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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】移動型簡易クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/48 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B66C23/48
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021096768
(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公開番号】P2022188601
(43)【公開日】2022-12-21
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000132079
【氏名又は名称】株式会社スーパーツール
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】永田 孝之
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-018945(JP,A)
【文献】特開平11-139786(JP,A)
【文献】特開2007-328075(JP,A)
【文献】実開平04-056188(JP,U)
【文献】米国特許第03222029(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
F16M 11/00-11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン部と、前記クレーン部が立設された基台部と、前記基台部にその上端部分が枢着された左右一対の脚部と、前記脚部の下端部分に枢着されたキャスター部と、前記左右一対の脚部の開脚角度を変更する開脚角度調整機構部とで構成された移動型簡易クレーンであって、
前記開脚角度調整機構部は、
前記基台部から垂設され、左右一対の脚部間にて上下方向に穿設されたガイド長孔を備えたガイド板と、
前記ガイド長孔を上下にスライドするガイド軸と、
前記ガイド軸と左右一対の脚部とにそれぞれ枢着されて両者を繋ぐリンクアームと、
一方の脚部に枢着されたナットホルダーと、他方の脚部に枢着され、前記ナットホルダーに螺進螺退可能に螺装された螺子部材とで構成されていることを特徴とする移動型簡易クレーン。
【請求項2】
ガイド軸に取り付けられて昇降する監視棒と、
前記監視棒の直上に設置され、持ち上げられた前記監視棒が当接して前記左右一対の脚部の脚開閉時の閉脚限界を規制するアーム固定ピンを更に設置してなることを特徴とする請求項1に記載した移動型簡易クレーン。
【請求項3】
前記アーム固定ピンに合わせてクレーン部に穿設され、前記アーム固定ピンに対する前記監視棒の当接状態を確認できる監視窓を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載した移動型簡易クレーン。
【請求項4】
前記クレーン部は、基台部に立設された支柱と、揺動支持軸を介して前記支柱に上下方向に揺動自在に取り付けられ、荷物を吊り下げる吊下げアームとで構成され、
前記支柱には、前記監視棒の移動線上に設けられた第1アーム固定孔と、前記移動線から外れた位置に設けられた第2アーム固定孔とが穿設されており、
前記吊下げアームには、前記第1アーム固定孔又は第2アーム固定孔のいずれかに合致して前記アーム固定ピンが挿通され、前記支柱に対する前記吊下げアームの角度を荷物の吊下げ状態から下方に向けて折り畳んだ状態まで調整する丸孔が穿設されていることを特徴とする請求項2または3に記載した移動型簡易クレーン。
【請求項5】
クレーン部と、前記クレーン部が立設された基台部と、前記基台部にその上端部分が枢着された左右一対の脚部と、前記脚部の下端部分に枢着されたキャスター部と、前記左右一対の脚部の開脚角度を変更する開脚角度調整機構部とで構成された移動型簡易クレーンであって、
前記開脚角度調整機構部は、
前記基台部から垂設され、左右一対の脚部間に上下方向に穿設されたガイド長孔を備えたガイド板と、
前記ガイド長孔を上下にスライドするガイド軸と、
前記ガイド軸と左右一対の脚部とにそれぞれ枢着されて両者を繋ぐリンクアームと、
前記ガイド軸を上下に移動させる昇降駆動部とで構成されていることを特徴とする移動型簡易クレーン。
【請求項6】
前記昇降駆動部は、外周面に雄螺子が刻設され、前記ガイド軸を吊り下げた昇降軸と、
前記昇降軸の周囲を回転するように配置され、前記昇降軸の雄螺子が螺入される雌螺子を具備し、外周面にウォーム歯車が刻設されている昇降軸の昇降用の従動ナット部材と、
前記従動ナット部材のウォーム歯車に噛合し、外力により回転する駆動ウォームギアとで構成されていることを特徴とする請求項5に記載した移動型簡易クレーン。
【請求項7】
前記昇降軸の直上に設置され、持ち上げられた前記昇降軸が当接して前記左右一対の脚部の脚開閉時の閉脚限界を規制するアーム固定ピンを更に設置してなることを特徴とする請求項6に記載した移動型簡易クレーン。
【請求項8】
前記アーム固定ピンに合わせて前記クレーン部に穿設され、前記アーム固定ピンに対する前記昇降軸の当接状態を確認できる監視窓を更に備えていることを特徴とする請求項7に記載した移動型簡易クレーン。
【請求項9】
前記クレーン部は、基台部に立設された支柱と、揺動支持軸を介して前記支柱に上下方向に揺動自在に取り付けられ、荷物を吊り下げる吊下げアームとで構成され、
前記支柱には、前記昇降軸の移動線上に設けられた第1アーム固定孔と、前記移動線から外れた位置に設けられた第2アーム固定孔とが穿設されており、
前記吊下げアームには、前記第1アーム固定孔又は第2アーム固定孔のいずれかに合致して前記アーム固定ピンが挿通され、前記支柱に対する前記吊下げアームの角度を荷物の吊下げ状態から下方に向けて折り畳んだ状態まで調整する丸孔が穿設されていることを特徴とする請求項7または8に記載した移動型簡易クレーン。
【請求項10】
前記脚部は、平行に配置された2本の脚構成部材で構成され、その上端部分と下端部分が前記基台部とキャスター部に枢着されて平行リンクを構成することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載した移動型簡易クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内で使用される移動型簡易クレーンの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンは、回動できる機体から突き出した、重量物を吊り上げるためのジブ(腕)を持ち、機体には巻上げ機構,俯仰機構,回動機構などが備えられている。機体固定型の他、走行台車に乗った走行(移動)型などがある。また、ジブが俯仰し半径が変化しても吊り上げた荷物の高さが変わらず水平に移動できる機構を持つ引き込みクレーンや、その他、塔形クレーン、移動型クレーン、ロコクレーンなど、用途に応じた多様な機種が実用されている。
【0003】
従来の移動型簡易クレーンの一例を示すと、片持ちクレーンと、この片持ちクレーンを搭載した手押し車とで構成されている。この手押し車は、片持ちクレーンの直下の部分を大きくあけて荷物を取り込めるようにするために台車部分をその前端から片持ちクレーン立設部分に向けて略コ又はV字状に大きくえぐり取り、大きくえぐり取った荷物収納空間の両側に開いた脚部の下面にキャスターを設けたものである。クレーンには、巻き上げ機が取り付けられており、巻き上げ機から引き出されたワイヤーがクレーンの先端から垂れ下がっており、その垂れ下がったワイヤーの端部に吊フックが取り付けられている(特許文献1参照)。
【0004】
この移動型簡易クレーンを使用する際には、荷物の置かれている場所まで移動させ、手押し車の脚部を荷物の両側或いは下方に固定し、荷物収納空間に荷物が位置するように固定する。然る後、巻き上げホイールを回転させて吊りフックを下し、吊り上げ対象物である荷物に引っ掛ける。そして、巻き上げホイールを反対側に回転させて巻き取り、荷物を吊り上げる。この状態でこのクレーンを目的地まで運搬し、巻き上げホイールを回転させて荷物を下ろす。このようにすることで荷物を簡単に目的地に運搬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-171895号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような移動型簡易クレーンの用途としては、例えば、パレット上の荷物を別のパレットに移し替えたり、パレット上の荷物を台車の上に載せたりする(或いはその逆に台車からパレットに移す)といったことが挙げられる。
【0007】
前者の場合に、荷物を手前のパレットから奥のパレットに移し替えたいようなことがある。この場合に、荷物を吊り上げた状態でクレーンをそのまま前進させることができれば荷物の移し替え作業は簡単に行うことができるが、実際には、手押し車が手前のパレットと衝突してクレーンをそれ以上前進させることができない。
【0008】
そのため、荷物を吊り下げた状態でクレーンを一旦手前のパレットから後退させ、手前のパレットを避け、通過出来る通路を通ってクレーンを奥のパレット迄移動させ、奥のパレットが移動させたクレーンの荷物収容空間に位置するように調整する必要がある。手前の空パレットを避けるスペースがなければ除荷した前の空パレットを作業者が取り除き、移動スペースを設けてから奥のパレット迄、荷物を吊り下げた状態でクレーンを移動させる必要があり、非効率的であるだけでなく空パレットを移動させる際に吊り下げた荷物の下又はその近くに作業者が近付く必要があり、危険でもあるという問題があった。また、荷物を倉庫の奥にあるパレットまで運ぶような場合に、脚部の間隔よりも通路の幅の方が狭いためにクレーンが通路を通過できないというような問題もあった。
【0009】
さらに、台車の上に荷物を載せるためには、クレーンの先端を台車の上に移動させる必要があるが、大型の台車ともなると、脚部の間隔よりも台車の幅の方が大きい場合がある。その場合、クレーンよりも前方に大きく突き出た前輪が台車の側面に衝突してクレーンの先端を台車の上に移動させることができないという問題もあった。
また、従来のクレーンの脚部は広がったままで閉じることが出来ないため、使い終わった収容時には広い保管場所を必要とするという問題もあった。
【0010】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、隣接するパレット間の荷物の移し替えを効率よく行うことができ、狭い通路であっても通過が可能で、大型の台車であっても荷物の積み下ろしが可能な移動型簡易クレーンを提供することにある。加えて、収納時には更にコンパクトに折り畳むことが出来る移動型簡易クレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した発明(図1図9:第1実施形態)は、
クレーン部80と、前記クレーン部80が立設された基台部1と、前記基台部1にその上端部分が枢着された左右一対の脚部10a・10bと、前記脚部10の下端部分に枢着されたキャスター部20と、前記左右一対の脚部10a・10bの開脚角度を変更する開脚角度調整機構部50とで構成された移動型簡易クレーンAであって、
前記開脚角度調整機構部50は、
前記基台部1から垂設され、左右一対の脚部10a・10b間にて上下方向に穿設されたガイド長孔52を備えたガイド板51と、
前記ガイド長孔52を上下にスライドするガイド軸53と、
前記ガイド軸53と左右一対の脚部10a・10bとにそれぞれ枢着されて両者を繋ぐリンクアーム54と、
一方の脚部10aに枢着されたナットホルダー70と、他方の脚部10bに枢着され、前記ナットホルダー70(100)に螺進螺退可能に螺装された螺子部材72とで構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載した移動型簡易クレーンAにおいて、
前記ガイド軸53に取り付けられて昇降する監視棒30と、
前記監視棒30の直上に設置され、持ち上げられた前記監視棒30が当接して前記左右一対の脚部10a・10bの脚開閉時の閉脚限界を規制するアーム固定ピン84を更に設置してなることを特徴とする。
【0013】
請求項3は、請求項2に記載した移動型簡易クレーンAにおいて、
前記アーム固定ピン84に合わせてクレーン部80に穿設され、前記アーム固定ピン84に対する前記監視棒30の当接状態を確認できる監視窓81aを更に備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項4は、請求項2又は3に記載した移動型簡易クレーンAにおいて、
前記クレーン部80は、基台部1に立設された支柱81と、揺動支持軸86を介して前記支柱81に上下方向に揺動自在に取り付けられ、荷物を吊り下げる吊下げアームMとで構成され、
前記支柱81には、前記監視棒30の移動線上に設けられた第1アーム固定孔81bと、前記移動線から外れた位置に設けられた第2アーム固定孔81cとが穿設されており、
前記吊下げアームMには、前記第1アーム固定孔81b又は第2アーム固定孔81cのいずれかに合致して前記アーム固定ピン84が挿通され、前記支柱81に対する前記吊下げアームMの角度を荷物の吊下げ状態から下方に向けて折り畳んだ状態まで調整する丸孔82a~82cが穿設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載した発明(図10図11:第2実施形態)は、
クレーン部80と、前記クレーン部80が立設された基台部1と、前記基台部1にその上端部分が枢着された左右一対の脚部10と、前記脚部10の下端部分に枢着されたキャスター部20と、前記左右一対の脚部10の開脚角度を変更する開脚角度調整機構部50とで構成された移動型簡易クレーンAであって、
前記開脚角度調整機構部50は、
前記基台部1から垂設され、左右一対の脚部10間に上下方向に穿設されたガイド長孔52を備えたガイド板51と、
前記ガイド長孔52を上下にスライドするガイド軸53と、
前記ガイド軸53と左右一対の脚部10とにそれぞれ枢着されて両者を繋ぐリンクアーム54と、
前記ガイド軸53を上下に移動させる昇降駆動部60とで構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6は、請求項5に記載した移動型簡易クレーンAにおいて、
前記昇降駆動部60は、外周面に雄螺子61aが刻設され、前記ガイド軸53を吊り下げた昇降軸61と、
前記昇降軸61の周囲を回転するように配置され、前記昇降軸61の雄螺子61aが螺入される雌螺子62aを具備し、外周面にウォーム歯車62bが刻設されている昇降軸61の昇降用の従動ナット部材62と、
前記従動ナット部材62のウォーム歯車62bに噛合し、外力により回転する駆動ウォームギア63とで構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7は、請求項6に記載した移動型簡易クレーンAにおいて、
前記昇降軸61の直上に設置され、持ち上げられた前記昇降軸61が当接して前記左右一対の脚部10a・10bの脚開閉時の閉脚限界を規制するアーム固定ピン84を更に設置してなることを特徴とする。
【0018】
請求項8は、請求項7に記載した移動型簡易クレーンAにおいて、
前記アーム固定ピン84に合わせて前記クレーン部80に穿設され、前記アーム固定ピン84に対する前記昇降軸61の当接状態を確認できる監視窓81aを更に備えていることを特徴とする。
【0019】
請求項9は、請求項7または8に記載した移動型簡易クレーンAにおいて、
前記クレーン部80は、基台部1に立設された支柱81と、揺動支持軸86を介して前記支柱81に上下方向に揺動自在に取り付けられ、荷物を吊り下げる吊下げアームMとで構成され、
前記支柱81には、前記昇降軸61の移動線上に設けられた第1アーム固定孔81bと、前記移動線から外れた位置に設けられた第2アーム固定孔81cとが穿設されており、
前記吊下げアームMには、前記第1アーム固定孔81b又は第2アーム固定孔81cのいずれかに合致して前記アーム固定ピン84が挿通され、前記支柱81に対する前記吊下げアームMの角度を荷物の吊下げ状態から下方に向けて折り畳んだ状態まで調整する丸孔83a~83cが穿設されていることを特徴とする。
【0020】
請求項10は、請求項1~9のいずれかに記載した移動型簡易クレーンAにおいて、
前記脚部10は、平行に配置された2本の脚構成部材11・12で構成され、その上端部分と下端部分が前記基台部1とキャスター部20に枢着されて平行リンクを構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の移動型簡易クレーンAによれば、左右一対の脚部10a・10bの開脚角度を変更する開脚角度調整機構部50を具備するので、左右一対の脚部の開脚幅を狭めて通路の幅に合わせたり、通路に置かれた障害物を跨いで通れるように脚部10a・10bの開脚角度を大きく拡げるなど、状況に合わせて変更することが出来、移動を簡便にすることができる。
【0022】
また、左右一対の脚部10a・10bの脚開閉時の閉脚限界を規制するアーム固定ピン84を設置してあるので、荷物の吊下げ状態で開脚幅を過少に閉じるようなことがなく、移動型簡易クレーンAが倒れるようなことがない。
加えて、監視窓81aを備えているので、外部から監視棒30の当接状態を確認することが出来る。
【0023】
更に、支柱81には、監視棒30の移動線上に設けられた第1アーム固定孔81bと、前記移動線から外れた位置に設けられた第2アーム固定孔81cとが穿設されているので、第2アーム固定孔81cを選択してアーム固定ピン84を挿通すると、吊下げアームMを下方に向けて折り畳んだ状態の収納時に吊下げアームMを更に小さく畳むことが出来るので、収納スペースをより小さくすることが出来る。
そして、脚部10は脚構成部材11・12で構成された平行リンク構造となっているので、脚部10を開閉してもキャスター部20の車輪は常に垂直に接地し、スムーズな動きを示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態の正面図とその部分拡大図である。
図2図1の側面図とその部分拡大図である。
図3図1の平面図とその部分拡大図である。
図4】(a)図1のクレーンの脚部を閉じた状態の要部断面図、(b)その脚部の要部斜視図である。
図5図1のクレーンの要部分解斜視図である。
図6図1のX-X断面図である。
図7】(a)図1の開脚角度調整機構部を構成する螺子部材の分解図、(b)ナットホルダーの平面図とその要部側断面図、(c)ナットホルダーに収納される雌螺子部材の平断面図とその側面図、(d)螺子ホルダーの平面図とその要部側断面図、(e)螺子ホルダーの収納される遊嵌部材の平断面図とその側面図である。
図8図1の開脚角度調整機構部を構成するナット部材と螺子部材の他の構成の要部断面図である。
図9】(a)図8の縦断面図、(b)その側面図である。
図10】本発明の第2実施形態の要部正面図である。
図11図10の縦断面図である。
図12図10の駆動機構の要部拡大斜視図である。
図13】本発明の移動型簡易クレーンをコンパクトに収納した側面図とその部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面に従って説明する。本発明の移動型簡易クレーンAは走行型で、クレーン部80、クレーン部80が立設された基台部1、基台部1にその上端部分が枢着された左右一対の脚部10、該脚部10の下端部分に枢着されたキャスター部20、及び左右一対の脚部10の開脚角度を変更する開脚角度調整機構部50とで構成されている。
【0026】
基台部1は、平面視略矩形状の基板2、該基板2の下面前部と後部に平行に垂設された前後一対の脚取付プレート3、及び基板2の上面前部と後部に平行に立設されたガイド板取付ブロック4とで構成されている。
基板2の上面中央にはクレーン部80が搭載され、その支柱81の下端が溶接されている。支柱81の搭載部分の空洞部には後述する監視棒30(第2実施形態では、昇降軸61)を挿通するための通孔8が穿設されている。
【0027】
そして、側面から見て、この通孔8を通過する垂直線に合致して支柱81の側面に監視窓81a及びその直上に第1アーム固定孔81bが穿設されている。
上記垂直線(図示せず)から連結アーム82の後方側に外れ、監視棒30(第2実施形態では、昇降軸61)に接触しない位置に第2アーム固定孔81cが穿設されている(図5参照)。
【0028】
第2アーム固定孔81cの上方で支柱81の上端部には後述するクレーン部80の吊下げアームMを枢着するクレーンアーム枢着孔81dが穿設されている。これら監視窓81a、第1・第2アーム固定孔81b・81c及びクレーンアーム枢着孔81dは支柱81の両側面に設けられている。
クレーンアーム枢着孔81dからの第1・第2アーム固定孔81b・81cの半径をR1・R2とすると、クレーンアーム枢着孔81dからの第1アーム固定孔81bまでの半径R1はクレーンアーム枢着孔81dからの第2アーム固定孔81cまでの半径R2より大きく設定されている(図5)。
これら監視窓81a、第1・第2アーム固定孔81b・81c及びクレーンアーム枢着孔81dと、連結アーム82に穿設された丸孔(第1~3の丸孔82a~82c)との関係は、連結アーム82の項で説明する。
【0029】
脚取付プレート3には、左右の脚部10a・10bを構成する脚構成部材11・12の上端部分が枢着される上端装着孔3aが同一水平線上にて左右に2個ずつ計4個穿設されている。左右の2個の上端装着孔3aは対で、左右それぞれの上端装着孔3a間の離間幅Lは等しい(図1参照)。
前後のガイド板取付ブロック4には、後述する前後のガイド板51を螺着する螺子孔が穿設されている。
【0030】
脚部10は、左右一対で対称に開脚し、且つ開脚角度を調整できるようになっている。左右の脚部10a・10bはそれぞれ同じ長さの2本の脚構成部材11・12で構成され、後述するように平行リンク構造となっている。脚構成部材11・12の上・下端部にはそれぞれ上部・下部枢着孔13・14が穿設されている。
一方の脚部10aの内側の脚構成部材12には、更に下部取付孔12aと上部取付孔12bとが穿設され、他方の脚部10bの内側の脚構成部材12には、下部取付孔12aと上部取付孔12cとが穿設されている。下部取付孔12aには後述するリンクアーム54の他端が枢着されるリンクアーム枢着軸54aが取り付けられている。上部取付孔12b・12cについては後述する。
【0031】
キャスター部20は、横幅の広い角パイプで構成された脚取付部21、脚取付部21の外側面に取り付けられ、細く長い角パイプで構成された前脚部25、脚取付部21の後端から後方に伸びた後脚部29で構成されている。左右の前脚部25及び後脚部29はそれぞれ平行に配置されている。図示していないが、後脚部29の先端が外側に開くようにしてもよい。前脚部25の前端下面には前輪25aが設けられ、後脚部29の下面には後輪29aが設けられている。脚取付部21の下面には補助輪21aが設けられている。補助輪21aは前輪25a、後輪29aより若干高く、前輪25aと後輪29aを使用する場合は、補助輪21aは接地しない(図2参照)。
【0032】
脚取付部21の上面には脚枢着プレート23が平行且つ脚部10の下端部の前後に立設されている。この脚枢着プレート23のそれぞれには2個の脚下部保持孔23aが同一水平線上に穿設されている。左右2個の脚下部保持孔23a間の離間幅Lは上端装着孔3aの離間幅Lに等しい(図1参照)。これにより左右の脚部10a・10bの脚構成部材11・12はそれぞれ平行リンクを構成する。
前面側の脚枢着プレート23の上端には横向き円筒状の前脚固定スタンド28が設けられている。前脚固定スタンド28は脚部10の外側面側に開口している。(図の実施例では、前脚固定スタンド28は前面側の脚枢着プレート23の上端に溶接されているとしたが、勿論、これに限られず、別体のスタンド板を立て、その上に設けてもよい。)
【0033】
前脚部25の後端部分は、脚取付部21の外側面に沿わせて配置されており、前後2箇所で脚取付部21に取り付けられている。即ち、前脚部25の後端部分は、脚取付部21の後端部分に設けられた前脚支持軸26aにて脚取付部21の後端部分に回転可能に枢着されている。そして、前脚支持軸26aから前方の離れた位置に設けた固定孔26dに差し込まれた挿脱ピン26bにて脚取付部21の側面に固定されている。前脚支持軸26aと挿脱ピン26bとの間において、前脚部25を折り畳んだ時に前脚部25を垂直に保持する垂直保持孔26cが前脚部25の側面に穿設されている。前脚支持軸26aから垂直保持孔26cまでの長さは前脚支持軸26aから前脚固定スタンド28までの長さに等しい。
挿脱ピン26bを抜けば、前脚支持軸26aを中心として前脚部25を垂直に持ち上げることが出来る(図13参照)。
【0034】
クレーン部80は、支柱81、連結アーム82と水平アーム83で構成される吊下げアームM、およびクレーン機構部85を有する。
支柱81は、長尺の角筒状部材で、基台部1の基板2の上面中央に溶接にて一体的に垂直に立設されている。支柱81の先端部分には連結アーム82が接続され、連結アーム82に先端部分に水平アーム83が更に接続されている。この連結アーム82と水平アーム83とで吊下げアームMが構成される。
【0035】
連結アーム82は支柱81のクレーンアーム枢着孔81dに挿通された揺動支持軸86を中心に支柱81に対して上下方向に揺動可能に取り付けられている(図5)。
そして、図の実施例では、この揺動支持軸86の周囲にはこの揺動支持軸86を中心として同一半径R1で第1~第2の丸孔82a~82bが設けられ、これより短い半径R2で第3の丸孔82cが設けられている。従って、連結アーム82を上下に首を振らせた時、同じ半径R1の第1~第2の丸孔82a~82bと、支柱81の第1アーム固定孔81bとが一致し、同じ半径R2の第3の丸孔82cと、支柱81の第2アーム固定孔81cとが一致する。
【0036】
第1の丸孔82aと第1アーム固定孔81bに後述するアーム固定ピン84を挿通すれば水平アーム83が水平に保持され、第2の丸孔82bを使用すれば水平アーム83の先端が持ち上がった状態で保持される。
これに対して、第3の丸孔82cは図5から分かるように、クレーンアーム枢着孔81d(揺動支持軸86)と第1アーム固定孔81b(第1の丸孔82a)とを結ぶ線を起点として、第1の丸孔82aから離れた、連結アーム82の先端側の位置(揺動支持軸86を中心として、上記線から90°前後の先端側の位置)にあり、第3の丸孔82cを使用すれば水平アーム83の先端が図13のように垂直下方に垂れ下がった状態で保持される。
【0037】
なお、第3の丸孔82cは、連結アーム82の先端側の位置に設け、揺動支持軸86からの半径をR2としたが、勿論、これに限られず、スペースがあれば第3の丸孔82cに対応する第2アーム固定孔81c及び第3の丸孔82cを半径R1の位置に設けてもよいし、図示しないが、支柱81に同一円周上に多数のアーム固定孔を設けると共にこれらアーム固定孔に合致する1乃至複数の丸孔を連結アーム82に設け、支柱81のアーム固定孔を選択してアーム固定ピン84を挿通するようにしてもよい。
【0038】
連結アーム82の先端部分と後端部分には、前後一対のローラー部材90・91が、設置されている。連結アーム82は、上述したように支柱81に対し、揺動支持軸86を介して上下方向に揺動可能に取り付けられており、アーム固定ピン84を第1の丸孔82a、第2の丸孔82bおよび第3の丸孔82cの何れかに挿入することによって支柱81の第1アーム固定孔81bにアーム固定ピン84が挿通されて固定され、その結果、角度を変えて連結アーム82を支柱81に固定できるようになっている。
【0039】
水平アーム83は、角筒状の部材で、その先端部分にローラー部材92が取り付けられている。支柱81の中央部分には、クレーン機構部85の主要部を構成する巻き上げ機87が取り付けられている。
【0040】
巻き上げ機87は、重量物の上げ降ろし操作を行うためのもので、回転ドラム88にワイヤー95が巻回されており、ウインチハンドル89を回転させることで回転ドラム88が回転してワイヤー95の巻き取り・送り出しができるようになっている。巻き上げ機87としては、周知の技術をそのまま利用することができ、本実施例では、重量物の吊り上げ作業中にウインチハンドル89から手を離しても回転ドラム88が勝手に回転することがない周知のメカニカルブレーキ機構を採用したものが使用されている。
【0041】
巻き上げ機87から引き出されたワイヤー95は、連結アーム82のローラー部材90・91を通り、水平アーム83の先端のローラー部材92から垂れ下がっている。そして、このローラー部材92から垂れ下がったワイヤー95の下端部に吊フック96が取り付けられている。
【0042】
開脚角度調整機構部50は、左右一対の脚部10の開脚角度を変更するもので、本発明では、2つの実施形態を開示した。以下、順番に説明する。
(第1実施形態:図1図9
開脚角度調整機構部50は、基台部1から垂設され、左右一対の脚部10間に上下方向に穿設されたガイド長孔52を備えたガイド板51と、ガイド長孔52を上下にスライドするガイド軸53と、ガイド軸53と左右一対の脚部10とにそれぞれ枢着されて両者を繋ぐリンクアーム54と、一方の脚部10aに枢着されたナットホルダー70と、他方の脚部10bに枢着され、該ナットホルダー70に螺進螺退可能に螺装された螺子部材72とで構成されている。
【0043】
ガイド板51は、基台部1の基板2前後に設けられたガイド板取付ブロック4に固定されて垂設されている。基台部1の脚取付プレート3には上記のように左右一対の脚部10が枢着されている。この左右の脚部10a・10b間の中心線に沿って前面および背面のガイド板51に上下方向のガイド長孔52が穿設され、ガイド軸53がスライド可能に取り付けられている。そして、この前後のガイド板51にはガイド長孔52の直上及び下方において、前後のガイド板51の間隔を保持する上・下部間隔保持部材55・56が取り付けられてその間隔を保つように一体化されている。上部間隔維持部材55は、円筒状の部材で前後のガイド板51間に配置され、両側からボルト固定されている。そしてこの上部間隔維持部材55には、上下に貫通するスライド孔55aが穿設されており、ガイド軸53に取り付けられた監視棒30が挿通されている。下部間隔維持部材56は前後のガイド板51間に配置され、ボルト固定されている。監視棒30の上端には全周にわたって浅い溝が設けられ、目印31となる例えば赤色の塗装が施されている。
【0044】
ガイド軸53にはリンクアーム54の一端が枢着され、既に述べたように、左右の脚部10(本実施例では、内側の脚構成部材12)にその他端が枢着されている。左右の脚部10と左右のリンクアーム54の他端とを繋ぐ軸をリンクアーム枢着軸54aとする。
これによりリンクアーム54、ガイド軸53から上部枢着孔13までの部分、及び上部枢着孔13とリンクアーム枢着軸54aの間の部分でガイド軸53の両側に三角形(トラス構造)を作り、ガイド軸53の上下移動に合わせて脚部10の開き角度を固定的に調整するようになっている。
【0045】
図6及び図7に示す開脚角度調整機構部50の機構部分は、ナットホルダー70と螺子部材72とで構成され、図1図6から分かるように、左右の脚部10a・10bの側面に掛け渡されている。そのため、開脚角度調整機構部50を操作して螺子機構部分を螺進螺退させると、左右の脚部10a・10bに矢印で示すような時計・反時計方向の捻りが発生し、これら左右の脚部10a・10bや螺子機構部分にストレスが発生する。そこでこれを解消するように、以下のような構成が採用されている。
【0046】
開脚角度調整機構部50のナットホルダー70は、雌螺子が刻設された雌螺子部材71と、該雌螺子部材71を回転可能に収納するホルダー本体70a、及びホルダー本体70aから一体的に突設され、一方の脚部10aの通孔に回動可能に挿通される枢着軸70bとで構成されている。この枢着軸70bは、上記一方の脚部10aの内側の脚構成部材12に穿設された上部取付孔12bに回動可能にナット止めされている(図6)。
雌螺子部材71は円柱状の部材で、円曲面の側面を貫通するように雌螺子孔71aが螺設されている。
ホルダー本体70aにはその上面から底部に向けて雌螺子部材71を回転可能に収納する平面視円形の雌螺子収納孔70cが設けられており、更にこの雌螺子収納孔70cを貫通するように螺子部材挿通孔70dが左右方向に穿設されている。雌螺子収納孔70cは貫通孔でも良いし、上面開口の有底穴でも良い。図は貫通孔である。
【0047】
螺子部材72は、螺子ホルダー73、雄螺子棒73eを具備した螺子本体部分74、自動調心軸受け75、鞘管76、及び遊嵌部材77で構成されている。
【0048】
螺子ホルダー73は、ナットホルダー70と同様の形状で、ホルダー本体73aと、他方の脚部10bの内側の脚構成部材12に穿設された上部取付孔12cに回動可能に挿通される枢着軸73bとで構成されている。
遊嵌部材77は円柱状で、円曲面の側面を貫通するように遊嵌孔77aが穿設されている。
ホルダー本体73aの上面から底部に向かって遊嵌部材77を収納する平面視円形の収納孔73cが穿設されており、更に収納孔73cを貫通するホルダー孔73dがホルダー本体73aの側面に穿設されている。
【0049】
上記ホルダー本体73aの入り口部分には自動調心軸受け75が配置されている。自動調心軸受け75は、受け面が浅い凹球面状になった受け座金と、鋼球を介してこの受け座金の浅い凹球面状受け面に向かう凸球面状になった球面座金とで構成されている。
【0050】
螺子本体部分74は、雄螺子棒73e、円柱状の回転軸部74d、円柱状のハンドル軸部74a、及び操作ハンドル78とで構成されている。
雄螺子棒73eは上記ナットホルダー70の雌螺子収納孔70cに収納された雌螺子部材71の雌螺子孔71aに螺進螺退可能に螺装されるようになっている。
回転軸部74dは、該雄螺子棒73eに続く部分で、鞘管76、ホルダー本体73aに収納された遊嵌部材77の遊嵌孔77a及び自動調心軸受け75に挿通されている。
【0051】
遊嵌部材77は、ホルダー本体73aの収納孔73c内で回転するように収納され、自動調心軸受け75と協働して後述する螺子部材72の芯ずれに対応できるようになっている。そのため、ホルダー孔73dは挿通される回転軸部74dに対してクリアランスを設けて穿設されている。上記ホルダー本体73aは鞘管76と自動調心軸受け75に挟まれ、軸方向に移動しないように保持されている。
ハンドル軸部74aは、回転軸部74dよりも太く、回転軸部74dに挿通された自動調心軸受け75に当接する。ハンドル軸部74aの端部には操作ハンドル78が取り付けられている。
【0052】
上記のように、脚部10の側面において、ナットホルダー70の枢着軸70bは一方の脚部10aの脚構成部材12に枢着され、螺子部材72の枢着軸73bは、他方の脚部10bの脚構成部材12に枢着されている。
そして、螺子部材72の雄螺子棒73eは、ナットホルダー70の雌螺子収納孔70cに回動自在に収納された雌螺子部材71の雌螺子孔71aに螺進螺退可能に螺装されている。
螺子部材72の回転軸部74dは螺子ホルダー73の収納孔73cに収納された遊嵌部材77の遊嵌孔77aに挿通されている。
【0053】
以上のように構成されている移動型簡易クレーンAを使用する場合を説明する。吊フック96が吊り上げ対象物である重量物の直上に位置するよう移動型簡易クレーンAを移動させる。脚部10の開き角度は対象物の重量や形状に合わせて設定する。
ウインチハンドル89を回して吊フック96を降ろし、吊フック96を重量物に引っ掛ける。そして、ウインチハンドル89を先ほどとは反対側に回して重量物を吊り上げ、目的の場所に向かって移動型簡易クレーンAを移動させる。
【0054】
移動途中で脚部10の開口幅より大きい障害物があり、これを跨いで越せない場合には、その手前で停止し、障害物に合わせて脚部10の開口幅を広げる。即ち、操作ハンドル78を回転させ、雄螺子棒73eがナットホルダー70を螺子ホルダー73から遠ざける方向に移動させる。これによりガイド軸53が下がり、リンクアーム54が左右の脚部10a・10bを押し広げ、左右の脚部10a・10bの開口幅を広げる。
左右の脚部10a・10bは上記の様に平行リンク構造になっているので、キャスター部20は、水平を保ったまま移動し、前輪25a及び後輪29aはその垂直軸の周りに回転して横向きになり、スムーズに開脚方向に移動する。
【0055】
障害物を跨いで越えることが出来る幅迄広げると、操作ハンドル78を停止させる。脚部10は上記の様に、リンクアーム54、ガイド軸53から上部枢着孔13までの部分、及び上部枢着孔13とリンクアーム枢着軸54aの間の部分でトラス構造を形成するので、操作ハンドル78の停止により、左右の脚部10a・10bはその脚角度で固定される。
【0056】
逆に、通路が狭く通過できない場合には開口幅を狭くする。操作ハンドル78を逆回転させると雄螺子棒73eがナットホルダー70を螺子ホルダー73方向に引き寄せる方向に移動し、これによりガイド軸53が上がり、リンクアーム54を介して左右の脚部10a・10bの開口幅が狭まる。この時、監視棒30も上昇する。通路の幅に合った処で操作ハンドル78を停止させると左右の脚部10a・10bはその開口幅で固定される。この時、この移動途中で停止中の簡易クレーンAは、水平アーム83を水平(或いは先端を斜め上方向)に設定されて重量物を吊り下げた状態である(勿論、空の場合もあり得る。)。
上記の様に開脚幅の調整が終わると、簡易クレーンAを押して目的地まで移動する。簡易クレーンAを押すと、前輪25a、後輪29aが移送方向に回転し、簡易クレーンAのスムーズな移動を実現する。この時、脚部10は、平行リンク構造となっているので、開脚幅に拘わらず、その前・後輪25a・25bは常に垂直に接地することになる。
【0057】
そして、上記の様に通路の幅に合わせて左右の脚部10a・10bの幅を狭くすることが出来るのであるが、余り狭くし過ぎるとバランスを崩して倒れる恐れがある。特に、重量物の吊下げ状態で、バランスを崩すと危険である。そこで、本発明では、水平アーム83を水平にした状態(重量物を吊り下げた場合は勿論、空荷の状態も含む)での安全を確保するために脚部10の幅を制限している。
【0058】
即ち、既に述べたように、クレーン部80の支柱81には監視窓81aと、その直上(監視窓81aを通る垂直線上)に第1アーム固定孔81bが穿設されている。第1、第2アーム固定孔81b・81cの位置は、揺動支持軸86を中心にして半径R2の位置に第2アーム固定孔81cが穿設され、半径R1の位置に第1アーム固定孔81bが穿設されている。そして、連結アーム82には既に述べたように、第1~第3の丸孔82a~82cが存在する。
【0059】
重量物の吊下げ状態では、水平アーム83は水平状態(或いは、先端が持ち上がった状態)を維持しているので、アーム固定ピン84は、第1の丸孔82a(又は、水平アーム83の先端が持ち上がった状態では、第2の丸孔82b)と第1アーム固定孔81bとに挿通され、監視窓81aの直上に位置する。上記の様に、操作ハンドル78を回して左右の脚部10a・10bを閉じるとこれに合わせて監視棒30が上昇するが、上昇した監視棒30の上端の目印31がクレーン部80の支柱81に設けた監視窓81aに現れるとこれと同時にその上方にて第1の丸孔82a(又は第2の丸孔82b)に挿通されたアーム固定ピン84に接触して操作ハンドル78の回転が停止し、左右の脚部10a・10bの開口幅を狭める方向の移動が停止する。これにより重量物吊下げ状態での脚部10の閉じ過ぎを防ぐことが出来る。上記目印31により作業時における閉脚限界を外部から視認できる。
【0060】
そして、互いに平行且つ前方に伸びた前脚部25を備えたこの左右の脚部10a・10bは、ガイド長孔52を中心に対称的に左右に開閉するので、重量物を吊り下げた状態でも本移動型簡易クレーンAはバランスを崩すことがない。また、重量物を吊り下げた状態で移動するときも重量物が大きく揺れない限りバランスを崩すことがない。目的地に達すると、ウインチハンドル89を回して吊フック96を降ろす。
【0061】
本移動型簡易クレーンAの使用が終了すると、これをコンパクトに折り畳む収納作業に移る。まず、水平アーム83を支えながらアーム固定ピン84を第1の丸孔82a(又は第2の丸孔82b)から抜く。これにより連結アーム82は下がり、第3の丸孔82cが支柱81の第2アーム固定孔81cに一致する。抜いたアーム固定ピン84を第3の丸孔82c及び第2アーム固定孔81cに差し込む。アーム固定ピン84は、監視棒30の移動線から離れているので、監視棒30はアーム固定ピン84に接触することなく上昇する。ナットホルダー70が螺退して回転軸部74dの端部(雄螺子棒73eの螺子の終わり)に当接した処で停止し、左右の脚部10a・10bを最小開脚幅迄狭めることができる。
【0062】
次いで、キャスター部20の挿脱ピン26bを抜き、前脚部25を上向きに回転させて前脚部25の垂直保持孔26cと前脚固定スタンド28とを合致させ、上記挿脱ピン26bを差し込むことで前脚部25を上向き垂直に保持することが出来る。この時、本移動型簡易クレーンAは、補助輪21aと後輪29aとで立つことになる。この状態で、本移動型簡易クレーンAの収納場所に移動させる。
【0063】
なお、この実施形態における開脚角度調整機構部50の螺子駆動機構は、上記のように左右の脚部10a・10bの側面に設置されているため、螺子操作により左右の脚部10a・10bに捻りが発生し、これが螺子部材72に曲げ方向のストレスが発生させるが、円柱状の雌螺子部材71や遊嵌部材77が雌螺子収納孔70cや収納孔73c内でストレスに合わせて回転し、且つこれに合わせて自動調心軸受け75の軸心がずれて調心作用を発揮してストレスを解消させ、スムーズな回転操作を可能にする。
【0064】
このように、第1実施形態の移動型簡易クレーンAによれば、脚部10の脚開度を可変させることで途中に障害物があったとしても簡単に跨いで通ることができるし、通路が狭い場合でも通過でき、搬送作業を効率化できるようになった。なお、移動型簡易クレーンAの不使用時には、図12に示すように、クレーン部80と前脚部25とを収容することで、移動型簡易クレーンAをコンパクトにすることができる。
【0065】
(第1実施形態の変形:図8図9
上記開脚角度調整機構部50の螺子駆動機構は、左右の脚部10a・10bの側面に設置したが、脚部10a・10bを貫通してその側面の中心線に合わせて設置することも出来る。以下、相違する部分のみを説明する。
この場合は、図8に示すように、左右の脚部10a・10bの側面の中心線に合わせて上下方向に遊嵌長孔15が左右の脚部10a・10bの側面に穿設されている。そして、遊嵌長孔15に合わせて一方の脚部10aの内側の脚構成部材12に内面側にナットホルダー100を設け、他方の脚部10b内側の脚構成部材12に内面側に螺子部材72を設ける。
【0066】
ナットホルダー100は、前後に設けられた保持プレート100aと、この保持プレート100aに支持軸101bで上下方向に首を振るように支持された雌螺子部材101とで構成され、遊嵌長孔15に合わせて雌螺子101aが雌螺子部材101に穿設されている。
一方、螺子ホルダー103も同様、前後に設けられた保持プレート103aと、この保持プレート103aに支持軸104bで上下方向に首を振るように支持された螺子部材保持部材104とで構成され、遊嵌長孔15に合わせて螺子部材保持孔104aが穿設されている。
【0067】
螺子部材72の螺子本体部分74は、螺子ホルダー103の螺子部材保持孔104aに挿通して図示しない止め螺子などで固定され、雄螺子棒73eは雌螺子部材101の雌螺子101aに螺進螺退自在に螺装されている。そして、螺子部材72の螺子本体部分74及び雄螺子棒73eは左右の脚部10に設けられた遊嵌長孔15を貫通するように配置されている。
【0068】
脚部10の開閉のために、操作ハンドル78を回すと、上記第1実施形態と同様、螺子ホルダー103に対してナットホルダー100が近接或いは離間するが、脚部10の開閉に合わせてナットホルダー100と螺子ホルダー103が支持軸101b・104bを回転中心として上下方向に首を振るため螺子部材72には上下方向のストレスが掛らない。そして、この場合、螺子部材72は、脚部10の側面の中心線に合わせて設置されているために開閉に脚部10に捻じれを生じず、開閉をスムーズに行う事が出来る。
【0069】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を説明する。この場合は第1実施形態に対して螺子機構が異なる。この螺子機構は、図10図12に示すように、監視棒30に代わる昇降軸61、この昇降軸61に螺装された従動ナット部材62、及びこの従動ナット部材62に噛合した駆動ウォームギア63とで構成される。駆動ウォームギア63には操作ハンドル78が装着される。監視棒30に代わる昇降軸61の上端にも目印(図示せず)が設けられる。
【0070】
昇降軸61には雄螺子61aが刻設され、従動ナット部材62の内面には雌螺子62aが刻設され、従動ナット部材62の外周面にはウォーム歯車62bが刻設されている。従動ナット部材62と駆動ウォームギア63とは基台部1の下面にケーシングKに収められて設置されている。
そして、上記の様に、従動ナット部材62の雌螺子62aに昇降軸61の雄螺子61aが螺進螺退自在に螺装され、従動ナット部材62の回転によって昇降軸61が昇降する。従動ナット部材62のウォーム歯車62bには駆動ウォームギア63が噛合しており、操作ハンドル78で駆動ウォームギア63を回転させると昇降軸61が昇降し、脚部10が開閉する。その余は第1実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0071】
A:移動型簡易クレーン、K:ケーシング、L:離間幅、M:吊下げアーム、R1・R2:半径
1:基台部、2:基板、3:脚取付プレート、3a:上端装着孔、4:ガイド板取付ブロック、8:通孔、10:脚部、10a:一方の脚部、10b:他方の脚部、11・12:脚構成部材、12a:下部取付孔、12b・12c:上部取付孔、13:上部枢着孔、14:下部枢着孔、15:遊嵌長孔、20:キャスター部、21:脚取付部、21a:補助輪、23:脚枢着プレート、23a:脚下部保持孔、25:前脚部、25a:前輪、26a:前脚支持軸、26b:挿脱ピン、26c:垂直保持孔、26d:固定孔、28:前脚固定スタンド、29:後脚部、29a:後輪、30:監視棒、31:目印、50:開脚角度調整機構部、51:ガイド板、52:ガイド長孔、53:ガイド軸、54:リンクアーム、54a:リンクアーム枢着軸、55:上部間隔維持部材、55a:スライド孔、56:下部間隔維持部材、60:昇降駆動部、61:昇降軸、61a:雄螺子、62:従動ナット部材、62a:雌螺子、62b:ウォーム歯車、63:駆動ウォームギア、70:ナットホルダー、70a:ホルダー本体、70b:枢着軸、70c:雌螺子収納孔、70d:螺子部材挿通孔、71:雌螺子部材、71a:雌螺子孔、72:螺子部材、73:螺子ホルダー、73a:ホルダー本体、73b:枢着軸、73c:収納孔、73d:ホルダー孔、73e:雄螺子棒、74:螺子本体部分、74a:ハンドル軸部、74d:回転軸部、75:自動調心軸受け、76:鞘管、77:遊嵌部材、77a:遊嵌孔、78:操作ハンドル、80:クレーン部、81:支柱、81a:監視窓、81b:第1アーム固定孔、81c:第2アーム固定孔、81d:クレーンアーム枢着孔、82:連結アーム、82a~82c:第1~3の丸孔、83:水平アーム、84:アーム固定ピン、85:クレーン機構部、86:揺動支持軸、87:巻き上げ機、88:回転ドラム、89:ウインチハンドル、90~92:ローラー部材、95:ワイヤー、96:吊フック、100:ナットホルダー、100a:保持プレート、101:雌螺子部材、101a:雌螺子、101b:支持軸、103:螺子ホルダー、103a:保持プレート、104:螺子部材保持部材、104a:螺子部材保持孔、104b:支持軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13