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特許7586422建物情報処理装置及び建物情報処理モデル学習装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】建物情報処理装置及び建物情報処理モデル学習装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241112BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20241112BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020178472
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069337
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】521456117
【氏名又は名称】株式会社DATAFLUCT
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 貴司
(72)【発明者】
【氏名】岸本 知子
(72)【発明者】
【氏名】平松 孝一
(72)【発明者】
【氏名】久米村 隼人
(72)【発明者】
【氏名】服部 毅
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-097813(JP,A)
【文献】特開平10-46832(JP,A)
【文献】特開2018-116602(JP,A)
【文献】特開2016-194802(JP,A)
【文献】特許第6732325(JP,B1)
【文献】特開2019-191654(JP,A)
【文献】特開2006-072547(JP,A)
【文献】特開2020-086709(JP,A)
【文献】特開2020-113056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設工事の見積書内の見積項目を表す取引情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記取引情報を、前記取引情報から前記取引情報に対応する科目を表す科目情報を出力するための予め学習された仕訳用学習済みモデルへ入力することにより、前記取得部により取得された前記取引情報に対応する前記科目情報を出力する仕訳処理部と、
を含み、
前記仕訳用学習済みモデルは、前記取引情報の種類を表すタグ情報を更に出力し、
建設工事対象の建物のBIMモデルから前記建物の各箇所の情報を表すBIM情報を取得し、
前記タグ情報と前記BIM情報とを、前記タグ情報及び前記BIM情報から前記取引情報に対する信頼度を出力するための異常検知用学習済みモデルへ入力することにより、前記取得部により取得された前記取引情報に対する信頼度を出力し、
前記信頼度が閾値以下である場合にアラートを出力する異常検知部を更に含む、
建物情報処理装置。
【請求項2】
建設工事の見積書内の見積項目を表す取引情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記取引情報を、前記取引情報から前記取引情報に対応する科目を表す科目情報を出力するための予め学習された仕訳用学習済みモデルへ入力することにより、前記取得部により取得された前記取引情報に対応する前記科目情報を出力する仕訳処理部と、
前記仕訳処理部により得られた仕訳結果である前記科目情報と、前記仕訳結果に対応する前記取引情報の価格情報と、日付情報とを対応付けて、ライフサイクルコスト記憶部へ格納するライフサイクルコスト処理部と、を含み、
前記ライフサイクルコスト処理部は、前記ライフサイクルコスト記憶部に格納されている各種情報を加工することにより、建設工事対象の建物のライフサイクルコストを可視化し、前記可視化されたライフサイクルコストを出力する、
建物情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物情報処理装置及び建物情報処理モデル学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品名をカテゴリへ分類する技術が知られている(例えば、特許文献1)。この技術は、例えば「ブラックGABRIEショールカラージャケット」という商品名を「ジャケット」というカテゴリへ分類する(例えば、特許文献1の[図5])。
【0003】
また、取引情報を勘定科目へ仕訳する自動仕訳システムが知られている(例えば、特許文献2)。この自動仕訳システムは、勘定科目に関する分類適合率に応じて、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を選択する(例えば、特許文献2の[請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-92878号公報
【文献】特許6161229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、既存の建物に対してメンテナンス工事が行われる際、その工事全体のとりまとめを行う建設業者は、各種工事に対する見積書を複数の供給業者(または「協力会社」ともいう。)から受け取る場合が多い。
【0006】
しかし、複数の供給業者から提出される見積書の書式は夫々異なり、その見積書に記載されている見積項目を表す取引情報も夫々異なる形式であることが多い。このため、例えば、建設業者の担当者は、複数の供給業者から受け取った異なる書式の見積書に記載されている取引情報を確認し、その取引情報を適宜統一する必要がある。この場合、建設業者の担当者は、見積書に記載されている取引情報を統一した上で所定の書式データへ手入力をする必要があり、手間がかかるという課題がある。
【0007】
一方、既存の建物に対するメンテナンス工事等の取引情報は、ファシリティマネジメントの観点からは重要な情報であり適切に管理されることが好ましい。例えば、あるメンテナンス工事はどのような内訳であり、どの程度の費用がかかり、いつそのメンテナンス工事が発生したのか、といった取引情報を管理することにより、ファシリティマネジメントを適切に行うことが可能となる。例えば、取引情報が「空調設備改修工事」である場合、ファシリティマネジメントの観点からは、「空調設備改修工事」は「修繕費」という科目に分類される。
【0008】
しかし、上述したように、複数の供給業者から提出される見積書の書式は様々であり、また、その見積書に記載されている取引情報も様々である。
【0009】
上記特許文献1~2に開示されている技術は、商品名又は取引情報を分類する技術であるものの、建設工事に関連するものではない。このため、上記特許文献1~2の技術は、建設工事の見積書に記載されている取引情報を対応する科目情報へ仕訳することはできない、という課題がある。
【0010】
本発明は上記事実を考慮して、建設工事の見積書に記載されている取引情報を対応する科目情報へ仕訳することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る第1の態様は、建設工事の見積書内の見積項目を表す取引情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記取引情報を、前記取引情報から前記取引情報に対応する科目を表す科目情報を出力するための予め学習された仕訳用学習済みモデルへ入力することにより、前記取得部により取得された前記取引情報に対応する前記科目情報を出力する仕訳処理部と、を含む建物情報処理装置である。
【0012】
また、本発明に係る第2の態様である建物情報処理装置は、前記仕訳用学習済みモデルは、前記取引情報の種類を表すタグ情報を更に出力し、建設工事対象の建物のBIMモデルから前記建物の各箇所の情報を表すBIM情報を取得し、前記タグ情報と前記BIM情報とを、前記タグ情報及び前記BIM情報から前記取引情報に対する信頼度を出力するための異常検知用学習済みモデルへ入力することにより、前記取得部により取得された前記取引情報に対する信頼度を出力し、前記信頼度が閾値以下である場合にアラートを出力する異常検知部を更に含む、建物情報処理装置である。
【0013】
また、本発明に係る第3の態様は、学習用の見積項目を表す学習用取引情報と該学習用取引情報に対応する科目を表す学習用科目情報とが対応付けられた学習用データに基づいて、見積項目を表す取引情報から前記取引情報に対応する科目を表す科目情報を出力するための仕訳用モデルを学習させることにより、前記取引情報から前記取引情報に対応する前記科目情報を出力する仕訳用学習済みモデルを生成する学習部を含む建物情報処理モデル学習装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建設工事の見積書に記載されている取引情報を対応する科目情報へ仕訳することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る建設仕訳システムを示すブロック図である。
図2】科目の一例を説明するための図である。
図3】第1実施形態の学習用データを説明するための図である。
図4】第1実施形態のモデルを説明するための図である。
図5】ライフサイクルコストを説明するための図である。
図6】第1実施形態に係る建設仕訳システムの学習処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る建設仕訳システムの建設仕訳処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る建設仕訳システムを示すブロック図である。
図9】第2実施形態の学習用データを説明するための図である。
図10】第2実施形態のモデルを説明するための図である。
図11】第2実施形態のモデルを説明するための図である。
図12】第2実施形態に係る建設仕訳システムの建設仕訳処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図13】ライフサイクルコストの帳票へ組み込まれたタグ情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
[第1実施形態]
【0018】
<本実施形態の建設仕訳システムの構成>
【0019】
図1は、第1実施形態に係る建設仕訳システム10の構成の一例を示すブロック図である。建設仕訳システム10は、機能的には、図1に示されるように、入力部12と、スキャナ13と、建物情報処理装置14と、表示部16とを含んだ構成で表すことができる。
【0020】
入力部12は、ユーザから入力されたデータ等を受け付ける。入力部12は、例えば、マウス、及びキーボード等によって実現される。
【0021】
スキャナ13は、受け付けた紙をスキャンすることにより、受け付けた紙に写る情報を画像化する。具体的には、スキャナ13は、供給業者から受け付けた紙の見積書をスキャンすることにより、見積書に写る情報を画像化する。
【0022】
建物情報処理装置14は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、及びネットワークインタフェース等を含んだコンピュータにより実現される。
【0023】
建物情報処理装置14は、機能的には、図1に示すように、学習用データ記憶部20と、学習部22と、学習済みモデル記憶部24と、文字認識部26と、取得部28と、仕訳処理部30と、ライフサイクルコスト処理部32と、ライフサイクルコスト記憶部34とを備えている。
【0024】
既存の建物に対してメンテナンス工事が行われる際、その工事全体のとりまとめを行う建設業者は、各種工事に対する見積書を複数の供給業者から受け取る場合が多い。この場合、例えば、ある供給業者の見積書Aでは空調設備のメンテナンス工事が「空調設備改修工事」と表現されている一方で、別の供給業者の見積書Bでは同様の空調設備のメンテナンス工事が「空調機器取替工事」と表現される場合がある。しかし、これらの事柄はファシリティマネジメントの観点から見れば「修繕費」の科目に相当する。
【0025】
図2に、科目の一例を示す。図2に示されるように、科目は大分類から小分類まで存在する。あり、例えば、ある見積書の見積項目は「修繕費(又は修繕更新費)」に相当し、ある見積書の見積項目は「設備(又は保全コスト)」に相当する、といった場合がある。
【0026】
そこで、本実施形態の建物情報処理装置14は、建設工事の見積書内の見積項目を表す取引情報(例えば、「空調設備改修工事」)を、科目を表す科目情報(例えば、「修繕費」)へ自動的に仕訳する。これにより、建設工事の見積書に記載されている取引情報を対応する科目情報へ仕訳することが可能となる。
【0027】
以下、具体的に説明する。
【0028】
学習用データ記憶部20には、複数の学習用データが格納される。本実施形態の学習用データは、学習用の見積項目を表す学習用取引情報と該学習用取引情報に対応する科目を表す学習用科目情報とが対応付けられたデータである。学習用データは、例えば、過去の実績に基づくデータである。
【0029】
図3に、本実施形態の学習用データを説明するための図を示す。図3に示されるように、学習用データは、データ毎に、学習用取引情報と学習用科目情報とが対応付けられて格納される。
【0030】
図3に示されるID「00001」の学習用データは、ある学習用取引情報が「A1」であった場合に、その学習用取引情報に対応する学習用科目情報が「Z1」であることが示されている。なお、取引情報及び科目情報は、数値データに置き換えられている。例えば、数値データに置き換える手法の一例として、「空調設備改修工事」という取引情報は、既知の形態素解析によって「空調」「設備」「改修」「工事」と分割される。そして、形態素解析によって得られた各単語の出現頻度がベクトルとして表され、数値データとして扱われる。この単語の出現頻度ベクトルは、例えば、「空調」が1回出現、「設備」が1回出現、「改修」が1回出現、及び「工事」が1回出現、といった形式のベクトルであり、後述する仕訳用学習済みモデルに入力可能な形式とされる。また、科目情報も同様であり、例えば、[1,0,・・・,0]というベクトルは「修繕費」という科目を表すように予め設定される。
【0031】
学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データに基づいて、取引情報から科目情報を出力するための仕訳用モデルを学習させる。そして、学習部22は、取引情報から科目情報を出力するための仕訳用学習済みモデルを生成する。
【0032】
図4に、第1実施形態の学習済みモデルを説明するための図を示す。図4に示されるように、仕訳対象の取引情報が仕訳用学習済みモデルM1へ入力されると当該取引情報に相当する科目情報が出力される。仕訳用学習済みモデルM1からは、例えば、「修繕費」に相当する確率が0.8、事務人件費の科目を表す「事務」に相当する確率が0.1といった科目情報が出力される。仕訳用学習済みモデルM1は、例えば、既知のニューラルネットワーク等によって実現される。
【0033】
学習済みモデルが既知のニューラルネットワークによって実現される場合、学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データに基づいて、既知の教師あり機械学習によってニューラルネットワークを学習させ、学習済みのニューラルネットワークを生成する。なお、教師あり機械学習の手法はどのようなものであっても良い。
【0034】
そして、学習部22は、生成した仕訳用学習済みモデルを学習済みモデル記憶部24へ格納する。
【0035】
学習済みモデル記憶部24には、学習部22によって生成された仕訳用学習済みモデルが格納される。
【0036】
文字認識部26は、スキャナ13によって得られた見積書の画像を受け付ける。そして、文字認識部26は、見積書の画像に写る文字情報を認識する。例えば、文字認識部26は、既存のOCR技術により実現される。または、文字認識部26は、既存の文字認識用の学習済みモデルを用いて、見積書の画像に写る文字情報を認識する。これにより、見積書の画像に写る文字情報として、例えば「空調設備工事」といった文字列が認識される。そして、文字認識部26は、認識した文字情報を、建設工事の見積書内の見積項目を表す取引情報として取得部28へ出力する。
【0037】
取得部28は、文字認識部26から出力された取引情報を取得する。そして、取得部28は、取引情報に対して既存の形態素解析を実施し、取引情報が表す見積項目の形態素解析結果を得る。例えば、取引情報が「空調設備工事」という見積項目を表している場合、形態素解析により「空調」「設備」「改修」「工事」と分割される。
【0038】
仕訳処理部30は、仕訳対象の取引情報を、学習済みモデル記憶部24へ格納された仕訳用学習済みモデルへ入力することにより、取引情報に対応する科目情報を出力する。
【0039】
具体的には、仕訳処理部30は、取引情報を学習済みモデルへ入力可能なデータへ変換する。まず、仕訳処理部30は、取得部28によって得られた取引情報の形態素解析結果に基づいて、取引情報が表すベクトルを生成する。例えば、仕訳処理部30は、取得部28による形態素解析結果によって得られた各単語の出現頻度をベクトルとして表現することにより、取引情報を数値データへ変換する。単語の出現頻度のベクトルでは、例えば、「空調」が1回出現、「設備」が1回出現、「改修」が1回出現、及び「工事」が1回出現、といったことが表現される。これにより、取引情報は学習済みモデルに入力可能なデータとなる。
【0040】
そして、仕訳処理部30は、数値データへと変換された取引情報を、学習済みモデル記憶部24へ格納された仕訳用学習済みモデルへ入力することにより、取引情報に対応する科目情報を出力する。
【0041】
仕訳用学習済みモデルからは、例えば、上記図4に示されるような各確率が出力される。例えば、仕訳処理部30は、確率が最も高い科目情報を、入力された取引情報に相当する科目情報として特定する。例えば、取引情報「空調設備工事」が入力された場合、学習済みモデルから出力された確率のうち最も高い確率が0.9であり、その箇所が「修繕費」に相当する場合には、仕訳処理部30は、取引情報「空調設備工事」を「修繕費」に仕訳する。そして、仕訳処理部30は、仕訳結果を出力する。
【0042】
このように、第1実施形態の建物情報処理装置14は、建設工事の見積書内の見積項目を表す取引情報(例えば、「空調設備改修工事」)を、科目を表す科目情報(例えば、「修繕費」)へ自動的に仕訳する。これにより、建設工事の見積書に記載されている取引情報を対応する科目情報へ仕訳することが可能となる。
【0043】
ライフサイクルコスト処理部32は、仕訳処理部30により得られた仕訳結果と、その仕訳結果に対応する取引情報の価格情報と、日付情報とを対応付けて、ライフサイクルコスト記憶部34へ格納する。
【0044】
ライフサイクルコスト記憶部34には、各建物のライフサイクルコストに関するデータが格納される。ライフサイクルコスト処理部32は、ライフサイクルコスト記憶部34に格納されているデータを加工することにより、対象建物のライフサイクルコストを可視化する。
【0045】
図5に、ある建物のライフサイクルコスト(LCC)をグラフ化したものを示す。図5に示される例では、あるビルの収入としての賃料が計上され、支出として修繕更新費といった各種の経費が計上されている。上述した仕訳処理部30による仕訳処理により、見積書に記載されている取引情報が適切な科目情報へ仕訳されるため、図5に示されるようなライフサイクルコストを自動的に生成することができる。
【0046】
表示部16は、建物情報処理装置14から出力された情報を表示する。表示部16は、例えば、ディスプレイ等によって実現される。例えば、表示部16は、ライフサイクルコスト処理部32によって得られたライフサイクルコストの結果を表示する。ユーザは、表示部16に表示された結果を確認し、例えば、建物のファシリティマネジメント等に利用する。
【0047】
なお、仕訳処理部30は、仕訳済みの情報を出力するのではなく、例えば、学習済みモデルから出力された確率と共に科目情報を出力するようにしてもよい。この場合には、ユーザは、提示された各確率と各科目情報と参照し、その中から適切と思われる科目情報を選択する。
【0048】
<建設仕訳システムの作用>
【0049】
次に、図を参照して、第1実施形態の建設仕訳システム10の作用を説明する。建設仕訳システム10の建物情報処理装置14は、入力部12により学習用データを受け付けると、学習用データ記憶部20に格納する。そして、建設仕訳システム10の建物情報処理装置14は、学習処理開始の指示信号を受け付けると、図6に示す学習処理ルーチンを実行する。
【0050】
<学習処理ルーチン>
【0051】
ステップS100において、学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データを取得する。
【0052】
ステップS102において、学習部22は、上記ステップS100で取得された複数の学習用データに基づいて、仕訳用モデルを学習させることにより、取引情報から科目情報を出力するための仕訳用学習済みモデルを生成する。
【0053】
ステップS104において、学習部22は、上記ステップS102で生成された仕訳用学習済みモデルを学習済みモデル記憶部24に格納して、学習処理ルーチンを終了する。
【0054】
次に、建設仕訳システム10の建物情報処理装置14は、スキャナ13から入力された、仕訳対象の見積書の画像を受け付けると、図7に示す建設仕訳処理ルーチンを実行する。
【0055】
<建設仕訳処理ルーチン>
【0056】
ステップS200において、文字認識部26は、スキャナ13によって得られた見積書の画像を取得する。
【0057】
ステップS202において、文字認識部26は、上記ステップS200で取得した見積書の画像から文字情報を取得し、当該文字情報を取引情報とする。文字情報の取得は、例えば、既知のOCR技術に基づき行われる。
【0058】
ステップS204において、取得部28は、上記ステップS202で得られた取引情報を取得する。そして、取得部28は、取引情報に対して既存の形態素解析を実施し、取引情報が表す見積項目の形態素解析結果を得る。
【0059】
ステップS206において、仕訳処理部30は、上記ステップS204で得られた形態素解析結果を、仕訳用学習済みモデルへ入力可能な数値データへ変換する。
【0060】
ステップS208において、仕訳処理部30は、学習済みモデル記憶部24に格納された仕訳用学習済みモデルを読み出す。そして、仕訳処理部30は、上記ステップS206で得られた数値データを、仕訳用学習済みモデルへ入力することにより、取引情報に対応する科目情報を出力する。
【0061】
ステップS210において、仕訳処理部30は、上記ステップS208で得られた科目情報を結果として出力する。
【0062】
ライフサイクルコスト処理部32は、仕訳処理部30により得られた仕訳結果と、その仕訳結果に対応する取引情報の価格情報と、日付情報とを対応付けて、ライフサイクルコスト記憶部34へ格納する。
【0063】
そして、ライフサイクルコスト処理部32は、ライフサイクルコスト記憶部34に格納されているデータを加工することにより、対象建物のライフサイクルコストを可視化する。
【0064】
表示部16は、ライフサイクルコスト処理部32によって得られたライフサイクルコストの結果を表示する。ユーザは、表示部16に表示された結果を確認し、例えば、建物のファシリティマネジメント等に利用する。
【0065】
以上詳細に説明したように、第1実施形態の建物情報処理装置は、建設工事の見積書内の見積項目を表す取引情報を、取引情報から取引情報に対応する科目を表す科目情報を出力するための予め学習された仕訳用学習済みモデルへ入力することにより、取引情報に対応する科目情報を出力する。これにより、建設工事の見積書に記載されている取引情報を対応する科目情報へ仕訳することができる。
【0066】
[第2実施形態]
【0067】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、異常検知用学習済みモデルを利用して、対象建物の建設工事に関する見積書の見積項目の詳細と、当該対象建物のBIM情報とが整合しているか否かを判定する点が第1実施形態と異なる。
【0068】
図8は、第2実施形態に係る建設仕訳システム210の構成の一例を示すブロック図である。建設仕訳システム210は、機能的には、図8に示されるように、入力部12と、スキャナ13と、建物情報処理装置214と、表示部16とを含んだ構成で表すことができる。
【0069】
建物情報処理装置214は、機能的には、図8に示すように、学習用データ記憶部220と、学習部222と、学習済みモデル記憶部224と、BIM情報記憶部225と、文字認識部26と、取得部28と、仕訳処理部230と、異常検知部231とを備えている。
【0070】
学習用データ記憶部220には、2つの種類の学習用データが格納される。具体的には、後述する仕訳用学習済みモデルを生成するための仕訳用学習用データと、後述する異常検知用学習済みモデルを生成するための異常検知用学習用データとが、学習用データ記憶部220に格納される。
【0071】
図9に、仕訳用学習用データの一例と、異常検知用学習用データの一例とを示す。
【0072】
図9に示されるように、仕訳用学習用データSは、データ毎に、学習用取引情報と学習用科目情報と学習用タグ情報とが対応付けられて格納される。
【0073】
タグ情報は、取引情報の種類を表す情報である。例えば、取引情報が「空調設備工事 Xビル 2階 男子トイレ電気設備改修 蛍光灯取替」といった見積項目である場合、その取引情報は「修繕費」という科目に仕訳される。さらに、第2実施形態では、「2階 男子トイレ電気設備改修 蛍光灯取替」といった情報に対して、「蛍光灯」「2F」「トイレ」「電気」といったタグ情報が付与される。これにより、見積書内の見積項目は、建物のどこの何の改修に対応しているのかが特定される。タグ情報は取引情報の詳細を表す情報でもあり、第2実施形態の建物情報処理装置214は、このタグ情報を用いることにより、供給業者から提出された見積書が適切であるか否かを判定する。詳細については後述する。
【0074】
このため、第2実施形態の仕訳用学習済みモデルは、取引情報に対応する科目情報の確率に加えて、取引情報に対応するタグ情報の確率も更に出力する。図10に、第2実施形態の仕訳用学習済みモデルの一例を示す。図10に示されるように、第2実施形態の仕訳用学習済みモデルM2-1からは、取引情報に対応する科目情報の確率と、取引情報に対応するタグ情報の確率とが出力される。
【0075】
また、図9に示されるように、異常検知用学習用データIは、データ毎に、学習用BIM情報と学習用タグ情報と学習用信頼度とが対応付けられて格納される。BIM情報は、対象建物のBIM(Building Information Modeling)を表す情報である。
【0076】
第2実施形態の異常検知用学習済みモデルは、対象建物のBIM情報と、取引情報に対応するタグ情報とが入力されると、そのタグ情報に対応する取引情報の信頼度が出力される。図11に、第2実施形態の異常検知用学習済みモデルの一例を示す。図11に示されるように、第2実施形態の異常検知用学習済みモデルM2-2からは、タグ情報に対応する取引情報の信頼度が出力される。この信頼度は、供給業者から提出された見積書の見積項目の取引情報から得られたタグ情報と、その見積書が対象とする建物のBIM情報とを突合させ、供給業者から提出された見積書の見積項目がどの程度信頼できるのかの度合いを表すものである。詳細については後述する。
【0077】
学習部222は、学習用データ記憶部220に格納されている複数の仕訳用学習用データに基づいて、取引情報から科目情報及びタグ情報を出力するためのモデルを学習させる。そして、学習部222は、取引情報から科目情報及びタグ情報を出力するための仕訳用学習済みモデルを生成する。
【0078】
また、学習部222は、学習用データ記憶部220に格納されている複数の異常検知用学習用データに基づいて、BIM情報及びタグ情報からそのタグ情報に対応する取引情報の信頼度を出力するためのモデルを学習させる。そして、学習部222はBIM情報及びタグ情報からそのタグ情報の取引情報の信頼度を出力するための異常検知用学習済みモデルを生成する。
【0079】
学習部222は、仕訳用学習済みモデルと異常検知用学習済みモデルとを学習済みモデル記憶部224へ格納する。
【0080】
仕訳処理部230は、学習済みモデル記憶部224に格納されている仕訳用学習済みモデルに対して、取得部28により取得された取引情報の数値データを入力することにより、科目情報の確率とタグ情報の確率とを取得する。そして、仕訳処理部230は、科目情報の確率のうち最も高い確率に相当する科目情報を、入力された取引情報に相当する科目情報として仕訳する。また、仕訳処理部230は、タグ情報の確率のうち最も高い確率に相当するタグ情報を、入力された取引情報に相当するタグ情報として特定する。
【0081】
異常検知部231は、BIM情報記憶部225から、建設工事対象の建物のBIMモデルを読み出す。そして、異常検知部231は、読み出したBIMモデルから当該建物の各箇所の情報を表すBIM情報を取得する。BIMモデルの各箇所には属性情報が付与されている。例えば、BIMモデルが表す建物の2階のトイレの部屋には、「2F」「男子トイレ」「蛍光灯3個」といった属性情報が予め付与されている。
【0082】
このため、異常検知部231は、仕訳処理部230によって特定されたタグ情報に基づいて、BIMモデルの各箇所の属性情報を表すBIM情報を取得する。例えば、タグ情報が「2F」「男子トイレ」「蛍光灯3個」といった情報である場合には、異常検知部231は、BIMモデルのうちの「2F」「男子トイレ」のBIM情報を取得する。
【0083】
次に、異常検知部231は、既知の手法を用いて、仕訳処理部230によって特定された科目情報を、異常検知用学習済みモデルへ入力可能な数値データへ変換する。また、異常検知部231は、既知の手法を用いて、仕訳処理部230によって特定されたタグ情報を、異常検知用学習済みモデルへ入力可能な数値データへ変換する。
【0084】
そして、異常検知部231は、仕訳処理部230によって特定されたタグ情報の数値データと、取得したBIM情報の数値データとを、学習済みモデル記憶部224に格納されている異常検知用学習済みモデルへ入力することにより、取得部28により取得された取引情報に対する信頼度を出力する。
【0085】
図11に示されるように、異常検知用学習済みモデルM2-2からは、取引情報に対する信頼度が出力される。この信頼度は、供給業者から提出された見積書の見積項目に対する信頼度であるため、仮に見積項目に誤りがあった場合には信頼度は低くなる。例えば、タグ情報が「2F」「男子トイレ」「蛍光灯4個」といった情報であるのに対し、BIM情報は「2F」「男子トイレ」「蛍光灯3個」を表している場合には、見積項目に誤りがあるため、信頼度は低くなる。
【0086】
異常検知部231は、異常検知用学習済みモデルから出力された信頼度が閾値以下である場合にアラートを出力する。上述したように、信頼度が閾値以下である場合には、見積項目に誤りがある可能性が高い。このため、異常検知部231は、信頼度が閾値以下である場合にアラートを出力する。
【0087】
表示部16は、異常検知部231から出力されたアラートを表示する。ユーザは、表示部16に表示されたアラートを確認し、供給業者から提出された見積項目に誤りがないかどうかを確認する。
【0088】
<建設仕訳システムの作用>
【0089】
次に、図を参照して、第2実施形態の建設仕訳システム210の作用を説明する。建設仕訳システム210の建物情報処理装置214は、入力部12により仕訳用学習用データ及び異常検知用学習用データを受け付けると、学習用データ記憶部220に格納する。そして、建設仕訳システム210の建物情報処理装置214は、学習処理開始の指示信号を受け付けると、上記図6に示す学習処理ルーチンと同様の学習処理ルーチンを実行する。
【0090】
具体的には、学習部222は、学習用データ記憶部220に格納されている複数の仕訳用学習用データに基づいて、取引情報から科目情報及びタグ情報を出力するための仕訳用学習済みモデルを生成する。また、学習部222は、学習用データ記憶部220に格納されている複数の異常検知用学習用データに基づいて、BIM情報及びタグ情報からそのタグ情報の取引情報の信頼度を出力するための異常検知用学習済みモデルを生成する。そして、学習部222は、仕訳用学習済みモデルと異常検知用学習済みモデルとを学習済みモデル記憶部224へ格納する。
【0091】
次に、建設仕訳システム210の建物情報処理装置214は、スキャナ13から入力された、仕訳対象の見積書の画像を受け付けると、図12に示す建設仕訳処理ルーチンを実行する。
【0092】
ステップ200~ステップS206までの各処理は、第1実施形態と同様に実行される。
【0093】
ステップS308において、仕訳処理部230は、学習済みモデル記憶部224に格納されている仕訳用学習済みモデルに対して、取得部28により取得された取引情報の数値データを入力することにより、取引情報に対応する、科目情報とタグ情報とを取得する。
【0094】
ステップS310において、異常検知部231は、上記ステップS308で取得されたタグ情報に基づいて、BIM情報記憶部225に格納されているBIM情報を取得する。
【0095】
ステップS311において、異常検知部231は、既知の手法を用いて、上記ステップS310で取得された科目情報を、異常検知用学習済みモデルへ入力可能な数値データへ変換する。また、異常検知部231は、既知の手法を用いて、上記ステップS310で取得されたタグ情報を、異常検知用学習済みモデルへ入力可能な数値データへ変換する。
【0096】
ステップS312において、異常検知部231は、上記ステップS311で得られたタグ情報の数値データとBIM情報の数値データとを、学習済みモデル記憶部224に格納されている異常検知用学習済みモデルへ入力することにより、取引情報に対する信頼度を取得する。
【0097】
ステップS314において、異常検知部231は、上記ステップS312で得られた信頼度が閾値以下であるか否かを判定する。信頼度が閾値以下である場合には、ステップS316へ進む。一方、信頼度が閾値より大きい場合には、処理を終了する。
【0098】
ステップS316において、異常検知部231は、アラートを出力する。
【0099】
表示部16は、異常検知部231から出力されたアラートを表示する。ユーザは、表示部16に表示されたアラートを確認し、供給業者から提出された見積書の見積項目に誤りがないかどうかを確認する。
【0100】
なお、例えば、異常検知部231は、信頼度が閾値より大きい場合には、第1実施形態において説明したライフサイクルコストのデータへ、そのタグ情報を反映するようにしてもよい。例えば、異常検知部231は、信頼度が閾値より大きい場合には、図13に示されるように、仕訳処理部230により得られたタグ情報TAGをライフサイクルコストのデータへ反映する。これにより、ライフサイクルコストのデータを自動的に更新することができる。
【0101】
なお、第2実施形態に係る建設仕訳システムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
以上詳細に説明したように、第2実施形態の建設仕訳システムの建物情報処理装置は、取引情報の種類を表すタグ情報を取得し、建設工事対象の建物のBIMモデルから建物の各箇所の情報を表すBIM情報を取得する。そして、建物情報処理装置は、タグ情報とBIM情報とを、タグ情報及びBIM情報から取引情報に対する信頼度を出力するための異常検知用学習済みモデルへ入力することにより、見積書の見積項目を表す取引情報に対する信頼度を出力し、信頼度が閾値以下である場合にアラートを出力する。これにより、見積書の見積項目の誤りを発見しやすくすることができる。
【0103】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0104】
例えば、上記各実施形態では、学習済みモデルの一例として、ニューラルネットワーク等を用いる場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。機械学習によって得られるモデルであれば、どのようなモデルであっても良い。
【0105】
また、第1実施形態におけるライフサイクルコストを予測するような学習済みモデルを更に生成するようにしてもよい。
【0106】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部(図示省略)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0107】
10,210 建設仕訳システム
12 入力部
13 スキャナ
14,214 建物情報処理装置
16 表示部
20,220 学習用データ記憶部
22,222 学習部
24,224 学習済みモデル記憶部
28 取得部
30 仕訳処理部
32 ライフサイクルコスト処理部
34 ライフサイクルコスト記憶部
225 BIM情報記憶部
231 異常検知部
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