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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】毛髪洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20241112BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241112BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/34
A61Q5/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020187312
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076756
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】梅田 明宏
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197467(JP,A)
【文献】特開2009-286774(JP,A)
【文献】特開2016-044133(JP,A)
【文献】特開2014-156424(JP,A)
【文献】特開2001-213738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)パルミチン酸メチルヘプチルまたは(A-2)ジカプリン酸ネオペンチルグリコールから選ばれる1種以上
(B)カチオン性界面活性剤
(C)25℃で固体の炭素数14~22の高級アルコール
を含有し、前記(B)成分の含有量が、0.84~3.22質量%である毛髪洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(A-1)成分または前記(A-2)成分から選ばれる1種以上の含有量が、2~12質量%である請求項1に記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(A-1)成分および前記(A-2)成分を含有する請求項1または請求項2に記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(A-1)成分と前記(A-2)の質量比((A-1)/(A-2))が、0.08~13である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、(B-1)塩化ステアリルトリメチルアンモニウムまたは(B-2)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムから選ばれる1種以上である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の毛髪洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の洗浄力に優れ、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好であり、かつ高温安定性が良好な毛髪洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、毛髪の仕上がり感を向上させる目的で、シャンプーによる洗髪の後にトリートメントやコンディショナーを使用することが一般的であった。また洗髪に手間をかけたくない場合に対応するために、洗髪とコンディショニングが同時に可能であるリンスインシャンプーが多く開発されている。しかしリンスインシャンプーでは、洗髪後にトリートメントやコンディショナーを使用した際と比べて毛髪の仕上がり感が劣ることが問題となっていた。
【0003】
上記問題点を解決するために、エステル油、脂肪酸アミドアミン及び/又は第4級アンモニウム塩、清涼化剤とを含有することにより、毛髪の洗浄力に優れ、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好である毛髪の洗浄及びコンディショニング用の組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、この組成物では毛髪の洗浄力に優れ、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好ではあるものの、高温安定性に懸念があるため、より高温安定性を向上させた組成物が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-197467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、毛髪の洗浄力に優れ、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好であり、かつ高温安定性が良好な毛髪洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A-1)パルミチン酸メチルヘプチルまたは(A-2)ジカプリン酸ネオペンチルグリコールから選ばれる1種以上、(B)カチオン性界面活性剤、(C)25℃で固体の炭素数14~22の高級アルコールを含有することにより、毛髪の洗浄力に優れ、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好であり、かつ高温安定性が良好な毛髪洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、毛髪の洗浄力に優れ、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好であり、かつ高温安定性が良好な毛髪洗浄剤組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0010】
本発明は、(A-1)パルミチン酸メチルへプチルまたは(A-2)ジカプリン酸ネオペンチルグリコールから選ばれる1種以上、(B)カチオン界面活性剤、(C)25℃で固体の炭素数14~22の高級アルコールを含有する毛髪洗浄剤組成物である。
【0011】
本発明は、洗浄力の観点から(A-1)パルミチン酸メチルへプチルまたは(A-2)ジカプリン酸ネオペンチルグリコールから選ばれる1種以上を含有することができる。
【0012】
本発明で用いられる前記(A-1)成分または前記(A-2)成分から選ばれる1種以上の含有量は、好ましくは2~12%、より好ましくは4~10%がよい。前記(A-1)成分または前記(A-2)成分から選ばれる1種以上の含有量が2%未満である場合、洗浄力が悪くなる恐れがあり、前記(A-1)成分または前記(A-2)成分から選ばれる1種以上の含有量が12%を超える場合、洗浄力および高温安定性が悪くなる恐れがある。
【0013】
本発明で用いられる前記(A-1)成分と前記(A-2)成分は、洗浄力を向上させる観点から併用することが好ましい。
【0014】
本発明で用いられる前記(A-1)成分と前記(A-2)成分の質量比((A-1)/(A-2))は、洗浄力の観点から好ましくは0.08~13、より好ましくは0.17~6がよい。前記(A-1)成分と前記(A-2)成分の質量比が0.08未満または13を超える場合、洗浄力が悪くなる恐れがある。
【0015】
本発明は、毛髪のすすぎ時の指通り、乾燥後のしっとり感およびまとまり感の観点から、(B)カチオン性界面活性剤を含有する。
【0016】
本発明で用いられる前記(B)の含有量は、好ましくは0.84~3.22%、より好ましくは1.19~2.45%がよい。前記(B)成分が0.84%未満である場合、毛髪のすすぎ時の指通り、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が悪くなる恐れがある。前記(B)成分が3.22%を超える場合、毛髪のすすぎ時の指通りおよび乾燥後のまとまり感が悪くなる恐れがある
【0017】
本発明で用いられる前記(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる前記(B)成分は、毛髪のすすぎ時の指通り、乾燥後のしっとり感およびまとまり感の観点から、(B-1)塩化ステアリルトリメチルアンモニウムまたは(B-2)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムから選ばれる1種以上が好ましい。
【0019】
本発明で用いられる前記(B-1)成分と前記(B-2)成分は、毛髪のすすぎ時の指通り、乾燥後のしっとり感およびまとまり感の観点から併用することがより好ましい。
【0020】
本発明で用いられる前記(B-1)成分と前記(B-2)成分の質量比((B-1)/(B-2))は、毛髪のすすぎ時の指通り、乾燥後のしっとり感およびまとまり感の観点から好ましくは0.04~19.25、より好ましくは2~9.19がよい。前記(B-1)成分と前記(B-2)成分の質量比が0.04未満または19.25を超える場合、毛髪のすすぎ時の指通り、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が悪くなる恐れがある。
【0021】
本発明は、高温安定性の観点から、25℃で固体の炭素数14~22の高級アルコールを含有する。
【0022】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、好ましくは2~15%がよく、より好ましくは5~12%がよい。前記(C)成分が2%未満または15%を超える場合、高温安定性が悪くなる恐れがある。
【0023】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。前記(C)成分は1種以上含有してよい。
【0024】
本発明に用いられる前記(C)成分は、高温安定性の観点からセタノールまたはステアリルアルコールから選ばれる1種以上が好ましく、セタノールおよびステアリルアルコールを併用することがより好ましい。
【0025】
本発明における毛髪洗浄剤組成物の粘度は、20℃の条件下で10,000~80,000mPa・sであることが好ましい。粘度が10,000mPa・s未満の場合、高温安定性が悪くなる恐れがある。粘度が80,000mPa・sを超える場合、塗布性が悪くなる恐れがある。
【0026】
本発明における毛髪洗浄剤組成物の20℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られた毛髪洗浄剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で1日間放置し調温した後にヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、回転速度6rpmの条件下で測定したものである。
【0027】
本発明における毛髪洗浄剤組成物のpHは、20℃の条件下で4~8であることが好ましい。
【0028】
本発明における毛髪洗浄剤組成物の20℃の条件下におけるpHは、常法にて調製して得られた毛髪洗浄剤組成物を20℃で1日間静置し調温した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、株式会社堀場製作所製)にて測定したものである。
【0029】
本発明における毛髪洗浄剤組成物は前記必須成分の他に、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、前記(B)成分以外の界面活性剤、前記(A)または(C)成分以外の油性成分、保湿剤、キレート剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、顔料、粉体、紫外線吸収剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を損なわない範囲で含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
【0030】
本発明における剤型としては、特に限定されないが、乳液状またはクリーム状が好ましく、特にクリーム状がより好ましい。
【実施例
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0032】
本発明における評価試験において、毛髪洗浄剤組成物に含まれる成分およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位はすべて質量%である、これを常法にて調製した。
【0033】
本明細書に示す評価試験方法において、「洗浄力」、「すすぎ時の指通り」、「乾燥後のしっとり感」、「乾燥後のまとまり感」および「高温安定性」について下記の方法で評価した。
【0034】
(1)洗浄力
表1~表3記載の各毛髪洗浄剤組成物について、専門のパネラー10名により、人毛毛束(株式会社ビューラックス社製「5g、20cm:黒100%根元揃え、品番:BS-A」)にモデル皮脂としてラノリンを0.1g塗布し、さらに毛髪洗浄剤組成物を1g塗布して洗浄したときのそれぞれの洗浄力の官能評価を以下の基準で行った。
5:洗浄力が非常に良いと感じた。
4:洗浄力が良いと感じた。
3:洗浄力がやや良いと感じた。
2:洗浄力がやや悪いと感じた。
1:洗浄力が悪いと感じた。
結果は、パネラー10名の平均値を、以下の基準により洗浄力として表した。
なお平均値の小数点第二位については四捨五入を行った。
◎:平均値が4.0以上
〇:平均値が3.2~3.9
△:平均値が2.5~3.1
×:平均値が2.4以下
【0035】
(2)すすぎ時の指通り
表1~表3記載の各毛髪洗浄剤組成物について、専門のパネラー10名により、人毛毛束(株式会社ビューラックス社製「5g、20cm:黒100%根元揃え、品番:BS-A」)に毛髪洗浄剤組成物を1g塗布して洗浄し、すすぎ時の指通りの官能評価を以下の基準で行った。
5:指通りが非常に良いと感じた。
4:指通りが良いと感じた。
3:指通りがやや良いと感じた。
2:指通りがやや悪いと感じた。
1:指通りが悪いと感じた。
結果は、パネラー10名の平均値を、以下の基準によりすすぎ時の指通りとして表した。
なお平均値の小数点第二位については四捨五入を行った。
◎:平均値が4.0以上
〇:平均値が3.2~3.9
△:平均値が2.5~3.1
×:平均値が2.4以下
【0036】
(3)乾燥後のしっとり感
表1~表3記載の各毛髪洗浄剤組成物について、専門のパネラー10名により、人毛毛束(株式会社ビューラックス社製「5g、20cm:黒100%根元揃え、品番:BS-A」)に毛髪洗浄剤組成物を1g塗布して洗浄、すすぎ、乾燥を行い、乾燥後のしっとり感の官能評価を以下の基準で行った。
5:しっとり感が非常にあると感じた。
4:しっとり感があると感じた。
3:しっとり感がややあると感じた。
2:しっとり感がややないと感じた。
1:しっとり感がないと感じた。
結果は、パネラー10名の平均値を、以下の基準により毛髪のしっとり感として表した。
なお平均値の小数点第二位については四捨五入を行った。
◎:平均値が4.0以上
〇:平均値が3.2~3.9
△:平均値が2.5~3.1
×:平均値が2.4以下
【0037】
(4)乾燥後のまとまり感
表1~表3記載の各毛髪洗浄剤組成物について、専門のパネラー10名により、人毛毛束(株式会社ビューラックス社製「5g、20cm:黒100%根元揃え、品番:BS-A」)に毛髪洗浄剤組成物を1g塗布して洗浄、すすぎ、乾燥を行い、乾燥後のまとまり感の官能評価を以下の基準で行った。
5:まとまり感が非常にあると感じた。
4:まとまり感があると感じた。
3:まとまり感がややあると感じた。
2:まとまり感がややないと感じた。
1:まとまり感がないと感じた。
結果は、パネラー10名の平均値を、以下の基準により乾燥後の毛髪のまとまり感として表した。
なお平均値の小数点第二位については四捨五入を行った。
◎:平均値が4.0以上
〇:平均値が3.2~3.9
△:平均値が2.5~3.1
×:平均値が2.4以下
【0038】
(5)高温安定性
表1~表3記載の各毛髪洗浄剤組成物について、高温安定性の評価試験を行った。評価試験は、実施例および比較例で得られた毛髪洗浄剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g入れ、50℃条件下で保存し、以下の基準で目視にて評価を行った。
◎:50℃条件下3ヶ月以上経過しても分離及び水ハキが認められない。
○:50℃条件下3ヶ月未満で分離は認められないが水ハキが見られる。
△:50℃条件下1ヶ月未満で分離は認められないが水ハキが見られる。
×:50℃条件下3日未満で分離が認められる。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
表1~表3に示す実施例1~42より、毛髪の洗浄力が優れ、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好であり、高温安定性が良好な結果が得られた。
【0046】
以下に毛髪洗浄剤組成物の実施例43を記載する。
【0047】
以下の実施例により得られた毛髪洗浄剤組成物は、毛髪の洗浄力が優れ、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好であり、高温安定性が良好な結果が得られた。
【0048】
<実施例43>
成 分 含有量(質量%)
(A-1)パルミチン酸メチルへプチル 5.40
(A-2)ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 1.35
(B-1)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.40
(B-2)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 0.24
(C)セタノール 4.30
(C)ステアリルアルコール 4.30
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
グアーガム 0.20
グリセリン 2.60
プロピレングリコール 3.40
1,3-ブチレングリコール 3.90
エデト酸二ナトリウム 0.02
香料 0.20
パラオキシ安息香酸メチル 0.20
ラウリン酸アミドプロピルベタイン(30%) 0.01
メントール 0.15
クエン酸ナトリウム 0.05
モモ核油 0.01
モモ果汁エキス 0.01
精製水 72.26
合計 100.00
pH(20℃) 6.0
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、毛髪の洗浄力が優れており、すすぎ時の指通りが良好であり、乾燥後のしっとり感およびまとまり感が良好であり、かつ高温安定性が良好な毛髪洗浄剤組成物が得られた。