(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】排水処理槽及び越流堰
(51)【国際特許分類】
C02F 3/08 20230101AFI20241112BHJP
【FI】
C02F3/08 B
(21)【出願番号】P 2023166675
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520376579
【氏名又は名称】株式会社クリーンテックサービス東京
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】徳永 晋
(72)【発明者】
【氏名】川村 将明
(72)【発明者】
【氏名】川内 洸
(72)【発明者】
【氏名】野口 大介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 純希
(72)【発明者】
【氏名】穴澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 順悦
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 久典
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203086(JP,A)
【文献】特開平10-128367(JP,A)
【文献】特開2013-208560(JP,A)
【文献】特開2015-116537(JP,A)
【文献】特開2001-104986(JP,A)
【文献】中国実用新案第210796140(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0046393(KR,A)
【文献】実開昭62-072198(JP,U)
【文献】国際公開第2021/131088(WO,A1)
【文献】特開2019-126760(JP,A)
【文献】実開昭61-022599(JP,U)
【文献】特開平06-238290(JP,A)
【文献】特開2003-010871(JP,A)
【文献】実開昭63-115493(JP,U)
【文献】特開2004-216213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体流動槽であって、
汚水の処理水を生物的処理するための流動する担体が収容された好気処理槽と、
分離槽と、
前記好気処理槽から前記分離槽に流入する処理水をスクリーン孔を通し、当該処理水に含まれる前記担体を除去して前記分離槽に流すスクリーンと、
放流ポンプ槽と、
前記分離槽から前記放流ポンプ槽に流入する処理水が連通する越流孔を有する越流堰と、
前記越流堰に対して、前記越流孔を塞ぐ前記担体を除去する散気を行う散気部と
を有し、
前記越流堰は、一端が塞がれた水平方向に延びる円筒形の中空体であり、前記分離槽からの処理水が前記中空体の周面に形成された複数の前記越流孔を通じて中空体内に流入し、当該中空体の他端の開口部から前記放流ポンプ槽に流出し、
前記越流堰は、前記分離槽に前記塞がれた一端と前記越流孔が位置し、前記放流ポンプ槽に前記開口部が位置し、前記一端から他端に向けて長手方向になるように延びており、
前記散気部は、前記中空体の周面に空気を吹き付け、
前記スクリーン孔は、前記越流孔に比べて大きい、
排水処理槽。
【請求項2】
複数の
前記越流孔は、略円形である
請求項1に記載の排水処理槽。
【請求項3】
前記越流孔は、Φ4
mm~Φ10
mmである
請求項2に記載の排水処理槽。
【請求項4】
複数の
前記越流孔は、矩形である
請求項1に記載の排水処理槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活用水等の排水を処理する排水処理槽及び越流堰に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活用水等の排水処理する排水処理槽がある。
図7は、比較例に係る排水処理槽を説明するための図である。
図7に示すように、比較例に係る排水処理槽は、好気処理槽11からの処理水がスクリーン121を通過して分離槽13に流入する。
スクリーン121は、例えば、
図8に示すように、複数のストライプ部材125を並べた構造をしており、好気処理槽11で分解された処理水がストライプ部材(金網)125の間を通過して分離槽13に流入する。分離槽13に流入した処理水内の重い物は沈下し、軽い物は浮上する。沈下物は、ポンプで好気処理槽11に戻す。
このとき、処理水内の担体は、スクリーン121を通過しないが、破損した担体がスクリーン121を通過して分離槽13に流入する。また、スクリーン121が破損して分離槽13に流入することもある。
【0003】
分離槽13内の処理水は、バックル123を介して放流ポンプ槽15に流入する。
バックル123は、例えば、
図9に示す構図を有していて分離槽13から放流ポンプ槽15に流出する処理水のうち浮上したスカムを除去して澄水だけを越流する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、好気処理槽11から分離槽13に処理水が流入する過程で、処理水内の担体や、スクリーン121を通過しないが、破損した担体がスクリーン121を通過して分離槽13に流入してしまうことがある。
また、当該破損した担体がバックル125を越流して放流ポンプ槽15に流れ、ポンプが閉塞してしまうことがあるという問題がある。
また、スクリーン121のストライプ部材125の間隔を狭すると、スクリーン121が詰まり、好気処理槽11から分離槽13への処理水の流れが悪くなる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、好気処理槽、分離槽及び放流ポンプ槽の間での処理水の流れを滞らせることなく、且つ破損した担体が放流ポンプ槽に流入することを適切に回避できる排水処理槽及び越流堰を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、担体流動槽であって、汚水の処理水を生物的処理するための流動する担体が収容された好気処理槽と、分離槽と、前記好気処理槽から前記分離槽に流入する処理水をスクリーン孔を通し、当該処理水に含まれる前記担体を除去して前記分離槽に流すスクリーンと、放流ポンプ槽と、前記分離槽から前記放流ポンプ槽に流入する処理水が連通する越流孔を有する越流堰と、前記越流堰に対して、前記越流孔を塞ぐ前記担体を除去する散気を行う散気部とを有し、前記越流堰は、一端が塞がれた水平方向に延びる円筒形の中空体であり、前記分離槽からの処理水が前記中空体の周面に形成された複数の前記越流孔を通じて中空体内に流入し、当該中空体の他端の開口部から前記放流ポンプ槽に流出し、前記越流堰は、前記分離槽に前記塞がれた一端と前記越流孔が位置し、前記放流ポンプ槽に前記開口部が位置し、前記一端から他端に向けて長手方向になるように延びており、前記散気部は、前記中空体の周面の上側に位置する前記スクリーン孔に向けて上方から下方に気を吹き付け、前記スクリーン孔は、前記越流孔に比べて大きい、排水処理槽である。
【0008】
好適には、前記越流堰の形状は、一端が塞がれた水平方向に延びる円筒、断面多角形の中空体である。
【0009】
好適には、前記越流堰に対して、前記越流孔を塞ぐ前記担体を除去する散気を行う散気部をさらに有する。
【0010】
好適には前記スクリーンは、水平方向に対して傾斜した傾斜面を有し、当該傾斜面に複数のスクリーン孔が形成されている。
【0011】
好適には、前記複数の越流孔は、略円形である。
【0012】
好適には、前記越流孔は、Φ4~Φ10である。
【0013】
好適には、前記複数の越流孔は、矩形である。
【0014】
また、本発明は、汚水の処理水を生物的処理するための流動する担体が収容された好気処理槽と、分離槽と、前記好気処理槽から前記分離槽に流入する処理水を、当該処理水に含まれる流動する前記担体を除去して前記分離槽に流すスクリーンと、放流ポンプ槽と、を有する排水処理槽に用いられる越流堰であって、前記処理水に含まれる破損した担前記体を通さないサイズの複数の越流孔を有し、前記分離槽からの処理水を前記複数の越流孔を通じて前記放流ポンプ槽に流出させる、越流堰である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、好気処理槽、分離槽及び放流ポンプ槽の間での処理水の流れを滞らせることなく、且つ破損した担体が放流ポンプ槽に流入することを適切に回避できる排水処理槽及び越流堰を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る排水処理槽1の構成図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す第1実施形態に係る越流堰25の外観を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す越流堰25に空気を吹き付ける散気部27の配置を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る越流堰225の外観を説明するための図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す越流堰225に空気を吹き付ける散気部27の配置を説明するための図である。
【
図7】
図7は、比較例に係る排水処理槽の構成図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すスクリーンを説明するための図である。
【
図9】
図9は、
図7に示すバックルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ディスポーザー排水処理槽には担体流動槽が多く存在する。その担体は摩耗破損し、漏れ防止スクリーンを通過して沈殿槽へ、沈殿槽の越流堰を流下して放流ポンプ侵入する。そこで放流ポンプに詰り放流不良を起こす。
本実施形態の処理水は、例えば、洗濯、洗面所、台所、トイレ、風呂の排水であり、BOD200-250ppmと同程度である。
【0018】
沈殿槽に設置の越流堰の役割は、浮上汚泥の流出防止、分離清水の越流をスムースにするものである。しかしながら、その現状の越流堰では漏れた担体や破損担体は、残念ながら越流堰を通過してしまう。
【0019】
そこで、漏れ担体や破損担体が、越流性を通過しない越流堰を発明した。本実施形態の越流堰の形状は角形若しくは丸形である。材質は、金属、塩ビ、FRP等特に限定されない。
穴の口径は、例えば、直径5φであるが、10φ等、担体により選択できる。
破損担体も破損しない担体も、当該越流堰を通過しない。また、当該越流堰の閉塞もない。
当該越流堰には、Φ4~Φ10の穴が多数存在する。担体の材質形状によって、越流穴の口径を任意に設定する。
また、越流穴が破損担体等の異物によって閉塞しないように、散気装置から散気する。
【0020】
本実施形態では、越流堰の越流穴への異物の閉塞を取り除くため、散気を行う。散気は、浮上スカムを粉砕して落下させる機能もある。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る排水処理槽1の構成図である。
図1に示すように、排水処理槽1は、例えば、好気処理槽11,分離槽(沈殿槽)13,放流ポンプ槽15が処理水の流れに沿って順に配置されている。
【0022】
好気処理槽11は、前段槽から流入した処理水に対して好気処理を行う。
当該好気処理は、好気性微生物が水中の酸素を使用し、有機物を水と二酸化炭素に分解する働きを利用した排水処理である。当該好気処理法は、排水処理や下水処理に活用されている。好気性微生物を活用することで、排水を浄化できる活性汚泥法である。
【0023】
好気処理槽11と分離槽13との間にはスクリーン21が設けられている。
スクリーン21にて、好気処理槽11からの好気処理された処理水内の担体が除去されて、担体除去後の処理水が分離槽13に流入する。
すなわち、好気処理槽11から分離槽13に向けてスクリーン21を通過する過程で、処理水内の担体が分離される。
一方、破損した担体の一部は、スクリーン21を通過して分離槽13に流下する。
【0024】
図2は、
図1に示すスクリーン21の外観図である。
図2に示すように、スクリーン21は、垂直方向に対して傾斜した傾斜面213を有している。
傾斜面213の略前面に、複数のスクリーン孔215が形成されている。
スクリーン孔215は、越流堰25の孔に比べて大きい。これにより、好気処理槽11から分離槽13への処理水の流れをスムーズにすることができる。
スクリーン孔215は、例えば、略円形であり、Φ6~Φ10である。
スクリーン21では、越流堰25が形成された面を傾斜面213としたことで、処理水の流入量を減らすことなく、担体がスクリーン孔215を通過することを効果的に抑制できる。
【0025】
分離槽13と放流ポンプ槽15との間には越流堰25が設けられている。
以下、越流堰25について詳細に説明する。
図3は、
図1に示す第1実施形態に係る越流堰25の外観を説明するための図である。
図3に示すように、越流堰25は、中空体(筒状)をしており、分離槽13側の一端には処理水の流入を防ぐキャップ41が固定されている。
【0026】
越流堰25の周面125には、スクリーン21を介して分離槽13に流入された処理水に含まれる破損した担体を通さないサイズの複数の越流孔51が周面の約60~90%の領域に形成されている。
越流孔51は、例えば、略円形であり、Φ4~Φ10である。
また、越流堰25の断面径はΦ100~Φ200である。また、越流堰25の長手方向の長さは500~2000mmである。
【0027】
越流堰25は、分離槽13の上方(水面付近)に設けられ、水平方向に長細い形状をしており周面が水平方向に延びている。
【0028】
越流堰25は、分離槽13に収容された処理水が、越流孔51を介して越流堰25の筒内に流入し、越流堰25の他端の開口部から放流ポンプ槽15に流出される。
このとき、分離槽13に収容された処理水に含まれる破損した担体等は、越流孔51を通過せず、分離される。
【0029】
ここで、越流孔51として、平板状の部材に越流孔を形成したものではなく、中空体の外周に越流孔51を形成したものを用いることで、一度に流入全量を排水せず、排水調整機能を発揮できる。
図3のような曲面の周面125に越流孔51を形成したことで、平面に越流孔を形成する場合に比べて、閉塞し難くなる。
すなわち、越流孔51は、越流堰25の底部、側面、上部と全面に配置してあり、一方向からの越流でなく、全面からの越流となり、詰まりにくい。
【0030】
散気部27は、越流堰25の周面に向けて空気を吹き付け、越流孔51を塞ぐ担体の破片等を除去する。散気部27は、例えば、
図4に示すように配置される。これにより、越流孔51が詰まりにくくなる。
【0031】
ポンプ32は、放流ポンプ槽15内に設置された水位計の計測結果を基に、所定の水位になったとき放流ポンプ槽15内の処理水を吸い上げて流出させる。
【0032】
以上説明したように、排水処理槽1によれば、
図3に示す構造の越流堰25を用いたことで、越流堰としての機能を適切に発揮しながら、破損した担体を処理水から適切に除去して放流ポンプ槽15に流出することができる。
また、排水処理槽1にれば、
図2に示す構造のスクリーン21を用いたことで、破損した担体の急激な漏れを防止できる。
【0033】
<第2実施形態>
第2実施形態の排水処理槽は、越流堰が第1実施形態とは異なる。以下の第2実施形態の越流堰について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態の越流堰225の外観を説明するための図である。
図5に示すように、越流堰225は、中空体(筒状)をしており、分離槽13側の一端には処理水の流入を防ぐキャップ41が固定されている。
【0034】
越流堰25の周面325には、スクリーン21を介して分離槽13に流入された処理水に含まれる漏れ出た担体を通さないサイズの複数の長方形の越流孔251が形成されている。
越流孔51は、例えば、幅はΦ100~Φ200mmであり、長さは500mm~2000mmである。
越流堰225は、分離槽13の上方(水面付近)に設けられ、水平方向に長細い形状をしており周面が水平方向に延びている。
【0035】
越流堰225は、分離槽13に収容された処理水が、越流孔251を介して越流堰25の筒内に流入し、越流堰25の他端の開口部から放流ポンプ槽15に流出される。
このとき、分離槽13に収容された処理水に含まれる破損した担体等は、越流孔251を通過せず、分離される。
【0036】
第2実施形態では、越流孔251の形状を矩形にしたことで、第1実施形態の越流孔51の場合と比べて、よりスムーズな越流が可能になる。また、調整機能を有した越流や、漏れ担体、破損担体の越流防止効果を高められる。
【0037】
本実施形態においては、散気部27は、越流堰225の周面に向けて空気を吹き付け、越流孔251を塞ぐ担体の破片等を除去する。散気部27は、例えば、
図6示すように配置される。
【0038】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、排水処理槽に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…排水処理槽
11…好気処理槽
13…分離槽
15…放流ポンプ槽
32…ポンプ
21,121…スクリーン
25,225…越流堰
27…散気部
41…キャップ
51,251…越流孔
125,325…周面
213…傾斜面
215…スクリーン孔
【要約】
【課題】 好気処理槽、分離槽及び放流ポンプ槽の間での処理水の流れを滞らせることなく、且つ破損した担体が放流ポンプ槽に流入することを適切に回避できる排水処理槽及び越流堰を提供する。
【解決手段】 越流堰25は、中空体(筒状)をしており、分離槽13側の一端には処理水の流入を防ぐキャップ41が固定されている。越流堰25の周面125には、スクリーン21を介して分離槽13に流入された処理水に含まれる破損した担体を通さないサイズの複数の越流孔51が周面の約60~90%の領域に形成されている。また、スクリーン21は、垂直方向に対して傾斜した傾斜面213を有している。傾斜面213の略前面に、複数のスクリーン孔215が形成されている。
【選択図】
図3