(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】情報管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241112BHJP
【FI】
G16H10/00
(21)【出願番号】P 2024039753
(22)【出願日】2024-03-14
【審査請求日】2024-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524098950
【氏名又は名称】株式会社AKT Health
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】アディティア タラプラガダ
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-515089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0327250(US,A1)
【文献】特開2024-007851(JP,A)
【文献】特開2020-129311(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112967775(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生体情報のセンシング結果を示すテキストデータと、医療機関で撮影された前記ユーザの医用画像データとを含む医療データを管理する情報管理システムであって、
前記テキストデータを分散型台帳に記録させる第1記録部と、
前記医用画像データを集中型データベースに記録させる第2記録部と、
前記ユーザが、前記ユーザの健康の管理若しくは増進、又は調査及び研究の運営を目的としたイベントを達成した場合に、トークンを前記分散型台帳上で発行するトークン管理部と、を備え
、
前記トークン管理部は、
前記イベントの種類、及び前記イベントの達成状況に基づいて、前記ユーザへの前記トークンの発行量を決定するものであって、
前記イベントが医療機関から指定される投薬プランの実行である場合、前記分散型台帳に記憶された服薬記録と前記投薬プランとが乖離する程度が大きいほど、前記トークンの発行量を少なくする
情報管理システム。
【請求項2】
前記分散型台帳又は前記集中型データベースに記録された前記医療データを入力にして、前記ユーザの健康状態についての診断結果を出力する学習済みモデルに、前記分散型台帳又は前記集中型データベースから取得した前記医療データを入力して、前記ユーザの健康状態についての診断結果を出力として取得し、前記診断結果を前記医療機関が使用する通信機器に出力する診断部を備える
請求項
1に記載の情報管理システム。
【請求項3】
前記ユーザから前記医療データの開示範囲の設定を受け付ける開示設定部を備える
請求項1
又は2に記載の情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療データを管理する情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療、製薬、及び保険等の業界において、これらの業界における顧客となるエンドユーザについての種々の情報を管理するためブロックチェーン等の分散型台帳技術の活用が進められている。例えば、特許文献1には、ユーザの血圧、血糖値、心拍、及び体温等をセンシングした情報、電子カルテ、並びにX線画像、CT画像、及びMRI画像等の医用画像等の医療データをブロックチェーンに記憶させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブロックチェーンには過去の全てのデータが記憶される。このため、特許文献1のように、医用画像をブロックチェーンに記憶させた場合、ブロックチェーンに参加するコンピュータの保存容量がすぐに消費されてしまう。結果として、特許文献1に記載のシステムでは、ユーザの医療データを継続的に管理することができない。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、医療データを継続的に管理することができる情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報管理システムは、ユーザの生体情報のセンシング結果を示すテキストデータと、医療機関で撮影されたユーザの医用画像データとを含む医療データを管理する情報管理システムであって、テキストデータを分散型台帳に記録させる第1記録部と、医用画像データを集中型データベースに記録させる第2記録部と、ユーザが、ユーザの健康の管理若しくは増進、又は調査及び研究の運営を目的としたイベントを達成した場合に、トークンを分散型台帳上で発行するトークン管理部と、を備え、トークン管理部は、イベントの種類、及びイベントの達成状況に基づいて、ユーザへのトークンの発行量を決定するものであって、イベントが医療機関から指定される投薬プランの実行である場合、分散型台帳に記憶された服薬記録と投薬プランとが乖離する程度が大きいほど、トークンの発行量を少なくする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の情報管理システムでは、テキストデータを分散型台帳に記録させ、医用画像データを集中型データベースに記録させている。このように、比較的容量の大きい医用画像データを分散型台帳の外部に記録されているため、情報管理システムは、医療データを継続的に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る情報管理システムを示す概略構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る情報管理システムを示す機能ブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係るデータ利用部を示す機能ブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係るトークン管理部の処理を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1に係る情報管理システムでのAI診断処理を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1に係る情報管理システムでのトークン発行処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る情報管理システム100を示す概略構成図である。情報管理システム100は、ユーザから取得した医療データを管理するためのシステムである。
図1に示すように、情報管理システム100は、情報処理装置1及びハイブリッドクラウド2を有する。情報処理装置1は、後述するユーザ端末11、事業者端末12、電子カルテシステム13、及び医療機器14等の外部機器及び外部システムと、ハイブリッドクラウド2との間で医療データの送信又は受信を行う。医療データとは、ユーザの健康状態を示すデータ、及びユーザの健康状態の推定に用いられる種々のデータを総称したものである。また、情報管理システム100は、医療データを提供したユーザに対して経済的な還元を行う機能を有する。
【0010】
情報処理装置1は、例えばサーバ装置であって、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、及びメモリを有する。プロセッサは、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0011】
ハイブリッドクラウド2は、ブロックチェーン21等の分散型台帳、及び集中型データベース22を組み合わせた記憶媒体である。ブロックチェーン21は、ブロックと称される所定のデータ構造を有するデータ群を時系列に並べたものである。ブロックチェーン21は、各ブロックに記録した情報を保持しつづける記録台帳としての役割を有する。各ブロックは、ブロックチェーン21に保持させたい情報の他に、前のブロックの情報と、ノンスとを含む。ノンスは、改ざんの有無を検知するための情報である。ブロックチェーン21で新たなブロックを追加する際には、複数のノード21aが参加する所定のコンセンサスアルゴリズムに従った処理が行われる。そして、複数のノード21aのそれぞれは、コンセンサスアルゴリズムに従った処理を通して、ブロックチェーン21のコピーを保持する。ブロックチェーン21は、所謂プライベートチェーンであり、例えば製薬会社によって管理される。
【0012】
集中型データベース22は、例えば、クラウド型のデータベースである。集中型データベース22は、所謂スケーラブルサーバであって、保存するデータの容量の増加に合わせて記憶領域を増加させることができる。
【0013】
ユーザ端末11、事業者端末12、電子カルテシステム13、及び医療機器14は、インターネット又は専用のネットワーク回線等のネットワークNWを介して、情報処理装置1と通信可能な状態となるように接続されている。
【0014】
ユーザ端末11は、ユーザが有するスマートフォン、タブレット、又はパーソナルコンピュータ等の通信機器である。ユーザ端末11には、情報管理システム100の機能にアクセスするためのユーザ用の専用アプリケーション、及び事業者によって提供される認証アプリケーションがインストールされている。
【0015】
事業者端末12は、医療機関、製薬会社、及び保険会社等の事業者等が有するサーバ装置、及びパーソナルコンピュータ等の通信機器である。また、事業者端末12は、スポーツイベント等を開催する個人、又は団体等が有するスマートフォン、タブレット、又はパーソナルコンピュータ等の通信機器であってもよい。事業者端末12には、情報管理システム100の機能にアクセスするための事業者用の専用アプリケーションがインストールされている。
【0016】
電子カルテシステム13は、医療機関で作成された電子カルテを外部の装置に提供するためのシステムである。電子カルテには、患者であるユーザの診察内容、診断結果、及び処方薬等、並びに医療機関で撮影された画像等が含まれる。医療機器14は、医療機関に設置されている機器であって、例えばユーザの身体のX線画像、CT画像、又はMRI画像を撮影する機器である。
【0017】
図2は、実施の形態1に係る情報管理システム100を示す機能ブロック図である。
図2を用いて、医療データの記録を行う機器の動作、及び情報処理装置1の記録処理について説明する。
【0018】
ユーザ端末11は、認証アプリケーションによって管理されるイベントに関するイベントデータを情報処理装置1に送信する。認証アプリケーションは、事前に本システムの提供者が定める基準をクリアして、認証を受けたアプリケーションである。認証アプリケーションによって管理されるイベントは、ユーザの健康の管理を目的としている。具体的に、イベントは、ユーザが設定された行動内容に関与することによって、ユーザの健康の維持、又は疾病からの回復に寄与することを目的としている。例えば、医療機関による健康状態のモニタリングのためのウェアラブルセンサ11aの着用等が該当する。
【0019】
イベントがウェアラブルセンサ11aの着用である場合、イベントの期間は無期限に設定される。また、イベントデータは、ユーザの生体情報のセンシング結果を示すセンシングデータを含んでいる。センシングデータは、例えば、ユーザの身体に取り付けられたウェアラブルセンサ11aによって計測される。センシングされるデータは、例えば、患者の呼吸数、心拍数、及び体温である。ウェアラブルセンサ11aは、ユーザ端末11と無線通信を行って、予め定められた時間(例えば10分)ごとにセンシングデータをユーザ端末11に送信する。センシングデータをウェアラブルセンサ11aから受信したユーザ端末11は、予め定められた時間(例えば10分)ごとに、イベントデータ(センシングデータ)を情報処理装置1に送信する。
【0020】
電子カルテシステム13は、情報処理装置1に電子カルテデータを送信する。医療機器14は、情報処理装置1にX線画像、CT画像、及びMRI画像等の医用画像データを送信する。医療機器14は、医用画像データを送信する上で、例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)等の医用画像の共通規格を利用する。
【0021】
情報処理装置1は、制御装置31及び記憶装置32を有する。制御装置31は、プロセッサであり、第1記録部41、第2記録部42、データ利用部43、及びトークン管理部44を有する。ここでは、医療データの記録に関連する第1記録部41及び第2記録部42について説明する。記憶装置32は、制御装置31の動作に必要な種々の情報を記憶するものであって、例えばハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、又はフラッシュメモリ等である。
【0022】
第1記録部41は、ユーザ端末11を介してイベントデータを取得する。イベントデータは、テキストデータで表現される。具体的に、イベントデータに含まれるセンシングデータは、センシング内容と、センシング結果とが文字情報及び数字情報で示される。また、第1記録部41は、電子カルテシステム13から受信した電子カルテデータのうち、テキストデータで表現されるデータを取得する。第1記録部41は、取得したこれらのテキストデータをブロックチェーン21に記録させる。
【0023】
第2記録部42は、電子カルテシステム13から受信した電子カルテデータのうち、画像データで表現されている医用画像データを取得する。また、第2記録部42は、医療機器14から受信した医用画像データを取得する。第2記録部42は、取得したこれらの医用画像データを集中型データベース22に記録させる。
【0024】
なお、センシングデータにはセンシングを行った機器の端末IDが付され、電子カルテデータにはカルテIDが付され、医療機器から提供される医用画像データには画像IDが付されている。記憶装置32には、情報管理システム100を利用するユーザを識別するためのユーザIDに対する端末IDと、カルテIDと、画像IDとの紐づけが記憶されている。各ID同士の紐づけの正誤は、情報管理システム100上の処理、及び処理に伴うデータの動き等を記録した監査ログ(Auditログ)等を、情報管理システム100の管理者が確認することで判定することができる。この際に、システムの管理者は、監査ログを追跡するための専用のソフトウェアを用いてもよい。監査ログの確認は、例えば所定の期間ごと、あるいはインシデントの発生時に行われる。ID同士の紐づけの誤りが発見された場合、紐づけの訂正と影響の確認とが行われる。第1記録部41は、記録させるテキストデータにユーザIDを付している。また、第2記録部42は、医用画像データと合わせてユーザIDを記録させている。
【0025】
図3は、実施の形態1に係るデータ利用部43を示す機能ブロック図である。
図3を用いて、ハイブリッドクラウド2に記録されたデータの利用について説明する。なお、
図3では、制御装置31が有する第1記録部41、第2記録部42、及びトークン管理部44の図示は省略している。データ利用部43は、事業者端末12に医療データを送信するものであって、
図3に示すように、開示設定部431、データ提供部432、及び診断部433を有する。
【0026】
開示設定部431は、ユーザ端末11を介してユーザによって指定された開示範囲に基づいて、データ提供部432及び診断部433で利用可能又は不可能な医療データを設定する。具体的に、開示設定部431は、ユーザ端末11から開示範囲の設定を受け付けると、記憶装置32にアクセス可否リストALとして記憶させる。アクセス可否リストALには、例えば事業者IDによって特定される事業者ごとに、どのユーザIDのどの種類の医療データに対してアクセス可能であるか、あるいは不可能であるかが記録されている。また、アクセス可否リストALには、ユーザごとに、どのユーザIDのどの種類の医療データに対してアクセス可能、あるいは不可能であるかも記録されている。ユーザからの自身の医療データについての開示範囲の指定は、ユーザ用の専用アプリケーションによりユーザ端末11に表示された指定画面から行うことができる。
【0027】
データ提供部432は、事業者端末12からのリクエストに応じて、開示設定部431によって設定されたアクセス可否リストALにおいてアクセス可能とされた範囲内で医療データを提供する。具体的なアクセス制限の一例について説明する。事業者端末12からのリクエストには、例えば開示を要求する医療データを示すリクエスト内容に加えて、秘密鍵(プライベートキー)を用いて生成されたデジタル署名が付されている。秘密鍵は、事業者端末12にインストールされた事業者用の専用アプリケーションによって、公開鍵(パブリックキー)とペアで発行され、公開鍵と共に事業者用の専用アプリケーション上で管理される。また、事業者ID又はユーザIDと紐づけて、ウォレットアドレスが対応表CLとして記憶装置32に記憶されている。ウォレットアドレスは、公開鍵に対して一方向の関数を用いて生成された文字列である。
【0028】
事業者端末12は、リクエストを送信する際に、デジタル署名が付されたリクエストに加えて、公開鍵を送信する。データ提供部432はリクエストを受けると、デジタル署名及び公開鍵を用いて、送信されたデータに改ざんが無いことを検証してから、公開鍵をもとにウォレットアドレスを特定する。そして、データ提供部432は、対応表CLを基に事業者端末12を使用する事業者の事業者IDを特定し、アクセス可否リストALでアクセスが許容されている医療データのみを提供する。なお、アクセス可否リストAL及び対応表CLは、ブロックチェーン21に記憶されていてもよい。
【0029】
診断部433は、AI(Artificaial Intelligence)を利用して、ユーザの健康状態について診断する。以下では、AIを利用した診断を、AI診断と称する。診断部433は、入力される医療データに応じて、学習済みモデルLM1又は学習済みモデルLM2を用いて、AI診断を行う。学習済みモデルLM1及び学習済みモデルLM2は、例えば事前に記憶装置32に記憶されている。
【0030】
第1に、学習済みモデルLM1は、予め教師データを用いた機械学習又は深層学習等により、ユーザの現在の健康状態、又はユーザの将来(例えば、18時間後)の健康状態を推定した診断結果情報を出力するように学習された学習済のモデルである。学習済みモデルLM1は、ブロックチェーン21に記録されたテキストデータを入力にして、健康状態の診断結果を出力する。診断結果は、例えば疾病分類コード、及び緊急度で表される。疾病分類コードは、例えば国際疾病分類(International Classification of Diseases)である。
【0031】
診断部433は、学習済みモデルLM1に、ブロックチェーン21から取得したテキストデータを入力して、学習済みモデルLM1の出力であるユーザの健康状態についての診断結果を取得する。そして、診断部433は、取得した診断結果を医療機関が使用する事業者端末12に出力する。診断部433は、イベントがウェアラブルセンサ11aの着用であるならば、予め定められた第1時間ごとに学習済みモデルを用いたユーザの現在の健康状態及びユーザの将来の健康状態についてAI診断を行う。第1時間は、例えば、イベントデータが取得及び記録されるタイミングとAI診断を行うタイミングとを同期するために設定された時間であって、例えば10分である。
【0032】
もっとも、診断部433は、医療機関の指示に基づいて、学習済みモデルLM1を利用したAI診断を行うようにしてもよい。学習済みモデルLM1の入力に用いられるテキストデータは、開示設定部431によって設定されたアクセス可否リストALにおいてアクセス可能とされたデータに限定される。なお、アクセス制限の方法についてデータ提供部432に関連して説明した方法と同様である。
【0033】
第2に、学習済みモデルLM2は、予めディープラーニング等により、ユーザの現在の健康状態を推定した診断結果情報を出力するように学習された学習済のモデルである。学習済みモデルLM2は、CNN(Convolution Neural Network)である。学習済みモデルLM2は、集中型データベース22に記録された医用画像データを入力にして、健康状態の診断結果を出力する。診断結果は、例えば疾病分類コード、及び緊急度で表される。
【0034】
診断部433は、学習済みモデルLM2に、集中型データベース22から取得した医用画像データを入力して、学習済みモデルLM2の出力であるユーザの健康状態についての診断結果を取得する。そして、診断部433は、取得した診断結果を医療機関が使用する事業者端末12に出力する。診断部433は、医療機関の指示に基づいて、学習済みモデルLM2を利用したAI診断を行う。学習済みモデルLM2の入力に用いられる医用画像データは、開示設定部431によって設定されたアクセス可否リストALにおいてアクセス可能とされたデータに限定される。なお、アクセス制限の方法についてデータ提供部432に関連して説明した方法と同様である。
【0035】
事業者端末12は、情報管理システム100のデータ提供部432から、リクエストした医療データを受信する。また、事業者端末12を管理する事業者が医療機関である場合、事業者端末12では、診断部433の処理に基づくユーザの健康状態についての診断結果を受信する。
【0036】
図4は、実施の形態1に係るトークン管理部44の処理を説明するための図である。運用者端末15は、事業者端末12のうち、認証アプリケーションの運用者が有する端末である。運用者端末15は、予め定められた条件が満たされた場合、トークン管理部44へのトークンの発行を指示する。例えば、イベントがウェアラブルセンサ11aのように、イベントの期間が無期限に設定されている場合、運用者端末15は、予め定められた第2時間(例えば1日)が経過した際に、トークン管理部44へのトークンの発行を指示する。
【0037】
トークン管理部44は、ブロックチェーン21に記録されているイベントデータに基づいて、ユーザがイベントを達成したか否かを判定する。また、ユーザがイベントを達成したと判定される場合、トークン管理部44は、トークンをブロックチェーン21上で発行する。このときのトークンは、イベントを達成したユーザが有するウォレットアドレスを送信先とされている。トークン管理部44は、イベントの種類、及びイベントの達成状況に基づいて、ユーザへのトークンの発行量を決定する。例えば、イベントの達成状況は、イベントがウェアラブルセンサ11aの着用である場合、ウェアラブルセンサ11aの着用率に基づいて評価される。ウェアラブルセンサ11aの着用率は、第2時間中のイベントデータの量で判断することができる。トークン管理部44は、ウェアラブルセンサ11aの着用率が予め定められた閾値以上であれば、イベントが達成されたと判定する。また、トークン管理部44は、ウェアラブルセンサ11aの着用率が予め定められた閾値未満であれば、イベントが達成されなかったと判定する。トークン管理部44は、ウェアラブルセンサ11aの着用率が高いほどトークンの発行量を多くし、逆にウェアラブルセンサ11aの着用率が低いほどトークンの発行量を少なくする。
【0038】
トークン管理部44は、ユーザ端末11からのリクエストに応じて、対応表CL及びユーザIDに基づき、ユーザのウォレットアドレスに記録されているトークンをユーザ端末11に表示させる。また、トークン管理部44は、ユーザ端末11からのリクエストに応じて、ユーザのウォレットアドレスに記録されているトークンの利用を受け付ける。具体的な処理の一例について説明する。ユーザ端末11からのリクエストには、リクエストの内容に加えて秘密鍵を用いて生成されたデジタル署名が付されている。秘密鍵は、ユーザ端末11にインストールされたユーザ用の専用アプリケーションによって、公開鍵とペアで発行され、公開鍵と共にユーザ用の専用アプリケーション上で管理される。
【0039】
ユーザ端末11は、リクエストを送信する際に、デジタル署名が付されたリクエストに加えて、公開鍵を送信する。データ提供部432はリクエストを受けると、デジタル署名及び公開鍵を用いて、送信されたデータに改ざんが無いことを検証してから、公開鍵をもとにウォレットアドレスを特定する。そして、データ提供部432は、対応表CLを基にユーザ端末11を使用するユーザのユーザIDを特定し、対応表CLで対応関係が示されたウォレットアドレスのトークンの表示及び利用の受付を行う。なお、アクセス可否リストALには、上述した医療データへのアクセスの可否に限らず、ウォレットアドレスに送信されたトークンの参照権限及び使用権限についても設定されていてもよい。データ提供部432は、この場合アクセス可否リストALでの設定内容に基づいて、ウォレットアドレスのトークンの表示及び利用の受付を制限する。
【0040】
トークンは、例えば、周知のアルゴリズムを用いて換金することができる。なお、トークン管理部44は、トークンの換金を予め定められた量のトークンが溜まった場合にのみ実行するようにしてもよい。ユーザによるウォレットアドレスに記録されているトークンの確認、及びトークンの利用の申請は、例えば、ユーザ用の専用アプリケーションによりユーザ端末11に表示された申請画面から行うことができる。
【0041】
図5は、実施の形態1に係る情報管理システム100でのAI診断処理を示すフローチャートである。ここでは、イベントがウェアラブルセンサ11aの着用であって、ブロックチェーン21に記憶されたテキストデータであるイベントデータ(ウェアラブルセンサ11aのセンシングデータ)を入力にして学習済みモデルLM1を用いた診断を行う場合について示している。
図5に示すように、先ず、ユーザ端末11からイベントデータが送信される(ステップS1)と、情報処理装置1の第1記録部41は、ブロックチェーン21にイベントデータを記録する(ステップS2)。その後、診断部433は、第1時間を経過したか否かを判定する(ステップS3)。第1時間を経過していない場合(ステップS3:NO)、ユーザ端末11からのイベントデータの記録を待機する。第1時間を経過した場合(ステップS3:YES)、診断部433は、学習済みモデルにイベントデータを入力して、ユーザの現在の健康状態又は将来の健康状態についての診断結果を得る(ステップS4)。そして、診断部433は、診断結果を事業者端末12に出力し、医療機関での確認が行われる(ステップS5)。このように、第1時間ごとに取得されるイベントデータ(ウェアラブルセンサ11aのセンシングデータ)を用いて、定期的にAI診断を行うことで、医療機関においてユーザの健康状態についてモニタリングし、ユーザの現在の疾病の有無及び将来の疾病の有無を判断することができる。
【0042】
図6は、実施の形態1に係る情報管理システム100でのトークン発行処理を示すフローチャートである。ここでは、イベントがウェアラブルセンサ11aの着用である場合を例にして説明する。
図6に示すように、先ず、ユーザ端末11からイベントデータ(ウェアラブルセンサ11aのセンシングデータ)が送信される(ステップS11)と、情報処理装置1の第1記録部41は、ブロックチェーン21にイベントデータを記録する(ステップS12)。その後、運営者端末は、第2時間を経過したか否かを判定する(ステップS13)。第2時間が経過していない場合(ステップS13:NO)、運営者端末は、第2時間が経過するまでトークンの発行指示を待機する。第2時間が経過した場合(ステップS13:YES)、運営者端末は、トークンの発行を指示し(ステップS14)、情報処理装置1のトークン発行部によってトークンの発行が行われる(ステップS15)。
【0043】
なお、上述の説明では、イベントがウェアラブルセンサ11aの着用である場合について説明した。しかしながら、認証アプリケーションの運営者は、ユーザの健康の管理若しくは増進、又は調査及び研究の運営を目的として、その他にも種々の行動をイベントとして設定することができる。
【0044】
具体的に、ユーザの健康の管理を目的として、医療機関から指定される投薬プランの実行をイベントとして設定してもよい。また、調査及び研究の運営を目的として、医療機関又は製薬会社から指定される臨床試験のプランの実行をイベントに設定してもよい。さらに、ユーザの健康の増進を目的として、例えばスポーツサークルでの活動をイベントとして設定してもよい。
【0045】
例えば、イベントが医療機関から指定される投薬プランの実行である場合、ユーザ端末11から情報処理装置1に送信されるイベントデータは、服薬日時及び服薬内容からなる服薬記録である。ユーザによる服薬記録の入力は、例えば、認証アプリケーションによりユーザ端末に表示された入力画面から行うことができる。服薬記録は、文字情報及び数字情報からなるテキストデータである。また、イベントは予め医療機関によって設定された治療期間継続的に行われる。この場合、運用者端末15は、予め定められた第3時間(例えば1日)あるいは治療期間が経過した際に、トークン管理部44へのトークンの発行を指示する。
【0046】
トークン管理部44は、ユーザの投薬アドヒアランスを定量的な指標として算出する。例えば、記録されている服薬記録が投薬プランからどの程度乖離しているかを評価する。トークン管理部44は、投薬アドヒアランスに基づく指標が予め定められた閾値以上であれば、イベントが達成されたと判定する。また、トークン管理部44は、投薬アドヒアランスに基づく指標が予め定められた閾値未満であれば、イベントが達成されなかったと判定する。トークン管理部44は、服薬記録が投薬プランを完全に順守した場合、イベントの達成状況を最も高く評価し、服薬記録と投薬プランとの乖離が大きくなるほど、イベントの達成状況を低く評価する。
【0047】
また例えば、イベントが医療機関又は製薬会社から指定される臨床試験のプランの実行である場合、トークン管理部44は、臨床試験を運営する医療機関又は製薬会社によって、臨床試験への参加が承認されることで、イベントが達成されたと判断する。臨床試験の参加の承認は、例えば、ユーザがユーザ端末11の認証アプリケーションを介して参加を申請し、運営者端末16によって参加の申請が承認されることで行われる。
【0048】
トークン管理部44は、例えば臨床試験の日程が長いほど、臨床試験終了時のイベントの達成状況を高く評価し、逆に臨床試験の日程が短いほど、臨床試験終了時のイベントの達成状況を低く評価する。
【0049】
また例えば、イベントがスポーツサークルでの活動である場合、トークン管理部44は、サークルを主催する個人又は団体が生成したQRコード(登録商標、以下省略する)等の2次元コードを、ユーザがユーザ端末11の認証アプリケーションを介して読み込むことで、イベントが達成されたと判断する。QRコードは、例えば認証アプリケーションにおいてイベントの主催者であることを申請することで生成する権利を得ることができる。QRコードを読み込んだユーザ端末11は、認証アプリケーションの機能によってトークン管理部44にトークンの発行を指示することができる。
【0050】
トークン管理部44は、例えばスポーツサークルでの活動時間が長いほど、イベントの達成状況を高く評価し、逆にスポーツサークルでの活動時間が短いほど、イベントの達成状況を低く評価する。
【0051】
なお、ユーザは、自身の関心に応じて種々の認証アプリケーションから選択したものをユーザ端末にインストールすることができる。また、複数の種類の認証アプリケーションをインストールできるようにしてもよいし、1つの認証アプリケーションが複数のイベントに関連するものであってもよい。
【0052】
以上のように、実施の形態1の情報管理システム100では、テキストデータを分散型台帳に記録させ、医用画像データを集中型データベース22に記録させている。このように、比較的容量の大きい医用画像データを分散型台帳の外部に記録しているため、情報管理システム100は、医療データを継続的に管理することができる。
【0053】
また、実施の形態1によれば、ハイブリッドクラウド2を使用することにより、テキストデータと医用画像データとの両方を用いてAI診断を行うことができる。この際に、データ容量の大小と問わず、テキストデータをブロックチェーン21に記録させ、医用画像データを集中型データベース22に記録させているため、AI診断で活用するデータの種類に応じて、診断部433は、ブロックチェーン21と集中型データベース22との何れかと通信を行う。つまり、診断部433は、AI診断を行う際に、ブロックチェーン21と集中型データベース22との両方と通信を行う必要がないため、データの取得及び解析を効率的に行うことができる。
【0054】
また、実施の形態1によれば、イベントに参加したユーザにトークンを与えることで、ユーザのイベントへの参加を動機づけることができる。このため、AIによる分析に用いられる医療データをより多く収集することで、AI診断をより精確に行うことができる。加えて、医療データを多く収集した場合であっても、比較的容量の大きい医用画像データを分散型台帳の外部に記録されているため、情報管理システム100は、医療データを継続的に管理することができる。
【0055】
また、医療データをより多く収集することで、AIによりユーザが将来的に病気になる可能性等を予測することが可能となる。このため、ユーザの病気可能性の予測データについて、保険会社等と連携することで保険料の減額などを図ることができる。
【0056】
また、実施の形態1によれば、アクセス可否リストAL上で、ユーザ用又は事業者の専用アプリケーション上で発行された一対の秘密鍵及び公開鍵を用いて特定されるウォレットアドレスに対応する事業者又はユーザのIDの権限を設定している。このため、ハイブリッドクラウド2のブロックチェーン21及び集中型データベース22に対して権限の無い第三者からのアクセスを遮断することができるため、記録された医療データ又はトークン等の情報の改ざんを抑制することができる。
【0057】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は、上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、実施の形態1の情報処理装置1の具体的な構成は特に限定されるものではない。情報処理装置1の各機能は、複数のサーバ、及びパーソナルコンピュータ等によって実行されてもよい。また、情報処理装置1の機能の一部がユーザ端末11、医療機器14、及び事業者端末12にインストールされたソフトウェア等によって実現されてもよい。
【0058】
また、ユーザによるイベントの達成に対して、トークンによる補償を行っていたが、経済的に還元できるその他の手段を行うようにしてもよい。例えば、イベントの達成状況を示す情報を、保険会社と連携するようにしてもよい。これにより、生命保険料の減額などを図ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 情報処理装置、2 ハイブリッドクラウド、11 ユーザ端末、11a ウェアラブルセンサ、12 事業者端末、13 電子カルテシステム、14 医療機器、15 運用者端末、21 ブロックチェーン、21a ノード、22 集中型データベース、31 制御装置、32 記憶装置、41 第1記録部、42 第2記録部、43 データ利用部、44 トークン管理部、100 情報管理システム、431 開示設定部、432 データ提供部、433 診断部。
【要約】
【課題】医療データを継続的に管理することができる情報管理システムを提供する。
【解決手段】情報管理システムは、ユーザの生体情報のセンシング結果を示すテキストデータと、医療機関で撮影されたユーザの医用画像データとを含む医療データを管理する情報管理システムであって、テキストデータを分散型台帳に記録させる第1記録部と、医用画像データを集中型データベースに記録させる第2記録部と、を備える。
【選択図】
図2