(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】中古資産管理システム、プログラム及び中古資産管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/163 20240101AFI20241112BHJP
【FI】
G06Q50/163
(21)【出願番号】P 2020119763
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】518026291
【氏名又は名称】一般社団法人不動産売却支援ネット
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】露木 裕良
(72)【発明者】
【氏名】池野 浩二
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151655(JP,A)
【文献】特開2020-042531(JP,A)
【文献】特開2005-044286(JP,A)
【文献】特開2002-092127(JP,A)
【文献】登録実用新案第3150580(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中古資産の取得効果を評価し、その評価に係る物件を管理若しくは運用する中古資産管理システムであって、
前記中古資産の耐用年数を算出する耐用年数算出部と、
前記中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測額を、賃貸需要データを参照しつつ算出する収入予測額算出部と、
前記中古資産の売却収入予測額を売却実績データを参照しつつ算出する売却収入予測額算出部と、
前記耐用年数算出部が算出した耐用年数に基づいて前記中古資産に関する年間減価償却費を算出する減価償却算出部と、
前記減価償却算出部が算出した年間減価償却費を用いて、前記中古資産に関する税負担軽減額を算出する税負担軽減額算出部と、
評価対象である前記中古資産が属する地域に関連づけられた不動産情報を参照しつつ、前記収入予測額算出部、前記売却収入予測額算出部、減価償却算出部及び前記税負担軽減額算出部の算出結果に基づいて、前記中古資産の価値を算定する評価部と
を備え、
前記評価部は、前記評価対象の位置情報に基づいて参照された不動産情報を用いて前記中古資産の価値を算定する
ことを特徴とする中古資産管理システム。
【請求項2】
建築種別毎に設定された法定耐用年数を記憶保持する記憶部をさらに備え、
前記耐用年数算出部は、前記記憶部に設定された法定耐用年数を参照して前記耐用年数を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の中古資産管理システム。
【請求項3】
前記減価償却算出部は、前記中古資産に含まれる土地に係る価額を算定し前記中古資産から前記土地にかかる価額を差し引くことによって前記年間減価償却費を算出し、
前記評価部は、
建物の構成に応じた賃貸想定収入を計算し、前記土地の価値を評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の中古資産管理システム。
【請求項4】
前記減価償却算出部は、前記中古資産に含まれる建物及び土地の価額の比率に基づいて前記土地に係る価額を算定する
ことを特徴とする請求項3に記載の中古資産管理システム。
【請求項5】
前記取得効果を、前記税負担軽減額及び前記売却収入予測額を用いて算出し、前記中古資産の情報とともに表示する表示情報を生成する表示情報生成部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の中古資産管理システム。
【請求項6】
中古資産の取得効果を評価し、その評価に係る物件を管理若しくは運用する中古資産管理プログラムであって、コンピューターを、
前記中古資産の耐用年数を算出する耐用年数算出部と、
前記中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測額を、賃貸需要データを参照しつつ算出する収入予測額算出部と、
前記中古資産の売却収入予測額を売却実績データを参照しつつ算出する売却収入予測額算出部と、
前記耐用年数算出部が算出した耐用年数に基づいて前記中古資産に関する年間減価償却費を算出する減価償却算出部と、
前記減価償却算出部が算出した年間減価償却費を用いて、前記中古資産に関する税負担軽減額を算出する税負担軽減額算出部と、
評価対象である前記中古資産が属する地域に関連づけられた不動産情報を参照しつつ、前記収入予測額算出部、前記売却収入予測額算出部、減価償却算出部及び前記税負担軽減額算出部の算出結果に基づいて、前記中古資産の価値を算定する評価部
として機能させ、
前記評価部は、前記評価対象の位置情報に基づいて参照された不動産情報を用いて前記中古資産の価値を算定するように機能される
ことを特徴とする中古資産管理プログラム。
【請求項7】
前記コンピューターを建築種別毎に設定された法定耐用年数を記憶保持する記憶部としてさらに機能させ、
前記耐用年数算出部は、前記記憶部に設定された法定耐用年数を参照して前記耐用年数を算出するように機能される
ことを特徴とする請求項6に記載の中古資産管理プログラム。
【請求項8】
前記減価償却算出部は、前記中古資産に含まれる土地に係る価額を算定し前記中古資産から前記土地にかかる価額を差し引くことによって前記年間減価償却費を算出するように機能され、
前記評価部は、
建物の構成に応じた賃貸想定収入を計算し、前記土地の価値を評価するように機能される
ことを特徴とする請求項6に記載の中古資産管理プログラム。
【請求項9】
前記減価償却算出部は、前記中古資産に含まれる建物及び土地の価額の比率に基づいて前記土地に係る価額を算定するように機能されることを特徴とする請求項8に記載の中古資産管理プログラム。
【請求項10】
前記コンピューターを、
前記取得効果を、前記税負担軽減額及び前記売却収入予測額を用いて算出し、前記中古資産の情報とともに表示する表示情報を生成する表示情報生成部
としてさらに機能させることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の中古資産管理プログラム。
【請求項11】
中古資産の取得効果を評価し、その評価に係る物件を管理若しくは運用する中古資産管理方法であって、
耐用年数算出部が、前記中古資産の耐用年数を算出する耐用年数算出ステップと、
前記中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測額を、賃貸需要データを参照しつつ算出するとともに、前記中古資産の売却収入予測額を売却実績データを参照しつつ算出する収入予測額算出ステップと、
前記耐用年数算出ステップで算出した耐用年数に基づいて、減価償却算出部が前記中古資産に関する年間減価償却費を算出する減価償却算出ステップと、
前記減価償却算出ステップで算出した年間減価償却費を用いて、税負担軽減額算出部が前記中古資産に関する税負担軽減額を算出する税負担軽減額算出ステップと、
評価部が、評価対象である前記中古資産が属する地域に関連づけられた不動産情報を参照しつつ、前記
収入予測額算出ステップにおける算出結果、並びに前記減価償却算出部及び前記税負担軽減額算出部の算出結果に基づいて、前記中古資産の価値を算定する評価ステップと
を含み、
前記評価部は、前記評価対象の位置情報に基づいて参照された不動産情報を用いて前記中古資産の価値を算定する
ことを特徴とする中古資産管理方法。
【請求項12】
建築種別毎に設定された法定耐用年数を記憶部が記憶保持する記憶ステップをさらに含み、
前記耐用年数算出ステップでは、前記記憶部に設定された法定耐用年数を参照して前記耐用年数を算出する
ことを特徴とする請求項11に記載の中古資産管理方法。
【請求項13】
前記減価償却算出ステップでは、前記中古資産に含まれる土地に係る価額を算定し前記中古資産から前記土地にかかる価額を差し引くことによって前記年間減価償却費を算出し、
前記評価ステップでは、
建物の構成に応じた賃貸想定収入を計算し、前記土地の価値を評価する
ことを特徴とする請求項11に記載の中古資産管理方法。
【請求項14】
前記減価償却算出ステップでは、前記中古資産に含まれる建物及び土地の価額の比率に基づいて前記土地に係る価額を算定することを特徴とする請求項13に記載の中古資産管理方法。
【請求項15】
表示情報生成部が、前記税負担軽減額及び前記売却収入予測額を用いて前記取得効果を算出して、前記中古資産の情報とともに表示する表示情報を生成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の中古資産管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土地及び建物を含む不動産に係る中古資産を減価償却商品として運用・管理する中古資産管理システム、プログラム及び中古資産管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の不動産業界では、土地建物等の不動産を取引するにあたり土地の評価額及び建物の評価額は、土地相場、公示価格、自社の販売事例等を用いて売却価格を想定して提示される。このような不動産取引において、より客観性の高い予想取引価格を算定するために、従前では、例えば特許文献1に開示された不動産売買システムが提案されている。この特許文献1に開示された不動産売買システムでは、不動産の売却を予定している売主の設定した希望価格で当該不動産の掲示を行い、当該掲示された不動産を購入したい購入希望者がいる場合、売却予定者及び購入希望者を直接取り引きさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従前の不動産取引では、中古資産の取引価額を算定する際に過去事例や判例に頼って検討するものの、土地建物の取引価額が明確に分かれていない場合には案分方法が論点となり基準が曖昧になってしまい、中古資産の取引が租税回避目的に合致しないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、不動産取引において中古資産の取引価額を算定する際の基準を明確にして、中古資産の取引を租税回避目的に合致できるようにする中古資産管理システム、プログラム及び中古資産管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、中古資産の取得効果を評価し、その評価に係る物件を管理若しくは運用する中古資産管理システムであって、中古資産の耐用年数を算出する耐用年数算出部と、中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測額を、賃貸需要データを参照しつつ算出する収入予測額算出部と、中古資産の売却収入予測額を売却実績データを参照しつつ算出する売却収入予測額算出部と、耐用年数算出部が算出した耐用年数に基づいて中古資産に関する年間減価償却費を算出する減価償却算出部と、減価償却算出部が算出した年間減価償却費を用いて中古資産に関する税負担軽減額を算出する税負担軽減額算出部と、評価対象である中古資産が属する地域に関連づけられた不動産情報を参照しつつ、収入予測額算出部、売却収入予測額算出部、減価償却算出部及び税負担軽減額算出部の算出結果に基づいて、中古資産の価値を算定する評価部とを備え、評価部は、評価対象の位置情報に基づいて参照された不動産情報を用いて中古資産の価値を算定する。
【0007】
また、本発明は、中古資産の取得効果を評価し、その評価に係る物件を管理若しくは運用する中古資産管理方法であって、
(1)耐用年数算出部が、中古資産の耐用年数を算出する耐用年数算出ステップと、
(2)中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測額を、賃貸需要データを参照しつつ算出するとともに、中古資産の売却収入予測額を売却実績データを参照しつつ算出する収入予測額算出ステップと、
(3)耐用年数算出ステップで算出した耐用年数に基づいて、減価償却算出部が中古資産に関する年間減価償却費を算出する減価償却算出ステップと、
(4)減価償却算出ステップで算出した年間減価償却費を用いて、税負担軽減額算出部が中古資産に関する税負担軽減額を算出する税負担軽減額算出ステップと、
(5)評価部が、評価対象である中古資産が属する地域に関連づけられた不動産情報を参照しつつ、収入予測額算出部、売却収入予測額算出部、減価償却算出部及び税負担軽減額算出部の算出結果に基づいて、中古資産の価値を算定する評価ステップと
を含み、
前記評価部は、前記評価対象の位置情報に基づいて参照された不動産情報を用いて前記中古資産の価値を算定する。
【0008】
また、上述した本発明に係る税負担軽減額算出システム及び税負担軽減額算出方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。このようなプログラムを、ユーザー端末やWebサーバー等のコンピューターにインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有する3Dグラフィック生成システムを容易に構築することができる。
【0009】
すなわち、本発明は、中古資産の取得効果を評価し、その評価に係る物件を管理若しくは運用する中古資産管理プログラムであって、コンピューターを、
前記中古資産の耐用年数を算出する耐用年数算出部と、
中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測額を、賃貸需要データを参照しつつ算出する収入予測額算出部と、
中古資産の売却収入予測額を売却実績データを参照しつつ算出する売却収入予測額算出部と、
耐用年数算出部が算出した耐用年数に基づいて中古資産に関する年間減価償却費を算出する減価償却算出部と、
減価償却算出部が算出した年間減価償却費を用いて中古資産に関する税負担軽減額を算出する税負担軽減額算出部と、
評価対象である中古資産が属する地域に関連づけられた不動産情報を参照しつつ、収入予測額算出部、売却収入予測額算出部、減価償却算出部及び税負担軽減額算出部の算出結果に基づいて、中古資産の価値を算定する評価部
として機能させ、
評価部は、評価対象の位置情報に基づいて参照された不動産情報を用いて中古資産の価値を算定する。
【0010】
この中古資産管理プログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、また、汎用コンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。記録媒体として、具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【0011】
上記発明において、建築種別毎に設定された法定耐用年数を記憶保持する記憶部をさらに備え、耐用年数算出部は、記憶部に設定された法定耐用年数を参照して耐用年数を算出することが好ましい。
【0012】
上記発明において、減価償却算出部は、中古資産に含まれる土地に係る価額を算定し中古資産から土地にかかる価額を差し引くことによって年間減価償却費を算出し、評価部は、建物の構成に応じた賃貸想定収入を計算し、土地の価値を評価することが好ましい。
【0013】
前記減価償却算出部は、前記中古資産に含まれる土地に係る価額を算定し前記中古資産から前記土地にかかる価額を差し引くことによって前記年間減価償却費を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の中古資産管理システム。
【0014】
上記発明において、減価償却算出部は、中古資産に含まれる建物及び土地の価額の比率に基づいて土地に係る価額を算定することが好ましい。
【0015】
上記発明において、売却収入予測額を算出する売却収入予測額算出部と、取得効果を税負担軽減額及び売却収入予測額を用いて算出し中古資産の情報とともに表示する表示情報を生成する表示情報生成部とをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中古資産の耐用年数を算出し、その耐用年数に基づいた年間減価償却費を用いて中古資産に関する税負担軽減額を算出するため、不動産取引において中古資産の取引価額を算定する際の基準を明確にして、中古資産の取引を租税回避目的に合致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る中古資産管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係るユーザー端末の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係るユーザー端末のCPU上に構築される機能モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る中古資産管理サービスの動作を示すフロー図である。
【
図5】実施形態に係る中古資産管理サービスにおける中古資産を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係る中古資産管理サービスにおける所得税・住民税率を示す説明図である。
【
図7】実施形態に係る中古資産管理サービスにおける減価償却の計算例を示す説明図である。
【
図8】実施形態に係る中古資産管理サービスにおける収支シミュレーションを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る中古資産管理システムの実施形態を詳細に説明する。
図1に本実施形態に係る中古資産管理システム1の全体構成を示し、
図2に中古資産管理システム1で用いられるユーザー端末の内部構成を示す。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
(中古資産管理システムの構成)
図1に本実施形態に係る中古資産管理システム1の全体構成を示す。中古資産管理システム1は、中古資産の取得効果を評価し、その評価に係る物件を管理若しくは運用するシステムであり、本実施形態では、同図に示すように、インターネット3上の情報管理サーバー2において本発明の中古資産管理プログラムが実行されることにより実現される。
【0020】
具体的には、中古資産管理プログラムが情報管理サーバー2のCPUである制御部22上で実行されることによって、当該情報管理サーバー2を中古資産管理システム1のプラットフォームとしてインターネット3上で動作させている。本実施形態において中古資産管理システム1は、クライアントであるユーザー端末(PC4若しくはスマートフォン5)とインターネット3を介して接続されている。
【0021】
インターネット3は、無線通信網を含み、通信プロトコルTCP/IPを用いて種々の通信回線(電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、5G、LTE、3Gなどの無線通信網)を相互に接続して構築される分散型の通信ネットワークであり、このインターネット3には、イントラネット(企業内ネットワーク)や、所定領域(企業、家庭等)内ネットワークなどのLAN・Wifiなども含まれる。
【0022】
ユーザー端末4及び5は、本サービスの提供を受けるユーザーU1又はU2等が使用する、通信機能やCPUを備えた汎用的な情報処理端末である。これらユーザー端末4又は5は、各種アプリケーションソフトをインストールすることにより様々な機能が実装可能となっており、本実施形態では専用のソフトウェアやアプリケーションをインストールして、当該スマートフォンをユーザー用の端末装置として機能される。この情報処理端末としては、汎用的なパーソナルコンピュータやスマートフォンの他、機能を特化させた専用装置により実現することができ、タブレットPCやモバイルコンピュータ、携帯電話機、専用ゲーム機等が含まれる。
【0023】
ユーザー端末4及び5は、ブラウザソフト(アプリケーション)が実行可能となっており、このブラウザソフトを通じて前記情報管理サーバー2が提供するプラットフォームとしてのWebサイトにアクセスすることにより、ユーザー端末4及び5を中古資産管理サービスのインターフェースとして機能させることができる。なお、本実施形態では、情報管理サーバー2をプラットフォームとしてユーザー端末4若しくは5からアクセスする態様としているが、本システムをユーザー端末4,5上において単独で動作する所謂スタンドアローン形式としてもよく、情報管理サーバー2とユーザー端末4又は5の間で本システムの機能を分担し、両者が協動してシステムを構成するようにしてもよい。
【0024】
(1)情報管理サーバー2
情報管理サーバー2は、本実施形態ではアプリケーションやコンテンツデータの配信を行うコンテンツサーバーであり、例えばWebサーバー等で構成される。この情報管理サーバー2としては、WWW(World Wide Web)等のドキュメントシステムにおいて、HTML(HyperText Markup Language)ファイルや画像ファイル、動画ファイルなどの情報送信を行うサーバーコンピューター或いはその機能を持ったソフトウェアであり、HTML文書や画像などの情報を蓄積しておき、ユーザー端末4又は5からの要求に応じて、インターネット3を通じてこれらのデータを送信する。
【0025】
なお、この情報管理サーバー2によって配信されるコンテンツデータは、その全部又は一部をユーザー端末4,5に予めインストールして、ユーザー端末4,5内に保存しておくこともでき、ユーザー端末4,5側で自機内のコンテンツデータを検索して自機内に保存されていない場合に、情報管理サーバー2に対して配信要求を行ってダウンロードするようにしてもよい。
【0026】
具体的に、情報管理サーバー2は、通信インターフェース23と、入出力インターフェース21と、制御部22とを備えている。また、中古資産管理システム1は、種々のデータを記憶保持するための手段としてデータベース群264~266を備えている。
【0027】
通信インターフェース23は、ここでは上述したインターネット3を通じてデータ通信を行うための通信インターフェースであり、インターネット3を通じた通信の他、無線等による非接触通信や、ケーブル、アダプタ手段等により種々の通信回線を通じて接触(有線)通信をする機能が含まれる。
【0028】
入出力インターフェース21は、入力デバイス及び出力デバイスが接続される。入力デバイスとはマウス、キーボード、操作ボタンやタッチパネルなどユーザー操作を入力するデバイスである。また、出力デバイスはディスプレイやスピーカーなど、映像や音響を出力するデバイスである。特に、この出力インターフェースには、液晶ディスプレイなどの表示部が含まれ、この表示部は、入力インターフェースであるタッチパネルに重畳されている。
【0029】
なお、本実施形態において入出力インターフェース21には、オペレーターOPが使用するオペレーター端末としてのPC25が接続されており、このPC25を通じて、情報管理サーバー2に対する設定操作やメンテナンス等のサービス提供側による操作ができるようになっている。
【0030】
制御部22は、CPU等の演算処理装置で構成され、メモリに格納されたOS(Operating System:基本ソフト)やファームウェア等が実行されることにより、各種の機能モジュールが仮想的に構築され、各機能モジュールにより本発明の中古資産管理システムその他のシステムが構築される。また、制御部22は本発明に係る中古資産管理プログラムが実行されることで、中古資産管理サービスに関するモジュールとして、認証部22aと、税負担軽減算出部22bと、収入予測額算出部22cと、耐用年数算出部22dと、減価償却算出部22eと、データ管理部22fと、ユーザー管理部22gと、表示情報生成部22hと、情報データ収集部22iとが仮想的に構築される。
【0031】
データベース群としては、中古資産データベース264、運用データベース265及びユーザーデータベース266が含まれる。なお、このデータベース群としては、単一のデータベースとしてもよく、複数のデータベースに分割し、相互にリレーションを設定することで各データ同士を紐付けたリレーショナルデータベースとすることができる。
【0032】
中古資産データベース264は、中古資産である土地・建物に関する不動産情報が地域毎に蓄積されており、この不動産情報としては土地や建物の物件情報の他、周辺地域に関する情報が含まれる。具体的に中古資産データベース264は、例えば物件情報としては取引履歴情報(成約情報等)、住宅履歴情報などが含まれ、周辺地域情報としては、用途地域等都市計画情報、周辺の価格情報(地価公示、取引価格情報等)、周辺環境に関する情報(ハザードマップ、過去の土地利用状況、公共施設、学区情報等)、インフラ情報(道路等)などが含まれる。
【0033】
また、中古資産データベース264には、上記周辺地域情報に関連づけられて、地域毎の地理情報も含まれており、この地理情報としては、地域毎の土地の高低差や地質、地盤状態など自然的な地理条件に基づく建物の制限などが蓄積されている。さらに、中古資産データベースには、地域毎の法規情報も含まれており、この法規情報としては、その地域に適用される法律や条令等の法規による建物の高さ制限、容積率、日照確保のための斜線制限、日影規制などが蓄積されている。また、中古資産データベース264には、その中古資産である建物の構造に関する情報も含まれており、この建物構造情報には、その建物の構造上の制限(耐火構造や耐震構造、壁量、柱量、延面積、用途制限)等が蓄積されるとともに、仮想建物のグレードや用途・目的に応じた一般的な間取り図のパターンも建築構造情報に含められて蓄積されている。
【0034】
運用データベース265は、例えば中古資産を賃貸物件として運用した場合の賃料などによる収入予測額や、中古資産が売却された場合の予測売却価格のデータであり、建物の構造毎の築年数などに応じた価格変動など、売却価格に影響するデータが含まれている。
【0035】
ユーザーデータベース266は、ユーザーU1及びユーザー端末4,5に関する情報を蓄積するデータベースであり、本実施形態では、ユーザーU1,U2或いはユーザー端末4,5を識別するユーザーIDやユーザー端末4,5のIPアドレス等の端末IDに、ユーザーに関する情報(氏名、ユーザーID、メールアドレス、電話番号、住所等の個人情報)などが関連づけて記録されている。
【0036】
認証部22aは、通信インターフェース23を通じて、各ユーザー端末4,5などの他の通信機器と通信セッションを確立させ、その確立された通信セッション毎に認証処理を行うモジュールである。この認証処理としては、アクセス者である利用者のユーザー端末4,5から認証情報を取得し、ユーザーデータベース266を参照して利用者等を特定し、それらの権限を特定する。この認証部22aによる認証結果(ユーザーID、認証時刻、セッションID等)は、ユーザー管理部22gその他の各モジュールに送出されるとともに、ユーザーデータベース266に認証履歴として蓄積される。
【0037】
耐用年数算出部22dは、中古資産の耐用年数を算出するモジュールである。本実施形態では、中古資産データベース264に記憶保持された、建築種別毎に設定された法定耐用年数を用いて、この設定された法定耐用年数を参照して耐用年数を算出する。
【0038】
減価償却算出部22eは、耐用年数算出部22dが算出した耐用年数に基づいて中古資産に関する年間減価償却費を算出するモジュールである。具体的に減価償却算出部22eは、評価対象となる中古資産に含まれる土地に係る価額を算定し、中古資産全体の価額から土地にかかる価額を差し引くことによって年間減価償却費を算出する。このとき、減価償却算出部22eは、中古資産に含まれる建物及び土地の価額の比率に基づいて土地に係る価額を算定する。
【0039】
税負担軽減算出部22bは、減価償却算出部22eが算出した年間減価償却費を用いて、減価償却により減額される当該中古資産に関する納税額(税負担軽減額)を算出するモジュールである。
【0040】
収入予測額算出部22cは、中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測各を、運用データベース265の賃貸需要データを参照しつつ算出するモジュールである。また、収入予測額算出部22cは、運用データベース265の売却実績データを参照しつつ、売却収入予測額を算出する機能も有している。
【0041】
データ管理部22fは、各データベース264~265に対するデータの入出力を制御するモジュールであり、各モジュールからの要求に応じて各データベース264~265を検索して検索結果を返信したり、各モジュールで算出された算出結果を所定のデータベースに保存する。
【0042】
ユーザー管理部22gは、ユーザーデータベース266に接続されており、ユーザーのIDやパスワード等の個人情報、ユーザーに対して中古資産管理サービスを行うために必要な認証情報や個人情報、資産状況等を管理するモジュールであり、ユーザーからの配信要求があった際に、ユーザーデータベース266を参照するとともに、認証部22aに認証処理を実行させ、各ユーザーに固有のユーザーページを表示情報生成部22hに生成させる。
【0043】
表示情報生成部22hは、各モジュールで算出されたデータに基づいて、テキスト情報やグラフその他の2次元的・3次元的なグラフィックを生成し、これらのデータを表示情報としてディスレプレイ等の出力インターフェースから出力するモジュールである。特に本実施形態においてこの表示情報生成部22hは、収入予測額算出部22cが算出した売却収入予測額と取得効果を税負担軽減額及び売却収入予測額を用いて算出し、中古資産の情報を情報表示部に表示させる。
情報データ収集部22iは、インターネット3上に分散配置された各種情報サービスに係る各情報サーバーなどの情報源から最新の情報を収集し、データ管理部22fを通じて各種データベース264~265に反映させるモジュールである。
【0044】
(2)スマートフォン5
上述したスマートフォン5の内部構造について詳述する。
図2は、実施形態に係るスマートフォン5の内部構成を示すブロック図であり、
図3は、実施形態に係るスマートフォン5のCPU56上に構築される機能モジュールを示すブロック図である。ここでは、上述した情報管理サーバー2が備える各モジュールの一部又は全部をスマートフォン5側にアプリケーションとして実装し、基本的には本システムがユーザー端末5上において、オフラインでも単独で動作するスタンドアローン形式を前提とするが、必要に応じて情報管理サーバー2にアクセスして適宜必要な更新プログラムや最新の情報データをダウンロードするなど、情報管理サーバー2とユーザー端末5の間で本システムの機能を適宜分担し、両者が協動してサービスを提供することができる。
【0045】
具体的にユーザー端末(スマートフォン)5は、
図2に示すように、不動産評価システムに関するモジュールとして、通信インターフェース51、入力インターフェース52、出力インターフェース53、撮影部54、記憶装置55、CPU56、位置情報取得部57を備えている。
【0046】
通信インターフェース51は、他の通信機器と通話やデータの送受信を行うモジュールであり、通信方式としては、例えば、電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワークが含まれる。本実施形態において通信インターフェース11は、インターネット3を介してパケットデータの送受信を行い、情報管理サーバー2や外部情報サーバー等から、不動産情報等の各種データを取得する。
【0047】
入力インターフェース52は、タッチパネルやボタン等の操作デバイスから操作信号を受信するモジュールであり、受信された操作信号はCPU56に伝えられ、OSや各アプリケーションに対する操作を行うことができる。なお、このユーザー操作としては、加速度センサーやジャイロセンサーなど端末本体を振ったり、縦にしたり横にしたり等の端末本体の姿勢変化などを通じたユーザー操作も含まれる。出力インターフェース53は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスから映像や音声を出力するために映像信号や音声信号を送出するモジュールである。なお、本実施形態では、これら入力インターフェース52及び出力インターフェース53には、タッチパネルやボタン等の物理的操作スイッチなどが接続されており、操作用画面の表示データをディスプレイに表示させ、それに応じたタッチ操作やボタン操作をさせることによってユーザー操作信号を取得するGUIが提供される。
【0048】
撮影部54は、ユーザー端末(スマートフォン)5に取り付けられたレンズ及びCCDである固定撮像素子から構成され、入射された被写体像を表す光がCCDの受光面に結像され、カメラ信号処理回路及びA/D変換器等を介してCPU56に画像データとして送出される。この画像データには、動画及び静止画が含まれ、動画データは多数の連続画像がフレームとなったストリーミング形式でCPU56に転送される。
【0049】
記憶装置55は、ROMやRAM等が含まれ、RAMはCPU56のワーキングメモリ等として使用され、CPU56による演算結果を一時的に格納する。ROMにはCPU56用のプログラムが記録され、CPU56からの要求に応じて、プログラムの実行命令を順次出力する。なお、記憶装置55は、情報管理サーバー2や外部情報サーバーからダウンロードしたデータが保存され、オフライン状態でも情報の利用が可能となっている。
【0050】
位置情報取得部57は、撮影時における自機の位置や向いている方角を示す位置情報や方位情報を取得し、ユーザーU1,U2の現在位置情報として記録するモジュールであり、例えば、GPSのように、衛星からの信号によって自機の位置を検出したり、携帯電話の無線基地局からの電波強度などによって位置を検出したり、磁気センサーや、ジャイロセンサー、加速度センサー等により磁気の方向及び姿勢(本体が立てられているか、水平に寝かされているか等)によって、自機が向いている方向を検出する。
【0051】
CPU56は、演算処理装置であり、本発明に係る中古資産管理プログラムの他、一般のOSやブラウザソフト、その他のアプリケーションを実行するモジュールである。このCPU56にはアプリケーション実行部561が備えられる。このアプリケーション実行部561は、本発明の中古資産管理プログラムを実行することによって、中古資産管理システムの各機能モジュールがCPU56上に仮想的に構築される。この中古資産管理プログラムは、中古資産管理処理や、それに必要なデータをダウンロードする機能をユーザー端末(スマートフォン)5に実装させるプログラムであり、中古資産管理システムを動作させるのに必要なユーザー操作を受け付けたり、評価結果を、出力インターフェース53を通じて出力する。
【0052】
本実施形態では、このCPU56のアプリケーション実行部561により、中古資産管理プログラムを実行することによって、汎用的なスマートフォンであるユーザー端末(スマートフォン)5を中古資産管理システムの操作・出力手段として機能させる。なお、ここで「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。具体的には、
図3に示すように、アプリケーション実行部561には、中古資産管理プログラムを実行することによって、CPU56上に、認証部565と、評価部562と、情報取得部564と、表示情報生成部563とが仮想的に構築される。
【0053】
認証部565は、情報管理サーバー2にアクセスして中古資産管理サービスを受ける際、通信インターフェース51を通じて、情報管理サーバー2と通信セッションを確立させ、その確立された通信セッション毎に認証処理を行うモジュールである。この認証処理としては、情報管理サーバー2側に利用者のユーザー端末(スマートフォン)5から認証情報を送信し、情報管理サーバー2の認証部22aにおいてユーザーデータベース266を参照して利用者等を特定させ、アクセスの権限を取得する。この認証部565による認証結果(ユーザーID、認証時刻、セッションID等)は、ユーザー管理部22gその他の各モジュールに送出されるとともに、ユーザーデータベース266に認証履歴として蓄積される。
【0054】
情報取得部564は、中古資産管理に関する各種情報を取得するモジュールであって、本実施形態では、情報管理サーバー2の種データベースに蓄積された各種不動産情報やインターネット上の各種データを取得する。この情報取得部564において取得される情報としては、具体的に本実施形態に係る情報取得部564には、撮像データ取得部564aと、設定情報取得部564bと、地図情報取得部564cと、ユーザー操作取得部564dと、データベース検索部564eとが備えられている。
【0055】
撮像データ取得部564aは、撮影部54で撮影された静止画や動画を取得するモジュールであり、撮影された画像については、撮影日時や緯度・経度等の位置情報が付与され、或いは紐付けられて記録されている。撮影された画像ファイルは、記憶装置55に蓄積され、評価処理に際し必要に応じて各モジュールに読み出される。
【0056】
設定情報取得部564bは、中古資産管理における評価処理に関する設定を取得するモジュールであり、この設定値は入力インターフェース52のタッチパネル等を通じて入力されたり、音声等により入力することができる。この設定情報取得部564bで取得された設定値は記憶装置55に保存され、各モジュールで適宜呼び出されて用いられる。
【0057】
地図情報取得部564cは、記憶装置55に記憶された地図情報や、情報管理サーバー2や地図提供サービスを行っている外部情報サーバー当に蓄積された地図情報をデータベース検索部564e又は通信インターフェース51を通じて取得するモジュールである。この地図情報取得部564cで取得された地図情報は、評価部562、表示情報生成部563に受け渡され各々のモジュールでの処理で用いられる。
【0058】
ユーザー操作取得部564dは、入力インターフェース52を通じてユーザーによる操作信号を取得するモジュールであり、タッチパネル531に表示されたGUIを通じて入力されるユーザーによる単一又は複数のタッチ位置の座標や移動方向、移動速度を検知したり、音声による文字入力やコマンドの入力を受け付けたり、端末本体を振ったり、方向を変えたり等の各種センサーを通じてのコマンドの入力を受け付けたりする。このユーザー操作取得部564dによって取得された操作信号は、評価部562や表示情報生成部563に受け渡され、各モジュールでの処理で用いられる。
【0059】
データベース検索部564eは、記憶装置55に記憶された各種不動産情報や、情報管理サーバー2や外部情報サーバーに蓄積された不動産に関する情報を、通信インターフェース51を通じて検索して抽出して取得するモジュールである。このデータベース検索部564eで取得された各種情報は、評価部562に受け渡されて中古資産管理に関する評価処理などに用いられる。
【0060】
評価部562は、評価対象である中古資産の価値を算定するモジュールであり、具体的には、税負担軽減額算出部562aと、収入予測額算出部562bと、耐用年数算出部562cと、減価償却算出部562dとが仮想的に構築される。
【0061】
耐用年数算出部562cは、中古資産の耐用年数を算出するモジュールである。本実施形態では、記憶装置55或いは情報管理サーバー2側の中古資産データベース264に記憶保持された、建築種別毎に設定された法定耐用年数を用いて、この設定された法定耐用年数を参照して耐用年数を算出する。
【0062】
減価償却算出部562dは、耐用年数算出部562cが算出した耐用年数に基づいて中古資産に関する年間減価償却費を算出するモジュールである。具体的に減価償却算出部562dは、評価対象となる中古資産に含まれる土地に係る価額を算定し、中古資産全体の価額から土地にかかる価額を差し引くことによって年間減価償却費を算出する。このとき、減価償却算出部562dは、中古資産に含まれる建物及び土地の価額の比率に基づいて土地に係る価額を算定する。
【0063】
税負担軽減額算出部562aは、減価償却算出部562dが算出した年間減価償却費を用いて、減価償却により減額される当該中古資産に関する納税額(税負担軽減額)を算出するモジュールである。
【0064】
収入予測額算出部562bは、中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測額を、記憶装置55若しくは運用データベース265の賃貸需要データを参照しつつ算出するモジュールである。また、収入予測額算出部562bは、運用データベース265の売却実績データを参照しつつ、売却収入予測額を算出する機能も有している。
【0065】
なお、この評価処理に際し評価部562は、情報取得部564が取得した評価対象の位置情報や方位等に基づき、データベース検索部564eを通じて情報管理サーバー2のデータベースを参照し、参照された不動産情報に基づいて当該評価対象の価値を算定する。この不動産情報には、例えば、土地の価格や、建物の分譲・賃貸の価格などの他、評価対象が属する地域に関連づけられた不動産価値情報や、その地域の法規や、周辺の地理的条件等が含まれており、評価部562では、これらの不動産情報を用いて、当該評価対象の価値を算定することができる。また、評価部562の収入予測額算出部562bによる収入予測額の算定では、例えば、その中古資産の運用をシミュレーションし、都市計画等の外部情報を参照して建物の部屋構成等から賃貸想定収入などを計算し、土地の価格を計算する。
【0066】
前記表示情報生成部563は、各モジュールで算出されたデータに基づいて、二次元的・3次元的なグラフィックを生成し、ディスレプレイ等の出力インターフェース13から出力するモジュールである。
【0067】
(中古資産管理方法の手順)
以上の機能を有する中古資産管理プログラム、及びそのプログラムを実行させることにより構築された中古資産管理システムを動作させることで、本発明の中古資産管理方法を実施することができる。
図4は、本実施形態に係る中古資産管理システムの動作を示すフローチャート図である。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0068】
先ず、ユーザー端末(PC)4のブラウザソフトを通じて情報管理サーバー2へアクセスするか、若しくは中古資産管理プログラムであるアプリケーションを起動させる(S101)。これらの情報管理サーバー2へのアクセス、若しくはアプリケーションの起動により、認証処理が実行され(S102)、ユーザーの認証が成功しユーザーが特定される。この後、ユーザー側において情報管理サーバー2から配信されている情報の受信が実行され、ユーザー端末内のデータが更新される。なお、このデータの更新は、オンライン時に必要に応じて実行されればよく、適宜省略することができる。
【0069】
そして、ユーザーU1又はU2が評価対象である中古資産Es1に関し、所定の物件情報を入力する(S103)。なお、このとき現在位置が取得できる場合には、その現在位置に応じた物件情報を自動的に検索して、検索された情報を自動入力するなど、ユーザーの操作を支援するようにしてもよい。この入力された物件情報を修正したい場合には(S104における「Y」)には、タッチパネル531上のGUIを介して修正操作を行うことができる(S105)。ステップS104において物件情報の修正が不要なとき(S104における「N」)、或いは修正操作が完了したときには、次いで法定耐用年数を参照する(S106)。
【0070】
次いで、耐用年数算出する(S107)。具体的には、情報管理サーバー2の耐用年数算出部22d若しくはユーザー端末4,5側の耐用年数算出部562cにおいて、記憶装置55或いは情報管理サーバー2側の中古資産データベース264に記憶保持された、建築種別毎に設定された法定耐用年数を用いて、この設定された法定耐用年数を参照して耐用年数を算出する。
【0071】
詳述すると、記憶装置55或いは情報管理サーバー2側の中古資産データベース264には、下表に示すような、建築種別の法定耐用年数が記憶保持されている。
【表1】
【0072】
耐用年数算出部22d又は耐用年数算出部562cは、この表1に示したような法定耐用年数を参照し、該当する法定耐用年数に所定の定数、ここでは20%をかけて耐用年数を算出する。例えば、
図5に示すような築25年の中古資産Es1の場合は、上表によれば木造住宅H1の法定耐用年数は22年であり、その法定耐用年数を超過していることから、その耐用年数は法定耐用年数22年の20%の4.4年となり、小数点以下を切り捨てれば4年となる。
【0073】
そして、減価償却費を算出する(S108)。具体的には、情報管理サーバー2の減価償却算出部22e若しくはユーザー端末5側の減価償却算出部562dにおいて、評価対象となる中古資産に含まれる土地に係る価額を算定し、中古資産全体の価額から土地にかかる価額を差し引くことによって年間減価償却費を算出する。このとき、減価償却算出部22e又は減価償却算出部562dは、中古資産に含まれる建物及び土地の価額の比率に基づいて土地に係る価額を算定する。
【0074】
図5に例示した中古資産Es1を購入する場合では、土地G1と建物H1との合計が6,000万円であるとき、中古資産Es1に含まれる建物H1及び土地G1の価額の比率を60%:40%と設定しておき、これに基づいて、土地G1の価額を2,400万円と算定する。次いで、中古資産Es1全体の価額(6,000万円)から土地G1にかかる価額を差し引くことによって建物H1の価額を3,600万円として算定する。上述したようにこの建物H1の耐用年数は4年と算定されていることから、年間減価償却費は、
3,600万円÷4年=900万円
となる。
【0075】
さらに、税負担軽減額を算出する(S109)。具体的には、情報管理サーバー2の税負担軽減算出部22b、或いはユーザー端末5側の税負担軽減額算出部562aが、減価償却算出部562dが算出した年間減価償却費を用いて、減価償却により減額される当該中古資産に関する納税額(税負担軽減額)を算出する。
【0076】
詳述すると、
図6に示すように、ユーザーU1等の所得について、累進課税に応じた税率を参照して課税所得に対する所得税及び住民税を算出する。そして、上述した年間減価償却費に基づいて、税負担軽減額を算出する。上述の例では、
図7に示すように、建物3,600万円のうち毎年減価償却費900万円を支出として計上できることから、例えば、ユーザーU1の所得税・住民税の合計が最高税率の約55%であるときには、その900万円に対する税率55%分の495万円分が課税対象から除かれることとなる。
【0077】
このため、耐用年数の4年間に上記中古資産Es1を保有した場合には、その4年間で合計節税額が1,980万円となる。なお、この場合、長期譲渡所得税が税率20%で課せられることから、実質的な節税差額効果は1,360万円となる。
【0078】
その後、運用又は資産売却による収入についての予測額を算出する(S110)。具体的には、情報管理サーバー2側の収入予測額算出部22c又はユーザー端末5側の収入予測額算出部562bが、中古資産を賃貸物件として運用した場合の収入予測各を、運用データベース265の賃貸需要データ、又はユーザー端末5の記憶装置55を参照しつつ算出する。このとき、収入予測額算出部22c又は収入予測額算出部562bは、運用データベース265の売却実績データを参照しつつ、売却収入予測額も算出することができる。例えば、その中古資産が属する地域における同格物件の賃貸実績や売却実績を検索して、当該中古資産の賃貸価格や、売却価格を予測して算出する。
【0079】
なお、この評価処理に際し評価部562は、地図情報取得部564cが取得した評価対象の位置情報や方位等に基づき、データベース検索部564eを通じて情報管理サーバー2のデータベースを参照し、参照された不動産情報に基づいて当該評価対象の価値を算定する。この不動産情報には、例えば、土地の価格や、建物の分譲・賃貸の価格などの他、評価対象が属する地域に関連づけられた不動産価値情報や、その地域の法規や、周辺の地理的条件等が含まれており、評価部562では、これらの不動産情報を用いて、当該評価対象の価値を算定することができる。また、評価部562の収入予測額算出部562bによる収入予測額の算定では、例えば、その中古資産の運用をシミュレーションし、都市計画等の外部情報を参照して建物の部屋構成等から賃貸想定収入などを計算し、土地の価格を計算する。
【0080】
なお、条件を変更して再度評価をやり直したいときは(ステップS111における「Y」)、物件情報の入力や種々の条件の設定をやり直して(S103)、上記ステップS106~S110の処理を実行する。他方、評価処理を終了するときには(ステップS111における「N」)、評価結果を出力若しくは記録した後(S112)、処理を終了する。この評価処理結果の出力では、表示情報生成部563が、各モジュールで算出されたデータに基づいて二次元的・3次元的なグラフィックを生成して、ディスレプレイ等の出力インターフェース13から出力する。
【0081】
この評価処理の結果としては、
図8に示すように、例えば、年収2,000万円のユーザーが上述した中古資産Es1を6,000万円で購入した場合と言うように、具体的な条件を設定した収支シミュレーションを時系列に従ってイメージとして表示する。ここでは、表面利回りを8%とし、借入額を6000万円とし、その際の借入金利は3.0%としている。そして、この条件を前提として収支シミュレーションを実行し、4年間運用した後5年目に売却したケースにおける各年の収支を時系列で表示する。
図8に示した例では、5年目に当該物件が6,160万円で売却され、その年度の家賃収入のほか、売却コストや借入金元本の返済、借入利息等を勘案している。
【0082】
(中古資産管理プログラム)
なお、上述したように、本実施形態係る中古資産管理システム及び中古資産管理方法は、所定の言語で記述された中古資産管理プログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。そして、このような中古資産管理プログラムは、ユーザー端末4,5や汎用コンピューターにインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有する中古資産管理システムを容易に構築することができる。この中古資産管理プログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またスタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。
【0083】
また、このような中古資産管理プログラムは、パーソナルコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録することができる。具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、この中古資産管理プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステムや方法を実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【0084】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、中古資産の耐用年数を算出し、その耐用年数に基づいた年間減価償却費を用いて中古資産に関する税負担軽減額を算出するため、不動産取引において中古資産の取引価額を算定する際の基準を明確にして、中古資産の取引を租税回避目的に合致させることができる。
【0085】
なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0086】
G1…土地
H1…建物
U1,U2…ユーザー
1…中古資産管理システム
2…情報管理サーバー
3…インターネット
4…ユーザー端末(PC)
5…ユーザー端末(スマートフォン)
21…入出力インターフェース
22…制御部
22a…認証部
22b…税負担軽減算出部
22c…収入予測額算出部
22d…耐用年数算出部
22e…減価償却算出部
22f…データ管理部
22g…ユーザー管理部
22h…表示情報生成部
22i…情報データ収集部
23…通信インターフェース
51…通信インターフェース
52…入力インターフェース
53…出力インターフェース
54…撮影部
55…記憶装置
56…CPU
57…位置情報取得部
264…中古資産データベース
265…運用データベース
266…ユーザーデータベース
531…タッチパネル
561…アプリケーション実行部
562…評価部
562a…税負担軽減額算出部
562b…収入予測額算出部
562c…耐用年数算出部
562d…減価償却算出部
563…表示情報生成部
564…情報取得部
564a…撮像データ取得部
564b…設定情報取得部
564c…地図情報取得部
564d…ユーザー操作取得部
564e…データベース検索部
565…認証部