(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】抗FAM19A5抗体の用途
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241112BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241112BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20241112BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K48/00
A61P27/02
C07K16/18
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2022212795
(22)【出願日】2022-12-29
(62)【分割の表示】P 2020564578の分割
【原出願日】2019-10-15
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518156428
【氏名又は名称】ニューラクル サイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン シク
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スン-グ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/083538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 27/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象の網膜において基準(FAM19A5拮抗剤投与前の対象又はFAM19A5拮抗剤を非投与した対象の該当値)に比べてB波網膜電位を改善させるための薬学的組成物であって、
配列類似性19を持つファミリー、メンバーA5(“FAM19A5”)タンパク質に対するFAM19A5拮抗剤を含み、
前記FAM19A5拮抗剤は、前記FAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合部分(“抗FAM19A5抗体”)、抗FAM19A5抗体をコードするポリヌクレオチド、又はそのポリヌクレオチドを含むベクターであり、
前記抗FAM19A5抗体は
、CDMLPCLEGEGCDLLINRSG(配列番号9又は配列番号2のアミノ酸90~109)のアミノ酸配列内に位置した断片に結合する、薬学的組成物。
【請求項2】
前記対象が網膜でB波網膜電位減少と関連した疾患又は症状を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記疾患又は症状が糖尿病性網膜病症である、請求項
2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記疾患又は症状が網膜の加齢黄斑変性である、請求項
2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
必要とする対象において網膜病症及び/又は黄斑病症を治療するための薬学的組成物であって、
配列類似性19を持つファミリー、メンバーA5(“FAM19A5”)タンパク質に対するFAM19A5拮抗剤を含み、
前記FAM19A5拮抗剤は、前記FAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合部分(“抗FAM19A5抗体”)、抗FAM19A5抗体をコードするポリヌクレオチド、又はそのポリヌクレオチドを含むベクターであり、
抗FAM19A5抗体は
、CDMLPCLEGEGCDLLINRSG(配列番号9又は配列番号2のアミノ酸90~109)のアミノ酸配列内に位置した断片に結合する、薬学的組成物。
【請求項6】
前記網膜病症が糖尿病性網膜病症である、請求項
5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記糖尿病性網膜病症が非増殖性糖尿病性網膜病症(NPDR)である、請求項
6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記糖尿病性網膜病症が増殖性糖尿病性網膜病症である用途の請求項
6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記糖尿病性網膜病症が対象の網膜内で網膜電位減少、血管周囲細胞損失、無細胞性毛細血管形成、血管鬱血又はこれらの任意の組合せと関連する、請求項
6に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記黄斑病症が糖尿病性黄斑浮腫である、請求項
5に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記糖尿病性黄斑浮腫が対象の網膜内で網膜電位減少、血管周囲細胞損失、無細胞性毛細血管形成、血管鬱血又はこれらの任意の組合せと関連がある、請求項
10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
必要とする対象において黄斑変性を治療するための薬学的組成物であって、
配列類似性19を持つファミリー、メンバーA5(“FAM19A5”)に対するFAM19A5拮抗剤を含み、
前記FAM19A5拮抗剤は、前記FAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合部分(“抗FAM19A5抗体”)、抗FAM19A5抗体をコードするポリヌクレオチド、又はそのポリヌクレオチドを含むベクターであり、
前記抗FAM19A5抗体は
、CDMLPCLEGEGCDLLINRSG(配列番号9又は配列番号2のアミノ酸90~109)のアミノ酸配列内に位置した断片に結合する、薬学的組成物。
【請求項13】
前記黄斑変性が加齢黄斑変性である、請求項
12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記加齢黄斑変性が乾性(萎縮性)黄斑変性である、請求項
13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記加齢黄斑変性が湿性(新生血管又は滲出性)黄斑変性である、請求項
13に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記加齢黄斑変性が(i)初期AMD、(ii)中間AMD、又は(iii)後期又は進行性AMD(地図状萎縮)である、請求項
13に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記加齢黄斑変性が対象の網膜内ドルーゼンの蓄積又は凝集、血管新生、網膜電位減少、星状細胞形成又はこれらの任意の組合せと関連がある、請求項
13に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
関連出願に対する相互参照事項
本PCT出願は、2018年10月16日付に出願された米国臨時出願第62/746,194号の優先権を主張し、その全文が本明細書に援用によって組み込まれる。
【0002】
電子提出された配列目録に対する参照事項
本出願と共にASCIIテキストファイル(名:3763.012PC01_SeqListing_ST25.txt;サイス:261,609バイト;及び生成日:2019年10月13日)で電子提出された配列目録の内容は、その全体が本明細書に援用によって組み込まれる。
【0003】
本開示内容は、配列類似性19を持つファミリー、メンバーA5(FAM19A5)タンパク質に対する拮抗剤を用いて対象(例えば、ヒト)において網膜病症(例えば、糖尿病性網膜病症)及び/又は黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)を治療するための方法及び当該拮抗剤を含む組成物に関する。
[背景技術]
糖尿病性網膜病症(diabetic retinopathy,DR)(糖尿病性眼疾患とも知られている。)のような網膜病症は、網膜の小さな血管と神経細胞の損傷に起因する。DRは全世界的に労働年齢層(例えば、20~74歳)で最も多い視力損失の原因である。Lee R.,et al.,Eye Vis(Lond)2:17(2015)。糖尿病患者の期待寿命が伸びるにつれてDRの発病率が数年にわたって急増してきた。概ね、糖尿病患者は糖尿病発症10年後に約50%、20年後に70%、30年後に90%においてDRが進行する。2030年には全世界における20~79歳年齢群の糖尿病患者の数が略2倍になると予想され、これは、DRと診断される個人の数がさらに増加することを示唆する。Nentwich M.M.and Ulbig M.W.,World J Diabetes 6(3):489-499(2015)。
【0004】
いくつかの治療オプションが利用可能であり、DR関連症状を管理するのに役立ち得るが、前記疾患を治療するものではなく、不所望の副作用もあり得る。例えば、レーザー療法は、治療中の著しい不便さ、永久的な網膜瘢痕の形成、周辺視、色覚及び夜間視力(night vision)の低下を引き起こすことがある。worldweb.aao.org/munnerlyn-laser-surgery-center/laser-treatment-of-proliferative-nonproliferative-を参考されたい。このため、現在、糖尿病性網膜病症に対する代替治療オプションが望まれている。
【0005】
加齢黄斑変性(AMD)は、眼、より具体的には眼の中央部(すなわち、黄斑)に影響を及ぼす別の網膜病症である。AMDは、網膜に栄養を供給する動脈が硬化し、網膜組織から酸素を奪い、中心視(central vision)の低下につながると考えられる。Gheorghe A.,et al.,Rom J Ophthalmol 59(2):74-77(2015)。AMDは、米国だけで約1100万人の個人が苦しむ最も多いタイプの黄斑変性で、全世界では1億7千万人が有病率を持っている。AMDは、産業化された国における視覚障害の主な原因であり、世界的には3番目の主原因である。Pennington K. L.and De Angelis M.,Eye Vis(Lond)3:34(2016)。加齢が最大の危険因子であり、米国でAMDの有病率は2050年までに2200万人に増加すると予想される一方、世界の有病率は2040年まで2億8,800万人に増加すると予想されている。Wong W.L.,et al.,Lancet Glob Health 2:el06-ell6(2014)。
【0006】
AMDは、早期診断時には、ビタミン補充剤(例えば、抗酸化剤)、食餌変化(例えば低脂肪献立)、抗血管新生薬物(例えば、抗VEGF抗体)、レーザー療法、手術(例えば、黄斑下手術)及び網膜位置変更を含む種々の治療オプションで管理できる。Holz
F.G.,et al.,J Clin Invest 124(4):1430-1438(2014)。しかし、AMDについて知られている治療法はなく、治療オプションのほとんどが全てのAMD患者に対して実行可能なものでもない。例えば、脈絡膜血管新生(CNV)(すなわち、湿性AMD)の発症した患者の多数は、CNVをレーザー治療するにはそのサイズが大きすぎたり位置が正確に決定できないため、レーザー療法に適格ではない。しかも、治療を受けても多くのAMD患者が漸進的な中心視の喪失を経る。Virgili G. and Bini A.,Cochrane Database
Syst Rev 3:CD004763 (2007).
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
したがって、現在、AMDに対するより効果的で包括的な治療オプションが望まれている。
[課題を解決するための手段]
本明細書は、必要とする対象に、配列類似性19を持つファミリー、メンバーA5(“FAM19A5”)タンパク質に対する拮抗剤(“FAM19A5拮抗剤”)を投与することを含み、前記対象の網膜において基準(例えば、FAM19A5拮抗剤投与前の対象又はFAM19A5拮抗剤を非投与した対象の該当値)に比べて網膜電位(retinal potential)を改善させる方法を提供する。一部の態様において、前記網膜電位の改善は、A波、B波、律動様小波(oscillatory potential)又はこれらの任意の組合せの増加を含む。
【0007】
一部の態様において、前記対象は、網膜において網膜電位減少に関連した疾患又は症状を有する。特定の態様において、前記疾患又は症状は、糖尿病性網膜病症である。他の態様において、前記疾患又は症状は、網膜の加齢黄斑変性である。
【0008】
本明細書はまた、必要とする対象において網膜病症及び/又は黄斑病症を治療するための方法であって、前記対象にFAM19A5拮抗剤を投与することを含む方法を提供する。
【0009】
一部の態様において、前記網膜病症は、糖尿病性網膜病症である。一部の態様において、前記糖尿病性網膜病症は、非増殖性糖尿病性網膜病症(NPDR)である。他の態様において、前記糖尿病性網膜病症は、増殖性糖尿病性網膜病症である。特定の態様において、前記糖尿病性網膜病症は、対象の網膜内で網膜電位減少、血管周囲細胞(pericyte)損失、無細胞性毛細血管形成、血管鬱血又はそれらの任意の組合せと関連がある。
【0010】
一部の態様において、前記黄斑病症は、糖尿病性黄斑浮腫である。特定の態様において、前記糖尿病性黄斑浮腫は、対象の網膜内で網膜電位減少、血管周囲細胞損失、無細胞性毛細血管形成、血管鬱血又はそれらの任意の組合せと関連がある。
【0011】
一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、基準(例えば、FAM19A5拮抗剤投与前の対象又はFAM19A5拮抗剤を非投与した対象の該当値)対比対象の網膜電位を改善させる。特定の態様において、前記網膜電位の改善は、A波、B波、律動様小波又はそれらの任意の組合せの増加を含む。一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、対象の網膜内血管周囲細胞の損失を減少させる。一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、対象の網膜内無細胞性毛細血管形成を減少及び/又は阻害する。他の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、対象の網膜神経線維層内で血管鬱血を減少及び/又は阻害する。
【0012】
本開示内容はまた、必要とする対象において黄斑変性を治療するための方法であって、前記対象にFAM19A5タンパク質に対する拮抗剤を投与することを含む方法を提供する。
【0013】
一部の態様において、前記黄斑変性は、加齢黄斑変性である。特定の態様において、前記加齢黄斑変性は、乾性(萎縮性)黄斑変性である。他の態様において、前記加齢黄斑変性は、湿性(新生血管又は滲出性)黄斑変性である。特定の態様において、前記加齢黄斑変性は、(i)初期AMD、(ii)中期AMD、又は(iii)後期又は進行性AMD(地図状萎縮(geographic atrophy))である。他の態様において、前記加齢黄斑変性は、対象の網膜内ドルーゼン(drusen)の蓄積又は凝集、血管新生、網膜電位減少、星状細胞形成又はそれらの任意の組合せと関連がある。
【0014】
一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、CD31減少及び/又はVEGF発現によって立証されたように、対象の網膜内で血管新生を減少及び/又は阻害する。特定の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、CD31減少及び/又はVEGF発現によって立証されたように、レーザー誘導脈絡膜血管新生があるマウスの網膜内で血管新生を減少及び/又は阻害できる。他の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、基準(例えば、FAM19A5拮抗剤投与前の対象又はFAM19A5拮抗剤を非投与した対象の該当値)対比対象の網膜神経線維層と神経節細胞層内で血小板由来成長因子(PDGF)の発現を減少させる。他の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、基準(例えば、FAM19A5拮抗剤投与前の対象又はFAM19A5拮抗剤を非投与した対象の該当値)対比対象の網膜電位を改善させる。一部の態様において、前記網膜電位の改善は、B波の増加を含む。特定の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、対象の網膜内ドルーゼンの蓄積又は凝集を減少及び/又は阻害できる。
【0015】
一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsRNA標的化FAM19A5、アプタマー、PNA又はこれを含むベクターである。
【0016】
一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、FAM19A5タンパク質(“抗FAM19A5抗体”)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分である。特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体は:(a)酵素結合免疫吸着分析法(ELISA)によって測定した時にKDが10nM以下である可溶性ヒトFAM19A5に結合する特性;(b)ELISAによって測定した時にKDが10nM以下である膜結合ヒトFAM19A5に結合する特性;又は(c)(a)及び(b)両方のいずれか一特性を示す。
【0017】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、ヒトFAM19A5エピトープに結合するために、表2~表5の抗体らからなる群から選ばれる基準抗体(reference antibody)と交差競合する。特定の態様において、前記基準抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、(i)前記重鎖CDR1は、配列番号14に示したアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号15に示したアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号16に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号26に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号27に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号28に示したアミノ酸配列を含み;又は(ii)前記重鎖CDR1は、配列番号17に示したアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号18に示したアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号19に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号29に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号30に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号31に示したアミノ酸配列を含む。
【0018】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、表2~表5の抗体からなる群から選ばれる基準抗体と同じFAM19A5エピトープに特異的に結合する。特定の態様において、前記基準抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、(i)前記重鎖CDR1は、配列番号14に示したアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号15に示したアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号16に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号26に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号27に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号28に示したアミノ酸配列を含み;又は(ii)前記重鎖CDR1は、配列番号17に示したアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号18に示したアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号19に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号29に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号30に示したアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号31に示したアミノ酸配列を含む。
【0019】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、配列番号6又は配列番号9である少なくとも一つのFAM19A5エピトープに特異的に結合する。
【0020】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、(i)前記重鎖CDR1は、表2に示したCDR1からなる群から選ばれるCDR1を含み;(ii)前記重鎖CDR2は、表2に示したCDR2からなる群から選ばれるCDR2を含み;(iii)前記重鎖CDR3は、表2に示したCDR3からなる群から選ばれるCDR3を含み;(iv)前記軽鎖CDR1は、表3に示したCDR1からなる群から選ばれるCDR1を含み;(v)前記軽鎖CDR2は、表3に示したCDR2からなる群から選ばれるCDR2を含み;及び/又は(vi)前記軽鎖CDR3は、表3に示したCDR3からなる群から選ばれるCDR3を含む。
【0021】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、(i)前記重鎖CDR1は、配列番号14又は配列番号17に示したアミノ酸配列を含み;(ii)前記重鎖CDR2は、配列番号15又は配列番号18に示したアミノ酸配列を含み;(iii)前記重鎖CDR3は、配列番号16又は配列番号19に示したアミノ酸配列を含み;(iv)前記軽鎖CDR1は、配列番号26又は配列番号29に示したアミノ酸配列を含み;(v)前記軽鎖CDR2は、配列番号27又は配列番号30に示したアミノ酸配列を含み;及び/又は(vi)前記軽鎖CDR3は、配列番号28又は配列番号31に示したアミノ酸配列を含む。
【0022】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、配列番号14、15及び16を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、配列番号26、27及び28を含む。他の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、配列番号17、18及び19を含み、前記軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、配列番号29、30及び31を含む。
【0023】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、(i)前記VHは、配列番号36又は配列番号37に示したアミノ酸配列を含み;又は(ii)前記VLは、配列番号40又は配列番号41に示したアミノ酸配列を含む。特定の態様において、前記VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、前記VLは、配列番号40に示したアミノ酸配列を含む。他の態様において、前記VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記VLは、配列番号41に示したアミノ酸配列を含む。
【0024】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHは、配列番号36又は配列番号37に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VLは、配列番号40又は配列番号41に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。
【0025】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、(i)前記VHは、配列番号36又は配列番号37に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み;(ii)前記VLは、配列番号40又は配列番号41に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。
【0026】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)を含む。特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びそれらの変異体からなる群から選ばれる。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、IgG2、IgG4又はそれらの組合せである。他の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、IgG2/IgG4アイソ型(isotype)抗体を含む。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、Fc機能がない定常領域を含む。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0027】
一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、第2結合部分を持つ分子に連結されて二重特異的分子を形成する。一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、作用剤(agent)に連結されて免疫接合体(immunoconjugate)を形成する。
【0028】
一部の態様において、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤は、薬剤学的に許容される担体と共に剤形化される。一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、眼内投与で投与される。特定の態様において、前記眼内投与は、硝子体内投与を含む。一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、静脈内投与で投与される。
【0029】
一部の態様において、本明細書に開示の方法は、治療剤を投与することをさらに含む。一部の態様において、本開示内容で処理される対象は、ヒトである。
【0030】
本開示内容はまた、FAM19A5タンパク質に対する薬剤学的有効量の拮抗剤を含む網膜病症及び/又は黄斑病症予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
[図面の簡単な説明]
図1A、
図1B及び
図1Cは、25週齢db/dbマウスにおいて網膜電位回復に対する抗FAM19A5抗体の効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常(すなわち、糖尿病がない)マウスを対照群として用いた。各群のマウスを3つの異なるフラッシュ強度(-1、0.2及び0.8log cds/m
2)の白色光に露出させた後、A波(μV)(
図1A)、B波(μV)(
図1B)及び律動様小波(μV)(
図1C)を測定した。データは、平均±S.Dで表した。
【0031】
図2A及び
図2Bは、25週齢db/dbマウスにおいて抗FAM19A5抗体の網膜微細血管保護効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。
図2Aは、異なる処理群:(i)正常群(すなわち、非糖尿病)(左上パネル)、(ii)ヒトIgG対照群(右上パネル)及び(iii)抗FAM19A5抗体(クローン1-65、左下パネル;クローン3-2、右下パネル)のそれぞれにおいて、マウスの代表的な網膜領域を過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色した後、顕微鏡写真(倍率100×)を示している。黒色矢印は内皮細胞を、白色矢印は血管周囲細胞を、灰色矢印は無細胞性毛細血管を示す。
図2Bは、前記異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された血管周囲細胞に対する内皮細胞の比率(“E/P比”)の比較を示している。前記E/P比を決定するために、それぞれの撮影写真において内皮細胞と血管周囲細胞の数を計算した。データは、平均±S.Dで表した。棒上の“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。
【0032】
図2Cは、異なる処理群のマウスの分析された全体網膜領域内で観察された無細胞性毛細血管の数の比較を示している。データは、平均±S.Dで表した。棒上の“*”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【0033】
図2Dは、観察された無細胞性毛細血管の長さの比較を示している。データは、平均±S.Dで表した。棒上の“**”及び“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(それぞれ、p<0.01及びp<0.001)を示す。
【0034】
図3は、H&E染色を用いて25週齢db/dbマウスの網膜内血管鬱血に対する抗FAM19A5抗体処理の効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”、右上パネル)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”、左下パネル又はクローン“3-2”、右下パネル)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウス(左上パネル)を対照群として用いた。矢じりは、血管鬱血の例を示す。表示された異なる網膜層には(i)神経節細胞層(GCL)、(ii)内網状層(IPL)、(iii)内核層(INL)、(iv)外核層(ONL)及び(v)網膜色素上皮(PE)が含まれている。
【0035】
図4は、TUNEL分析を用いて25週齢db/dbマウスにおいて抗FAM19A5抗体処理の網膜細胞保護効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。中間列(“TUNEL”)において赤色矢じりは、細胞死が進行している網膜細胞を示す。TUNEL染色の強度は、細胞死の程度と相関がある(例えば、強度減少は、一部の細胞死を示す)。表示された異なる網膜層には(i)神経節細胞層(GCL)、(ii)内核層(INL)、(iii)外核層(ONL)及び(iv)網膜色素上皮(PE)が含まれている。
【0036】
図5は、CD31及びVEGF発現に対して染色する免疫組織化学を用いて、25週齢db/dbマウスの網膜内血管新生に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。矢じりは、陽性CD31(上段行)又は陽性VEGF(下段行)染色を示す。
【0037】
図6Aは、実施例8で用いられたようなイメージ誘導レーザーシステムの写真を示している。
図6Bは、
図6Aに示したイメージ誘導レーザーシステムからレーザーに露出された網膜の写真の一例を示している。
【0038】
図7A及び
図7Bは、蛍光眼底血管造影術(FFA)分析を用いて脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。ヒトIgG抗体が投与されたCNV誘導マウスを対照群として用いた。
図7Aは、CNV誘導当日(“0日”)とCNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(上段行)又は抗FAM19A5(クローン3-2)(下段行)で処理したマウスにおいて4個の湿性AMD様病変(左列写真で矢印で表示される)を示す代表的な網膜写真である。
図7Bは、CNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“3-2”)で処理したCNV誘導マウスに対する補正された総蛍光(CTF)値の比較を提供している。データを平均で且つ個別的に表した。“*”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【0039】
図8A、
図8B及び
図8Cは、光干渉断層撮影(OCT)分析を用いて、脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。ヒトIgG抗体が投与されたCNV誘導マウスを対照群として用いた。
図8Aは、CNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(上段行)又は抗FAM19A5(クローン3-2)(下段行)で処理したマウスにおいて4個の湿性AMD様病変(番号1、2、3及び4と表記)を示す代表的な網膜写真を提供している。1、2、3及び4と標識された列は、最左側の写真に示した当該病変に対するOCT写真を提供している。
図8Bは、前記病変の大きさを定量化するために用いたスケールバーを示している。
図8Cは、ヒトIgG対照群抗体又は抗FAM19A5抗体(クローン3-2)で処理したマウスにおいてCNV誘導後13日目に観察したCNV病変の大きさの比較を提供している。データを平均で且つ個別的に表した。“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。
【0040】
図9は、CNV誘導マウスにおいてB波値の回復に対する抗FAM19A5抗体の効果を示している。前記CNV誘導マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“3-2”)で処理した。正常(すなわち、糖尿病がない)マウスを対照群として用いた。データは、平均±S.Dで表した。“*”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【0041】
図10A及び
図10Bは、脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。
図10Aは、H&E分析(左写真)又はOCT分析(右写真)を用いて異なる網膜層を識別している。これらの表示された層は、次を含む:(i)網膜神経線維層/神経節細胞層(RNFL/GCL);(ii)内網状層;(iii)内核層;(iv)外網状層;(v)外核層、(vi)光受容体内部セグメント/外部セグメント(IS/OS)及び(vii)網膜色素上皮(RPE)。
図10Bは、異なる群である(i)正常の健康な動物群、(ii)ヒトIgG抗体で処理したCNV誘導マウス群、及び(iii)抗FAM19A5抗体で処理したCNV誘導マウス群におけるマウスの網膜の関連細胞層の代表的なH&E写真を示している。矢じりは、脈絡膜血管新生領域を示す。
【0042】
図11は、IHC分析を用いて、網膜の神経線維層及び神経節細胞層内の両方においてPDGF発現に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。CNV誘導マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“3-2”)で処理した。正常(すなわち、糖尿病がない)マウスを対照群として用いた。矢じりは、陽性PDGF染色を示す。
【0043】
図12は、免疫蛍光顕微鏡法を用いて、APP/PS-1/tau遺伝子導入マウス(認知症モデル)においてオリゴマー性Aβ及びドルーゼンの形成に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。前記APP/PS-1/tau遺伝子導入マウスを抗FAM19A5抗体で処理しない(中間行)か又は処理した(下段行)。未投与(naive)野生型C57BL/6マウスを陰性対照群(上段行)として用いた。“H33342”(核酸染色)と標識された列は、網膜組織内細胞を示している。“QD525-oAβ”と標識された列は、オリゴマーAβを示している。“647 Alexa Phalloidin”と標識された列は、ドルーゼン形成を示しているもので、ドルーゼンは矢印で例示されている。“merged”と標識された列は、それぞれの処理群に対する上の3列の合成写真を示している。
【0044】
図13A~
図13Cは、糖尿病性網膜病症マウスモデルにおいて硝子体内又は静脈内投与後、抗FAM19A5抗体(クローン1-30)の網膜微細血管保護効果の比較を示している。前記マウスに(i)ヒトIgG対照群抗体(“ヒトIgG”)、(ii)アフリベルセプト、(iii)抗FAM19A5抗体のいずれか一方を、硝子体内(“IVT”)投与したり、又は(iv)抗FAM19A5抗体を静脈内(“IV”)投与した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。
図13Aは、異なる処理群のそれぞれにおいてマウスの代表的な網膜領域を過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色した後、顕微鏡写真(倍率100×)を提供している。黒色矢印は内皮細胞を、白色矢印は血管周囲細胞を、黒色矢印は無細胞性毛細血管を示す。
図13Bは、異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された無細胞性毛細血管の数の比較を提供している。
図13Cは、異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された血管周囲細胞に対する内皮細胞の比率(“E/P比”)の比較を提供している。前記E/P比を決定するために、それぞれの撮影写真において内皮細胞と血管周囲細胞の数を計算した。
図13B及び
図13Cにおいてデータは、平均±S.Dで表した。棒上の“*”及び“***”は、未投与マウス対比統計的に有意な差(それぞれp<0.05とp<0.001)を示す。棒上の“##”及び“###”は、ヒトIgG抗体処理群対比統計的に有意な差(それぞれ、p<0.01及びp<0.001)を示す。棒上の“†††”は、アフリベルセプト処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。棒上の“§”は、IVT群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【0045】
図14は、静脈内及び硝子体内投与後、糖尿病性網膜病症マウスの網膜内血管鬱血形成に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。処理群は、
図13A~
図13Cに記載と同一である。矢じりは、血管鬱血の例を示す。
【0046】
図15は、硝子体内又は静脈内投与時に、TUNEL分析を用いて測定した抗FAM19A5抗体の網膜細胞保護効果を示している。処理群は、
図13A~
図13Cに記載と同一である。中間列(“TUNEL”)において矢じりは、細胞死が進行している網膜細胞を示す。TUNEL染色の強度は、細胞死の程度と相関関係がある(例えば、強度減少は、一部の細胞死を示す)。
【0047】
図16A及び16Bは、硝子体内及び静脈内投与後、糖尿病性網膜病症マウスの網膜内血管新生に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。処理群は、
図13A~
図13Cに記載と同一である。血管新生は、VEGF(
図16A)及びCD31(
図16B)発現を用いて測定した。矢じりは、陽性VEGF又はCD31染色を示す。
[発明を実施するための形態]
本明細書に提供される開示内容の理解を容易にするために、多数の用語及び語句を定義する。追加定義は、詳細な説明全般にわたって記載されている。
【0048】
<I.定義>
本開示内容全般にわたって、用語“一つの”又は“ある”実体は、その実体の1つ以上をいうもので、例えば、“一つの抗体”は1つ以上の抗体を表すものと理解される。このように、用語“一つ”(又は“ある”)、“1つ以上の”及び“少なくとも1つの”は、本明細書で同じ意味で使われる。
【0049】
また、本明細書で使う“及び/又は”は、2個の特定された特徴又は構成要素のそれぞれ一つを、もう一つの特徴又は構成要素と共に又は単独で具体的に開示するものと見なされるべきである。したがって、本明細書で“A及び/又はB”のような語句において使われる用語“及び/又は”は、“A及びB”、“A又はB”、“A”(単独)及び“B”(単独)を含むものとして意図される。同様に、“A、B及び/又はC”のような語句において使われる用語“及び/又は”は、次のような態様のそれぞれを含むものとして意図される:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
【0050】
本明細書において、態様を、用語“含む”で記載すれば、“なる”及び/又は“本質的になる”の観点で記載された他の類似の態様も提供されるものと理解される。
【0051】
特に定義しない限り、本明細書で使われる全ての技術及び科学用語は、本開示内容と関連した技術分野における通常の技術者にとって通常理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and
Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed,1999,Academic Press;及びOxford Dictionary Of Biochemistry and Molecular Biology,Revised,2000,Oxford
University Pressは、当業者に、本開示内容で使われている用語の多数を提供している。
【0052】
単位、接頭辞及び記号は、これらのSysteme International de Unites(SI)で認めた形態で表示される。数値範囲は、当該範囲を限定する数字を含む。特に表示されない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシに向かって左側から右側に書かれる。本明細書で提供された表題は、開示内容の様々な態様の制限ではなく、それらは全体的に明細書を参照したものであり得る。したがって、次に定義された用語は、明細書全般を参照してより完全に定義される。
【0053】
本明細書において用語“約”は、ほぼ、概略、程度又はその領域内を意味するものとして使われる。用語“約”が数値範囲と共に使われる場合、記載されている数値の上と下へ境界を拡張して当該範囲を変更する。一般に、用語“約”は、明示された値の上と下の数値を、例えば、上又は下の(より高かいかより低い)10%の変化量だけ変更可能である。
【0054】
本明細書で使われる用語“網膜病症”とは、網膜(すなわち、角膜と水晶体を通過する像を捕捉する眼球の裏側の内側表面を包んでいる組織)の疾患、炎症又は損傷を指す。
【0055】
本明細書で使われる用語“糖尿病性網膜病症”(DR)は、糖尿病と関連した合併症によって誘発される網膜病症のことを指す。前記疾患の重症度によって、DRは、無症状であるか、軽微な視力問題を招くか、又は失明につながることがある。DRは、微細血管網膜変化の結果である。高血糖症誘導壁内(intramural)血管周囲細胞の死と基底膜の肥厚は血管壁の不全につながることがある。それらの損傷は、血液-網膜障壁の形成を変化させ、網膜血管をより透過し易くする。血管周囲細胞の死は、高血糖症がタンパク質キナーゼC-δ(PrkcdによってコードされたPKC-δ)とp38ミトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を持続的に活性化させ、従来に知られていないPKC-δ信号伝達の標的としてタンパク質チロシンホスファターゼであるSrc相同-2ドメイン含有ホスファターゼ-1(SHP-1)の発現を増加させる時に誘発され得る。この信号伝達カスケードは、PDGF受容体脱リン酸化及びこの受容体からの下位信号伝達(downstream signaling)の減少につながり、“血管周囲細胞死”が起き得る。眼にある小さい血管のような小さな血管は、特に血糖に対する調節不良に脆弱であり得る。ブドウ糖及び/又は果糖の過剰蓄積は、網膜にある小さい血管を損傷させることがある。
【0056】
DRは、2個の別の段階に分類できる。Wu L.,el al.,World J Diabetes 4(6):290-294(2013)。非増殖性糖尿病性網膜病症(NPDR)という第1期は、早期糖尿病性網膜病症と関連がある。NPDRは一般に、明らかな症状がないか、周辺組織に体液が抜け出る血管によって起きる軽微な視力歪(vision distortion)と関連がある。NPDRを検査する唯一の方法は、微細動脈瘤(動脈壁に血液が溜まっている微細な隆起部)が観察できる眼底撮影による方法である。治療せずに放置すると、DR患者は、増殖性糖尿病性網膜病症(PDR)というより深刻な第2期に進むことがある。PDRは、破裂と出血を起こして視野を曇らせる非正常の新しい血管形成(すなわち、血管新生)を特徴とする。PDRの他の症状には、視野に浮遊する斑点や濃い線(“飛蚊症(floaters)”)、視力変化、色覚損傷、視野の暗い又は空いた領域、疼痛、視力バラツキ及び完全な視力喪失などを含む。
【0057】
用語“糖尿病性網膜病症”は、非増殖性糖尿病性網膜病症(NPDR)、増殖性糖尿病性網膜病症(PDR)、糖尿病性黄斑病症及び糖尿病性黄斑浮腫を含むが、これに限定されないいかなる類型の糖尿病性網膜病症をも含む。
【0058】
一部の態様において、PDRは、NPRDの発病後に発生する(例えば、最初はNPRDと診断され、疾患がPDRへと進む)。別の態様において、PDRはNPRDとは無関係に発生する。本明細書で使われる用語“糖尿病性網膜病症”はまた、原因に関係なく、全類型の糖尿病性網膜病症と糖尿病性網膜病症の任意及び全ての症状を含む。糖尿病性網膜病症に対する危険因子の非制限的に例は、糖尿病持続期間、遺伝、アルコール過剰摂取、喫煙、高血圧、肥満、異常脂質血症、高いコレステロール、腎臓疾患、妊娠及び腎臓損傷がある。
【0059】
本明細書で使われる用語“黄斑病症”は、非常に敏感で正確な視力と関連がある網膜の中心領域である黄斑の任意の病理学的症状を意味する。一部の態様において、用語“黄斑病症”及び“網膜病症”は同じ意味で使用可能である(すなわち、黄斑の影響だけを受ける場合)。一部の態様において、前記黄斑病症は、糖尿病性黄斑病症である。
【0060】
“糖尿病性黄斑病症”は、黄斑が糖尿病に起因した網膜変化による影響を受けるときに発生する。前記用語は、2つの区別される眼疾患である糖尿病性黄斑浮腫と糖尿病性虚血性黄斑病症を意味する。この2類型の黄斑病症はしばしば併発(comorbid)し、すなわち黄斑浮腫を持つ人はしばしば虚血性黄斑病症を持っている。虚血性黄斑病症は黄斑浮腫と共に発生し、黄斑浮腫が軽症である場合でも発生し得る。一部の態様において、糖尿病性黄斑病症と関連した網膜変化は、対象の網膜内で網膜電位の減少、血管周囲細胞の損失、無細胞性毛細血管形成、血管鬱血、血管機能障害、血管漏れ、血管閉塞、組織腫脹(浮腫)、組織虚血又はそれらの任意の組合せを含む。
【0061】
本明細書で使われる用語“無細胞性毛細血管”は、長さに沿ってどこにも核を持たない毛細血管サイズの血管チューブ(vessel tube)を意味する。
【0062】
本明細書で使われる用語“血管鬱血”は、血管損傷の一類型を指し、本明細書に開示の様々な眼球疾患(例えば、糖尿病性黄斑浮腫)の病因において重要な因子である。血管鬱血は、血管組織内体液(例えば、血管内血液)蓄積と関連がある。一部の態様において、血管鬱血は高血糖症(すなわち、高血糖)によって発生し得る。
【0063】
本明細書で使われる用語“黄斑変性”とは、黄斑が変性したり機能的活性を失う任意の数の障害と症状のことを指す。前記変性又は機能的活性の損失は、例えば、細胞死、細胞増殖減少、正常の生物学的機能損失又はそれらの組合せの結果として発症し得る。黄斑変性は、細胞及び/又は黄斑の細胞外基質の構造的完全性変化、正常細胞及び/又は細胞外基質構成の変化及び/又は黄斑細胞の機能喪失につながることがあり及び/又はこれらとして発現し得る。前記細胞は、RPE細胞、光受容体及び/又は毛細血管内皮細胞を含む黄斑内又は近傍に正常に存在する任意の細胞類型であり得る。加齢黄斑変性は、黄斑変性の最も多い類型であるが、用語“黄斑変性”は、老人以外の患者の黄斑変性を必ずしも排除しない。黄斑変性の非制限的に例は:加齢黄斑変性(湿性又は乾性);Best黄斑異栄養症、Sorsby眼底異栄養症、Mallatia Leventinese、Doyneハチの巣状網膜異栄養症、Stargardt病(Stargardt黄斑異栄養症、青少年黄斑変性又は黄色斑眼底(fundus flavimaculatus)ともいう。)及び色素上皮剥離関連黄斑変性を含む。
【0064】
本明細書で使われる用語“加齢黄斑変性”(AMD)は、一般に老人に影響を及ぼし、網膜の中央部(すなわち、黄斑)損傷による中心視喪失と関連した網膜病症を意味する。AMDは一般に、黄斑(主に網膜色素上皮(RPE)とその下にある脈絡膜との間)内ドルーゼン(アミロイドベータのような細胞外タンパク質及び脂質の蓄積)という黄色を帯びる不溶性細胞外沈着物の漸進的な蓄積又は凝集を特徴とする。黄斑内におけるこれら沈着物の蓄積又は凝集は、黄斑を漸次悪化させ、中心視損傷を招くことがある。本明細書で使われる用語“黄斑”は、中央の高解像度色覚を担当する網膜の中心部を意味する。
【0065】
酸化ストレス、ミトコンドリア機能障害及び炎症過程を含むいくつかの理論が提案されたが、加齢黄斑変性の病因はよく知られていない。損傷した細胞成分の生成と分解間の不均衡は、例えば細胞内リポフスチンと細胞外ドルーゼンのような有害産物の蓄積につながる。初期萎縮は、AMDの初期段階で地図状萎縮に先行する網膜色素上皮(RPE)薄層化又は脱色の領域によって区分される。AMDの進行段階でRPEの萎縮(地図状萎縮)及び/又は新しい血管の発達(血管新生)は、光受容体の死滅と中心視喪失を招く。乾性(非滲出性)AMDでは、ドルーゼンという細胞破片が網膜と脈絡膜との間に蓄積され、網膜に萎縮と瘢痕ができる。より重症である湿性(滲出性)AMDでは、血管が網膜裏の脈絡膜で成長(血管新生)して滲出物と体液が漏液し、出血を誘発することがある。。
【0066】
存在するドルーゼンの程度によって、AMDは3つの主要段階に分類できる:(i)初期、(ii)中期、及び(iii)進行期又は後期。初期AMDは、いくつかの小さい(例えば、直径が約63ミクロン未満である)ドルーゼン又はいくつかの中間大きさの(例えば、直径が約63~124ミクロンである)ドルーゼンが存在することを特徴とする。初期段階では患者は視力喪失がなく、明らかな症状がない。中期は、多くの中間大きさのドルーゼン又は一つ以上の大きい(例えば、直径が約125ミクロンを超える)ドルーゼンが存在することを特徴とする。この段階中に一部の患者は視野中央に薄暗い斑点を経験し始めることがある。進行期又は後期AMDは、網膜組織の広い面積の損傷によって中央の死角地帯、結局には中心視喪失を起こすことを特徴とする。損傷類型(例えば、血管新生の有無)に基づいて、進行期又は後期AMDは、次のような2つの下位類型にさらに分類できる:(i)地図状萎縮(萎縮性AMDともいう。)及び(ii)湿性AMD(新生血管性又は滲出性AMDともいう。)。
【0067】
AMDには、2つの主要形態である(i)乾性AMD、及び(ii)湿性AMDがある。特に断りのない限り、用語“加齢黄斑変性”は、乾性AMD及び湿性AMD両方を含む。本明細書で使われる用語“加齢黄斑変性”はまた、原因に関係なく、全ての類型の加齢黄斑変性と加齢黄斑変性の任意及び全ての症状を含む。黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)に関連した症状の非制限的に例は:中心視喪失、歪み、対比感度低下、霧視、低照度適応の困難、突然の発病、症状の急速悪化及び色覚減少を含む。一部の態様において、黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)は、黄斑浮腫(すなわち、黄斑上又は下に体液とタンパク質沈着物の捕集による黄斑腫脹)を起こし得る。
【0068】
本明細書で使われる用語“乾性AMD”(萎縮性加齢黄斑変性又は非滲出性AMDともいう。)は、湿性(血管新生性)AMD以外の全形態のAMDのことを指す。これは、初期及び中期形態のAMDだけでなく、地図状萎縮と知られた進行期形態の乾性AMDも含む。乾性AMD患者は、より早い初期において最小症状を持つ傾向があり;視覚機能喪失は、症状が地図状萎縮に進行する場合に、より頻繁に発生する。
【0069】
本明細書で使われる用語“湿性AMD”(血管新生性加齢黄斑変性又は滲出性AMDともいう。)は、網膜血管新生の存在を特徴とする網膜症状を意味し、最も進行された形態のAMDである。湿性AMDにおいて血管は、ブルッフ膜(Bruch’s membrane)の欠陥により、脈絡膜毛細血管及び一部の場合には下部の網膜色素上皮(脈絡膜新生血管形成又は血管新生)から成長する。これらの血管から抜け出る漿液性又は血性滲出物の組織化は、神経網膜の付随的変性、網膜色素上皮の剥離及び破裂、硝子体出血及び中心視の永久損傷と共に、黄斑部位の線維血管瘢痕の生成を起こすことがある。
【0070】
本明細書で使われる用語“血管新生”は、出血を誘発し、視力喪失を起こし得る眼の異なる部分における新しい異常血管成長のことを指す。本明細書で使われる用語“脈絡膜血管新生”は、脈絡膜(すなわち、結合組織を含み、網膜と鞏膜との間にある眼の血管層)における新しい血管の異常成長のことを指す。湿性AMDにおいて新しい血管は、網膜色素上皮(RPE)と脈絡膜を経て網膜に成長でき、血液及び脂質漏れによって視覚機能に損傷を与えることがある。本明細書で使われる用語“網膜血管新生”は、網膜上部又は内部、例えば、網膜表面における血管の異常発達、増殖及び/又は成長のことを指す。網膜血管新生は、網膜虚血及び/又は炎症疾患と関連した網膜病症(例えば、糖尿病性網膜病症、鎌状赤血球網膜病症、イールズ(Eales)病、眼虚血症候群、頸動脈海綿静脈洞瘻(carotid cavernous fistula)、家族性滲出性硝子体網膜病症、過粘稠度症候群、特発性閉塞性細動脈炎、放射線網膜病症、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、網膜塞栓症、バードショート網膜脈絡膜症(birdshot retinochoroidopathy)、網膜血管炎、乳肉腫症、トキソプラズマ症及びブドウ膜炎、脈絡膜黒色腫、慢性網膜剥離、前部虚血性視神経病症(AION)、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)及び色素失調症(incontinentia pigmenti))のような多くの網膜病症において発生し得る。血管新生を検出する方法は、当業界に公知されており、組織でCD31(血小板内皮細胞付着分子、PECAM-1とも知られている。)及び血管内皮成長因子(VEGF)の発現を測定することを含むが、これに限定されない。例えば、Schluter A.,et al.,BMC Cancer l8(1):272(2018)を参考されたい。
【0071】
“網膜色素上皮”(RPE)は、脈絡膜血液供給(脈絡膜毛細血管層)と神経網膜の間の脊椎動物の眼の裏側に位置している上皮細胞の単一の単層である。RPEは、血液-網膜障壁の構成要素の一つとして働き、RPE細胞は、視覚サイクル維持、光受容体外部セグメント食作用及び遠位網膜と脈絡膜毛細血管層との間で栄養素、代謝廃棄物、イオン及び体液の輸送において重要な役割を担う。
【0072】
用語“眼内”とは、眼組織の内部又は下部のことを指す。本明細書で使われる用語“眼内投与”は、組成物(例えば、本明細書に開示の抗FAM19A5抗体)を眼のテノン嚢下(sub-Tenon)、結膜下、脈絡膜上、硝子体内及び類似位置に伝達できる任意の投与のことを指す。一部の態様において、眼内投与は、硝子体内投与を含む。
【0073】
用語“眼球疾患(ocular condition)”は、網膜疾患のように眼又は眼の一部又は領域に影響を与えたり関連する疾患、疾病又は症状のことを指す。一部の態様において、本開示内容で治療できる眼症状は、糖尿病性網膜病症及び加齢黄斑変性を含む。本明細書に開示の組成物及び方法で治療できる他の眼球疾患は、糖尿病性黄斑浮腫、前部虚血性視神経病症(AION)、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞又はそれらの組合せを含む。
【0074】
本明細書で使われる用語“眼”は、眼球及び眼球を構成する組織と体液(例えば、鞏膜、角膜、前眼房(anterior chamber)及び後眼房(posterior
chamber)、虹彩/瞳孔、水晶体、硝子体液、網膜、中心窩(fovea)、黄斑及び脈絡膜)、眼周囲筋肉(例えば、傾筋及び直筋)及び眼球内部又は隣接している視神経の一部を含む。
【0075】
用語“視神経損傷”とは、視神経の正常の構造又は機能の変化のことを指す。視神経の正常の構造又は機能の変化は、緑内障を含む任意の疾患、障害又は損傷の結果であり得る。視神経の正常の機能の変化は、網膜から脳への視覚情報伝達能力のような視神経の適切な機能能力の任意の変化を含む。機能変化は、例えば、視野喪失、中心視損傷、異常色覚などであり、自体発現し得る。構造変化の例には、網膜神経線維損失、視神経の異常カピング(cupping)及び/又は網膜の網膜神経節細胞層からの細胞損失が含まれる。本明細書で使われる“視神経損傷”とは、対象の一方又は両方の視神経の視神経損傷を含むことができる。
【0076】
本明細書で使う用語“治療する(treat)”、“治療する(treating)”及び“治療(treatment)”は、疾患関連症候群、合併症、症状又は生化学的徴候の進行、発達、重症度又は再発を反転、緩和、改善、阻害又は遅延又は予防しようとする目的で対象に行われた任意類型の介入又は過程、又は対象に活性剤を投与することを指す。治療は、疾患のある対象又は疾患のない対象(例えば、予防用)に対して行われ得る。
【0077】
本明細書で使う“投与”は、当業者に公知の様々な方法と伝達系のうち任意のものを用いて対象に治療剤又は治療剤を含む組成物を物理的に導入することを指す。本明細書に記載の抗体に対する好ましい投与経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄、硝子体内、又は例えば注射又は注入による他の非経口投与経路を含む。本明細書で使う用語“非経口投与”は一般に、注射による腸内及び局所投与以外の投与方式を意味し、これに制限されないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病変内、被膜内、眼窩内、心臓内、血内、経気管、皮下、表皮下、硝子体内、関節内、皮膜下、蜘蛛膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入だけでなく、生体内電気穿孔を含む。これと違い、本明細書に記載の抗体は、非経口経路、例えば、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸、舌下又は局所投与され得る。投与はまた、例えば1回、複数回及び/又は1回以上の延長された期間にわたって行われ得る。
【0078】
本明細書で使う用語“治療有効量”は、対象の疾患又は障害を“治療”したり、疾患又は障害(例えば、緑内障)の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させるのに効果的な薬物単独又は他の治療剤と組み合わせた薬物の量を指す。“治療有効量”は、疾患又は障害(例えば、本明細書に開示の緑内障)を有するか、有する危険のある対象に、一部の改善又は実益を提供する薬物又は治療剤の量を含む。これによって、“治療有効量”は、疾患又は障害の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させたり、又は一部緩和、軽減を提供し/又は少なくとも1つの指標(例えば、炎症増加)を減少させ/又は疾患又は障害の少なくとも1つの臨床症状を減少させる量である。
【0079】
本明細書で使う用語“対象”は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。用語“非ヒト動物”は、全ての脊椎動物、例えば哺乳類及び非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両棲類、爬虫類などのような非哺乳類を含む。
【0080】
用語“配列類似性19を持つファミリー、メンバーA5”又は“FAM19A5”は、5個の相同性が高いタンパク質のTAFAファミリー(FAM19ファミリーとも知られている。)に属するタンパク質のことを指す。Tang T.Y.et al.,Genomics 83(4):727-34(2004)を参考されたい。それらのタンパク質は、所定位置に保存されたシステイン残基を含有し、CC-ケモカインファミリーに属する一種である大食細胞炎症タンパク質1-アルファ(MIP-1-アルファ)とかすかに関連している。前記TAFAタンパク質は、脳と脊髄の特定領域で発現する。それらのタンパク質は、神経発生過程で成体神経幹細胞によって生成及び分泌されると見なされる。FAM19A5は、TAFA5又はケモカイン様タンパク質TAFA-5とも知られている。
【0081】
FAM19A5は、完全な中枢神経系の発生、分化及び形成に重要なものとされている。FAM19A5はまた、多くの中枢神経系損傷及び/又は退行性脳疾患(例えば、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髓損傷、脳卒中及び脳腫瘍)の発病に重要な役割を果たす。中枢神経系損傷時に、神経幹細胞は正常星状細胞を反応性星状細胞に分化させるFAM19A5を生産する。これらの反応性星状細胞(小膠細胞と共に)は、様々なECM(例えば、プロテオグリカン)を発現させ、網のように中枢神経系の損傷領域を囲んで神経細胞の再生を防止する神経膠瘢痕(glial scar)の形成を誘導できる。FAM19A5に対する拮抗剤(例えば、抗FAM19A5抗体)は、中枢神経系損傷及び/又は疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。米国特許番号9,579,398を参考されたい。
【0082】
しかし、特定疾患、特に、血管異常と関連した疾患について、最近の研究では、FAM19A5拮抗剤が実行可能な治療オプションでない可能性を提案した。Wang et al.,Circulation 138(1):48-63(2018)。Wang等は、正常の健康な個体の脂肪組織は、スフィンゴシン-1-ホスフェート受容体2(S1PR2)を通じて血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖及び移動を抑制し、損傷後新生内膜形成を弱化させる信号を伝達するFAM19A5を生成することを提示した。しかし、肥満個体では、脂肪組織においてFAM19A5発現(mRNAとタンパク質の両方とも)が顕著に減少する。Wang等は、このようなFAM19A5活性減少のため、多数の肥満個体で観察される心血管疾患の進行が加速化すると結論付けた。
【0083】
ヒトにおいてFAM19A5をコードする遺伝子は、染色体22に位置している。選択的スプライシングによって生産されるとされる次のような3つのヒトFAM19A5(UniProt:Q7Z5A7)アイソ型(isoform)がある:132個のアミノ酸からなるアイソ型1(UniProt:Q7Z5A7-1)、125個のアミノ酸からなるアイソ型2(UniProt:Q7Z5A7-2)及び53個のアミノ酸からなるアイソ型3(UniProt:Q7Z5A7-3)。ヒトFAM19A5タンパク質は、膜結合及び可溶性(分泌)の形態で存在するとされる。アイソ型1は、一つの膜貫通領域を有する膜であるとされる。Tang T.Y.et al.,Genomics 83(4):727-34(2004)に、分泌されたタンパク質(可溶性)として報告されたアイソ型2は、アミノ酸位置1-25番に信号ペプチドを含有している。アイソ型3は、ESTデータに基づいて予測される。次は、3つの公知されたヒトFAM19A5アイソ型のアミノ酸配列である。
【0084】
(I)アイソ型1(UniProt:Q7Z5A7-1、膜貫通タンパク質):このアイソ型を標準配列として選定した。
【0085】
MAPSPRTGSR QDATALPSMS STFWAFMILA SLLIAYCSQL AAGTCEIVTL DRDSSQPRRT IARQTARCAC RKGQIAGTTR ARPACVDARI IKTKQWCDML PCLEGEGCDL LINRSGWTCT QPGGRIKTTT VS(配列番号1)
(II)アイソ型2(UniProt:Q7Z5A7-2、可溶性タンパク質):
MQLLKALWAL AGAALCCFLV LVIHAQFLKE GQLAAGTCEI VTLDRDSSQP RRTIARQTAR CACRKGQIAG TTRARPACVD ARIIKTKQWC DMLPCLEGEG CDLLINRSGW TCTQPGGRIK TTTVS(配列番号2)
(III)アイソ型3(UniProt:Q7Z5A7-3):
MYHHREWPAR IIKTKQWCDM LPCLEGEGCD LLINRSGWTC TQPGGRIKTT TVS(配列番号3)
用語“FAM19A5”は、細胞によって自然的に発現するFAM19A5の任意の変異体又はアイソ型を含む。したがって、本明細書に記載された抗体は、同一種内の異なるアイソ型(例えば、ヒトFAM19A5の異なるアイソ型)と交差反応したり、或いはヒト以外の種のFAM19A5(例えば、マウスFAM19A5)と交差反応し得る。これと違い、前記抗体は、ヒトFAM19A5に特異的であり得、異なる種とはいかなる交差反応も示さないことがある。FAM19A5又はその任意の変異体及びアイソ型は、これらを自然的に発現させる細胞又は組織から分離されたり、或いは組換えによって生産され得る。ヒトFAM19A5をコードするポリヌクレオチドは、GenBank受託番号BC039396、及び次のような配列を有する:
【0086】
【0087】
用語“FAM19A5タンパク質に対する拮抗剤”は、FAM19A5タンパク質の発現及び/又は活性を抑制及び/又は中和する全ての拮抗剤のことを指す。このような拮抗剤は、ペプチド、核酸又は化合物であり得る。より具体的に、前記拮抗剤は、FAM19A5を標的にするアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsRNA、アプタマー、PNA(ペプチド核酸)又はこれを含むベクターであり得る。一部の態様において、前記拮抗剤は、FAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分であり得る。
【0088】
用語“抗体(antibody)”及び“抗体(antibodies)”は、当業界の用語であり、本明細書で互換して使用可能であり、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を持つ分子を指す。本明細書で使う用語は、全抗体及びこれらの任意の抗原結合断片(すなわち、“抗原結合部分”)又は単鎖を含む。一態様において、“抗体”は、二硫化結合によって互いに連結された少なくとも2個の重(H)鎖及び2個の軽(L)鎖を含む糖タンパク質又はその抗原結合部分を指す。さらに他の態様において、“抗体”は、単一可変ドメイン、例えばVHHドメインを含む単鎖抗体を指す。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す。)及び重鎖定常領域からなっている。特定の自然発生抗体において、前記重鎖定常領域は3個のドメインCH1、CH2及びCH3からなっている。特定の自然発生抗体においてそれぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す。)及び軽鎖定常領域からなっている。前記軽鎖定常領域は、一つのドメインCLからなっている。
【0089】
前記VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存された領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性領域にさらに細分化できる。VH及びVLのそれぞれは、アミノ末端からカルボキシ末端まで次のような順序で配置されている3個のCDR及び4個のFRからなっている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。前記重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。前記抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、効果器細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)をはじめとする宿主組織又は因子に免疫グロブリンが結合することを媒介できる。
【0090】
用語“Kabat番号表記(Kabat numbering)”及び類似の用語は、当業界で認定されており、抗体又はその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域においてアミノ酸残基の番号を表記する体系のことを指す。特定の態様において、抗体のCDRはKabat番号表記体系にしたがって決定され得る(例えば、Kabat EA & Wu
TT(1971)Ann NY Acad Sci 190:382-391 and
Kabat EA et al,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242参照)。Kabat番号表記体系を用いると、抗体重鎖分子内CDRは、典型的に、アミノ酸位置31~35番(CDR1)(場合によって35番以降に1個又は2個の追加アミノ酸を含んでもよい(Kabat番号表記方式では35A及び35Bと称する。)、アミノ酸位置50~65番(CDR2)及びアミノ酸位置95~102番(CDR3)に存在する。Kabat番号表記体系用いると、抗体軽鎖分子内CDRは、典型的に、アミノ酸位置24~34番(CDR1)、アミノ酸位置50~56番(CDR2)及びアミノ酸位置89~97番(CDR3)に存在する。特定の態様において、本明細書に記載の抗体のCDRは、Kabat番号表記方式によって決定している。
【0091】
語句“Kabatにおけると同じアミノ酸位置番号表記”、“Kabat位置”及びこれらの文法的変形は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)において抗体コンピレーションの重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに対して使われる番号表記体系のことを指す。この番号表記体系を用いると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFW又はCDRの短縮又はこれに挿入することに該当するものに該当する追加アミノ酸を含有することができる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52番以降に挿入された単一アミノ酸(Kabatによれば、残基52a番)及び重鎖FW残基82番以降に挿入された残基(例えば、Kabatによれば、残基82a番、82b番及び82c番など)を含むことができる。表1Bを参照されたい。
【0092】
【0093】
所定の抗体に対する残基のKabat番号表記は、“標準”Kabat番号表記された配列と前記抗体の配列の相同性の領域において整列によって決定され得る。代わりに、Chothiaは、構造ループの位置のことを指す(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat番号表記慣例を用いて番号表記した時、Chothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さによってH32~H34の間で変わる(これは、Kabat番号表記方式がH35AとH35Bで挿入(insertions)を置くためである;35Aも35Bもないと、ループは32で終わる;35Aだけあると、ループは33で終わる;35Aと35Bの両方があると、ループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループ間の折衝を代弁するもので、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられる。
【0094】
IMGT(ImMunoGeneTics)も、CDRを含む免疫グロブリン可変領域に対する番号表記体系を提供する。例えば、本明細書に参考として含まれるLefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55-77(2003)を参照されたい。IMGT番号表記体系は、5,000個を超える配列の整列、構造データ及び超可変ループの特性分析に基づくものであり、全ての種に対して可変及びCDR領域の比較を容易にする。IMGT番号表記体系によれば、VH-CDR1は26番~35番位置にあり、VH-CDR2は位置51番~57番位置にあり、VH-CDR3は93番~102番位置にあり、VL-CDR1は27番~32番位置にあり、VL-CDR2は50番~52番位置にあり、VL-CDR3は89番~97番位置にある。
【0095】
本開示内容で論議される全ての重鎖定常領域アミノ酸位置に対して、番号表記は、配列化された最初のヒトIgG1である骨髄腫タンパク質EUのアミノ酸配列を記載したEdelman et al.,1969,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
63(1):78-85)に最初に記載されたEUインデックスに従う。Edelman et al.のEUインデックスはまた、Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesdaに提示されている。これによって、語句“Kabatに提示されたEUインデックス”又は“KabatのEUインデックス”及び“Kabatに提示されたEUインデックスに従う位置...”及びこれらの文法的変形は、Kabat 1991に提示されたEdelman et al.のヒトIgG1EU抗体に基づく残基番号表記体系のことを指す。
【0096】
可変ドメイン(重鎖及び軽鎖両方)及び軽鎖定常領域アミノ酸配列に用いられた番号表記体系は、Kabat 1991に提示されているものである。
【0097】
抗体は、免疫グロブリン分子の任意の類型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY)、任意の類型(例えば、IgD、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1又はIgA2)、又は任意の亜型(例えば、ヒトにおいてIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4;及びマウスにおいてIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3)を有することができる。免疫グロブリン、例えば、IgG1は、最大限でいくつかのアミノ酸において互いに異なる様々な同種異因子型(allotype)で存在する。本明細書に開示の抗体は、通常知られたアイソ型、類型、亜型又は同種異因子型のいずれかからなり得る。特定の態様において、本明細書に開示の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4亜型又はこれらの任意の混成型である。特定の態様において、前記抗体は、ヒトIgG1亜型又はヒトIgG2又はヒトIgG4亜型を有する。
【0098】
“抗体”は、例えば、自然発生及び非自然発生抗体;単クローン性及び多クローン性抗体;キメラ及びヒト化抗体;ヒト及び非ヒト抗体、全合成抗体;単鎖抗体;単一特異的抗体;多重特異的抗体(二重特異的抗体を含む);2個の重鎖と2個の軽鎖分子を含むテトラマー抗体;抗体軽鎖モノマー;抗体重鎖モノマー;抗体軽鎖ダイマー;抗体重鎖ダイマー;抗体軽鎖-抗体重鎖対;細胞内抗体(intrabody);ヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)抗体;1価抗体;単鎖抗体;ラクダ化(camelized)抗体;アフィボディ(affybody);抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗抗Id抗体を含む)、及び完全に抗原結合可能な単一モノマー可変抗体ドメイン(例えば、VHドメイン又はVLドメイン)からなる結合分子を含む単一ドメイン抗体(sdAb)を含む(Harmen M.M.and Haard H.J.Appl
Microbiol Biotechnol.77(1):13-22(2007))。
【0099】
本明細書で使う用語、抗体の“抗原結合部分”は、抗原(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する能力を保有した抗体の1つ以上の断片を指す。このような“断片”は、例えば、約8~約1500個のアミノ酸長であり、好適には、約8~約745個アミノ酸長、好適には約8~約300個、例えば、約8~約200個アミノ酸又は約10個~約50個又は100個アミノ酸長である。抗体の抗原結合機能は全長抗体の断片によって行われ得るということが明らかにされた。抗体、例えば、本明細書に開示の抗FAM19A5抗体の“抗原結合部分”という用語に含まれる結合断片の例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域で二硫化連結部によって連結された2個のFab断片を含む2価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一腕のVL及びVHドメイン及び二硫化連結されたFvs(sdFv)からなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);及び(vi)分離された相補性決定領域(CDR)又は(vii)場合によって合成リンカーによって接合され得る2個以上の分離されたCDRの組合せを含む。また、Fv断片の2個のドメインであるVLとVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え方法を用いてこれらをVLとVH領域が対をなして1価分子を形成する単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られている)として作り得る合成リンカーによって接合され得る;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照。このような単鎖抗体はまた、抗体の“抗原結合部分”という用語内に含まれる。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、前記断片は、無損傷抗体と同じ方式で有用性に対してスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって又は無損傷免疫グロブリンの酵素的又は化学的切断によって生成され得る。
【0100】
本明細書で使われる用語“可変領域”と“可変ドメイン”は同じ意味で使われ、当業界では普遍的である。前記可変領域とは、典型的に抗体の一部、一般に軽鎖又は重鎖の一部を指すものであり、典型的に、前記成熟した重鎖内には約アミノ末端110~120個のアミノ酸があり、前記成熟した軽鎖内には約90~115個のアミノ酸があり、これらは、抗体間において配列が広範囲に異なり、特定抗体の特定抗原に対する結合と特異性において使用される。前記配列可変性は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域に集中するが、前記可変ドメインにおいてより高度に保存された領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。
【0101】
特定機転又は理論に限定されるわけではないが、前記軽鎖及び重鎖のCDRは、抗原と抗体の相互作用及び特異性を主に担当するものとみられる。特定の態様において、前記可変領域は、ヒト可変領域である。特定の態様において、前記可変領域は、齧歯類又はネズミ科のCDRとヒトフレームワーク領域(FR)を含む。特定の態様において、前記可変領域は、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)可変領域である。特定の態様において、前記可変領域は、齧歯類又はネズミ科のCDRと霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域(FR)を含む。
【0102】
本明細書で使う用語“重鎖(HC)”は、抗体と関連して用いたとき、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてIgGの亜型、例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含み、それぞれ抗体のIgA、IgD、IgE、IgG及びIgM類型を発生させる任意の別個のタイプ、例えば、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)を指すことができる。
【0103】
本明細書で使う用語“軽鎖(LC)”は、抗体と関連して用いたとき、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて任意の別個のタイプ、例えば、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のことを指すことができる。軽鎖アミノ酸配列は、当業界によく公知されている。特定の態様において、前記軽鎖は、ヒト軽鎖である。
【0104】
用語“VL”及び“VLドメイン”は、抗体の軽鎖可変領域のことを指すために互換的に使われる。
【0105】
用語“VH”及び“VHドメイン”は、抗体の重鎖可変領域のことを指すために互換的に使われる。
【0106】
本明細書で使う用語“定常領域”又は“定常ドメイン”は互換的であり、当業界における通常の意味を有する。前記定常ドメインは、抗体部分、例えば、抗原に対する抗体の結合に直接関与することはないが、Fc受容体との相互作用のような様々な効果器機能を示し得る軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシ末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は一般に、免疫グロブリン可変ドメインに比べてより保存されたアミノ酸配列を有する。
【0107】
“Fc領域”(断片結晶化可能な領域)又は“Fcドメイン”又は“Fc”は、免疫系の様々な細胞(例えば、効果器細胞)上に位置しているFc受容体又は古典的補体系の第1成分(C1q)に対する結合を含み、宿主組織又は因子に免疫グロブリンが結合することを媒介する抗体の重鎖のC末端領域のことを指す。これによって、Fc領域は、第1定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1又はCL)を除く抗体の定常領域を含む。IgG、IgA及びIgD抗体アイソ型において、Fc領域は、抗体の2個の重鎖の第2(CH2)及び第3(CH3)定常ドメインから由来した2個の同じタンパク質断片を含み;IgM及びIgE Fc領域は、それぞれのポリペプチド鎖にある3個の重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を含む。IgGの場合、Fc領域は免疫グロブリンドメインCγ2とCγ3との間及びCγ1とCγ2との間のヒンジを含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変わり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、C226番又はP230番の位置にあるアミノ酸残基(又は、これら2個のアミノ酸の間のアミノ酸)から重鎖のカルボキシ末端まで伸長されるものに限定されるが、番号表記は、Kabatにおけると同様にEUインデックスに従う。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、約アミノ酸231番から約アミノ酸340番に延長されており、CH3ドメインは、Fc領域においてCmドメインのC末端側に位置しているところ、すなわち、IgGの約アミノ酸341番から約アミノ酸447番に延長されている。本明細書で使うFc領域は、任意の同種異因子型変異体を含む天然配列Fc、又は変異体Fc(例えば、非自然発生Fc)であり得る。Fcはまた、この領域が分離状態にあるか、又は“Fc融合タンパク質”(例えば、抗体又は免疫癒着(immunoadhesion))とも呼ばれる“Fc領域を含む結合タンパク質”のようなFc含有タンパク質ポリペプチドと関連して意味するものであり得る。
【0108】
“天然配列Fc領域”又は“天然配列Fc”は、自然から発見されたFc領域のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG1 Fc領域;天然配列ヒトIgG2 Fc領域;天然配列ヒトIgG3 Fc領域;及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域だけでなく、これらの自然発生変異体も含む。天然配列Fcは、Fcの様々な同種異因子型を含む(例えば、Jefferis et al.(2009)mAbs 1:1;Vidarsson G.et al.Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。
【0109】
“Fc受容体”又は“FcR”は、免疫グロブリンのFc領域に結合する受容体である。IgG抗体に結合するFcRは、Fcγファミリーの受容体とこれら受容体の対立遺伝子変異体及び他の方式でスプライシングされた形態を含む。前記Fcγファミリーは、3個の活性化受容体(マウスのFcγRI、FcγRIII及びFcγRIV;ヒトのFcγRIA、FcγRIIA及びFcγRIIIA)と一つの阻害受容体(FcγRIIB)からなっている。ヒトIgG1は、大部分のヒトFc受容体と結合し、最も強いFc効果器機能を導き出す。ヒトIgG1は、それが結合する活性化Fc受容体の類型と関連してネズミのIgG2aと同等なものと見なすことができる。逆に、ヒトIgG4は、最小のFc効果器機能を導き出す(Vidarsson G.et al.Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。
【0110】
前記定常領域は、1つ以上の効果器機能を除去するために、例えば組換え技術によって操作され得る。“効果器機能”は、抗体Fc領域とFc受容体又はリガンドの相互作用又はそれから生じる生化学的反応を指す。例示的な“効果器機能”は、C1q結合、補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合、ADCC及び抗体依存性細胞媒介食作用(ADCP)のようなFcγR媒介効果器機能及び細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下向き調節を含む。このような効果器機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせられることを必要とする。したがって、用語 “Fc機能のない定常領域”は、Fc領域によって媒介された1つ以上の効果器機能が減
少したり又は存在しない定常領域を含む。
【0111】
抗体の効果器機能は、互いに異なる接近法によって減少又は回避され得る。抗体の効果器機能は、Fc領域が欠如している抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、単鎖Fv(scFv)又はモノマーVH又はVLドメインからなるsdAbのような)を使用することによって減少又は回避され得る。これと違い、Fc領域の他の価値ある特性(例えば、長い半減期及びヘテロダイマー化)は保有しながらFc領域において特定残基に連結されている糖を除去して抗体の効果器機能を減少させることによって、いわゆる無糖化(aglycosylated)抗体が生成され得る。無糖化抗体は、例えば、糖が付着している残基を欠失又は変更することによって、糖を酵素的に除去することによって、グリコシル化阻害剤の存在の下に培養された細胞に抗体を生産することによって、又はタンパク質をグリコシル化できない細胞(例えば、バクテリア宿主細胞)において抗体を発現させることによって生成され得る。例えば、米国特許公開番号20120100140を参照する。他の接近法は、効果器機能が減少したIgG亜型のFc領域を利用することであり、例えば、IgG2及びIgG4抗体は、IgG1及びIgG3に比べてより低いレベルのFc効果器機能を有することを特徴とする。Fc部分のCH2ドメインにおいてヒンジ領域の最も近くにある残基が抗体の効果器機能を担当するが、先天免疫系の効果器細胞上でC1q(補体)及びIgG-Fc受容体(FcγR)に対して大きく重なった結合部位を含有しているわけである(Vidarsson G.et al.Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開))。したがって、Fc効果器機能が減少したり或いは存在しない抗体は、例えば、IgG4アイソ型のIgG抗体のCH2ドメインとIgG1アイソ型のIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域、又はIgG2のヒンジ領域とIgG4のCH2領域を含むキメラFc領域(例えば、Lau C.et al.J.Immunol.191:4769-4777(2013)参照)、又はFc効果器機能を変更、例えばFc機能を減少させたり或いはなくす突然変異を持つFc領域を生成させることによって製造され得る。突然変異があるこのようなFc領域は、当業界に公知されている。例えば、開示内容が全体的に本明細書に参考として含まれる米国特許公開番号20120100140とそこに引用されている米国出願とPCT出願及びAn et al.,mAbs 1:6,572-579(2009)を参照する。
【0112】
“ヒンジ”、“ヒンジドメイン”又は“ヒンジ領域”又は“抗体ヒンジ領域”は、CH1ドメインをCH2ドメインと接合させてヒンジの上、中及び下部を含む重鎖定常領域のドメインのことを指す(Roux et al.,J.Immunol.1998 161:4083)。前記ヒンジは抗体の結合及び効果器領域間の可撓性のレベル変化を提供し、また2個の重鎖定常領域間の分子間二硫化結合のための部位を提供する。本明細書に開示されているように、ヒンジは、全てのIgGアイソ型に対してGlu216から始まってGly237で終わる(Roux et al.,1998 J Immunol 161:4083)。野生型IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4ヒンジの配列が当業界に知られている。例えば、Kabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242;Vidarsson G.et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)を参照する。
【0113】
用語“CH1ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおいてヒンジに可変ドメインを連結する重鎖定常領域のことを指す。本明細書で使うCH1ドメインは、A118から始まってV215で終わる。用語“CH1ドメイン”は、野生型CH1ドメインだけでなく、その自然に存在する変異体(例えば、同種異因子型)を含む。IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4(野生型及び同種異因子型を含む)のCH1ドメイン配列は、当業界に公知されている(例えば、上のKabat EA et al.,(1991)及びVidarsson G.et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開参照)。例示的なCH1ドメインは、例えば、米国特許公開第20120100140号及びそこに引用されている米国特許、公開公報及びPCT公報に記載されている抗体の生物学的活性、例えば、半減期を変更する突然変異を持つCH1ドメインを含む。
【0114】
用語“CH2ドメイン”は、重鎖定常ドメインでCH3ドメインにヒンジを連結する重鎖定常領域のことを指す。本明細書で使うCH2ドメインは、P238から始まってK340で終わる。用語“CH2ドメイン”は、野生型CH2ドメインだけでなく、その自然に存在する変異体(例えば、同種異因子型)を含む。IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4(野生型及び同種異因子型を含む)のCH2ドメイン配列は、当業界に公知されている(例えば、上のKabat EA et al.,(1991)及びVidarsson G.et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開参照)。例示的なCH2ドメインは、例えば、米国特許公開第20120100140号及びそこに引用されている米国特許、公開公報及びPCT公報に記載されている抗体の生物学的活性、例えば、半減期及び/又は減少したFc効果器機能を変更する突然変異を持つCH2ドメインを含む。
【0115】
用語“CH3ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおいてCH2ドメインに対してC末端である重鎖定常領域のことを指す。本明細書で使うCH3ドメインは、G341から始まってK447で終わる。用語“CH3ドメイン”は、野生型CH3ドメインだけでなく、その自然に存在する変異体(例えば、同種異因子型)を含む。IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4(野生型及び同種異因子型を含む)のCH3ドメイン配列は、当業界に公知されている(例えば、上のKabat EA et al.,(1991)及びVidarsson G.et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開参照)。例示的なCH3ドメインは、例えば、米国特許公開第20120100140号及びそこに引用されてい米国特許、公開公報及びPCT公報に記載されている抗体の生物学的活性、例えば半減期を変更する突然変異を持つCH3ドメインを含む。
【0116】
本明細書で使う“アイソ型”は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体類型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgE抗体)のことを指す。
【0117】
“同種異因子型”は、いくつのアミノ酸を異にする特定アイソ型グループ内自然発生変異体のことを指す(例えば、Jefferis et al.,(2009)mAbs 1:1参照)。本明細書に記載されている抗体は、任意の同種異因子型を有することができる。IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の同種異因子型は、当業界に公知されている。例えば、上のKabat EA et al.,(1991);Vidarsson G.et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開);及びLefranc MP,mAbs 1:4,1-7(2009)を参照する。
【0118】
語句“抗原を認識する抗体”及び“抗原に特異的な抗体”は、用語“抗原に特異的に結合する抗体”と本明細書で互換して使われる。
【0119】
本明細書で使う“分離された抗体”は、互いに異なる抗原特異性を持つ他の抗体が実質的にない抗体を意味する(例えば、FAM19A5に特異的に結合する分離された抗体は、FAM19A5以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的にない)。しかし、FAM19A5のエピトープに特異的に結合する分離された抗体は、互いに異なる種の他のFAM19A5タンパク質に交差反応性を有することができる。
【0120】
“結合親和性”は、一般に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)間の非共有相互作用の総和の強度を意味する。別段の提示がない限り、本明細書で使う“結合親和性”は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間1:1相互作用を反映した固有結合親和性を意味する。パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表現され得る。親和性は、平衡解離定数(KD)及び平衡結合定数(KA)を含むが、これに限定されない当業界に公知の多数の方法で測定及び/又は表示され得る。前記KDは、koff/konの商から計算され、モル濃度(M)で表示され、KAはkon/koffの商から計算される。konは、例えば、抗原に対する抗体の結合速度定数を意味し、koffは、例えば、抗原に対する抗体の解離を意味する。kon及びkoffは、免疫分析(例えば、酵素結合免疫吸着分析(ELISA))、BIACORETM又は力学的排除分析(KinExA(登録商標))のように当業者に公知の技術によって決定され得る。
【0121】
本明細書で使う用語“特異的に結合”、“特異的に認識”、“特異的結合”、“選択的結合”及び“選択的に結合”は、抗体と関連して類似の用語であり、抗原(例えば、エピトープ又は免疫複合体)に結合する分子(例えば、抗体)のことを指し、結合は、当業者によって理解されるものである。例えば、抗原に特異的に結合する分子は、例えば免疫分析、BIACORETM、KinExA(登録商標) 3000機器(Sapidyne
Instruments,Boise,ID)又は当業界に公知されている他の分析法によって決定したとき、通常、より低い親和度を持つ他のペプチド又はポリペプチドに結合し得る。特定の態様において、抗原に特異的に結合する分子は、この分子が他の抗原に結合するとき、KAに比べて、少なくとも2logs、2.5logs、3logs、4logs以上さらに大きいKAで前記抗原に結合する。
【0122】
抗体は典型的に、10-5~10-11M以下の解離定数(KD)によって反映される高い親和度でこれらの同族抗原(cognate antigen)に特異的に結合する。約10-4Mを超える任意のKDは一般に、非特異的結合を意味すると見なされる。本明細書で使う抗原に“特異的に結合する”抗体は、高い親和度で抗原及び実質的に同じ抗原に結合する抗体のことを指し、これは、例えば、前記所定の抗原を使用するBIACORETM2000機器で免疫分析(例えば、ELISA)又は表面プラズマ共鳴(SPR)技術によって決定したとき、10-7M以下、好ましくは10-8M以下、より好ましくは10-9M以下、最も好ましくは10-8M~10-10M以下のKDを有することを意味するが、この抗体は、関連のない抗原には高い親和度で結合しない。
【0123】
本明細書で使う“抗原”は、タンパク質、ペプチド又はハプテン(hapten)のような任意の天然又は合成免疫原性物質のことを指す。抗原は、FAM19A5又はその断片であり得る。
【0124】
本明細書で使う“エピトープ”は、当業界の用語で、抗体が特異的に結合できる抗原の局在化された領域を指す。エピトープは、例えばポリペプチドの隣接アミノ酸(線形又は隣接エピトープ)であるか、又はエピトープは、例えばポリペプチド又はポリペプチドの2個以上の隣接しない領域が集合したもの(立体形態、非線形、不連続又は非隣接エピトープ)であり得る。隣接アミノ酸から形成されたエピトープは、いつもではないが、典型的に変性(denaturing)溶媒に露出時に維持されるのに対し、3次フォルディングによって形成されたエピトープは、典型的に変性溶媒で処理時に喪失される。エピトープは典型的に、特有の空間的立体形態内に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は20個のアミノ酸を含む。所定の抗体によってどのエピトープが結合するかを決定するための方法(すなわち、エピトープマッピング)は、当業界によく公知されており、例えば(例えば、FAM19A5の)重複又は隣接ペプチドを所定の抗体(例えば、抗FAM19A5抗体)との反応性に対して試験する免疫ブロットと免疫沈殿分析を含む。エピトープの空間的立体形態を決定する方法は、当業界における技術及び本明細書に記載の技術、例えばx線結晶学、2次元核磁気共鳴及びHDX-MSを含む(例えば、Epitope Mapping Protocols
in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)参照)。
【0125】
特定の態様において、前記抗体が結合するエピトープは、例えば、NMR分光法、X線回折結晶学研究、ELISA分析、質量分光分析と結合した水素/重水素交換(例えば、液体クロマトグラフィー電子噴霧質量分光分析)、アレイベースのオリゴペプチドスキャニング分析及び/又は突然変異誘発マッピング(例えば、部位指向突然変異誘発マッピング)によって決定され得る。X線結晶学の場合、決定化は当業界に公知の方法のいずれかを用いて達成され得る(例えば、Giege R et al,(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt4):339-350;McPherson A(1990)Eur J Biochem 189:1-23;Chayen NE(1997)Structure 5:1269-1274;McPherson A(1976)J Biol Chem 251:6300-6303参照)。抗体:抗原結晶は、周知のX線回折技術を用いて研究でき、X-PLOR(Yale University,1992,Molecular Simulations,Inc.によって配布;例えば、Meth Enzymol(1985)volumes 114 & 115,eds Wyckoff H.W.et al.,;U.S.2004/0014194参考)及びBUSTER(Bricogne G.(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49(Pt1):37-60;Bricogne G.(1997)Meth Enzymol 276A:361-423,ed Carter CW;Roversi
P.et al.,(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 56(Pt 10):1316-1323)のようなコンピュータソフトウェアを用いて精製(refine)され得る。突然変異誘発マッピング研究は、当業者に公知された任意の方法を用いて行うことができる。アラニンスキャニング突然変異誘発技術を含む突然変異誘発技術の記載については、例えば、Champe M.et al.,(1995)J Biol Chem 270:1388-1394及びCunningham B.C. & Wells J.A.(1989)Science 244:1081-1085を参考する。
【0126】
用語“エピトープマッピング”は、抗体抗原認識に対する分子決定要因の同定過程を指す。
【0127】
2個以上の抗体と関連して用語“同一エピトープに結合”は、所定の方法によって決定するとき、抗体がアミノ酸残基の同一セグメントに結合するということを意味する。抗体が本明細書に記載の抗体と“FAM19A5上の同一エピトープ”に結合するか否かを決定するための技術は、エピトープマッピング方法、例えばエピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析及び水素/重水素交換質量分光分析(HDX-MS)を含む。他の方法は、抗原断片又は抗原の突然変異した変異体に対する抗体の結合をモニタリングすることであり、ここで、前記抗原配列内のアミノ酸残基の変形による結合損失は、だいてい、エピトープ成分の表示として見なされる。また、エピトープマッピングのための電算組合せ法も利用可能である。これらの方法は、組合せファージディスプレイペプチドライブラリーから特定の短いペプチドを親和性分離する関心抗体の能力に依存する。同じVH及びVL又は同じCDR1、2及び3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予想される。
【0128】
“標的との結合に対して他の抗体と競合”する抗体は、前記他の抗体の標的結合を(部分的に又は完全に)阻害する抗体を指す。2個の抗体が標的との結合に対して互いに競合するか否か、すなわち一つの抗体が他の抗体の標的結合を阻害するか否か、及び阻害する程度は、公知の競合実験を用いて決定することができる。特定の態様において、一つの抗体は他の抗体の標的結合において競合し、この結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%まで阻害する。阻害又は競合レベルは、抗体が“遮断抗体”(すなわち、標的とまず培養される低温抗体)であるかどうかによって異なり得る。競合分析は、例えば、E.d.Harlow and David Lane,Cold Spring Harb Protoc;2006;doi:10.1101/pdb.prot 4277又はE.d.Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,USA 1999による“Using Antibodies”の第11章に記載されたとおりに実施できる。競合抗体は、同一エピトープ、重複エピトープ又は隣接エピトープ(例えば、立体障害で立証される)に結合する。
【0129】
他の競合結合分析としては、固相直接又は間接放射性免疫分析(RIA)、固相直接又は間接酵素免疫分析(EIA)、サンドウィッチ競合分析(Stahli et al.,Methods in Enzymology 9:242(1983)参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al.,J.Immunol.137:3614(1986)参照);固相直接標識化分析、固相直接標識化サンドウィッチ分析(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)参照);1-125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al.,Mol.Immunol.25(1):7(1988)参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al.,Virology 176:546(1990)参照);及び直接標識化RIA(Moldenhauer et al.,Scand.J.Immunol.32:77(1990)参照)を含む。
【0130】
“二重特異的”又は“二重機能性抗体”は、2個の異なる重鎖/軽鎖対が2個の異なる結合部位を持つ人工混成抗体である。二重特異的抗体は、ハイブリドーマの融合又はFab’断片の連結を含む様々な方法によって生産され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315-321(1990);Kostelny et al.,J.Immunol.148,1547-1553(1992)を参照する。
【0131】
本明細書で使う“単クローン性抗体”は、特定エピトープに対して単一結合特異性と親和性を示す抗体であるか、又は全ての抗体が特定エピトープに対して単一結合特異性と親和性を示す抗体組成のことを指す。したがって、用語“ヒト単クローン性抗体”は、単一結合特異性を示し、ヒト生殖系(germline)免疫グロブリン配列から由来した可変及び選択的定常領域を有する抗体又は抗体組成のことを指す。一部の態様において、ヒト単クローン性抗体は、例えば、不滅化細胞に融合されたヒト重鎖転移遺伝子と軽鎖転移遺伝子を含むゲノムを持つ遺伝子導入(transgenic)非ヒト動物、例えば遺伝子導入マウスから得たB細胞を含むハイブリドーマによって生産される。
【0132】
本明細書で使う用語“組換えヒト抗体”は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に対して遺伝子導入又は染色体導入(transchromosomal)動物(例えば、マウス)から分離された抗体又はそれから製造されたハイブリドーマ、(b)抗体を発現させるために形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から分離された抗体、(c)組換え組合せヒト抗体ライブラリーから分離された抗体、及び(d)他のDNA配列にヒト免疫グロブリン遺伝子配列をスプライシングすることを伴う任意の他の手段によって製造、発現、生成又は分離された抗体、のような組換え手段によって製造、発現、生成又は分離された全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、生殖系遺伝子によってコードされる特定のヒト生殖系免疫グロブリン配列を用いるが、例えば、抗体成熟化中に起こる後続再配列と突然変異を含む可変及び定常領域を含む。当業界に公知された通り(例えば、Lonberg(2005)Nature
Biotech.23(9):1117-1125参照)、前記可変領域は、外来抗原に対して特異的な抗体を形成するように再配列される様々な遺伝子によってコードされる抗原結合ドメインを含有する。再配列の他にも、前記可変領域は、外来抗原に対する抗体の親和性を増加させるために多数の単一アミノ酸変化(体細胞突然変異又は超突然変異という)によってさらに変形され得る。前記定常領域は、抗原に対する追加反応にしたがって変わるだろう(すなわち、アイソ型変化)。したがって、抗原に反応して軽鎖及び重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする、再配列され体細胞突然変異した核酸分子は、本来の核酸分子と配列同一性を有することはできないが、その代わりに、実質的に同一又は類似するであろう(すなわち、少なくとも80%同一性を有する)。
【0133】
“ヒト抗体(HuMAb)”は、フレームワークとCDR領域が両方ともヒト生殖系免疫グロブリン配列から由来した可変領域を有する抗体のことを指す。また、前記抗体が定常領域を含有すると、前記定常領域もヒト生殖系免疫グロブリン配列から由来する。本明細書に記載の抗体は、ヒト生殖系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、試験管内無作為又は部位特異的突然変異誘発によって又は生体内体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含むことができる。しかし、本明細書で用いる用語 “ヒト抗体”は、マウスのような他の哺乳類種の生殖系から由来したCDR配列がヒトフ
レームワーク配列に移植された抗体を含まない。用語“ヒト”抗体と“完全なヒト”抗体は同じ意味で使われる。
【0134】
“ヒト化”抗体は、非ヒト抗体のCDRドメイン外部のアミノ酸の一部、大部分又は全部が、ヒト免疫グロブリンから由来した相応するアミノ酸に置換された抗体のことを指す。抗体のヒト化された形態の一部の態様において、CDRドメイン外部のアミノ酸の一部、大部分又は全部がヒト免疫グロブリンのアミノ酸に置換されており、1つ以上のCDR領域内部のアミノ酸の一部、大部分又は全部は変わらずに残っている。アミノ酸の小さい添加、欠失、挿入、置換又は変形は、これらが特定抗原に結合する抗体の能力をなくさない限り、許容可能である。“ヒト化”抗体は、原始抗体の抗原特異性に類似する抗原特異性を維持する。
【0135】
“キメラ抗体”は、マウス抗体から可変領域が由来し、ヒト抗体から定常領域が由来した抗体のように、一つの種から可変領域が由来し、他の種から定常領域が由来した抗体のことを指す。
【0136】
本明細書で使う用語“交差反応”は、異なる種のFAM19A5に結合する本明細書に開示の抗体の能力を指す。例えば、ヒトFAM19A5に結合する本明細書に開示の抗体は、他の種のFAM19A5(例えば、マウスFAM19A5)にも結合できる。本明細書で使う交差反応性は、結合分析(例えば、SPR、ELISA)で精製された抗原との特異的反応性を検出することによって又はFAM19A5を生理学的に発現する細胞に結合したり又はそれとも前記細胞と機能的に相互作用することによって測定され得る。交差反応性を決定するための方法は、本明細書に記載されている標準結合分析、例えば、BIACORETM2000 SPR機器(Biacore AB,Uppsala、スウェーデン)を用いたBIACORETM表面プラズマ共鳴(SPR)分析、又は流細胞計数技術を含む。
【0137】
本明細書に開示の用語“自然発生”を対象体に適用時に、対象体が自然から発見され得るという事実を意味する。例えば、自然のソースから分離可能であり、実験室で人によって意図的に変形されない有機体(ウイルスを含む)内に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は自然発生である。
【0138】
“ポリペプチド”は、少なくとも2個の連続連結されたアミノ酸残基を含む鎖のことを指し、前記鎖の長さに上限はない。タンパク質内の1つ以上のアミノ酸残基は、グリコシル化、ホスホリル化又は二硫化結合形成のような変形を含有できるが、これに限定されるものではない。“タンパク質”は、1つ以上のポリペプチドを含むことができる。
【0139】
本発明で使用する用語“核酸分子”は、DNA分子及びRNA分子を含む。核酸分子は、単鎖又は二重鎖であり得、cDNAであり得る。
【0140】
本明細書で使われる用語“ベクター”は、連結されたさらに他の核酸を輸送できる核酸分子を意味する。ベクターの一類型は、追加DNA片が結紮され得る円形の二重鎖DNAループを意味する“プラスミド”である。ベクターのさらに他の類型は、追加DNA片がウイルスゲノムに連結され得るウイルスベクターである。特定ベクターは、これらが導入される宿主細胞で自己複製できる(例えば、バクテリア性複製起源を持つバクテリアベクター及びエピソーマル(episomal)哺乳類動物)。他のベクター(例えば、非エピソーマル哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入時に宿主細胞のゲノムに統合でき、これによって宿主ゲノムに沿って複製される。さらに、特定ベクターは、これらが作動的に連結された遺伝子の発現を指示できる。このようなベクターを本明細書では“組換え発現ベクター”(又は、単に“発現ベクター”)という。一般に、組換えDNA技術において活用性のある発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。本明細書において、“プラスミド”と“ベクター”は、最も一般的に用いられるベクターの形態がプラスミドであることから、互換して使用されてもよい。しかし、等価の機能を担う他の形態の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス)も含まれる。
【0141】
本発明で使用する用語“組換え宿主細胞”(又は、簡単に“宿主細胞”)は、細胞内自然的に存在しない核酸を含む細胞のことを指し、組換え発現ベクターが導入された細胞であり得る。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫のことも指すものとして理解すべきである。突然変異や環境的な影響によって次の世代には特定の変形が起き得る点から、このような子孫は実際に親細胞と同一であるとはいえないが、本明細書で使う用語“宿主細胞”の範囲内に依然として含まれる。
【0142】
本発明で使用する用語“連結された”は、2個以上の分子の会合を指す。前記連結は、共有連結又は非共有連結であり得る。前記連結はまた、遺伝子連結(すなわち、組換えによる融合)であり得る。このような連結は、化学的コンジュゲーション及び組換えタンパク質生産のような、当業界で認める様々な技術を用いて達成され得る。
【0143】
本明細書で使われる用語“治療有効量”は、対象の疾患又は障害を“治療”したり、或いは疾患又は障害(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性)の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させるのに効果的な薬物単独又は他の治療剤と組み合わせた薬物の量を意味する。“治療有効量”は、疾患又は障害(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性)を持っているか或いは持つ危険がある対象に一部改善又は実益を提供する薬物又は治療剤(例えば、本明細書に開示の抗FAM19A5抗体)の量を含む。これによって、“治療有効量”は、疾患又は障害の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させたり、又は一部緩和、軽減を提供し/又は少なくとも一つの指標を減少させ/又は疾患又は障害(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性)の少なくとも一つの臨床症状を減少させる量である。
【0144】
<II.網膜病症及び/又は黄斑変性を治療する方法>
本明細書は、必要とする対象において眼球疾患を治療する方法を開示する。より具体的に、本明細書に開示の方法は、網膜病症、特に糖尿病性網膜病症を治療するために用いることができる。本明細書に開示の方法はまた、黄斑変性、特に加齢黄斑変性を治療するために用いることができる。次に記載するように、糖尿病性網膜病症及び加齢黄斑変性のような眼障害は、網膜電位減少と関連がある。したがって、本明細書はまた、必要とする対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)において網膜電位を改善する方法を提供する。
【0145】
一部の態様において、本明細書に開示の方法は、前記対象にFAM19A5タンパク質に対する拮抗剤(“FAM19A5拮抗剤”)を投与することを含む。一部の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsRNA標的化FAM19A5、アプタマー、PNA又はこれを含むベクターである。他の態様において、前記FAM19A5拮抗剤は、前記FAM19A5タンパク質(“抗FAM19A5抗体”)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分、前記抗FAM19A5抗体をコードするポリヌクレオチド又はそのポリヌクレオチドを含むベクターである。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、FAM19A5タンパク質に結合してFAM19A5活性を減少させる。
【0146】
網膜病症(例えば、糖尿病性網膜病症)及び/又は黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)を持つ対象は、網膜内に次のような特徴の一つ以上を示すことがある:(i)網膜電位減少、(ii)血管周囲細胞損失、(iii)無細胞性毛細血管形成増加、(iv)血管鬱血増加(例えば、網膜の神経線維層内で)、(v)細胞死性細胞増加(例えば、網膜の神経線維層及び/又は内核層内で)、(vi)網膜及び/又は脈絡膜血管新生増加、及び(vii)星状細胞形成増加(例えば、網膜の神経線維層及び/又は神経節細胞層内PDGF染色増加によって立証されている。)。実施例6~10を参照されたい。
【0147】
したがって、任意の単一理論に拘わらず、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤(例えば、抗FAM19A5抗体)は、上述した特徴の一つ以上を減少、緩和及び/又は反転させることによって、網膜病症及び/又は黄斑変性を治療することができる。一部の態様において、FAM19A5拮抗剤は、FAM19A5タンパク質を中和させることができる、例えば、FAM19A5中和剤である。他の態様において、FAM19A5拮抗剤は、抗FAM19A5抗体である。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、中和抗体である。
【0148】
一部の態様において、FAM19A5拮抗剤は、対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)において網膜電位を改善させることができる。特定の態様において、網膜電位の改善は、基準(例えば、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤で非治療したDR又はAMD対象の該当値)に比べて、A波、B波及び/又は律動様小波に対する値の増加を含む。一部の態様において、前記A波、B波及び/又は律動様小波に対する値は、基準に比べて少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%以上である。
【0149】
一部の態様において、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤(例えば、抗FAM19A5抗体)は、対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)の網膜内血管周囲細胞の損失を減少又は防止させることができる。特定の態様において、前記網膜内血管周囲細胞の損失は、基準(例えば、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤で非治療したDR又はAMD対象の該当値)に比べて少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少する。
【0150】
一部の態様において、本開示内容のFAM19A5拮抗剤は、対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)の網膜内無細胞性毛細血管形成を減少及び/又は阻害させることができる。特定の態様において、前記無細胞性毛細血管の形成は、基準(例えば、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤で非治療したDR又はAMD対象の該当値)に比べて少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少及び/又は阻害する。
【0151】
一部の態様において、FAM19A5拮抗剤(例えば、抗FAM19A5抗体)は、対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)の網膜内血管鬱血を減少及び/又は阻害させることができる。特定の態様において、前記網膜内血管鬱血は、基準(例えば、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤で非治療したDR又はAMD対象の該当値)に比べて少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少及び/又は阻害する。
【0152】
一部の態様において、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤は、対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)の網膜細胞の細胞死を減少及び/又は阻害させることができる。特定の態様において、前記細胞死が進行する網膜細胞の個数は、基準(例えば、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤で非治療したDR又はAMD対象の該当値)に比べて少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少する。
【0153】
一部の態様において、FAM19A5拮抗剤は、対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)の網膜内血管新生(例えば、網膜及び/又は脈絡膜血管新生)を減少及び/又は阻害させることができる。特定の態様において、網膜内血管新生(例えば、網膜及び/又は脈絡膜血管新生)は、基準(例えば、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤で非治療したDR又はAMD対象の該当値)に比べて少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少及び/又は阻害する。
【0154】
一部の態様において、FAM19A5拮抗剤は、対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)の網膜内PDGFを減少及び/又は阻害させる。特定の態様において、網膜内PDGFの発現は、基準(例えば、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤で非治療したDR又はAMD対象の該当値)に比べて少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少及び/又は阻害する。一部の態様において、前記PDGF発現の減少及び/又は阻害は、前記対象の網膜内星状細胞形成減少と関連がある。
【0155】
一部の態様において、本明細書で使われる用語“基準”は、本明細書に開示の組成物(例えば、FAM19A5拮抗剤、例えば抗FAM19A5抗体)を投与しなかった該当の対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)のことを指す。用語“基準”はまた、本明細書に開示の組成物を投与する前の同じ対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)のことを指してもよい。特定の態様において、用語“基準”は、対象(例えば、糖尿病性網膜病症又は加齢黄斑変性を持つ対象)の集団の平均を指す。
【0156】
一部の態様において、本開示内容で治療できる網膜病症は、糖尿病性網膜病症を含む。特定の態様において、糖尿病性網膜病症は、非増殖性糖尿病性網膜病症(NPDR)である。他の態様において、糖尿病性網膜病症は、増殖性糖尿病性網膜病症(PDR)である。一部の態様において、糖尿病性網膜病症は、糖尿病性黄斑病症である。他の態様において、糖尿病性網膜病症は、糖尿病性黄斑浮腫である。一部の態様において、糖尿病性網膜病症は、網膜内虚血性損傷と関連した任意の網膜病症である。
【0157】
一部の態様において、本開示内容で治療できる黄斑変性は、加齢黄斑変性(AMD)を含む。一部の態様において、加齢黄斑変性は、初期AMDである。他の態様において、加齢黄斑変性は、中期AMDである。他の態様において、加齢黄斑変性は、後期又は進行性AMD(すなわち、地図状萎縮)である。一部の態様において、加齢黄斑変性は、乾性(非滲出性)AMDである。他の態様において、加齢黄斑変性は、湿性(血管新生性又は滲出性)AMDである。
【0158】
一部の態様において、本方法で治療できる対象は、ラット又はマウスのような非ヒト動物である。他の態様において、本明細書に開示の方法で治療できる対象は、ヒトである。
【0159】
一部の態様において、本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤(例えば、抗FAM19A5抗体)、二重特異的分子又は免疫接合体又はその組成物は、眼内投与、又は本明細書に開示の組成物(例えば、FAM19A5拮抗剤)をテノン嚢下、結膜下、脈絡膜上、硝子体内及び眼中の類似位置に伝達できる任意の別の投与によって対象に伝達される。一部の態様において、眼内投与は、硝子体内投与を含む。
【0160】
本明細書に開示のFAM19A5拮抗剤又はその組成物(例えば、抗FAM19A5抗体)の投与のための投与量は、約0.0001~100mg/kgの範囲に属する。
【0161】
一部の態様において、FAM19A5拮抗剤又はその組成物は、網膜病症(例えば、糖尿病性網膜病症)及び/又は黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)を治療するための一つ以上の追加製剤(例えば、治療剤)、例えば標準治療法、例えば(i)コルティコステロイド、(ii)抗血管形成阻害剤(例えば、抗VEGF阻害剤)、(iii)レーザー治療(例えば、レーザー光凝固術)、(iv)抗酸化剤との組合せで投与できる。FAM19A5拮抗剤又はその組成物と組み合わせて使用できる現在利用可能な他の治療オプションには、手術(例えば、硝子体切除述)及び矯正可能な危険因子調節(例えば、グルコース及びコレステロール数値低下、喫煙中断)が含まれるが、これに限定されない。
【0162】
<III.FAM19A5拮抗剤>
一部の態様において、本開示内容に有用なFAM19A5拮抗剤は、FAM19A5を特異的に標的にするアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsRNA、アプタマー、PNA(ペプチド核酸)又はこれを含むベクターである。他の態様において、FAM19A5拮抗剤は、FAM19A5タンパク質(“抗FAM19A5抗体”)、抗FAM19A5抗体をコードするポリヌクレオチド又はそのポリヌクレオチドを含むベクターに特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分である。
【0163】
本明細書に開示の方法に有用な抗体は、特定機能的特徴又は特性を特徴とする単クローン抗体を含む。例えば、前記抗体は、可溶性FAM19A5及び膜結合FAM19A5を含むヒトFAM19A5に特異的に結合する。可溶性及び/又は膜結合ヒトFAM19A5に特異的結合の他にも、本明細書に記載の抗体はまた、(a)KDが10nM以下である可溶性ヒトFAM19A5に結合し;(b)KDが10nM以下である膜結合ヒトFAM19A5に結合し;又は(a)及び(b)の両方である。
【0164】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、高い親和度、例えば、KDが10-7M以下、10-8M以下、10-9M(1nM)以下、10-10M(10nM)以下、10-11M以下又は10-12M以下、例えば10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M又は10-9M~10-7M、例えば10-12M、5×10-12M、10-11M、5×10-11M、10-10M、5×10-10M、10-9M、5×10-9M、10-8M、5×10-8M、10-7M又は5×10-7Mである、可溶性ヒトFAM19A5又は膜結合ヒトFAM19A5に特異的に結合する。様々な種のヒトFAM19A5に対する抗体の結合能を評価するための標準分析法は、例えば、ELISA、ウェスタンブロット及びRIAを含め、当業界に公知されている。好適な分析法は、実施例の部分に詳細に記載されている。前記抗体の結合動力学(例えば、結合親和度)は、ELISA、BIACORETM分析又はKINEXA(登録商標)のような当業界に周知の標準分析法によって評価されてもよい。
【0165】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、例えばELISAによって決定した時、KDが10-7M以下、10-8M(10nM)以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、10-9M~10-7M、又は10-8M~10-7Mである、可溶性ヒトFAM19A5に結合する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、KDが10nM以下、例えば0.1~10nM、0.1~5nM、0.1~1nM、0.5~10nM、0.5~5nM、0.5~1nM、1~10nM、1~5nM又は5~10nMである、可溶性FAM19A5に結合する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ELISAによって決定した時、KDが約1pM、2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM又は900pM、又は約1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM又は9nM、又は約10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM又は90nMである、可溶性ヒトFAM19A5に特異的に結合する。
【0166】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、例えばELISAによって決定した時、KDが10-7M以下、10-8M(10nM)以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、10-9M~10-7M又は10-8M~10-7Mである、膜結合ヒトFAM19A5に結合する。特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ELISAによって決定した時、KDが10nM以下、例えば0.1~10nM、0.1~5nM、0.1~1nM、0.5~10nM、0.5~5nM、0.5~1nM、1~10nM、1~5nM又は5~10nMである、膜結合ヒトFAM19A5に特異的に結合する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ELISAによって決定した時、KDが約1pM、2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM又は900pM、又は約1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM又は9nM、又は約10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM又は90nMである、膜結合ヒトFAM19A5に結合する。
【0167】
一部の態様において、本明細書に開示の方法に有用な抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ヒトFAM19A5エピトープに結合するために(又は、結合を阻害するために)、本明細書に開示のCDR又は可変領域を含む抗FAM19A5抗体と交差競合する。
【0168】
一部の態様において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分が、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む基準抗体の結合を阻害し、(i)前記基準抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、配列番号11、配列番号12及び配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記基準抗体の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、配列番号23、配列番号24及び配列番号25のアミノ酸配列を含んだり;(ii)前記重鎖CDR1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号26のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号28のアミノ酸配列を含んだり;(iii)前記重鎖CDR1は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号18のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号29のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号30のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号31のアミノ酸配列を含んだり;(iv)前記重鎖CDR1は、配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号22のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号32のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含んだり;(v)前記重鎖CDR1は、配列番号89のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号90のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号91のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号92のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号93のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号94のアミノ酸配列を含んだり;(vi)前記重鎖CDR1は、配列番号95のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号96のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号97のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号98のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号99のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号100のアミノ酸配列を含んだり;(vii)前記重鎖CDR1は、配列番号101のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号102のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号103のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号104のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号105のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号106のアミノ酸配列を含んだり;(viii)前記重鎖CDR1は、配列番号107のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号108のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号109のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号110のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号111のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号112のアミノ酸配列を含んだり;(ix)前記重鎖CDR1は、配列番号113のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号114のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号115のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号116のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号117のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号118のアミノ酸配列を含んだり;(x)前記重鎖CDR1は、配列番号119のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号120のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号121のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号122のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号123のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号124のアミノ酸配列を含んだり;(xi)前記重鎖CDR1は、配列番号125のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号126のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号127のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号128のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号129のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号130のアミノ酸配列を含んだり;(xii)前記重鎖CDR1は、配列番号131のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号132のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号133のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号134のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号135のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号136のアミノ酸配列を含んだり;(xiii)前記重鎖CDR1は、配列番号137のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号138のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号139のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号140のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号141のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号142のアミノ酸配列を含んだり;(xiv)前記重鎖CDR1は、配列番号143のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号144のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号145のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号146のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号147のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号148のアミノ酸配列を含んだり;又は(xv)前記重鎖CDR1は、配列番号149のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号150のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号151のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号152のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号153のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号154のアミノ酸配列を含む。
【0169】
一部の態様において、前記基準抗体は、(a)それぞれ配列番号35及び39を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(b)それぞれ配列番号36及び40を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(c)それぞれ配列番号37及び41を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(d)それぞれ配列番号38及び42を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(e)それぞれ配列番号155及び166を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(f)それぞれ配列番号156及び167を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(g)それぞれ配列番号157及び168を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(h)それぞれ配列番号158及び169を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(i)それぞれ配列番号159及び170を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(j)それぞれ配列番号160及び171を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(k)それぞれ配列番号161及び172を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(l)それぞれ配列番号162及び173を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(m)それぞれ配列番号163及び174を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(n)それぞれ配列番号164及び175を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;又は(o)それぞれ配列番号165及び176を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む。
【0170】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ヒトFAM19A5に対するこのような基準抗体の結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%阻害する。競合抗体は、同一のエピトープ、重複エピトープ又は隣接エピトープに結合する(例えば、立体障害によって立証される)。標的に結合するために2個の抗体がお互い競合するか否かは、RIA及びEIAのような当業界に公知の競合実験を用いて決定できる。
【0171】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分が、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む本明細書に開示の基準抗体と同じFAM19A5エピトープに結合し、(i)前記重鎖CDR1は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号12のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号23のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号25のアミノ酸配列を含んだり;(ii)前記重鎖CDR1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号26のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号28のアミノ酸配列を含んだり;(iii)前記重鎖CDR1は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号18のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号29のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号30のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号31のアミノ酸配列を含んだり;(iv)前記重鎖CDR1は、配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号22のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号32のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含んだり;(v)前記重鎖CDR1は、配列番号89のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号90のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号91のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号92のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号93のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号94のアミノ酸配列を含んだり;(vi)前記重鎖CDR1は、配列番号95のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号96のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号97のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号98のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号99のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号100のアミノ酸配列を含んだり;(vii)前記重鎖CDR1は、配列番号101のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号102のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号103のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号104のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号105のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号106のアミノ酸配列を含んだり;(viii)前記重鎖CDR1は、配列番号107のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号108のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号109のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号110のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号111のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号112のアミノ酸配列を含んだり;(ix)前記重鎖CDR1は、配列番号113のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号114のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号115のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号116のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号117のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号118のアミノ酸配列を含んだり;(x)前記重鎖CDR1は、配列番号119のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号120のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号121のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号122のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号123のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号124のアミノ酸配列を含んだり;(xi)前記重鎖CDR1は、配列番号125のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号126のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号127のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号128のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号129のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号130のアミノ酸配列を含んだり;(xii)前記重鎖CDR1は、配列番号131のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号132のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号133のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号134のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号135のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号136のアミノ酸配列を含んだり;(xiii)前記重鎖CDR1は、配列番号137のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号138のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号139のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号140のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号141のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号142のアミノ酸配列を含んだり;(xiv)前記重鎖CDR1は、配列番号143のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号144のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号145のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号146のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号147のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号148のアミノ酸配列を含んだり;又は(xv)前記重鎖CDR1は、配列番号149のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号150のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号151のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR1は、配列番号152のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2は、配列番号153のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3は、配列番号154のアミノ酸配列を含む。
【0172】
一部の態様において、前記基準抗体は、(a)それぞれ配列番号35及び39を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(b)それぞれ配列番号36及び40を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(c)それぞれ配列番号37及び41を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(d)それぞれ配列番号38及び42を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(e)それぞれ配列番号155及び166を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(f)それぞれ配列番号156及び167を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(g)それぞれ配列番号157及び168を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(h)それぞれ配列番号158及び169を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(i)それぞれ配列番号159及び170を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(j)それぞれ配列番号160及び171を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(k)それぞれ配列番号161及び172を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(l)それぞれ配列番号162及び173を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(m)それぞれ配列番号163及び174を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(n)それぞれ配列番号164及び175を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;又は(o)それぞれ配列番号165及び176を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む。
【0173】
2個の抗体が同一のエピトープに結合するか否かを決定するための技術は、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析及び水素/重水素交換質量分光分析(HDX-MS)のようなエピトープマッピング方法、抗原配列内アミノ酸残基の変形による結合損失をたいていエピトープ成分の表示として見なす抗原断片又は抗原の突然変異した変異体に対する抗体の結合をモニタリングする方法、エピトープマッピングのための電算組合せ方法(computational combinatorial method)を含む。
【0174】
本明細書に開示の方法に有用な抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、例えばヒトFAM19A5の断片に対する抗体の結合によって決定された通り、成熟したヒトFAM19A5の少なくとも1つのエピトープに結合できる。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、TLDRDSSQPRRTIARQTARC(配列番号6又は配列番号2のアミノ酸残基42~61)のアミノ酸配列内に位置した断片、例えば、配列番号6の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸を持つエピトープに結合する。一部の態様において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、アミノ酸残基46~51(すなわち、DSSQPR)、例えばアミノ酸残基46、50及び52(すなわち、D---P-R)、例えば配列番号2のアミノ酸残基46、47、48及び50(すなわち、DSS-P)に該当する1つ以上のアミノ酸で配列番号6に結合する。一部の態様において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、CDMLPCLEGEGCDLLINRSGのアミノ酸配列内に位置した断片(配列番号9又は配列番号2のアミノ酸90~109)、例えば、配列番号9の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個アミノ酸を持つエピトープに結合する。特定の態様において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、1つ以上のアミノ酸残基99~107(すなわち、EGCDLLINR)、例えばアミノ酸残基102、103、105及び107(すなわち、DL-I-R)、例えばアミノ酸残基99、100、102、103、105及び107(すなわち、EG-DL-I-R)、例えば配列番号4のアミノ酸残基99、100及び107(すなわち、EG------R)で配列番号9に結合する。
【0175】
一部の態様において、前記少なくとも1つのエピトープは、配列番号6と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を有する。一部の態様において、前記少なくとも1つのエピトープは、配列番号9と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を有する。
【0176】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号5、6、7、8、9又は10であるヒトFAM19A5エピトープ又は配列番号5、6、7、8、9又は10のアミノ酸配列内に位置した断片、例えば、配列番号5、6、7、8、9又は10の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸を有するエピトープにのみ結合する。
【0177】
一部の態様において、本開示内容の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号6又は天然立体形態(すなわち、未変性)のその断片に結合する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、配列番号9又は天然立体形態(すなわち、未変性)のその断片に結合する。他の態様において、前記少なくとも一つのエピトープは、配列番号5と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を有する。前記エピトープは、配列番号10と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも99%又は約100%同じアミノ酸配列を有する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、グリコシル化及び非グリコシル化ヒトFAM19A5の両方に結合する。
【0178】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、1つ以上の追加FAM19A5エピトープにさらに結合する。したがって、特定抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号6のエピトープ及び追加エピトープ、又は配列番号9のエピトープ及び追加エピトープに結合する。他の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号5、配列番号9のエピトープ及び追加エピトープに結合できる。一部の態様において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号6のエピトープ、配列番号10のエピトープ及び追加エピトープに結合する。
【0179】
一部の態様において、前記1つ以上の追加FAM19A5エピトープは、QLAAGTCEIVTLDR(配列番号5、エピトープF1)、TLDRDSSQPRRTIARQTARC(配列番号6、エピトープF2)、TARCACRKGQIAGTTRARPA(配列番号7、エピトープF3)、ARPACVDARIIKTKQWCDML(配列番号8、エピトープF4)、CDMLPCLEGEGCDLLINRSG(配列番号9、エピトープF5)又はNRSGWTCTQPGGRIKTTTVS(配列番号10、エピトープF6)又は配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列内に位置した断片又はこれらの任意の組合せから選択される。配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列内に位置した断片は、配列番号5、配列番号6及び配列番号7、配列番号8、配列番号9又は配列番号10の任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸を持つ断片を含む。一部の態様において、前記1つ以上の追加FAM19A5エピトープは、配列番号5、6、7、8、9又は10、又は配列番号5、6、7、8、9又は10のアミノ酸配列内に位置した断片、例えば、配列番号5、6、7、8、9又は10の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸を持つ断片、又はこれらの任意の組合せから選択される。一部の態様において、本開示内容の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、天然立体形態(すなわち、未変性)の前記1つ以上の追加エピトープのいずれかのエピトープに結合する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記グリコシル化及び非グリコシル化の1つ以上のFAM19A5エピトープの両方に結合する。
【0180】
一部の態様において、本開示内容の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、EP2、EP4及び/又はEP8として同定された少なくとも1つのFAM19A5エピトープに結合し、EP2は、アミノ酸DSSQP(配列番号66)を含んだり、前記アミノ酸から本質的になったり、又は前記アミノ酸からなり、EP4は、アミノ酸ARCACRK(配列番号68)を含んだり、前記アミノ酸から本質的になったり、又は前記アミノ酸からなり、EP8は、アミノ酸TCTQPGGR(配列番号72)を含んだり、前記アミノ酸から本質的になったり、又は前記アミノ酸からなる。一部の態様において、前記少なくとも1つのエピトープは、EP2、EP4又はEP8と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を有する。一部の態様において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分のみがEP2に結合する。一部の態様において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、EP4及びEP8に結合する。
【0181】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、EP6、EP7又はEP8として同定された少なくとも1つのFAM19A5エピトープに結合し、EP6は、アミノ酸KTKQWCDML(配列番号70)を含み、EP7は、アミノ酸GCDLLINR(配列番号71)を含み、EP8は、アミノ酸TCTQPGGR(配列番号72)を含む。一部の態様において、前記少なくとも1つのエピトープは、EP6、EP7又はEP8と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を有する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、EP6、EP7又はEP8にのみ結合する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、EP6、EP7及びEP8に結合する。一部の態様において、前記抗FAM9A5抗体又はその抗原結合部分は、EP7及びEP8に結合する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はEP7に結合する。
【0182】
一部の態様において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72及びこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる1つ以上のFAM19A5エピトープに結合する。
【0183】
一部の態様において、本明細書は、例えば免疫分析(例えば、ELISA)、表面プラズマ共鳴又は力学的排除分析によって測定した時、FAM19Aファミリーにおける他のタンパク質に比べて20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより高い親和度でFAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に結合する抗体又はその抗原結合部分を提供する。特定の具現例において、本明細書は、例えば免疫分析によって測定した時、FAM19Aファミリーにおけるさらに他のタンパク質との交差反応性無しでFAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に結合する抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0184】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、天然抗体でないか、或いは自然発生抗体ではない。例えば、前記抗FAM19A5抗体は、例えば、より多い又はより少ないか、又は互いに異なる類型の翻訳後変形を有することによって、自然発生抗体と異なる翻訳後変形を有する。
【0185】
<IV.例示的な抗FAM19A5抗体>
本明細書に開示の方法で使用できる特定抗体は、本明細書に開示のCDR及び/又は可変領域配列を有する抗体、例えば、単クローン抗体だけでなく、これらの可変領域又はCDR配列に少なくとも80%同一性(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は99%の同一性)を有する抗体である。前記異なる抗FAM19A5抗体に対するVH及びVL CDRに対するアミノ酸配列がそれぞれ、表2及び表3に提供されている。次のような抗体に対するCDRは、Kabat番号表記体系(上記を参照)を用いて同定した:1-65、3-2、2-13、1-28、P2-C12、13B4、13F7、15A9、Pl-A03、P1-A08、P1-F02、P2-A01、P2-A03、P2-F07、P2-F11、SS01-13、SS0l-13-s5及びS5-2.GKNG。次のような抗体に対するCDRは、IMGT番号表記体系(上記を参照)を用いて同定した:1-7A-IT、Low-PI、1-30、1-17、1-32、4-11、6-10、2-13D、2-13D-37、2-13D-37-1.5W-41及び2-13D-37-3W-16。本開示内容の個別の抗FAM19A5抗体のVH及びVLアミノ酸配列がそれぞれ表4及び5に提供されている。
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
したがって、本明細書は、重鎖及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号:35-38、155-165又は232-240のアミノ酸配列を含む、分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分を提供する(表4参照)。他の態様において、前記分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号35-38、155-165又は232-240からなる群から選ばれる重鎖可変領域のCDRを含む(表4参照)。
【0199】
本明細書はまた、重鎖及び軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号39-42、166-176又は241-250のアミノ酸配列を含む抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分を提供する(表5参照)。他の態様において、前記分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号:39-42、166-176又は241-250からなる群から選ばれる軽鎖可変領域のCDRを含む(表5参照)。
【0200】
特定の態様において、前記分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、配列番号:35-38、155-165又は232-240からなる群から選ばれる重鎖可変領域のCDR及び配列番号39-42、166-176又は241-250からなる群から選ばれる軽鎖可変領域のCDRを含む。
【0201】
本明細書はまた、重鎖及び軽鎖可変領域を含み、(i)前記重鎖可変領域は、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号39のアミノ酸配列を含み;(ii)前記重鎖可変領域は、配列番号36のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号40のアミノ酸配列を含み;(iii)前記重鎖可変領域は、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含み;(iv)前記重鎖可変領域は、配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号42のアミノ酸配列を含み;(v)前記重鎖可変領域は、配列番号155のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号166のアミノ酸配列を含み;(vi)前記重鎖可変領域は、配列番号156のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号167のアミノ酸配列を含み;(vii)前記重鎖可変領域は、配列番号157のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号168のアミノ酸配列を含み;(viii)前記重鎖可変領域は、配列番号158のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号169のアミノ酸配列を含み;(ix)前記重鎖可変領域は、配列番号159のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号170のアミノ酸配列を含み;(x)前記重鎖可変領域は、配列番号160のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号171のアミノ酸配列を含み;(xi)前記重鎖可変領域は、配列番号161のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号172のアミノ酸配列を含み;(xii)前記重鎖可変領域は、配列番号162のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号173のアミノ酸配列を含み;(xiii)前記重鎖可変領域は、配列番号163のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号174のアミノ酸配列を含み;(xiv)前記重鎖可変領域は、配列番号164のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号175のアミノ酸配列を含み;及び(xv)前記重鎖可変領域は、配列番号165のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号176のアミノ酸配列を含む、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分を提供する。一部の態様において、分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHは、表4に示すVH配列を含み、前記VLは、表5に示すVL配列を含む。
【0202】
本明細書は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号35-38、155-165又は232-240に示すアミノ酸配列(表4参照)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む、分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0203】
本明細書はまた、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号39-42、166-176又は241-250に示すアミノ酸配列(表5参照)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む、分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0204】
本明細書はまた、重鎖及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号35-38、155-165又は232-240に示すアミノ酸配列(表4参照)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号39-42、166-176又は241-250に示すアミノ酸配列(表5参照)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む、分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0205】
一部の態様において、本開示内容は:
(a)それぞれ配列番号35及び39を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(b)それぞれ配列番号36及び40を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(c)それぞれ配列番号37及び41を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(d)それぞれ配列番号38及び42を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(e)それぞれ配列番号155及び166を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(f)それぞれ配列番号156及び167を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(g)それぞれ配列番号157及び168を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(h)それぞれ配列番号158及び169を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(i)それぞれ配列番号159及び170を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(j)それぞれ配列番号160及び171を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(k)それぞれ配列番号161及び172を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(l)それぞれ配列番号162及び173を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(m)それぞれ配列番号163及び174を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(n)それぞれ配列番号164及び175を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(o)それぞれ配列番号165及び176を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(p)それぞれ配列番号232及び241を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(q)それぞれ配列番号233及び242を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(r)それぞれ配列番号234及び242を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(s)それぞれ配列番号235及び243を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(t)それぞれ配列番号236及び244を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(u)それぞれ配列番号236及び245を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(v)それぞれ配列番号236及び246を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(w)それぞれ配列番号236及び247を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(x)それぞれ配列番号236及び248を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(y)それぞれ配列番号236及び249を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(z)それぞれ配列番号237及び250を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(aa)それぞれ配列番号238及び250を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(bb)それぞれ配列番号239及び250を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;又は
(cc)それぞれ配列番号240及び250を含む重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、分離された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0206】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、(i)2-13の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は2-13の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ;(ii)3-2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は3-2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(iii)1-65の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は1-65の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(iv)1-28の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は1-28の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(v)P2-C12の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はP2-C12の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(vi)13B4の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は13B4の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(vii)13F7の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は13F7の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(viii)15A9の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は15A9の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(ix)P1-A03の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はP1-A03の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(x)P1-A08の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はP1-A08の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xi)P1-F02の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はP1-F02の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xii)P2-A01の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はP2-A01の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xiii)P2-A03の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はP2-A03の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xiv)P2-F07の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はP2-F07の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xv)P2-F11の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はF2-F11の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xvi)SS01-13の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はSS01-13の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xvii)SS01-13-s5の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はSS01-l3-s5の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xviii)S5-2.GKNGの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はS5-2.GKNGの軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xix)1-7A-ITの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は1-7A-ITの軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xx)Low-PIの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又はLow-PIの軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xxi)1-30の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は1-30の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xxii)1-17の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は1-17の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xxiii)1-32の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は1-32の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xxiv)4-11の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は4-11の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xxv)6-10の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は6-10の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xxvi)2-13Dの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は2-13Dの軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xxvii)2-13D-37の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は2-13D-37の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの任意の組合せ;(xxviii)2-13D-37-1.5W-41の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は2-13D-37-1.5W-41の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3-41又はこれらの任意の組合せ;又は(xxiv)2-13D-37-3W-16の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せ及び/又は2-13D-3W-16の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3又はこれらの組合せを含む。本明細書に開示の異なる抗FAM19A5抗体に対するVH CDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、表2に提供されている。本明細書に開示の異なる抗FAM19A5抗体に対するVL CDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、表3に提供されている。
【0207】
一部の態様において、本開示内容の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は:
(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR1;及び/又は
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR2;及び/又は
(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む。
【0208】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VH CDRの1個、2個又は3個のいずれをも含む。
【0209】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は:
(a)配列番号23のアミノ酸配列を含むVL CDR1;及び/又は
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(c)配列番号25のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0210】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VL CDRの1個、2個又は3個のいずれをも含む。
【0211】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は:
(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(f)配列番号25のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0212】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は:
(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH CDR2;及び/又は
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む。
【0213】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VL CDRの1個、2個又は3個のいずれをも含む。
【0214】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はヒトFAM19A5に特異的に結合し:
(a)配列番号26のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(c)配列番号28のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0215】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VL CDRの1個、2個又は3個のいずれをも含む。
【0216】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はヒトFAM19A5に特異的に結合し:
(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(d)配列番号26のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)配列番号27のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0217】
一部の態様において、本開示内容の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はヒトFAM19A5に特異的に結合し:
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;及び/又は
(c)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む。
【0218】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VH CDRの1個、2個又は3個のいずれをも含む。
【0219】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はヒトFAM19A5に特異的に結合し:
(a)配列番号29のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(b)配列番号30のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(c)配列番号31のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0220】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VL CDRの1個、2個又は3個のいずれをも含む。
【0221】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はヒトFAM19A5に特異的に結合し:
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(d)配列番号29のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)配列番号30のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(f)配列番号31のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0222】
一部の態様において、本開示内容の前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はヒトFAM19A5に特異的に結合し:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR2;及び/又は
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む。
【0223】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VH CDRの1個、2個又は3個のいずれをも含む。
【0224】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はヒトFAM19A5に特異的に結合し:
(a)配列番号32のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(b)配列番号33のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(c)配列番号34のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0225】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VL CDRの1個、2個又は3個のいずれをも含む。
【0226】
一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はヒトFAM19A5に特異的に結合し:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)配列番号33のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(f)配列番号34のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0227】
特定の態様において、前記抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記CDRの1個、2個、3個、4個、5個又は6個を含む。
【0228】
本明細書に記載のVHドメイン又はその1つ以上のCDRは、重鎖、例えば全長(full length)重鎖を形成するための定常ドメインに連結され得る。類似に、本明細書に記載のVLドメイン又はその1つ以上のCDRは、軽鎖、例えば全長軽鎖を形成するための定常ドメインに連結され得る。全長重鎖及び全長軽鎖は組み合わせて全長抗体を生成する。
【0229】
したがって、特定の態様において、本明細書は、抗体軽鎖及び重鎖、例えば、別個の軽鎖及び重鎖を含む抗体を提供する。前記軽鎖と関連して、特定の態様において、本明細書に記載の抗体の軽鎖は、カッパ(kappa)軽鎖である。他の特定の態様において、本明細書に記載の抗体の軽鎖は、ラムダ(lambda)軽鎖である。さらに他の特定の態様において、本明細書に記載の抗体の軽鎖は、ヒトカッパ軽鎖又はヒトラムダ軽鎖である。特定の態様において、FAM19A5ポリペプチド(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載された任意のVL又はVL CDRアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、前記軽鎖の定常領域は、ヒトカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、FAM19A5ポリペプチド(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載されたVL又はVL CDRアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、前記軽鎖の定常領域は、ヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。ヒト定常領域配列の非制限的な例は、当業界に記載されている。例えば、米国特許番号5,693,780及び上のKabat EA et al,(1991)を参照されたい。
【0230】
前記重鎖と関連して一部の態様において、本明細書に記載の抗体の重鎖は、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)又はミュー(μ)重鎖であり得る。他の特定の態様において、記載された抗体の重鎖は、ヒトアルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)又はミュー(μ)重鎖を含むことができる。一態様において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に開示のVH又はVH CDRアミノ酸配列を含む重鎖を含み、前記重鎖の定常領域は、重鎖はヒトガンマ(γ)重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。他の態様において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に開示のVH又はVH CDRアミノ酸配列を含む重鎖を含み、前記重鎖の定常領域は、本明細書に記載又は当業界に公知のヒト重鎖のアミノ酸を含む。ヒト定常領域配列の非制限的な例は、当業界に記載されている。例えば、米国特許番号5,693,780及び上のKabat EA et al.,(1991)を参照されたい。
【0231】
一部の態様において、本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載されたVH又はVH CDRとVL及びVL CDRを含むVLドメイン及びVHドメインを含み、前記定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子又はヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子の定常領域のアミノ酸配列を含む。他の特定の態様において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載された任意のアミノ酸配列を含むVLドメイン及びVHドメインを含み、前記定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子及び任意の亜型の免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl及びIgA2)の定常領域のアミノ酸配列を含む。一部の態様において、前記定常領域は、亜型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)及び同種異因子型(例えば、Glm、G2m、G3m及びnG4m)及びこれらの変種を含む天然ヒトIgGの定常領域のアミノ酸配列を含む。例えば、Vidarsson G.et al.Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)及びJefferis R.and Lefranc MP,mAbs 1:4,1-7(2009)を参照されたい。一部の態様において、前記定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4又はこれらの変種の定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0232】
特定の態様において、本明細書に開示の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、Fc効果器機能、例えば、補体依存性細胞毒性(CDC)及び/又は抗体依存性細胞性食菌作用(ADCP)を持たない。効果器機能は、Fc領域によって媒介され、前記Fc領域のCH2ドメインにおいてヒンジ領域に最も近接した残基は、先天性免疫系の効果器細胞上でClq(補体)及びIgG-Fc受容体(FcγR)に対して大きく重なる結合部位を含むので、抗体の効果器機能を担当する。また、IgG2及びIgG4抗体は、IgG1及びIgG3抗体よりも低いレベルのFc効果器機能を有する。抗体の効果器機能は、(1)Fc領域が欠如している抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、単鎖Fv(scFv)又はモノマーVH又はVLドメインからなるsdAbのような)を用い;(2)例えば、糖が付着している残基を欠失又は変更することによって、糖を酵素的に除去することによって、グリコシル化阻害剤の存在の下に培養された細胞において抗体を生成することによって、又はタンパク質をグリコシル化できない細胞(例えば、バクテリア宿主細胞、例えば米国特許公開第20120100140号参照)において抗体を発現させることによって、無糖化抗体を生成し;(3)効果器機能が減少したIgG亜型のFc領域を用い(例えば、IgG2及びIgG4抗体の領域又はIgG2及びIgG4抗体のCH2ドメインを含むキメラFc領域、例えば米国特許公開第20120100140号及びLau C.et al.J.Immunol.191:4769-4777(2013)参照);及び(4)Fc機能を減少させたり或いはなくす突然変異を持つFc領域を生成させることを含めて当業界に公知の異なる接近法によって減少又は回避され得る。例えば、米国特許公開第20120100140号及びそこに引用されている米国及びPCT出願及びAn et al,mAbs 1:6,572-579(2009)を参照されたい。
【0233】
これによって、一部の態様において、本明細書に開示の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖Fv(scFv)又は単量体VH又はVLドメインからなるsdAbである。このような抗体断片は当業界によく知られており、上に記載されている。
【0234】
一部の態様において、本明細書に開示の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、Fc効果器機能が減少したり或いは存在しないFc領域を含む。一部の態様において、前記定常領域は、ヒトIgG2又はIgG4のFc領域のアミノ酸配列を含み、一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、IgG2/IgG4アイソ型を有する。一部の態様において、前記抗FAM19A5抗体は、IgG4アイソ型のIgG抗体のCH2ドメイン及びIgG1アイソ型のIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域、又はIgG2のヒンジ領域とIgG4のCH2領域を含むキメラFc領域、又はFc効果器機能が減少したり或いは存在しない突然変異を持つFc領域を含む。Fc効果器機能が減少したり或いは存在しないFc領域は、当業界に公知されたものを含む。例えば、Lau
C.et al,J.Immunol.191:4769-4777(2013);An et al,mAbs 1:6,572-579(2009);及び米国特許公開番号20120100140及びそこに引用されている米国特許及び公開公報及びPCT公開公報を参照されたい。また、Fc効果器機能が減少したり或いは存在しないFc領域は、当業者であれば容易に作ることができる。
【0235】
<V.核酸分子>
本明細書に記載されたさらに他の態様は、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分のいずれか一つをコードする一つ以上の核酸分子に関する。前記核酸は、全細胞(whole cell)、細胞溶解物、又は一部精製されたり実質的に純粋な形態で存在できる。核酸は、他の細胞成分又は他の汚染物質、例えば他の細胞核酸(例えば、他の染色体DNA、例えば、自然から分離されたDNAに連結された染色体DNA)又はタンパク質からアルカリ/SDS処理、CsClバンディング(banding)、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動及び当業界に公知のその他の技術を含む標準技術によって精製されるときに“分離”されたり“実質的に純粋”になる。F.Ausubel,elal.,ed.(1987)Current Protocols in
Molecular Biology,Greene Publishing and
Wiley Interscience,New Yorkを参照されたい。本明細書に記載の核酸は、例えば、DNA又はRNAであり得、イントロン配列を含有しても含有しなくてもよい。特定の態様において、前記核酸はcDNA分子である。
【0236】
本明細書に記載の核酸は、標準分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマによって発現した抗体(例えば、下にさらに説明されているように、ヒト免疫グロブリン遺伝子を運搬する遺伝子導入マウスから製造されたハイブリドーマ)の場合、ハイブリドーマによって作られた抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準PCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて)得た抗体の場合、前記抗体をコードする核酸をライブラリーから回収できる。
【0237】
特定核酸分子は、本開示内容の様々な抗FAM19A5抗体のVH及びVL配列をコードするものである。このような抗体のVH配列をコードする例示的なDNA配列は、配列番号43-46及び177に示されている。このような抗体のVL配列をコードする例示的なDNA配列は、配列番号47-50及び178に示されている。
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
本明細書に開示の抗FAM19A5抗体を製造するための方法は、前記抗体の関連重鎖及び軽鎖、例えば、それぞれ配列番号43及び47、配列番号44及び48、配列番号45及び49、配列番号46及び50、配列番号177及び178を信号ペプチドと共に、前記重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む細胞株で発現することを含むことができる。これらのヌクレオチド配列を含む宿主細胞は、本明細書に含まれる。
【0244】
VH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られると、これらのDNA断片は、標準組換えDNA技術によってさらに操作し、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子又はscFv遺伝子に変換できる。これらの操作においてVL又はVH-コーディングDNA断片は、抗体定常領域又は可撓性リンカーのようなさらに他のタンパク質をコードするさらに他のDNA断片に作動的に連結される。これと関連して使われた用語“作動的に連結”は、2個のDNA断片が接合して前記2個のDNA断片によってコードされたアミノ酸配列がフレーム内残っていることを意味するよう意図される。
【0245】
VH領域をコードする分離されたDNAは、VH-コーディングDNAを重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2及び/又はCH3)をコードするさらに他のDNA分子に作動的に連結することによって、全長重鎖遺伝子に転換可能である。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当業界に公知であり(例えば、Kabat,EA,el al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication
No.91-3242参考)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域、例えばIgG2及び/又はIgG4定常領域であり得る。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VH-コーディングDNAは、重鎖CH1定常領域だけをコードするさらに他のDNA分子に作動的に連結され得る。
【0246】
VL領域をコードする分離されたDNAは、VL-コーディングDNAを軽鎖定常領域(CL)をコードするさらに他のDNA分子に作動的に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(のみならず、Fab軽鎖遺伝子)に転換可能である。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当業界に公知であり(例えば、Kabat,EA,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域であり得る。
【0247】
scFv抗体を生成するために、前記VH-及びVL-コーディングDNA断片は、可撓性リンカー、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードするさらに他の断片に作動的に連結され、前記VH及びVL配列が、VL及びVH領域が可撓性リンカーによって接合された隣接単鎖タンパク質として発現し得る(例えば、Bird et al、(1988)Science 242:423-426;Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-554参照)。
【0248】
一部の態様において、本開示内容は、抗体又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む分離された核酸分子を含むベクターを提供する。他の態様において、前記ベクターは、遺伝子治療のために用いることができる。
【0249】
本開示内容に適するベクターは、発現ベクター、ウイルスベクター及びプラスミドベクターを含む。一態様において、前記ベクターは、ウイルスベクターである。
【0250】
本明細書で用いる発現ベクターとは、挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳に必要な要素を含む任意の核酸構造体のことを指すか、或いはRNAウイルスベクターでは、適切な宿主細胞への導入時、複製と翻訳に必要な要素のことを指す。発現ベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス及びこれらの誘導体を含むことができる。
【0251】
本開示内容の発現ベクターは、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。一態様において、前記抗体又はその抗原結合部分に対するコーディング配列は、発現調節配列に作動可能に連結される。本明細書で用いる2個の核酸配列は、各成分核酸配列がその機能を維持するように許容する方式で共有結合される時に作動可能に連結される。コーディング配列及び遺伝子発現調節配列は、コーディング配列の発現又は転写及び/又は翻訳を遺伝子発現調節配列の影響又は制御の下にあるように共有結合される時に作動可能に連結されているとする。5’遺伝子発現配列においてプロモーターの誘導がコーディング配列の転写を起こし、2個のDNA配列間の結合特性が、(1)フレーム-移動(frame-shift)突然変異の導入を起こさいか、(2)コーディング配列の転写を指示するプロモーター領域の能力を妨害しないか、又は(3)タンパク質に翻訳される相応するRNA転写体の能力を妨害しない場合に、2個のDNA配列が作動可能に連結されているとする。これによって、遺伝子発現配列がコーディング核酸配列の転写に影響を及ぼし得る場合、前記遺伝子発現配列は、コーディング核酸配列に作動可能に連結されて生成された転写体が所望の抗体又はその抗原結合部分に翻訳される。
【0252】
ウイルスベクターは、次のようなウイルスの核酸配列を含むが、これに限定されるものではない:レトロウイルス、例えば、モロニー(Moloney)マウス白血病ウイルス、ハーベイ(Harvey)マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス及びラウス(Rous)肉腫ウイルス;レンチウイルス;アデノウイルス;アデノ関連ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタインバール(Epstein-Barr)ウイルス;乳頭腫ウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;小児痲痺ウイルス;及びレトロウイルスのようなRNAウイルス。当業界に公知の他のベクターを容易に用いることができる。特定ウイルスベクターは、非必須遺伝子が関心遺伝子に代替された非細胞病性真核ウイルスに基づく。非細胞病性ウイルスには、ライフサイクルがゲノムウイルスRNAをDNAに逆転写した後、続いて宿主細胞DNAにプロウイルス統合することを伴うレトロウイルスが含まれる。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治療試験のために承認された。最も有用なのは、複製欠陥のあるレトロウイルスである(すなわち、所望のタンパク質の合成を指示できるが、感染性粒子は生成できない。)。このような遺伝的に変形されたレトロウイルス発現ベクターは、生体内で遺伝子の高効率形質導入において一般的に有用である。複製欠陥のあるレトロウイルスの生産のための標準プロトコル(外因性遺伝物質をプラスミドに混入する段階、プラスミドを用いてパッケージ細胞株を形質注入させる段階、パッケージ細胞株によって組換えレトロウイルスを生産する段階、組織培養培地からウイルス粒子を回収する段階、及びウイルス粒子に標的細胞を感染させる段階を含む。)は、Kriegler,M.,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,W.H Freeman Co.,New York(1990)and Murry,E.T,Methods in Molecular Biology,Vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,N.J.(1991)に提供されている。
【0253】
一態様において、前記ウイルスは、二重鎖DNAウイルスであるアデノ関連ウイルスである。アデノ関連ウイルスは、複製欠陥があるように操作されてよく、広範囲な細胞類型及び種を感染させることができる。また、熱及び脂質溶媒安定性;造血細胞を含む様々な系統の細胞で高い形質導入頻度;重複感染阻害が欠如し、様々な一連の形質導入が可能であるという長所がある。報告によれば、アデノ関連ウイルスは、部位特異的方式でヒト細胞DNAに統合され得るので、挿入突然変異の誘発可能性とレトロウイルス感染の挿入された遺伝子発現特性の可変性を最小化できる。また、野生型アデノ関連ウイルス感染は、選択的圧力がない状態で100回も超える継代中に組織培養で追跡され、これは、アデノ関連ウイルスゲノム統合が比較的安定した反応であることを意味する。アデノ関連ウイルスは、染色体外方式で作用してもよい。
【0254】
他の態様において、前記ベクターは、レンチウイルスから由来する。特定の態様において、前記ベクターは、非分裂細胞を感染させ得る組換えレンチウイルスのベクターである。
【0255】
レンチウイルスゲノムとプロウイルスDNAは一般に、レトロウイルスから発見する2個の長い末端反復(LTR)配列が両側にある3個の遺伝子であるgag、pol及びenvを有する。gag遺伝子は、内部構造(マトリックス、カプシド及びヌクレオカプシド)タンパク質をコードし;pol遺伝子は、RNA-指向DNA重合酵素(逆転写酵素)、プロテアーゼ及びインテグラーゼをコードし;env遺伝子は、ウイルス外皮糖タンパク質をコードする。5’及び3’LTRは、ビリオンRNAの転写及びポリアデニル化を促進する役割を担う。LTRは、ウイルス複製に必要な他の全てのシス-作用(cis-acting)配列を含む。レンチウイルスは、vif、vpr、tat、rev、vpu、nef及びvpx(HIV-1、HIV-2及び/又はSIVにおいて)を含む追加遺伝子を持っている。
【0256】
前記ゲノム(tRNAプライマー結合部位)の逆転写及びウイルスRNAを粒子(Psi部位)に効率的に封入するために必要な配列が5’LTRに隣接している。封入(又は、レトロウイルスRNAを感染性ビリオンにパッケージング)に必要な配列がウイルスゲノムから欠落している場合、シス欠陥(cis defect)はゲノムRNAの封入を防ぐ。
【0257】
しかし、その結果、得られた突然変異体は、全てのビリオンタンパク質の合成を指示できる状態で残っている。本開示内容は、パッケージング機能を保有している2個以上のベクター、すなわち、gag、pol及びenvだけでなく、rev及びtatを用いて好適な宿主細胞を形質注入させることを含む、非分裂細胞を感染させ得る組換えレンチウイルスを生産する方法を提供する。下に開示されるように、機能性tat遺伝子が欠如したベクターは、特定用途に好適である。これによって、例えば、第1ベクターは、ウイルスgag及びウイルスpolをコードする核酸を提供でき、さらに他のベクターは、パッケージング細胞を生産するためにウイルスenvをコードする核酸を提供できる。本明細書において、伝達ベクターとして同定された異種遺伝子を提供するベクターをパッケージング細胞に導入すれば、関心外来遺伝子を運搬する感染性ウイルス粒子を放出するプロデューサー細胞(producer cell)が得られる。
【0258】
上に述べたベクター及び外来遺伝子の構成によれば、第2ベクターは、ウイルス外皮(env)遺伝子をコードする核酸を提供することができる。前記env遺伝子は、レトロウイルスを含む略全ての好適なウイルスから由来し得る。一部の態様において、前記envタンパク質は、ヒト及び他の種の細胞の形質導入を可能にする両種性外皮タンパク質である。
【0259】
レトロウイルス由来のenv遺伝子の例は、次を含むが、これに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV又はMMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV又はHSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV又はMMTV)、テナガザル白血病ウイルス(Gibbon Ape Leukemia Virus)、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)、及びラウス肉腫ウイルス。水疱性口内炎(Vesicular
stomatitis)ウイルス(VSV)タンパク質G(VSV G)のような他のenv遺伝子、肝炎ウイルス及びインフルエンザーの遺伝子も用いられ得る。
【0260】
ウイルスenv核酸配列を提供するベクターは、本明細書の他の箇所に記載されている調節配列と作動可能に関連される。
【0261】
特定の態様において、前記ベクターは、ベクターが非分裂細胞を形質導入させる能力を損傷させずにHIV毒性遺伝子env、vif、vpr、vpu及びnefが欠失されたレンチウイルスベクターを含む。
【0262】
一部の態様において、前記ベクターは、3’LTRのU3領域の欠失を含むレンチウイルスベクターを含む。U3領域の欠失は、全体欠失又は部分欠失であり得る。
【0263】
一部の態様において、本明細書に記載のFVIIIヌクレオチド配列を含む本開示内容のレンチウイルスベクターは、(a)gag、pol又はgag及びpol遺伝子を含む第1ヌクレオチド配列、及び(b)異種env遺伝子を含む第2ヌクレオチド配列を用いて形質注入されてよく;このとき、前記レンチウイルスベクターは、機能性tat遺伝子が欠如している。他の態様において、前記細胞は、rev遺伝子を含む第4ヌクレオチド配列を用いてさらに形質注入される。特定の態様において、前記レンチウイルスベクターは、vif、vpr、vpu、vpx及びnef又はこれらの組合せから選択される機能性遺伝子が欠如している。
【0264】
特定の態様において、レンチウイルスベクターは、gagタンパク質、Rev反応要素、中心ポリプリントラック(cPPT)、又はこれらの任意の組合せをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0265】
レンチウイルスベクターの例は、W09931251、W09712622、W09817815、W09817816及びW09818934に開示されており、これらはその全文が本明細書に参考として含まれる。
【0266】
他のベクターは、プラスミドベクターを含む。プラスミドベクターは、当業界に広範囲に記述されており、本技術分野の当業者には周知である。例えば、Sambrook el al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989参照。ここ数年間、プラスミドベクターは宿主ゲノム内で複製して宿主ゲノムに統合できないことから、生体内で細胞に遺伝子を伝達するのに特に有利なものとして明らかになった。しかし、宿主細胞と相溶性であるプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内に作動可能にコードされた遺伝子からペプチドを発現することができる。商業用供給社から入手でき、一般的に用いられる一部のプラスミドは、pBR322、pUCl8、pUCl9、様々なpcDNAプラスミド、pRC/CMV、様々なpCMVプラスミド、pSV40及びpBlueScriptを含む。特定プラスミドの追加例は、pcDNA3.1、カタログ番号V79020;pcDNA3.1/hygro、カタログ番号V87020;pcDNA4/myc-His、カタログ番号V86320;及びpBudCE4.l、カタログ番号V53220(いずれも、Invitrogen(Carlsbad,CA)社製)である。他のプラスミドは当業者によく知られている。さらに、プラスミドはDNAの特定断片を除去及び/又は追加するために標準分子生物学技術を用いてカスタマイズ設計され得る。
【0267】
<VI.抗体生産>
FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に免疫特異的に結合する抗体又はその断片は、抗体の合成のために当業界に公知の任意の方法、例えば化学的合成又は組換え発現技術によって生成され得る。本明細書に開示された方法は、特に言及がない限り、分子生物学、微生物学、遺伝子分析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成及び変形、核酸混成化、及び当業界の関連技術分野における従来の技術を利用する。これらの技術は、例えば、本明細書で援用された参考文献に完全に説明されている。例えば、Maniatis T et al.,(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Sambrook J et al.,(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor
Laboratory Press;Sambrook J et al.,(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold
Spring Harbor,NY;Ausubel FM et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987 and annual updates);Current Protocols in Immunology,John Wiley
& Sons(1987 and annual updates)Gait(ed.)(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein(ed.)(1991)Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,IRL Press;Birren B et al.,(eds.)(1999)Genome Analysis:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参考されたい。
【0268】
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、例えば、合成、DNA配列の遺伝子操作を用いた生成を伴う任意の手段によって製造、発現、生成又は分離した抗体(例えば、組換え抗体)である。特定の実施形態において、このような抗体は、生体内動物又は哺乳類(例えば、ヒト)の抗体ジャームライン(germline)レパートリー内に自然的に存在しない配列(例えば、DNA配列又はアミノ酸配列)を含む。
【0269】
<VII.薬剤学的組成物>
本明細書は、生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)Mack Publishing Co.,Easton,PA)において所望の程度の純度を持つ、本明細書に記載された抗体又はその抗原結合部分を含む組成物を提供する。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、使用された投与量及び濃度において、受容者に非毒性であり、ホスフェート、シトレート及びその他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールのような);低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン(lysine)のようなアミノ酸;単糖類、二糖類及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールのような糖;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEENTMTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤を含む。
【0270】
一部の態様において、薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体に、本明細書に記載された抗体又はその抗原結合部分、二重特異的分子又は免疫複合体を含む。一部の態様において、薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体に、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分の有効量及び場合によって1つ以上の追加予防剤又は治療剤を含む。一部の態様において、前記抗体は、前記薬剤学的組成物に含まれた唯一の活性成分である。本明細書に記載の薬剤学的組成物は、FAM19A5活性を減少させ、緑内障のような眼球疾患、障害、又は症状を治療するのに有用であり得る。
【0271】
非経口製剤において用いられる薬剤学的に許容される担体は、水性ビークル、非水性ビークル、抗微生物剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所痲酔剤、懸濁及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート化剤及びその他の薬剤学的に許容される物質を含む。水性ビークルの例は、塩化ナトリウム注射液、点滴注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及びラクテート点滴注射液を含む。非水性非経口ビークルは、植物起源の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油及びピーナッツ油を含む。静菌又は静真菌濃度の抗微細物剤がフェノール又はクレゾール、水銀含有物質、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシベンゾ酸エステル、チメロサール、ベンザルコニウムクロリド及びベンゼトニウムクロリドを含む多回容量容器にパッケージされた非経口製剤に添加され得る。等張化剤は、塩化ナトリウム及びデキストロースを含む。緩衝剤は、ホスフェート及びシトレートを含む。抗酸化剤は、硫酸水素ナトリウムを含む。局所痲酔剤は、プロカイン塩酸塩を含む。懸濁及び分散剤は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンを含む。乳化剤は、Polysorbate 80(TWEEN(登録商標) 80)を含む。金属イオンの封鎖剤又はキレート化剤は、EDTAを含む。薬剤学的担体はまた、水混和性ビークル用エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール;及びpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸を含む。
【0272】
本開示内容の薬剤学的組成物は、対象に対する任意の投与経路のために剤形化できる。一部の態様において、本明細書に開示の薬剤学的組成物は、眼のテノン嚢下、結膜下、脈絡膜上、硝子体内及び類似位置に、前記組成物を伝達できる任意の経路で投与できる。特定の態様において、本明細書に開示の薬剤学的組成物は、対象に眼球投与で伝達される。一部の態様において、眼球投与は、硝子体内投与を含む。本明細書では、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注射を特徴とする非経口投与も考慮される。注射剤は、従来の形態であり、液体溶液や懸濁液、注射前に液体中溶液又は懸濁液に適した固体形態で製造されたり又は乳化液として製造され得る。注射剤、溶液及び乳化液はまた、1つ以上の賦形剤を含有する。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール又はエタノールである。また、必要な場合、投与する薬剤学的組成物はまた、少量の湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解度増進剤のような非毒性補助物質及び例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレート及びシクロデキストリンのような製剤を含有できる。
【0273】
抗体の非経口投与用製剤は、注射用即席滅菌液、皮下注射用錠剤を含めて使用直前に溶媒と即席で調合できる凍結乾燥粉末のような滅菌乾燥可溶性製品、注射用即席滅菌懸濁液、使用直前にビークルと即席調合できる滅菌乾燥不溶性製品及び滅菌乳化液を含む。前記溶液は、水性又は非水性であり得る。
【0274】
静脈内投与の場合、適切な担体は、生理食塩水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)及びグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの混合物のような増粘剤と可溶化剤を含有する溶液を含む。
【0275】
抗体を含む局所用混合物は、局所及び全身投与に対して記載の通りに製造される。その結果として得た混合物は、溶液、懸濁液、乳化液などであり得、クリーム、ゲル、軟膏、乳化液、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ、ペースト、フォーム、エアゾール、灌注液(irrigation)、スプレー、坐薬、包帯、皮膚パッチ又は局所投与に適した任意の他の剤形として剤形化できる。
【0276】
本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分は、例えば、吸入による局所用エアゾールとして剤形化できる(例えば、炎症性疾患、特に、喘息治療に有用なステロイド伝達用エアゾールを記載している米国特許第4,044,126,4,414,209号及び第4,364,923号を参照)。気道投与用のこれらの剤形は、噴霧器用エアゾール又は溶液形態であるか、吸入剤用微細粉末であり、単独又はラクトースのような非活性担体と組み合わせることができる。このような場合、剤形の粒子は、一態様において、50ミクロン未満の直径、一態様では10ミクロン未満の直径を有する。
【0277】
本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分は、目におけるような皮膚と粘膜への局所塗布のように局所用又は局部用に、ゲル、クリーム及びローションの形態で、及び目に適用又は槽内(intracisternal)又は脊髄内適用のために製剤化できる。局所投与は、経皮伝達用にそして目や粘膜投与用又は吸入療法用にも考慮される。前記抗体の点鼻液(nasal solution)は、単独で、或いは他の薬剤学的に許容される賦形剤との組合せで投与できる。
【0278】
イオン泳動及び電気泳動デバイスを含む経皮パッチは、当業者には周知であり、抗体を投与するために用いることができる。例えば、このようなパッチは、米国特許番号第6,267,983号、第6,261,595号、第6,256,533号、第6,167,301号、第6,024,975号、第6,010,715号、第5,985,317号、第5,983,134号、第5,948,433号及び第5,860,957号に開示されている。
【0279】
一部の態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分を含む薬剤学的組成物は、溶液、乳化液及びその他の混合物として投与用に再構成できる凍結乾燥粉末である。前記凍結乾燥粉末はまた、固体又はゲルとして再構成及び剤形化できる。前記凍結乾燥粉末は、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分、又はその薬剤学的に許容される誘導体を適切な溶媒に溶解させてなる。一部の態様において、前記凍結乾燥粉末は、滅菌性である。前記溶媒は、前記粉末又は前記粉末から製造された再構成溶液の安定性又はその他の薬理学的成分を改善する賦形剤を含有できる。使用可能な賦形剤は、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、トウモロコシシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース又はその他の適切な製剤を含むが、これに限定されるものではない。前記溶媒はまた、シトレート、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムのような緩衝剤、又は一態様において略中性pHの他のこのような緩衝剤を含有できる。次いで、前記溶液を滅菌濾過した後、当業者に公知された標準条件で凍結乾燥させ、所望の剤形を提供する。一態様において、前記得られた溶液は、凍結乾燥用バイアルに配分され得る。それぞれのバイアルは、前記化合物の単一投与量又は多回の投与量を含有できる。前記凍結乾燥した粉末は、約4℃~室温のような適切な条件で保管され得る。
【0280】
このような凍結乾燥した粉末を注射用水によって再構成し、非経口投与用に使用するための剤形を提供する。再構成のために、前記凍結乾燥した粉末を、滅菌水又は他の適切な担体に添加する。その正確な量は、選択した化合物によって異なる。このような量は、経験的に決定できる。
【0281】
本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分、二重特異的分子又は免疫複合体、及び本明細書に提供された他の組成物はまた、治療する対象の特定組織、受容体又は他の身体領域を標的にするよう剤形化されてもよい。このような標的化方法の多数が当業者によく知られている。本明細書において、このような標的化方法はいずれも、本組成物に使用することが考慮される。標的化方法の非制限的な例については、例えば、米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542号及び第5,709,874号を参照する。特定の態様において、本明細書に記載のベクター又はその抗原結合部分は、緑内障を治療し及び/又は緑内障関連炎症を減少、改善又は阻害するために用いることができる。
【0282】
生体内投与のために用いられる組成物は、滅菌性であり得る。これは、例えば滅菌濾過膜を用いた濾過によって容易に行われる。
【0283】
<VIII.キット>
本明細書は、本明細書に記載の一つ以上の抗体又はその抗原結合部分を含むキットを提供する。特定の態様において、本明細書は、本明細書に提供された一つ以上の抗体又はその抗原結合部分のような、本明細書に記載の薬剤学的組成物の成分の一つ以上が満たされれた一つ以上の容器、及び場合によって使用説明書を含む、薬剤学的パック又はキットを提供する。一部の態様において、前記キットは、本明細書に記載の薬剤学的組成物及び本明細書に記載されたような任意の予防剤又は治療剤を含有する。
【0284】
<実施例>
(実施例1)
糖尿病性網膜病症のマウスモデルにおいて抗FAM19A5抗体の生体内投与後の網膜電位差の評価
糖尿病性網膜病症に対する抗FAM19A5抗体治療効果の評価を始めるために、2型糖尿病性db/dbマウス(B6.BKS(D)-Leprdb/j)(25週齢)を使用した。簡単に、マウスを1週間安定化させた後、ヒトIgG対照群抗体又は抗FAM19A5抗体(1-65又は3-2クローン)を、マウスにマイクロポンプシステムを用いて硝子体内投与した(2週ごとに4μg/眼の投与量で総7回投与)。正常(すなわち、糖尿病のない野生型)マウスを対照群として用いた。次に、網膜電位検査(ERG)を用いて網膜電位を評価した。
【0285】
ERGは、光受容体(竿状体及び錐状体)、内部網膜細胞(両極性及び無軸索細胞)及び神経節細胞を含む網膜の様々な細胞によって発生する電気的活性(すなわち、網膜電位)を測定する診断検査である。一般に、明るい刺激閃光時に、健康な眼のERGは、初期負偏向(“A波”)と以降“律動様小波”(OP)と知られた高周波数振動とが重なった勾配が次第に大きくなり、より速いピークを持つB波で構成された複雑な波形を示すだろう。前記A波は、竿状体の集団反応によって左右され、前記暗順応(scotopic)B波は、竿状体両極性神経細胞の反応によって左右される。前記OPは、両極性、無軸索及び神経節細胞が相互作用する内網状層内で発生する。Wilsey et al.,Curr Opin Ophthalmol 27(2):118-124(2016)を参照する。これらの値を評価することによって、網膜内で発見される様々な細胞の健康状態が評価できる。
【0286】
ERGを用いて網膜電位を評価するために、2.5%フェニレフリン塩酸塩の局所処理によって、異なる処理群の動物の眼の瞳孔を拡張させた。次に、動物を除毛し麻酔(ケタミン(80mg/kg)及びキシラジン(16mg/kg)投与後、0.5%パラカイン使用)し、皮膚、尾及び角膜に電極を取り付けた。白色光の単一閃光(0.9log cd sec/m2)で網膜を刺激した。異なる動物の眼内部の電気的活性(すなわち、“網膜電位差”)を評価するために、A波(A波の谷(trough)から基準線まで)、B波(A波の谷からB波のピークまで)、律動様小波(OP)(B波の上行脚(ascending limb)から観察される小さな振動の振幅と時間)振幅値を測定した。
【0287】
図1A~
図1Cに示すように、前記抗FAM19A5抗体(クローン1-65又は3-2)が投与されたマウスは、対照群IgG抗体が投与されたマウスに比べて、改善されたA波、B波及び律動様小波を有した。このことから、抗FAM19A5抗体投与の動物が正常の網膜機能を回復したことが分かった。
【0288】
(実施例2)
糖尿病性網膜病症のマウスモデルにおいて抗FAM19A5抗体処理後の形態学的変化の評価
抗FAM19A5抗体処理が網膜の形態学的変化をもたらしたか否かを評価するために、実施例1の2型糖尿病db/dbマウスを犠牲させ、動物から両眼を摘出した。
【0289】
摘出後、各動物の一方の眼を一日間10%中性ホルマリンに固定した。その後、角膜、水晶体と鞏膜を除去して残った眼球組織を振蕩しながら1時間蒸留水で5回洗浄した。最後の洗浄後に蒸留水を除去し、眼球組織を、37℃の0.1M Tris緩衝液に溶かした3%トリプシンで2時間培養した。その後、網膜血管を残りの網膜組織から分離し、過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色するためにスライドに付着させ、初期糖尿病性網膜病症の特徴的な標識子(例えば、血管周囲細胞損失及び無細胞性毛細血管形成)に対する網膜微細血管を評価した。
【0290】
各動物の他方の眼を4%グルタルアルデヒドにあらかじめ固定させた後、10%ホルマリンに3日間固定させた。その後、眼を使い捨てカセットに入れ、パラフィンブロックに包埋した。その後、凍結した組織を薄片化し、追加分析のためにスライドに載せた。血管鬱血、血管標識子(CD31及びVEGF)、網膜細胞保護効果を分析するために、H&E、TUNEL分析及びIHC分析を行った。
【0291】
図2Aは、異なる処理群に属する動物の代表的な網膜領域の顕微鏡写真(100×倍率)を提供している。抗FAM19A5抗体(クローン1-65又は3-2)が投与されたマウスから検出された内皮細胞対比血管周囲細胞の比(E/P比率)と無細胞性毛細血管の個数及び長さはいずれも、正常の健康な動物のそれと類似であった。
図2B~
図2Dを参照されたい。対照的に、ヒトIgG対照群抗体で処理したマウスは、遥かに高いE/P比率を有し、これは、血管周囲細胞の損失を示唆する。
図2Bを参照されたい。ヒトIgG対照群マウスはまた、より多い数の無細胞性毛細血管形成を有し(
図2C)、無細胞性毛細血管は遥かに長かった(
図2D)。この結果は、抗FAM19A5抗体が糖尿病性網膜病症モデルにおいて細胞周囲細胞損失を防止し、網膜微細血管を無細胞性毛細血管形成から保護できることを示唆する。
【0292】
また、
図3に示すように、抗FAM19A5抗体で処理したマウス(下段2枚のパネル)はまた、ヒトIgG対照群抗体が投与されたマウス(右上パネル)に比べて、網膜の神経線維層において血管鬱血が遥かに減少した。TUNEL分析は、抗FAM19A5抗体で処理したマウスの網膜の神経線維層及び内核層ともに、ヒトIgG対照群抗体で処理したマウスの網膜の相応する層に比べて、細胞死の進行した細胞が少ないということを立証した。
図4を参照されたい。これは、抗FAM19A5抗体が、糖尿病に起因した損傷から網膜細胞を保護できることを示唆する。
【0293】
最後に、
図5に示すように、ヒトIgG対照群抗体で処理したマウスの神経線維層は、広範囲なCD31及びVEGF染色を示したが、これは、糖尿病性網膜病症のさらに進展した段階の特徴である血管新生を意味する。対照的に、抗FAM19A5抗体(クローン1-65又は3-2)で処理したマウスは、CD31及びVEGF染色が遥かに減少した。この結果は、抗FAM19A5抗体が、糖尿病性網膜病症モデルから血管新生を効果的に遮断できることを示唆する。
【0294】
要するに、前記データは、抗FAM19A5抗体が糖尿病性網膜病症のような網膜病症に関連した基底病態のほとんどを改善し、前記疾患が治療できることを立証した。
【0295】
(実施例3)
加齢黄斑変性マウスモデルにおいて脈絡膜血管新生に対する抗FAM19A5抗体効果の評価
加齢黄斑変性に対する抗FAM19A5抗体治療の効果を評価するために、マウス誘導脈絡膜血管新生(CNV)モデルを使用した。より具体的に、CNVモデルは、ヒトの湿性加齢黄斑変性の動物モデルである。簡単に、C57BL/6マウスを1週間安定化させた後、動物の眼の瞳孔を拡張させた(2.5%フェニレフリン塩酸塩の局所処理によって)。次いで、動物を2%フルオレセイン(Fluorescein)(Sigma)で腹腔内処理して血管を染色した。フルオレセイン注射して約3~5分後にマウスを麻酔させ、レーザー(240mW、70ms持続時間)によるPhoenix緑色レーザー光凝固術を用いて視神経の4つの領域に湿性AMD様病変を誘導した。
図6を参照されたい。その後、CNV誘導当日(すなわち、0日)及びCNV誘導後3日及び7日目に、ヒトIgG対照群抗体や抗FAM19A5抗体をマウス(4μg/眼)に硝子体内投与した。CNV誘導後13日目に、蛍光眼底血管造影術(FFA)及びイメージJプログラムを用いて脈絡膜血管新生の程度を測定し、補正された総蛍光(CTF=積分密度-(選択した病変の面積×背景判読の平均蛍光)値を計算した。また、イメージ誘導光学干渉断層撮影(OCT)装備を用いて網膜断層撮影を行い、新生血管病変の程度を測定した。イメージJプログラムを用いて新生血管病変を定量化した。
【0296】
図7Aに示すように、CNV誘導直後及び抗体処理前(0日、左列)に、レーザーに露出された4つの領域(矢印で表示)で観察された蛍光強度は、2個の処理群において類似であった。しかし、CNV誘導後13日目に抗FAM19A5抗体で処理したマウスは、ヒトIgG対照群抗体で処理したマウスに比べて、統計的に低いCTF値を有していた。
図7Bを参照されたい。この効果は、イメージ誘導光干渉断層撮影(OCT)(
図8A~
図8C参照)及びH&E染色(
図10B参照)の両方で確認された。これらの結果は、抗FAM19A5抗体がレーザーによる脈絡膜血管新生を阻害及び/又は減少させることができることを立証した。
【0297】
(実施例4)
加齢黄斑変性のマウスモデルにおいて抗FAM19A5抗体の生体内投与後網膜電位差の評価
加齢黄斑変性に対する抗FAM19A5抗体治療の効果をさらに評価するために、網膜電位造影術(ERG)を用いて実施例3のマウスから網膜電位を評価した。簡単に、2.5%フェニレフリン塩酸塩の局所処理によって、異なる処理群の動物の眼の瞳孔を拡張させた。次いで、動物を麻酔させ、皮膚、尾及び角膜に電極を付着させた。白色光の単一閃光(0.9log cd sec/m2)で網膜を刺激した。異なる動物の眼内部の電気的活性(すなわち、“網膜電位差”)を評価するために、B波値を、実施例1で記載した通りにして測定した。
【0298】
図9に示すように、前記抗FAM19A5抗体で処理したCNV誘導マウスは、ヒトIgG抗体群のマウスに比べて改善されたB波網膜電位を有していた。この結果は、CNV誘導マウスへの抗FAM19A5抗体投与は、正常の網膜機能を回復させたことを示唆する。
【0299】
(実施例5)
加齢黄斑変性のマウスモデルにおいて抗FAM19A5抗体処理後の形態学的変化の評価
次に、抗FAM19A5抗体投与が網膜内形態学的変化をもたらしたか否かを評価するために、実施例3及び4のCNV誘導マウスを犠牲させ、動物から両眼を摘出した。次いで、眼を48時間10%中性ホルマリンに固定した。その後、固定させた眼をパラフィンブロックに包埋し、H&E及びIHC分析を行った。H&Eを用いて、実施例3で示した脈絡膜血管新生に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を確認した。血小板由来成長因子(PDGF)の発現に対して、IHCを用いて染色した。PDGFは網膜神経細胞から分泌されるものと知られており、星状細胞の形成と脈絡膜血管新生に重要な役割を担う。
【0300】
図10A及び
図10Bに示すように、抗FAM19A5抗体で処理したCNV誘導マウスでは、ヒトIgG処理群に比べて、脈絡膜血管新生がCNV誘導後13日まで大きさが有意に減少した。この結果から、初期データ(実施例3参照)が脈絡膜血管新生に対する抗FAM19A5の阻害効果を立証するものであることを確認した。そして、
図11に示すように、抗FAM19A5抗体で処理したCNV誘導マウスは、IgG処理群に比べて網膜の神経線維層及び神経節細胞層の両方においてPDGF染色が顕著に少なかった。
【0301】
(実施例6)
ドルーゼン生成に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果の評価
上述したように、ドルーゼンは、眼のブルック膜と網膜色素上皮(RPE)との間に積もった細胞外物質(主に、タンパク質及び脂質)の小さな黄色又は白色蓄積物である。抗FAM19A5抗体の投与がドルーゼン形成を阻害できるどうかを評価するために、雄性APP/PS-1/tau遺伝子導入痴呆マウス(C57BL/6;4月齢)を使用した。簡単に、抗FAM19A5抗体をマウスに総8週間、1週に2回0.7mg/kgの投与量で静脈内投与した。年齢が一致する未処理未投与野生型C57BL/6及びAPP/PS-1/tau遺伝子導入マウスを対照群として用いた。初期抗体投与後8週目に動物を犠牲させ、動物から眼を摘出した。収穫後、眼を4℃で24時間4%パラホルムアルデヒド(PFA)に固定させた。その後、眼をOCTコンパウンド(Lot no.686794,Sigma,USA)と共にプラスチックモールドに入れて凍結させた。次いで、凍結した眼組織を-20℃のマイクロトーム(Cryostats CM1860,Leica,Germany)を用いて薄片化(25μm厚)した。薄片化された組織切片をスライド上に載せ、オリゴマー性Aβ及びAlexa 647ファロイジンで染色し、ドルーゼン形成を観察した。
【0302】
図12に示すように、未処理APP/PS-1/tau遺伝子導入マウスにおいてオリゴマー性Aβは視覚色素細胞の周辺内で強く発現するが、ドルーゼン(陽性ファロイジン染色によって立証される)は、網膜組織、錘状細胞及び神経節細胞層の周辺内で強く発現した。これに対し、抗FAM19A5抗体で処理したAPP/PS-1/tau遺伝子導入マウスでは、未投与野生型C57BL/6対照群マウスと類似に、無視できるようなオリゴマー性Aβ及びドルーゼン染色があった。
【0303】
この結果から、抗FAM19A5抗体が、周辺組織を含めて網膜内でオリゴマー性Aβ及びドルーゼン形成を阻害できることを確認した。
【0304】
要するに、上のデータは、抗FAM19A5抗体が加齢黄斑変性のような黄斑変性に関連した基底病態の殆どを改善し、前記疾患を治療できることを立証した。
【0305】
(実施例7)
静脈投与後糖尿病性網膜病症に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果の評価
静脈内投与後の糖尿病性網膜病症に対する抗FAM19A5抗体の治療効果を評価するために、2型糖尿病db/dbマウス(例えば、実施例1で記載したマウス)を使用した。簡単に、動物を安定化させた後、次のいずれか一つで処理した:(i)ヒトIgG抗体、(ii)アフリベルセプト(EYLEA,Regeneron Pharmaceuticals)、又は(iii)抗FAM19A5抗体(クローン1-30)。ヒトIgG抗体とアフリベルセプトをそれぞれ陰性及び陽性対照群として用いた。未投与群(すなわち、糖尿病性網膜病症がない動物)を追加対照群として用いた。異なる治療処方を、マイクロポンプシステムを用いてマウスの硝子体腔に硝子体内投与したり(2週ごとに2μL/眼の投与量で総7回)又は尾静脈注射で静脈内投与した(2週ごとに100μLの投与量で総7回)。処理群を下表8に記載する。
【0306】
【0307】
例えば、血清内血糖濃度及び/又は体重を測定することによって、動物の健康状態全般を周期的にモニタリングした。最後の投与後、マウスを安楽死させ、動物から両眼を摘出した。摘出後、眼をOCTブロック上に用意した後、実施例2に記載されており、下でより詳細に説明するように、トリプシン分解分析、ヘマトキシリン-エオシン染色(H&E染色)、TUNEL分析及び免疫蛍光染色のために固定させた。トリプシン分解分析を行って、微細血管を、血管周囲細胞損失及び無細胞性毛細血管形成(すなわち、初期糖尿病性網膜病症の標識子)に対して評価した。H&E染色、TUNEL分析、免疫蛍光染色を行って、血管鬱血、血管標識子(CD31及びVEGF)、網膜細胞保護効果を分析した。
【0308】
H&E分析
凍結組織を薄片化し、スライドに載せた後(実施例2参照)、スライドを室温で約1時間乾燥させた。次いで、スライドをヘマトキシリンで3~5分間染色し、Hcl溶液で30秒間洗浄した。次いで、スライドをエオシン溶液に1分間漬した後、再びHcl溶液で洗浄した。次いで、スライドを80%~100%エタノールで3分間洗浄し、カルボキシレン及びキシレンとそれぞれ5分間反応させた。染色されたスライドは、顕微鏡(NanoZoomer 2.0 RS,Hamamatsu)を用いて観察した。
【0309】
TUNEL分析
凍結組織切片が装着されたスライド(実施例2参照)を、室温で約1時間乾燥させた。一旦乾燥すると、スライドを1%パラホルムアルデヒドに10分間漬した後にPBSで5分間2回洗浄した。次いで、スライドを平衡緩衝液に10分間浸漬した。その後、加湿チャンバーで組織サンプルをTdT酵素で37℃で2時間処理した。次いで、スライドをPBSで2分間4回洗浄した。染色したスライドを室温で完全に乾燥させた。乾燥すると、組織サンプルをDAPIで染色し、蛍光顕微鏡(LEICA DM 2500)で観察した。
【0310】
免疫蛍光分析
凍結組織切片が装着されたスライド(実施例2参照)を、室温で約1時間乾燥させた。一旦乾燥すると、組織サンプルを、PBSに溶かした5%(v/v)トリトンX-100溶液で処理し、PBSで5分間3回洗浄した。次いで、組織を正常ロバ血清と3%(v/v)BSA、0.5%トリトンX-100溶液で1時間ブロッキングした。その後、組織を、4℃で一晩、抗VEGF及び/又は抗CD31一次抗体(PBSで3%(v/v)BSA及び0.5%トリトンX-100溶液で1:300希釈)で染色した。翌日、サンプルをPBSで5分間3回洗浄した。次いで、組織サンプルを二次抗体(Alexa Fluor 555ロバ抗ウサギIgG、PBSで3%(v/v)BSA及び0.5%トリトンX-100溶液で1:500希釈)と共に室温で1時間反応させた。次いで、サンプルをPBSで5分間3回洗浄後にDAPIで染色し、蛍光顕微鏡(LEICA DM2500)で観察した。
【0311】
結果
表9(下)、
図13A及び
図13Cに示すように(実施例2に提供されたデータと一致)、抗FAM19A5抗体で処理した動物(静脈内及び硝子体内投与群の両方とも)のE/P比(すなわち、内皮細胞に対する血管周囲細胞の比)は、抗ヒトIgG単独で処理した動物(“陰性対照群”)に比べて低い。抗FAM19A5投与は、陽性対照群(すなわち、アフリベルセプトで処理した動物)に比較した時にも、E/P比により大きい影響を有することが見られ、未投与(すなわち、健康な)動物で観察された比に類似していた。硝子体内投与で最大の効果が観察されたが、静脈投与でも注目すべき治療効果が観察された。動物の眼で無細胞性毛細血管の数を測定した時、類似の結果が観察された(表9及び
図13B参照)。
【0312】
【0313】
投与経路は、血管鬱血を減少させ、糖尿病による損傷から網膜細胞を保護する抗FAM19A5抗体の能力にあまり影響を与えないと見なされる(
図14参照)。そして、
図15に示すように、TUNEL分析は、抗FAM19A5抗体を静脈内処理したマウスの網膜神経線維層及び内核層の両方において、ヒトIgG対照群抗体で処理したマウスの網膜における当該層に比べて、細胞死の進行した細胞が少ないことがみられた。前記効果は、抗FAM19A5抗体を硝子体内処理した動物と類似であった(
図14及び
図15参照、IVT対比IV群)。CD31及びVEGF(新生血管形成に対する標識子)の発現を評価した時も類似の結果が観察された。抗FAM19A5抗体を硝子体内又は静脈内処理した2動物ともに、対照群動物(すなわち、ヒトIgG対照群抗体単独で処理した動物)に比べてCD31及びVEGF発現が著しく減少した(
図16A及び
図16B参照)。
【0314】
要するに、上のデータは、実施例2の結果(すなわち、硝子体内投与による)を確認し、また、抗FAM19A5抗体が静脈内及び硝子体内投与後、糖尿病性網膜病症に対する治療効果を有することを立証した。
【0315】
概要及び要約部分以外の詳細な説明部分は、特許請求の範囲を解釈するために用いられると理解されるべきである。概要及び要約部分は、発明者によって考慮される本開示内容の例示的な態様の一つ以上を示すが、全ての例示的な態様を示すものではないので、本開示内容と添付する特許請求の範囲をいかなる方式でも制限しようとするものではない。
【0316】
本開示内容は、特定機能及びそれらの関係の具現を説明する機能的構成要素を用いて上に説明した。それらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜のために、本明細書では任意に定義した。前記特定機能とそれらの関係が適切に行われる限り、代替境界が定義されてもよい。
【0317】
特定態様に関する上の説明は、他人が当業界技術における知識を応用することによって、本開示内容の一般的な概念を超えない範囲で過度な実験なしで様々な応用のためにこのような特定態様を容易に変形及び/又は調整することができるように、本開示内容の一般的な属性を完全に表すものであろう。したがって、このような調整及び変形は、本明細書に提示された教示及び指針に立って開示された態様の均等物の意味及び範囲内にあるものと意図される。本明細書の語句又は用語は、本明細書の用語又は語句が本発明の教示及び指針に照らして当業者によって解釈され得るように、制限ではなく説明しようとする目的であることが理解できよう。
【0318】
本開示内容の幅と範囲は、上述した例示的な態様のいずれによっても制限されてはならず、後述する特許請求の範囲及びその等価物によってのみ定義されるべきである。
【0319】
本明細書に引用された全ての刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト及び受託番号/データベース配列(ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列の両方とも)は、あたかもそれぞれの個別刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト又は受託番号/データベース配列が具体的にそして個別的に参考として含まれると表示されたのと同じ程度に、全ての目的のためにその全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0320】
【
図1A】
図1Aは、25週齢db/dbマウスにおいて網膜電位回復に対する抗FAM19A5抗体の効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常(すなわち、糖尿病がない)マウスを対照群として用いた。各群のマウスを3つの異なるフラッシュ強度(-1、0.2及び0.8log cds/m
2)の白色光に露出させた後、A波(μV)(
図1A)、B波(μV)(
図1B)及び律動様小波(μV)(
図1C)を測定した。データは、平均±S.Dで表した。
【
図1B】
図1Bは、25週齢db/dbマウスにおいて網膜電位回復に対する抗FAM19A5抗体の効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常(すなわち、糖尿病がない)マウスを対照群として用いた。各群のマウスを3つの異なるフラッシュ強度(-1、0.2及び0.8log cds/m
2)の白色光に露出させた後、A波(μV)(
図1A)、B波(μV)(
図1B)及び律動様小波(μV)(
図1C)を測定した。データは、平均±S.Dで表した。
【
図1C】
図1Cは、25週齢db/dbマウスにおいて網膜電位回復に対する抗FAM19A5抗体の効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常(すなわち、糖尿病がない)マウスを対照群として用いた。各群のマウスを3つの異なるフラッシュ強度(-1、0.2及び0.8log cds/m
2)の白色光に露出させた後、A波(μV)(
図1A)、B波(μV)(
図1B)及び律動様小波(μV)(
図1C)を測定した。データは、平均±S.Dで表した。
【
図2A】
図2Aは、25週齢db/dbマウスにおいて抗FAM19A5抗体の網膜微細血管保護効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。
図2Aは、異なる処理群:(i)正常群(すなわち、非糖尿病)(左上パネル)、(ii)ヒトIgG対照群(右上パネル)及び(iii)抗FAM19A5抗体(クローン1-65、左下パネル;クローン3-2、右下パネル)のそれぞれにおいて、マウスの代表的な網膜領域を過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色した後、顕微鏡写真(倍率100×)を示している。黒色矢印は内皮細胞を、白色矢印は血管周囲細胞を、灰色矢印は無細胞性毛細血管を示す。
図2Bは、前記異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された血管周囲細胞に対する内皮細胞の比率(“E/P比”)の比較を示している。前記E/P比を決定するために、それぞれの撮影写真において内皮細胞と血管周囲細胞の数を計算した。データは、平均±S.Dで表した。棒上の“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。
【
図2B】
図2Bは、25週齢db/dbマウスにおいて抗FAM19A5抗体の網膜微細血管保護効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。
図2Aは、異なる処理群:(i)正常群(すなわち、非糖尿病)(左上パネル)、(ii)ヒトIgG対照群(右上パネル)及び(iii)抗FAM19A5抗体(クローン1-65、左下パネル;クローン3-2、右下パネル)のそれぞれにおいて、マウスの代表的な網膜領域を過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色した後、顕微鏡写真(倍率100×)を示している。黒色矢印は内皮細胞を、白色矢印は血管周囲細胞を、灰色矢印は無細胞性毛細血管を示す。
図2Bは、前記異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された血管周囲細胞に対する内皮細胞の比率(“E/P比”)の比較を示している。前記E/P比を決定するために、それぞれの撮影写真において内皮細胞と血管周囲細胞の数を計算した。データは、平均±S.Dで表した。棒上の“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。
【
図2C】
図2Cは、異なる処理群のマウスの分析された全体網膜領域内で観察された無細胞性毛細血管の数の比較を示している。データは、平均±S.Dで表した。棒上の “*”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【
図2D】
図2Dは、観察された無細胞性毛細血管の長さの比較を示している。データは、平均±S.Dで表した。棒上の“**”及び“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(それぞれ、p<0.01及びp<0.001)を示す。
【
図3】
図3は、H&E染色を用いて25週齢db/dbマウスの網膜内血管鬱血に対する抗FAM19A5抗体処理の効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”、右上パネル)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”、左下パネル又はクローン“3-2”、右下パネル)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウス(左上パネル)を対照群として用いた。矢じりは、血管鬱血の例を示す。表示された異なる網膜層には(i)神経節細胞層(GCL)、(ii)内網状層(IPL)、(iii)内核層(INL)、(iv)外核層(ONL)及び(v)網膜色素上皮(PE)が含まれている。
【
図4】
図4は、TUNEL分析を用いて25週齢db/dbマウスにおいて抗FAM19A5抗体処理の網膜細胞保護効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。中間列(“TUNEL”)において赤色矢じりは、細胞死が進行している網膜細胞を示す。TUNEL染色の強度は、細胞死の程度と相関がある(例えば、強度減少は、一部の細胞死を示す)。表示された異なる網膜層には(i)神経節細胞層(GCL)、(ii)内核層(INL)、(iii)外核層(ONL)及び(iv)網膜色素上皮(PE)が含まれている。
【
図5】
図5は、CD31及びVEGF発現に対して染色する免疫組織化学を用いて、25週齢db/dbマウスの網膜内血管新生に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。前記マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“1-65”又は“3-2”)で処理した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。矢じりは、陽性CD31(上段行)又は陽性VEGF(下段行)染色を示す。
【
図6A】
図6Aは、実施例8で用いられたようなイメージ誘導レーザーシステムの写真を示している。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aに示したイメージ誘導レーザーシステムからレーザーに露出された網膜の写真の一例を示している。
【
図7A】
図7Aは、蛍光眼底血管造影術(FFA)分析を用いて脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。ヒトIgG抗体が投与されたCNV誘導マウスを対照群として用いた。
図7Aは、CNV誘導当日(“0日”)とCNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(上段行)又は抗FAM19A5(クローン3-2)(下段行)で処理したマウスにおいて4個の湿性AMD様病変(左列写真で矢印で表示される)を示す代表的な網膜写真である。
図7Bは、CNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“3-2”)で処理したCNV誘導マウスに対する補正された総蛍光(CTF)値の比較を提供している。データを平均で且つ個別的に表した。“*”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【
図7B】
図7Bは、蛍光眼底血管造影術(FFA)分析を用いて脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。ヒトIgG抗体が投与されたCNV誘導マウスを対照群として用いた。
図7Aは、CNV誘導当日(“0日”)とCNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(上段行)又は抗FAM19A5(クローン3-2)(下段行)で処理したマウスにおいて4個の湿性AMD様病変(左列写真で矢印で表示される)を示す代表的な網膜写真である。
図7Bは、CNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“3-2”)で処理したCNV誘導マウスに対する補正された総蛍光(CTF)値の比較を提供している。データを平均で且つ個別的に表した。“*”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【
図8A】
図8Aは、光干渉断層撮影(OCT)分析を用いて、脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。ヒトIgG抗体が投与されたCNV誘導マウスを対照群として用いた。
図8Aは、CNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(上段行)又は抗FAM19A5(クローン3-2)(下段行)で処理したマウスにおいて4個の湿性AMD様病変(番号1、2、3及び4と表記)を示す代表的な網膜写真を提供している。1、2、3及び4と標識された列は、最左側の写真に示した当該病変に対するOCT写真を提供している。
図8Bは、前記病変の大きさを定量化するために用いたスケールバーを示している。
図8Cは、ヒトIgG対照群抗体又は抗FAM19A5抗体(クローン3-2)で処理したマウスにおいてCNV誘導後13日目に観察したCNV病変の大きさの比較を提供している。データを平均で且つ個別的に表した。“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。
【
図8B】
図8Bは、光干渉断層撮影(OCT)分析を用いて、脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。ヒトIgG抗体が投与されたCNV誘導マウスを対照群として用いた。
図8Aは、CNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(上段行)又は抗FAM19A5(クローン3-2)(下段行)で処理したマウスにおいて4個の湿性AMD様病変(番号1、2、3及び4と表記)を示す代表的な網膜写真を提供している。1、2、3及び4と標識された列は、最左側の写真に示した当該病変に対するOCT写真を提供している。
図8Bは、前記病変の大きさを定量化するために用いたスケールバーを示している。
図8Cは、ヒトIgG対照群抗体又は抗FAM19A5抗体(クローン3-2)で処理したマウスにおいてCNV誘導後13日目に観察したCNV病変の大きさの比較を提供している。データを平均で且つ個別的に表した。“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。
【
図8C】
図8Cは、光干渉断層撮影(OCT)分析を用いて、脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。ヒトIgG抗体が投与されたCNV誘導マウスを対照群として用いた。
図8Aは、CNV誘導後13日目にヒトIgG抗体(上段行)又は抗FAM19A5(クローン3-2)(下段行)で処理したマウスにおいて4個の湿性AMD様病変(番号1、2、3及び4と表記)を示す代表的な網膜写真を提供している。1、2、3及び4と標識された列は、最左側の写真に示した当該病変に対するOCT写真を提供している。
図8Bは、前記病変の大きさを定量化するために用いたスケールバーを示している。
図8Cは、ヒトIgG対照群抗体又は抗FAM19A5抗体(クローン3-2)で処理したマウスにおいてCNV誘導後13日目に観察したCNV病変の大きさの比較を提供している。データを平均で且つ個別的に表した。“***”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。
【
図9】
図9は、CNV誘導マウスにおいてB波値の回復に対する抗FAM19A5抗体の効果を示している。前記CNV誘導マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“3-2”)で処理した。正常(すなわち、糖尿病がない)マウスを対照群として用いた。データは、平均±S.Dで表した。“*”は、IgG処理群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【
図10A】
図10Aは、脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。
図10Aは、H&E分析(左写真)又はOCT分析(右写真)を用いて異なる網膜層を識別している。これらの表示された層は、次を含む:(i)網膜神経線維層/神経節細胞層(RNFL/GCL);(ii)内網状層;(iii)内核層;(iv)外網状層;(v)外核層、(vi)光受容体内部セグメント/外部セグメント(IS/OS)及び(vii)網膜色素上皮(RPE)。
図10Bは、異なる群である(i)正常の健康な動物群、(ii)ヒトIgG抗体で処理したCNV誘導マウス群、及び(iii)抗FAM19A5抗体で処理したCNV誘導マウス群におけるマウスの網膜の関連細胞層の代表的なH&E写真を示している。矢じりは、脈絡膜血管新生領域を示す。
【
図10B】
図10Bは、脈絡膜血管新生(CNV)に対する抗FAM19A5抗体(クローン3-2)の阻害効果を示している。
図10Aは、H&E分析(左写真)又はOCT分析(右写真)を用いて異なる網膜層を識別している。これらの表示された層は、次を含む:(i)網膜神経線維層/神経節細胞層(RNFL/GCL);(ii)内網状層;(iii)内核層;(iv)外網状層;(v)外核層、(vi)光受容体内部セグメント/外部セグメント(IS/OS)及び(vii)網膜色素上皮(RPE)。
図10Bは、異なる群である(i)正常の健康な動物群、(ii)ヒトIgG抗体で処理したCNV誘導マウス群、及び(iii)抗FAM19A5抗体で処理したCNV誘導マウス群におけるマウスの網膜の関連細胞層の代表的なH&E写真を示している。矢じりは、脈絡膜血管新生領域を示す。
【
図11】
図11は、IHC分析を用いて、網膜の神経線維層及び神経節細胞層内の両方においてPDGF発現に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。CNV誘導マウスをヒトIgG対照群抗体(“IgG”)又は抗FAM19A5抗体(クローン“3-2”)で処理した。正常(すなわち、糖尿病がない)マウスを対照群として用いた。矢じりは、陽性PDGF染色を示す。
【
図12】
図12は、免疫蛍光顕微鏡法を用いて、APP/PS-1/tau遺伝子導入マウス(認知症モデル)においてオリゴマー性Aβ及びドルーゼンの形成に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。前記APP/PS-1/tau遺伝子導入マウスを抗FAM19A5抗体で処理しない(中間行)か又は処理した(下段行)。未投与(naive)野生型C57BL/6マウスを陰性対照群(上段行)として用いた。“H33342”(核酸染色)と標識された列は、網膜組織内細胞を示している。“QD525-oAβ”と標識された列は、オリゴマーAβを示している。“647 Alexa Phalloidin”と標識された列は、ドルーゼン形成を示しているもので、ドルーゼンは矢印で例示されている。“merged”と標識された列は、それぞれの処理群に対する上の3列の合成写真を示している。
【
図13A】
図13Aは、糖尿病性網膜病症マウスモデルにおいて硝子体内又は静脈内投与後、抗FAM19A5抗体(クローン1-30)の網膜微細血管保護効果の比較を示している。前記マウスに(i)ヒトIgG対照群抗体(“ヒトIgG”)、(ii)アフリベルセプト、(iii)抗FAM19A5抗体のいずれか一方を、硝子体内(“IVT”)投与したり、又は(iv)抗FAM19A5抗体を静脈内(“IV”)投与した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。
図13Aは、異なる処理群のそれぞれにおいてマウスの代表的な網膜領域を過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色した後、顕微鏡写真(倍率100×)を提供している。黒色矢印は内皮細胞を、白色矢印は血管周囲細胞を、黒色矢印は無細胞性毛細血管を示す。
図13Bは、異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された無細胞性毛細血管の数の比較を提供している。
図13Cは、異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された血管周囲細胞に対する内皮細胞の比率(“E/P比”)の比較を提供している。前記E/P比を決定するために、それぞれの撮影写真において内皮細胞と血管周囲細胞の数を計算した。
図13B及び
図13Cにおいてデータは、平均±S.Dで表した。棒上の“*”及び“***”は、未投与マウス対比統計的に有意な差(それぞれp<0.05とp<0.001)を示す。棒上の“##”及び“###”は、ヒトIgG抗体処理群対比統計的に有意な差(それぞれ、p<0.01及びp<0.001)を示す。棒上の“†††”は、アフリベルセプト処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。棒上の“§”は、IVT群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【
図13B】
図13Bは、糖尿病性網膜病症マウスモデルにおいて硝子体内又は静脈内投与後、抗FAM19A5抗体(クローン1-30)の網膜微細血管保護効果の比較を示している。前記マウスに(i)ヒトIgG対照群抗体(“ヒトIgG”)、(ii)アフリベルセプト、(iii)抗FAM19A5抗体のいずれか一方を、硝子体内(“IVT”)投与したり、又は(iv)抗FAM19A5抗体を静脈内(“IV”)投与した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。
図13Aは、異なる処理群のそれぞれにおいてマウスの代表的な網膜領域を過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色した後、顕微鏡写真(倍率100×)を提供している。黒色矢印は内皮細胞を、白色矢印は血管周囲細胞を、黒色矢印は無細胞性毛細血管を示す。
図13Bは、異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された無細胞性毛細血管の数の比較を提供している。
図13Cは、異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された血管周囲細胞に対する内皮細胞の比率(“E/P比”)の比較を提供している。前記E/P比を決定するために、それぞれの撮影写真において内皮細胞と血管周囲細胞の数を計算した。
図13B及び
図13Cにおいてデータは、平均±S.Dで表した。棒上の“*”及び“***”は、未投与マウス対比統計的に有意な差(それぞれp<0.05とp<0.001)を示す。棒上の“##”及び“###”は、ヒトIgG抗体処理群対比統計的に有意な差(それぞれ、p<0.01及びp<0.001)を示す。棒上の“†††”は、アフリベルセプト処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。棒上の“§”は、IVT群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【
図13C】
図13Cは、糖尿病性網膜病症マウスモデルにおいて硝子体内又は静脈内投与後、抗FAM19A5抗体(クローン1-30)の網膜微細血管保護効果の比較を示している。前記マウスに(i)ヒトIgG対照群抗体(“ヒトIgG”)、(ii)アフリベルセプト、(iii)抗FAM19A5抗体のいずれか一方を、硝子体内(“IVT”)投与したり、又は(iv)抗FAM19A5抗体を静脈内(“IV”)投与した。正常の(すなわち、糖尿病がない)健康なマウスを対照群として用いた。
図13Aは、異なる処理群のそれぞれにおいてマウスの代表的な網膜領域を過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色した後、顕微鏡写真(倍率100×)を提供している。黒色矢印は内皮細胞を、白色矢印は血管周囲細胞を、黒色矢印は無細胞性毛細血管を示す。
図13Bは、異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された無細胞性毛細血管の数の比較を提供している。
図13Cは、異なる処理群のマウスの分析した全体網膜領域内で観察された血管周囲細胞に対する内皮細胞の比率(“E/P比”)の比較を提供している。前記E/P比を決定するために、それぞれの撮影写真において内皮細胞と血管周囲細胞の数を計算した。
図13B及び
図13Cにおいてデータは、平均±S.Dで表した。棒上の“*”及び“***”は、未投与マウス対比統計的に有意な差(それぞれp<0.05とp<0.001)を示す。棒上の“##”及び“###”は、ヒトIgG抗体処理群対比統計的に有意な差(それぞれ、p<0.01及びp<0.001)を示す。棒上の“†††”は、アフリベルセプト処理群対比統計的に有意な差(p<0.001)を示す。棒上の“§”は、IVT群対比統計的に有意な差(p<0.05)を示す。
【
図14】
図14は、静脈内及び硝子体内投与後、糖尿病性網膜病症マウスの網膜内血管鬱血形成に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。処理群は、
図13A~
図13Cに記載と同一である。矢じりは、血管鬱血の例を示す。
【
図15】
図15は、硝子体内又は静脈内投与時に、TUNEL分析を用いて測定した抗FAM19A5抗体の網膜細胞保護効果を示している。処理群は、
図13A~
図13Cに記載と同一である。中間列(“TUNEL”)において矢じりは、細胞死が進行している網膜細胞を示す。TUNEL染色の強度は、細胞死の程度と相関関係がある(例えば、強度減少は、一部の細胞死を示す)。
【
図16A】
図16Aは、硝子体内及び静脈内投与後、糖尿病性網膜病症マウスの網膜内血管新生に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。処理群は、
図13A~
図13Cに記載と同一である。血管新生は、VEGF(
図16A)及びCD31(
図16B)発現を用いて測定した。矢じりは、陽性VEGF又はCD31染色を示す。
【
図16B】16Bは、硝子体内及び静脈内投与後、糖尿病性網膜病症マウスの網膜内血管新生に対する抗FAM19A5抗体の阻害効果を示している。処理群は、
図13A~
図13Cに記載と同一である。血管新生は、VEGF(
図16A)及びCD31(
図16B)発現を用いて測定した。矢じりは、陽性VEGF又はCD31染色を示す。
【配列表】