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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】化粧用スタンプ
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/30 20060101AFI20241112BHJP
   B41K 1/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A45D40/30
B41K1/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021035970
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136390
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】木村 武佐士
(72)【発明者】
【氏名】松田 孝明
(72)【発明者】
【氏名】高末 廸予
(72)【発明者】
【氏名】柴田 蓮也
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0150844(US,A1)
【文献】特開平11-178635(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0142275(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/30
B41K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印台と、前記印台に対して着脱自在に貼付可能で柔軟性を有する印材とを備えたことを特徴とする化粧用スタンプであって、
前記印材は、再剥離性及び再接着性を有し前記印台に貼付される貼付面を形成する第1の層と、多孔質体からなり前記貼付面とは反対側の印面を形成する第2の層とを含む多層構造を有し、
前記印台は、前記印材の貼付面より大きく形成され前記印材が貼付される平滑面と、前記平滑面を囲むように形成されたリブとを備え、
前記平滑面は、前記印材の形状を調整可能な余地を有し、
前記リブは、前記平滑面に貼付された前記印材の高さより低くなるよう形成されている化粧用スタンプ。
【請求項2】
前記第1の層が粘着性樹脂である請求項1に記載の化粧用スタンプ。
【請求項3】
前記第1の層が、平滑面に対する吸着機能を持つ孔径が5~100μmの多数の微小孔を備えた多孔質体であり、
前記第2の層が、孔径が100~300μmの多数の孔を備えた多孔質体である請求項1に記載の化粧用スタンプ。
【請求項4】
前記印面が眉型形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧用スタンプ。
【請求項5】
前記印台が可性を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の化粧用スタンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用スタンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、色素を付着させたスタンプを用いて眉の化粧ができる器具が知られている。特許文献1記載の化粧器具はスタンプ土台に接着剤等で眉型が固定されているものである。このような化粧用スタンプでは、1つの決まった形状でしかスタンプを押すことができず、眉の形を変更する場合は異なる形状の化粧用スタンプを別途購入する必要があった。また、自分の顔に合うように微調整することができず、既成の形状どおりの化粧しかできなかった。また、眉型がスタンプ土台に固定されていて取り外せないため、眉型が汚れた際に手軽に洗うことができず、取り扱いが不便であった。更に、製造工程において、印材からはみ出した接着剤等の汚れ除去や、印材の貼り付けミスによる材料ロス等が発生し、無駄なコスト、労力が発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-64346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決して、形状を容易に調整することが可能な化粧用スタンプを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、印台と、前記印台に対して着脱自在に貼付可能で柔軟性を有する印材とを備えたことを特徴とする化粧用スタンプであって、前記印材は、再剥離性及び再接着性を有し前記印台に貼付される貼付面を形成する第1の層と、多孔質体からなり前記貼付面とは反対側の印面を形成する第2の層とを含む多層構造を有し、前記印台は、前記印材の貼付面より大きく形成され前記印材が貼付される平滑面と、前記平滑面を囲むように形成されたリブとを備え、前記平滑面は、前記印材の形状を調整可能な余地を有し、前記リブは、前記平滑面に貼付された前記印材の高さより低くなるよう形成されている化粧用スタンプとする。
【0006】
また、前記印材は、前記第1の層が粘着性樹脂である構成とすることが好ましい。
【0007】
また、前記第1の層が、平滑面に対する吸着機能を持つ孔径が5~100μmの多数の微小孔を備えた多孔質体であり、前記第2の層が、孔径が100~300μmの多数の孔を備えた多孔質体である構成とすることが好ましい
【0008】
また、前記印材が眉型形状に形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記印台が可性を有することが好ましい。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
本発明では、印材がその形状を調整可能な柔軟性を有している。さらに、印材が印台に対して剥離可能に粘着または吸着するので、印材を印台に着脱自在に固定することができ、調整された形状を保持することができる。このため、形状を容易に調整することが可能な化粧用スタンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の化粧用スタンプの斜視図である。
図2】実施形態の化粧用スタンプの分解斜視図である。
図3】印材に対する貼付面が粘着樹脂層である印材の構造を表す図である。
図4】印材に対する貼付面に吸着機能を持つ多数の微小孔を有する印材の構造を表す図である。
図5】実施形態の化粧用スタンプの正面図である。
図6】実施形態の化粧用スタンプの背面図である。
図7】実施形態の化粧用スタンプの平面図である。
図8図7のA-A端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1図2に示されるように、化粧用スタンプ1は、印台2と、印台2に着脱自在に貼付可能で柔軟性を有する印材3とを備えている。実施形態の印材3は、印台2に貼付される側に形成された貼付面311において粘着性樹脂または吸着機能を持つ多数の微小孔のいずれかを有しており、印台2に対して着脱自在に貼付することができる。
【0014】
印材3について説明する。印材3は、皮膚や眉毛に色素を付着させる印面321を有している。印面321の表面に化粧用パウダー等を含ませて押捺することで、意図する形状どおりに色素を付着させることができる。図1~2に示されるように、実施形態の印面321は眉型に形成されており、印材3は、正面から背面に至る全体にわたり、横断面形状が印面321と同一となるよう形成されている。印面321が基本となる眉型形状を有していると、使用者の眉の形や好みに合わせてその角度を微調整するだけで、意図した形状の眉を容易に表現可能な化粧用スタンプ1とすることができる。なお、印面321が眉型である場合、図1~2に示した左眉用の印材3だけでなく、この印材3と対称な形状の右眉用の印材3も一対で用いることが好ましい。また、印面321の形状は眉型に限らずチーク型などとすることもできる。
【0015】
実施形態の印材3は、貼付面311を形成する第1の層31と、貼付面311とは反対側の印面321を形成する第2の層32とを有している。
【0016】
ここで、図3に示されるように、第1の層31が粘着性樹脂である例について説明する。第1の層31に用いる粘着性樹脂としては、例えば表面に再剥離性・柔軟性を有するウレタン樹脂製の粘着樹脂層312を備え、裏面にアクリル系の強粘着接着剤層313を備えた多層シート体が挙げられる。なお、この例では、第1の層31に前記多層シート体(商品名:TGシート(株式会社清和産業製))を使用しているが、片面に剥離可能な粘着性を有している樹脂であれば、材質・形状は特に限定されない。また、前記粘着性樹脂は、ウレタン樹脂製の粘着樹脂層312とアクリル系の強粘着接着剤層313の組み合わせに限定されるものではなく、それ以外の粘着性を有する樹脂と、接着剤の組み合わせからなる多層シートを使用しても良い。また、ウレタン樹脂製の粘着性樹脂またはそれ以外の粘着性を有する樹脂の単層シートを使用してもよい。
【0017】
第1の層31として前記多層シート体を用いる場合は、その表面側(再剥離性を有するウレタン樹脂製の粘着樹脂層312側)を印台2に対する貼付面311とし、裏面側(アクリル系の強粘着接着剤層側313側)に第2の層32を接着して2層構造とする。なお、2層構造に限らず、さらなる多層構造とすることもできる。
【0018】
印面321を形成する第2の層32は、化粧用パウダーなどの着色部材を含みやすいように多孔質体322で構成することが好ましい。実施形態の多孔質体322は、孔径が100~300μmの孔を気孔率80%の密度で有する多孔質体である。
【0019】
このように、印材3を、剥離可能な粘着性を持つ第1の層31と、多孔質体322による第2の層32とで構成することにより、印台2への粘着力を維持しつつ、印面321側への化粧用パウダー等の着色部材の乗りがよい印材3とすることができる。また、ウレタン樹脂製の粘着性樹脂は、汚れ等の付着によって粘着力が弱まっても、水洗いすることで粘着力が復活するため、繰り返し使用することができる。
【0020】
次に、図4に示されるように、第1の層31が多孔質体314であって、その貼付面311に、平滑面に対する吸着機能を持つ多数の微小孔を有する例について説明する。この例の第1の層31を形成する多孔質体314は、孔径が5~100μmの微小孔を気孔率70%の密度で有している。このような多孔質体314の微小孔は、平滑面に密着させた際に吸盤の役割を果たすので、接着部材を用いなくても、印材3を、印台2に対して繰り返し自在に貼ったり剥がしたりすることが可能となる。
【0021】
第1の層31の反対側で印面321を形成する第2の層32は、第1の層31より大きい孔径を有する多孔質体322とすることが好ましい。この例の多孔質体322は孔径が100~300μmの孔を気孔率80%の密度で有している。このように、吸着機能を持つ第1の層31と、第1の層31より径の大きい気泡を有する第2の層32とを設けることにより、印台2への吸着力を維持しつつ、印面321側への化粧用パウダー等の着色部材の乗りがよい印材3とすることができる。
【0022】
なお、2層構造に限らず、さらなる多層構造としてもよい。また、第1の層31と第2の層32は別々に成形してから接着されたものでもよいし、一体成形されたものでもよい。別々に成形された第1の層31と第2の層32とを貼り合わせる場合は、層の境目である境界面315に防水フィルム等の防水層を設けることが好ましい。前記防水層は接着剤によって形成されるものであってもよい。このような防水層を設けることで、第2の層32から第1の層31に水分が浸透して吸着力が低下することを抑制することが可能となる。
【0023】
ここで、第1の層31が多孔質体314で形成された印材3について、その製造方法の例を説明する。原料NBR100部、硫黄5部、亜鉛華5部、加硫促進剤5部、軟化剤30部、カーボンブラック50部、老化防止剤2部、40~60μmの塩化ナトリウム500部、50~60μmのバレイショデンプン100部を混練してマスターバッチAとし、これを厚さ1mmの平板状のシートAとした。これとは別に、原料NBR100部、硫黄5部、亜鉛華5部、加硫促進剤5部、軟化剤30部、カーボンブラック50部、老化防止剤2部、150~250μmの塩化ナトリウム900部、70~100μmのバレイショデンプン100部を加え混練してマスターバッチBとし、これを厚さ4mmの平板状のシートBとした。
【0024】
次に、シートAとシートBを重ね合わせ、これを平滑な金型内に収容し、次いで、20MPa程度の圧力を加えて熱盤間に挟圧し、120℃の温度下で60分間加硫した。加硫後離型して、塩化ナトリウム、バレイショデンプンが完全に除去されるまで充分に水洗し、脱水乾燥してシートAとシートBが一体化した多孔質ゴムシートを得た。この多孔質ゴムシートを所要のサイズで印面321の形状に切断すると、第1の層31が厚さ1mm、硬度50°(スプリング式硬さ試験E型硬度計の測定値)、気孔率70%、孔径40~60μmであって、第2の層32が厚さ4mm、硬度20°(スプリング式硬さ試験E型硬度計の測定値)、気孔率80%、孔径150~250μmである印材3を得ることができた。
【0025】
このような素材で形成される印材3の加工製造にあたっては、使用者の顔の形や好みに応じた形状とすることができるように受注生産方式をとることが好ましい。使用者は、例えば印材3の製造業者が運営する注文用アプリケーションを用いて印材3の加工を発注することができる。印材3が眉型である場合、使用者はスマートフォン等の画面に表示させた自分の顔の画像データに対し、選択した眉デザインを配置して、角度や太さを調整しながらシミュレーションを行うことができる。使用者がシミュレーションの結果に基づいて希望する形状の印材3を発注すると、その発注内容を基に印材3が加工製造される。このようなシミュレーションシステムとしては、特公平8-23871号公報に記載されているとおり公知のシステムが存在しており、本実施形態ではそのような公知のシステムを用いることができる。なお、印材3は受注生産ではなく既成のパターンが用意されるものであってもよい。
【0026】
次に、印台2について説明する。実施形態の印台2は透明な樹脂で形成された、全体が扁平な横長の略長方形状の部材である。実施形態では印材3が眉型形状のため、それに対応して印台2を横長の略長方形状としているが、印台2は印材3の形状に合わせて様々な形とすることができる。
【0027】
印台2は、印材3の第1の層31側を貼付可能な平滑面21と、平滑面21を囲むように形成されたリブ22とを備えた印材保持部23と、印材保持部23の端部に設けられた持ち手24とを備えている。実施形態の持ち手24は、印材保持部23の左右の端部、すなわち、平滑面21に眉型の印材3が貼付された場合に眉頭側と眉尻側となる位置に形成されている。
【0028】
図1及び図2に示されるように、実施形態では、印台2の正面側に平滑面21が形成されている。平滑面21は表面が平滑なため印材3の貼付面311を着脱自在に貼付することができる。また、平滑面21を印材3の貼付面311より大きく形成し印材3の形状を調整可能な余地を持たせることによって、印材3の形状変更の自由度が高い化粧用スタンプ1とすることができる。また、大きさや形状の異なるさまざまな印材3にも対応できる。平滑面21の外周には、平滑面21を囲むようにリブ22が形成されている。図8に示されるように、リブ22の高さは、平滑面21に貼付された印材3の高さより低く形成することが好ましい。このようなリブ22が形成されていると、化粧用スタンプ1を押捺する際、顔に密着させた化粧用スタンプ1が一定の角度以上に傾き過ぎないように、リブ22が顔に当接してストッパーの役割を果たすので、印材3が横方向に押されてつぶれることを抑制することができる。
【0029】
なお、印台2は、可撓性を有する素材で形成することが好ましい。印台2の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、シリコン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などのプラスチックを用いることが可能である。印台2に可撓性を持たせることで、顔の形状に応じて印台2を撓ませて押捺することができ、印面321が眉型の場合は眉頭から眉尻まで一度でパウダーを付着させることができる。
【0030】
本発明の化粧用スタンプ1の使用方法について説明する。まず、図2及び図5に示されるように、印材3を、印台2に対して貼付面311と平滑面21とが密着する向きで貼り付ける。実施例の平滑面21には線状の位置決めライン211が刻まれており、印材3の眉頭の先端を位置決めライン211に合わせて貼付することができる。このように、印材3を貼付する位置を決める目印があると、左右の印材3の形状を揃える場合に左右の印材3の眉頭の位置を合わせやすくなる。
【0031】
印材3は柔軟性を有する素材で形成されているので、基本となる眉型の角度や傾き等の形状を手で変更させることができる。印材3を印台2に貼り付けたまま印材3の形状を変更させて軽く押圧すると、変形後の形状が貼付面32の吸着力または粘着力により固定され維持される。このような構造とすると、眉尻の先端だけ角度を変えたり、一部分の形状をわずかに変えたりするなど、変形させたい部分だけを容易に細かく調整することができる。
【0032】
次に、印材3が印台2に貼付された状態のまま、印面321に化粧用パウダー等の色素を含ませる。使用者は手で印台2を保持しながら、印面321の眉頭側を、使用者の眉頭としたい部分の位置に合わせ、色素を含んだ印面321を使用者の眉に当て、眉毛及び皮膚に色素を付着させて化粧をすることができる。このとき、印台2が透明な部材で形成されていると、使用者が自分の眉と印面321との位置合わせを行いやすい。
【0033】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 化粧用スタンプ
2 印台
21 平滑面
3 印材
311 貼付面
321 印面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8