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特許7586476排水構造、排水具、浴槽及び排水構造の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】排水構造、排水具、浴槽及び排水構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
E03C1/22 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020200098
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022087944
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501097950
【氏名又は名称】株式会社アステック
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 敬
(72)【発明者】
【氏名】内山 繁
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210636553(CN,U)
【文献】実開平02-018567(JP,U)
【文献】特開平08-074306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12- 1/33
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面の下に透水層を備え、その透水層の下に不透水層を備える構造体における排水構造であって、
前記不透水層と前記透水層とを貫通するように設けられた筒状部と、
前記不透水層上の水を前記筒状部の外部から内部へ通過させるための流路を備え、
前記流路の前記外部側出口よりも前記底面に近い側に、前記筒状部の外側面又はその近傍から前記筒状部の外側に向かって延びる庇部を備え、
前記流路の、前記筒状部の外部側出口と、前記透水層との間に、間隙が形成されており、
前記庇部により、前記底面側から供給された前記透水層の構成材料がせき止められていることを特徴とする排水構造。
【請求項2】
請求項に記載の排水構造であって、
前記透水層は、前記底面を形成する表面部材を接着層により前記不透水層に対して固着して形成されており、
前記表面部材の、前記不透水層側の面の端部が前記庇部の前記底面側の面上又はその近傍にあり、
前記底面上における前記表面部材と前記筒状部との間隙を埋める目地材を備え、
前記庇部と前記表面部材とにより、前記目地材が、前記庇部よりも前記不透水層側に進入しないようにせき止められていることを特徴とする排水構造。
【請求項3】
底面の下に透水層を備え、その透水層の下に不透水層を備える構造体用の排水具であって、
前記不透水層と前記透水層とを貫通するように配置される筒状部と、
前記不透水層上の水を前記筒状部の外部から内部へ通過させるための流路を備え、
前記流路の、前記筒状部の外部側出口よりも、前記底面に近い側に配置され、前記筒状部の外側面又はその近傍から前記筒状部の外側に向かって延び、前記底面側から供給される前記透水層の構成材料の、前記流路の前記外部側出口への進入を妨げるための庇部を備えることを特徴とする排水具。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の排水構造又は請求項に記載の排水具を備えた浴槽。
【請求項5】
前記不透水層に対して、請求項に記載の排水具を固定する工程と、
前記底面を形成する表面部材を接着層により前記不透水層に対して固着する工程と、
前記底面上における前記表面部材と前記筒状部との間隙を、前記底面側から該間隙に対して目地材を供給することによって埋める工程とを、
この順で行うことを特徴とする排水構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水構造、排水具、浴槽及び排水構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水が浸入し得る床材を用いて防水層上に形成した床面に対して排水口を設ける場合に、該床材及び防水層を貫通する筒状の排水口を設けると共に、床材に浸入し防水層上に溜まった水をその筒状部を通して排水口に流し込むための流路を、その筒状部に設けることが知られている。例えば特許文献1及び特許文献2に、これに関連する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3797989号公報(特に段落0050、0051及び図1参照)
【文献】特開2016-8380号公報(特に段落0007及び図8図12参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の構造では、排水口を構成する筒状部は、床材に完全に覆われており、防水層上に溜まった水を排水口に流し込むための流路の、筒状部の外側の出口も、床材に覆われていた。このため、防水層上に溜まった水を効率よく排出することが難しいという問題があった。
【0005】
このような問題は、建築物や部屋の床面だけでなく、水を貯める水槽の底面に排水構造を設ける場合にも発生し得るものである。
この発明は、このような問題を解決し、底面の下に透水層を備え、その透水層の下に不透水層を備える構造体において、不透水層上に溜まった水を効率よく排出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の排水構造は、底面の下に透水層を備え、その透水層の下に不透水層を備える構造体における排水構造であって、上記不透水層と上記透水層とを貫通するように設けられた筒状部と、上記不透水層上の水を上記筒状部の外部から内部へ通過させるための流路を備え、上記流路の上記外部側出口よりも上記底面に近い側に、上記筒状部の外側面又はその近傍から上記筒状部の外側に向かって延びる庇部を備え、上記流路の、上記筒状部の外部側出口と、上記透水層との間に、間隙形成され、上記庇部により、上記底面側から供給された上記透水層の構成材料がせき止められているものである。
【0007】
このような排水構造において、上記透水層、上記底面を形成する表面部材を接着層により上記不透水層に対して固着して形成されており、上記表面部材の、上記不透水層側の面の端部が上記庇部の上記底面側の面上又はその近傍にあり、上記底面上における上記表面部材と上記筒状部との間隙を埋める目地材を備え、上記庇部と上記表面部材とにより、上記目地材が、上記庇部よりも上記不透水層側に進入しないようにせき止められているとよい。
【0008】
また、この発明の排水具は、底面の下に透水層を備え、その透水層の下に不透水層を備える構造体用の排水具であって、上記不透水層と上記透水層とを貫通するように配置される筒状部と、上記不透水層上の水を上記筒状部の外部から内部へ通過させるための流路を備え、上記流路の、上記筒状部の外部側出口よりも、上記底面に近い側に配置され、上記筒状部の外側面又はその近傍から上記筒状部の外側に向かって延び、上記底面側から供給される上記透水層の構成材料の、上記流路の上記外部側出口への進入を妨げるための
庇部を備えるものである。
また、この発明の浴槽は、上記の排水構造又は排水具のいずれかを備えた浴槽である。
【0009】
また、この発明の排水構造の施工方法は、上記不透水層に対して、上記の排水具を固定する工程と、上記底面を形成する表面部材を接着層により上記不透水層に対して固着する工程と、上記底面上における上記表面部材と上記筒状部との間隙を、上記底面側からその間隙に対して目地材を供給することによって埋める工程とを、この順で行うものである。
【0010】
また、以上説明した各発明は、その説明した態様のみならず、装置、システム、方法等、任意の態様で実施することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のような本発明によれば、底面の下に透水層を備え、その透水層の下に不透水層を備える構造体において、不透水層上に溜まった水を効率よく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施形態による排水具及び該排水具を含む排水構造を備えた構造体である浴槽の例を示す断面図である。
図2図1に示した排水具及び該排水具を含む排水構造を拡大し、浴槽部分を適宜に切り欠いて示す側面図である。
図3図2における排水具を、その中心を通り紙面に平行な面での断面にして示す断面図である。
図4図2に示した排水構造の施工方法について説明するための図である。
図5図4の続きの工程について説明するための図である。
図6】排水具及び該排水具を含む排水構造の変形例の構成を示す、図2と対応する側面図である。
図7】この発明の排水構造の別の変形例について説明するための、図2と対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、この発明の第1実施形態について、図1乃至図5を用いて説明する。
最初に、図1を用いて、第1実施形態の排水具及び該排水具を含む排水構造を備えた構造体である浴槽の例について説明する。図1は、その浴槽の断面図である。
図1に示す浴槽10は、概ね上面のない中空の直方体状をしており、図1には、排水具の中心を通り浴槽の底面に垂直な面での断面のうち、浴槽の片側の側面に近い部分を示している。ただし、図1において、排水具100のみは断面とせず、浴槽10のうち図で手前側の部分を取り除いた側面を示している。
【0014】
浴槽10は、その概略形状を規定するステンレス製の基材11の内面及び外面に、それぞれ化粧材を貼り付けた構成である。この基材11が、不透水層に該当する。基材11を通過して漏れ出る水量が無視できる程度に不透水性であれば、基材11の材質はステンレスに限られない。
まず底面側においては、基材11上に接着層12を設け、その上に底面の外観を形成するための化粧材として表面部材13を配置して、表面部材13を基材11に固定している。接着層12としては例えばモルタルを用いることができるが、これに限られない。表面部材13の素材は、天然石、木材、タイルなど任意である。表面部材13の、図で上側の面が浴槽10の底面Bを構成する。
【0015】
また、浴槽10には、浴槽10に溜まった水を排出するための排水構造を構成する排水具100が設けられ、排水具100の上端は、概ね底面Bと同じ高さである。そして、表面部材13は、この排水具100を避けて配置される。施工時に表面部材13と排水具100の上端との間に生じる間隙は、目地材14により埋められている。目地材14としては、例えばモルタルを用いることができるが、これに限られない。また、排水具100と接着層12との間には、間隙15が設けられ、接着層12が排水具100に接触しないようになっている。間隙15の意義については後述する。
【0016】
以上の接着層12、表面部材13及び目地材14が透水層に該当する。なお、この実施形態は、透水層を通過して不透水層である基材11上に溜まった水を効率よく排出するための構造に一つの特徴を有する。従って、接着層12、表面部材13及び目地材14が、浴槽10に溜まった水がこれらの全部又は一部を通過して無視できない量の水が基材11上に達する程度に透水性を有する構成である場合にこの実施形態が効果を発揮する。接着層12、表面部材13及び目地材14の材質や構造は、その範囲において任意である。また、これら全てが透水性であることも必須ではない。経年劣化によるクラック等により事後的に透水性が生じてしまう場合であっても、この実施形態は効果を発揮する。
【0017】
次に、側面側においては、基材11の内側には、内側面の外観を形成するための化粧材として内側面部材21が、接着剤22により接着されている。内側面部材21と底面の表面部材13との間隙は、目地材14により埋められている。
また、基材11の外側には、外側面の外観を形成するための化粧材として外側面部材23が、接着剤24により接着されている。上端側には、縁部分の外観を形成するための化粧材として縁部材25が、不図示の固定具又は接着剤により、基材11、内側面部材21及び外側面部材23の少なくとも1つに固定されている。
【0018】
以上の内側面部材21、外側面部材23及び縁部材25の素材、形状等は、任意である。表面部材13と同じであっても異なっていてもよいし、相互に同じであっても異なっていてもよい。透水性も任意である。内側面部材21が透水性であると、浴槽10に溜まった水は内側面部材21に浸透するが、基材11の位置まで流れ落ちてそこに溜まることになる。
【0019】
接着剤22,24としては、例えばエポキシ樹脂を用いることができるが、こちらも材質は任意であり、内側面部材21及び外側面部材23の特性に合わせて適宜に選択すればよい。
以上の浴槽10は、建築物の構造体等の基礎30上に、支持部材31を介して配置される。排水具100は、基礎30内に設けられた排水管あるいは当該排水管まで排水を導く適当な排水設備に接続されるが、詳細な図示は省略している。
【0020】
次に、図2及び図3を用いて、図1に示した排水具100及びその排水具を含む排水構造について説明する。図2は、その排水具100及び排水構造を拡大して示す側面図である。図3は、図2における排水具100を、その中心を通り紙面に平行な面での断面にして示す断面図である。なお、図2及び図3において、排水具100の周辺の浴槽10の構造は、図3における排水具100の切断面と同じ切断面での断面として示している。すなわち、図2において、排水具100はその側面を示しているが、その周辺の浴槽10各部は、その断面を示している。
【0021】
図2及び図3に示す排水具100は、内筒110、外筒120、リング部材130及びナット140を備えている。ここでは、これら全ての部材は、底面Bに平行な断面の形状が円形であるとする。しかし、断面形状はこれに限られず、正多角形状であってもよいし、その他、非対称な形状であってもよい。各部材の外側面及び内側面の断面形状が相互に相似形である必要も無い。
また、内筒110、外筒120及びナット140の材質は、不透水性で容易に劣化しないステンレスである。しかし、リング部材130には、他の各部に比べると要求される耐久性が低いため、低コストの樹脂である塩化ビニルを用いている。しかし、各部の材質はこれらに限られない。
【0022】
以上の各部のうち内筒110は、外筒120の内側に収容される筒状部であり、その上端に鍔部111を備える。内筒110は、図示しないネジ溝により外筒120に対し軸方向に移動可能であり、外筒120を基材11に固定した後で、鍔部111の上面が底面Bよりやや下側に来るように内筒110の高さを調整するとよい。
このことにより、浴槽10内で底面B上に溜まった水、すなわち、使用者の感覚として「浴槽10内に溜まった」水を、内筒110及び外筒120を通して浴槽10外に排水することができる。もちろん、浴槽10の使用中に水が排出されないようにするための、開閉可能な栓を備えていてもよい。
【0023】
外筒120は、内筒110の下端をその内部に収容すると共に、ナット140により、シールリング151,152を挟んで基材11に固定される。外筒120は基材11の近傍に配置される鍔部122を備え、その鍔部122と基材11との間に防水用のシールリング151が装着される。また、基材11の下側に配置される下側管部123の外側面には図示しないネジ溝が切ってある。
基材11に予め開けてある排水用の開口に、下側管部123を通し、基材11の下側から防水用のシールリング152を装着してナット140を締めることにより、ナット140の鍔部141と基材11との間にシールリング152を挟んだ状態で、外筒120を基材11に締め付けて固定することができる。
【0024】
また、外筒120は、基材11よりも上側(底面Bに近い側)に配置される側面124に、複数の(ここでは全周に等間隔で8つの)透孔121を備える。この透孔121は、基材11上に溜まった水を外筒120の外側から内側へ通過させるための流路として機能する。なお、基材11の、排水用の開口付近は、段差16により周囲より一段低くしており、基材11上に溜まった水が排水具100付近に集まるようにしている。その集まった水を、透孔121を通して外筒120の内部に導き、以後は底面B上に溜まった水と同じ経路で排水することができる。
【0025】
この例では、透孔121は、外筒120と基材11との間の防水構造に影響を与えない範囲でなるべく低い位置に来るように、鍔部122の直上に形成している。なお、ここでは透孔121を円形としているが、これは必須ではなく、任意の形状であってよい。数やサイズも、任意である。
【0026】
リング部材130は、外筒120の外側に嵌め込まれている。ただし、外筒120と密着したり外筒120に固定されていたりする必要はなく、後述するように目地材14の進入防止に支障がない範囲で多少の遊びがあってよい。遊びを設けた方が施工が容易であるため、この例では、リング部材130が外筒120の周りを自由に回動可能である程度の遊びが設けられている。
【0027】
リング部材130の下端は、外筒120の鍔部122上に載っている。そして、リング部材130の下端には、外筒120の透孔121と対応する間隔で、透孔121と同数の切り欠き部131が設けられている。切り欠き部131は、リング部材130が透孔121への水の流入を妨げないよう、水を通すために設けたものである。切り欠き部131の下端は鍔部122により塞がれるので、実質的には切り欠き部131は透孔として機能する。この例では、切り欠き部131は透孔121よりも若干大きいサイズで下側が開くように設けているが、サイズや形状は任意である。もちろん、切り欠き部131に代えて同等な透孔を設けてもよい。
【0028】
また、切り欠き部131が透孔121と同数であることも必須ではない。この例では、図3及び後述の図4に表れるように、リング部材130は、施工時に上側に配置される部分が厚肉の厚肉部133として、下側に配置される、切り欠き部131を設ける部分が薄肉の薄肉部132として形成されている。このようにすれば、上側ではリンク部材130と外筒120との間にほぼ隙間が生じないようにしつつ、下側ではリング部材130の内周と外筒120の外周との間に、周方向に沿う水の流路を確保できる。従って、必ずしも切り欠き部131から透孔121に向かって水が直線状に流れることができなくても、排水に大きな支障はない。しかし、直線状の流路を確保できた方が好ましく、図2及び図3の例ではリング部材130をそのような向きで配置している。
【0029】
以上のリング部材130は、その上面(底面B側に配置される面)を、外筒120の外側面近傍から外筒120の外側に向かって延びる庇のように機能させ、浴槽10の施工時に底面B側から供給される目地材14をせき止め、透孔121の、外筒120の外部側出口に目地材14が流れ込んで外部側出口を塞いでしまわないようにするために設けている。すなわち、リング部材130の上面が庇部に該当する。
【0030】
次に、図4及び図5も参照して、以上説明した排水具100とその周辺の各部との関係及び、排水具100を含む排水構造の施工方法について説明する。図4は、図2に示した排水構造の施工方法について説明するための図である。図5は、図4の続きの工程について説明するための図である。上述の図2は、図5の状態からさらに続きの工程を施した状態に該当する。
浴槽10において、排水具100を含む排水構造を施工する場合、基材11を基礎30上に設置した後、少なくとも排水口付近に接着層12及び表面部材13を配置する前に、上述したように排水具100の外筒120を基材11に設けた排水用の開口に固定する。
【0031】
次に、図4に示すように、外筒120に対して上側からリング部材130を嵌め込み、さらに上側から外筒120の内側に内筒110を挿入する。
その後、図5に示すように、排水具100の周辺の基材11上に接着層12を形成し、その上に表面部材13を配置して、接着層12により表面部材13を基材11に接着する。
【0032】
このとき、接着層12は、リング部材130の直前までは設けず、リング部材130の側面との間に一定の間隙15を設ける。図5の例では、概ね段差16の位置まで接着層12を設けているが、接着層12の端部と段差16との位置が一致している必要はない。いずれにせよ、リング部材130の切り欠き部131の外部側出口付近、ひいては外筒120の透孔121の外部側出口付近には、接着層12は設けていない。
【0033】
また、表面部材13は、排水具100側の端部が、リング部材130の上面(底面B側の面)の上に来るように配置する。このため、リング部材130の高さは、段差16及び鍔部122等の各部の寸法や、接着層12の厚さ等を考慮して、表面部材13の、基材11側の面の端部が、リング部材130の上面にちょうど接触するサイズとするとよい。しかし、排水具100付近において底面Bが他の位置より高くなってしまうことは、内筒110を介した排水を妨げることになり好ましくないため、寸法誤差を考慮して、リング部材130の高さを計算上必要な高さより若干低くし、このため表面部材13との間に若干の間隙が開いてしまってもよい。
【0034】
さらに、間隙が図5で上下方向だけでなく、左右方向にあってもよい。すなわち、表面部材13の端部がリング部材130の上面の近傍にある程度でもよい。後述するように、目地材14が間隙から大量に漏れない程度であれば、多少の間隙は問題ない。
リング部材130は外筒120に対して着脱可能であるので、高さの異なる複数のリング部材130を用意しておけば、施工現場においてリング部材130の交換によりその高さを上記のように調整することも容易である。
【0035】
図5の状態から、表面部材13と内筒110の鍔部111との間に形成されている間隙に対し、上側から目地材14を供給してその間隙を塞ぐことにより、排水具100を含む排水構造が完成する。目地材14は、底面B上において間隙を塞げる程度に供給すればよく、図2に示したように、底面Bよりも下側には間隙が残っていてもよい。
【0036】
ここで、目地材14は、リング部材130の上面よりせき止められるため、あまり過剰に供給しなければ、リング部材130の上面よりも下には流れていかず、外筒120の透孔121の外部側出口まで垂れ下がってこれを塞いでしまうことがない。外筒120とリング部材130との間の遊びは、目地材14が外筒120とリング部材130との間隙を通って透孔121まで垂れて行かない程度とする。一般に、目地材14の流動性はさほど高くないので、多少の間隙は許容可能である。しかし、流動性の高い目地材14を用いる場合は、それに合わせて遊びも小さくする必要がある。
【0037】
このことにより、透孔121の外部側出口と透水層との間に間隙を確保することができる。すなわち、透孔121の外部側出口に、接着層12だけでなく、目地材14も形成されないようにすることができる。もちろん、表面部材13も形成されない。
接着層12、表面部材13及び目地材14には透水性があるとはいえ、透孔121の外部側出口に、あるいは内部にこれら透水層の構成材があると、透孔121に流入可能な水量は減ってしまう。従って、基材11上に溜まった水の排水効率は悪くなる。
【0038】
一方、透孔121の外部側出口に、あるいは内部に何もなければ、排水具100の全周から、透水層を透過しつつ基材11上を流れて集まってきた水を、効率よく透孔121に流入させて排出することができる。装飾性を重視して表面部材13として透水性の極めて高い素材を用いるような場合には、基材11上に大量の水が溜まることも考えられるので、基材11上の水をこのように効率よく排出することは重要である。
【0039】
なお、表面部材13の透水性が接着層12に比べて大幅に高い場合、実質的に、表面部材13を透過した水が接着層12上に溜まることも考えられる。しかし、接着層12上に溜まった水も、間隙15に流れ着けば基材11上の水と合流するため、これらを合わせて透孔121から排出することができる。
【0040】
ところで、目地材14がリング部材130の上面で完全にせき止められず、多少側面に垂れ下がってしまっても、大きな問題はない。リング部材130を回り込む経路では、外筒120の外側面に沿って垂れ下がる経路と比べ、透孔121への到達可能性は非常に低いと考えられるためである。特に、リング部材130は側壁を有するので、目地材14は、側壁を垂れ下がった上で切り欠き部131を通過しなければ、透孔121に達することができない。よほど過剰に目地材14を供給しない限り、この経路で透孔121に到達することは考えにくい。
【0041】
仮にリング部材130の側面においていくつかの切り欠き部131を塞いでしまうことになったとしても、切り欠き部131は複数あり、1つ1つを透孔121に比べて大きくしているため、透孔121への水の流入を大きく妨げることはない。透孔121が直接塞がれなければよい。
【0042】
また、上述のように、表面部材13の端部がリング部材130の上面の上又はその近傍に来るようにすれば、リング部材130の上面の端部から基材11側に流れ落ちようとする目地材14を、表面部材13によってもせき止めることができる。従って、透孔121の外部側出口が塞がれる可能性をさらに低減できる。
表面部材13により、目地材14を完全にせき止め、目地材14がリング部材130の上面を回って当該上面より下に垂れ落ちることを防止できることが最も好ましい。しかし、表面部材13とリング部材130との間に多少の間隙が開いていても、透孔121に達するほど大量の目地材14がその間隙から漏れ出さない程度であれば、大きな問題はない。
【0043】
また、表面部材13の端部がリング部材130の上面と接触するようにすれば、表面部材13をリング部材130により支えることもできる。間隙15を設けた部分では表面部材13を支える接着層12がなく、他の箇所に比べて脆い構造であることから、リング部材130による支えで補強することは、有用である。
【0044】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、排水具及び排水構造等の具体的な構成、施工等の具体的な手順、各部の具体的な形状、材質、サイズ等は、実施形態で説明したものに限るものではない。
【0045】
例えば、上述の実施形態では、目地材14をせき止めるための庇部としてリング部材130を設けたが、外筒120に直接庇部を設けてもよい。
図6は、この変形を採用した場合の排水具100の構成例を示す図2と対応する側面図である。図6において、図2と対応する構成には同じ符号を用いている。
【0046】
図6の例では、外筒120の上端全周に、外筒120の外側面から外側に向かって延びる鍔状の庇部125を設けている。この庇部125を、図2におけるリング部材130の上面と同様に機能させて、目地材14をせき止めることができる。庇部125を設ける位置は、外筒120の上端に限らず、透孔121よりも上側(底面B側)であれば、任意の位置に設けることができる。また、庇部125の延びる向きが、外筒120の中心軸方向に対して垂直である必要もなく、上側又は下側に傾いていてもよい。庇部125の上面が平面でなく、曲面であったり折れ目があったりしてもよい。目地材14をせき止めるのではなく、外側に向けて落とすことにより、目地材14が透孔121に達しないようにするものであってもよい。これらは、リング部材130の上面の位置や構成についても同様である。
【0047】
また、別の変形として、リング部材130を用いる場合には、間隙15を設けず、接着層12を、リング部材130に接触する位置まで設けてもよい。
図7は、この変形を採用した場合の排水構造の構成例を示す図2と対応する図である。図7においても、図2と対応する構成には同じ符号を用いている。
【0048】
また、上述した実施形態では、透水層が接着層12、表面部材13及び目地材14により構成されている例について説明したが、透水層がこれらの要素で構成されていることは必須ではない。透水層が単一材料の層であってもよいし、更に他の構成要素が加わっていてもよい。
また、上述した実施形態では、排水具100の筒状部が内筒110と外筒120に分かれている例について説明したが、これは必須ではない、一体の筒状部が透水層と不透水層とを貫通する構成であってもよい。逆に、筒状部が3以上の部品に分かれていてもよい。また、筒状部が屈曲部を有していてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、不透水層上に溜まった水を排水具100の筒状部の外部から内部へ通過させるための流路が透孔121である例について説明したが、これは必須ではない。流路は、透孔以外の形状で形成されていてもよく、その形状や構造は任意である。例えば、屈曲部を有する筒状であったり、筒状部を形成する部材間の間隙として形成されていたりしてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、この発明を浴槽の排水に適用した例について説明したが、同様の排水具、排水構造及びその施工方法は、底面の下に透水層を備え、その透水層の下に不透水層を備える任意の構造体に対して適用可能である。このような構造体としては、例えば、建築物の部屋、例えば浴室が考えられる。また、人工池やプール等に適用することも考えられる。建築物の屋上など、水を貯めることを前提としていない構造体にも適用可能である。いずれにせよ、鉛直方向下側の面を底面と捉えて上述した実施形態を適用可能である。
また、以上の説明してきた各実施形態及び変形例の特徴は、矛盾しない範囲で組み合わせて用いることが可能である。また、一部の特徴のみ取り出して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…浴槽、11…基材、12…接着層、13…表面部材、14…目地材、15…間隙、16…段差、21…内側面部材、22…接着剤、23…外側面部材、24…接着剤、25…縁部材、30…基礎、31…支持部材、100…排水具、110…内筒、111…外筒の鍔部、120…外筒、121…透孔、122…外筒の鍔部、123…下側管部、124…外筒の側面、125…庇部、130…リング部材、131…切り欠き部、132…薄肉部、133…厚肉部、140…ナット、141…ナットの鍔部、151,152…シールリング、B…底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7