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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】情報処理システム、方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20241112BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20241112BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q10/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022012775
(22)【出願日】2022-01-31
(65)【公開番号】P2023111111
(43)【公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】515067457
【氏名又は名称】株式会社グーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 寛一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 智明
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-086569(JP,A)
【文献】特開2005-032231(JP,A)
【文献】特開2020-024691(JP,A)
【文献】特開2011-197835(JP,A)
【文献】特開2019-036877(JP,A)
【文献】特開2020-034585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の印刷依頼に含まれるデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係る第1のデータを抽出するステップと、
前記第1のデータと、前記第1の印刷依頼より前に特定の工場における特定の装置にて処理される第2の印刷依頼に含まれるデータから抽出され且つ前記所定の項目に係る第2のデータとから、前記第1の印刷依頼を処理する場合に前記特定の工場における前記特定の装置について発生し得るイベントの予測を行うステップと、
予測された前記イベントに対処できる又は予測された前記イベントに対する対処法を実行することができる、作業員の技能レベルを特定するステップと、
特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員が、前記第1の印刷依頼を処理する間に前記第1の印刷依頼の処理に従事可能であるか否かを、前記特定の工場についての勤務スケジュールデータに基づき判断するステップと、
特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員が、前記第1の印刷依頼を処理する間に前記第1の印刷依頼の処理に従事不可能である場合には、前記特定の工場について、前記第1の印刷依頼の発注先としての優先順位を相対的に下げるように設定するステップと、
を含み、コンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項2】
第1の印刷依頼に含まれるデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係る第1のデータを抽出するステップと、
前記第1のデータと、前記第1の印刷依頼より前に特定の工場における特定の装置にて処理される第2の印刷依頼に含まれるデータから抽出され且つ前記所定の項目に係る第2のデータとから、前記第1の印刷依頼を処理する場合に前記特定の工場における前記特定の装置について発生し得るイベントの予測を行うステップと、
予測された前記イベントに対処できる又は予測された前記イベントに対する対処法を実行することができる、作業員の技能レベルを特定するステップと、
特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員が、前記第1の印刷依頼を処理する間に前記第1の印刷依頼の処理に従事可能であるか否かを、前記特定の工場についての勤務スケジュールデータに基づき判断するステップと、
特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員が、前記第1の印刷依頼を処理する間に前記第1の印刷依頼の処理に従事不可能である場合には、前記第1の印刷依頼の処理順番を入れ替えること又は前記特定の工場における他の装置において前記第1の印刷依頼を処理することが可能か否かを判断するステップと、
前記第1の印刷依頼の処理順番を入れ替えること又は前記特定の工場における他の装置において前記第1の印刷依頼を処理することが不可能である場合には、前記特定の工場について、前記第1の印刷依頼の発注先としての優先順位を相対的に下げるように設定するステップと、
を含み、コンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項3】
前記所定の項目は、印刷データに含まれるオブジェクトのメタデータを含む
請求項1又は2記載の情報処理方法。
【請求項4】
予測された前記イベント又は予測された前記イベントに対する対処法が、前記特定の置の保守会社が対処するイベント又は当該保守会社が実行する対処法である場合には、前記保守会社宛に通知を送信するステップ
をさらに含む請求項1又は2記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記保守会社宛の通知が、前記第1のデータ及び前記第2のデータの少なくとも一部を含む
請求項4記載の情報処理方法。
【請求項6】
予測された前記イベント又は予測された前記イベントに対する対処法が、前記特定の装置が設置された前記特定の工場の作業員が対処するイベント又は当該特定の工場の作業員が実行する対処法である場合には、特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員を前記第1の印刷依頼に割り当てるように要求する出力を、前記特定の工場のコンピュータに対して出力するステップ
をさらに含む請求項記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記出力が、予測された前記イベントの内容と当該イベントに対する対処法の内容とのうち少なくともいずれかを含む
請求項6記載の情報処理方法。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1つ記載の情報処理方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
第1の印刷依頼に含まれるデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係る第1のデータを抽出する手段と、
前記第1のデータと、前記第1の印刷依頼より前に特定の工場における特定の装置にて処理される第2の印刷依頼に含まれるデータから抽出され且つ前記所定の項目に係る第2のデータとから、前記第1の印刷依頼を処理する場合に前記特定の工場における前記特定の装置について発生し得るイベントの予測を行う手段と、
予測された前記イベントに対処できる又は予測された前記イベントに対する対処法を実行することができる、作業員の技能レベルを特定する手段と、
特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員が、前記第1の印刷依頼を処理する間に前記第1の印刷依頼の処理に従事可能であるか否かを、前記特定の工場についての勤務スケジュールデータに基づき判断する手段と、
特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員が、前記第1の印刷依頼を処理する間に前記第1の印刷依頼の処理に従事不可能である場合には、前記特定の工場について、前記第1の印刷依頼の発注先としての優先順位を相対的に下げるように設定する手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項10】
第1の印刷依頼に含まれるデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係る第1のデータを抽出する手段と、
前記第1のデータと、前記第1の印刷依頼より前に特定の工場における特定の装置にて処理される第2の印刷依頼に含まれるデータから抽出され且つ前記所定の項目に係る第2のデータとから、前記第1の印刷依頼を処理する場合に前記特定の工場における前記特定の装置について発生し得るイベントの予測を行う手段と、
予測された前記イベントに対処できる又は予測された前記イベントに対する対処法を実行することができる、作業員の技能レベルを特定する手段と、
特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員が、前記第1の印刷依頼を処理する間に前記第1の印刷依頼の処理に従事可能であるか否かを、前記特定の工場についての勤務スケジュールデータに基づき判断する手段と、
特定された前記作業員の技能レベルを有する作業員が、前記第1の印刷依頼を処理する間に前記第1の印刷依頼の処理に従事不可能である場合には、前記第1の印刷依頼の処理順番を入れ替えること又は前記特定の工場における他の装置において前記第1の印刷依頼を処理することが可能か否かを判断する手段と、
前記第1の印刷依頼の処理順番を入れ替えること又は前記特定の工場における他の装置において前記第1の印刷依頼を処理することが不可能である場合には、前記特定の工場について、前記第1の印刷依頼の発注先としての優先順位を相対的に下げるように設定する手段と、
を有する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷に関連する情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷及び印刷後の各種処理を実際に実行する場合には、印刷装置などの装置の調整、不具合、故障、メンテナンス実施といった様々なイベントが発生し、それに対して人的なサポートが必要となる。従来では、主に印刷装置などの装置を監視して、人的なサポートの要否などを予測してきた。例えば、特許文献1では、プリンタにおける各処理の実施予定をできるだけ妨げずに、検知された予兆に対処するための保守作業の実施予定時間を求める技術が開示されている。具体的には、予兆検知システムは、各プリンタにおける不具合事象の発生の予兆を検知し、予兆が検知されたプリンタの識別情報、その不具合事象の種類及び発生予測タイミングをメンテナンス管理装置に通知する。メンテナンス管理装置のスケジュール情報取得部は、通知された情報に基づき、予兆が検知されたプリンタのジョブスケジュールをジョブスケジュール管理システムから取得する。メンテナンス計画処理部は、予兆に係る不具合事象に対するメンテナンス作業の予定時間を、そのジョブスケジュールの空き時間枠内に設定する。
【0003】
このように装置を監視することで不具合事象の発生を予測して、それに応じたメンテナンス作業のスケジューリングを行うのは、装置の保守会社にとっては有用な仕組みであるが、印刷依頼(印刷オーダとも呼ぶ)を発注する側からすると、十分な備えとは言えない。具体的には、印刷依頼では当該印刷依頼に含まれる品質上の要件を満たした最終製品を納品期限までに受け取れるように全ての処理が進められることを求めているが、装置を監視することで予測できる不具合事象は一部に過ぎず、そのような一部の不具合事象だけに対処できても、品質や納期の要件を満たして最終製品を納品できるか否かは、印刷工場内の作業員の力量に依存してしまう可能性が高くなる。すなわち、能力の高い作業員がいる場合には、様々なイベントに対処できて品質及び納期などの印刷依頼で規定される要件を満たすことができるが、能力が高くない作業員しかいない場合に、当該作業員が対処できないようなイベントが発生すれば、印刷ジョブに遅延が生じたり、品質上の問題を直ぐに是正できないというような事態になる。このような状況では、印刷ジョブのスケジューリングに余裕を持たせることでしか、品質及び納期などの印刷依頼で規定される要件を満たすようにすることを安定的に確保し得なくなる。これでは、印刷工場の稼働率を高めることができず、印刷工場の利益にも影響する。
【0004】
このように、装置の挙動のみに着目しているだけでは、印刷依頼に含まれる各種要件を満して当該印刷依頼を安定的に処理するという観点においては十分ではなく、他の観点にて備えることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-215690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、一側面によれば、印刷依頼に含まれる各種要件を満して当該印刷依頼を安定的に処理できるように備えるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る情報処理方法は、(A)第1の印刷依頼に含まれるデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係る第1のデータを抽出するステップと、(B)第1のデータと、第1の印刷依頼より前に特定の工場における特定の装置にて処理される第2の印刷依頼に含まれるデータから抽出され且つ上記所定の項目に係る第2のデータとから、第1の印刷依頼を処理する場合に特定の工場における特定の装置について発生し得るイベントの予測を行うステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
一側面によれば、印刷依頼に含まれる各種要件を満して当該印刷依頼を安定的に処理できるように備えられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ネット印刷システムの例を概念的に説明する図である。
図2図2は、工場内の構成関係及び工場と印刷受発注サーバ等との関係の例を説明する図である。
図3図3は、印刷受発注サーバの機能構成例を示す図である。
図4図4は、技能レベルと実施可能な作業種別との関係を表す図である。
図5図5は、第1の実施の形態における処理フローを示す図である。
図6図6は、第1の実施の形態における処理フローを示す図である。
図7図7は、第2の実施の形態における処理フローを示す図である。
図8図8は、第2の実施の形態における処理フローを示す図である。
図9図9は、コンピュータの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
本実施の形態に係るシステム全体の構成を図1及び図2を用いて説明する。図1は、ネット印刷システム1の例を概念的に説明する図である。図2は、工場400内の構成例及び工場400と印刷受発注サーバ300等との関係の例を説明する図である。なお、図1及び図2は概念図であり、実際の構成や関係は図1及び図2に示す内容に限らない。
【0011】
ネット印刷システム1は、例えばインターネットであるネットワーク100経由で印刷を依頼するユーザが操作するユーザ端末200と、ユーザ端末200から印刷依頼を受け付ける印刷受発注サーバ300と、保守会社Pが用いる保守会社サーバ350と、印刷受発注サーバ300から発注を受けた印刷依頼を処理する工場400とを含む。
【0012】
ユーザ端末200は、印刷を依頼するユーザが操作する端末である。もっとも、印刷受発注サーバ300による印刷依頼の受付は、ネットワーク100経由に限らない。例えばネット印刷システム1を通じて提供されるネット印刷サービスを提供する窓口事業者の従業員が、印刷受発注サーバ300に接続された不図示の端末を操作して印刷依頼を印刷受発注サーバ300に入力してもよい。
【0013】
本実施の形態の場合、ネット印刷システム1に含まれる工場400は、1つの国又は地域に集まっておらず、複数の国又は地域に分散して存在していてもよい。図1の場合、6つの工場400は、日本とアメリカに分散して存在している。
【0014】
本実施の形態において、工場400とは、印刷物の生産に用いられる装置(以下「生産装置」ともいう。)が配置されている場所の意味で使用する。従って、工場400は、生産装置が1台だけ配置されている印刷所や事業所も含む。
【0015】
また、工場400は、印刷専用の場所でなくてもよく、区画の一部に生産装置が配置されている場所でもよい。例えば配送事業者、郵便事業者、電気事業者、ガス事業者、公益法人、医療事業者等の施設や事業所も、区画の一部に印刷物の生産装置が配置されていれば、本実施の形態における工場400に含まれる。換言すると、印刷物の生産装置を配置していれば、事業者の業種は問わない。この意味で、配送事業者、郵便事業者、電気事業者、ガス事業者、公益法人、医療事業者等も印刷事業者に含まれる。
【0016】
本実施の形態の場合、6つの工場400を、複数の印刷事業者が管理している。図1の場合、印刷事業者W、X、Y、Zの4社である。これは、紙面の制約のためであり、実際には数の制約はない。なお、印刷事業者W、X、Y、Zは、異なる法人である。また、印刷事業者W、X、Y、Zは、資本関係や系列関係などの業務上の関係を有していなくてもよい。むしろ本実施の形態では、資本関係や系列関係などの業務上の関係を有しない印刷事業者W、X、Y、Zを想定する。
【0017】
なお、印刷事業者は工場400を所有していなくてもよく、印刷物を生産する生産装置を所有していなくてもよい。また、本実施の形態の場合、印刷受発注サーバ300に接続される工場400の数は印刷事業者毎に異なってよい。
【0018】
図1の場合、印刷事業者W、X、Zが接続する工場400の数は1つであるが、印刷事業者Yが接続する工場400の数は3つである。すなわち、各印刷事業者が印刷受発注サーバ300に接続する工場400の数は任意である。
【0019】
本実施の形態の場合、工場400には、印刷に関連する情報を収集して印刷受発注サーバ300に登録するデータ収集サーバ500と、印刷物を生産する印刷装置600と、印刷物に加工を施す加工装置700と、印刷のスケジュールを管理するワークフロー管理装置800と、消耗品の在庫を管理する在庫管理装置900と、印刷物の品質、工場内の環境、工場内の人の動き等を検知するセンサ1000が配置されている。なお、工場400には、生産装置を操作する人員の出勤等を管理する装置が配置されてもよい。
【0020】
ここでの印刷装置600と加工装置700は、いずれも生産装置の一例である。図1の例では、印刷装置600と加工装置の700の両方が工場に配置されているが、いずれか一方だけが工場400に配置されてもよい。換言すると、工場400は、印刷専用の工場でもよいし、加工専用の工場でもよい。
【0021】
また、ワークフロー管理装置800は、生産管理装置の一例である。また、在庫管理装置900は、在庫管理装置の一例である。
【0022】
図1の場合、保守会社サーバ350を1台だけ描いているが、これは作図上の制約によるものであり、配置される台数は任意である。なお、保守会社サーバ350は、どのようなコンピュータであっても良い。
【0023】
また、図1の場合、保守会社サーバ350は、保守会社Pが管理しているが、勿論、保守会社は複数でもよい。保守会社が複数の場合、保守会社サーバ350も複数である。保守会社が1つでも、例えば地域毎に保守会社サーバ350が設けられる場合もある。
【0024】
本実施の形態の場合、データ収集サーバ500は、例えば印刷受発注サーバ300を運用する窓口事業者が各工場400に設置する。
【0025】
図1の場合、工場400内には印刷装置600を1台だけ描いているが、これは作図上の制約によるものであり、配置される台数は任意である。従って、工場400に配置される印刷装置600の台数は1台でもよいし、複数台でもよい。印刷装置600の製造メーカは、工場400毎に異なってもよい。また、工場400内には、複数の製造メーカの印刷装置600が混在してもよい。なお、印刷装置600には、それぞれ専用の装置ID(IDentifier)が付されており、印刷ジョブの実行に関する情報、各装置の稼働に関する情報が1台毎に管理される。
【0026】
加工装置700についても、印刷装置600と同様である。すなわち、加工装置700は、工場400内に1台に限る必要はなく、複数台でもよい。また、加工装置700の製造メーカは、工場400毎に異なってもよい。また、工場400内には、複数の製造メーカの加工装置700が混在してもよい。
【0027】
ワークフロー管理装置800は、工場内での生産を一括管理する装置である。例えばワークフロー管理装置800は、印刷ジョブの受注処理、同じ仕様の印刷ジョブをまとめた面付け処理、印刷スケジュール及び加工スケジュールの管理、印刷及び加工の進捗管理、工場内で使用された用紙の量を管理する処理等を実行する。
【0028】
ワークフロー管理装置800は、工場内のネットワークを通じて、印刷装置600及び加工装置700と接続され、各種のデータを受け渡しする。例えば受信した印刷データ(原稿データ、版データを含む)は、印刷スケジュールに従って、ワークフロー管理装置800から印刷装置600に送信される。
【0029】
本実施の形態におけるワークフロー管理装置800は、(i) 用紙等が印刷の過程で搬送される経路上に配置され、印刷の不良や異常を検知するセンサ1000からの出力データ、(ii)印刷物が加工の過程で搬送される経路上に配置され、加工の不良や異常を検知するセンサ1000からの出力データ、(iii) 完成品としての印刷物の汚れや不良等の品質を管理するセンサ1000からの出力データ等も管理する。
【0030】
このセンサ1000は、印刷装置600や加工装置700の筐体内に配置されていてもよいし、印刷装置600や加工装置700とは別に配置されていてもよい。また、センサ1000は、作業員が作業に用いる機材に取り付けられていてもよい。
【0031】
また、本実施の形態におけるワークフロー管理装置800は、生産された製品(加工を別工場で行う場合には加工前の印刷物)の納品に使用する配送サービス会社の情報も管理する。配送サービス会社の情報には、配送サービスを提供する事業者の名称、サービスの名称、配送サービスの詳細、出荷日、出荷番号、発注単位の請求額、発注元単位の総請求額、工場外での利用を禁止する情報を指定する情報等も管理する。
【0032】
ワークフロー管理装置800は、これらの情報の管理や機能の提供をコンピュータ上で動作するアプリケーションプログラムを通じて実現される。
【0033】
本実施の形態における在庫管理装置900は、印刷装置600で消費される用紙、インク、トナー、加工装置700で消費されるフィルム等の部材の在庫に関する情報を管理する。なお、在庫に関する情報は、在庫を識別する符号(すなわち在庫ID)、部材の名称、部材のカテゴリ、在庫数、部材を供給する事業者を識別する符号(すなわちサプライヤID)、事業者の名称、事業者が供給する部材のタイプ等を含んでよい。
【0034】
在庫に関する情報は、例えば在庫を識別する符号を部材の消費時に読み取ることにより更新される。また、在庫や在庫の包装に付されているICタグに記録されている情報の読み取りにより更新される。
【0035】
データ収集サーバ500は、印刷装置600、加工装置700、ワークフロー管理装置800、在庫管理装置900、センサ1000と通信し、各装置から印刷に関する各種の情報を収集する。ここでの通信は、有線であっても無線であってもよい。
【0036】
データ収集サーバ500は、例えば印刷装置600から、装置を識別する符号(すなわち装置ID)、装置名、装置のスペック情報、装置のステータス、ステータスの詳細、印刷の種類(タイプ)、印刷の速度、速度の単位、取扱可能な用紙の最大サイズと最小サイズ、色空間と色基準の情報、日次生産能力、受注した印刷オーダ又は印刷ジョブ毎に使用された用紙の種類、受注した印刷オーダ又は印刷ジョブ毎に使用された用紙の量等の情報を収集する。使用された用紙の量等は、例えば印刷装置600等に設けられているセンサ1000から取得されるデータに基づいて自動的に計算される。
【0037】
ここでのステータスは、例えばアイドル状態、故障、使用中、メンテナンス中によって特定される。これらの情報の記述の形式は、印刷装置600の製造メーカによって異なり、同じ製造メーカでも機種によって異なる場合がある。
【0038】
また、データ収集サーバ500は、例えば加工装置700から、装置を識別する符号(すなわち装置ID)、装置名、装置のスペック情報、装置のステータス、ステータスの詳細、加工の種類(タイプ)、加工の速度、速度の単位、日次生産能力等の情報を収集する。
【0039】
ここでのステータスは、印刷装置600の場合と同じである。また、加工の種類には、例えば折り加工、角丸加工、孔開け加工、ミシン加工、スジ入れ加工、表面加工、箔押し加工、パネル加工、型抜き加工等がある。これらの情報の記述の形式は、印刷装置600の製造メーカによって異なり、同じ製造メーカでも機種によって異なる場合がある。
【0040】
また、データ収集サーバ500は、例えばワークフロー管理装置800から、受注情報、印刷スケジュール、加工スケジュール、各スケジュールの進捗情報、各生産装置の稼働状況、各生産装置の稼働率、各生産装置のメンテナンス記録等の情報を取得する。
【0041】
また、データ収集サーバ500は、在庫管理装置900から、生産装置で消費される消耗品の在庫に関する情報を収集する。本実施の形態の場合、消耗品の在庫に関する情報には、製紙会社別に用紙の種類毎の在庫の情報が含まれる。
【0042】
データ収集サーバ500は、各装置やセンサ1000における情報の発生と同時に取得する。すなわち、本実施の形態におけるデータ収集サーバ500は、工場内での生産に伴い発生し、時間とともに変化する情報を自動的に収集する。
【0043】
また、本実施の形態におけるデータ収集サーバ500は、収集した情報を機種の違いを問わない形式の情報に整備(クレンジング)する機能を備え、クレンジング後(整備後)の情報を印刷受発注サーバ300に送信する。ここでの機種の違いには、製造メーカの違いが含まれる。
【0044】
本実施の形態の場合、データ収集サーバ500は、クレンジング後(整備後)の情報を分析した情報もセキュリティが確保された回線を通じて印刷受発注サーバ300に送信する。クレンジング後(整備後)の情報を分析した情報も、機種の違いを問わない形式の情報の一例である。なお、クレンジング後(整備後)の情報を分析した情報には、例えば生産装置の現在時点での稼働空き状況、生産装置の将来時制での稼働空き状況の予測、在庫量の予測等が含まれてもよい。稼働空き状況の計算には、メンテナンスの予定や休日等も反映される。本実施の形態の場合、クレンジング(整備)の機能をデータ収集サーバ500に設けているが、クレンジングは印刷受発注サーバ300側で実行してもよい。この場合、印刷受発注サーバ300は、フィルタ処理後の生データの一部を、セキュリティの確保された経路を通じて受信する。
【0045】
なお、印刷データは、印刷受発注サーバ300からワークフロー管理装置800に直接送信されているが、データ収集サーバ500を経由してワークフロー管理装置800に与えることも可能である。
【0046】
次に、図3を用いて、本実施の形態における主要部である印刷受発注サーバ300の機能構成例について説明する。
【0047】
印刷受発注サーバ300は、データ収集部310と、基本データDB311と、受注処理部312と、前処理部313と、分析部314と、分析結果DB315と、実対処DB317と、実イベントDB316と、第1学習処理部318と、予測部319と、予測結果DB321と、イベント処理部322と、第2学習処理部323と、指示対処DB324と、出力処理部325とを有する。
【0048】
データ収集部310は、データ収集サーバ500から受信したデータを、主に基本データDB311に格納する。但し、本実施の形態では、第1学習処理部318で用いるために、印刷装置600や加工装置700などの装置の調整、不具合、故障、メンテナンス実施といったイベントが発生すると、当該イベントに関するデータを、実イベントDB316にも蓄積する。さらに、第2学習処理部323で用いるために、上記イベントに対して実際に行った対処に関するデータを、実対処DB317に蓄積する。
【0049】
イベントに関するデータは、例えば、当該イベントが発生した際に処理していた印刷依頼又は印刷ジョブの識別子と、当該イベントの識別子、当該イベントの内容、イベント発生時刻、当該イベントが発生した装置の識別子などが含まれる。イベントに対して実際に行った対処に関するデータは、例えば、当該イベントが発生した際に処理していた印刷依頼又は印刷ジョブの識別子と、当該イベントの識別子、対処を行った時刻、当該対処を行った装置の識別子などが含まれる。
【0050】
基本データDB311には、依頼者DB、依頼DB、工場DB等を含む。依頼者DBには、依頼者に関する情報が蓄積されている。依頼者に関する情報は、例えば依頼者の識別子(すなわち顧客ID)、依頼者の名称、依頼者の居住地又は所在地、依頼者側の担当者に関する情報、依頼者の連絡先、依頼者の業種、顧客別に用意されたサービス上の管理番号、請求先の情報等が含まれる。
【0051】
依頼DBには、印刷依頼に関するデータが蓄積される。印刷依頼に関するデータは、例えば受注ID、依頼時に指定された条件、印刷データに関する情報、請求ID、請求に関する情報、受注した印刷の進捗状況等が含まれる。
【0052】
なお、依頼時に指定された条件には、例えば希望の納期、希望の印刷事業者、希望の工場、印刷を実行する国又は地域、希望のアプリケーション、希望の金額、希望の配送方法、希望の用紙の種類、用紙の重量、希望の色プロファイル、希望の生産数量、仕上がりサイズ、片面又は両面印刷の指定、加工のタイプ、文書レイアウトのセクションの指定、製品の形態、単商品又は複数商品等を含む。ここでのアプリケーションは、例えばダイレクトメール、本等の印刷物の種別の指定に用いられる。
【0053】
なお、製品の形態には、例えば書籍、ポストカード、ちらし、名刺、チケット、カタログ、伝票、封筒、シール、ラベル、袋、箱(パッケージ)等がある。
【0054】
印刷データに関する情報には、印刷データが含まれる。印刷データは、例えばPDF(Portable Document Format)ファイルとして顧客から提供される。
【0055】
工場DBには、データ収集サーバ500からアップロードされる新たな情報が自動的に蓄積され更新される。工場DBには、データ収集サーバ500からアップロードされた情報に基づいて印刷受発注サーバ300が算出する情報も記録される。
【0056】
データ収集サーバ500からアップロードされた情報に基づいて導出される情報には、例えば各工場の品質を評価した情報、各工場の過去の状態や現在の状況、過去の実績から計算される生産能力、予測されるスケジュール等が含まれる。なお、本実施の形態では、各工場内の装置毎に、生産スケジュールが特定できるものとする。
【0057】
また、工場DBには、工場400の所在地、営業日等の登録情報も記録される。ここでの登録情報は時間の経過に伴って変化しない、いわゆる静的な情報である。
【0058】
また、工場DBには、印刷の依頼者であるユーザによる工場400の評価、インターネット等を通じて受け付けた印刷をサービスに参加する工場400に発注する事業者による工場400の評価、過去の納期での遅延に関する記録、過去の納品に対して確認された品質の不良に関する記録等も記録される。
【0059】
工場DBには、さらに、印刷オーダや印刷ジョブで使用された用紙に関する情報も蓄積される。
【0060】
さらに、工場DBには、各工場において勤務する作業員の勤務スケジュールのデータをも蓄積する場合がある。この場合、各作業員の技能レベルのデータも蓄積される。さらに、勤務スケジュールのデータには、どの作業員がどの装置に割り付けられているかについてのデータを含む場合もある。
【0061】
受注処理部312は、ユーザ端末200から顧客の印刷依頼を受け付け、依頼時に指定された条件(すなわち発注条件)と、工場DBに蓄積されている工場に関する情報とに基づき、当該印刷依頼に対して、当該印刷依頼を処理すべき特定の工場及び当該特定の工場に設置されている特定の装置を割り当てる処理を実行する。受注処理部312は、印刷依頼に関するデータを依頼DBに格納すると共に、当該印刷依頼の発注先の工場に対応付けて、発注された印刷依頼に関するデータを工場DBに格納する。
【0062】
受注処理部312が印刷依頼に対してどのように工場及び装置を割り当てるのかについては、本実施の形態の主要部でないので詳細な説明は省略するが、依頼時に指定された条件を満たすことができる工場及び装置を特定し、工場及び装置の複数の組み合わせが候補として特定されれば、評価が高い工場が優先されるものとする。なお、納期の要件があるので、生産スケジュールについては当然加味され、今回の印刷依頼を処理すべき時間帯、すなわち処理予定時間帯も受注処理部312にて特定されるものとする。
【0063】
前処理部313は、印刷依頼に含まれる印刷データの例えばプリフライトチェックなどを実行する。プリフライトチェックでは、色、フォント、透明の使用、画像の解像度、インキ総量、ファイルバージョンの互換性などの問題について確認する。また、プリフライトチェックで抽出されたデータを用いて、受注処理部312は、印刷データを処理すべき印刷装置600の機種を選択することもある。
【0064】
分析部314は、印刷依頼に関するデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係るデータを抽出する。所定の項目については、依頼時に指定された条件に含まれる項目、印刷データに含まれる項目などが含まれる。印刷データに含まれる項目には、前処理部313が印刷データから抽出する項目も含まれる。
【0065】
所定の項目には、例えば以下のようなデータが含まれる。
・印刷データのファイル形式(バージョン、元データの編集ソフトウエア及びOS(Operating System)を含む場合もある)
・カラーとモノクロの別
・ページの向き及び大きさ
・オブジェクト及びそのメタデータ(オブジェクトがテキストであれば使用フォント、テキストに関するデータ(縦組と横組の別など)等、画像であればページ内画像数及びサイズ、解像度等)
・インキ総量
・使用する紙の種別及び数量
このようなデータと工場及び装置との組み合わせにより、用紙と装置との相性(発色、定着など)の問題についても、予測できるようになる。
【0066】
上で示した所定の項目については、印刷装置600で発生し得るイベントに関係する項目が主であるが、加工装置700で発生し得るイベントに関係する項目を含めるようにしても良い。例えば、加工のタイプ、製品の形態といった項目を含めるようにしても良い。また、印刷装置600で発生し得るイベントと加工装置700で発生し得るイベントを区別して、別途予測部319で処理する場合もある。
【0067】
分析結果DB315には、分析部314が抽出したデータ(即ち分析結果)を蓄積する。この際に、分析結果DB315では、各工場の装置毎に、印刷依頼を処理する順番が分かるように抽出データを保持するものとする。
【0068】
予測部319は、今回の印刷依頼に係る抽出データ(第1のデータに対応)と、今回の印刷依頼の割当先の工場及び装置において今回の印刷依頼より前に処理することになっている印刷依頼(先行印刷依頼)についての抽出データ(第2のデータに対応)とから、今回の印刷依頼を割当先の工場及び装置で処理する間に発生し得るイベントを予測する。
【0069】
イベントは、装置の保守会社で対処すべき故障、不具合、メンテナンス等と、工場内の作業員が対処すべき調整、不具合、メンテナンスを含む。例えば、前者については、サプライ品(トナー、ベルト、転写搬送装置等)の交換、汚れ発生などをも含む。後者については、保守会社で対処すべきイベント以外のセルフメンテナンス事項その他を含む。複数のイベントの発生が予測される場合もある。
【0070】
予測部319は、例えば、教師有りの機械学習にて学習された学習済みモデルを含む。どの程度先行する抽出データまで用いるかについては、実験などによって調整するが、少なくとも直前の印刷依頼についての抽出データについては用いる。また、全てのイベントについて発生確率を出力するようにして、当該発生確率が所定の閾値以上となるイベントを、発生するイベントとして選択するようにしても良い。
【0071】
但し、予測部319については、機械学習にて学習された学習済みモデルではなく、これまでに得られた知見を分析して得られる特定のロジックやルールに基づき予測を行うようなものであってもよい。
【0072】
予測部319は、予測したイベントのデータを、印刷依頼の割当先の工場及び装置と印刷依頼に関するデータとに対応付けて予測結果DB321に格納する。
【0073】
第1学習処理部318は、予測部319に係る学習済みモデルを生成する学習処理を行う。第1学習処理部318は、データ収集部310が収集し且つ実イベントDB316に蓄積されている、過去の印刷依頼の処理中に発生したイベントに関するデータと、分析結果DB315に蓄積されている、過去の印刷依頼についての抽出データと、予測結果DB321に蓄積されている、過去の印刷依頼について発生すると予測したイベントに関するデータとを学習して、特定の工場及び特定の装置についての抽出データの時系列データから、発生するイベントを推論する学習済みモデルを生成する。
【0074】
イベント処理部322は、今回予測されたイベントに対する対処法を特定すると共に、当該対処法を実施する者を特定するためのデータを特定する。例えば、予測されたイベントが、工場内の作業員が対処すべきイベントであれば、当該トラブルに対する対処法を特定し、当該トラブルに対する対処法を行うことができる技能レベル(本実施の形態ではレベル及びランクで特定)を特定する。一方、予測されたイベントが、保守会社で対処すべきイベントであれば、当該イベントの対処法を特定する。
【0075】
イベント処理部322は、予測されたイベントと特定された対処法とを、印刷依頼の識別子に対応付けて指示対処DB324に格納する。
【0076】
イベント処理部322は、例えば、教師有りの機械学習にて学習された学習済みモデルを含む。なお、全ての対処法について発生確率を出力するようにして、当該発生確率が所定の閾値以上となる対処法を、発生し得る対処法として選択するようにしても良い。
【0077】
但し、イベント処理部322については、機械学習にて学習された学習済みモデルではなく、これまでに得られた知見を分析して得られる特定のロジックやルール、イベントと対処法の対応表などに基づき、イベントに対する対処法を特定するようにしてもよい。
【0078】
第2学習処理部323は、データ収集部310が収集し且つ実イベントDB316に格納されている、実際に発生したイベントのデータと、実対処DB317に格納されている、実際に発生したイベントに対して実際に実施された対処法と、指示対処DB324に格納されている、予測されたイベントに対して特定された対処法とを学習して、特定の工場及び特定の装置についてのイベントから対処法を推論する学習済みモデルを生成する。
【0079】
さらに、イベント処理部322は、例えば、工場内の作業員のレベル及びランクに対応付けて、当該レベル及びランクに属する作業員が実施することができる対処法(作業種別)を登録したテーブルを保持している。本テーブルの一例を図4に示す。例えば、所定の認定試験の結果に基づくレベル1乃至3が設定されると共に、当該各レベルにおける実働時間の区分けによって3つのランクに分けられる。レベル数及びランク数は一例に過ぎず、様々な区分けが可能である。レベル及びランクの各組み合わせに対して、当該レベル及びランクに属する作業員が実施できる作業種別が列挙される。このようなテーブルが、装置の種別毎に設定されるものとする。なお、実働時間は一例であって、他の観点によってランクが設定されるようにしてもよい。また、図4のようなテーブルでは、ある作業種別に着目すると、対応付けられているレベル及びランクは、当該作業種別を実施できる最低レベル及びランクとなり、より上位のレベル及びランクであれば、当該作業種別を実施できるものとする。また、図4のようなテーブルは一例であって、イベントの種別と作業種別とが一対一となる場合には、イベントの種別をも対応付けられている場合もある。
【0080】
なお、作業種別には、IAポンプの取り外し取り付け、インキポンプモータの交換とカップリング高さ調整、ギアポンプ(SAS)の交換と清掃、TICボードの交換、コンプレッサーエア圧の調整、CSベルト・モータ交換、CSキャッチトレーの着脱と清掃、CSポンプの交換、CSイメージングオイル流量補正、イメージングオイルポンプの交換とインペラー交換、EBVサクションブロアーの交換、ITMランプの交換、メインモータの取外しと取付け、メインモータギアの清掃とグリス注油、BIDエンゲージモータの取外しと取付け、BIDモータ及びカップリングの取外しと取付け、BID認識センサの交換、BDU交換、フィーダーヘッドユニットの引出しベルト清掃、フィーダーヘッドユニットの取外し取付け、シートセパレータの高さ調整、VSPユニットの取外し取付け・モータとベルト交換、AMTEKブロアーの交換、バキュームバルブとセンサ交換、スレーブボードの交換、電源ユニットの交換、ブリッジバキュームボックス交換及びベルト交換、PSTBユニット(IRセンサ)の取り外し取り付け、IFRユニットの取り外し取り付け、Exitコンベアユニットの取り外し取り付け・ベルト交換、Exitコンベアエクステンション(ILS)ユニット取り外し取り付け・ベルト交換、スタッカー搬送ベルト交換、スタッカーバキュームボックス交換及びベルト交換、用紙搬送システムキャリブレーション、2次圧補正ウィザード、シンプレックスバックルゆがみ調整、デュープレックスバックルゆがみ調整、サクションカップマージン、イメージプレイスメント、デュープレックスコンベアギャップ調整、PaperLUT、表裏見当ウィザード、IAポンプ、ギアポンプ、CSモータ等の動作確認、注油ウィザードの実行、トルクと波長ウィザードの実行、各ブロアーの動作確認、GDUへの注油、ITMスリップリングの清掃、PIP・ITMカーボンブラシの交換、バキュームポンプ羽根交換などがある。
【0081】
このようなテーブルを用いて、イベント処理部322は、工場内の作業員が対処すべきイベントがあれば、当該イベントに対する対処法を実施できる作業員のレベル及びランクを特定する。
【0082】
出力処理部325は、印刷依頼の発注先の工場400における例えばワークフロー管理装置800やデータ収集サーバ500に対して、印刷依頼に関するデータと共に、発生すると予測されたイベントに関するデータと、工場内の作業員が対処すべきイベントがあれば当該イベントに対する対処法に関するデータ、さらに、当該対処法を実施できる作業員のレベル及びランクについてのデータを送信する。
【0083】
さらに、出力処理部325は、保守会社で対処すべきイベントがあれば、当該イベントに関するデータと、対処法に関するデータと、当該イベントの発生が予測された抽出データ(場合によっては、より先行する印刷依頼についての抽出データ)と、印刷依頼の発注先の工場及び装置についてのデータと、印刷依頼の処理予定時間帯についてのデータ等を、保守会社サーバ350に送信する。
【0084】
次に、図5及び図6を用いて、印刷受発注サーバ300の本実施の形態に係る処理内容を説明する。
【0085】
まず、受注処理部312は、ユーザ端末200から印刷依頼を受け付けると、当該印刷依頼を処理する工場及び装置(発注先の工場及び装置)を特定し、印刷依頼に関するデータ及び発注先の工場及び装置に関するデータを基本データDB311に格納する(図5:ステップS1)。このステップにおいては、前処理部313が印刷データに対して例えばプリフライトチェックを行った結果などを用いる場合もある。また、上で述べたように、例えば、依頼時に指定された条件を満たす工場及び装置を、工場に対する評価などから優先度を付与して、最も優先度が高い工場及び装置を特定する。なお、製品の納品先の地理的な条件を加味した上で優先度付けをする場合もある。また、発注先の工場及び装置に加えて、処理予定時間帯も特定される。
【0086】
次に、分析部314は、印刷依頼に関するデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係るデータ(第1のデータ)を抽出し、分析結果DB315において、印刷依頼に関するデータと共に発注先の工場及び装置に対応付けて格納する(ステップS3)。所定の項目については、上で述べたような項目である。また、上で述べたように、前処理部313により抽出されたデータを含む場合もある。
【0087】
そして、予測部319は、分析結果DB315に格納されている、今回の印刷依頼についての抽出データ(第1のデータ)と、今回の印刷依頼を処理する発注先の工場及び装置で先行して処理される予定の印刷依頼についての抽出データ(第2のデータ)とを用いて、今回の印刷依頼を処理する間に発生し得る1又は複数のイベントを予測し、予測結果DB321に、印刷依頼の識別子を含む、印刷依頼に関するデータに対応付けて格納する(ステップS5)。
【0088】
このように今回の印刷依頼より先行する印刷依頼に係る抽出データを用いるのは、先行する印刷依頼を処理することで発注先の工場及び装置にその影響が残るためである。すなわち、先行する印刷依頼によっては、今回の印刷依頼を処理する間に特定のイベントが発生しやすかったり発生しにくかったりするためである。
【0089】
さらに、イベント処理部322は、予測された1又は複数のイベントの各々について、当該イベントの対処法を特定し、イベントに関するデータと印刷依頼の識別子とに対応付けて指示対処DB324に格納する(ステップS7)。なお、対処法(すなわちイベントに対する作業種別)については、保守会社が実施すべき対処法と、工場内の作業員が実施すべき対処法とがあり、保守会社が実施すべき対処法についてもリスト化されている場合もある。なお、イベントの種別から、保守会社が対処すべきイベントと工場内の作業員が対処すべきイベントとを区別して、イベントに対する対処法を、イベントの区別に基づき区別するようにしても良い。
【0090】
そして、イベント処理部322は、特定された対処法に、保守会社が実施すべき対処法が含まれているか否かを判断する(ステップS9)。特定された全ての対処法を工場内の作業員が実施する場合には、処理は端子Aを介して図6の処理に移行する。一方、特定された対処法に、保守会社が実施すべき対処法が含まれている場合には、イベント処理部322は、出力処理部325に、イベントに関するデータと、対処法に関するデータと、イベントの発生が予測された抽出データ(第1のデータ。場合によっては第2のデータを含む。)と、印刷依頼の発注先の工場及び装置についてのデータと、印刷依頼の処理予定についてのデータ等を、保守会社サーバ350に送信するように指示し、出力処理部325は指示に応じてデータを保守会社サーバ350に送信する(ステップS11)。そして処理は端子Aを介して図6の処理に移行する。
【0091】
図6の処理の説明に移行して、イベント処理部322は、特定された対処法に、工場内の作業員が実施すべき対処法が含まれているか否かを判断する(ステップS13)。特定された対処法が全て保守会社が実施すべきものであれば、処理はステップS17に移行する。
【0092】
一方、工場内の作業員が実施すべき対処法が含まれている場合には、イベント処理部322は、例えば図4のようなテーブルを用いて、特定された対処法(作業種別)を実施できる作業員の技能レベル(例えばレベル及びランク)を特定する(ステップS15)。対処法(作業種別)毎にレベル及びランクを特定するようにしても良いし、特定された対処法のうち最も高いレベル及びランクを要する技能レベルを特定するようにしても良い。
【0093】
そして、出力処理部325は、印刷依頼の発注先の工場400における例えばワークフロー管理装置800やデータ収集サーバ500に対して、印刷依頼に関するデータと共に、発生すると予測されたイベントに関するデータと、工場内の作業員が対処すべきイベントがあれば当該イベントに対する対処法に関するデータ、さらに、当該対処法を実施できる作業員の技能レベルについてのデータを送信する(ステップS17)。
【0094】
このような処理を実行することで、発注先の工場では、今回の印刷依頼を処理する間に、指定された技能レベルを有する作業員を、今回の印刷依頼に従事させることで、安定的な印刷依頼の処理を行うことができるようになる。
【0095】
逆に、印刷受発注サーバ300を運用する窓口事業者及び顧客側からすると、各工場400には、印刷受発注サーバ300から指定された技能レベルを有する作業員を、今回の印刷依頼に従事させるように義務付けることで、安定的な印刷依頼の処理が確保されるようになる。
【0096】
また、装置を監視することで予測される故障などよりも早期に各種イベントの発生が予測されるので、工場400側も前もってイベントの発生に備えることができるようになる。また、保守会社サーバ350にも、イベント及び対処法についてのデータについてのデータを送信しているので、保守会社でも予めイベントの発生に備えることができるようになる。さらに、抽出データ(但し、その一部であってもよい)も通知するようになっているので、保守会社サーバ350でも、メンテナンス事象や故障の分析や対応改善などに役立てることができるようになる。
【0097】
また、予測されたイベントと実際に発生したイベントとに差異がある場合には、第1学習処理部318によって学習済みモデルが更新されて、より精度良く発生し得るイベントが予測(すなわち推論)されるようになる。同様に、予測されたイベントに対する対処法と、実際に発生したイベントに対する対処法とに差異がある場合には、第2学習処理部323によって学習済みモデルが更新されて、より精度良くイベントに対する対処法を特定できるようになる。
【0098】
[実施の形態2]
第1の実施の形態では、工場400に、各印刷依頼に対して特定の技能レベルを有する作業員を確保することを義務付けるもので、作業員の実際の配置については、各工場400に任せる形になる。
【0099】
一方、印刷受発注サーバ300側で、各工場400に属する作業員の技能レベル及び勤務スケジュールのデータを例えば工場DBに蓄積していれば、発生し得るイベントに対処可能な作業員がいる工場に印刷依頼を発注することで、より確実な印刷依頼の処理が確保されることとなる。
【0100】
以下、このような場合における処理について、図7及び図8を用いて説明する。なお、印刷受発注サーバ300の構成は第1の実施の形態とほぼ同じであるが、機能が異なる構成要素もあるので、処理フローを説明する中で説明する。
【0101】
まず、受注処理部312は、ユーザ端末200から印刷依頼を受け付けると、当該印刷依頼を処理可能な候補の工場及び装置を特定する(図7:ステップS31)。例えば、依頼時に指定された条件を満たす工場及び装置を特定し、工場に対する評価などから優先度を付与しておく。製品の納品先の地理的な条件を加味した上で優先度付けをする場合もある。この段階では、作業員の技能レベル及び勤務スケジュールについては考慮せずに、他の要件から工場及び装置を抽出するが、各候補の工場及び装置について処理予定時間帯は特定しておく。
【0102】
次に、分析部314は、印刷依頼に関するデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係るデータ(第1のデータ)を抽出する(ステップS33)。分析部314は、予測部319が各候補の工場及び装置についてイベント発生の予測を行うように、今回の印刷依頼についての抽出データ(第1のデータ)などを予測部319に出力する。
【0103】
予測部319は、候補のカウンタiを1に初期化して(ステップS35)、i番目の候補の工場及び装置について、今回の印刷依頼についての抽出データ(第1のデータ)と、先行して処理される予定の印刷依頼についての抽出データ(第2のデータ)とを用いて、今回の印刷依頼を処理する間に発生し得る1又は複数のイベントを予測する(ステップS37)。分析部314は、イベント処理部322に対して、予測したイベントに関するデータを出力して、i番目の候補の工場及び装置について今回の印刷依頼を発注した場合に発生し得るイベントについて処理を依頼する。
【0104】
イベント処理部322は、i番目の候補の工場及び装置について今回の印刷依頼を発注した場合に発生し得ると予測された1又は複数のイベントの各々について、当該イベントの対処法を特定する(ステップS39)。第1の実施の形態と同様に、保守会社が対処すべきイベントと工場内の作業員が対処すべきイベントとが含まれ得るので、各々対処法(作業種別)が特定される。
【0105】
そして、イベント処理部322は、特定された対処法に、工場内の作業員が実施すべき対処法が含まれているか否かを判断する(ステップS41)。工場内の作業員が実施すべき対処法が含まれていない場合には、処理は端子Bを介して図8の処理に移行する。一方、工場内の作業員が実施すべき対処法が含まれている場合には、イベント処理部322は、例えば図4のようなテーブルを用いて、特定された対処法(作業種別)を実施できる作業員の技能レベル(例えばレベル及びランク)を特定する(ステップS43)。特定された対処法(作業種別)の各々について当該対処法(作業種別)を実施できる作業員のレベル及びランクを特定するようにしても良いし、特定された対処法のうち最も高いレベル及びランクを要する対処法についての技能レベルを特定するようにしても良い。イベント処理部322は、今回の印刷依頼をi番目の候補の工場及び装置で処理する場合に要する作業員の技能レベルについてのデータを、受注処理部312に出力する。
【0106】
受注処理部312は、i番目の候補の工場における勤務スケジュールのデータ及び作業員の技能レベルのデータに基づき、特定された技能レベルを有する作業員が、今回の印刷依頼に従事可能であるか否かを判断する(ステップS45)。i番目の候補の工場及び装置に発注した場合における処理予定時間帯も特定されているので、当該処理予定時間帯に、特定された技能レベルを有する作業員が勤務予定であるか否かを判断する。なお、勤務スケジュールのデータに各作業員が担当する装置や印刷依頼についてのデータが含まれている場合には、今回の印刷依頼の処理に従事可能であるかをさらに判断しても良い。すなわち、他の印刷依頼の処理に割り付けられていている場合には、今回の印刷依頼の処理に従事可能ではないと判断される場合もある。
【0107】
特定された技能レベルを有する作業員が、今回の印刷依頼の処理に従事可能であると判断された場合には、受注処理部312は、i番目の候補の工場及び装置についての優先度を維持する(ステップS47)。これまでの評価どおりに今回の印刷依頼を処理できると推定されるためである。但し、優先度を上げるような処理を行っても良い。そして処理はステップS51に移行する。
【0108】
一方、特定された技能レベルを有する作業員が、今回の印刷依頼の処理に従事不能であると判断された場合には、受注処理部312は、i番目の候補の工場及び装置についての優先度を下げる(ステップS49)。これまでの評価どおりに今回の印刷依頼を処理できない可能性があるので、優先度を下げるようにする。但し、ステップS47で優先度を上げる場合には、ステップS49においては優先度を維持するようにする場合もあるが、相対的な優先順位が下がるようにする。なお、発注先に選択されないように候補から除外するようにしても良い。そして処理はステップS51に移行する。
【0109】
予測部319は、全ての候補について処理したか否かを判断し(ステップS51)、処理を行っていない候補が存在する場合には、カウンタiの値を1インクリメントして、端子Cを介して図7のステップS37に戻る。一方、全ての候補について処理した場合には、受注処理部312は、優先度が最も高い候補の工場及び装置を、今回の印刷依頼に対する発注先に決定する(ステップS55)。発注先に決定した工場及び装置について、印刷依頼に関するデータ、抽出データ(第1のデータ)、予測されたイベントに関するデータ、対処法についてのデータなどを各DBに登録するように、受注処理部312は、分析部314、予測部319及びイベント処理部322に対して指示する。また、受注処理部312は、発注先に決定した工場及び装置について、印刷依頼に関するデータを、基本データDB311に登録する。
【0110】
そして、出力処理部325は、印刷依頼の発注先の工場400における例えばワークフロー管理装置800やデータ収集サーバ500に対して、印刷依頼に関するデータと共に、発生すると予測されたイベントに関するデータと、工場内の作業員が対処すべきイベントがあれば当該イベントに対する対処法に関するデータを送信する(ステップS57)。なお、発生し得るイベントに対する対処法を実施できる作業員の技能レベルについてのデータを送信するようにしても良いし、具体的に従事すべき作業員についてのデータを送信するようにしても良い。
【0111】
さらに、出力処理部325は、発注先として決定された工場及び装置において今回の印刷依頼を処理する間に発生し得るイベントに対して特定された対処法に、保守会社が実施すべき対処法が含まれているか否かを判断する(ステップS59)。特定された全ての対処法を工場内の作業員が実施する場合には、今回の印刷依頼についての処理は終了する。一方、特定された対処法に、保守会社が実施すべき対処法が含まれている場合には、イベント処理部322は、出力処理部325に、イベントに関するデータと、対処法に関するデータと、イベントの発生が予測された抽出データ(第1のデータ。場合によっては第2のデータを含む。)と、印刷依頼の発注先の工場及び装置についてのデータと、印刷依頼の処理予定についてのデータ等を、保守会社サーバ350に対して送信するように指示し、出力処理部325は指示に応じてデータを保守会社サーバ350に送信する(ステップS61)。そして処理を終了する。
【0112】
このような処理を実行することで、印刷依頼を処理する間に発生し得るイベントに確実に対処できる体制が整っている工場に対して発注がなされるようになる。
【0113】
[その他の実施の形態]
上で述べた実施の形態では、説明を簡略化するために、今回の印刷依頼の処理予定時間帯はこれまでに発注された印刷依頼の後に設定されることを想定していた。しかしながら、生産スケジュールにおいて第1の印刷依頼の処理と第2の印刷依頼の処理の間に空き時間帯が存在する場合、その空き時間帯に第3の印刷依頼の処理を行う場合もある。このような場合には、第3の印刷依頼を空き時間帯にスケジュールすると、第2の印刷依頼については先行する印刷依頼として第3の印刷依頼が追加されることになるので、第2の印刷依頼(及びそれ以降の印刷依頼)については、発生し得るイベントが変化する場合があり、そうすると当該イベントに対処可能な作業員の技能レベルも変化する可能性がある。
【0114】
よって、第3の印刷依頼が追加される場合には、少なくとも第2の印刷依頼については発生し得るイベントが変化するか確認して、既に割り当てている作業員で対処可能であるか否かを判断することが好ましい。
【0115】
このような確認をした後に、今回の印刷依頼について発生し得るイベントを予測する処理以降の処理を行って、イベントを対処可能な作業員が従事不可能であれば、優先度を下げるようにする。
【0116】
また、第2の実施の形態では一旦特定した処理予定時間帯を変更することは想定していなかったが、例えば発生し得るイベントに対処可能な作業員が確保できないと判断された場合には、処理予定時間帯を例えば納期を満たす限りにおいて変更するような処理を行うようにしても良い。但し、このような場合、これまで発注した印刷依頼に上で述べたような影響が及ぶ可能性があるので、今回の印刷依頼より後に処理することになっている印刷依頼については、上で述べたように、少なくとも第2の印刷依頼については発生し得るイベントが変化するか確認して、既に割り当てている作業員で対処可能であるか否かを判断することが好ましい。
【0117】
さらに、印刷依頼の依頼時に指定された条件で特定の工場が指定されている場合などにおいて、空き時間帯を処理予定時間帯として選択すると、発生し得るイベントに対処可能な作業員が確保できない場合も生ずる。このような場合には、印刷依頼の処理順番を入れ替えることも想定される。このような場合にも、今回の印刷依頼の処理順番より前に処理される印刷依頼については影響はないが、今回の印刷依頼の処理順番より後に処理されることになる印刷依頼については、上で述べたのと同様に影響を受ける可能性があるので、発生し得るイベントが変化するか確認して、既に割り当てている作業員で対処可能であるか否かを判断することが好ましい。
【0118】
印刷依頼の依頼時に指定された条件で特定の工場が指定されている場合などにおいて、最も好ましい特定の装置で空き時間帯を処理予定時間帯として選択すると、発生し得るイベントに対処可能な作業員が確保できない場合も生ずる。この場合、次に好ましい装置の空き時間帯を処理予定時間帯として選択しても良いが、他の印刷依頼への影響を考慮することは同様である。但し、装置によって発生し得るイベントが異なる場合もあるので、他の印刷依頼に影響がない場合もある。
【0119】
さらに、印刷依頼について発生すると予測されたイベントの数が多数になる又は好ましくないと予め決められた組み合わせのイベント群が発生すると予測された場合等には、当該工場及び装置への発注を行わないようにする場合もある。
【0120】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明は実施の形態に限定されない。例えば、処理フローについては、処理結果が変わらない限り、ステップの順番を入れ替えたり、複数ステップを並列に実行するようにしても良い。
【0121】
印刷受発注サーバ300の機能ブロック構成は、プログラムモジュールと対応しない場合もある。データベース構成についても、一例に過ぎず異なる構成で同様のデータを保持する場合もある。
【0122】
さらに、第1の実施の形態では、イベントに対する対処法を印刷受発注サーバ300側で特定するような例を示しているが、イベントに対する対処法及び当該対処法を実施できる作業員の技能レベルを、工場400内のコンピュータにて特定するような変形例も可能である。
【0123】
さらに、印刷受発注サーバ300は、1台のコンピュータではなく、複数のコンピュータによって実現される場合やクラウド上に実現される場合もある。
【0124】
なお、上で述べた印刷受発注サーバ300は、コンピュータ装置であって、図9に示すように、メモリ2501とCPU(Central Processing Unit)2503とハードディスク・ドライブ(HDD:Hard Disk Drive)2505と表示装置2509に接続される表示制御部2507とリムーバブル・ディスク2511用のドライブ装置2513と入力装置2515とネットワークに接続するための通信制御部2517とがバス2519で接続されている。オペレーティング・システム(OS:Operating System)及び本実施例における処理を実施するためのアプリケーション・プログラムは、HDD2505に格納されており、CPU2503により実行される際にはHDD2505からメモリ2501に読み出される。CPU2503は、アプリケーション・プログラムの処理内容に応じて表示制御部2507、通信制御部2517、ドライブ装置2513を制御して、所定の動作を行わせる。また、処理途中のデータについては、主としてメモリ2501に格納されるが、HDD2505に格納されるようにしてもよい。本技術の実施例では、上で述べた処理を実施するためのアプリケーション・プログラムはコンピュータ読み取り可能なリムーバブル・ディスク2511に格納されて頒布され、ドライブ装置2513からHDD2505にインストールされる。インターネットなどのネットワーク及び通信制御部2517を経由して、HDD2505にインストールされる場合もある。このようなコンピュータ装置は、上で述べたCPU2503、メモリ2501などのハードウエアとOS及びアプリケーション・プログラムなどのプログラムとが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
【0125】
以上述べた本実施の形態をまとめると、以下のようになる。
【0126】
本実施の形態に係る情報処理方法は、(A)第1の印刷依頼に含まれるデータから、印刷依頼を処理する場合に発生し得るイベントに関係する所定の項目に係る第1のデータを抽出するステップと、(B)第1のデータと、第1の印刷依頼より前に特定の工場における特定の装置にて処理される第2の印刷依頼に含まれるデータから抽出され且つ上記所定の項目に係る第2のデータとから、第1の印刷依頼を処理する場合に特定の工場における特定の装置について発生し得るイベントの予測を行うステップとを含む。
【0127】
このように印刷依頼から特定の工場における特定の装置について発生し得るイベントが予測できれば、印刷依頼を発注する前から当該印刷依頼を処理する場合に生じ得る事象を把握でき、それに対して備えることができる。例えば工場において適切な作業員を確保するようにしても良いし、事象によっては発注しないといった方策も採ることができるようになる。
【0128】
なお、上記情報処理方法は、予測されたイベントに対処できる又は予測されたイベントに対する対処法を実行することができる、作業員の技能レベルを特定するステップをさらに含むようにしても良い。予測されたイベントに対処できる作業員の技能レベルが特定できれば、予測されたイベントに人的に事前に備えることができるようになる。
【0129】
さらに、上記情報処理方法は、特定された作業員の技能レベルを有する作業員が、第1の印刷依頼を処理する間に第1の印刷依頼の処理に従事可能であるか否かを、特定の工場についての勤務スケジュールデータに基づき判断するステップと、特定された作業員の技能レベルを有する作業員が、第1の印刷依頼を処理する間に第1の印刷依頼の処理に従事不可能である場合には、特定の工場について、第1の印刷依頼の発注先としての優先順位を相対的に下げるように設定するステップとさらに含むようにしても良い。イベントに適切に対処できない可能性のある工場及び装置については、優先順位を相対的に下げて発注されないようにすることで、印刷依頼を確実に処理できる工場及び装置に発注できるようにする。
【0130】
さらに、上記情報処理方法は、予測されたイベント又は予測されたイベントに対する対処法が、特定の印刷装置の保守会社が対処するイベント又は当該保守会社が実行する対処法である場合には、保守会社宛に通知を送信するステップをさらに含むようにしても良い。保守会社でもイベントの発生に、装置における予兆よりも早期に備えることができるようになる。
【0131】
また、上で述べた保守会社宛の通知が、第1のデータ及び第2のデータの少なくとも一部を含むようにしても良い。これによって、保守会社においてイベントについての分析を行うことができるようになる。
【0132】
また、上記情報処理方法は、予測されたイベント又は予測されたイベントに対する対処法が、特定の装置が設置された特定の工場の作業員が対処するイベント又は当該特定の工場の作業員が実行する対処法である場合には、特定された作業員の技能レベルを有する作業員を第1の印刷依頼に割り当てるように要求する出力を、特定の工場のコンピュータに対して出力するステップをさらに含むようにしても良い。特定の工場に、十分な技能レベルを有する作業員の配置を義務づけることで、印刷依頼の安定的な処理が期待される。
【0133】
なお、上記出力が、予測されたイベントの内容と当該イベントに対する対処法の内容とのうち少なくともいずれかを含むようにしても良い。これによって、工場側も事前に十分な備えを行うことができるようになる。
【0134】
さらに、上記情報処理方法は、特定された作業員の技能レベルを有する作業員が、第1の印刷依頼を処理する間に第1の印刷依頼の処理に従事可能であるか否かを、特定の工場についての勤務スケジュールデータに基づき判断するステップと、特定された作業員の技能レベルを有する作業員が、第1の印刷依頼を処理する間に第1の印刷依頼の処理に従事不可能である場合には、第1の印刷依頼の処理順番を入れ替えること又は特定の工場における他の装置において第1の印刷依頼を処理することが可能か否かを判断するステップと、第1の印刷依頼の処理順番を入れ替えること又は特定の工場における他の装置において第1の印刷依頼を処理することが不可能である場合には、特定の工場について、第1の印刷依頼の発注先としての優先度順位を相対的に下げるステップとをさらに含むようにしても良い。
【0135】
なお、上で述べたような処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを作成することができ、当該プログラムは、例えばフレキシブル・ディスク、CD-ROMなどの光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ(例えばROM)、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体又は記憶装置に格納される。なお、処理途中のデータについては、RAM等の記憶装置に一時保管される。
【符号の説明】
【0136】
310 データ収集部 311 基本データDB 312 受注処理部
313 前処理部 314 分析部 315 分析結果DB
316 実イベントDB 317 実対処DB
318 第1学習処理部 319 予測部 321 予測結果DB
322 イベント処理部 323 第2学習処理部
324 指示対処DB 325 出力処理部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9