(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】交流電力切替方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20241112BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241112BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241112BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241112BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 130
H02J3/32
H02M7/48 R
H02M7/48 E
H02P9/04 P
(21)【出願番号】P 2020126858
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-09-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年4月10日 ウェブサイト(http://www.tama-den.co.jp/)での公開
(73)【特許権者】
【識別番号】594165125
【氏名又は名称】タマデン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108958
【氏名又は名称】須田 英一
(72)【発明者】
【氏名】武下 博彦
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122243(WO,A1)
【文献】特開2016-127777(JP,A)
【文献】特開平05-336683(JP,A)
【文献】特開昭62-268366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0214827(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 3/38
H02J 3/32
H02M 7/48
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力及び直流電力を相互変換する交流/直流変換部及び直流/交流変換部を備えるとともに、両変換部の直流側同士が相互接続されることにより、前記交流/直流変換部がその交流側から入力された交流電力を中間直流電力に変換して直流側に出力し、前記直流/交流変換部がその直流側から入力された前記中間直流電力を交流電力に変換して交流側に出力するように構成されている汎用インバーターを用いて構成され、交流電力発電機又は/及び直流電力発電機が接続されることによりそれらが出力する電力を混合するように構成されているハイブリッド電力混合装置
と、該装置に接続された交流電力発電機又は/及び直流電力発電機とを含むハイブリッド発電装置の出力交流電力と、
既設の交流電力供給システムの出力交流電力と
を切り替える交流電力切替方法であって、
前記ハイブリッド電力混合装置は、
少なくとも1台の前記汎用インバーターと、
すべての前記汎用インバーターにおける前記相互接続部分に接続され、前記中間直流電力を充放電可能に構成されている中間直流電力充放電部と
、
ハイブリッド電力混合装置及び既設の交流電力供給システムそれぞれの出力電圧、出力周波数及び位相を検知する第一及び第二の電圧・周波数センサーと、
前記ハイブリッド電力混合装置の出力電力、及び、前記既設の交流電力供給システムの出力電圧を切り替える電力切替部と、
すべての前記汎用インバーター、中間直流電力充放電部、第一及び第二の電圧・周波数センサー並びに電力切替部を制御するとともに、本装置に接続される前記発電機を制御可能に構成された制御部とを備え、
前記汎用インバーターにおけるいずれかの前記直流/交流変換部を、前記中間直流電力を出力交流電力に変換して出力する交流電力出力変換部として用い、
交流電力発電機の交流電力を入力するときは、該交流電力発電機の出力側を前記汎用インバーターにおける前記交流電力出力変換部として使用していない前記直流/交流変換部又は交流/直流変換部の交流側に接続し、
直流電力発電機の直流電力を入力するときは、該直流電力発電機の出力側を前記相互接続部分に接続するように構成されて
おり、
前記ハイブリッド発電装置における前記交流電力出力変換部としての前記直流/交流変換部は、出力周波数の変化に対する出力電圧の変化特性のパターンと、出力電圧値と、出力周波数値とが設定可能に構成されており、
前記ハイブリッド発電装置及び前記既設の交流電力供給システムが作動中であり、且つ、該両者のいずれか一方の出力交流電力が負荷に接続されている状態で、該両者の出力電圧値をそれぞれ前記第一及び第二の電圧・周波数センサーにより入力する段階と、
前記既設の交流電力供給システムの出力周波数が少なくとも正常作動時に変動し得る範囲内において、該交流電力供給システムの出力電圧と略同一の出力電圧を維持するように、前記交流電力出力変換部の前記パターンを設定する段階と、
前記交流電力出力変換部の出力電圧を前記既設の交流電力供給システムの出力電圧に一致させるように設定する段階と、
前記両者の出力周波数をそれぞれ前記第一及び第二の電圧・周波数センサーにより入力する段階と、
前記交流電力出力変換部の出力周波数を前記既設の交流電力供給システムの出力周波数に一致させるように設定する段階と、
前記両者の位相をそれぞれ入力する段階と、
前記両者の位相が略一致するまで待つ段階と、
前記交流電力出力変換部又は前記既設の交流電力供給システムのいずれか負荷に接続されていない方の出力交流電力も前記電力切替部により負荷に接続する段階と、
前記一方の出力交流電力を前記電力切替部により負荷から切り離す段階と
を含んでおり、前記すべての段階の動作の主体が前記制御部である交流電力切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力発電機又は/及び直流電力発電機を接続することによりそれらが出力する電力を、汎用インバーターを用いて混合する、マイクログリッド向けのハイブリッド電力混合装置と、該装置に接続された交流電力発電機又は/及び直流電力発電機とを含むハイブリッド発電装置の出力交流電力と既設の交流電力供給システムの出力交流電力とを切り替える交流電力切替方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球上の離島や遠隔地など、ナショナルグリッドによる電化が困難な地域では、
図6(a)のように500kW以下の小規模単位で可搬式ディーゼル発電機700を使った簡便な電化が安易に行われている。この可搬式ディーゼル発電機700では燃料費やメンテナンス費がかさみ、50円~100円/kWと高額な電気料金となり、特に途上国では維持が困難となっている。
【0003】
この簡便な電力インフラに対して、日本などの支援による再生可能エネルギーの導入を行うと、
図6(b)のようにソーラーパネル701や風力発電機703を、それぞれパワーコンディショナー702、704を使い、可搬式ディーゼル発電機700のマイクログリッドに直結する。これは日本国内で大きな電力会社の強力な系統に対して行う、通常の再生可能エネルギーの導入方法であり、単独のディーゼル発電機で運用しているマイクログリッドでは、刻々と変化する再生可能エネルギーの発電量を調整しきれず、電力オーバーとなり、やむを得ず再生可能エネルギー側を切り離す結果となる。
【0004】
この電力過多の問題に対して、
図6(c)のように高価なEMS(エネルギー管理システム)機能付きの充放電インバーター706とバッテリー705を追加し、再生可能エネルギーのピークカット・ピークシフトなどを行うようにしている(非特許文献1参照)。それにより、再生可能エネルギーの比率を若干向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】小島武彦ほか:離島向けマイクログリッドシステム、富士技報 Vol.84、No.3、2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、
図6(c)に示す従来方式では、自然エネルギーのミックスについてはパワーコンディショナー702、704による交流側で行うとともに、バッテリー705による自然エネルギーのピークカット・ピークシフトなどについても充放電インバーター706による交流側で行っている。このように交流側でエネルギーのミックスなどを行うためには、交流の電圧、周波数及び位相を互いに整合させるように構成する必要があり、コストが掛かるという課題がある。
【0007】
また、前記従来方式では、自然エネルギーが十分あり、余剰電力状態であっても、ディーゼル発電機700は軽負荷運転にならない程度に運転し続けなければならないので、自然エネルギー100%運転は不可能である。このようにディーゼル発電機700は停止できないので、省エネ効果は限られるし、ディーゼル発電機700の高価な燃料費やメンテナンス費が削減できないとともにその寿命を延ばすことができないという課題がある。
【0008】
さらに、前記従来方式では、発電エネルギー量の調整は主発電装置としてのディ-ゼル発電機700で行っているため、現地の電力事情に合わせた効率の良い運転パターンを柔軟に策定できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の交流電力切替方法は、
交流電力及び直流電力を相互変換する交流/直流変換部及び直流/交流変換部を備えるとともに、両変換部の直流側同士が相互接続されることにより、前記交流/直流変換部がその交流側から入力された交流電力を中間直流電力に変換して直流側に出力し、前記直流/交流変換部がその直流側から入力された前記中間直流電力を交流電力に変換して交流側に出力するように構成されている汎用インバーターを用いて構成され、交流電力発電機又は/及び直流電力発電機が接続されることによりそれらが出力する電力を混合するように構成されているハイブリッド電力混合装置と、該装置に接続された交流電力発電機又は/及び直流電力発電機とを含むハイブリッド発電装置の出力交流電力と、
既設の交流電力供給システムの出力交流電力と
を切り替える交流電力切替方法であって、
前記ハイブリッド電力混合装置は、
少なくとも1台の前記汎用インバーターと、
すべての前記汎用インバーターにおける前記相互接続部分に接続され、前記中間直流電力を充放電可能に構成されている中間直流電力充放電部と、
ハイブリッド電力混合装置及び既設の交流電力供給システムそれぞれの出力電圧、出力周波数及び位相を検知する第一及び第二の電圧・周波数センサーと、
前記ハイブリッド電力混合装置の出力電力、及び、前記既設の交流電力供給システムの出力電圧を切り替える電力切替部と、
すべての前記汎用インバーター、中間直流電力充放電部、第一及び第二の電圧・周波数センサー並びに電力切替部を制御するとともに、本装置に接続される前記発電機を制御可能に構成された制御部とを備え、
前記汎用インバーターにおけるいずれかの前記直流/交流変換部を、前記中間直流電力を出力交流電力に変換して出力する交流電力出力変換部として用い、
交流電力発電機の交流電力を入力するときは、該交流電力発電機の出力側を前記汎用インバーターにおける前記交流電力出力変換部として使用していない前記直流/交流変換部又は交流/直流変換部の交流側に接続し、
直流電力発電機の直流電力を入力するときは、該直流電力発電機の出力側を前記相互接続部分に接続するように構成されており、
前記ハイブリッド発電装置における前記交流電力出力変換部としての前記直流/交流変換部は、出力周波数の変化に対する出力電圧の変化特性のパターンと、出力電圧値と、出力周波数値とが設定可能に構成されており、
前記ハイブリッド発電装置及び前記既設の交流電力供給システムが作動中であり、且つ、該両者のいずれか一方の出力交流電力が負荷に接続されている状態で、該両者の出力電圧値をそれぞれ前記第一及び第二の電圧・周波数センサーにより入力する段階と、
前記既設の交流電力供給システムの出力周波数が少なくとも正常作動時に変動し得る範囲内において、該交流電力供給システムの出力電圧と略同一の出力電圧を維持するように、前記交流電力出力変換部の前記パターンを設定する段階と、
前記交流電力出力変換部の出力電圧を前記既設の交流電力供給システムの出力電圧に一致させるように設定する段階と、
前記両者の出力周波数をそれぞれ前記第一及び第二の電圧・周波数センサーにより入力する段階と、
前記交流電力出力変換部の出力周波数を前記既設の交流電力供給システムの出力周波数に一致させるように設定する段階と、
前記両者の位相をそれぞれ入力する段階と、
前記両者の位相が略一致するまで待つ段階と、
前記交流電力出力変換部又は前記既設の交流電力供給システムのいずれか負荷に接続されていない方の出力交流電力も前記電力切替部により負荷に接続する段階と、
前記一方の出力交流電力を前記電力切替部により負荷から切り離す段階と
を含んでおり、前記すべての段階の動作の主体が前記制御部である。
【0010】
前記ハイブリッド電力混合装置の構成によれば、前記直流/交流変換部又は交流/直流変換部を介して接続される前記交流電力発電機とともに、前記汎用インバーターの前記中間直流電力部分へ並列接続される前記中間直流電力充放電部(例えば、バッテリー)や前記直流電力発電機(例えば、ソーラーパネル)によってエネルギーミックスを行うことができ、これらの電力を一括制御することができる。このように、本発明によれば、前記汎用インバーターの中間直流電力部分へ再生可能エネルギーなど複数のエネルギー源を接続することで、日本国が提唱するハイブリッドアイランド構想で課題となっているエネルギーミックスが乾電池の並列接続のように安価で容易に行うことができる。
【0014】
「前記交流電力出力変換部の出力電圧を前記既設の交流電力供給システムの出力電圧に一致させるように設定する段階」としては、前記ハイブリッド発電装置の出力電圧と、前記既設の交流電力供給システムの出力電圧との違いが、両者による同期運転可能な所定の許容範囲を超過しているときのみ実施されるようにしてもよい。
【0015】
「前記交流電力出力変換部の出力周波数を前記既設の交流電力供給システムの出力周波数に一致させるように設定する段階」としては、前記ハイブリッド発電装置の出力周波数と、前記既設の交流電力供給システムの出力周波数との違いが、両者による同期運転可能な所定の許容範囲を超過しているときのみ実施されるようにしてもよい。
【0016】
前記位相に関して「略一致」とは、前記ハイブリッド発電装置の出力の位相と、前記既設の交流電力供給システムの出力の位相との違いが、両者による同期運転が可能な所定の許容範囲内にあることをいう。
【0017】
出力電圧、出力周波数及び位相に関する前記「所定の許容範囲」は、負荷の要求仕様、既設の交流電力供給システムの性能や仕様等に応じて適宜設定されるものである。
【0018】
本発明の交流電力切替方法によれば、前記ハイブリッド発電装置と前記既設の交流電力供給システムの同期並列運転を行い、無停電で両者の出力切り替えを行うことができ、負荷としてのマイクログリッドへ安定電力供給を行うことができる。特に、前記既設の交流電力供給システムとしての可搬式の小型ディーゼル発電機は外部からガバナとAVR(自動電圧調整)制御ができないものが多いが、そのような場合でも、本発明によれば、前記同期並列運転時は前記ハイブリッド発電装置側で周波数、電圧及び位相を調整し、同期投入するように構成されているので、前記同期並列運転及び前記出力切り替えを支障なく行うことができる。この出力切替により、前記ハイブリッド発電装置に接続されている再生可能エネルギー又は前記中間直流電力充放電部の充電量が十分あるときは、前記既設の交流電力供給システムとしてのディーゼル発電機を軽負荷運転させることなく、完全に停止させることが可能となる。これにより燃料費の削減とディーゼルエンジンのメンテナンス費が削減できるとともに、ディーゼル発電機の寿命も伸びる。そして、ディーゼル発電機の運転時間をできるだけ短くし、特に軽負荷運転をさせないような現地の電力事情に合わせた最も効率のよい運転パターンが策定できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る交流電力切替方法によれば、ハイブリッド発電装置と既設の交流電力供給システムの出力切替を無停電で行うことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を具体化した一実施形態に係るハイブリッド電力混合装置、それを用いて構成されたハイブリッド発電装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】同ハイブリッド電力混合装置で使用している汎用インバーターの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】同汎用インバーターで設定する出力周波数の変化に対する出力電圧の変化特性のパターンを示すグラフである。
【
図4】同ハイブリッド電力混合装置の制御部で実行される同期投入制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】同ハイブリッド電力混合装置の制御部で実行される遮断機制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】従来のマイクログリッド向けの交流電力供給システムの構成事例(3態様)を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~
図5は本発明を具体化した一実施形態のマイクログリッド向けに構成されたハイブリッド電力混合装置2、それを用いて構成されたハイブリッド発電装置1及びその交流電力切替方法を示している。
【0022】
ハイブリッド電力混合装置2は、
図1に示すように、汎用インバーター10を用いて構成され、交流電力発電機又は/及び直流電力発電機が接続されることによりそれらが出力する電力を混合するように構成されている。そして、本例のハイブリッド電力混合装置2は、3台の汎用インバーター10A、10B、10Cと、中間直流電力充放電部11と、フィルター12と、電圧・周波数センサー25A、25Bと、電力切替部13と、これらの構成要素を制御するとともに、本装置に接続される前記発電機を制御可能に構成された制御部15とを備えている。
【0023】
汎用インバーター10は、
図2に示すように、交流電力及び直流電力を相互変換する交流/直流変換部21及び直流/交流変換部22を備えるとともに、両変換部の直流側同士が相互接続されることにより、交流/直流変換部21がその交流側から入力された交流電力を中間直流電力に変換して直流側に出力し、直流/交流変換部22がその直流側から入力された前記中間直流電力を交流電力に変換して交流側に出力するように構成されている。さらに、直流/交流変換部22には、電圧・周波数制御部24が接続されており、該電圧・周波数制御部24に対する制御指令を入力することにより、出力周波数の変化に対する出力電圧の変化特性のパターン(以下「Vfパターン」という。)と、出力電圧値と、出力周波数値とが設定可能に構成されている。汎用インバーター10では、Vfパターンの設定として、出力周波数と出力電圧との組み合わせが少なくとも2つ設定可能になっているものとし、本例では、ベース周波数f0と該ベース周波数f0における出力電圧であるベース電圧V0の組み合わせと、最高周波数fmaxと該最高周波数fmaxにおける出力電圧である最高電圧Vmaxの組み合わせとが少なくとも設定可能になっているものとする。そして、本例では、後述する交流電力切替方法において、
図3に示すように、ベース電圧V0と最高電圧Vmaxを一致させることにより、ベース周波数f0から最高周波数fmaxまでの間で出力電圧が一定になるように設定して使用する。具体的には、ベース電圧V0及び最高電圧Vmaxとしては、いずれも動作中の既設のディーゼル発電機3の出力電圧と略同一の出力電圧に設定し、ベース周波数f0及び最高周波数fmaxとしては、既設のディーゼル発電機3の出力周波数が少なくとも正常作動時に変動し得る範囲の下限値及び上限値にそれぞれ設定することを例示する。なお、この種の汎用インバーター10としては、株式会社安川電機製A1000シリーズのインバーターを例示する。
【0024】
ハイブリッド電力混合装置2では、すべての汎用インバーター10A~10Cにおける前記相互接続部分としての中間直流電力部分23を互いに接続するとともに、汎用インバーター10Cの直流/交流変換部22を、前記中間直流電力を出力交流電力に変換して出力する交流電力出力変換部として用いる。そして、このハイブリッド電力混合装置2に交流電力発電機(例えば、水力発電機7、風力発電機8)の交流電力を入力するときは、該交流電力発電機の出力側を前記汎用インバーターにおける前記交流電力出力変換部として使用していない直流/交流変換部22又は交流/直流変換部21の交流側に接続し、直流電力発電機(例えば、ソーラーパネル6)の直流電力を入力するときは、該直流電力発電機の出力側を前記相互接続部分としての中間直流電力部分23に接続(必要に応じて直流/直流変換部を介して接続)するように構成されている。
【0025】
中間直流電力充放電部11は、すべての汎用インバーター10A~10Cにおける前記相互接続部分としての中間直流電力部分23に接続され、前記中間直流電力を充放電可能なバッテリー11aを備えている。
【0026】
フィルター12は、前記交流電力出力変換部としての直流/交流変換部22の出力交流からキャリア周波数を取り除くように構成されている。
【0027】
電圧・周波数センサー25A及び25Bは、それぞれハイブリッド電力混合装置2及び既設の交流電力供給システムとしての既設のディーゼル発電機3の出力電圧、出力周波数及び位相を検知するように構成されている。
【0028】
電力切替部13は、ハイブリッド電力混合装置2の出力電力と、既設の交流電力供給システムとしての既設のディーゼル発電機3の出力電圧とを切り替えるための遮断機13a、13bを備えている。遮断機13a、13bとしては電磁接触器を用いることを例示する。
【0029】
制御部15は、ハイブリッド電力混合装置2に接続された交流電力発電機又は/及び直流電力発電機が出力する電力を中間直流電力として混合したり、中間直流電力を適宜充放電したり、本発明の交流電力切替方法(後述)を実施することにより、ハイブリッド電力混合装置2の出力電力と、既設の交流電力供給システムとしての既設のディーゼル発電機3の出力電圧とを切り替えたりしてハイブリッド電力混合装置2の構成要素や前記交流電力発電機又は/及び直流電力発電機を制御するようになっている。
【0030】
ハイブリッド発電装置1は、ハイブリッド電力混合装置2と、該装置に接続された交流電力発電機又は/及び直流電力発電機(本例では、水力発電機7、風力発電機8、ソーラーパネル6)を含んでいる。
【0031】
本例のハイブリッド発電装置1は、
図1のように、複数の汎用インバーター10A~10Cの中間直流電力部分23と、中間直流電力充放電部11やソーラーパネル6などとを、乾電池が並列接続されるように並列に接続することで、エネルギーミックスを行うことができ、発電した電気エネルギーは中間直流電力充放電部11に貯まるように構成されている。風車または水車など再生可能エネルギーの動力源が接続されたモーター(7、8)に対してインバーター10A、10Bの直流/交流変換部22から現在動力源から回されている回転数よりも低い回転とブレーキトルクを与えることで任意の発電制御を行う。
【0032】
なお、既存の電力会社の事情等で、既設の交流電力供給システムとしての既設のディーゼル発電機3との並列運転ができない場合は、
図1に二点鎖線で示すように、変圧器5Aを介してディーゼル発電機4A(又は変圧器5Bを介してディーゼル発電機4B)の接続も可能である。この場合、ディーゼル発電機4A(又は/及び4B)の出力はインバーター10の整流負荷への接続となるので、負担を軽減させるために本例では12パルス整流を行っている。
【0033】
次に、このハイブリッド発電装置1で実施する交流電力切替方法について、
図4及び5のフローチャートを参照しながら説明する。交流電力切替方法を実施するときは、ハイブリッド発電装置1又は既設のディーゼル発電機3のいずれか一方の発電機が負荷に接続された状態で作動しており、他方の発電機が負荷から切り離された状態であるが切り替えに備えて作動しているものとする。本例では、制御部15が同期投入制御処理S100に続けて遮断機制御処理S200を実行することにより、交流電力切替方法を実施するようになっている。
【0034】
同期投入制御処理S100では、
図4に示すように、まず、センサー25A、25Bを介して前記両発電装置の出力電圧値をそれぞれ入力する(ステップS101)。次いで、既設のディーゼル発電機3の出力周波数が少なくとも正常作動時に変動し得る範囲内において、該ディーゼル発電機3の出力電圧と同一の出力電圧を維持するように、電圧・周波数制御部24を介して前記交流電力出力変換部としての直流/交流変換部22のVfパターンを設定する(Vfパターンベース電圧V0及び最高電圧Vmaxとしては、いずれも動作中の既設のディーゼル発電機3の出力電圧と同一の出力電圧に設定し、ベース周波数f0及び最高周波数fmaxとしては、既設のディーゼル発電機3の出力周波数が少なくとも正常作動時に変動し得る範囲の下限値及び上限値にそれぞれ設定する。
図3参照)(ステップS102)。次いで、前記両発電装置の出力電圧の差の絶対値が所定電圧値(例えば、電圧差2%)超過(即ち、両発電装置の出力電圧値の違いが両発電装置による同期運転可能な許容範囲を超過)の場合(ステップS103)に、前記交流電力出力変換部の出力電圧を既設のディーゼル発電機3の出力電圧に一致させるように、電圧・周波数制御部24を介して設定する(ステップS104)。次いで、センサー25A、25Bを介して前記両発電機の出力周波数をそれぞれ入力する(ステップS105)。次いで、前記両発電機の出力周波数の差の絶対値が所定周波数値(例えば、周波数差0.1Hz)超過(即ち、両発電装置の出力周波数値の違いが両発電装置による同期運転可能な許容範囲を超過)の場合(ステップS106)に、前記交流電力出力変換部の出力周波数を既設のディーゼル発電機3の出力周波数に一致させるように設定する(ステップS107)。次いで、センサー25A、25Bを介して前記両発電機の位相をそれぞれ入力する(ステップS108)。次いで、前記両発電機の位相の差の絶対値が所定位相値(5%)超過(即ち、両発電装置の位相の違いが両発電装置による同期運転可能な許容範囲を超過)の場合に、該位相の差が所定位相値未満になるまで待つ(ステップS109)と、本制御処理が終了する(ステップS110)。なお、ステップS102の次のステップS103を省き、ステップS102、S104、S105の順に実行するようにしてもよい。また、ステップS105の次のステップS106を省き、ステップS105、S107、S108の順に実行するようにしてもよい。
【0035】
遮断機制御処理S200は、同期投入制御処理S100に引き続いて実行され、まず、
図5に示すように、操作入力部(図示略)を介して交流電力の切替方向を入力し(ステップS201)、入力が「ハイブリッド発電装置から既設のディーゼル発電機への切替方向」であるときはステップS203へ、そうでないときはステップS206へ進む。ステップS203へ進むと、電力切替部13により、既設のディーゼル発電機側の遮断機13bを投入することにより、既設のディーゼル発電機3の出力交流電力を負荷に接続し(ステップS203)、両発電機の同期並列運転が安定するための所定時間(例えば0.5秒)の経過を待ち(ステップS204)、電力切替部13により、ハイブリッド発電装置側の遮断機13aを切断することにより、ハイブリッド発電装置1の出力交流電力を負荷から切り離す(ステップS205)と、本制御処理が終了する(ステップS209)。一方、ステップS206へ進むと、電力切替部13により、ハイブリッド発電装置側の遮断機13aを投入することにより、ハイブリッド発電装置1の出力交流電力を負荷に接続し(ステップS206)、両発電機の同期並列運転が安定するための所定時間(例えば0.5秒)の経過を待ち(ステップS207)、電力切替部13により、既設のディーゼル発電機側の遮断機13bを切断することにより、既設のディーゼル発電機3の出力交流電力を負荷から切り離す(ステップS208)と、本制御処理が終了する(ステップS209)。
【0036】
以上のように構成された本例のハイブリッド電力混合装置2によれば、交流/直流変換部21又は直流/交流変換部22を介して接続される交流電力発電機(例えば、ディーゼル発電機4A、同4B、水力発電機7、風力発電機8)とともに、汎用インバーター10の中間直流電力部分23へ並列接続される中間直流電力充放電部11や直流電力発電機(例えば、ソーラーパネル6)によってエネルギーミックスを行うことができ、これらの電力を一括制御することができる。このように、本発明によれば、汎用インバーター10の中間直流電力部分23へ再生可能エネルギーなど複数のエネルギー源を接続することで、日本国が提唱するハイブリッドアイランド構想で課題となっているエネルギーミックスが乾電池の並列接続のように安価で容易に行うことができる。
【0037】
また、本例のハイブリッド発電装置1によっても、ハイブリッド電力混合装置2と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
さらに、本例の交流電力切替方法によれば、ハイブリッド発電装置1と既設のディーゼル発電機3の同期並列運転を行い、無停電で両者の出力切り替えを行うことができ、負荷としてのマイクログリッドへ安定電力供給を行うことができる。特に、前記既設のディーゼル発電機としての可搬式の小型ディーゼル発電機は外部からガバナとAVR(自動電圧調整)制御ができないものが多いが、そのような場合でも、本発明によれば、前記同期並列運転時はハイブリッド発電装置1側で周波数・電圧・位相を調整し、同期投入するように構成されているので、前記同期並列運転及び前記出力切り替えを支障なく行うことができる。この出力切替により、ハイブリッド発電装置1に接続されている再生可能エネルギー又は中間直流電力充放電部11の充電量が十分あるときは、前記既設の交流電力発電機としてのディーゼル発電機3を軽負荷運転させることなく、完全に停止させることが可能となる。これにより燃料費の削減とディーゼルエンジンのメンテナンス費が削減できるとともに、ディーゼル発電機3の寿命も伸びる。そして、ディーゼル発電機3の運転時間をできるだけ短くし、特に軽負荷運転をさせないような現地の電力事情に合わせた最も効率のよい運転パターンが策定できる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 ハイブリッド発電装置
2 ハイブリッド電力混合装置
3 既設のディーゼル発電機
4A ディーゼル発電機
4B ディーゼル発電機
5A 変圧器
5B 変圧器
6 ソーラーパネル
7 水力発電機
8 風力発電機
10 汎用インバーター
10A 汎用インバーター
10B 汎用インバーター
10C 汎用インバーター
11 中間直流電力充放電部
11a バッテリー
12 フィルター
13 電力切替部
13a 遮断機
13b 遮断機
15 制御部
21 交流/直流変換部
22 直流/交流変換部
23 中間直流電力部分
24 電圧・周波数制御部
25A 電圧・周波数センサー
25B 電圧・周波数センサー