IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フランカ エーミカ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-ロボット駆動装置用のブレーキ装置 図1
  • 特許-ロボット駆動装置用のブレーキ装置 図2
  • 特許-ロボット駆動装置用のブレーキ装置 図3a
  • 特許-ロボット駆動装置用のブレーキ装置 図3b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ロボット駆動装置用のブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20241112BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B25J19/00 C
B25J19/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021566316
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020062793
(87)【国際公開番号】W WO2020225394
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】102019112023.3
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521181769
【氏名又は名称】フランカ エーミカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FRANKA EMIKA GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロカール、ティム
(72)【発明者】
【氏名】スペニンゲル、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア、カーレス カーラフェル
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0200896(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1915394(KR,B1)
【文献】特開2017-189081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの2つのリンク間にあるジョイントの駆動装置用のブレーキ装置であって、
ブレーキ起動装置(1)と、ボルト(2)として設計されたロック要素(2)と、ブレーキスター(5)として設計されたブレーキ要素(5)と、を含み、
前記ブレーキスター(5)は、前記駆動装置のロータ(4)の軸から半径方向に突出する少なくとも1つのウェブ(7)を有し、かつ、前記ロータ(4)の回転を止めるために前記ロータ(4)に回転可能に取り付けられて連結され、
前記ブレーキ起動装置(1)は、必要なときに前記ロック要素(2)を、ブレーキ要素(5)と係合させるために上方に駆動させ、
記ウェブ(7)は、前記ボルト(2)が上方に駆動されて前記ウェブ(7)間に割り込んできた時に前記ボルト(2)と相互作用する衝突面(9)を有し、前記衝突面(9)は、前記ブレーキスター(5)の回転方向に対して内側に湾曲し、少なくとも前記ボルト(2)の半径(DB/2)に相当する半径(RA)を有し、
前記衝突面(9)は、前記ロータ(4)の前記軸と前記ボルト(2)の軸との間の距離(LB)を超えて半径方向に延在すること
を特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記衝突面(9)は、前記ボルト(2)をガイドするために、前記ウェブ(7)から周方向に離間するように広がっていること
を特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記ウェブ(7)は、半径方向内側に位置する少なくとも1つの凹部(11)を含むこと
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記ウェブ(7)の中心軸(S)から等間隔に離間しておかれた2つの均一な孔(11)が設けられていること
を特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記ロータ(4)の前記軸と前記孔(11)の中心との間を半径方向に延びるライン(L)が、点(P)で前記衝突面(9)と交差し、前記点(P)を通る円の半径(RP)は、前記ロータ(4)の前記軸と前記ボルト(2)の前記軸との間の距離(LB)よりも短いこと
を特徴とする請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記ロータ(4)の前記軸と前記孔(11)の前記中心との間を半径方向に延びるライン(L)が点(P)で前記衝突面(9)と交差し、前記点(P)で前記ボルト(2)が係合する時に最大の衝撃力が発生すること
を特徴とする請求項5に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記孔(11)の前記中心から前記ロータ(4)の前記軸までの距離で形成される半径(RL)は、前記ボルト(2)の前記軸から前記ロータ(4)の前記軸までの距離(LB)から前記ボルトの前記半径(DB/2)を引いてできる半径(RB)と大きくても等しいか、それよりも小さいこと
を特徴とする、請求項5、または6に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
前記孔(11)の孔径(DL)が大きくとも前記ボルトの前記半径(DB/2)と等しい、またはそれよりも小さいこと
を特徴とする請求項4,5,6、または7に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
周方向に互いに等間隔で配置されたN個のウェブ(7)が設けられ、該ウェブ(7)の周方向の幅を決定する各ウェブ(7)の開き角度(β)が360°/3Nであること
を特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のブレーキ装置。
【請求項10】
前記ウェブ(7)が3つ設けられていること
を特徴とする請求項9に記載のブレーキ装置。
【請求項11】
ロボットアームの2つのリンク間のジョイント用の駆動装置であって、前記ジョイントは請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のブレーキ装置を有すること
を特徴とする駆動装置。
【請求項12】
ジョイントによって互いに対して相互に移動可能に配置された複数のリンクを有するロボットアームを含み、前記ジョイントの少なくとも1つは請求項11に記載の駆動装置を含むこと
を特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームやマニピュレータ、特に多軸ジョイントアームロボットの2つのリンク間にあるジョイントの駆動装置に用いるブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、人間-ロボット協調(HRC、Human-Robot Collaboration)の分野で使用されるロボットでは、安全上の理由から、誤動作時または電源の突然の故障時に緊急停止用またはブレーキ用の装置を備えることが必須であり、この装置は、ロボットシステムの操作者の負傷を防ぐため、またはロボットアームが実行する動作の過程でロボットアームによって操作される対象物またはロボットアーム自体の損傷を防ぐために、可及的速やかにロボットアームを停止させるように設計されている。このような緊急停止は、ユーザー自身が緊急スイッチを作動させるなどして、直接行うこともできる。
【0003】
例えば、ジョイント型ロボット用のブレーキ装置としては、様々な形態のものが知られており、これらの装置を用いてロボットアームの動きを急停止させたり、少なくとも規定の時間内に高速停止させたりすることができる。
【0004】
例えば、特許文献1では、摩擦リングがモータ軸と同軸に取り付けられ、緊急時にロック装置のピンが前記摩擦リング内に半径方向に係合することにより前記摩擦リングと協調動作するブレーキ機構が提案されている。摩擦リングは、既定の摩擦係合条件下ではモータシャフトを軸にして回転可能であるという事実により、半径方向のピンが係合するときに前記回転運動の弱いブレーキ減速が実現される。
【0005】
特許文献2は、ブレーキスターが駆動装置のシャフトに回転しないように連結されており、緊急停止のためにスプリング駆動ヘッドボルトが係合する半径方向に突出したプロングを有するブレーキ装置を開示している。前記プロングの端部は尖ったり面取りされたりして、力の一部が前記ヘッドボルトとの係合時に前記プロングの曲げ部分にあてられ前記プロングが曲がったビームと同じように挙動し、そして、一部の力はこのビームに対して長手方向に偏向するようになっている。それにもかかわらず、回転速度が大きいために、前記ヘッドボルトと前記プロングの間の衝撃力が非常に大きく、顕著な弾性変形が発生する。この弾性変形により、一定回数ブレーキ動作を繰り返した後、前記プロングの材料破壊が引き起こされる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許第3-045-273号公報
【文献】ドイツ特許出願第10-2015-116-609号公開公報
【文献】ドイツ特許出願第10-2016-004-787号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題に基づき、本発明の目的は、ロボットアーム、特に軽量構造の多ジョイント型アームロボットの2つのリンク間のジョイントの駆動装置用のブレーキ装置であって、機能的安全性が向上され、その特性上耐用年数が長いブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、ジョイント駆動装置に用いる請求項1に記載のブレーキ装置によって達成される。さらに、この目的は、請求項11に記載の対応する駆動装置と、請求項12に記載のロボットによって達成される。
【0009】
本発明によれば、ロボットアームの2つのリンク間にあるジョイントの駆動手段に用いるブレーキ装置が提案され、該ブレーキ装置はブレーキ起動装置とロック要素とを備え、前記ブレーキ起動装置は、ロータの回転を停止させるために、必要なときに、前記駆動手段の前記ロータに回転可能に固定連結されたブレーキ要素と前記ロック要素とを係合するように構成されており、前記ロック要素はボルトとして形成され、前記ブレーキ要素はブレーキスターとして形成されており、前記ブレーキスターは、前記ロータの軸から半径方向に突出する少なくとも1つのウェブを有し、前記ウェブは、係合時に前記ボルトと相互作用する衝突面を有し、前記衝突面は前記ブレーキスターの回転方向に対して内側に湾曲し、少なくとも前記ボルトの半径に相当する半径を有し、前記衝突面は、前記ロータの前記軸と前記ボルトの軸との間の距離を超えて半径方向に延在している。
【0010】
これにより、ボルトのエッジの半径方向内側に向けられた1/4円の円周を超えて、半径方向外側に延在する部分で、ボルトが全体として衝突面に近接するようになる。前記ウェブの前記衝突面が前記固定されたボルトと接触すると、弾性エネルギーの散逸が起こるように力が前記ウェブ内で分散され、半径方向で見ると、力の一部が前記ウェブに半径外側方向にもかかるため、この力が、曲げビームとして作用する前記ウェブに対して弱いテコ効果を及ぼすことになる。
【0011】
本発明によれば、ピンとブレーキスターの材料の適切な選択に関係なく、衝突時のエネルギー吸収の面で前記ウェブにかかる負荷量を低減して、機械的故障、すなわち破損のリスクを大幅に回避することができる。したがって、ブレーキ装置の耐用年数を従来技術に比べて延ばすことができる。
【0012】
1つの実施形態では、前記衝突面は円周方向に広がり、前記ボルトを前記ウェブから離れるように誘導することができる。言い換えれば、2つのウェブの間の中心から見て、前記ブレーキスターが停止するまで回転し続けると、前記ボルトが実際に前記衝突面に突き当たるように、前記ブレーキスターの端面が前記ウェブの衝突面に向かって高速で進む。この誘導により、摩擦に起因するとはいえ、すでに初期において前記衝撃力をわずかに弱めることが可能になる。
【0013】
本発明によれば、前記ウェブは、内側に、特に本質的には2つの前記ウェブ間の前記ブレーキスターのエッジ面の半径の領域に、少なくとも1つの凹部を半径方向に有するようにすることができる。前記凹部は原理的に任意の形状にすることができるが、好ましくは円形の穴のような対称的な形状がよい。ブレーキスターの好ましい実施形態では、前記ウェブは、ウェブの中心軸から等距離にある2つの均一な穴を有する。
【0014】
これらの穴は、前記ボルトが前記ウェブの前記衝突面に衝突したときに発生する力を、前記ウェブの範囲内で弾性分散が実現するように方向転換する役割を果たし、これによって、ウェブの変形を小さく抑えておくかまたは、前記ウェブ、すなわち半径方向に伸びる曲げビームとしての前記ウェブ、にかかるテコ力を弱めるように前記変形を変換することができる。
【0015】
上述のように、本発明によるブレーキスターの好ましい実施形態では、ロータの軸と穴の中心との間を半径方向に延在するラインが、一つの点で衝突面と交差するように設けられており、前記一つの点に対応する半径は、前記ロータの軸と前記ボルトの軸との間の距離よりも小さくなる。
【0016】
本発明によるブレーキスターの別の好ましい実施形態では、ロータの軸と穴の中心との間を放射状に延在するこのラインが、前記ボルトが係合したときに最大の衝撃力が発生する可能性のある点で衝突面と交差するように設けられる。
【0017】
本発明によるブレーキスターのさらに別の好ましい実施形態では、穴の中心からロータの軸までの距離でできる半径が、ボルトの軸からロータの軸までの距離からボルトの半径を引いてできる半径に少なくとも等しいか、それよりも小さくなるように設けられる。
【0018】
上記条件では、穴の直径がボルトの半径と少なくとも等しいか、又はそれよりも小さいときにさらに有利になる。
【0019】
緊急停止時の高速動作を保証するために、本発明では、ブレーキスターから1つだけウェブが出ているだけでなく、複数、2つまたは好ましくは3つのウェブが円周方向に互いに等間隔に並ぶように設けられる。
【0020】
上記構成により、本発明によれば、N個のウェブを周方向に互いに等間隔に配置したとき、一つのウェブの周方向の幅を決定する各ウェブの開き角度は360°/3Nになる。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、上述の複数の実施形態の1つによるブレーキ装置を有するロボットアームの2つのリンク間のジョイント用の駆動装置に関する。更に別の態様では、本発明は、ジョイントによって互いに相対的に移動可能に配置された複数のリンクを備えたロボットアームを有するロボットであって、少なくとも1つのジョイントが上述のように構成された駆動装置を有するロボットに関する。
【0022】
好ましくは、本発明によるブレーキ装置は、駆動装置の駆動側の側面または出力側の側面のいずれかに、駆動装置の駆動軸またはモータ軸によって形成されるロータの周りに同軸に構成可能である方がよく、このような構成の駆動装置については、例えば特許文献3に記載されている。特にその中でも、本発明は、マルチジョイントアームロボット、中でも特に、人間ーロボット協調の分野で使用するための軽量構造の駆動装置またはジョイントに向いているが、これに限られない。
【0023】
本発明によれば、ウェブの途中に設けられた凹部と、ボルトの中心に対して生じる半径方向に半径を超えて延在するウェブの衝突面とが協調して、前記ウェブに上述のような弾性変形が引き起こされ、これによって前記ウェブが前記ボルトに衝突したときの速度の低下が早められる。前記衝突面と共に前記凹部をウェブの材料に応じて選択、設計することで、ウェブのバネ特性を調整し、所望のブレーキングプロセスの実現が可能になる。ビームの座屈や座屈破断のリスクは、なくすることができる。
【0024】
本発明のさらなる利点および特徴は、添付の図面を参照して実施形態の説明から明らにされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明によるブレーキ装置の代表的な例の透視図である。
図2図2は、ブレーキスターに対するボルトの配置を示す模式図である。
図3a図3aは、本発明による1つの実施形態において、対応する寸法のブレーキスターを示す模式図である。
図3b図3bは、本発明による一実施形態における、ブレーキスターと、ボルトのブレーキスターに対する相対位置を同じ寸法比で示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に模式的に示す本発明によるブレーキ装置は、好ましくは、ロボットアームの2つのリンク間にあるジョイントの駆動装置の一端に取り付けることができる。
【0027】
本発明によるブレーキ装置は、ブレーキ起動装置1を備えており、このブレーキ起動装置1は、例えば、磁気作動する保持機構またはスプリング機構として設計することができる。ブレーキ起動装置1は、必要に応じて、例えば予期せぬ停電が発生した場合に、ボルト2の形態のロック要素を起動するように設計および構成されており、その結果、ボルト2は、例えば、スプリングによって上方に駆動される。
【0028】
ハウジングに固定された、すなわち、図示しない駆動装置のハウジングに連結された軸受ワッシャ3によって、図示しない公知の軸受を介して、前記駆動装置のシャフトまたはロータ4を取り付けることができる。ボルト2を備えたブレーキ起動装置1は、軸受ワッシャ3に定置して配置される。
【0029】
ロータ4は、ブレーキスター5の形をしたブレーキ素子を搭載しており、このブレーキ素子は、軸方向に延在するスリーブ6を介してロータ4に回転可能に固定して連結、例えば接着されている。
【0030】
ブレーキスター5は、互いに周方向に等しい角度で間隔を空けられた3つのウェブ7を含み、これらのウェブ7はブレーキスター5の内側リング8から半径方向に延在している。
【0031】
好ましくは磁気作動するブレーキ起動装置1によって、ボルト2は、電力が供給されていないときのロック位置と、電力が供給されたときのリリース位置との間を移動することができる。図1は、上記のリリース位置にあるボルト2を示している。このボルト2は、前記軸方向に見て回転するブレーキスター5の下に配置されており、その結果、ウェブ7のうちの1つとも係合していない。前記ボルトはスプリングのばね力によってブレーキスター5の方向に付勢されており、電力がオフに切り替わると、このばね力は、もはや磁石が駆動されていないために解放され、その結果、回転ブレーキスター5の2つの隣接するウェブ7の間に入り、それによって、次のウェブ7がボルト2に当たると同時に、駆動軸またはロータ4の急速なブレーキングが実行される。
【0032】
図2は、ブレーキスター5に対するボルト2の位置関係を示し、かつ、それぞれの幾何学的な寸法を示している。さらに詳細な寸法の相対的な関係を図3aおよび3bに示す。
【0033】
ボルト2の直径はDBである。内側リング8から半径方向に突出するウェブ7は各々、その両側に、ブレーキスター5の両方の回転方向に対して内側に湾曲し、少なくともボルト2の半径DB/2に対応する半径RAを有する衝突面9を有しており、その結果、ボルト2は、ブレーキ係合時にその表面全体が切れ目なく衝突面9に受支される。
【0034】
本発明によれば、図3bに示されているように、衝突面9は、ロータ4の軸とボルト2の軸との間の距離を画定する距離LBよりも長く半径方向に延在するように構成できる。
【0035】
上述のウェブ7の突出によって、ウェブ7の外径DA、すなわちブレーキスター5の外径もまた決まる。ウェブ7の外縁には、公差からの意図しない逸脱の結果としてボルト2が衝撃を受けたときのノッチ効果を回避するために、面取り10が設けられている。
【0036】
各ウェブ7は、共通の半径RL上に中心が位置する一対の孔11を有している。孔11は、それぞれ同一の直径DLを有し、ウェブ7の中心軸Sから等距離に配置されている。
【0037】
図2でわかるように、衝突面9は、各々が円周方向から見てウェブ7から離れる方向に広がっている。このような広がり12は、衝突面9がボルト2に接触する少し前に、ブレーキ係合中にブレーキスター5がボルト2に向かって急接近する際に、ボルト2のガイドを容易にすることができる。
【0038】
本発明によると、ブレーキスター5は、さらに、ロータ4の軸と孔11の中心との間に延在するラインLが点Pで衝突面9と交差するように構成されており、点Pを通る円の半径RPは、ロータ4の軸とボルト2の軸との間の距離LBよりも短い。理想的には、この点Pは、衝突面9のうち、ボルト2の係合時に最大の衝撃力が発生する可能性のある領域内の点である。
【0039】
本発明によれば、孔11の中心を通る円の半径RLは、この半径RLが、ボルト2の軸からロータ4の軸までの距離LBからボルトの半径DB/2を引いてできる半径RBに長くとも等しいか、好ましくはそれよりも短くなるように選択される。
【0040】
好ましくは、孔11の直径DLは、最大でもボルト2の半径DB/2の半分である。
【0041】
図示の実施形態では、3つのウェブ7が示されており、それぞれのウェブ7は、互いに対して120°の角度αを等しく保持している。ウェブ7の円周方向の幅は、40°の角度βであり、これにより、ウェブ7毎に2つある孔11の間の円周方向の距離は、角度βの半分以上である角度γである。
【0042】
本発明によれば、前述の寸法および寸法比により、ボルト2がブレーキスター5の衝突面9に衝突した際に、ウェブ7に対するテコ効果が低く抑えられる程度に、かつ、そのような力の分散が起きるように、ウェブ7が弾性変形可能であるということによって、エネルギーの効果的な散逸が確実に達成される。この結果、上述のようなブレーキスター5を備えたブレーキ装置は、材料疲労がほとんどまたは全くなく、耐用年数を相当に長くすることができる。
【0043】
本発明によるブレーキスター5の設計に加えて、前記ブレーキ装置の剛性を上述の寸法比に対応して相応に剛性の高いものにするために、本発明は、ボルト2とブレーキスター5との間を合体させ、剛性挙動を支持する部材をさらに有する。
【0044】
また、ロボットアームの2つのリンク間のジョイント装置の重量をできるだけ小さくするために、ブレーキスター5は、理想的には厚さが2mmを超えないシート状の金属部品として設計することができる。したがって、ボルト2の長さもこの寸法辺りにあることが望ましい。コンパクトな構造を実現するためにボルト2はブレーキ係合時にストロークを行うので、結果的に、この寸法を下回ることはない。したがって、ボルト2のリリース位置での配置およびブレーキ係合時のストロークの高さは、本発明に従って、ボルト2の周縁部が衝突面9とぴったりと密着することができるように選択される。
【0045】
このための理想的な弾性変形挙動を得るために、本発明では、ボルト2が軟質の快削鋼、例えばタイプ1.0715(11SMN30+C+A)で作られ、一方、ブレーキスター5は高強度であると同時に高靭性を有する熱処理可能な鋼、例えばタイプ1.7225(42CrMo4)で作られる。硬度、引張強度、降伏強度、破断伸び率に関するブレーキスター5の機械的材料特性は、必要に応じて材料の焼入れ・焼戻しや表面処理などの適切な対応方法を採用すれば、ボルト2の上記のような機械的材料特性よりも良好にすることができる。
【0046】
本発明によって定義された凹部を有するブレーキスターの設計のさらなる利点は、質量による加速度の低下とそれに伴う最大トルクの低下の結果として、ギアユニットと駆動装置のロータまたは駆動軸にかかる負荷が小さくなることである。逆に言えば、このことは、ブレーキ係合時に速度をより迅速に低下させることができることを意味する。
【0047】
本発明によれば、凹部または穴の数および/または形状および/または配置形態及び位置を選択することによって、加速動作およびブレーキング動作に関する最適な処理パラメータを詳細に設定することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ブレーキ起動装置
2 ボルト
3 ベアリングワッシャー
4 ロータ
5 ブレーキスター
6 スリーブ
7 ウェブ
8 インナーリング
9 衝突面
10 面取り
11 孔
12 広がり
DB ボルト直径
RA 衝突面の半径
LB ロータ軸~ボルト軸間の距離
DA ウェブ/ブレーキスターの外径
DL 孔の直径
S ウェブ7の中心軸
L ロータ軸と中心孔とを結ぶライン
P 衝突面とラインLとの交点
RP 交点Pを通る円の半径
RL センターホールに対する半径
RB LBマイナスDB/2の長さの半径
図1
図2
図3a
図3b