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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】安全クラスプおよび衣類クリップ
(51)【国際特許分類】
   A47G 29/00 20060101AFI20241112BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A47G29/00 A
A61M25/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021560546
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 GB2020050934
(87)【国際公開番号】W WO2020208366
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】1905156.4
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521442648
【氏名又は名称】ファジェネシス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Phagenesis Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ムルルーニー,コナー
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】スマート,ニコラス ジョン
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-220888(JP,A)
【文献】国際公開第2017/021727(WO,A1)
【文献】米国特許第03179995(US,A)
【文献】特開2011-001111(JP,A)
【文献】特開2007-167090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 29/00
A61M 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全クラスプであって、
クラスプ基部と、
鋭利端部、穿刺部および支持部を有する固定要素と、
第1および第2の本体部分とそれらの間に規定された凹部とを有するクラスプ本体とを具え、この本体は、開いた構成では前記凹部が空であり前記第1の本体部分のみが前記鋭利端部を収容し、閉じた構成では前記穿刺部が前記凹部を架橋して第2の部分のみが前記鋭利端部を収容するように、前記クラスプ基部および前記固定要素に対してアジャスタブルであり、
前記クラスプ基部は、前記クラスプ本体が開位置と閉位置の間で自由に往復運動するのを止めるように、前記クラスプ本体を一時的または可逆的に保持するように構成された摩擦機構を具えることを特徴とする安全クラスプ。
【請求項2】
前記クラスプ基部は、レール、好ましくはモノレールの形態であり、その上にクラスプ本体が取り付けられ、開位置と閉位置との間でスライド可能にアジャスタブルである、請求項1に記載の安全クラスプ。
【請求項3】
前記クラスプ基部は、前記本体の往復運動を開位置と閉位置との間で制御するように構成されたラチェットを具える、請求項1または2に記載の安全クラスプ。
【請求項4】
前記クラスプ基部は、前記本体を開位置または閉位置に解放可能に保持するように構成されたバネ板を具える、請求項1または2に記載の安全クラスプ。
【請求項5】
前記固定要素がフック付きピンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の安全クラスプ。
【請求項6】
前記第1および第2の本体部分が、内側にテーパーした凹部を規定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の安全クラスプ。
【請求項7】
前記第1および第2の本体部分の一方または両方がさらに、前記固定要素の穿刺部分および/または尖った端部を取り囲むように配置された内部チャネルを具える、請求項1から6のいずれか一項に記載の安全クラスプ。
【請求項8】
前記クラスプ本体の外面に1つまたは複数の把持構造を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の安全クラスプ。
【請求項9】
衣服に面しない側と、反対側の衣服に面する側とを有する衣服クリップであって、前記衣服に面する側が、請求項1から8のいずれか一項に記載の安全クラスプを具えることを特徴とする衣服クリップ。
【請求項10】
前記クラスプ基部が、前記衣服クリップの衣服に面する側に可逆的に取り付けられているか、前記衣服クリップの衣服に面する側に成型されているか、または接着されている、請求項9に記載の衣服クリップ。
【請求項11】
前記固定要素の支持部が、前記クラスプ基部によって前記衣服クリップの衣服に面する側に固定されている、請求項9または10に記載の衣服クリップ。
【請求項12】
前記衣服クリップが柔軟なケーブルまたはチューブを取り付けるためのものであり、前記本体の衣服に面しない側がその中に少なくとも1つの受容形成体を含み、当該受容形成体は柔軟なケーブルまたはチューブを受容するための弾性変形可能なチャネルを具える、請求項9から11のいずれか一項に記載の衣服クリップ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの受容形成体が2本の平行な縦方向チャネルを有する、請求項12に記載の衣服クリップ。
【請求項14】
前記2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれに隣接してそれぞれタブが配置され、前記それぞれのタブが、2つの平行な寸法のうちのそれぞれの1つの構成を変更するために弾性的に操作可能であり、前記第2の構成にあるとき縦方向チャネルは、第1とは異なる第2の寸法を有し、この第2の構成では、柔軟なチューブまたはケーブルが前記縦方向チャネルに入ることが可能であり、第1の構成では、前記柔軟なチューブまたはケーブルは、前記縦方向チャネル内で横方向に拘束される、請求項13に記載の衣服クリップ。
【請求項15】
前記2本の平行な縦方向チャネルのうちの少なくとも1つが高摩擦面を有し、それによって前記柔軟なケーブルまたはチューブの長手方向の動きが抑制される、請求項14に記載の衣服クリップ。
【請求項16】
前記衣服クリップの本体が高硬度の熱可塑性エラストマーから形成され、好ましくはライナーが低硬度の熱可塑性エラストマーから形成される、請求項9から15のいずれか一項に記載の衣服クリップ。
【請求項17】
前記柔軟なケーブルまたはチューブがカテーテルおよび/または栄養チューブである、請求項9から16のいずれか一項に記載の、衣類に柔軟なケーブルまたはチューブを取り付けるための衣服クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安全クラスプに関し、さらに当該クラスプを具える衣服または衣類用の改良されたクリップに関する。本発明は、限定しないが、特に、カテーテルや栄養チューブなどの医療機器に衣類または衣服を固定するためのそのクラスプを具える衣服クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの病状や治療では、病院であろうと自宅であろうと、患者は長期間にわたって医療機器を装着する必要がある。例えば、一般的に病気や回復中の患者は、身体をサポートするために栄養チューブやカテーテルを必要とする。患者が動くと、カテーテルや他の装置は、患者の体外に位置する装置部分の重量のために、体内に入る点に不快感を生じることがある。
【0003】
特に、カテーテルは、ほとんどの場合にカテーテルと連携して物質を送達し、物質を回収し、エネルギーを供給し、または情報を記録する他の関連医療機器に接続されている。このような機器は通常、経口、経鼻、経皮、または尿道を介して患者の体内に挿入される。カテーテルの末端が関連する医療機器から切り離されている場合など、カテーテルの末端が何らかの方法で拘束されていない場合、カテーテルが患者と接触する点における不快感が増大する。
【0004】
さらに、カテーテルは、患者に装着されたままで医療機器から切り離されることがよくある。患者に装着されたままの長いカテーテルは、何らかの方法で拘束されない場合、つまずいたり引っ掛かったりする危険性がある。カテーテルの末端は、露出したままにして非滅菌面と接触した場合に感染源となり、カテーテルからの液体の漏出を引き起こす可能性がある。例えば、男性患者の尿道に挿入されたカテーテルには大量の尿が含まれる可能性があり、カテーテルが床に向かって傾けられた場合に流れ出てしまう。
【0005】
緩くて柔軟なワイヤ、チューブ、またはケーブルを人体に固定するのが難しいという問題は、医療分野に限ったことではない。例えば、従来のイヤホンやヘッドホンが用いられるパーソナルメディアプレーヤーは、ケーブルでメディアプレーヤーに接続されている。このケーブルは、典型的に、人の胸のあたりで2つに分かれている。メディアプレーヤーは、人の腰の近くに配置されたり、人の腕に取り付けられたりする。メディアプレーヤーと人の耳の間のケーブルの長さによって、イヤホンまたはヘッドホンが人の耳から下方に遠ざけられる傾向がある。これは、特に人が活動しているとき、例えばランニングしているときに、イヤホンが人の耳から頻繁に落ちて煩わしい場合がある。
【0006】
柔軟なケーブルまたはチューブを受け入れ(したがって、その例ではカテーテルなどの医療機器を可逆的に保持することができる)、それを人または患者の衣服にしっかりと取り付けるのに適したクリップが、EP3331597に記載されている。しかしながら、このクリップや他の同様のアタッチメントの文献では、衣服に糸を通したり、衣服を固定するためにピンベースのアタッチメントが必要である。安全ピン構造であっても、鋭利なピンを使用すると、ユーザや患者に針刺し事故が生じる潜在リスクが高まり、これは医療環境では特に望ましくない。
【0007】
本発明は、衣服、衣料品、または布地への固定的に取り付ける際のこの問題および鋭利物のリスクの一般的な問題に対処しようとするものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、クラスプ基部と、鋭利端部、穿刺部および支持部を有する固定要素と、第1および第2の本体部分とそれらの間に規定された凹部を有するクラスプ本体と、を含む安全クラスプに関し、前記本体は、開いた構成では凹部が空(clear)であり、第1の本体部分のみが鋭利端部を収容し、閉じた構成では穿刺部が凹部をブリッジし、第2の本体部のみが鋭利端部を収容するように、クラスプ基部および固定要素に対してアジャスタブルである。
【0009】
便利なことに、クラスプ本体が開いた構成にあるとき、衣服や布片をクラスプに入れたり、クラスプからそれを出すことができる。これは、2つの部分からなる本体が、衣服や布を挿入または押し込んで固定できるようにするための隙間または開口部である凹部を規定するからである。ただし、クラスプが開いた状態であっても、本体の第1の部分が鋭利端部を覆ったままとなり、固定要素の鋭利端部はユーザへと露出することはなく、針刺し事故のリスクがない。さらに、衣服を凹部に入れて固定する準備ができたら、クラスプ本体をユーザがアジャストさせて、クラスプ基部に沿って閉じた位置または構成にスライド可能に移動することができる。動かされると、本体は衣服の生地または布を穿刺部分の鋭利端部に押し付け、固定要素の穿刺部分に突き刺す。完全に閉じた構成になると、クラスプ本体の第2の部分が鋭利端部を覆うか保護する。
【0010】
このように、本発明の重要な利点は、その構成および動作が、開いた構成と閉じた構成のいずれにおいても、固定要素の鋭利端部がユーザへと露出しないことである。
【0011】
さらに、固定要素が衣服の布地を貫通するため、クラスプは十分な負荷をかけることができ、使用において実用的に頑丈にすることができる。標準的な衣服固定方法と比較して、クラスプが変形したり、開いたり壊れたりすることなく、比較的高い負荷をかけることができる。通す素材がかなり丈夫であれば、クラスプが外れることはない(素材が破れない限り)。
【0012】
有利なことに、本発明のクラスプは、ユーザの指が鋭利端部にアクセスすることを許さない。実施形態では、凹部の幅は3~4mmであり、人が誤ってギャップ内に指を挟むことはなく、いかなるときもピンの尖った端部との接触を防ぐことができる。したがって、安全クラスプは基本的に鋭利端部またはピン構造を使用するものの、従来の安全ピンのように指で先の尖ったまたは鋭利な端部にアクセスできないため、怪我のリスクが大幅に低下する。
【0013】
さらに、本発明の安全クラスプの構成は、衣類または衣服を医療機器に十分に固定するために、使用時に他の「グリップ」タイプの固定具が直面するであろう材料の表面特性のばらつきを克服する。
【0014】
さらに、いくつかの実施形態では、第1および第2の本体部分は内側にテーパした凹部を規定し、これが湾曲しており、これが第1および第2の本体部分の間に内側に位置する頂点に向かって布を案内し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、クラスプ基部はレール、好ましくはモノレールの形態であり、その上にクラスプ本体が取り付けられ、開位置と閉位置の間でスライド可能にアジャスタブルである。これにより、基部と本体が相対的に動作する便利で自然なスライドメカニズムが提供される。
【0016】
いくつかの実施形態では、クラスプの偶発的な開閉を防ぐために、開いた構成と閉じた構成との間の動きが制限または制御されることが望ましい。これは、摩擦運動や、クラスプを開いた構成と閉じた構成で一時的または可逆的に保持する機構によって実現することができる。そのような構成により、クラスプはより安全となる。例えば、クラスプ基部は、クラスプ本体が開位置と閉位置の間で自由に往復運動するのを止めるように、摩擦を生じさせて制御するように構成された機構を含み得る。特に、クラスプ基部と本体は、動きが適切に制御されるように、ラチェットシステムのように配置されて一緒にスライド可能に動作してもよい。ある程度の制御や摩擦を導入するように設計された他のシステムも同様に利用できる。
【0017】
あるいは、クラスプ基部は、一時的な戻り止め機構を含んでもよい。例えば、基部は、開位置および/または閉位置のクラスプ本体に上向きに付勢するバネ板を有し、これにより、バネの付勢を克服する最小のオーバーライド力がユーザによって提供されるまで、本体をその位置に解放可能に保持するように構成される。
【0018】
好ましい実施形態では、固定要素はフック付きピンの形態をとり、クラスプ基部と、基部自体が取り付けられている衣服クリップとの間に固定することができる。
【0019】
いくつかの例では、クラスプ本体の第1および第2の本体部分の一方または両方は、上部内側の天井面から内側に突出するチャネルをさらに含み得る。少なくとも1つの部分のチャネルは、開いた構成と閉じた構成との間の往復運動中に、本体の中心の穿刺部分および/または鋭利端部と整列する。第1および第2の本体部分はまた、1つまたは複数の把持構造を有してもよく、これは、ユーザがクラスプ本体の開いた構成と閉じた構成との間でスライドを容易にするための開口部の形態であり得る。
【0020】
さらなる実施形態では、本発明は衣服クリップに適用され、このクリップは、衣服に面しない側および反対側の衣服に面する側とを有し、衣服に面する側に本書に開示される安全クラスプを具える。
【0021】
いくつかの例では、クラスプ基部は、クリップの衣服に面する側に可逆的に取り付けられてもよいし、他の実施形態では、基部は、クリップの衣服に面する側に成型または接着されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、固定要素の支持長さは、固定要素が所定の位置にしっかりと保持されるように、クリップの衣服に面する側とクラスプ基部との間に構成される。この固定要素の支持長さは、基部の下、またはレール自体がクリップの衣服に面する側に結合される場所との間に規定された空間に配置することができる。
【0023】
本発明の衣服クリップは、柔軟なケーブルやチューブを衣服に取り付けるのに特に適している。便利なことに、柔軟なケーブルまたはチューブは医療機器に接続されてもよいし、カテーテルおよび/または栄養チューブの一部であってもよい。
【0024】
衣服クリップの衣服に面しない側に関して、クリップは、その中に少なくとも1つの受容形成体(receiving formation)を含むことができ、その形成体は、柔軟なケーブルまたはチューブを受容するための弾性変形可能なチャネルを含む。いくつかの例では、2本の平行な縦方向チャネルが設けられる。
【0025】
実施例では、クリップはさらに、2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれに隣接配置された可撓性タブを具え、それぞれのタブは、2つの平行な寸法のそれぞれの1つの構成を変更するために弾性的に操作可能であり、縦方向チャネルは第2の構成において第1の構成とは異なる第2の寸法を有し、この第2の構成において柔軟なチューブまたはケーブルが縦方向チャネルに入ることが可能であり、第1の構成において柔軟なチューブまたはケーブルが縦方向チャネル内で横方向に拘束される。縦方向チャネルは、高摩擦面を有してもよく、それによって柔軟なケーブルまたはチューブの縦方向の動きが抑制される。
【0026】
いくつかの例では、衣服クリップの本体は、高硬度の熱可塑性エラストマーから形成され、好ましくは、ライナーは低硬度の熱可塑性エラストマーから形成される。
【0027】
ユーザの操作性を改善するために、クリップは、クラスプ本体の開位置と閉位置との間の調整を操作するように構成されたスイッチをさらに含んでもよい。このスイッチは、ユーザがクリップの裏側/衣服に面する側を操作することなく、より簡単に操作して開位置と閉位置の間で作動させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、スイッチは、クリップの縁まで延びるクラスプ本体の延長部に事前形成され、これによりクリップの表側または衣服に面しない側から調整できるように配置され得る。スイッチは、使用を容易にするために、セレーションや粗面などのグリップ機能を備えてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、身体の衣服に面しない側は、中に少なくとも1つの受容形成体を含み、この形成体は、柔軟なケーブルまたはチューブを受容するための弾性変形可能なチャネルを含む。2本の平行な縦方向チャネルのうちの少なくとも一方が高摩擦面を有し、それによって柔軟なケーブルまたはチューブの長手方向の動きが抑制される。
【0029】
衣服クリップの本体は、Santoprene(商標名)などの高硬度の熱可塑性エラストマーで形成されていてもよい。これは、本発明に有利ないくつかの材料特性を提供する。そのような材料は本質的に柔軟性があり、したがって、材料の柔軟な性質のために衣服クリップの装着時の患者への鈍的または持続的な外傷リスクを低減し、また高い摩擦係数を有する。柔軟性は、チャネルの変形を可能にし、ケーブルまたはチューブがチャネルに出入りできるようにするのに重要である。摩擦は、衣服クリップに対するケーブルまたはチューブの縦方向の動きに抵抗するために重要である。
【0030】
代替的に、衣服クリップの本体は、ポリプロピレンなどの柔軟な熱可塑性プラスチックから形成されてもよい。この場合の高摩擦面は、2本の平行な縦方向チャネルのうちの少なくとも一方に挿入されたライナーによって提供され、このライナーは本体の材料とは異なる摩擦係数を有してもよい。ライナーの厚さは、0.5~2mmの範囲であり得る。ライナーの材料は、例えば、Santoprene(商標名)などの熱可塑性エラストマーであり得る。この材料の低硬度グレードの特に望ましい特性は、他の材料と密着させたときに、かかる圧縮力が小さくても、動きに対してかなりの抵抗力があることである。高硬度の本体と低硬度のライナーの組み合わせにより、各特性が個別の材料によって提供され、圧縮力と表面摩擦効果の両方を個別に最適化できるという利点がある。
【0031】
一部の適用例では、2本のケーブルまたはチューブを縦方向に拘束する必要があるが、他の適用例では、縦方向に拘束するケーブルまたはチューブは1本でもゼロ本でもよい。衣服クリップの異なる実施形態は、高摩擦面および/または低摩擦面を有する縦方向チャネルの異なる構成を有することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれは、他方に対して異なる寸法を有し得る。他の実施形態では、2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれは、実質的に同じ寸法を有し得る。2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれの幅は、2~4mmの範囲であり得る。2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれの長さは、5~30mmの範囲であり得る。2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれの深さは、3~5mmの範囲であり得る。
【0033】
衣服クリップは、2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれに隣接配置されたそれぞれのタブをさらに具え、それぞれのタブは、2本の平行な縦方向チャネルのそれぞれの構成を変更するために弾性操作可能であり、第1の構成において縦方向チャネルは第1の寸法を有し、第2の構成において縦方向チャネルは第1の寸法とは異なる第2の寸法を有し、この第2の構成では柔軟なチューブまたはケーブルが縦方向チャネルに入ることができ、第1の構成では柔軟なチューブまたはケーブルが縦方向チャネル内で横方向に拘束される。
【0034】
可撓性タブを設けることにより、衣服クリップの本体を操作して、縦方向チャネルの寸法を変えることができる。弛緩状態にあるとき、縦方向チャネル内に保持されたケーブルまたはチューブは、縦方向チャネルから横方向に取り外されることが防止される。タブを曲げると、縦方向チャネルの寸法が大きくなり、柔軟なケーブルまたはチューブが縦方向チャネルに横方向に出入りできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
次に、本発明の実施形態を、以下の図面を参照して説明する。
図1図1は、衣服クリップおよび安全クラスプを含む本発明の実施形態を示す分解図である。
図2図2は、開いた構成の安全クラスプを有する組み立てられた衣服クリップを含む本発明の実施形態を示す断面図である。
図2a図2aは、図2のクリップを示す斜視図である。
図2b図2bは、図2のクリップを示す平面図である。
図3図3は、閉じた構成の安全クラスプを有する組み立てられた衣服クリップを含む本発明の実施形態を示す断面図である。
図3a図3aは、図3のクリップを示す斜視図である。
図3b図3bは、図3のクリップを示す平面図である。
図4図4は、本発明のさらなる実施形態による、衣服クリップの衣服に面する側の斜視図である。
図4a図4aは、図4の衣服クリップを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の一実施形態の組み立てられていない構成要素の分解図を示し、ここでは衣服クリップ100が安全クラスプ10を具えている。安全クラスプ10は、クラスプ本体12と、クラスプ基部22と、固定要素32とを具える。本体は概ね中空であり、2つの部分またはセクションを含み、それらの間の凹部または切り欠き部分13によって分かれている。この凹部は、クラスプ本体の内部へのアクセスを提供する。凹部の最大幅は2.5~4mmだが、好ましくは約3.5mmであり、勾配またはテーパ付きである。
【0037】
本体は、第1の部分12Aと第2の部分12Bとの2つのセクションに分かれている。布、布地、または衣服を、クリップに固定する必要がある場合に凹部に挿入することができる。クラスプ本体部分は、平らな上部外面天井を有し、これは丸みを帯びた上面角部14によって本体の直線的な側面に接合されている。これにより、クラスプを操作する際にユーザが鋭いエッジに接触するのをさらに低減/防止することができる。角部14は、ユーザがクラスプ本体を容易に把持して移動/スライドできるように、1つまたは複数の把持部材16を有してもよい。本体の直線的な側面の内面には、クラスプ本体をそのクラスプ基部22に取り付けることができるチャネル20を有する。
【0038】
クラスプ本体12は、クラスプ基部22をさらに具える。この例では、基部はモノレール状であり、その上にクラスプ本体を取り付け、スライドできるように構成されている。この基部はさらに、バネ板25として示される一時的な戻り止め機能を具え、これについては以下で詳細に説明する。クラスプはまた、固定要素またはピン32を具える。この例では、ピンはフック状に構成され、湾曲部分35によって支持長さ36に接続された穿刺部34を有する尖った端部33を有する。
【0039】
本実施形態の衣服クリップ100は、柔軟なケーブルまたはチューブを衣服に取り付けるための特徴を備えている。これらについては、以下で詳細に説明する。クリップは、衣服に面しない側101と、反対側の衣服に面する側102とを有する。衣服に面する側102には、安全クラスプのクラスプ基部22を介して安全クラスプ10が取り付けられており、この安全クラスプは、平行な長手方向の突起105と位置合わせされ、それに保持される。安全クラスプは、衣服クリップ100を人が着用する衣服に固定するように機能する。
【0040】
図2a、2bおよび2cを参照すると、組み立てられた衣服クリップ100は、実施例の特徴を明確に表示するために、それぞれ断面図、斜視図および平面図の一連の異なる図で示されている。
【0041】
衣服クリップは、安全クラスプが開いた構成で示されており、ここで固定部材の穿刺部の尖った端部33がクラスプ本体の第1の部分12Aによって覆われている。クラスプ本体はこの位置で自由にスライドしないが、クラスプ本体の内部空間に上方に突出するバネ板25によって解放可能に保持され(特に図2および2aに見られるように)、バネの付勢に打ち消してクラスプ本体を方向Xに向かってスライドさせるために軽い力が必要である。クラスプ本体12は、把持開口16を掴むことによって、ユーザが動かすことができる。ここでは、クラスプ本体の外面の各コーナーに1つずつ、合計4つの開口部が示されている。衣服クリップ100の衣服に面する側102は、ピンストール110をさらに具え、ここに衣服クリップ100内に組み込まれたときにピン32の湾曲部分35が座して支持される。図示するように、開位置では、凹部13は、ピンの穿刺部33によってブロックされておらず、したがってクリップから衣服を受け入れ/解放するように構成されている。
【0042】
図3、3aおよび3bに示されるように、組み立てられた衣服クリップ100は、本実施例における特徴の配置を明確に示すために、それぞれ断面図、斜視図および平面図の一連の異なる図で示されている。ここでは、衣服クリップ100は、安全クラスプ10が閉じた構成で示されている。ここで、クラスプ本体12は、衣服クリップ内のピン32および基部22に対してスライド可能に移動しており、この衣服クリップの使用に際して衣服の布地(図示せず)が凹部内に配置されている場合、ピンの鋭利端部33が布地を突き刺し(この機構に引っかけられ)、鋭利端部が凹部空間を通ってクラスプ本体の第2の部分12B内へと移動して、布地が穿刺部分34の周りに固定される。鋭利端部33は、クラスプ本体12の第2の部分12Bの下に保護された状態で留まる。クラスプ本体12は、鋭利端部を第2の部分12B内にその静止位置で遮蔽する内部障壁18を有するので、ユーザが誤って鋭利端部13にアクセスすることはない。穿刺部分34は、凹部13を横切って延在し、第1の部分12Aと第2の部分12Bの間のギャップを橋渡しする。クラスプ本体は閉位置から自由にスライドすることはない。クラスプ本体は、クラスプ基部22の平面から上方に突出する基部のバネ板25によって解放可能に保持され(特に図3に見られる)、バネ付勢を打ち消してクラスプ本体をスライドさせて元の開いた位置に戻すためには軽い力を必要とする。
【0043】
図4および4aは、特に、カテーテルなどの医療機器のチューブなど、柔軟なケーブルまたはチューブを衣服に固定するように作用する衣服クリップ100の実施形態の、衣服に面しない側101を示す。
【0044】
この例では、2本の変形可能チャネル120、124が衣類/衣服に面しない側に平行な関係で形成されているが、他の実施形態では、1本の変形可能チャネルのみ、または他の位置に配置された2本以上の変形可能チャネルを含んでもよいことを理解されたい。図示の実施形態では、1本の縦方向チャネル120が、幅2.6mm、深さ3.6mm、長さ22mmを有し得る。可撓性タブ126、128が、平行な縦方向チャネル120、124のそれぞれに隣接して外向きに設けられている。各可撓性タブ126、128は、衣服クリップ100の表面と実質的に平面である第1の位置にバイアスされている。
【0045】
柔軟な熱可塑性エラストマーで形成される場合、衣服クリップ100は、ケーブルまたはチューブを各変形可能チャネル120、124に挿入するための柔軟性を提供すると同時に、患者またはユーザに安全に取り付けることができる。この材料はまた、ケーブルまたはチューブと衣服クリップ100との間の摩擦を提供して、衣服クリップ100に対するケーブルまたはチューブの動きを防止するように作用する。
【0046】
適切な材料の例としては、高硬度のSantoprene(商標名)がある。代替的かつ好適には、クリップの本体は、ポリプロピレンなどのより剛性の高い熱可塑性プラスチックで形成され、変形可能なチャネル120、124のうちの1つまたは複数が異なる材料でライニングされてもよい。そのようなライナーは、変形可能チャネル内での柔軟なチューブまたはケーブルの長手方向の動きに抵抗したり、あるいは促進したりする。
【0047】
使用時には、可撓性タブ126、128に力を加えて縦方向チャネル120、124を開くようにクリップの可撓性本体を変形させ、縦方向チャネル120、124にカテーテルまたは柔軟なケーブルが横方向に入るようにする。その後、可撓性タブ126、128を放して閉じると、圧縮性の保持力により、縦方向チャネルから柔軟なケーブルまたはチューブが横方向に出るのが防止される。柔軟なケーブルまたはチューブは、変形可能チャネルから横方向に容易に取り外すことができず、それにより、ケーブルまたはチューブを衣服クリップの衣服に面しない側に可逆的に固定する事ができる。有用なことに、次に、衣服/衣類に面する側の安全クラスプを開閉することに関連して説明した動作を通じて、衣服クリップを衣服に固定することができる。
図1
図2
図2a
図2b
図3
図3a
図3b
図4
図4a