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特許7586498心臓インプラントの繰り返し荷重による故障を患者固有に予測する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】心臓インプラントの繰り返し荷重による故障を患者固有に予測する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/50 20180101AFI20241112BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20241112BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20241112BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G16H50/50
A61B6/03
G06Q10/20
A61F2/24
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021553066
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020056000
(87)【国際公開番号】W WO2020182651
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】19161587.1
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519282801
【氏名又は名称】エフエーオプス エヌフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】デ ボック、サンデル
(72)【発明者】
【氏名】デ サンティス、ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンナコーネ、フランチェスコ
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/177647(WO,A1)
【文献】特開2012-024582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61B 6/03
G06Q 10/20
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓インプラントの繰り返し荷重による故障を患者固有に予測する方法であって、
心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現を表すインプラントモデルを提供することと
臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、前記心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す4次元の4D患者固有解剖学的モデルを提供することと、
コンピュータに、前記4D患者固有解剖学的モデルが前記複数の状態にわたって連続して変形する間に、前記設置位置に設置された前記インプラントモデルの変形を計算させることと、
前記コンピュータに、前記計算されたインプラントの変形に基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定させることと、
を含み、
前記インプラントモデルの各メッシュ要素について、前記心臓サイクルの過程において発生する機械的応力および/または歪みの大きさを判定し、判定した振幅に基づいて繰り返し荷重による故障のリスクを判定すること、
をさらに含む方法。
【請求項2】
前記コンピュータに、前記計算されたインプラントの変形および変形履歴を表すデータに基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定させること、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記4D患者固有解剖学的モデルは、設置前の前記心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記4D患者固有解剖学的モデルのノードに関連付けられた関連ノードを有する4D患者固有中間モデルを提供することを含み、前記4D患者固有中間モデルは、設置前の前記心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表し、前記4D患者固有解剖学的モデルは、前記4D患者固有中間モデルの関連ノードの変位を、剛性および/またはダッシュポット要素を介して、前記4D患者固有解剖学的モデルの前記ノードに伝達することにより前記複数の状態に変形する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記4D患者固有解剖学的モデルは、剛性および/または粘性を含む機械的特性を有し、前記4D患者固有解剖学的モデルの全体的な機械的挙動は、前記4D患者固有解剖学的モデルの機械的特性と、関連するノードを前記4D患者固有解剖学的モデルのノードに接続する剛性および/またはダッシュポット要素の機械的特性との組み合わせに依存する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記インプラントモデルの各メッシュ要素内の機械的応力および/または歪みを判定すること、
を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記心臓サイクルの過程における前記複数の状態のそれぞれについて、前記インプラントモデルの各メッシュ要素内の機械的応力および/または歪みを判定すること、
を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記心臓インプラントが、弁インプラント、または、ステントである、
請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記繰り返し荷重による故障が、高サイクル疲労破壊、インプラントの移動、弁の故障のうちの1つ以上を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
1つの4D術前画像のセグメンテーションと、
複数の4D術前画像内の複数の目印と、
前記インプラントの設置前および/または設置後に行われた患者固有の血液量・血流・血圧の測定値と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像と、
予想される動きなどの心臓の病態生理に関する患者非固有の知見と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像と、
慢性期の心臓リモデリングに関する患者非固有の知見と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像と、
の内の1以上に基づいて、前記4D患者固有解剖学的モデルまたはその関連ノードを提供すること、
を含む請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記心臓サイクルの前記複数の瞬間に対応する前記複数の状態における患者固有の心臓領域を表す、複数の、少なくとも擬似的な3D医療用画像を受信し、それらに基づいて前記4D患者固有解剖学的モデルを構築すること、
を含む請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記3D医療用画像の1つに基づいて、前記患者固有の心臓領域の3Dメッシュベース表現を構築することと、
ある医療用画像から次の医療用画像への変化を判定することと、
前記変化を前記構築された3Dメッシュベース表現に適用して、前記4D患者固有解剖学的モデルを提供することと、
を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者固有の心臓領域の3Dメッシュベース表現を構築する前記3D医療用画像のそれぞれについて、
ある3Dメッシュベース表現から次の3Dメッシュベース表現への変化を判定することと、
前記複数の3Dメッシュベース表現に基づいて、前記4D患者固有解剖学的モデルを判定することと、
を含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記4D患者固有解剖学的モデル内の複数の異なる位置にインプラントモデルを設置し、前記位置のそれぞれについて繰り返し荷重による故障のリスクを判定し、実際の埋め込みのために最もリスクが低いと関連付けられた位置を選択すること、
を含む請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
複数の異なるインプラントモデルを提供し、各インプラントモデルは、対応する実際のインプラント装置の幾何学的および/または材料の特性を表し、インプラントモデルのそれぞれについて前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定し、実際の埋め込みのために、最もリスクが低いと計算されたインプラントモデルに関連するインプラント装置を選択すること、
を含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
繰り返し荷重による故障のリスクが最も高いものを使用して、ベンチマークを設計し、実験的疲労試験の基準荷重条件を調整すること、
を含む請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
心臓インプラントの繰り返し荷重による故障を患者固有に予測するシステムであって、
心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現を表すインプラントモデルを受信し
臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、前記心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す4次元の4D患者固有解剖学的モデルを受信し、
前記4D患者固有解剖学的モデルが前記複数の状態にわたって連続して変形するときに、またはその前に、前記設置位置に設置された前記インプラントモデルの変形を計算し、
前記計算されたインプラントの変形に基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定する、
ように設けられたプロセッサを含み、
前記プロセッサはさらに、前記インプラントモデルの各メッシュ要素について、前記心臓サイクルの過程において発生する機械的応力および/または歪みの大きさを判定し、判定した振幅に基づいて繰り返し荷重による故障のリスクを判定するように設けられる、
システム。
【請求項18】
コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令がプログラム可能なコンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、
心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現を表すインプラントモデルを取得させ
臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、前記心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す4次元の4D患者固有解剖学的モデルを取得させ、
前記4D患者固有解剖学的モデルが前記複数の状態にわたって連続して変形するときに、前記設置位置に設置された前記インプラントモデルの変形を計算させ、
前記計算されたインプラントの変形に基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定させ、
前記コンピュータ実行可能命令はさらに、前記コンピュータに、前記インプラントモデルの各メッシュ要素について、前記心臓サイクルの過程において発生する機械的応力および/または歪みの大きさを判定させ、判定された振幅に基づいて繰り返し荷重による故障のリスクを判定させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、弁の埋め込みおよび/または修復などの弁治療における経カテーテル構造的心臓インターベンションの術前計画の分野に関する。より詳細には、本発明は、心臓インプラントの繰り返し荷重による故障の術前予測に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インプラント装置と患者固有の解剖学的構造との相互作用を術前に洞察し、逆流などの合併症をより適切に予測し、大動脈弁に設置されたインプラントの血行動態性能をより適切に予測し、患者の選別と層別化をより適切に行うための方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、例えば心臓サイクルの間の複数の瞬間おける、経カテーテル構造的心臓インターベンションの急性の結果としての血行動態の悪化の程度を予測する方法が開示されている。設置後の血行動態の悪化も判断することができる。
【0004】
これらは術前計画に大きな進歩をもたらし、個々の患者に適したインプラント装置を選択することで、急性的な結果を改善することができるようになったが、術前計画をより向上するために、インプラント装置と特定の患者の解剖学的構造との長期的な相互作用に関するより多くの情報が必要とされている。インターベンションの慢性的な結果を評価する際に、インプラントの長期的な存在によって変化する心臓の解剖学的なリモデリングを考慮に入れることができれば、非常に価値のあることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/171039号
【文献】国際公開第2018/141927号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
心臓やその他の運動器官にあるインプラント装置は、繰り返し変形したり、繰り返しの荷重を受ける。例えば、心臓インプラントは、心臓サイクルによる繰り返し荷重を受ける。収縮期には心臓インプラントは圧縮され、拡張期には心臓インプラントは緩むかもしれない。急性的な結果(例えば、設置時)を考慮して最適と判断されたインプラント装置は、慢性的な結果(例えば、高サイクル疲労破壊などの繰り返し荷重による故障)を考慮すると、必ずしも最適ではないことが分かった。さらに、繰り返し荷重による故障を考慮した場合のインプラント装置の性能は、患者固有の解剖学的構造によって生じる患者固有の繰り返し荷重に大きく依存する可能性があることが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明によれば、心臓インプラントの繰り返し荷重による故障を患者固有に予測する方法が提供される。予測する方法は、実際の心臓インプラント装置を患者の解剖学的構造に実際に設置する前に実行することができる。本方法は、心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現を表すインプラントモデルを提供することを含む。また、本方法は、心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す4次元の4D患者固有解剖学的モデルを提供することを含む。本方法によれば、4D患者固有解剖学的モデルが複数の状態にわたって連続して変形する際に、コンピュータが、設置位置に設置されたインプラントモデルの変形を、例えば、有限要素解析を用いて計算し、計算されたインプラントの変形および変形履歴に基づいて、心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定する。これにより、患者固有の解剖学的構造に基づいて、インプラント装置の設置前に、インプラント装置の繰り返し荷重による故障を予測することができるという利点がある。
【0008】
任意で、本方法は、計算されたインプラントの変形と、変形履歴を表すデータとに基づいて、心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定することを含む。したがって、変形履歴を表すデータを考慮に入れることができる。変形履歴を表すデータは、例えば、経過時間、サイクル数、予測されるインプラント装置の移動、予測される解剖学的経時的変化などを含むことができ、また、カテーテルに装填してインプラントを設置位置に向けて前進させる間のインプラントの変形、経過時間、サイクル数、予測されるインプラント装置の移動、予測される経時的な解剖学的変化などが挙げられる。
【0009】
任意で、本方法は、設置位置にインプラントモデルを設置した後、4D患者固有解剖学的モデルが複数の状態にわたって連続して変形する間のインプラントモデルの変形を計算することを含む。インプラントモデルは、設置中の心臓の鼓動をモデル化することなく、設置位置に設置されてもよい。あるいは、インプラントモデルは、設置中の心臓の鼓動をモデル化しながら設置位置に設置されていてもよい。本方法は、4D患者固有解剖学的モデルが複数の状態にわたって連続して変形する間に、設置されるインプラントモデルのその間の変形を計算することを含むことができる。
【0010】
任意で、4D患者固有解剖学的モデルは、設置前の心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す。したがって、4D解剖学的モデルのノードは、インプラント装置がない状態での患者固有の心臓領域の変位に応じて、複数の状態に変化する。
【0011】
患者固有の心臓領域を表す患者固有解剖学的モデルの変形は、解剖学的モデルとインプラントモデルとの接触によってインプラント装置に現れる。そのため、インプラント装置の存在の結果としての患者固有の心臓領域の変形は考慮されない。これにより、比較的柔軟なインプラント装置、すなわち、ホスティング解剖学的構造に比べてはるかに柔軟な装置に対して、良好な近似が得られることがわかっている。
【0012】
任意で、4D患者固有中間モデルが提供され、それのノードは、4D患者固有解剖学的モデルのノードに関連付けられる。4D患者固有中間モデルは、設置前の心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す。したがって、4D中間モデルの関連ノードは、インプラント装置がない状態での患者固有の心臓領域の変位に応じて、複数の状態に変形する。そして、4D患者固有解剖学的モデルは、4D中間モデルの関連ノードと解剖学的モデルのノードとを接続する剛性またはダッシュポット要素を介して、4D中間モデルの関連ノードに変位を与えることにより、複数の状態に変形する。したがって、4D患者固有中間モデルの変形は、解剖学的モデルのノードに関連付けられた中間モデルのノードによって駆動され、一方、解剖学的モデルのノードは、関連付けられた中間モデルのノードに対して(弾力的に)移動することができる。インプラントモデルの変形は、4D患者固有解剖学的モデルとインプラントモデルの間の接触によって達成される。したがって、インプラント装置の存在による患者固有の心臓領域の変形が考慮される。これにより、比較的硬いインプラント装置、すなわちホスティング解剖学的構造に変形する装置に対して、良好な近似が得られることが分かっている。これらの2つのオプション(解剖学的ノードに直接的に変形を与えるか、機械的剛性および/またはダッシュポット要素を介して解剖学的ノードに接続された関連ノードを使用して間接的に変形を与えるか)のうち、調査中のインプラント装置に最も適しているのはどちらかを、例えば比較テストを通じて検証できることが理解されるであろう。
【0013】
任意で、4D患者固有解剖学的モデルは、剛性および/または粘性を含む機械的特性を有する。このような場合、4D患者固有解剖学的モデルの全体的な機械的挙動は、4D解剖学的モデルの機械的特性と、関連するノードを4D解剖学的モデルに接続する剛性および/またはダッシュポット要素の機械的特性との組み合わせに依存する。
【0014】
任意で、本方法は、インプラントモデルの各メッシュ要素内の機械的応力および/または歪みを判定することを含む。任意で、本方法は、心臓サイクルの過程における複数の状態のそれぞれについて、インプラントモデルの各メッシュ要素内の機械的応力および/または歪みを判定することを含む。インプラントモデルのメッシュ要素内の機械的応力および/または歪みは、繰り返し疲労荷重を表すものである。インプラントモデルのメッシュ要素内の機械的応力および/または歪み、並びに全サイクル中のその変動は、繰り返し疲労荷重を表すものである。
【0015】
任意で、本方法は、インプラントモデルの各メッシュ要素について、心臓サイクルの過程において発生する機械的応力および/または歪みの大きさを判定することを含む。判定された大きさは、繰り返し荷重による故障のリスクを表すものである。
【0016】
任意で、心臓インプラントは、弁インプラント、ステントなどである。
【0017】
任意で、繰り返し荷重による故障は、材料疲労、インプラントの移動、弁の故障などの高サイクル疲労破壊の1つ以上が含まれる。
【0018】
任意で、繰り返し荷重シミュレーションが第1の破壊を予測できる場合、破壊したインプラントモデルを用いて、任意で、解剖学的モデルおよび/または荷重条件を変更して、第2の(破壊後の)繰り返し荷重シミュレーションを行うことができる。これを複数回繰り返すことで、その後の繰返し荷重による故障の影響を評価することができる。
【0019】
任意で、繰り返し荷重による故障のリスクは、当技術分野で知られているように、S-N曲線によって判定される。任意で、繰り返し荷重による故障のリスクは、当技術分野で知られているように、レインフローカウンティングアルゴリズムによって判定される。任意で、繰り返し荷重による故障のリスクは、(例えばニチノール成分の)歪み振幅によって判定される。
【0020】
任意で、本方法は、a)1つの4D術前画像のセグメンテーション、b)複数の4D術前画像内の複数の目印、c)インプラントの設置前および/または設置後に行われた患者固有の血液量・血流・血圧の測定値と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像、d)予想される動きなどの心臓の病態生理に関する患者非固有の知見と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像、または、e)治療後数週間または数か月後に発生するインプラントの動きを制限する組織の異常増殖など、慢性期の心臓リモデリングに関する患者非固有の知見と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像、のうちの1以上に基づいて、4D患者固有解剖学的モデルまたはその関連ノードを提供することを含む。
【0021】
ある側面によると、本方法は、心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における患者固有の心臓領域を表す少なくとも擬似3次元の3D医療用画像を受信することと、それに基づいて4D患者固有解剖学的モデルを構築することとを含む。そのため、4D患者固有解剖学的モデルを、利用可能な医療用画像から効率的に構築することができる。
【0022】
任意で、本方法は、医療用画像の1つに基づいて、患者固有の心臓領域の3Dメッシュベース表現を構築することと、ある医療用画像から次の医療用画像への変化を判定することと、4D患者固有解剖学的モデルを提供するために、構築された3Dメッシュベース表現に変化を適用することとを含む。3Dメッシュベース表現は、患者固有の心臓領域の3D患者固有解剖学的モデルを表している。したがって、単一の3Dメッシュベース表現を構築するだけでよく、複数の状態にわたって連続して4D患者固有解剖学的モデル(または4D患者固有中間モデル)を変化することは、(例えば、弾性レジストレーションアルゴリズムを使用して)複数の状態に医療用画像を変化することから得られる。複数の状態を経る医療用画像の変化は、4Dのベクトル場を利用できることが理解されるであろう。
【0023】
任意で、本方法は、患者固有の心臓領域の3Dメッシュベース表現を構築する医療用画像のそれぞれについて、ある3Dメッシュベース表現から次の表現への変化を判定することと、複数の3Dメッシュベース表現に基づいて4D患者固有解剖学的モデルを判定すること(例えば、まず、複数の3Dメッシュベース表現に基づいて4D患者固有中間モデルを判定すること)と、を含む。複数の状態を経るメッシュの変化は、メッシュのノードにおいてのみ4Dベクトルを利用できることが理解されるであろう。
【0024】
任意で、本方法は、4D患者固有解剖学的モデル内の複数の異なる位置にインプラントモデルを設置し、それぞれの位置についての繰り返し荷重による故障のリスクを判定し、実際の埋め込みのために最もリスクが低いと関連付けられた位置を選択することを含む。したがって、繰り返し荷重による故障のリスクを最小限に抑えるという観点から、最適なインプラント装置の位置を判定することができる。
【0025】
任意で、本方法は、複数の異なるインプラントモデルを提供することを含み、各インプラントモデルは、対応する実際のインプラント装置の幾何学的特性(例えば、同じインプラント装置のサイズを含む)および/または材料の特性を表し、インプラントモデルのそれぞれについて心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定し、実際の埋め込みのために、最もリスクが低いと計算されたインプラントモデルに関連するインプラント装置を選択する。したがって、繰り返し荷重による故障のリスクを最小限に抑えるという観点から、最適なインプラント装置を選択することができる。複数の異なるインプラントモデルのそれぞれについて、複数の異なる設置位置を利用することができることが理解されるであろう。
【0026】
ある側面によると、実験的疲労試験(加速摩耗試験、または疲労試験機)の基準荷重条件を設計する方法が提供される。繰り返し荷重による故障のリスクが最も高いものを使用して、ベンチマーク(bench)を設計し、実験的疲労試験の荷重条件を調整する。インプラント装置の患者固有の変形または応力または歪みから、最も高い繰返し荷重による故障のリスクを、加速サイクルを実行する簡略化されたベンチマークで再現することができ、より高い頻度でサイクルを実行することにより、生体内の時間よりも短い時間内でインプラント装置の疲労安全性をテストすることができる。
【0027】
ある側面によると、心臓インプラントの繰り返し荷重による故障を患者固有に予測するためのシステムが提供される。このシステムは、プロセッサを含む。心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現を表すインプラントモデルを受信するプロセッサを設ける。心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す、4次元の4D患者固有解剖学的モデルを受信するプロセッサを設ける。4D患者固有解剖学的モデルが複数の状態にわたって連続して変形するときに、またはその前に、設置位置に設置されたインプラントモデルの変形を計算するプロセッサを設ける。計算された変形に基づいて、心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定するプロセッサを設ける。
【0028】
本発明の一態様によると、プログラム可能なコンピュータによって実行されたときに、コンピュータが、心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現であるインプラントモデルを取得し、心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における心臓インプラントの設置部位を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す4D患者固有解剖学的モデルを取得し、前記4D患者固有解剖学的モデルが前記複数の状態にわたって連続して変形するとき、前記設置部位に設置された前記インプラントモデルの変形を計算し、計算された変形に基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定する、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0029】
方法の観点から言及されたすべての特徴およびオプションは、システムおよびコンピュータプログラム製品にも同等に適用されることが理解されるであろう。また、上記の側面、特徴およびオプションのいずれか1つまたは複数を組み合わせられ得ることも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るシステムの概略図である。
図2】実施の形態に係る方法の概略図である。
図3】実施の形態に係る方法の概略図である。
図4】実施の形態に係る方法の概略図である。
図5】5A-5Dは、実施の形態に係るモデルの例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、インプラント装置2の繰り返し荷重による故障を患者固有に予測するための例示的なシステム1の概略図である。この例では、インプラント装置2は、ステントや置換弁などの心臓インプラントである。
【0033】
システム1は、インプラントモデル6を受信するために設けられた第1の受信ユニット4を含む。第1の受信ユニット4は、メモリ、データベース、インターネット等であるネットワーク等の第1のソース8から、インプラントモデル6を受信することができる。インプラントモデル6は、インプラント装置2の3次元の3Dメッシュベース表現を表している。システム1は、4次元の4D患者固有解剖学的モデル12を受信するために設けられた第2の受信ユニット10を含む。第2の受信ユニット10は、メモリ、データベース、インターネットなどのネットワーク、CT装置、MRI装置、超音波装置などの医療用撮像装置などの第2のソース14から、4D患者固有解剖学的モデル12を受信することができる。4D患者固有解剖学的モデルは、動作サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、インプラント装置の設置位置を含む患者固有の解剖学的領域のメッシュベース表現を表す。状態は、動作サイクルの間の連続した瞬間を表す。したがって、ここでは、4D患者固有解剖学的モデルは、複数の離散的な状態で表されている3D患者固有解剖学的モデルに、第4の次元である時間を加えたものであると考えることができる。そのため、3D患者固有解剖学的モデルは、ある状態から次の状態へと変形する。この例では、4D患者固有解剖学的モデル12は、心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表している。4D患者固有解剖学的モデル12は、少なくとも2つの状態、例えば、収縮期に関連する第1の状態と拡張期に関連する第2の状態とを含む。好ましくは、4D患者固有解剖学的モデル10は、サイクル内のより多くの状態、例えば、3、4、5、6、8、10、12、16、20、24、32、64または128の状態を含む。しかし、サイクル内の他の数の状態も可能である。
【0034】
システム1は、プロセッサ16を含む。プロセッサは、設置位置にインプラントモデル6を仮想的に設置するために設けられる。プロセッサ16は、4D患者固有解剖学的モデル12が複数の状態に連続して変形する間に、設置されたインプラントモデル6の変形を計算するために設けられる。プロセッサ16は、また、計算された変形に基づいて、インプラント装置2の繰り返し荷重による故障のリスクを判定するために設けられる。本実施例のシステム1は、報告ユニット20をさらに含む。報告ユニット20は、推定されたリスクなどの処理結果をユーザが知り得るようにするために設けられる。報告ユニット20は、例えば、モニタやプリンタなどの視覚化装置22に接続することができる。代わりに、または追加的に、報告ユニットは、インターネットなどの通信ネットワークに接続することができる。報告ユニット20は、数値レポート、および、または、画像を含むレポートを作成するために設けることができる。
【0035】
図2に示す通り、心臓インプラント2の繰り返し荷重による故障を患者固有に予測する方法において、システム1は、以下のように使用することができる。ステップ200では、インプラントモデル6が第1のソース8から取得される。ステップ202では、4D患者固有解剖学的モデル12が第2のソース14から取得される。ステップ204で、プロセッサ16は、4D患者固有解剖学的モデル12の設置位置にインプラントモデル6を仮想的に設置する。この例では、4D解剖学的モデル12が静止している間に、インプラントモデル6が4D患者固有解剖学的モデルに仮想的に設置される。あるいは、4D解剖学的モデル12が複数の段階にわたって連続して変形している間、すなわち心臓が鼓動している間に、インプラントモデル6が4D患者固有解剖学的モデル12に仮想的に設置されることも可能である。
【0036】
ステップ206において、プロセッサ16は、4D患者固有解剖学的モデル12が複数の状態にわたって連続して変形する際に、設置位置に設置されたインプラントモデル6の変形を計算する。これに加えて、プロセッサ16は、複数の状態のそれぞれについて、4D患者固有解剖学的モデル12に設置されたインプラントモデル6の、例えば、形状、および、任意で位置を計算することができる。インプラントモデル6の変形は、各状態におけるインプラントモデル6の形状に続いて起こる。
【0037】
各状態におけるインプラントモデル6の変形を判定するために、4D患者固有解剖学的モデル12の変形を出発点とすることができる。ある状態から次の状態に変化すると、4D患者固有解剖学的モデル12は、4D患者固有解剖学的モデル12の各ノードの変位を表す情報を含む。4D患者固有解剖学的モデル12の各ノードの変位は、インプラントモデル6の各ノードの変位を判定するために使用される。これは、各状態に対して行うことができる。
【0038】
第1の例では、4D患者固有解剖学的モデル12は、インプラント装置の設置前の心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における患者固有心臓領域のメッシュベース表現を表している。したがって、4D解剖学的モデル12のノードは、インプラント装置がない状態での患者固有の心臓領域の変位に続いて、複数の状態に変形する。ここで、患者固有の心臓領域を表す患者固有解剖学的モデル12の変形が、解剖学的モデル12とインプラントモデル6との間の接触により、インプラントモデル6に与えられる。4D患者固有解剖学的モデル12の各ノードの変位は、2つのモデル6、12の間の機械的な接触に応じて、インプラントモデ6のノードの全てまたは一部に適用される。このようにして、インプラントモデル6の変形は、ここでは複数の状態のそれぞれについて、この例では有限要素解析(FEA)を用いて判定される。したがって、インプラント装置の存在の結果としての患者固有の心臓領域の変形は考慮されない。これにより、比較的柔軟なインプラント装置の場合には、良好な近似が得られることが分かっている。
【0039】
第2の例では、4D患者固有解剖学的モデルのノードに関連付けられた関連ノードを有する4D中間患者固有解剖学的モデルが提供される。4D中間患者固有解剖学的モデルは、設置前の心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態の患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す。したがって、4D中間患者固有解剖学的モデル12の関連ノードは、インプラント装置がない状態での患者固有の心臓領域の変位に続いて、複数の状態に変形する。4D患者固有解剖学的モデル12は、4D患者固有解剖学的モデル12のメッシュのノードの一部または全部に付属された剛性要素(例えば、バネ-ダッシュポットシステム)によって、4D中間モデルの関連ノードの変位を患者固有解剖学的モデル12のノードに移すことによって、複数の状態に変形する。したがって、4D患者固有解剖学的モデルは、4D中間患者固有解剖学的モデルの関連ノードに対して(弾力的に)移動することができる。インプラントモデル6の変形は、4D患者固有解剖学的モデル12とインプラントモデル6の間の接触によって達成される。したがって、インプラントモデル6の変形は、ここでは、複数の状態のそれぞれについて、この例では、有限要素解析(FEA)を用いて判定される。したがって、インプラント装置の存在の結果としての患者固有の心臓領域の変形が考慮される。これにより、比較的剛性の高いインプラント装置に対して良好な近似性が得られることがわかっている。
【0040】
ステップ208において、プロセッサ16は、インプラントモデル6の計算された変位(変形および/または動き)に基づいて、心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定する。
【0041】
一例では、プロセッサ16は、インプラントモデル6の各メッシュ要素内の機械的応力および/または歪みを判定する。プロセッサ16は、例えば、心臓サイクルの過程における複数の状態それぞれについて、インプラントモデル6の各メッシュ要素内の機械的応力および/または歪みを判定することができる。インプラントモデル6のメッシュ要素内の機械的応力および/または歪みは、繰り返し荷重疲労を表すものである。インプラントモデルのメッシュ要素内の機械的応力および/または歪み、ならびに全サイクル中のその変動は、繰り返し荷重疲労を表すものである。繰り返し荷重による故障のリスクは、例えば、当技術分野で知られているように、レインフローカウンティングアルゴリズムを用いて判定することができる。
【0042】
一例では、プロセッサ16は、インプラントモデル6の各メッシュ要素について、心臓サイクルの過程で発生する機械的応力および/または歪みの振幅を判定する。各メッシュ要素について、複数の状態の間の応力および/または歪みの最大値を判定することができる。各メッシュ要素について、複数の状態の間の応力および/または歪みの最小値を判定することができる。各メッシュ要素の振幅は、それぞれの最大値と最小値との差として判定することができる。判定された振幅は、繰り返し荷重による故障のリスクを表すものである。繰り返し荷重による故障のリスクは、例えば、当技術分野で知られているように、S-N曲線によって判定することができる。
【0043】
ステップ202では、第2のソース14から4D患者固有解剖学的モデル12が取得される。4D患者固有解剖学的モデルは、例えば、以下のように構築することができる。4D患者固有解剖学的モデルの構築は、図3または図4に示すような方法を用いて構築ユニット18によって行うことができる。構築ユニット18は、プロセッサ16に統合することができ、システム1の専用ユニットとすることができ、あるいは、システム1から独立したシステムとすることができる。ステップ300、400において、構築ユニット18は、複数の、少なくとも擬似的な、3D医療用画像を受信する。各3D医療用画像は、心臓サイクルの複数の瞬間に対応する連続した状態の1つにおける患者固有の心臓領域を表す。また、複数の3D医療用画像は、複数の状態の全てにおける患者固有の心臓領域を表す。構築ユニットは、複数の3D医療用画像に基づいて、4D患者固有解剖学的モデルを構築する。
【0044】
第1の例では、構築ユニット18は、ステップ302において、3D医療用画像のうちの第1の画像を取り込み、その医療用画像に基づいて、患者固有の心臓領域の第1の3Dメッシュベース表現を構築する。さらに、ステップ304において、構築ユニットは、医療用画像のそれぞれについて、Bスプライン変換などの、ある医療用画像から次の医療用画像への変化を判定する。したがって、複数の変化が得られ、それぞれが、医療用画像の1つを次の医療用画像に変化するのに適している(第1の医療用画像を第2の医療用画像に変化するための第1の変化、第2の医療用画像を第3の医療用画像に変化するための第2の変化、など)。ステップ306では、第1の変化が第1の3Dメッシュベース表現に適用されて、第2の3Dメッシュベース表現が得られ、第2の変化が第2の3Dメッシュベース表現に適用されて、第3の3Dメッシュベース表現が得られる。したがって、複数の3Dメッシュベース表現が得られ、1つの表現は心臓サイクルの各状態に関連付けられている。ステップ308では、複数の3Dメッシュベース表現を合わせて4D患者固有解剖学的モデルを形成する。
【0045】
第2の例では、ステップ402において、構築ユニット18は、各3D医療用画像を取り込んで、各3D医療用画像の3Dメッシュベース表現を構築する。さらに、ステップ404において、構築ユニット18は、各3Dメッシュベース表現について、ある表現から次の表現への変化を判定する。それゆえ、複数の変化が得られ、それぞれが3Dメッシュベース表現の1つを次の3Dメッシュベース表現に変化するのに適している(第1の3Dメッシュベース表現を第2の3Dメッシュベース表現に変化するための第1の変化、第2の3Dメッシュベース表現を第3の3Dメッシュベース表現に変化するための第2の変化、など)。したがって、複数の3Dメッシュベース表現が得られ、1つの表現は心臓サイクルの各状態に関連付けられている。ステップ408では、複数の3Dメッシュベース表現とそれらの変化とを合わせて、4D患者固有解剖学的モデルを形成する。
【0046】
図5A-5Dは、ここでは交換用心臓弁を表すインプラントモデル6を、心臓サイクルの間の4つの連続した状態で4D患者固有解剖学的モデル12に設置した典型的な例を示す。インプラントモデル6の変形は容易に観察することができる。インプラント装置6の歪みは、図5A-5Dに擬似色で示されている(グレースケールは、インプラントモデル6の最大主対数歪み(MPLE)を表し、白はMPLE≦0.01%、黒はMPLE≧0.1%を示す)。
【0047】
また、複数の異なるインプラントモデル6が提供されることも可能であることが理解されるであろう。各インプラントモデル6は、対応する実際のインプラントの幾何学的および/または材料の特性を表すことができる。インプラントモデル6は、例えば、サイズ、ブランド、構造、材料などが異なっていてもよい。そして、各インプラントモデルを、患者固有解剖学的モデル12に配置することができる。そして、各インプラントモデル6について、繰り返し荷重による故障のリスクが判定される。この分析から、複数のインプラントモデルのうち、どのインプラントモデルが繰り返し荷重による故障のリスクが最も低いかを判定することができる。そして、繰り返し荷重による故障のリスクが最も低いインプラントモデル6に対応する心臓弁インプラントを、実際の経皮移植手術に選択することができる。また、各インプラントモデル6が、複数の異なる位置で患者固有解剖学的モデル12に配置されることも可能であることが理解されよう。したがって、各インプラントモデルについて、繰り返し荷重による故障のリスクがある位置を判定することができる。そして、インプラントモデル6ごとの繰り返し荷重による故障のリスクが最も低いものを比較して、実際の経皮移植用の心臓弁インプラントを選択することができる。
【0048】
また、各インプラントモデル6が、患者固有解剖学的モデル12の複数の異なる位置に配置され、それぞれの画像について分析されることも可能であることが理解されよう。このようにして、各インプラントモデルについて、異なる位置の中で繰り返し荷重による故障のリスクが最も低いものを判定することができる。また、各インプラントモデルについて、異なる位置の中で繰り返し荷重による故障のリスクが最も高いものを判定することができる。そして、各インプラントモデル6の繰り返し荷重による故障のリスクの最高最低を比較して、実際の経皮移植用の心臓弁インプラントを選択することができる。あるいは、繰返し荷重破壊のリスクが最も高いものを用いて、ベンチマークを設計し、実験的疲労試験(疲労試験機の加速摩耗試験(AWT))のための基準荷重条件を調整することができる。患者固有の装置の変形または応力または歪みから、繰り返し荷重による故障のリスクが最も高い条件を、加速サイクルを実行する簡略化されたベンチマークで再現することができ、より高い頻度でサイクルを実行することにより、生体内の期間よりも短い期間で装置の疲労安全性をテストすることができる。
【0049】
ここで、本発明は、本発明の実施形態の具体例への言及を用いて記述される。しかしながら、本発明の本質的要素から離れることなく、それに関する様々な修正や変化がなされてもよいことは明らかであろう。明快さと簡潔な記述のために、特徴は、ここで同一又は独立した実施形態の一部として記述されているが、これらの独立した実施形態において記述された特徴の全て又は一部を組み合わせた代替的な実施形態も想定される。
【0050】
一般に、インプラント装置の繰り返し荷重による故障を患者固有に予測する方法が提供される。この方法は、インプラント装置の3次元メッシュベース表現を表すインプラントモデルを提供することを含む。また、本方法は、心臓サイクルなどの動作周期の複数の瞬間に対応する複数の状態におけるインプラント装置の設置位置を含む患者固有の解剖学的領域のメッシュベース表現を表す4次元の4D患者固有の解剖学的モデルを提供することを含む。この方法によれば、コンピュータが、4D患者固有解剖学的モデルが複数の状態にわたって連続して変形する際に、設置位置に設置されたインプラントモデルの変形を計算し、計算された変形に基づいて、インプラント装置の繰り返し荷重による故障のリスクを判定することができる。これにより、患者固有の解剖学的構造に基づいて、インプラント装置を設置する前に、インプラント装置の繰り返し荷重による故障を予測することができるという利点がある。動作が厳密に周期的でない場合でも、代表的な動作のサイクルを定義できることが理解されるであろう。
【0051】
この方法は、例えば、術前の医療用画像から始めて、埋め込み後に行われた測定を導入することにより、装置の埋め込み後にも使用できることが理解されるであろう。
【0052】
プロセッサ、第1の受信ユニット、第2の受信ユニット、構築ユニット、および/または報告ユニットは、場合によってはソフトウェアコード部分を含む専用の電子回路として具現化され得る。また、プロセッサ、第1の受信ユニット、第2の受信ユニット、構築ユニット、および/または報告ユニットは、コンピュータ、タブレット、またはスマートフォンなどのプログラム可能な機器のメモリ上で実行され、そこに記憶されるソフトウェアコード部分として具現化され得る。
【0053】
図面への参照と共に記述された本発明の実施形態は、コンピュータ機器とコンピュータ機器において実行される工程とを備えるが、本発明は、本発明を実行に移すように用意されたコンピュータプログラム、特に、キャリア上又は内にあるコンピュータプログラムに拡張される。プログラムは、本発明に従った工程の実行において用いるのに適したソース、オブジェクトコード又は他のいかなる形式であってもよい。キャリアは、プログラムを運ぶことができるエンティティ又はデバイスであってもよい。
【0054】
例えば、キャリアは、例えばCD-ROM、半導体ROMのようなROMや、例えば、フロッピーディスク、ハードディスクなど磁気読み取り媒体のような記憶媒体を含んでもよい。さらに、キャリアは、電気的又は光学的信号のような送信可能なキャリアであってもよく、電気的若しくは光学的ケーブルを経由して、又は、無線若しくは他の手段によって、例えば、インターネット又はクラウドを経由して、伝達されてもよい。
【0055】
プログラムが、ケーブルやその他のデバイス・手段によって直接伝達される信号に具現化されている場合、キャリアは、ケーブルやその他のデバイス・手段で構成されてもよい。代わりに、キャリアは、プログラムが埋め込まれた集積回路であって、関連がある工程を実行すること、又はその実行における使用のために用意された集積回路であってもよい。
【0056】
しかし、他の修正、変形、代案も可能である。したがって、本明細書、図面、および実施例は、制限的な意味ではなく、例示的な意味で捉えられるべきである。
【0057】
本明細書では、明確かつ簡潔な記述のために、特徴を同一または独立した実施形態の一部として記述しているが、本発明の範囲には、記述された特徴の全てまたは一部の組み合わせを有する実施形態を含んでもよいことが理解されるであろう。
【0058】
請求項において丸かっこの間に配置されたいかなる参照符号も請求項を限定するように解釈されるべきでない。「備える」との語句は、請求項に載せられたもの以外の他の特徴又はステップの存在を除外しない。その上、「a」又は「an」との語句は、「ただ一つ」に限定されて解釈されるべきでなく、代わりに「少なくとも一つ」を意味するように用いられ、多数のものを除外しない。ある手段が相互に異なった請求項に記載されているという事実だけで、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0059】
(付記)
(付記1)
心臓インプラントの繰り返し荷重による故障を患者固有に予測する方法であって、
心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現を表すインプラントモデルを提供することと、
前記心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、前記心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す4次元の4D患者固有解剖学的モデルを提供することと、
コンピュータに、前記4D患者固有解剖学的モデルが前記複数の状態にわたって連続して変形する間に、前記設置位置に設置された前記インプラントモデルの変形を計算させることと、
前記コンピュータに、前記計算されたインプラントの変形に基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定させることと、
を含む方法。
【0060】
(付記2)
前記コンピュータに、前記計算されたインプラントの変形および変形履歴を表すデータに基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定させること、
を含む付記1に記載の方法。
【0061】
(付記3)
前記4D患者固有解剖学的モデルは、設置前の前記心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す、
付記1に記載の方法。
【0062】
(付記4)
前記4D患者固有解剖学的モデルのノードに関連付けられた関連ノードを有する4D患者固有中間モデルを提供することを含み、前記4D患者固有中間モデルは、設置前の前記心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表し、前記患者固有解剖学的モデルは、前記4D中間モデルの関連ノードの変位を、剛性および/またはダッシュポット要素を介して、前記4D患者固有解剖学的モデルの前記ノードに伝達することにより前記複数の状態に変形する、
付記1または2に記載の方法。
【0063】
(付記5)
前記4D患者固有解剖学的モデルは、剛性および/または粘性を含む機械的特性を有し、前記4D患者固有解剖学的モデルの全体的な機械的挙動は、前記4D解剖学的モデルの機械的特性と、関連するノードを前記4D解剖学的モデルのノードに接続する剛性および/またはダッシュポット要素の機械的特性との組み合わせに依存する、
付記4に記載の方法。
【0064】
(付記6)
前記インプラントモデルの各メッシュ要素内の機械的応力および/または歪みを判定すること、
を含む付記1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
(付記7)
前記心臓サイクルの過程における前記複数の状態のそれぞれについて、前記インプラントモデルの各メッシュ要素内の機械的応力および/または歪みを判定すること、
を含む付記6に記載の方法。
【0066】
(付記8)
前記インプラントモデルの各メッシュ要素について、前記心臓サイクルの過程において発生する機械的応力および/または歪みの大きさを判定し、判定した振幅に基づいて繰り返し荷重による故障のリスクを判定すること、
を含む付記7に記載の方法。
【0067】
(付記9)
前記心臓インプラントが、弁インプラント、ステントなどである、
付記1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
(付記10)
前記繰り返し荷重による故障が、高サイクル疲労破壊、インプラントの移動、弁の故障のうちの1つ以上を含む、
付記1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
(付記11)
1つの4D術前画像のセグメンテーションと、
複数の4D術前画像内の複数の目印と、
前記インプラントの設置前および/または設置後に行われた患者固有の血液量・血流・血圧の測定値と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像と、
予想される動きなどの心臓の病態生理に関する患者非固有の知見と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像と、
慢性期の心臓リモデリングに関する患者非固有の知見と組み合わせた1つの3Dまたは1つの4Dの術前画像と、
の内の1以上に基づいて、前記4D患者固有解剖学的モデルまたはその関連ノードを提供すること、
を含む付記1から10のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
(付記12)
前記心臓サイクルの前記複数の瞬間に対応する前記複数の状態における患者固有の心臓領域を表す、複数の、少なくとも擬似的な3D医療用画像を受信し、それらに基づいて前記4D患者固有解剖学的モデルを構築すること、
を含む付記1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
(付記13)
前記医療用画像の1つに基づいて、前記患者固有の心臓領域の3Dメッシュベース表現を構築することと、
ある医療用画像から次の医療用画像への変化を判定することと、
前記変化を前記構築された3Dメッシュベース表現に適用して、前記4D患者固有解剖学的モデルを提供することと、
を含む付記12に記載の方法。
【0072】
(付記14)
前記患者固有の心臓領域の3Dメッシュベース表現を構築する前記医療用画像のそれぞれについて、
ある3Dメッシュベース表現から次の3Dメッシュベース表現への変化を判定することと、
前記複数の3Dメッシュベース表現に基づいて、前記4D患者固有解剖学的モデルを判定することと、
を含む付記9に記載の方法。
【0073】
(付記15)
前記4D患者固有解剖学的モデル内の複数の異なる位置にインプラントモデルを設置し、前記位置のそれぞれについて繰り返し荷重による故障のリスクを判定し、実際の埋め込みのために最もリスクが低いと関連付けられた位置を選択すること、
を含む付記1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
(付記16)
複数の異なるインプラントモデルを提供し、各インプラントモデルは、対応する実際のインプラント装置の幾何学的および/または材料の特性を表し、インプラントモデルのそれぞれについて前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定し、実際の埋め込みのために、最もリスクが低いと計算されたインプラントモデルに関連するインプラント装置を選択すること、
を含む、付記1から15のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
(付記17)
繰り返し荷重による故障のリスクが最も高いものを使用して、ベンチマークを設計し、実験的疲労試験の基準荷重条件を調整すること、
を含む付記1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
(付記18)
心臓インプラントの繰り返し荷重による故障を患者固有に予測するシステムであって、
心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現を表すインプラントモデルを受信し、
前記心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、前記心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す4次元の4D患者固有解剖学的モデルを受信し、
前記4D患者固有解剖学的モデルが前記複数の状態にわたって連続して変形するときに、またはその前に、前記設置位置に設置された前記インプラントモデルの変形を計算し、
前記計算されたインプラントの変形に基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定する、
ように設けられたプロセッサを含むシステム。
【0077】
(付記19)
コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記命令がプログラム可能なコンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、
心臓インプラントの3次元のメッシュベース表現を表すインプラントモデルを取得させ、
前記心臓サイクルの複数の瞬間に対応する複数の状態における、前記心臓インプラントの設置位置を含む患者固有の心臓領域のメッシュベース表現を表す4次元の4D患者固有解剖学的モデルを取得させ、
前記4D患者固有解剖学的モデルが前記複数の状態にわたって連続して変形するときに、前記設置位置に設置された前記インプラントモデルの変形を計算させ、
前記計算されたインプラントの変形に基づいて、前記心臓インプラントの繰り返し荷重による故障のリスクを判定させる、
コンピュータプログラム製品。
図1
図2
図3
図4
図5