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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】プログラム、ポンプ装置および装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
F04B49/06 311
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021068910
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022163839
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕大
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】新垣 彰平
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059485(JP,A)
【文献】特開2017-097666(JP,A)
【文献】特開2019-185336(JP,A)
【文献】特開2004-132179(JP,A)
【文献】特開2017-198162(JP,A)
【文献】特開2020-141340(JP,A)
【文献】特開昭62-225797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04B 49/10
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給液を行うポンプ装置と通信するコンピュータのプログラムであって、
前記コンピュータのプロセッサを、
前記ポンプ装置から、前記ポンプ装置の動作に関わるログ情報を受信する制御を行う受信制御部と、
前記ログ情報から前記ポンプ装置の状態を検出する検出部と
予め準備された情報に基づいて、前記ポンプ装置を遠隔で制御する制御情報を生成する遠隔制御部と、
前記遠隔制御部が生成した制御情報を前記ポンプ装置に送信する制御を行う送信制御部と、
前記検出部が検出した状態を報知する制御を行う報知制御部と
して機能させるプログラムであって、
前記遠隔制御部は、前記報知制御部が報知制御を行ってから所定の時間が経過した後に遠隔制御に用いられる情報を生成するプログラム
【請求項2】
さらに、前記検出部が検出した状態を、視覚的に表示する制御を行う表示制御部と
して前記プロセッサを機能させる、請求項に記載のプログラム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記ログ情報と、前記検出部が検出した状態とを、視覚的に区別可能に表示する制御を行う、請求項に記載のプログラム。
【請求項4】
前記検出部は、予め準備された基準となる情報と前記ログ情報とを比較して、前記ポンプ装置に障害が発生した状態を検出する、請求項乃至請求項のいずれかに記載のプログラム。
【請求項5】
前記検出部は、予め準備された標準の操作を示す情報と前記ログ情報に含まれる操作の情報とを比較して、誤った操作が行われた状態を検出する、請求項乃至請求項のいずれかに記載のプログラム。
【請求項6】
前記検出部は、予め準備された標準の設定を示す情報と前記ログ情報に含まれる設定の情報とを比較して、誤った設定が行われた状態を検出する、請求項乃至請求項のいずれかに記載のプログラム。
【請求項7】
前記遠隔制御部は、予め設定された範囲内で前記ポンプ装置を遠隔で制御する情報を生成する、請求項に記載のプログラム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプログラムを実行するコンピュータと通信する、ポンプ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプログラムを記憶する記憶部を具備する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、給液を行うポンプ装置と、そのポンプ装置と通信するコンピュータのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、ポンプ装置のメンテナンスにおいて、メンテナンス要員の高齢化や後継者不足が進み、遠隔地からの装置監視が望まれている。
しかしながら、遠隔地から装置監視を行う場合、作業員が現地に赴く場合と比べて、故障の判断や原因の究明、異常の発生前検知、誤設定の発見など、ポンプ装置の診断を正確に行うことが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-193933号公報
【文献】特許第6425803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ポンプ装置の診断を正確に行うことが可能なポンプ装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のポンプ装置は、ポンプ部と、ログ生成部と、記憶部と、通信部とを備える。ポンプ部は、給液を行うものであって、ログ生成部は、ポンプ部の動作に関わる情報に、時刻を示す情報を対応付けたログ情報を生成し、記憶部は、ログ生成部が生成したログ情報を記憶し、通信部は、記憶部が記憶するログ情報を外部に送信する。
【0006】
また実施形態のコンピュータのプログラムは、給液を行うポンプ装置と通信するコンピュータのプロセッサを、ポンプ装置から、ポンプ装置の動作に関わるログ情報を受信する制御を行う受信制御部と、ログ情報からポンプ装置の状態を検出する検出部として機能させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポンプ装置の診断を正確に行うことが可能なポンプ装置およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ポンプ管理システムの概略構成を示す図。
図2図1に示したポンプ装置の構成例を示す図。
図3図1に示したポンプ管理装置の構成例を示す図。
図4図1に示した外部装置の構成例を示す図。
図5図2に示したポンプ装置の障害ログ生成処理を説明するためのフローチャート。
図6図2に示したポンプ装置の障害ログ送信処理を説明するためのフローチャート。
図7図2に示したポンプ装置の診断用ログ送信処理を説明するためのフローチャート。
図8図4に示した外部装置の診断処理を説明するためのフローチャート。
図9図8に示した診断処理に含まれる異常対応処理を説明するためのフローチャート。
図10図8に示した診断処理に含まれる誤操作対応処理を説明するためのフローチャート。
図11図8に示した診断処理に含まれる誤設定対応処理を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施形態に係わるポンプ管理システムについて説明する。
図1は、実施形態に係わる、ポンプ装置100-1~100-nを含むポンプ管理システムの概略構成を示す図である。
【0010】
このポンプ管理システムは、ポンプ管理装置200が移動通信網NWを通じてポンプ装置100-1~100-nを管理するものであるとともに、ポンプ装置100-1~100-nのそれぞれと作業員が携帯する外部装置300が近距離無線通信で直接通信を行うことを可能としている。移動通信網NWは、例えば携帯電話システムのネットワークなどの公衆通信網である。
【0011】
ポンプ装置100-1~100-nは、例えば、建物や施設の地下などに設けられた設備室にそれぞれ設置され、受水槽に貯められた水や水道管本管から供給される浄水をモータの力によって駆動されたポンプで送水するものである。なお、このような浄水以外の液体を対象としたポンプ装置であってもよい。
【0012】
またポンプ装置100-1~100-nは、設置される建物や施設などに応じて好適するさまざまなタイプのポンプが存在するが、本実施形態の説明において、いずれのタイプのポンプ装置にも共通する点については、「ポンプ装置100」として説明する。すなわち、ポンプ装置100として説明する場合、いずれのポンプ装置100-1~100-nにも共通する構成と動作の説明である。
【0013】
基地局BSは、通信事業者が運営する移動通信システムの基地局装置であって、主として、スマートフォンや携帯電話機などと無線通信するものであるが、ポンプ装置100-1~100-nをはじめ、種々のIoT(Internet of Things)機器に搭載された通信ユニットと通信することも可能であり、これらの通信デバイスを移動通信網NWに接続する。
【0014】
ゲートウェイ装置GWは、移動通信網NWに接続され、移動通信網NWとポンプ管理装置200の間で、例えばプロトコル変換を行うネットワークノードとしての役割を果たし、移動通信網NWとポンプ管理装置200を相互接続する。
【0015】
ポンプ管理装置200は、ポンプ装置100-1~100-nの運用状態などを監視および管理、遠隔制御を行うものであって、例えば、監視や管理を行う事業者などの施設に設置され、ゲートウェイ装置GWおよび移動通信網NWを通じて、ポンプ装置100-1~100-nの運用状態の情報を収集、記録のほか、遠隔制御などを行う。
【0016】
外部装置300は、作業員が携帯する携帯型情報機器であって、例えば、スマートフォンやタブレット端末、ラップトップ型パーソナルコンピュータ(ノートパソコン)などの無線通信機能や情報処理機能を備え、ポンプ管理装置200のように、ポンプ装置100-1~100-nの運用状態の情報を収集、記録のほか、遠隔制御などを行うことが可能である。
【0017】
なお、図1の例では、作業員が外部装置300を操作する様子を示しているが、後述するように、外部装置300はポンプ装置100-1~100-nに接続して電力供給を受けて動作することが可能であり、作業員がポンプ装置100-1~100-nの設置現場にいなくても、自律して運用することができる。
【0018】
次に、図2を参照して、ポンプ装置100-1~100-nの構成について説明する。以下の説明では、ポンプ装置100-1~100-nに共通する部分については、ポンプ装置100として説明する。
ポンプ装置100は、ポンプ部100Pと、制御盤100Cとを主な構成要素として備える。
【0019】
ポンプ部100Pは、給液を行うものであり、1つまたは複数のポンプユニット、アキュムレータ、これらを繋ぐ給水路、逆止弁、各種センサを備えている。ポンプ部100Pは、例えば、制御盤100Cから供給される電力が制御されることにより、一次側のポンプ吸込口から吸い込んだ液体を増圧して圧送を行い、二次側のポンプ吐出口より液体を送出する。
【0020】
なお、ポンプ部100Pの形態については、ポンプ装置100-1~100-n毎に、様々なものが考えられるが一般的なタイプでも特殊なタイプでもポンプであればよいので、メカニズムやその動作などの詳細については省略する。またポンプ部100Pは、上述したような構成に限定されるものではない。
【0021】
制御盤100Cは、作業員からの指示や設定を受け付け、その指示や設定にしたがってポンプ部100Pの動作を制御するものであって、ポンプ部100Pの形態に応じた制御機能を有する。
【0022】
また、ポンプ装置100-1の制御盤100Cは、図2に示すように、電源回路110と、蓄電池111と、モバイルバッテリ112と、インタフェース113と、表示部120と、遠距離通信部130と、インタフェース131と、近距離通信部140と、インタフェース141と、操作部150と、通信コネクタ160と、センサインタフェース(I/F)170と、記憶部180と、制御部190とを備える。
【0023】
電源回路110は、インバータを備え、分電盤から供給される電力を上記ポンプユニット内のモータを駆動させるための交流電力に変換して供給することで、例えば、吐出する液体が目標の圧力となるように制御する機能を有するものである。
【0024】
また電源回路110は、分電盤から供給される電力をモバイルバッテリ112を充電するための直流電力に変換して供給する機能を備える。
【0025】
蓄電池111は、停電などにより分電盤から電力が供給されない場合に、制御盤100Cの一部機能を動作させるためのバックアップ電力を蓄えるためのものであって、その電力は電源回路110を通じて、必要とされる部位に供給される。
【0026】
モバイルバッテリ112は、インタフェース113に接続される外部装置300に動作用の電力を供給するバッテリであって、電源回路110のノイズフィルタ二次側から供給される電力によって充電される。なお、モバイルバッテリ112に代わって、外部装置300に動作電力を供給するアダプタ(あるいは充電器)を設けるようにしてもよい。
【0027】
すなわち、外部装置300は、インタフェース113を介して上記モバイルバッテリ112に接続されることで、作業員が付近にいない状態でも、長時間にわたって自律して動作することが可能となり、後に詳述するように、ポンプ装置100からログデータ180bや障害ログデータ180cなどの情報収集や、運用状態に診断や遠隔制御を行う。
【0028】
表示部120は、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル、7セグメントLED、LEDランプなどのデバイスを用いた表示装置であって、制御部190から与えられる情報を作業員や施設の管理者などに対して視覚的に示して、報知するものである。
【0029】
制御部190の制御によって表示部120に示される情報としては、当該ポンプ装置100の運用の状態や設定を示す情報、各種のログデータ、作業員の入力操作に対する応答、処理の結果などである。なお、視覚的な方法以外に、音(音声)などにより、作業員に情報を報知するようにしてもよい。
【0030】
遠距離通信部130は、例えば、LTE(登録商標)(Long-Term Evolution)、4G(4th Generation)あるいは5G(5th Generation)といった通信規格に準拠した通信ユニットであって、基地局BSと無線通信して、移動通信網NWおよびゲートウェイ装置GWを通じて、ポンプ管理装置200や外部装置300と通信する。
【0031】
また遠距離通信部130は、制御部190に接続されるインタフェース131に着脱自在な機構とインタフェースを備えており、故障やアップグレード、ファームウエアやプログラムの更新などのメンテナンスなどの場合に、必要に応じて取り外したり、交換され得る。
【0032】
なお、遠距離通信部130は、通信事業者が提供する通信サービスを利用するための加入者識別情報として、SIM(Subscriber Identity Module)を搭載し、上記加入者識別情報を用いて通信を行う。すなわち、遠距離通信部130を利用した通信では、通信事業者から通信料金の請求が生じる。
【0033】
SIMは、SIMカードでもよいし、eSIM(Embedded SIM)であってもよい。SIMカードの場合には、上記通信ユニットに、インタフェースとなるカードスロットを備え、着脱(交換)することが可能な機構を有する。
【0034】
また、通信事業者がSIM以外の方法でサービス加入者を識別(特定)する場合には、その方法に準じた識別情報(ID情報)を記憶する記憶デバイスを備える。
【0035】
近距離通信部140は、Bluetooth(登録商標)や無線LANなどの通信規格に準拠した通信ユニットであって、これらの通信規格に対応した種々の機器(パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット機器、その他の通信機器)と直接の無線通信を行う。すなわち、近距離通信部140を利用した通信では、通信のための費用は発生しない。
【0036】
また近距離通信部140は、制御部190に接続されるインタフェース141に着脱自在な機構とインタフェースを備えており、故障やアップグレード、ファームウエアやプログラムの更新などのメンテナンスなどの場合に、必要に応じて取り外したり、交換され得る。
【0037】
操作部150は、表示部120に表示されるソフトウェアキー上に設けられるタッチパネルや、複数のハードスイッチ(セレクトスイッチ)などであって、作業員からの要求や指示を受け付け、これを制御部190に伝達する。
【0038】
例えば、セレクトスイッチの1つは、ポンプ装置100の運転を切り替える設定を行うものであり、「停止」と「運転待機」の切り替えを行う。「停止」が設定される場合には、ポンプ部Pの運転は行われず、「運転待機」が設定される場合には、ポンプ部Pの運転が可能な状態であって、はじめに運転を待機した状態となり、諸条件が整うとポンプ部Pの運転が行われ、状況によっては再び待機状態となる。
【0039】
なお、操作部150は、上述したような物理的な接触を行う入力手段以外に、マイクロホンを備えて、入力された音声が示すコマンドを制御部190が認識して、作業員からの要求や指示を制御部190が受け付けるようにしてもよい。
【0040】
通信コネクタ160は、例えばRS-232Cなどのシリアル通信の規格に準拠した通信ケーブル(シリアルケーブル)を接続するためのコネクタであって、パーソナルコンピュータなどの制御機器を接続して制御や情報入力を行ったり、高精度な計測器(外部センサ)を接続して例えば出荷時に測定した高い精度の計測を行うために使用される。なお、信号を送受信するための通信インタフェースとしての機能は、制御部190が備える。
【0041】
センサインタフェース170は、当該ポンプ装置100内(あるいは外)に配備された各種センサを接続するためのインタフェースであって、各センサに動作電力を供給するとともに、制御部190からの指示を上記各種センサに与えたり、あるいは上記各種センサが検知した情報(検出結果)を制御部190に伝達する。
【0042】
なお、図2では、センサの例として、漏水センサ171、圧力センサ172、浸水センサ173、流量センサ174を示したが、これら以外のセンサ(例えば、より高精度なセンサ)を設け、センサインタフェース170を通じて各センサが検知した情報を制御部190に入力するようにしてもよい。
【0043】
漏水センサ171は、ポンプ部100P周りからの漏水を検出する。
圧力センサ172は、ポンプ部100Pによって送出される液体の圧力を検出する。
浸水センサ173は、洪水などによって、ポンプ装置100周りに浸水が発生したことを検出する。
流量センサ174は、ポンプ部100Pによって送出される液体の量を検出する。
【0044】
記憶部180は、SDRAM(Synchronous Dynamic RAM)、NANDフラッシュメモリやEPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリを用いたものである。
【0045】
そして記憶部180は、制御部190の制御プログラムや制御データを記憶する。また制御データの1つとして、制御テーブル180aを記憶するとともに、制御部190が収集して生成したデータとして、ログデータ180b、障害ログデータ180cをそれぞれ複数記憶することができる。
【0046】
制御テーブル180aは、ポンプ部100Pを制御するための設定値や、これらの設定値の標準的な許容範囲を示す範囲情報などや、センサの検出結果に基づいて故障を含む障害を検出するための判定値を故障や障害の名称やそれを示す障害識別子に対応付けたデータである。
【0047】
ログデータ180bは、所定期間における、各種センサの検出結果、制御部190が検出した情報(ポンプ装置100内の各部の状態、当該ポンプ装置100に対する動作設定や作業員の操作)のログを、時刻に対応付けたデータである。制御部190が検出した情報としては、インバータ情報(電流値、電圧値、周波数など)、各種の弁の開閉の設定、制御の設定(自動/手動)、作業員によるセレクトスイッチの設定などを含む。
【0048】
なお、記憶部180の記憶容量が逼迫しないように、制御部190は、ログデータ180bを、最新の所定数のみを記憶するように上書き保存する制御を行う。またログデータ180bは、操作部150を通じた作業員の指示に応じて、制御部190が記憶部180から読み出して、表示部120に表示され得る。
【0049】
障害ログデータ180cは、故障を含む各種の障害が発生した場合に、発生した時刻、および、その前後で検出された上記ログデータ180bをまとめたデータであって、制御部190によって生成される。
【0050】
なお、障害ログデータ180cには、障害の種別、発生した時刻、後述する個体識別子などが制御部190によって追加される。また障害ログデータ180cは、操作部150を通じた作業員の指示に応じて、制御部190が記憶部180から読み出して、表示部120に表示され得る。
【0051】
またこの表示において、検出した事実に基づく情報と、この情報に基づいて判定(あるいは推定)した情報とを別の色で区別して表示するように、制御部190が表示制御を行うようにしてもよい。この制御部190による表示制御は、文字のフォントの種別、太字と細字などの視覚的な差異があればよく、色分けに限定されるものではない。
【0052】
その他、記憶部180は、当該ポンプ装置100を他と区別するために当該ポンプ装置100に固有に与えられた識別情報として、個体識別子を記憶する。この個体識別子は、例えば、ポンプ管理装置200や外部装置300に送信されるデータに付加され、データの出所や属性などを示すために用いられ、ポンプ管理装置200や外部装置300においてデータの管理などに用いられる。なお、個体識別子は、例えば製造番号などであってもよい。
【0053】
制御部190は、当該制御盤100Cの各部を統括して制御するものであって、プロセッサやメモリを備える。メモリには、記憶部180から読み込んだ制御プログラムや制御データが記憶され、プロセッサが上記制御プログラムを実行して上記制御データにしたがって、種々の制御や処理を行う。すなわち、制御部190は、ログ生成部、検出部、消去部の一例でもある。
【0054】
上記の制御や処理において制御部190は、作業員からの指示を受け付け、その指示にしたがって当該ポンプ装置100の各部を統括して制御し、例えば、自動運転制御、ログデータ180bの生成、障害ログ生成処理、障害ログ送信処理、診断用ログ送信処理などを行う。
【0055】
自動運転制御は、予め行われた設定や、予め設定されたスケジュールにしたがって、例えば、運転周波数の切り替え、時刻などに応じたポンプの始動や停止、給水の圧力が目標値で一定となるような圧力制御、あるいは単位時間あたりの給水量が一定となる制御などの制御を行う。
【0056】
障害ログ生成処理は、各種センサの検出結果に基づいて、障害が発生した場合に、障害が発生した時刻のログデータ180bや、その前後のログデータ180bをまとめた障害ログデータ180cを生成する。なお、障害は、イベントの一例である。
【0057】
障害ログ送信処理は、障害ログデータ180cを、ポンプ管理装置200や外部装置300に送信する制御や、送信済みのデータを消去する処理を行う。
【0058】
診断用ログ送信処理は、ログデータ180bを、ポンプ装置100についての診断用の情報として、ポンプ管理装置200や外部装置300に送信する制御を行う。
【0059】
その他、制御部190は、現在の時刻を計時する時計機能を備える。また制御部190は、特定の処理(例えば、時計機能、通信制御、表示制御、入力受付処理など)を行わせるためのASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備えて、これが上記プロセッサと協働して動作するように構成してもよい。
【0060】
また制御部190は、1つまたは複数の回路基板で構成され、制御盤100Cの制御バスに接続されるスロットに着脱自在な機構を備えて、故障やアップグレード、ファームウエアやプログラムの更新などのメンテナンスなどの場合に、必要に応じて取り外したり、交換される構成としてもよい。
【0061】
図3を参照して、ポンプ管理装置200について説明する。
ポンプ管理装置200は、操作部210と、表示部220と、記憶部230と、データベース240と、ポンプ用通信部250と、制御部260とを備える。
【0062】
操作部210は、キーボードやマウスなどであって、管理者からの要求や指示を受け付け、これを制御部260に伝達する。
【0063】
表示部220は、液晶パネルや有機ELパネル、7セグメントLED、LEDランプなどのデバイスを用いた表示装置であって、制御部260から与えられる情報を管理者に対して視覚的に示すものである。例えば、表示部220は、制御部260からの制御により、検出された状態を視覚的に区別可能に表示してもよい。また例えば、表示部220は、制御部260からの制御により、ログデータ240bと、検出された状態とを、視覚的に区別可能に表示してもよい。
【0064】
記憶部230は、SDRAM、NANDフラッシュメモリやEPROMなどの半導体メモリを用いたものであって、制御部260の制御プログラムや制御データなどを記憶する。
【0065】
データベース240は、記憶部230よりも相対的に記憶容量の大きい記憶装置であって、半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体を備え、診断テーブル240aを予め記憶するとともに、ログデータ240bを記憶するために用いられる。
【0066】
診断テーブル240aは、当該ポンプ管理装置200が管理するポンプ装置100-1~100-nについて、診断を行う際に用いるデータテーブルである。具体的には、各種センサの検出値の正常値の範囲情報、ポンプ部100Pを制御するための設定値、この設定値の標準的な許容範囲を示す許容範囲情報、過去に正常な運転が行われていた際の設定値や操作(セレクトスイッチの設定など)のログ、遠隔操作(遠隔制御)の可否(許可/不許可)、特別な事情に基づく設定値の情報などを、上記データテーブルは含む。
【0067】
ログデータ240bは、ポンプ装置100から受信したログデータ180bや障害ログデータ180cであって、ポンプ装置100-1~100-n毎に集計が可能なように記憶される。
【0068】
ポンプ用通信部250は、ゲートウェイ装置GWおよび移動通信網NWを通じてポンプ装置100と通信する。
【0069】
制御部260は、プロセッサやメモリを備える。メモリには、記憶部230から読み込んだ制御プログラムや制御データが記憶され、プロセッサが上記制御プログラムを実行して上記制御データにしたがって、種々の制御や処理を行う。なお、制御部260は、送信制御部一例であるとともに、現在の時刻を計時する時計機能を備える。すなわち、制御部260は、受信制御部、検出部、表示制御部、遠隔制御部、報知制御部の一例でもある。
【0070】
上記の制御や処理において制御部260は、管理者からの指示を受け付け、その指示にしたがって当該ポンプ管理装置200の各部を統括して制御を行ったり、予め設定された時刻や周期的なタイミングで、管理処理や診断処理を行う。
【0071】
管理処理は、ポンプ装置100から送信されるログデータ180bや障害ログデータ180cを上記ログデータ240bとして保存したり、ログデータが所定のタイミングで送られて来ない場合に、その旨を該当するポンプ装置100に送信して、ログデータの送信を促すなどの処理を行う。
【0072】
なお、管理処理では、その他、ポンプ装置100に対して任意のタイミングでログデータの送信を要求したり、あるいは、ポンプ装置100に対してログデータの送信時刻を設定するようにしてもよい。
【0073】
診断処理は、診断テーブル240aのデータと、ポンプ装置100から取得したログデータ180bに基づいて、異常の発生や誤操作や誤設定を検出し、それぞれに応じた対応処理(遠隔制御を含む)を行うものである。
【0074】
図4を参照して、外部装置300について説明する。
外部装置300は、操作部310と、表示部320と、遠距離通信部330と、近距離通信部340と、電源回路350と、バッテリ351と、記憶部360と、制御部370を備える。
【0075】
操作部310は、タッチパネルやキースイッチなどであって、作業員からの要求や指示を受け付け、これを制御部370に伝達する。
【0076】
表示部320は、液晶パネルや有機ELパネルなどのデバイスを用いた表示装置であって、制御部370から与えられる情報を管理者に対して視覚的に示すものである。例えば、表示部320は、制御部370からの制御により、検出された状態を視覚的に区別可能に表示してもよい。また例えば、表示部320は、制御部370からの制御により、ログデータ360bと、検出された状態とを、視覚的に区別可能に表示してもよい。
【0077】
遠距離通信部330は、例えば、LTE、4Gあるいは5Gといった通信規格に準拠した通信部であって、基地局BSと無線通信して、移動通信網NWおよびゲートウェイ装置GWを通じて、ポンプ装置100やポンプ管理装置200と通信する。
【0078】
なお、遠距離通信部330は、通信事業者が提供する通信サービスを利用するための加入者識別情報として、SIMを搭載し、上記加入者識別情報を用いて通信を行う。SIMは、SIMカードでもよいし、eSIMであってもよい。
【0079】
近距離通信部340は、Bluetoothや無線LANなどの通信規格に準拠した通信部であって、これらの通信規格に対応した種々の機器(ポンプ装置100,パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット機器、その他の通信機器)と直接の無線通信を行う。
【0080】
電源回路350は、ACアダプタやモバイルバッテリ112から供給される電力や内蔵するバッテリ251から供給される電力を必要に応じて変圧し、当該外部機器の各部に動作電力として供給する。
【0081】
記憶部360は、SDRAM、NANDフラッシュメモリやEPROMなどの半導体メモリを用いたものであって、制御部370の制御プログラムや制御データなどを記憶するとともに、診断テーブル360aとログデータ360bを記憶するために用いられる。
【0082】
診断テーブル360aは、当該外部装置300が診断するポンプ装置100-1~100-nについて、診断を行う際に用いるデータテーブルである。具体的には、各種センサの検出値の正常値の範囲情報、ポンプ部100Pを制御するための設定値、この設定値の標準的な許容範囲を示す許容範囲情報、過去に正常な運転が行われていた際の設定値や操作(セレクトスイッチの設定など)のログ、遠隔操作(遠隔制御)の可否(許可/不許可)、特別な事情に基づく設定値の情報などを、上記データテーブルは含む。
【0083】
ログデータ360bは、ポンプ装置100から受信したログデータ180bや障害ログデータ180cであって、ポンプ装置100-1~100-n毎に集計が可能なように記憶される。
【0084】
制御部370は、プロセッサやメモリを備える。メモリには、記憶部360から読み込んだ制御プログラムや制御データが記憶され、プロセッサが上記制御プログラムを実行して上記制御データにしたがって、種々の制御や処理を行う。なお、制御部370は、送信制御部一例であるとともに、現在の時刻を計時する時計機能を備える。すなわち、制御部370は、受信制御部、検出部、表示制御部、遠隔制御部、報知制御部の一例でもある。
【0085】
上記の制御や処理において制御部370は、管理者からの指示を受け付け、その指示にしたがって当該外部装置300の各部を統括して制御を行ったり、予め設定された時刻や周期的なタイミングで、管理処理や診断処理を行う。
【0086】
管理処理は、ポンプ装置100から送信されるログデータ180bや障害ログデータ180cを上記ログデータ360bとして保存したり、ログデータが所定のタイミングで送られて来ない場合に、その旨を該当するポンプ装置100に送信して、ログデータの送信を促すなどの処理を行う。
【0087】
なお、管理処理では、その他、ポンプ装置100に対して任意のタイミングでログデータの送信を要求したり、あるいは、ポンプ装置100に対してログデータの送信時刻を設定するようにしてもよい。
【0088】
診断処理は、診断テーブル360aのデータと、ポンプ装置100から取得したログデータ180bに基づいて、異常の発生や誤操作や誤設定を検出し、それぞれに応じた対応処理(遠隔制御を含む)を行うものである。
【0089】
次に、上記構成のポンプ管理システムの動作について説明する。
まず、図5を参照して、ポンプ装置100による障害ログ生成処理について説明する。図5は、上記障害ログ生成処理を説明するフローチャートであって、この処理は、制御部190によってなされ、障害が発生した場合に、それを検出し、障害発生前後の一定期間についてのログデータを障害ログデータとして生成する。
【0090】
以下の説明では、上記障害ログ生成処理は、ポンプ装置100の電源が投入され、運用の開始に合わせて開始されるものとして説明するが、作業員の任意のタイミングにしたがった指示に応じて、適宜、開始されるものであってもよい。
【0091】
ステップS501において制御部190は、センサインタフェース170を通じて、各種センサ171~174から検出結果を取得し、ステップS502に移行する。なお、通信コネクタ160に、高精度のセンサの検出結果が入力される場合には、この検出結果も制御部190は取得する。
【0092】
ステップS502において制御部190は、当該ポンプ装置100に対する動作設定や作業員の操作(セレクトスイッチの設定など)を検出し、これらの検出結果とステップS501で取得した各種センサの検出結果に、現在時刻を対応付けた1つのログデータ180bを生成し、記憶部180に保存して、ステップS503に移行する。
【0093】
ステップS503において制御部190は、ログデータ180bの保存数が、予め設定した上限数を超えたか否かを判定する。ここで、上限を超えた場合には、ステップS504に移行し、一方、上限を超えていない場合には、ステップS505に移行する。
【0094】
ステップS504において制御部190は、記憶部180に保存されるログデータ180bのうち、上限数を超えた分だけ、古いログデータ180bを消去し、ステップS505に移行する。
【0095】
ステップS505において制御部190は、記憶部180に保存されるログデータ180bのうち、最新のログデータ180bを参照して、当該ポンプ装置100に障害が発生しているかを判定する。
【0096】
具体的には、制御部190は、最新のログデータ180bに含まれるセンサの検出結果を、制御テーブル180aに含まれる判定値と比較して、障害が発生しているか否かを判定する。そして、障害が発生している場合には、比較に用いた判定値に対応付けられた障害の種類や内容を示す障害識別子を検出して、発生した障害を特定する。なお、判定値は、例えば、判定基準となる閾値であって、上限値、下限値又はその両方のいずれとしてもよい。このような判定値は、予め準備された基準となる情報の一例である。
【0097】
ここで、障害が発生していると判定した場合には、ステップS506に移行し、一方、障害が発生していないと判定した場合には、ステップS501に移行する。
ステップS506において制御部190は、障害が発生した後のログデータ180bを生成して保存するべく、ステップS501およびステップS502と同様の処理を必要な数だけ繰り返し実行し、ステップS507に移行する。
【0098】
ステップS507において制御部190は、記憶部180から、障害の発生を検出したログデータ180bと、その前後のタイミングで生成されたログデータ180bを読み出し、これらのデータを1つにまとめた障害ログデータ180cを生成して記憶部180に保存し、ステップS501に移行する。
【0099】
そして、障害ログデータ180cには、ステップS505で検出した障害識別子と、障害の発生を検出したログデータ180bに含まれる時刻を示す時刻識別子や、1つにまとめたログデータの全体の期間を示す期間識別子が、制御部190によって付与される。
【0100】
障害ログデータ180cは、例えば、ログデータ180bが1分間の情報である場合に、5分間の情報を含み得る。すなわち、時間的に連続する5つのログデータ180bを含み得る。より具体的には、障害が発生する前の2分間に相当する2つのログデータ180bと、障害が発生した時点の1分間に相当する1つのログデータ180bと、障害が発生した後の2分間に相当する2つのログデータ180bとからなる5つのログデータ180bを障害ログデータ180cは含み得る。
【0101】
なお、障害ログデータ180cは、上述の例のような5分間に限定されるものではなく、作業員が操作部150を通じて任意の期間を設定し、この設定に応じた期間のログデータ180bに基づいて、制御部190が生成するようにしてもよい。
【0102】
次に、図6を参照して、ポンプ装置100による障害ログ送信処理について説明する。図6は、上記障害ログ送信処理を説明するフローチャートであって、この処理は、制御部190によってなされる。具体的には、予め設定された時刻や時間の間隔が到来した場合、障害が検出された場合(新しい障害ログデータ180cが生成された場合)などに実行される。
【0103】
まず、ステップS601において制御部190は、記憶部180に保存される障害ログデータ180cを読み出し、近距離通信部140を制御して、読み出した障害ログデータ180cを外部装置300に宛てて送信し、ステップS602に移行する。なお、ポンプ管理装置200に宛てて送信する場合には、遠距離通信部130を用いる。
【0104】
ステップS602において制御部190は、ステップS601の送信が成功したか否かを判定する。成功か否かの判定は、例えば、外部装置300から受領を示すアクノリッジを受信した場合に、成功と判定する。ここで、成功した場合には、ステップS603に移行し、一方、成功しなかった場合には、ステップS604に移行する。
【0105】
ステップS603において制御部190は、送信が成功した障害ログデータ180cを記憶部180から消去し、当該処理を終了する。
【0106】
ステップS604において制御部190は、再送信カウント値mをインクリメントするために、1を加算し、ステップS605に移行する。
【0107】
ステップS605において制御部190は、再送信カウント値mが、上限閾値Mを超えたか否かを判定する。ここで、上限閾値Mを再送信カウント値mが超えた場合には、再送信をあきらめて当該処理を終了し、一方、超えていない場合には、ステップS601に移行して、再送信を試みる。
【0108】
次に、図7を参照して、ポンプ装置100による診断用ログ送信処理について説明する。図7は、上記診断用ログ送信処理を説明するフローチャートであって、この処理は、制御部190によってなされる。
【0109】
以下の説明では、上記診断用ログ送信処理は、ポンプ装置100の電源が投入され、運用の開始に合わせて開始されるものとして説明するが、作業員の任意のタイミングにしたがった指示に応じて、適宜、開始されるものであってもよい。
【0110】
ステップS701において制御部190は、所定のタイミングが到来したか否かを判定し、上記タイミングが到来した場合には、ステップS702に移行し、一方、上記タイミングが到来しない場合には、再びステップS701に移行して、タイミング到来を監視する。
【0111】
具体的な所定のタイミングとしては、予め設定された時刻や時間の間隔が到来した場合、流量センサ174が少水量を検出してポンプ部100Pを停止させて場合、その日におけて最初にポンプ部100Pが運転した場合などが考えられる。
【0112】
ステップS702において制御部190は、記憶部180に保存されるログデータ180b(最新のもの、あるいは、すべてのログデータ180b)を読み出し、近距離通信部140を制御して、読み出したログデータ180bを診断用のログデータとして外部装置300に宛てて送信し、ステップS701に移行する。なお、ポンプ管理装置200に宛てて送信する場合には、遠距離通信部130を用いる。
【0113】
次に、図8を参照して、ポンプ管理装置200あるいは外部装置300による診断処理について説明する。図8は、上記診断処理を説明するためのフローチャートであって、ポンプ管理装置200の制御部260や外部装置300の制御部370によってなされる。以下の説明では、外部装置300による診断処理について説明するが、ポンプ管理装置200による処理も同様であることより、ポンプ管理装置200についての説明は省略する。
【0114】
まず、ステップS801において制御部370は、近距離通信部340を制御して、ポンプ装置100から送信される診断用のログデータを受信し、ステップS802に移行する。なお、ここで受信するログデータは、ステップS702で送信されたログデータ180bである。
【0115】
ステップS802において制御部370は、ステップS801で受信したログデータを診断用のログデータ360bとして記憶部360に保存し、ステップS803に移行する。
【0116】
ステップS803において制御部370は、診断テーブル360aに基づいて、ステップS802で保存したログデータ360bを解析し、ステップS804に移行する。具体的には、ログデータ360bに含まれる、各種センサの検出結果、当該ポンプ装置100に対する動作設定や作業員の操作(作業員によるセレクトスイッチの設定など)のログについて、診断テーブル360aに基づく解析を行う。
【0117】
ステップS804において制御部370は、ステップS803の解析結果、異常が発生したか否かを判定する。ここで、センサの検出結果が異常な値を示すなど、異常が発生した場合には、ステップS805に移行し、一方、異常が発生していない場合には、ステップS806に移行する。
【0118】
ステップS805において制御部370は、異常対応処理を実行し、ステップS806に移行する。異常対応処理の具体的な内容については、後に図9を参照して説明する。
【0119】
ステップS806において制御部370は、ステップS803の解析結果、作業員が誤った操作を行ったままになっているか否かを判定する。ここで、誤った操作を行ったままになっている場合には、ステップS807に移行し、一方、誤った操作を行ったままになっていない場合には、ステップS808に移行する。なお、誤った操作の判定は、例えば、予め準備された標準の操作を示す標準操作情報に基づいて行う。標準操作情報は、記憶部360に記憶される。
【0120】
ステップS807において制御部370は、誤操作対応処理を実行し、ステップS808に移行する。誤操作対応処理の具体的な内容については、後に図10を参照して説明する。
【0121】
ステップS808において制御部370は、ステップS803の解析結果、作業員が誤った設定を行ったままになっているか否かを判定する。なお、誤った設定の判定は、例えば、予め準備された標準の設定を示す標準設定情報や過去に正常な運転が行われていた際の設定に基づいて行う。標準設定情報は、記憶部360に記憶される。
【0122】
ここで、誤った設定を行ったままになっている場合には、ステップS809に移行し、一方、誤った設定を行ったままになっていない場合には、当該処理を終了する。
【0123】
ステップS809において制御部370は、誤設定対応処理を実行し、当該処理を終了する。誤設定対応処理の具体的な内容については、後に図11を参照して説明する。
【0124】
次に、図9を参照して、ポンプ管理装置200あるいは外部装置300による異常対応処理について説明する。図9は、上記異常対応処理を説明するためのフローチャートであって、ポンプ管理装置200の制御部260や外部装置300の制御部370によってなされる。以下の説明では、外部装置300による異常対応処理について説明するが、ポンプ管理装置200による処理も同様であることより、ポンプ管理装置200についての説明は省略する。
【0125】
まず、ステップS901において制御部370は、診断テーブル240aに基づいて、診断用のログデータ360bで示されるポンプ装置100の設定値が許容範囲内か否かを判定する。ここで、設定値が許容範囲内の場合には、ステップS903に移行し、一方、設定値が許容範囲内でない場合には、ステップS902に移行する。
【0126】
ステップS902において制御部370は、表示部320を制御して、作業員に対して異常な設定がなされている旨の表示を行うことで異常設定を報知し、ステップS908に移行する。
【0127】
なおここで、遠隔操作によって、設定値を許容範囲内あるいはそれに近い値に修正するようにしてもよい。具体的には、近距離通信部340を通じたポンプ装置100に対する遠隔制御により、診断テーブル360aで示される許容範囲内に、ポンプ装置100の設定値を変更する。
【0128】
ステップS903において制御部370は、記憶部360から、当該ポンプ装置100についての過去のログデータ360bを検出し、ステップS904に移行する。なお、ここで検出される過去のログデータ360bは、正常な運転がなされていた際の情報(あるいは、故障の発生する頻度が低かった際の情報)を含むものである。
【0129】
ステップS904において制御部370は、診断用のログデータ360bで示されるポンプ装置100の設定値を、ステップS903で検出した過去のログデータ360bで示される設定値と比較して、変更された設定を検出する。ここで、変更された設定値がある場合には、ステップS906に移行し、一方、変更された設定値がない場合には、ステップS905に移行する。
【0130】
ステップS905において制御部370は、表示部320を制御して、作業員に対して異常が発生している旨の表示を行うことで異常発生を報知し、点検を求め、ステップS908に移行する。
【0131】
ステップS906において制御部370は、近距離通信部340を通じたポンプ装置100に対する遠隔操作により、ステップS903で検出した過去のログデータ360bで示される設定値をポンプ装置100に設定し、ステップS907に移行する。すなわち、過去に正常な運転が行われていた際の設定値に戻す、修正のための遠隔操作を行い、再起動(リセット)させる。
【0132】
なお、ここで行われる修正の内容は、上記に限定されるものではない。例えば、許容範囲のうち、現在の誤った設定値に一番近い値に変更するようにしてもよい。具体的には、許容範囲が「10~50」として診断テーブル360aで示され、過去のログデータ360bの設定値が「20」で、誤った設定値が「60」である場合に、(前述の例では「20」を設定するところ)修正した設定値として許容範囲に一番近い値の「50」を設定する。
【0133】
ステップS907において制御部370は、表示部320を制御して、作業員に対して異常が発生している旨と、設定値を上述したような設定値に変更した旨を示す表示を行うことで異常発生を報知し、点検を求め、ステップS908に移行する。なおここで、具体的に、変更した設定値と変更前の設定値を合わせて表示して、作業員が比較を行えるようにしてもよい。
【0134】
ステップS908において制御部370は、ステップS803の解析の結果、部品の劣化があるか否かを判定する。ここで、部品の劣化がある場合には、ステップS909に移行し、一方、部品の劣化がない場合には、当該処理を終了する。
【0135】
ステップS909において制御部370は、表示部320を制御して、作業員に対して部品の交換が必要である旨の表示を行うとともに、遠距離通信部330を制御して、予め設定された管理者(あるいはポンプ装置100の所有者)の電子メールアドレスに、部品交換が必要である旨の電子メールを送信し、当該処理を終了する。
【0136】
次に、図10を参照して、ポンプ管理装置200あるいは外部装置300による誤操作対応処理について説明する。図10は、上記誤操作対応処理を説明するためのフローチャートであって、ポンプ管理装置200の制御部260や外部装置300の制御部370によってなされる。以下の説明では、外部装置300による誤操作対応処理について説明するが、ポンプ管理装置200による処理も同様であることより、ポンプ管理装置200についての説明は省略する。
【0137】
まず、ステップS1001において制御部370は、診断テーブル240aを参照し、診断対象となっているポンプ装置100について、特別な事情に基づく設定がなされたポンプ装置であるか否かを判定する。ここで、特別な事情に基づく設定がなされたポンプ装置とは、特別な事情により、規定外の設定がなされたポンプ装置を意味する。
【0138】
ここで、特別な事情に基づく設定がなされたポンプ装置である場合には、ステップS1002に移行し、一方、特別な事情に基づく設定がなされたポンプ装置でない場合には、ステップS1003に移行する。
【0139】
ステップS1002において制御部370は、表示部320を制御して、特別な事情に基づく設定がなされたポンプにおいて、通常の運用では誤操作と判定される操作が行われている旨の表示を行うことで作業員に対して警告を報知し、当該処理を終了する。
【0140】
なおここで、遠隔操作によって、誤操作と判定された操作を修正するようにしてもよい。具体的には、近距離通信部340を通じたポンプ装置100に対する遠隔操作で、別の操作をポンプ装置100に対して指示し、この指示は、作業員による操作よりも制御部190によって優先させる。例えば、セレクトスイッチのハードスイッチによる操作よりも、外部装置300からの指示をポンプ装置100の制御部190が優先して受け付ける。
【0141】
ステップS1003において制御部370は、表示部320を制御して、作業員に対して誤操作が行われた旨の表示を行うことで誤操作を警告して確認を求め、ステップS1004に移行する。
【0142】
ステップS1004において制御部370は、診断テーブル360aを参照して、診断対象となっているポンプ装置100について遠隔操作が許可されているか否かを判定し、許可されている場合には、ステップS1005に移行し、一方、許可されていない場合には、当該処理を終了する。
【0143】
ステップS1005において制御部370は、ステップS1003で誤操作を報知してから一定時間が経過したか否かを判定する。これは、遠隔操作を行うまでの猶予時間であり、この猶予時間内に作業員は、なんらかの対応をし得る。
【0144】
一定時間が経過した場合には、ステップS1006に移行する。なお、作業員によって、操作が行われた場合には、ステップS806に移行して、作業員によってなされた操作を確認するようにしてもよい。
【0145】
ステップS1006において制御部370は、近距離通信部340を通じたポンプ装置100に対する遠隔操作で、操作をポンプ装置100に対して指示し、ステップS1007に移行する。なお、遠隔操作による上記指示は、作業員による操作よりも制御部190によって優先される。例えば、セレクトスイッチのハードスイッチによる操作よりも、外部装置300からの指示をポンプ装置100の制御部190が優先して受け付ける。
【0146】
ステップS1007において制御部370は、表示部320を制御して、作業員に対して遠隔操作により作業員の操作がキャンセルされ、別の操作が行われた旨を示す表示を行うことで遠隔操作を報知し、操作の確認を求め、当該処理を終了する。なおここで、具体的に、キャンセルした操作と遠隔操作の内容を合わせて表示して、作業員が認識できるようにしてもよい。
【0147】
次に、図11を参照して、ポンプ管理装置200あるいは外部装置300による誤設定対応処理について説明する。図11は、上記誤設定対応処理を説明するためのフローチャートであって、ポンプ管理装置200の制御部260や外部装置300の制御部370によってなされる。
【0148】
以下の説明では、外部装置300による誤設定対応処理について説明するが、ポンプ管理装置200による処理も同様であることより、ポンプ管理装置200についての説明は省略する。
【0149】
まず、ステップS1101において制御部370は、診断テーブル240aを参照し、診断対象となっているポンプ装置100について、特別な事情に基づく設定がなされたポンプ装置であるか否かを判定する。ここで、特別な事情に基づく設定がなされたポンプ装置とは、特別な事情により、規定外の設定がなされたポンプ装置を意味する。
【0150】
ここで、特別な事情に基づく設定がなされたポンプ装置である場合には、ステップS1102に移行し、一方、特別な事情に基づく設定がなされたポンプ装置でない場合には、ステップS1103に移行する。
【0151】
ステップS1102において制御部370は、表示部320を制御して、特別な事情に基づく設定がなされたポンプにおいて、通常の運用では誤設定と判定される設定が行われている旨の表示を行うことで作業員に対して警告を報知し、当該処理を終了する。
【0152】
なおここで、遠隔操作によって、誤設定と判定した設定を修正するようにしてもよい。具体的には、近距離通信部340を通じたポンプ装置100に対する遠隔操作で、別の操作をポンプ装置100に対して指示し、この指示は、作業員による操作よりも制御部190によって優先させる。
【0153】
例えば、作業員が、許容範囲である「10~50」の値を設定すべきところ、誤って「60」を設定した場合に、制御部370が遠隔操作によって、誤って設定した「60」に最も近い許容範囲の値「50」を設定する。
【0154】
なお、上記の遠隔操作によって修正する値は、例えば以下のように決定する。すなわち、記憶部360が許容範囲の情報を予め記憶するか、ポンプ装置100の制御テーブル180aから読み出し、この情報(許容範囲「10~50」)と作業員の設定値(上記の例の「60」)に基づいて、修正値「50」を決定する。
【0155】
ステップS1103において制御部370は、表示部320を制御して、作業員に対して誤設定が行われた旨の表示を行うことで誤設定を警告して確認を求め、ステップS1104に移行する。
【0156】
ステップS1104において制御部370は、診断テーブル360aを参照して、診断対象となっているポンプ装置100について遠隔操作が許可されているか否かを判定し、許可されている場合には、ステップS1105に移行し、一方、許可されていない場合には、当該処理を終了する。
【0157】
ステップS1105において制御部370は、ステップS1103で誤設定を報知してから一定時間が経過したか否かを判定する。これは、遠隔操作を行うまでの猶予時間であり、この猶予時間内に作業員は、なんらかの対応をし得る。
【0158】
一定時間が経過した場合には、ステップS1106に移行する。なお、作業員によって、設定が修正された場合には、ステップS808に移行して、修正された設定を確認するようにしてもよい。
【0159】
ステップS1106において制御部370は、最適な設定値を解析して求め、ステップS1107に移行する。具体的には、診断対象となっているポンプ装置100の過去のログデータ360b、あるいは、他の同型で類似環境に設置されたポンプ装置100の過去のログデータ360bを参照し、正常に運転していた際の設定値を求める。
【0160】
ステップS1107において制御部370は、近距離通信部340を通じたポンプ装置100に対する遠隔操作により、ポンプ装置100に対して、設定をステップS1106の解析で求めた設定に修正するように指示し、ステップS1108に移行する。例えば、既にある設定値を、外部装置300からの指示に応じた値に上書きするように、ポンプ装置100に指示し、これに応じて制御部190が設定を修正する。
【0161】
ステップS1108において制御部370は、表示部320を制御して、作業員に対して遠隔操作により、設定が修正された旨を示す表示を行うことで遠隔操作を報知し、作業員に設定修正の確認を求め、当該処理を終了する。なおここで、具体的に、修正前の設定と、修正した設定を合わせて表示して、作業員が認識できるようにしてもよい。
【0162】
以上のように本実施形態は、ポンプ装置100-1~100-nがそれぞれポンプ部100Pの動作に関わる情報(各種センサの検出値、設定値、作業員の操作など)を検出して、この情報に時刻を示す情報を対応付けてログデータ180bを生成して記憶部180に保存して、このログデータ180bをポンプ管理装置200や外部装置300に送信するようにしている。
【0163】
したがって、本実施形態によれば、ポンプ装置100-1~100-nの状態についてログデータ180bから把握できるので、診断を正確に行うことができる。
【0164】
また上記実施形態では、ポンプ管理装置200や外部装置300が、ポンプ装置100-1~100-nから受信したログデータ180bに基づいて、異常や誤操作、誤設定を検出し、遠隔操作により対処するようにしている。このため、作業員がすぐに現地に赴くことができない場合でも、早急な処置を施すことができ、例えば、人員不足などの一助にもなり得る。
【0165】
またポンプ管理装置200や外部装置300は、部品の劣化の判定を行い、部品の劣化がある場合には、作業員や管理者に、部品交換が必要である旨を通知するようにしている。このため、作業員は、部品発注の作業にすぐに取りかかることができ、あるいは自動で部品を発注するようにすることもできる。管理者は、部品交換の必要性を早期に認識することができ、経費発生に把握や予算管理に役立つ。
【0166】
また上記実施形態では、ポンプ装置100が自己の診断を行って障害の発生を検出し、障害が発生した場合には、その際のログデータと、発生を検出した前後の時間のログデータを併せて障害ログデータ180cとして保存するようにしている。このため、障害ログデータ180cに基づいて、障害の発生原因の解明を行うことができる。
【0167】
また障害ログデータ180cは、ポンプ管理装置200や外部装置300に送信される。そして送信が成功した場合には、ポンプ装置100から消去され得る。これにより、記憶部180の限りある記憶領域を節約することができる。
【0168】
また障害ログデータ180cは、発生した障害の種類や内容、時刻を示す識別子を含むため、障害ログデータ180cを受信したポンプ管理装置200や外部装置300では、発生した障害の種類や内容、時刻をつぶさに把握することができる。
【0169】
ところで、ポンプ装置100の運転を「停止」/「運転待機」に切り換えるセレクトスイッチ(ハードスイッチ)は、通常使用時は、常に「運転待機}に設定することが望ましく、メンテナンスや工場の設備の関係で強制的な停止が必要な場合にのみ「停止」に設定することが多い。
【0170】
このため、特別な現場でなければ、上述の通りでよいが、メンテナンス後のセレクトスイッチの再設定の忘れや、日常的な工場設備の操作において適切な設定を忘れる場合がある。
【0171】
これに対して本実施形態では、特別な事情がない現場においては、誤操作(操作の忘れを含む)を検出した場合には、報知を行うとともに、一定時間が経過した場合には、遠隔操作により操作を行って操作を変更するようにしている。これにより誤操作を是正することができる。
【0172】
さらに、本実施形態によれば、設定値の誤設定が発見することができる。
ポンプ装置100が設置される現場の配管系統が老朽化している場合や、ポンプ装置の二次側に接続される他設備が老朽化している場合等、ポンプ装置が発生させる圧力が一定の圧力を超えてはいけない場合がある。
【0173】
従来は、自動で管理する方法が無いため、ポンプ装置100への張り紙や、担当者への連絡等で設定値を管理するが、人材不足等により、情報伝達に不備や担当者の勘違い等が発生し、誤って、設定可能圧力を超えた圧力が設定される可能性がある。
【0174】
このような場合は、設備の許容圧力を超えて、配管系統から漏れが発生したり、あるいは、配管系統に設けられる弁により配管内の圧力が一定値以上になると解放して排圧を行って、警報を発し、これにより、ポンプ以外の設備を停止に追い込むこともある考えられる。設定可能圧力は現場毎に異なるため、個別の管理が必要であるが、人手による管理が煩雑になる傾向にあった。
【0175】
本実施形態では、ポンプ管理装置200や外部装置300において、診断テーブル240aや360aを備え、このテーブルに、ポンプ装置100-1~100-n毎に、各種設定値ごとの許容設定範囲を設定することができる。
【0176】
そして、ポンプ装置100からログデータ180bを取得し、上記テーブルの許容設定範囲を超える設定がされた場合は、過去ログに基づいて設定変更前の設定値に戻したり、あるいは、誤設定値から許容設定範囲内の一番近い値に変更するようにしている。
【0177】
また設定値の変更があった場合は、現地に設定を変更した作業員がいることが想定されるため、異常値が設定されていることを報知して、修正を促したり、外部装置300上で修正した設定値を表示するようにしている。許容設定範囲は、ポンプ装置100上に直接設定することも可能であるが、知識の乏しい人員には操作が難しいため、外部装置300などによる修正支援が有効である。
【0178】
さらに、本実施形態によれば、現場に即さない設定値の最適化をすることができる。
例えば、水道管に直接接続される直結加圧式のポンプ装置の場合、ポンプ装置の1次側の圧力(吸込み圧力)は、現場の水道本管の圧力、水道本管から分岐しポンプに接続される配管の口径、長さ、直線性など様々な要因で現場毎に異なる。
【0179】
ポンプ装置100の圧力応答を制御する設定値は、現場特有の設定ではなく、出荷値として一律になっている場合がある。これは、多くの現場で出荷値から変更する必要がないためであるが、吸込み圧力が低く、本管から分岐した配管が長く折れ曲がりも多い場合は、起動時に吸込み側の圧力が低くなり、周辺のポンプ装置に悪影響を与え得る。結果としてユーザが使用する水が(蛇口から出る水が)脈動するため、利便性に影響する場合があり、対処法の1つとしては圧力応答を制御する設定値を変更する。すなわち、始動時などの圧力制御を緩やかにすることで対応する。この対応は、症状が発生して初めて有識者が設定を変更することが一般的であり、現場毎での調整がなされていた。
【0180】
これに対して上記実施形態では、ポンプ管理装置200あるいは外部装置300がログデータ180bを取得し、このデータに基づいて、遠隔操作により適正値に変更することができる。具体的には、ログデータ180bに基づいて、ポンプ装置100の起動時に吸込み圧力か基準よりも落ち込むことを検出し、起動を緩やかにする設定値の変更を遠隔で行い、その後、ポンプ装置100の運転中にポンプ装置100の2次側の圧力(吐出し圧力)をその後のログデータ180bから監視して、基準よりも上下する場合は上下が基準以内の収まるように、さらに、遠隔で圧力応答を緩やかにするように設定値を変更する。
【0181】
さらに、本実施形態によれば、現場に即さない設定変更を是正することができる。
前述したように、出荷値は一律であるため、現場毎に必ずしも最適化された設定値とならない場合がある。例えば、ポンプ装置100を設置した後の試運転時に、起動が遅いと感じ、起動を出荷設定値(メーカ推奨値)より早くしたい場合、起動時にモータが規定の回転数に到達する時間を通常より早く設定変更を行うことがある。
【0182】
このような設定変更は、ユーザ毎のカスタマイズであるが、変更には注意が必要である。具体的には、変更した設定値が、多くの現場では問題ない設定範囲としていても、現場特有の問題により、設定変更するべきでない場合がある。例えば、カスタマイズにより変更した値がメーカ許容変更範囲内であっても現場に適さない変更だった場合、過電流等が異常を発する可能性がある。このような状況はユーザには判断が難しく、有識者であっても時間をかけて確認しなければ明確化することは難しい。
【0183】
これに対して上記実施形態では、例えば、過電流が発生した場合に、外部装置300(あるいはポンプ管理装置200)は、正常な運転がなされていた際(あるいは、故障の発生する頻度が低かった際)のログデータ360bに基づいて、設定の変更を検出することで不具合の原因を特定し、遠隔操作により、変更された設定を正常な運転時の設定に戻すようにしているので、不具合を解消し得る。
【0184】
なお、上記遠隔操作において、変更されていた設定値の許容設定範囲を、メーカ推奨に許容範囲より狭く変更して登録するようにしてもよい。これにより、ユーザは、次回からその変更が適さないことを理解することができる。
【0185】
上記説明したいくつかの例は、比較的、期間として短い(例えば、1分程度)の小さなデータサイズのログデータをこまめにポンプ管理装置200や外部装置300へ送信するものとして説明したが、これに限定されるものではない。現場によっては、長い期間の大きなデータサイズのログデータを送信する場合にも対応できる。
【0186】
例えば、水の出が悪いなどの故障でない症状や、不定期で動作がおかしくなるなどの場合、ログ取得のトリガが無く、原因特定のために長期間のログ取得が必要になる場合がある。このような場合でも、ポンプ装置100と外部装置300の間では、通信料金が発生しない近距離通信により長時間のログデータを送受信できる。
【0187】
また外部装置300を長期間のログデータ収集に用いる場合には、電力供給の必要があるが、本実施形態では、ポンプ装置100に搭載されたモバイルバッテリ112より電力供給を行うことができる。またバッテリであることより、停電発生時でもログが取得できる状態を継続できる。
【0188】
また上記実施形態では、出荷するポンプ装置100には、コストの問題から取り付けることができない高価な高精度センサ(例えば、CT)を通信コネクタ160に接続して、ログデータ180bを生成することができる。このため、出荷時にメーカで出荷試験装置で取得した情報を外部装置300(あるいはポンプ管理装置200)に予め記憶しておき、この情報と、高精度センサの検出結果を含むログデータ180bを比較して、より高精度な診断を行うことができる。
【0189】
また例えば、出荷されるポンプ装置100に対して高精度センサでデータを取得し、このデータと後に取得したログに基づくデータを比較することもできる。例えば、ログデータ180bには、回転数を含むインバータ情報や圧力センサ172の検出した圧力が含まれ得る。圧力と回転数の関係から、制御部260は電流値を推定することができ、この推定した電流値と出荷時に取得した高精度センサ(CT)で検出した電流値を比較する。また、回転数と圧力の関係から、制御部260は同様にして、流量を推定することができる。
【0190】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0191】
例えば、ポンプ管理装置200や外部装置300において、異常発生前後のログデータ180bを、他のポンプ装置100-1~100-nのログデータ180bと比較して、異常発生の判定基準となる閾値を見直すようにしてもよい。これによれば、異常発生の判定のための閾値が甘い場合に、上記閾値を更新することで、従来安全率を見込んだ形で故障を判定し、早めに故障判定していた閾値の精度が向上する可能性がある。
また上記実施形態では、ステップS1106で説明したように、定期的に最適設定を解析して設定を変更した。しかしながら、最適設定の解析は、定期的なものに限らず、その他の条件を満たす場合に実行するようにしてもよい。
【0192】
一般に、ポンプ装置100の設定値のうち、一律に設定されるパラメータが少なからず存在し、設置の後の始動時に変更の必要が生じない場合も多く、その値のまま運用され得る。しかしながら、ポンプ装置100は、経年劣化が生じ得、またポンプ装置100周りの設備も劣化し得るし、設定された環境の変化もあり得る。これに伴って、設定値を変更した方がよい場合もある。
【0193】
このため、ポンプ装置100は、設置の初期時からの電流ピーク値のログをとり続けて、ポンプ管理装置200や外部装置300に上記ログを送信し、ポンプ管理装置200や外部装置300は、それぞれの制御部が上記初期時と比べて、閾値を超えるほど大きく(あるいは小さく)なった場合に、最適設定を解析するようにしてもよい。
【0194】
その場合の最適設定は、予め電流ピーク値の許容範囲を定めておき、運転初期に上記許容範囲内で上限に対して裕度があれば、加速時間をアップするように設定する。一方、裕度がない場合には、例えば出荷時のままで変更を行わないか、あるいは、悪条件なら、加速時間をダウンするように設定する。なお、このような変更を行った場合も、ステップS1108で説明したように変更内容を報知する。
【0195】
また、ポンプ装置100のインバータの中間直流電圧を最適化するようにしてもよい。一般に、上記電圧は、ポンプの停止時に高くなるが、その場合に許容範囲より大きい場合には、減速時間を延ばして緩やかに停止させることで電圧アップ分が小さくなるように制御する。このような最適設定を、ポンプ管理装置200や外部装置300から行うようにしてもよい。
【0196】
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0197】
100…ポンプ装置、100-1~100-n…ポンプ装置、100C…制御盤、100P…ポンプ部、110…電源回路、111…蓄電池、112…モバイルバッテリ、113…インタフェース、120…表示部、130…遠距離通信部、131…インタフェース、140…近距離通信部、141…インタフェース、150…操作部、160…通信コネクタ、170…センサインタフェース、171…漏水センサ、172…圧力センサ、173…浸水センサ、174…流量センサ、180…記憶部、180a…制御テーブル、180b…ログデータ、180c…障害ログデータ、190…制御部、200…ポンプ管理装置、210…操作部、220…表示部、230…記憶部、240…データベース、240a…診断テーブル、240b…ログデータ、250…ポンプ用通信部、251…バッテリ、260…制御部、300…外部装置、310…操作部、320…表示部、330…遠距離通信部、340…近距離通信部、350…電源回路、351…バッテリ、360…記憶部、360a…診断テーブル、360b…ログデータ、370…制御部。
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