(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】染毛用または脱色用第1剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20241112BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241112BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20241112BHJP
A61Q 5/08 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/73
A61Q5/10
A61Q5/08
(21)【出願番号】P 2021011745
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】松崎 晃一
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0259453(US,A1)
【文献】特開2001-181159(JP,A)
【文献】特表2005-519658(JP,A)
【文献】特開2009-173574(JP,A)
【文献】特開2022-061701(JP,A)
【文献】特開2001-328927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する染毛用または脱色用第1剤組成物であって、
(A)
カルボキシビニルポリマーまたは、カルボキシメチルセルロースから選ばれる1種以上
を
1.5~3質量%含有し、
炭素数12~24の高級アルコール
、炭化水素
および、油性成分を実質的に含有せず、
前記染毛用または脱色用第1剤組成物の調製直後の粘度(V)に対する5℃の冷温機で30日間保存後の粘度(V5)の比(V5)/(V)および、前記染毛用または脱色用第1剤組成物の調製直後の粘度(V)に対する40℃の保温機で30日間保存後の粘度(V40)の比(V40/V)が、ともに0.9~1.1であり、
透明な外観を有することを特徴とする染毛用または脱色用第1剤組成物。
【請求項2】
前記染毛用または脱色用第1剤組成物の20℃における粘度が、5,000~100,000mPa・sであることを特徴とする請求項
1に記載の染毛用または脱色用第1剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛用または脱色用第1剤組成物に関する。さらに詳しくは、アルカリ剤を含有する染毛用または脱色用第1剤組成物であって、透明な外観を有し、低温および高温条件下においても経時的粘度変化の少ない染毛用または脱色用第1剤組成物に関する。
【0002】
近年のファッション意識の高まりから、手軽に髪の色を変化させることのできるヘアカラーリング剤は、男女問わず多くの人に受け入れられている。ヘアカラーリング剤には、永久染毛剤、半永久染毛料、脱色剤および一時着色料など、様々な種類があり、それぞれのニーズによって使用される。なかでも永久染毛剤および脱色剤は、染毛および脱色効果に優れ、この特性から現在多くの人に使用されているヘアカラーリング剤である。
【0003】
永久染毛剤および脱色剤として、酸化染料を含有し、あるいは含有せず、アルカリ剤を含有する第1剤組成物と、過酸化水素などの酸化剤を含有する第2剤組成物からなる二剤式が広く利用されている。これらは、染毛用または脱色用第1剤および第2剤組成物を使用の直前に混合して染毛または脱色を行う。混合方法としては
(1):染毛用または脱色用第1剤および第2剤組成物を容器からトレーやカップなどの混合容器もしくは使用者の掌の上に別々に吐出し、毛髪に塗布する前に予め混合する混合方法。
(2):染毛用または脱色用第1剤および第2剤組成物を容器からブラシやハケなどの塗布具もしくは使用者の掌の上に別々に吐出し、毛髪に塗布すると同時に混合する混合方法。
(3):染毛用または脱色用第1剤および第2剤組成物を容器から別々に吐出し、毛髪に染毛用または脱色用第1剤および第2剤組成物を別々に塗布した後に、ブラシやハケなどの塗布具または使用者の手を用いて毛髪上で混合する混合方法。
(4):染毛用または脱色用第1剤および第2剤組成物がエアゾール型で構成される場合、エアゾール容器から吐出する際にエアゾール容器内やアクチュエーター内で混合される機構を有する器具により混合する混合方法。
などが挙げられる。
【0004】
いずれの混合方法においても、染毛用および脱色用第1剤および第2剤組成物の混合性が良好であること、毛髪上での混合組成物の伸び性が良好であること、塗布時に混合組成物の垂れ落ちのなさや飛び散りのなさが良好であることが求められる。また、上記混合方法(2)や(3)においては、混合組成物だけではなく、染毛用または脱色用第1剤および第2剤組成物それぞれに、毛髪上での混合組成物の伸び性が良好であること、塗布時の垂れ落ちのなさや飛び散りのなさが良好であることが求められる。
【0005】
染毛用および脱色用第1剤および第2剤組成物の剤形としては、液状またはクリーム状のものが一般的である。液状の組成物は粘度が低く混合性が良好であり、髪全体への伸び性が良好である反面、塗布時の垂れ落ちや飛び散りが起こりやすい。クリーム状の組成物は、液状の組成物に比べ粘度が高いので、塗布時の垂れ落ちや飛び散りが起こりにくい。しかしながらクリーム状の組成物は、粘度調整を目的として、炭素数12~24の高級アルコールや炭化水素などの油性成分を多量に配合するため、経時的に、特に低温条件下においては粘度上昇が起こりやすい。また、酸化染料やアルカリ剤など多量の塩を含有する染毛用および脱色用第1剤組成物は、経時的安定性が低下しやすく、特に高温条件下においては粘度低下が起こりやすい。粘度変化が起こると、結果として第2剤組成物との混合性の低下や、伸び性の低下、塗布時の垂れ落ちや飛び散りといった様々な不具合を引き起こす。そのため経時的粘度変化が少ない染毛用または脱色用第1剤組成物が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-328927号公報
【文献】特開2018-123062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、経時的粘度変化が少なく、混合や塗布などの操作性に優れ、垂れ落ちや飛び散りがなく、良好な染毛性を有する、染毛剤第1剤組成物が開示されている。しかしながら、経時的粘度変化に関しては25℃条件下での検討に留まり、低温条件下や高温条件下においての経時的粘度変化の関しては考慮されていない。
【0008】
特許文献2には、粘度上昇の原因となりうる炭素数12~24の高級アルコールや炭化水素を含有せず、イオン性ポリマーを含有し、良好な毛髪への塗布性と吐出性を有する、ゲル状毛髪組成物が開示されている。しかしながら特許文献2は酸性染料を用いたヘアマニキュアのみの実施例に留まり、またpHは3.5である。前述したように、染毛用または脱色用第1剤組成物は、酸化染料やアルカリ剤など多量の塩を含有するため、経時安定性が低下しやすく、またpHは9~12付近であるため、ヘアマニキュアとは技術要素が大きく異なる。特許文献2では染毛用または脱色用第1剤組成物に関しては十分な検討がなされていない。
【0009】
また、従来の染毛用または脱色用第1剤および第2剤組成物において、その外観は乳濁色のものがほとんどである。染毛用または脱色用第1剤組成物の外観が透明であれば、第2剤組成物との混合度合いの確認が容易な上、乳濁色に比べ美的外観に優れることから、使用者に良好な印象を与えることも期待できる。
【0010】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、アルカリ剤を含有する染毛用または脱色用第1剤組成物であって、透明な外観を有し、低温および高温条件下においても経時的粘度変化の少ない染毛用または脱色用第1剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、アルカリ剤を含有する染毛用または脱色用第1剤組成物に、アニオン性高分子を含有させ、炭素数12~24の高級アルコールおよび炭化水素を実質的に含有しないことにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、アルカリ剤を含有する染毛用または脱色用第1剤組成物であって、
(A)アニオン性高分子
を含有し、
炭素数12~24の高級アルコールおよび炭化水素を実質的に含有せず、透明な外観を有することを特徴とする染毛用または脱色用第1剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の染毛用または脱色用第1剤組成物は、透明な外観を有し、低温および高温条件下においても経時的粘度変化が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0015】
本発明における低温とは0℃~10℃程度を、高温とは35℃~45℃程度を意味するものである。
【0016】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物は、低温および高温条件下における経時的粘度変化の観点から、(A)アニオン性高分子を含有する。
【0017】
本発明で用いられる前記(A)成分としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、ファーセラン、アラビアガム、ガッチガム、カラヤガム、トラガントガム、ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレン(25)ベヘニルエーテル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・ネオデカン酸ビニル共重合体、(アクリル酸アルキル・オクチルアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸セテス-20)コポリマー、(アクリレーツ/アミノアクリレート/C10-30アクリルPEG-20イタコン酸)コポリマー、メタクリル酸アルキル(C1~C4およびC8)、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を含有することができる。そのなかでも低温および高温条件下における経時的粘度変化の観点の観点から、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、特に限定されないが、1~5%が好ましく、1.5~3%がより好ましい。前記(A)成分の含有量が1%未満の場合、また前記(A)成分の含有量が5%を超える場合、低温および高温条件下における経時的粘度変化が大きくなる恐れがある。
【0019】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物は、低温および高温条件下における経時的粘度変化および透明性の観点から、炭素数12~24の高級アルコールおよび炭化水素を実質的に含有しないことが好ましい。なお、実質的に含有しないとは、意図して含有させないという意味であり、不可避的に含有する場合(原料に含有されている未反応物や副生成物)を包含するという趣旨でもある。
【0020】
前記炭素数12~24の高級アルコールの具体例としては、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、2-デシルテトラデカノールなどが挙げられる。
【0021】
前記炭化水素の具体例としては、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、セレシルなどが挙げられる。
【0022】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物は、低温および高温条件下における経時的粘度変化および透明性の観点から、炭素数12~24の高級アルコールおよび炭化水素以外の油性成分の含有量が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0023】
前記炭素数12~24の高級アルコールおよび炭化水素以外の油性成分としては、例えば、油脂、ロウ、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステルなどが挙げられる。
【0024】
前記油脂の具体例としては、オリーブ油、ツバキ油、シア油、ヒマワリ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、マカダミアンナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油、アボガド油、モモ核油、ローズヒップ油、アルガン油、オレンジ油、イランイラン花油、キョウニン油、コーン油、ザクロ種子油、ゴマ油、スペアミント油、トウツバキ種子油、ハッカ油、ヒポファエラムノイデス種子油、ニゲラサチバ種子油、ニオイテンジクアオイ油、ベルガモット種子油、ヘチマ種子油、ミンク油、メドウフォーム油、ユーカリ油、ユチャ油、レモン果実油、ローズマリー油、サンフラワー油、落下生油、綿実油、ピスタシオ油、ククイナッツ油などが挙げられる。
【0025】
前記ロウの具体例としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、コメヌカロウ、セラックロウ、ラノリンなどが挙げられる。
【0026】
前記高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン酸などが挙げられる。
【0027】
前記アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル、ジイソノニルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
前記エステルの具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、リシノール酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸2-オクチルドデシル、オレイン酸2-オクチルドデシル、リノール酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメリロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、テトラミリスチン酸ペンタエリスリトール、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、ネオペンタン酸2-オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸2-ヘキシルデシル、2-エチルヘキサン酸イソステアリル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、ジメチルオクタン酸2-ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸2-オクチルドデシル、イソパルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸2-オクチルなどが挙げられる。
【0029】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物は、染毛性および脱色性の観点からアルカリ剤を含有する。
【0030】
本発明で用いられる前記アルカリ剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、アルカノールアミン、有機アミン、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、リン酸塩、塩基性アミノ酸などが挙げられ、これらの1種または2種以上を含有することができる。
【0031】
本発明で用いられる前記アルカノールアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
【0032】
本発明で用いられる前記有機アミンの具体例としては、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、モルホリン、グアニジンなどが挙げられる。
【0033】
本発明で用いられる前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。
【0034】
本発明で用いられる前記炭酸塩の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0035】
本発明で用いられる前記炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられる。
【0036】
本発明で用いられる前記メタケイ酸塩の具体例としては、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、メタケイ酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0037】
本発明で用いられる前記リン酸塩の具体例としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウムなどが挙げられる。
【0038】
本発明で用いられる前記塩基性アミノ酸の具体例としては、アルギニン、リジン、ヒスチジンなどが挙げられる。
【0039】
本発明に用いる前記アルカリ剤は、染毛性と脱色性の観点から、アンモニア、アルカノールアミンが好ましい。
【0040】
本発明で用いられる前記アルカリ剤の含有量は、特に限定されないが、染毛性および脱色性の観点から、0.5~8%が好ましい。前記アルカリ剤の含有量が0.5%未満の場合、十分な染毛性および脱色性が得られない恐れがある。また前記アルカリ剤の含有量が8%を超える場合、染毛性および脱色性はそれ以上の向上を期待できにくい。
【0041】
本発明における染毛用第1剤組成物は、染毛性の観点から、酸化染料を含有する。
【0042】
本発明で用いられる前記酸化染料としては、特に限定されないが、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、オルトアミノフェノール、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、5-アミノオルトクレゾール、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、1-ナフトール、レゾルシンおよびそれらの塩類などが挙げられ、その他、「医薬部外品原料規格2006 統合版」(2013年11月発行、薬事日報社)に収載されたものも適宜用いることができる。これらは1種または2種以上を含有することができる。
【0043】
本発明で用いられる前記酸化染料の含有量は、特に限定されないが、染毛性の観点から、0.2~10%が好ましい。前記酸化染料の含有量が0.2%未満の場合、十分な染毛性が得られない恐れがある。また前記酸化染料の含有量が10%を超える場合、染毛性はそれ以上の向上を期待できにくい。
【0044】
なお、本発明における酸化染料の含有量とは、酸化染料の純分換算の含有量を意味する。例えば、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノールなどの塩の形態の酸化染料については、塩ではない形態における質量に換算した含有量を意味する。
【0045】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物の外観は、美的外観の観点から、透明である。
【0046】
本発明における透明とは、フォント11の文字を印刷した紙の上に、5gの染毛用または脱色用第1剤組成物を5cm四方に均一に塗り広げ、文字が読める程度の状態であることを意味する。
【0047】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物の粘度は、特に限定されないが、20℃の条件下で5,000~100,000mPa・sが好ましく、1,000~70,000mPa・sがより好ましく、20,000~40,000mPa・sがさらに好ましい。染毛用または脱色用第1剤組成物の粘度が5,000mPa・s未満の場合、塗布時に垂れ落ちや飛び散りが起こる恐れがある。また染毛用または脱色用第1剤組成物の粘度が100,000mPa・sを超える場合、染毛用または脱色用第2剤組成物との混合性および毛髪への塗布性が低下する恐れがある。
【0048】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物の粘度は、140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し20℃の条件下にてB型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、粘度50,000mPa・s未満では回転速度12rpm、粘度50,000mPa・s以上では回転速度6rpmの条件下で測定したものである。
【0049】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物の調製直後の粘度(V)は、常法にて調製して得られた染毛用または脱色用第1剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で1日間静置し調温した後に測定したものである。
【0050】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物の5℃の冷温機で30日間保存後の粘度(V5)は、常法にて調製して得られた染毛用または脱色用第1剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填した後、5℃の冷温機で30日間保存後、冷温機から取り出し、20℃で1日間放置し調温した後に測定した。粘度(V)に対する粘度(V5)の比(V5/V)は、低温条件下における経時的粘度変化の観点から、0.7~1.3であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましく、0.9~1.1であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物の40℃の保温機で保存後の粘度(V40)は、常法にて調製して得られた染毛用または脱色用第1剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填した後、40℃の保温機で30日間保存後、保温機から取り出し、20℃で1日間放置し調温した後に測定した。粘度(V)に対する粘度(V40)の比(V40/V)は、高温条件下における経時的粘度変化の観点から、0.7~1.3であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましく、0.9~1.1であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物は、上記成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分以外の通常の化粧料、医薬部外品、医薬品などに用いられる各種成分、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、HC染料、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、界面活性剤、ノニオン性高分子、両性高分子、カチオン性高分子、前記(A)成分以外のアニオン性高分子、シリコーン、多価アルコール、保湿剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、金属封鎖剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、香料などから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0053】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物の剤型は、毛髪への伸び性および塗布時の垂れ落ちや飛び散りの観点から、クリーム状、乳液状またはゲル状であることが好ましく、ゲル状であることがより好ましい。
【0054】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物のpHは、染毛性および脱色性の観点から、20℃の条件下で9~12が好ましい。
【0055】
本発明における染毛用または脱色用第1剤組成物の20℃の条件下でのpHは、常法にて調製して得られた染毛用または脱色用第1剤組成物を20℃で1日間静置し調温した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、株式会社堀場製作所製)にて測定したものである。
【0056】
本発明に用いられる染毛用または脱色用第1剤組成物を充填および保存する容器は、特に限定されないが、ポリ容器、アルミチューブ容器、ポリチューブ容器、エアゾール容器、パウチ容器などが挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
本明細書に示す評価試験において、染毛用または脱色用第1剤組成物に含まれる成分およびその含有量を変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0059】
<外観>
本明細書に示す「外観」に係る評価試験においては、常法にて調製して得られた染毛用または脱色用第1剤組成物を、フォント11の文字を印刷した紙の上に5g量り取り、5cm四方に均一に塗り広げ、文字が読めるかを目視にて確認し、下記の評価基準のように評価した。
【0060】
<外観の評価基準>
透明:文字が読める。
不透明:文字を読むことができない。
【0061】
<低温条件下における経時的粘度変化>
本明細書に示す「低温条件下における経時的粘度変化」に係る評価試験においては、常法にて調製して得られた染毛用または脱色用第1剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填した後、5℃の冷温機で30日間保存後、冷温機から取り出し、20℃で1日間放置し調温した後に、B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、粘度50,000mPa・s未満では回転速度12rpm、粘度50,000mPa・s以上では回転速度6rpmの条件下で測定した。低温条件下における経時的粘度変化は、調製直後の粘度(V)に対する5℃の冷温機で30日間保存後の粘度(V5)の比(V5)/(V)を算出し下記の評価基準のように評価した。
【0062】
<低温条件下における経時的粘度変化の評価基準>
◎:0.9以上1.1未満
○:0.8以上0.9未満または1.1以上1.2未満
△:0.7以上0.8未満または1.2以上1.3未満
×:0.7未満または1.3以上
【0063】
<高温条件下における経時的粘度変化>
本明細書に示す「高温条件下における経時的粘度変化」に係る評価試験においては、常法にて調製して得られた染毛用または脱色用第1剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填した後、40℃の保温機で30日間保存後、保温機から取り出し、20℃で1日間放置し調温した後に、B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、粘度50,000mPa・s未満では回転速度12rpm、粘度50,000mPa・s以上では回転速度6rpmの条件下で測定した。低温条件下における経時的粘度変化は、調製直後の粘度(V)に対する40℃の保温機で30日間保存後の粘度(V40)の比(V40)/(V)を算出し下記の評価基準のように評価した。
【0064】
<高温条件下における経時的粘度変化の評価基準>
◎:0.9以上1.1未満
○:0.8以上0.9未満または1.1以上1.2未満
△:0.7以上0.8未満または1.2以上1.3未満
×:0.7未満または1.3以上
【0065】
表1および表2の実施例1から実施例14では、表1および表2の比較例1から比較例4と比較して、低温および高温条件下においても経時的粘度変化が少ない結果が得られた。
【0066】
【0067】
【0068】
以下に実施例12から実施例14を示す。
【0069】
(実施例12)
染毛用第1剤組成物
成 分 含有量(質量%)
(A)カルボキシビニルポリマー※1 1.5
塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール 0.2
トルエン-2,5-ジアミン 1.2
パラアミノフェノール 0.6
メタアミノフェノール 0.2
レゾルシン 0.8
5-アミノオルトクレゾール 0.2
モノエタノールアミン 6.4
アスコルビン酸 0.5
亜硫酸ナトリウム 0.2
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム 1.0
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体 0.3
精製水 残 分
合計 100.0
粘度(V) 22,980mPa・s
粘度(V5) 24,530mPa・s
粘度(V40) 24,260mPa・s
(V5)/(V) 1.07
(V40)/(V) 1.06
pH(20℃) 10.3
外観 透 明
※:Lubrizol株式会社製:CARBOPOL ULTREZ 10 POLYMER
【0070】
(実施例13)
染毛用第1剤組成物
成 分 含有量(質量%)
(A)カルボキシメチルセルロース※2 2.5
塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール 0.2
トルエン-2,5-ジアミン 1.2
パラアミノフェノール 0.6
メタアミノフェノール 0.2
レゾルシン 0.8
5-アミノオルトクレゾール 0.2
モノエタノールアミン 6.4
アスコルビン酸 0.5
亜硫酸ナトリウム 0.2
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム 1.0
精製水 残 分
合計 100.0
粘度(V) 42,980mPa・s
粘度(V5) 45,130mPa・s
粘度(V40) 42,120mPa・s
(V5)/(V) 1.05
(V40)/(V) 0.98
pH(20℃) 10.6
外観 透 明
【0071】
(実施例14)
脱色用第1剤組成物
成 分 含有量(質量%)
(A)カルボキシビニルポリマー※1 2.0
アンモニア水(25%) 4.0
エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム 0.5
精製水 残 分
合計 100.00
粘度(V) 35,600mPa・s
粘度(V5) 36,310mPa・s
粘度(V40) 33,800mPa・s
(V5)/(V) 1.02
(V40)/(V) 0.95
pH(20℃) 11.0
外観 透 明
【0072】
※1:Lubrizol株式会社製:CARBOPOL ULTREZ 10 POLYMER
※2:第一工業製薬株式会社製:CMC セロゲン HE-1500F
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、アルカリ剤を含有する染毛用または脱色用第1剤組成物であって、透明な外観を有し、低温および高温条件下においても経時的粘度変化の少ない染毛用または脱色用第1剤組成物を提供することができる。