(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】PTP包装用アルミニウム箔積層体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20241112BHJP
B65D 75/34 20060101ALI20241112BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B65D81/26 K
B65D75/34
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020205696
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-09-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年5月12日に高石 和樹が発明したPTP包装用アルミニウム箔積層体を株式会社カナエに発送した。
(73)【特許権者】
【識別番号】592245535
【氏名又は名称】株式会社メタルカラー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高石 和樹
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-094167(JP,U)
【文献】特開2017-119533(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029899(WO,A1)
【文献】特開2020-158141(JP,A)
【文献】特開2016-204047(JP,A)
【文献】特開2020-175912(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00370755(EP,A1)
【文献】特開2017-001429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 75/34
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔からなる基材と、前記基材に設けられたシール層と、を備えたPTP包装用アルミニウム箔積層体であって、
前記シール層は、無機多孔体と、ヒートシール性樹脂とを含有し、
前記シール層の坪量は、2g/m
2以上10g/m
2以下であり、
前記シール層における前記無機多孔体の含有量は、20質量%以上40質量%以下であ
り、
前記無機多孔体の平均粒子径は、1μm以上3μm以下である、PTP包装用アルミニウム箔積層体。
【請求項2】
前記シール層の坪量は、3g/m
2以上7g/m
2以下である、請求項
1に記載のPTP包装用アルミニウム箔積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、PTP包装用アルミニウム箔積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品等の包装用として多用されているPTP包装体は、内容物を収容するための容器部分と、この容器部分を密封するための蓋材から構成されている。容器部分は、密封時に蓋材と接着される平面部と、内容物を収容するための凹部とを有する。蓋材は、一般にアルミニウム箔からなる基材と、ヒートシール性を有し、基材に積層されるシール層とを有する。PTP包装体は、容器部分の平面部と蓋材のシール層とを熱溶着することにより内容物を保護密封できる。
【0003】
ところで、PTP包装体により包装される医薬品には、特異な臭気を発生するものがあり、消臭機能を有するPTP包装体が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、容器部分の内容物と接する面に、臭い成分を吸収する吸収剤を添加した樹脂からなる吸収層を設けることが開示されている。また、特許文献2には、蓋材に、樹脂材料と消臭機能を有する機能物質を混合してなる機能層を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-199283号
【文献】特開2017-1729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、特許文献2とは異なる方法によって蓋材に消臭機能を付加することが求められている。
【0007】
本発明の課題は、従来から製造工程を増やすことなく消臭機能を付加したPTP包装用アルミニウム箔積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のPTP包装用アルミニウム箔積層体は、アルミニウム箔からなる基材と、前記基材に設けられたシール層とを備えたPTP包装用アルミニウム箔積層体であって、前記シール層は、無機多孔体と、ヒートシール性樹脂とを含有し、前記シール層の坪量は、2g/m2以上10g/m2以下であり、前記シール層における前記無機多孔体の含有量は、20質量%以上40質量%以下である。ここで、坪量とは単位面積当たりの質量のことである。このような構成とすることにより、従来から製造工程を増やすことなく優れた消臭機能を付加したPTP包装用アルミニウム箔積層体を実現することができる。
【0009】
前記無機多孔体の平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0010】
前記シール層の坪量は、3g/m2以上7g/m2以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シール層の坪量を2g/m2以上10g/m2以下とし、シール層における無機多孔体の含有量を20質量%以上40質量%以下とすることにより、従来から製造工程を増やすことなく、優れた消臭機能を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るPTP包装用アルミニウム箔積層体の模式的な断面図である。
【
図2】実施形態に係るPTP包装用アルミニウム箔積層体を用いたPTP包装体の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明者は、特異な臭気を発生する医薬品を包装するための消臭機能を有するPTP包装体について、製造の観点から検討を行った。まず、特許文献1に開示されているように容器部分に消臭機能を付加する場合、一般に容器部分は、蓋材よりも厚く、多くの樹脂を使用して形成されるため、その分多量の吸収剤(吸着剤)を添加することができる。これにより、容器部分に優れた消臭機能を付加することができる。一方で、特許文献1の実施形態において吸着剤を含む中間層の厚みは60μmであり、さらに、基材層と中間層を接着するための接着層や外スキン層、蓋材と接着するための内スキン層が必要である。このため、容器部分に消臭機能を付加するには多量の樹脂を使用しなければならず、製造にかかるコストや環境に及ぼす影響が問題となる。
【0014】
次に、容器部分よりも薄い蓋材に消臭機能を付加する場合、例えば、特許文献2に開示されている機能層は、ヒートシール性を有していない。一方、蓋材と容器部分とを熱溶着するためには、機能層とは別にヒートシール性を有するヒートシール層を設ける必要があり、特許文献2では、蓋材の全面に設けられたヒートシール層の上に機能層を形成している。また、機能層は、密封時に容器部分の凹部に対応する位置に形成しなければならず、機能層を形成するためには、新たに位置決めの工程が必要となる。このため、蓋材に消臭機能を付加する場合には、従来よりも製造工程が増加するといった問題がある。
【0015】
上記の問題に鑑み、消臭機能を有するPTP包装体を製造の観点から検討した結果、本発明のPTP包装用アルミニウム箔積層体30を想到するに至った。
【0016】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
図1は、実施形態に係るPTP包装用アルミニウム箔積層体30(以下、「アルミニウム箔積層体」という。)を示す。
図2は、実施形態に係るアルミニウム箔積層体30を用いたPTP包装体100を示す。実施形態に係るアルミニウム箔積層体30は、例えば、医薬品等の内容物2を収容する容器部分1と熱溶着される蓋材として用いられる。PTP包装体100は、容器部分1と蓋材のアルミニウム箔積層体30とを熱溶着することにより、凹部1aに収容された内容物2を保護密封できる。
【0018】
実施形態に係るアルミニウム箔積層体30は、アルミニウム箔からなる基材20と、該基材20に積層されるシール層10とを備える。このシール層10は、基材20の表面に対して、無機多孔体と、ヒートシール性樹脂とを含有するシールコート剤を塗布することにより得ることができる。
【0019】
無機多孔体としては、その表面に多数の細孔を有し、この細孔によって臭い成分である吸着対象物を吸着する効果を有していれば、特に限定されるものではなく、任意の無機化合物を用いることができる。無機多孔体としては、例えば、ゼオライト、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、活性炭、チタニア、燐酸カルシウム等の無機燐酸塩、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物等が挙げられる。無機多孔体は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0020】
無機多孔体は、安全性及び優れた消臭機能を得る観点から、ゼオライト、水酸化アルミニウム、ケイ酸塩、二酸化ケイ素を含むことが好ましく、ゼオライトを含むことがより好ましい。これらの無機多孔体は、吸着対象物の大きさに対して有効な多孔状態を有するため、臭い成分を吸着することができる。
【0021】
無機多孔体は、任意の平均粒子径のものを選択することができるが、ヒートシール性及び均一なシール層10を形成する観点から、無機多孔体の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上3μm以下である。無機多孔体の平均粒子径が0.1μm未満の場合、無機多孔体が凝集し、シール層10の中で均一な分散性が抑制されるおそれがある。また、無機多孔体の平均粒子径が10μmよりも大きい場合には、無機多孔体が均一なシール層10の形成を阻害することにより、シール層10のヒートシール性が低下するおそれがある。これにより、アルミニウム箔積層体30は、十分なヒートシール性を得ることができず、内容物2の保護密封性を損なうおそれがある。なお、無機多孔体の平均粒子径は、レーザー回折粒度分布装置(水分散)による測定に基づいて算出される。
【0022】
無機多孔体の形状は、特に限定されるものではなく、球状、棒状、楕円状等のいずれの形状であってもよい。また、無機多孔体の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、粉体状、塊状、粒状等が挙げられる。無機多孔体の形態は、ヒートシール性樹脂への均一な混練特性、シールコート剤の塗布のしやすさ、シール層10の形成のしやすさ等の観点から、粉体状或いは粒状であることが好ましい。
【0023】
シール層10における無機多孔体の含有量は、ヒートシール性を保持し且つ優れた消臭機能を得る観点から、好ましくは20質量%以上40質量%以下である。シール層10における無機多孔の含有量が20質量%未満の場合は、十分な消臭効果が得られないおそれがある。一方で、シール層10における無機多孔体の含有量が40質量%よりも多い場合は、十分なヒートシール性が得られないおそれがある。
【0024】
ヒートシール性樹脂としては、例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。ヒートシール性樹脂は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。また、ヒートシール性樹脂は、アルミニウム箔積層体30と容器部分1との熱溶着を容易にする観点から、容器部分1を形成する樹脂材料と同じ系統の樹脂材料であることが好ましい。ヒートシール性樹脂は、容器部分1の樹脂材料によってこれらの中から選択することができる。
【0025】
シール層10におけるヒートシール性樹脂の含有量は、ヒートシール性を保持する観点から、好ましくは60質量%以上80質量%以下である。
【0026】
シール層10の坪量(単位面積当たりの質量)は、ヒートシール性を保持し且つ優れた消臭機能を得る観点から、2g/m2以上10g/m2以下であることが好ましい。また、アルミニウム箔積層体30をPTP包装体100の蓋材として用いる場合に、蓋材としての機能を保持し且つコストを抑制する観点から、シール層10の坪量は、3g/m2以上7g/m2以下であることがより好ましい。シール層10の厚さは、上記と同様の観点から、好ましくは2μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上7μm以下である。シール層10の坪量が2g/m2未満の場合は、シール層10と容器部分1とを熱溶着した際に、十分な密封性能を確保できないおそれがある。一方で、シール層10の坪量が10g/m2よりも多い場合は、シール層10の外観を損なうおそれがある。
【0027】
PTP包装体100内に密封された内容物2から発生する臭い成分を十分に吸着するためには、多量の吸着剤が必要であると考えられている。このため、特許文献1では、吸収層のうち吸着剤が添加される中間層を60μmとしている。一方で、蓋材のシール層10の厚みは、コストの低減及びアルミニウム箔への印刷の明瞭な視認性を確保するために、10μm程度が上限である。このため、従来はシール層10に臭い成分を十分に吸着できるだけの吸着剤を添加することはできないと考えられていた。
【0028】
さらに、シール層10に多量の吸着剤を添加すると、容器部分1へのヒートシール性が低下するため、シール層10に吸着剤を添加することはこれまで検討されてこなかった。その代わり特許文献2のように、吸着剤を蓋材の内容物2を収容する凹部1aに面する部分にのみ設け、それ以外の蓋材の平面部1bと熱溶着される部分には、吸着剤を含まないヒートシール性を有する層のみを設ける構成が検討されている。
【0029】
本願発明者はこのような従来の考え方を疑って様々な検討を行い、シール層10における吸着剤の無機多孔体の含有量とシール層10の坪量とが上記の条件を満たす場合にのみ、十分な消臭効果と大きなシール強度を両立させることができると共に、コストを低減できることを見いだした。さらに、上記の条件を満たす場合には、アルミニウム箔に施された印刷の視認性も十分に確保できる。
【0030】
基材20の表面へのシールコート剤の塗工方法としては、特に限定されるものではないが、施工性の観点から、例えばグラビアコートが好ましい。また、シールコート剤は、ヒートシール性を保持し且つ優れた消臭機能を有する均一なシール層10を形成する観点から、有機溶剤を用いて調製することが好ましい。シールコート剤は、有機溶剤に無機多孔体を分散させると共に、ヒートシール性樹脂を溶解させることで調製することができる。
【0031】
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒及びこれらの混合物等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。なお、シールコート剤は、有機溶剤に予め無機多孔体を分散させずに、ヒートシール性樹脂に直接無機多孔体を分散させて調製することもできる。
【0032】
シール層10は、このシールコート剤を基材20の表面にグラビアコートした後、乾燥させることにより形成することができる。これにより、基材20上にシール層10を形成したアルミニウム箔積層体30を得ることができる。また、アルミニウム箔積層体30のシール層10と容器部分1とを当接させた状態で、基材20のシール層10が設けられる面と反対側の面から加熱及び加圧することで、シール層10と容器部分1の平面部1bとが熱溶着される。これにより、アルミニウム箔積層体30を蓋材として用いたPTP包装体100を得ることができる。
【0033】
以上の構成の実施形態に係るアルミニウム箔積層体30は、シール層10に含まれる無機多孔体が内容物2から発生する臭い成分を吸着するため、優れた消臭機能を得ることができる。また、シール層10は、無機多孔体を含有していても、ヒートシール性を有するため、従来からの製造工程を増やすことなく優れた消臭機能を付加したアルミニウム箔積層体30を実現することができる。
【0034】
更に、実施形態に係るアルミニウム箔積層体30は、既存の容器部分1と熱溶着できるため、臭気を発生する内容物2を包装する場合には、既存の容器部分1及び設備を使用し、蓋材をアルミニウム箔積層体30に変更するだけで消臭機能を有するPTP包装体100を得ることができる。これにより、消臭機能を有するPTP包装体100の製造にかかるコストを抑えることもできる。
【0035】
なお、上記実施形態では、基材20の直上にシール層10が設けられた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、必要に応じて基材20とシール層10との間に任意の層が介設されていてもよい。任意の層としては、例えば印刷層等が挙げられる。印刷層を設ける場合には、シール層10を形成するシールコート剤が透明であるため、印刷層の視認性を確保することができる。印刷層を形成するために使用する印刷インキは、従来から使用されているものを使用することができる。
【0036】
また、基材20におけるシール層10と反対側の面にも、印刷層を設けることができる。アルミニウム箔積層体30と容器部分1とを熱溶着する際には、基材20のシール層10と反対側の面から加熱及び加圧されるため、印刷層の上に更に耐熱性を有する被覆層を設けることもできる。
【実施例】
【0037】
[評価試験1]
以下の実施例1-1及び比較例1-1のアルミニウム箔積層体を作製した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0038】
<実施例1-1>
有機溶剤のメチルエチルケトンとトルエンの混合物に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂63質量部と、粉体状のゼオライト(平均粒子径2μm)37質量部とを投入して撹拌することによりシールコート剤を調製した。そして、シール層の坪量が4.5g/m2になるようにシールコート剤をアルミニウム箔からなる基材の表面にグラビアコートした後に、乾燥させた。これにより、基材上にシール層を形成したアルミニウム箔積層体を得た。このアルミニウム箔積層体を実施例1-1とした。
【0039】
<比較例1-1>
シールコート剤にはゼオライトを添加せず、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のみにより構成されるようにしたことを除いて実施例1-1と同様にして得たアルミニウム箔積層体を比較例1-1とした。
【0040】
【0041】
(試験方法)
<ジアセチル減少率>
サンプリングバッグ(スマートバッグPA AF-5、ジーエルサイエンス社製)に、実施例1-1のアルミニウム箔積層体を入れ、清浄空気を3L注入した。その後、ジアセチルを初期濃度400ppmになるように注入し、所定時間毎にジアセチルの濃度を測定した。ジアセチル濃度は、ガス検知管(アセトアルデヒドNo.92、ガステック社製)を用いて測定した。なお、ガス検知管の測定下限値が25ppmであるため、ジアセチル濃度25ppm以下(ガス検知管のメモリ0以上10以下)は、測定不可とした。
【0042】
ジアセチル注入直後のサンプリングバック内のジアセチル濃度を100%として、24時間、48時間放置後のサンプリングバッグ内におけるジアセチル減少率を確認した。
【0043】
比較例1-1のアルミニウム箔積層体についても、実施例1-1のアルミニウム箔積層体と同様にしてジアセチル減少率を確認した。
【0044】
<シール強度>
実施例1-1及び比較例1-1のそれぞれのアルミニウム箔積層体におけるシール層と、厚さ200μmのポリ塩化ビニル樹脂フィルムとを熱溶着し、シール強度(N/15mm)を測定した。溶着条件は、溶着温度150℃、溶着時間1秒、溶着圧力0.29MPaとした。なお、シール強度が10N/15mm以上であれば、内容物の保護密封が十分に行われると考えられる。
【0045】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。表1によれば、ゼオライトを含有する実施例1-1は、48時間後のジアセチル減少率が90%以上であり、ジアセチルの臭いは確認できなかった。また、実施例1-1は、ゼオライトを含有しない比較例1-1と同程度のシール強度であることが分かる。
【0046】
これにより、実施例1-1のアルミニウム箔積層体は、優れた消臭機能を有していると共に、内容物の保護密封に必要なシール強度を保持していることが分かる。
【0047】
[評価試験2]
以下の実施例2-1~2-19及び比較例2-1~2-4のアルミニウム箔積層体を作製した。それぞれの構成は表2にも示す。
【0048】
<実施例2-1~2-7>
有機溶剤のメチルエチルケトンとトルエンの混合物に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂80質量部と、粉体状のゼオライト(平均粒子径2μm)20質量部とを投入して撹拌することによりシールコート剤を調製した。そして、シール層の坪量が2.0g/m2になるようにシールコート剤をアルミニウム箔(厚さ20μm)からなる基材の表面にグラビアコートした後に、乾燥させた。これにより、基材上にシール層を形成したアルミニウム箔積層体を得た。このアルミニウム箔積層体を実施例2-1とした。
【0049】
また、実施例2-2~2-7は、シール層の坪量をそれぞれ3.0g/m2、4.0g/m2、5.0g/m2、6.0g/m2、7.0g/m2及び10.0g/m2としたことを除いて実施例2-1と同様にして得たアルミニウム箔積層体である。
【0050】
<実施例2-8~2-13>
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を70質量部、ゼオライトを30質量部としたこと、及び、シール層の坪量を3.0g/m2としたことを除いて実施例2-1と同様にして得たアルミニウム箔積層体を実施例2-8とした。
【0051】
また、実施例2-9~2-13は、シール層の坪量をそれぞれ4.0g/m2、5.0g/m2、6.0g/m2、7.0g/m2及び10.0g/m2としたことを除いて実施例2-8と同様にして得たアルミニウム箔積層体である。
【0052】
<実施例2-14~2-19>
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を60質量部、ゼオライトを40質量部としたこと、及び、シール層の坪量を3.0g/m2としたこと除いて実施例2-1と同様にして得たアルミニウム箔積層体を実施例2-14とした。
【0053】
また、実施例2-15~2-19は、シール層の坪量をそれぞれ4.0g/m2、5.0g/m2、6.0g/m2、7.0g/m2及び10.0g/m2としたことを除いて実施例2-14と同様にして得たアルミニウム箔積層体である。
【0054】
<比較例2-1>
シールコート剤にはゼオライトを添加せず、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂のみにより構成されるようにしたことを除いて実施例2-1と同様にして得たアルミニウム箔積層体を比較例2-1とした。
【0055】
<比較例2-2>
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を90質量部としたこと、及び、ゼオライトを10質量部としたことを除いて実施例2-1と同様にして得たアルミニウム箔積層体を比較例2-2とした。
【0056】
<比較例2-3>
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を50質量部としたこと、ゼオライトを50質量部としたこと、及び、シール層の坪量を3.0g/m2としたことを除いて実施例2-1と同様にして得たアルミニウム箔積層体を比較例2-3とした。
【0057】
<比較例2-4>
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を40質量部としたこと、ゼオライトを60質量部としたこと、及び、シール層の坪量を5.0g/m2としたことを除いて実施例2-1と同様にして得たアルミニウム箔積層体を比較例2-4とした。
【0058】
【0059】
(試験方法)
<消臭性能>
バイアル瓶(容量100ml)に、4枚の実施例2-1のアルミニウム箔積層体(10cm角)を入れた。そこに、蒸留水で希釈したジアセチル(100ppm)を注入し、恒温恒湿槽に入れて16時間放置した。その後、官能評価により消臭性能を確認した。
【0060】
実施例2-2~2-19及び比較例2-1~2-4のそれぞれのアルミニウム箔積層体についても、実施例2-1と同様にして官能評価により消臭性能を確認した。
【0061】
顕著な消臭効果が確認された場合はA、顕著とまでは言えないが十分な消臭効果あると確認された場合はB、消臭効果が確認されない場合はC、と判定した。
【0062】
<シール性能>
実施例2-1~2-19及び比較例2-1~2-4のそれぞれのアルミニウム箔積層体について、試験評価1と同様にしてシール強度(N/15mm)を測定した。シール強度が10N/15mm以上であれば、内容物の保護密封が十分に行われるので、十分なシール性能を有するとしてA、10N/15mm未満であれば、内容物の保護密封が十分に行われないので、シール性能が不十分であるとしてB、と判定した。
【0063】
(試験結果)
試験結果を表2に示す。なお、消臭機能を有する蓋材としては、消臭性能がA又はBと判定され、且つシール性能がAと判定されたものが好ましいと考えられる。
【0064】
表2によれば、実施例2-1~2-19のいずれも、消臭性能がA又はBと判定され、且つ、シール性能がAと判定されている。このため、実施例2-1~2-19のいずれも、顕著又は十分な消臭性能を有していると共に、内容物の保護密封に必要なシール性能を有していることが分かる。
【0065】
比較例2-1及び2-2は、シール性能がAと判定されている一方で、消臭性能がCと判定されている。このため、ゼオライトの含有量が20質量%未満の場合には、消臭性能を有しないことが分かる。
【0066】
比較例2-3及び2-4は、消臭性能がAと判定されている一方で、シール性能がBと判定されている。このため、ゼオライトの含有量が40質量%よりも多い場合には、内容物の保護密封に必要なシール性能を有しないことが分かる。
【0067】
以上の評価試験2より、アルミニウム箔積層体において、ゼオライトの含有量を20質量%~40質量%にすると共に、シール層の坪量を2.0g/m2~10.0g/m2とすることにより、優れた消臭性能とシール性能の両方を兼ね備えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 容器部分
1a 凹部
1b 平面部
2 内容物
10 シール層
20 基材
30 PTP包装用アルミニウム箔積層体
100 PTP包装体