面からの輻射熱を検知するために、体表面に対向するように体表面から離隔して基板110cの内側の面に設けられている。
【0046】
基板110cの側壁110dの下端側の開口部110b1には、熱伝導シート142が設けられている。熱伝導シート142は、CuやAl等の導電性が良好なシート状の導電体の表面に黒体テープを貼付けて構成される。開口部110b1に熱伝導シート142を設けることによって、サーモパイルセンサ140に汗や水分等が浸入して故障することを予防し、またサーモパイルセンサ140に輻射熱を伝達し易くすることができる。なお、本実施形態では、開口部110b1に熱伝導シート142を設ける構成としているが、熱伝導シート142を設けない構成としてもよい。
【0047】
このような構成の体調変化検知装置100を対象者P1の上腕等に取り付けると、
図5(B)に示すように、対象者の体表面からの輻射熱H1が熱伝導シート142を通じてサーモパイルセンサ140に伝達するようになる。サーモパイルセンサ140は、対象者の体表面から発する輻射熱H1の変動を検知することができる。一方、体調変化検知装置100の基板110cの外側の面に設けられている温湿度センサ120は、
図5(B)に示すように、対象者が着る衣類C1の内側に籠った空気の温度と湿度の変動を検知できるようになる。なお、衣類C1は、対象者の着衣だけでなく、体調変化検知装置100を身体に保持する布製の保持具としてもよい。
【0048】
すなわち、対象者の体表面からの輻射熱の変動を検知するサーモパイルセンサ140に対して、温湿度センサ120は、サーモパイルセンサ140と基板110cを介して反対側に有する直近の外環境(着衣内環境)の温度と湿度の変動を検知する。このため体調変化検知装置100は、対象者ごとに体内環境と体外環境における熱変動結果に基づいて、的確に熱中症等の体調変化が発生するリスクを検知できるようになる。
【0049】
体調変化検知装置100のセンサの配置形態:
【0050】
体調変化検知装置100は、「体表面側生体情報検知部」としてのサーモパイルセンサ140と「外部熱変動検知部」としての温湿度センサ120とを基板110cの裏面側と表面側にそれぞれ設けられているが、他の態様としてもよい。例えば、
図5(A)に示す温湿度センサ120は、サーモパイルセンサ140と並べて配置することもできる。
【0051】
例えば、温湿度センサ220が設けられる基板210c2と、サーモパイルセンサ240が設けられる基板210c1は、
図6(A)に示すように、同一の基板でなく、別の基板としてもよい。これらの基板210c1、210c2は、別の基板として、互いに段差を有するように配置されている。これにより、体調変化検知装置200の厚さ方向での薄型化を図ることができる。このように、サーモパイルセンサ240が対象者の体表面に対向するように離隔して設けられ、かつ、温湿度センサ220がサーモパイルセンサ240と反対側を向く面に設けられ、対象者の体表面から離れた外部の熱変動を検知できる配置となっていれば、前述した一実施形態に係る体調変化検知装置100と同様の作用・効果を奏する。
【0052】
また、体調変化検知装置200では、サーモパイルセンサ240が設けられる基板210c1の側壁210d1、210d2の下端側が開口部210b1となっており、開口部210b1に熱伝導シート242が貼付されている。このように、サーモパイルセンサ240が設けられる基板210c1と、温湿度センサ220が設けられる基板210c2とが、側方に段差を設けて配置する構成とすることで、体調変化検知装置200の薄型化を図れるようになる。
【0053】
また、
図6(B)に示すように、基板310cの外側と内側に設けられる検知センサを共に、サーモパイルセンサ340a、340bとしてもよい。このように、基板310cの表面側と裏面側にサーモパイルセンサ340a、340bを設ける場合には、側壁310d1、310d2の一端に設けられる開口部310b1、310b2にそれぞれ熱伝導シート342a、342bを貼付する必要がある。熱伝導シート342a、342bを開口部310b1、310b2にそれぞれ設けることによって、検知される側の面からの汗や水分の浸入を防止して、かつ、サーモパイルセンサ340a、340bへの熱伝導性を高められるようになる。このように、体調変化検知装置300を構成することによって、対象者の体表面からの輻射熱と体調変化検知装置300の外側の輻射熱に基づいて、対象者の熱中症等の体調変化をより短時間で検知できるようになる。
【0054】
さらに、
図6(C)に示すように、基板410cの外側と内側に設けられる検知センサを共に、温湿度センサ420a、420bとしてもよい。このように、基板410cの表面側と裏面側に温湿度センサ420a、420bを設ける場合には、温度・湿度を検知するために、検知対象と直接に接触可能な構成とする必要があるので、検知される側の面から離隔して設ける必要がなくなる。このため、熱変動の検知に時間を要するようになるものの、体調変化検知装置400の薄型化が図れるようになる。
【0055】
体調変化管理システム1の概要構成:
【0056】
次に、本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムの構成について、図面を使用しながら説明する。
図7は、本実施形態に係る体調変化管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【0057】
本実施形態の体調変化管理システム1は、屋外で働く労働者、屋内で働く労働者、その他屋外や屋内で活動や生活をする体調変化の検知が必要となる人全般を熱中症等の体調変化を検知する対象者とする。そして、体調変化管理システム1は、前述した体調変化検知装置100を用いて当該対象者の体調変化の発生の有無や蓋然性等を判定して、対象者の体調を管理する際に使用される。
【0058】
本実施形態の体調変化管理システム1は、
図7に示すように、サーバ装置10と、データ記憶部20と、管理者端末30と、対象者端末40と、体調変化検知装置100とを備えており、それらは、インターネット等のネットワーク2を介して接続されている。データ記憶部20は、サーバ装置10の「外部記憶装置」であって、サーバ装置10のみがアクセス可能となるように構成されている。体調変化検知装置100は、サーバ装置10、対象者端末40、管理者端末30の少なくとも何れかに対して接続可能に構成される。管理者端末30と対象者端末40は、ネットワーク2を介して外部機器と通信可能な「端末装置」である。なお、本実施形態では、ネットワーク2は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の有線又は無線のネットワークであり、また、インターネット等の公衆回線でなくても、専用回線であってもよい。
【0059】
サーバ装置10は、複数の対象者P1、P2、P3から受信した体温、心拍数等の生体情報や、体調変化検知装置100の検知データ、対象者P1、P2、P3の体調変化に関するアンケートの回答データ等をコンピュータ管理して、対象者P1、P2、P3の体調変化の発生の有無や蓋然性を含めて、対象者P1、P2、P3の体調を管理する機能を有する。すなわち、サーバ装置10は、「体調変化管理サーバ」としての機能を有するコンピュータ装置である。
【0060】
サーバ装置10は、体調変化の検知が必要となる対象者の体調管理をする管理者が使用することによって、管理されている。体調変化管理システム1による体調変化の管理の対象者は、例えば、屋外で働く労働者、屋内で働く労働者、その他屋外や屋内で活動する活動者等である。本実施形態では、サーバ装置10として、例えば、スーパーコンピュータ、汎用コンピュータ、オフィスコンピュータ、制御用コンピュータ、パーソナルコンピュータ等の各種コンピュータ装置が使用される。なお、本実施形態のサーバ装置10の詳細については、後述する。
【0061】
データ記憶部20は、対象者P1、P2、P3ごとに「客観的データ」と「主観的データ」とを記憶するデータベースとして機能する。「客観的データ」は、各対象者P1、P2、P3が使用する体調変化検知装置100の各検知用のセンサによって検知された測定データと、測定データを演算処理した処理済みデータとを含む。「主観的データ」は、各対象者P1、P2、P3が活動前(体調変化の検知開始前)に行ったアンケートの回答データ、各対象者P1、P2、P3が活動中(体調変化の検知中)に行ったアンケートの回答データ、各対象者P1、P2、P3が活動後(体調変化の検知終了後)に行ったアンケートの回答データを含む。また、「主観的データ」には、性別、年齢、BMI等の各対象者P1、P2、P3の身体情報、個人情報等を含む。このように本実施形態では、データ記憶部20は、対象者P1、P2、P3ごとに、体調変化の発生の有無や体調変化が発生するリスクを判断するための判断材料となる客観的データと主観的データとを記憶している。
【0062】
また、データ記憶部20が記憶する対象者P1、P2、P3ごとの「客観的データ」には、対象者ごとに体感する暑さの違い(主観的データ)によって、客観的データにラベル付けをした「ラベル付き客観的データ」が含まれている。人が感じる暑さは、その人の体格、体質、性別、年齢等の様々な要因によって異なる。従って、体調変化検知装置100のセンサによって測定された「客観的データ(実測データ)」だけで体調変化を判定するよりも、そのような個人的な要因を加味する方が、より対象者ごとに適した判定結果を得られるようになる。このため「客観的データ」には、「ラベル付き客観的データ」を含むことができる。ラベル付き客観的データは、本実施形態では、後述する制御部14(判定部14b)が主観的データ(アンケートの回答データ)に基づいて、客観的データ(実測データ)に対して体調変化を識別するためのラベル付け(アノテーション処理)を実行することで生成される。このラベル付き客観データは、機械学習の教師データとして用いることができる。従って、ラベル付き客観的データは、対象者ごとに体調変化検知装置100の各センサによって測定された客観的データが、体調変化の発生リスクを示すデータか否かを比較判定するためのデータとして利用することができる。
【0063】
本実施形態では、データ記憶部20は、ネットワーク2を経由してデータファイルを外部サーバ等のディスクスペースに保管するクラウド型のストレージデバイスで構成される。なお、データ記憶部20は、ネットワーク2を介さずサーバ装置10に直接接続した外部記憶装置により構成してもよい。
【0064】
管理者端末30は、体調変化検知の各対象者P1、P2、P3を管理する管理者が各対象者P1、P2、P3の体調変化の発生等の体調管理をする際に使用する端末装置であり、デスクトップ型やノート型のパーソナルコンピュータ、タッチパッド及びスマートフォン等の携帯情報端末を含めた各種演算処理が可能なコンピュータ装置である。本実施形態では、管理者端末30は、ネットワーク2を介してサーバ装置10、対象者端末40、体調変化検知装置100及びデータ記憶部20にアクセス可能になっている。
【0065】
対象者端末40は、体調変化が検知される各対象者P1、P2、P3が管理者端末30とデータの送受信をする際に利用する端末装置であり、デスクトップ型やノート型のパーソナルコンピュータ、タッチパッド及びスマートフォン等の携帯情報端末を含めた各種演算処理が可能なコンピュータ装置である。本実施形態では、対象者端末40は、各対象者P1、P2、P3の体調に関するアンケート結果や性別、年齢、BMI等の個人情報等を集計した主観的データを送信したり、管理者端末30から熱中症等の体調変化のため休暇を取るように通知するために、管理者端末30とネットワーク2を介して通信可能になっている。
【0066】
体調変化管理システム1の詳細構成:
【0067】
次に、体調変化管理システム1の要部の詳細を説明する。
図8は、体調変化管理システム1の要部の詳細な構成を示すブロック図である。なお、
図8では、体調変化管理システム1に備わるサーバ装置10、データ記憶部20、管理者端末30、及び一の対象者P1が使用、装着している対象者端末40と体調変化検知装置100のみを取り上げ、各構成要素の機能を詳細に説明している。
【0068】
体調変化管理システム1では、サーバ装置10がネットワーク2を介してデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100と接続されている。これによって、サーバ装置10が対象者P1から受信した客観的データと主観的データをデータベース化してデータ記憶部20で管理しながら、管理者端末30を使用する管理者に対しては、各対象者の体調を把握できるようにしている。
【0069】
サーバ装置10の詳細構成:
【0070】
サーバ装置10は、
図8に示すように、通信部11と、操作部12と、表示部13と、制御部14と、ROM15と、RAM16とを備える。サーバ装置10は、制御部14が「体調変化管理プログラム」を実行することで複数の機能部を有する「体調変化管理サーバ」を構成し、複数の機能部によって情報処理を行う。通信部11は、ネットワーク2を介して外部とのデータの送受信をする際のインターフェースとしての機能を有する。操作部12は、サーバ装置10を動作させる際に、データの入力装置となるキーボードやマウス、タッチパネル等の制御部14に所定の指令を入力して適宜操作する機能を有する。
【0071】
表示部13は、制御部14による演算結果やデータベースとなるデータ記憶部20の情報等を画面表示で出力する機能を有し、例えば、液晶画面等から構成される。また、表示部13は、体調変化検知装置100を装着した対象者の心拍数や運動量、輻射熱等の客観的データの推移グラフを表示できるようになっている。
【0072】
制御部14は、1又は複数のプロセッサがROM15に記憶されている各種プログラムを実行することによって、サーバ装置10に備わる各構成要素の動作を制御する機能を有する。また、制御部14は、これら各種処理を実行する際に、必要なデータ等を一時的に記憶するRAM16に適宜記憶させる機能を有する。このため、制御部14による制御動作によって、ROM15、RAM16、データ記憶部20へのアクセス、表示部13に対するデータの画面表示動作、操作部12に対する操作動作、外部と通信する際に通信部11をインターフェースとしてネットワーク2を介した各種情報の送受信動作等を行えるようになる。
【0073】
制御部14は、
図8に示すように、受信部14aと、判定部14bと、送信部14cと、生成部14dとを備える。受信部14aは、通信部11を介したデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100からの各種データの受信を制御する機能を有する。本実施形態では、受信部14aは、体調変化検知装置100から所定時間毎にサーバ装置10に送信される対象者P1の検知された心拍数や体温等の客観的データ(実測データや処理済みデータ)を受信するように制御されている。
【0074】
判定部14bは、サーバ装置10の各種動作を実行する際に必要となる判定動作をする機能を有する。例えば判定部14bは、サーバ装置10の通信部11を介して管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100との各種データの送受信の有無を判定する。
【0075】
判定部14bは、少なくとも体調変化検知装置100で検知された対象者P1の体表面からの輻射熱を含む生体情報の変動と、体調変化検知装置100のケーシング110内に設けられている基板110cの外部の熱変動に基づいて、対象者P1の体調変化の有無(体調変化が発生するリスクの有無)を判定する機能を有する。また、判定部14bは、管理者端末30から対象者端末40と体調変化検知装置100に送信した対象者P1の体調に関するアンケートの回答結果も踏まえて、熱中症になる蓋然性が高い前段階の体調変化を判定できる機能も有する。
【0076】
さらに、本実施形態では、判定部14bは、対象者P1からのアンケートの回答データに基づいて、客観的データに対して体調変化を識別するためのラベル付け(アノテーション処理)を実行することで、ラベル付き客観的データ(教師データ)を生成する機能を有する。その一例として、例えば対象者P1からの業務前アンケート(
図9(A))の回答と業務後アンケート(
図9(B))の「熱中症」の回答が「1」「2」の場合は、熱中症を発生するリスクが低いと判定する。したがって、判定部14bは、そのアンケートで回答した活動日の客観的データに対して「非熱中症予備群」のラベル付けをする。これに対して、業務前アンケート(
図9(A))の回答と業務後アンケート(
図9(B))の「熱中症」の回答が「3」「4」「5」の場合は、熱中症が発生するリスクがあると判定する。したがって判定部14bは、アンケートで回答した活動日の客観的データに対して「熱中症予備群」のラベル付けをする。このように判定部14bは、分類器として機能し、ラベル付き客観的データを「教師データ」として蓄積し、これを繰り返し機械学習することによって、対象者ごとに体調不良が発生するリスク(対象者ごとに感じる暑さの違いによる熱中症の発生するリスク)を判定する精度を高めることができる。そして、判定部14bは、受信した客観的データを、機械学習したラベル付き客観的データと比較して、対象者の体調変化の有無(熱中症の発生リスク)を判定する。これによって、体調変化検知装置100の各検知用のセンサによって測定された「客観的データ」だけで体調変化の発生リスクの有無を判定するよりも、対象者P1ごとに適した判定結果を得ることが可能になる。
【0077】
なお、判定部14bが行う体調変化の発生リスクの判定は、教師あり機械学習によって生成されたラベル付き客観的データに限定されない。つまり、客観的データとして測定された生体情報(バイタルサイン)が、対象者の体調変化の発生リスクを表すデータに該当するか否かを判定するには、対象者の身体的特性等に応じて固有に設定された判定基準(特徴量とその閾値)によって判定できればよい。したがって判定基準は、教師なし機械学習によって特定の生体情報(及びその所定値)を特徴量として得たデータを用いてもよい。また判定基準は、生体情報を深層学習することによって生成したデータでもよい。また、判定部14bによる対象者P1の体調変化の有無の判定は、機械学習を利用しなくてもよい。判定部14bは、体調変化検知装置100で検知した客観的データ(測定データ)について、対象者の主観又は主観的データ(アンケートの回答データ)に応じて体調変化が発生するリスクがあると想定される閾値を設定し、それをリスクの有無を判定する比較用客観的データとして用いることによって、体調変化の有無を判定することもできる。
【0078】
前述の業務後アンケート(
図9(B))の「肉体疲労」に関するアンケートの回答データは、例えば次のように利用できる。肉体疲労があって体が疲れやすい状態にあるほど体力が弱っており、体調変化の発生リスクに対する注意が必要となる。そのため回答データがアンケート項目の「3」「4」「5」のように、注意すべき疲労があるとみなすことができる場合には、その翌日に体調変化検知装置100や対象者端末40に対して、体調変化の発生について注意喚起するメールや通知を送信することができる。また、回答データが「3」「4」「5」のように疲労が大きいとみなすことができる場合は、より体調変化の発生リスクが高まると捉えて、客観的データに対する体調変化の発生リスクの判定基準を厳しく設定するように、ラベル付き客観データを調整するために用いることができる。
【0079】
送信部14cは、通信部11を介したデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100への各種データの送信を制御する機能を有する。送信部14cは、判定部14bでの判定結果を、対象者端末40及び管理者端末30の少なくとも何れかに送信する機能を有する。
【0080】
また、送信部14cは、判定部14bが、体調変化の発生リスク(熱中症の発生リスク)があると判定した場合には、外部機器に警報となるアラートを送信する機能を有する。この場合、送信部14cは、対象者端末40、管理者端末30、体調変化検知装置100の少なくとも何れかに対してアラートを送信することができる。
【0081】
送信部14cが、体調変化検知装置100にアラートを送信すると、体調変化検知装置100の警報部118が作動する。警報部118が作動すると、例えば、熱中症の発生リスクを示すアラート表示を表示部115に表示したり、アラートを音声でアナウンスしたり、アラームを鳴らしたり、バイブレーションを発動することによって、熱中症を発症するリスクが高い旨を知らせるアラートを報知するようになっている。また、送信部14cは、体調変化検知装置100に対して送信したアンケートの回答データが返信されていない場合に、対象者P1にアンケートの回答を催促するアラートを送信する機能も有する。さらに、送信部14cは、体調変化等を誘発する環境情報等の変化についてもアラートに含めて送信してもよい。例えば、送信部14cは、光化学スモッグ注意報、花粉やPM2.5の飛散情報等の体調変化、体調不良を誘発し易い環境情報の変化についてもアラートとして送信して、対象者に体調変化や体調不良のリスクがある旨の注意喚起を促すようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、送信部14cは、判定部14bによって対象者P1の体調変化が発生し得ると判定されると、管理者端末30に対象者P1の熱中症等の体調変化が発生するリスクを警告するアラートメールを送信する機能を有する。すなわち、判定部14bによって対象者P1の体調変化として、対象者P1の熱中症を発生するリスクがあると判定されると、送信部14cは、管理者端末30に当該対象者P1がそれを報知するアラートメールを送信する。
【0083】
生成部14dは、各種データを演算処理して、データを生成する機能を有する。例えば生成部14dは表示用データを生成できる。表示用データとしては、例えば、体調変化検知装置100で検知された対象者の心拍数や運動量、輻射熱等の客観的データ(実測データ)と、客観データの推移グラフと、客観的データを含む表とを列挙することができる。そして、生成部14dが生成した表示用のデータは、通信部11を通じて外部機器(例えば、管理者端末30、対象者端末40等)に送信することができる。外部機器では、ディスプレイ等の表示部でその表示用データを、例えば表示画面として表示することができる。
【0084】
データ記憶部20は、各種データを記憶可能な外部記憶装置である。本実施形態では、データ記憶部20は、対象者ごとに、体調変化検知装置100の各検知センサが検知して得られた客観的データと、体調に関するアンケートの回答データや性別、年齢、BMI等の身体情報、個人情報を事前に集計した主観的データとを記憶するデータベースとして機能する。また、データ記憶部20は、これらの客観的データと主観的データがアップデートする度に更新されるようになっている。
【0085】
管理者端末30の詳細構成:
【0086】
管理者端末30は、管理者が使用する端末装置であり、各種情報の送受信や演算処理等の必要動作が行えるように、
図8に示すように、通信部31と、操作部32と、表示部33と、制御部34と、記憶部35と、を備える。管理者端末30は、サーバ装置10にアクセスすることによって、体調変化検知装置100を装着した対象者の心拍数や運動量、輻射熱等の客観的データや客観的データの推移グラフ、客観的データの表等の客観的データに関する表示用のデータを表示部33に表示できるようになっている。
【0087】
管理者端末30は、通信部31を介して、対象者P1に対して業務前に対象者P1の体調変化に関する業務前アンケート(アンケートデータ)を、対象者P1の対象者端末40と体調変化検知装置100の双方に送信する。業務前アンケートは、
図9(A)に示すように、例えば、対象者P1の体調変化に関するアンケートとして、いつもとの体調の変化、すなわち、通常時との体調の変化について、「5.かなり違う。」、「4.違う。」、「3.少し違う。」、「2.ほぼ変化なし。」、「1.変化なし。」の5段階評価で簡素に回答できるように構成されている。このアンケートに対する回答データは、サーバ装置10に送信されてからデータ記憶部20に蓄積される。そしてサーバ装置10の判定部14bは、前述のようにラベル付き客観的データを生成するために、回答データを主観的データとして利用する。
【0088】
管理者端末30は、通信部31を介して、対象者P1に対して業務後に対象者P1の体調変化に関する業務後アンケート(アンケートデータ)を対象者P1の対象者端末40と体調変化検知装置100の双方に送信する。業務後アンケートは、
図9(B)に示すように、例えば、対象者P1の体調変化に関するアンケートとして、肉体疲労に関する体調変化と、熱中症に関する体調変化について、それぞれ5段階評価で簡素に回答できるように構成されている。その際に、肉体疲労及び熱中症の体調変化に関して、それぞれ業務中に一度でも該当した項目を選択するように注釈を記載している。このアンケートに対する回答データは、サーバ装置10に送信されてからデータ記憶部20に蓄積される。そしてサーバ装置10の判定部14bは、前述のようにラベル付き客観的データを生成するために、回答データを主観的データとして利用する。
【0089】
管理者端末30は、サーバ装置10から対象者P1の熱中症等の体調変化の発生を警告するアラートメールを受信すると、WEB上で対象者P1の客観的データの推移を確認できるようになっている。そして、対象者P1の客観的データの推移をモニタリングした結果、対象者P1の熱中症等の体調変化の発生の蓋然性が高いと判定されると、管理者端末30は、通信部31を介して、対象者P1の体調変化検知装置100にアラート信号を送信したり、対象者端末40にアラートメールを送信する。このように、本実施形態では、アラートを対象者P1に向けて送信することによって、対象者P1に休憩を促したりして、熱中症の発生を抑制するようになっている。
【0090】
対象者端末40の詳細構成:
【0091】
対象者端末40は、対象者P1が利用する端末装置であり、各種情報の送受信や演算処理等の必要動作が行えるように、
図8に示すように、通信部41と、操作部42と、表示部43と、制御部44と、記憶部45と、を備える。本実施形態では、対象者端末40は、例えば、サーバ装置10が提供する専用WEBサイトにアクセスすることによって、体調変化検知装置100を装着した対象者の心拍数や運動量、輻射熱等の客観的データや客観的データの推移グラフ、客観的データの表等を含む客観的データに関する表示用のデータを表示部43に表示できるようになっている。
【0092】
このように体調変化管理システム1は、サーバ装置10がネットワーク2を介してデータ記憶部20と、管理者端末30と、対象者端末40と、及び体調変化検知装置100と接続されている。そして、サーバ装置10は、複数の対象者から受信した客観的データと主観的データに基づいて、各対象者の体調変化の発生の有無を判定して、各対象者に対して体調変化の発生リスクがある旨の警告の通知等をコンピュータ管理する体調管理アプリケーションサービスの実行を制御している。このため、サーバ装置10では、体調管理の対象となる全ての対象者P1、P2、P3の体調を総括的に管理できるようになる。
【0093】
特に、本実施形態では、前述したように、体調変化検知装置100にも管理者端末30から送信された体調変化に関するアンケートの回答データを入力する入力ボタン114aやタッチパネル114b等からなる操作部114を備える構成としている。このため、対象者P1は、現場に向かう際にも装着している体調変化検知装置100からも体調変化に関するアンケートの回答データを簡単に入力して、サーバ装置10を介して管理者端末30に送信できるようになる。これによって、本実施形態の体調変化管理システム1では、対象者P1の体調を管理する管理者が対象者P1からのアンケートの回答データも踏まえて、主観的データと客観的データに基づいて、対象者P1の熱中症を発生する前段階での熱中症発生のリスクを検知する。そして、体調変化管理システム1では、管理者が対象者P1にアラートを発して、熱中症の発生のリスクを前段階で抑制できるようになる。
【0094】
なお、本実施形態の体調変化管理システム1のサーバ装置10は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUとなる制御部14が体調変化管理システム1を作動させるプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。本実施形態のプログラムは、サーバ装置10に内蔵のROM15に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。
【0095】
また、本実施形態では、外部の記憶装置となるストレージデバイスに格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。その際に、体調変化検知装置100で得られた各検知センサによる客観的データと、対象者端末40や体調変化検知装置100から事前に又は事後に得られた個々の主観的データをクラウド上のサーバ装置10に蓄積し、時系列分析、クラスタ分析、人工知能等によりデータ解析が行われるようにしてもよい。
【0096】
実施形態の作用及び効果
【0097】
次に、本実施形態に係る体調変化検知装置100及び体調変化管理システム1の作用及び効果について説明する。
【0098】
体調変化検知装置100は、対象者P1の体表面からの輻射熱の変動を検知する輻射熱検知部であるサーモパイルセンサ140が対象者の体表面に対向して設けられている。一方、サーモパイルセンサ140と検知方向が反対側を向く面には、対象者P1の体表面から離れた外部の熱変動を検知する外部熱変動検知部である温湿度センサ120が設けられている。すなわち、本実施形態の体調変化検知装置100は、ケーシング110内に設けられる基板110cの対象者P1の体表面に対向する面に、対象者P1の体表面からの輻射熱を検知するサーモパイルセンサ140を設けられている。そして、体調変化検知装置100は、基板110cの反対側の面には、対象者P1の体表面から離れた外部の熱変動として、基板110cの外側の温度と湿度を検知する温湿度センサ120を設けている。このため、対象者P1の体表面からの輻射熱の変動データと体調変化検知装置100の外側の空気の温度、湿度の変動データの差分を解析することにより、対象者P1の熱中症等の体調変化を検知できるようになる。
【0099】
例えば、体調変化検知装置100を装着して体調変化の検知をする対象者を工事現場や建設現場等の作業者とした場合には、サーモパイルセンサ140は、対象者P1の体表面からの輻射熱の変動データを検知する。一方、温湿度センサ120は、体調変化検知装置100の外側の環境、すなわち、対象者の体表面の直近の外環境となる作業着内の空気の温度、湿度の変動データを検知する。このため、サーモパイルセンサ140が検知した輻射熱の変動データと、温湿度センサ120が検知した直近の外環境の温度と湿度の変動データの差分を解析することによって、対象者P1の熱中症等の体調変化を検知できる。また、体調変化の検知をする対象者を病室内で入院されている寝たきりや要介護者等の高齢者とした場合には、サーモパイルセンサ140が検知した輻射熱の変動データと、温湿度センサ120が検知した直近の外環境の温度と湿度の変動データの差分を解析することによって、対象者P1の低体温症等の体調変化を検知できる。
【0100】
特に、熱中症や低体温症、肉体的疲労、過労等の体調変化の発生要因は、対象者P1のBMI等を踏まえた体格、発汗のし易さ等の体質、疲労の蓄積具合等に基づく体調、及び作業している現場の気温や湿度、日当たり等の置かれた環境・状況により変動し得る。これに対して、本実施形態の体調変化検知装置100は、ベルト112を介してケーシング110を対象者P1の上腕等にウェアラブルに取り付けられる。体調変化検知装置100は、対象者P1に装着されると、対象者P1ごとに体表面からの輻射熱の変動と作業着等の衣類C1の内側の温度、湿度の変動を検知データとして取得できる。それらの検知データを解析し、その解析データに基づいて対象者P1の体調変化の発生リスク(熱中症の発生リスク)を判定することができる。これは対象者P1の体表面から発する輻射熱と衣服内の温度と湿度によって測定可能な個人ごとの暑さ指標であることから、対象者P1ごとに対応するWBGTと言うことができる。本発明者らはこの新しい個人ごとの暑さ指標の概念を「pWBGT(personal Wet Bulb Globe Temperature:パーソナル湿球黒球温度)」として提唱するものである。WBGTは室内等の環境ごとの暑さ指数であるのに対して、pWBGTは個人ごとの暑さ指数とすることができる。このpWBGTは、対象者P1の体調変化や体調不良を発症するリスクをより正確に判断できるので、管理者は、対象者P1ごとの体調管理を的確に行えるようになる。
【0101】
体調変化検知装置100は、対象者P1の生体情報等の検知用センサとして、温湿度センサ120とサーモパイルセンサ140の他に加速度センサ130と脈波センサ150が設けられている。このため、温湿度センサ120とサーモパイルセンサ140の検知結果に加えて、加速度センサ130が検知した対象者の運動量の変化や、脈波センサ150が検知した心拍数の変化も踏まえて、より的確に対象者P1の熱中症等の体調変化の発生するリスクを予測できるようになる。
【0102】
サーモパイルセンサ140は、輻射熱を測定するために体表面から離隔して設けられているが、サーモパイルセンサ140に汗や水分等が付着して故障することを防止する必要がある。このため本実施形態では、ケーシング110の裏面110bの開口部110b1に熱伝導シート142が貼付されている。これによりサーモパイルセンサ140に汗や水等の水分が付着して故障することを未然に防止できる。また、黒体テープを貼付けた熱伝導シート142によって、体表面からの輻射熱を吸収し易くした上でサーモパイルセンサ140に輻射熱を効率的に伝達することができる。
【0103】
ケーシング110の対象者の体表面側には、カラーLEDで発した光をカラーセンサで受光することにより対象者の心拍数を計測する脈波センサ150が設けられている。カラーLEDから発する光は、光の波長、すなわち、光の色が異なることによって、挙動が異なる。例えば、
図10に示すように、赤外光で計測した赤色の脈波波形では、5段階に光の強さが変わると、圧力変化による変動、すなわち、体動ノイズが大きいものとなる。これに対して、波長の小さい青色の光で計測した青色の脈波波形では、5段階に光の強さが変わっても、圧力変化による変動、すなわち、体動ノイズが小さいものとなる。
【0104】
光電容積脈波計からなる脈波センサ150を肌に装着する際には、締め付ける圧力によって皮膚と動脈との距離が異なるため、光の減衰も異なるようになる。また、対象者の体格や皮膚の色等の個人差によっても光の減衰が異なるようになる。脈波センサ150と動脈の距離は、きつく締めれば近くなり、緩く締めれば遠くなる。一方、皮膚が白色の場合には、光の減衰が小さいが、褐色の場合には、光の減衰が大きくなる。
【0105】
また、脈波センサ150を構成する光電容積脈波計を指尖部に装着して、
図11に示すように、静止、指振り運動、静止を行うと、赤色の脈波波形では、静止時の脈波波形のみが明確に表示されるが、指振り運動が始まると、脈波波形の振幅かそれ以上の大きさの体動ノイズが混入していることがわかる。一方、青色の脈波波形では、脈波波形の振幅が最も小さいが、体動ノイズも小さく抑えられている。
【0106】
そこで、本実施形態では、脈波センサ150を装着するときに、その締めつけられた状態で最も動脈に到達する最適な波長(色)をカラーLEDにより変化させていき、その波長をカラーセンサで受けるようにしている。このため、脈波センサ150は、安静時には、赤や緑を使用しているが、運動時には、波長の短い青色等に切り替えることによって、体動ノイズをキャンセルするので、体動ノイズに強い脈波測定器にすることができる。その際に、運動時には、加速度センサ130等を利用して体動に合わせて色を適応的に変化させることが好ましい。
【0107】
体調変化管理システム1によれば、管理者は、複数の対象者から受信した体調変化検知装置100が検知した客観的データと、対象者端末40又は体調変化検知装置100から入手した対象者ごとの主観的データに基づいて、各対象者の体調変化の発生リスクの有無を判定できる。このため管理者は、自分が管理する各対象者P1、P2、P3の体調を総括的に管理することができる。また管理者は、体調変化の発生リスクがある対象者に対しては事前に警告をすることにより、熱中症や低体温症、肉体的疲労、過労等を抑制できるようになる。特に管理者は、熱中症予備群に該当する対象者に対しては、熱中症の警告やアンケートの回答依頼の催促等のアラートを送信することによって、熱中症発生を未然に抑制することができる。
【0108】
体調変化検知装置100は、管理者端末30から送信された体調変化に関するアンケートの回答データを入力する操作部114を備える。このため、各対象者P1、P2、P3は、業務の前後のタイミングを問わない任意の時に、体調変化検知装置100から回答データを入力して、管理者端末30に送信できるようになる。
【0109】
本実施形態では、体調変化検知装置100は、管理者端末30やサーバ装置10等の外部機器に向けて所定時間毎に、体調変化検知装置100の各検知センサによる検知データ又は当該検知データを演算処理した処理済みデータの少なくとも何れかを送信するように、送信部166が制御されている。このため管理者は、これらの検知データや検知データを演算処理した処理済みデータをモニタリングしながら、対象者の体調変化を監視できるので、事前に対象者の熱中症等の体調不良の発生を抑制できるようになる。
【0110】
本実施形態では、体調変化検知装置100は、対象者に情報を報知する警報部118を更に備える。このため対象者は、対象者の体調変化や、体調変化に関する予測や、現在対象者が所在している野外環境に関する環境情報を含む情報をアラートとして受信することができる。したがって対象者は、自己の体調変化や環境情報の変化によって、体調不良が発生するリスクを認識できる。このため対象者は、例えば外出を控えたり、水分を摂って休憩することによって、体調不良の発生を自ら未然に防止することができる。
【0111】
サーバ装置10の生成部14dは、表示用データを生成できる。表示用データとしては、客観的データ(実測データ)と、客観データの推移グラフと、客観的データを含む表とを列挙することができる。したがって対象者端末40及び管理者端末30は、表示部43、33に客観的データを各種の表示形態で表示できる。
【0112】
体調変化管理システム1は、体調変化検知装置100を装着した対象者の体調に異変が起こる前段階において、管理者と対象者本人との両者に熱中症等の体調不良の発生リスクを事前に通知できるので、体調不良の発生を未然防止ことができる。対象者の心拍数や運動量、体表温、pWBGT(パーソナル湿球黒球温度)等の体調変化検知装置100の各検知センサで検知された客観的データをモニタリングして、AI機能を用いた個人データ解析により、対象者の体調不良を事前に予測できる。このためより正確な体調変化の判定結果が対象者ごとに得られるので、管理者は、より的確に対象者の体調を管理できるようになる。
【0113】
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0114】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、体調変化検知装置、及び体調変化管理システムの構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 体調変化管理システム
2 ネットワーク
10 サーバ装置
11、31、41 通信部
12、32、42 操作部
13、33、43 表示部
14、34、44 制御部
14a 受信部
14b 判定部
14c 送信部
14d 生成部
15 ROM
16 RAM
20 データ記憶部
30 管理者端末
35、45 記憶部
40 対象者端末
100、200、300、400 体調変化検知装置
110 ケーシング
110a 表面
110b 裏面
110b1、210b1、310b1、310b2 開口部
110c、210c1、210c2、310c、410c 基板
110d、210d1、210d2、210d3、310d1、310d2 側壁
111 スリット
112 ベルト
113 通信部
114 操作部
114a 操作ボタン
114b タッチパネル
115 表示部
116 ROM
117 RAM
118 警報部
120 温湿度センサ(外部熱変動検知部)
130 加速度センサ
140 サーモパイルセンサ(体表面側生体情報検知部、輻射熱検知部)
142 熱伝導シート
150 脈波センサ(体表面側生体情報検知部)
160 制御部
162 受信部
164 判定部
166 送信部