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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】自動調理装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20241112BHJP
   A47J 43/046 20060101ALI20241112BHJP
   A47J 43/08 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A47J27/14 D
A47J27/14 Q
A47J43/046
A47J43/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024066377
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519020616
【氏名又は名称】TechMagic株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石渡 英治
(72)【発明者】
【氏名】佐喜眞 啓裕
【審査官】芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2258928(KR,B1)
【文献】中国実用新案第215457251(CN,U)
【文献】特開2011-250914(JP,A)
【文献】特開2022-124151(JP,A)
【文献】特開2023-043375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00 - 27/64
A47J 36/00 - 36/42
A47J 43/04 - 43/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材を収容する有底円筒状の容器本体と該容器本体に収容された具材を撹拌する撹拌部材とを有する調理容器と、該調理容器を自転自在に保持する容器保持ユニットとを備え、前記調理容器に収容された具材を撹拌調理する自動調理装置であって、
前記容器保持ユニットが、前記調理容器の容器本体と係合して該容器本体へ容器回転トルクを伝達して前記容器本体を容器本体中心軸まわりに自転させる容器回転軸と、該容器回転軸と独立して回転する撹拌部材回転軸とを有し、
前記容器保持ユニットの撹拌部材回転軸と前記調理容器の撹拌部材との間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成していることを特徴とする自動調理装置。
【請求項2】
前記撹拌部材の凹部に挿入される凸部が、前記容器本体の底面に形成され、
前記撹拌部材の凹部と点接触する球状体が、前記凸部の上面に保持され、
前記容器本体の底面と前記撹拌部材とが離間して対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自動調理装置。
【請求項3】
前記調理容器の容器本体および前記容器保持ユニットの容器回転軸のいずれか一方に回り止め突起が形成され、前記調理容器の容器本体および前記容器保持ユニットの容器回転軸のいずれか他方に前記回り止め突起と係合する回り止め凹溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動調理装置。
【請求項4】
前記調理容器の容器本体が、磁性体からなり容器加熱ユニットから誘導加熱される側面と、非磁性体領域を含む底面とから形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動調理装置に関するものであって、特に、有底円筒状の調理容器に収容された具材を撹拌調理する自動調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食業界では調理人の確保、調理スキルの維持、調理環境の整備等の諸事情から、調理業務の自動化が進展している。
そこで、従来、有底円筒状の調理容器を保持する容器保持ユニットと、この容器保持ユニットに保持された調理容器を調理台の前方域と後方域との間で起伏自在に回動させる回動ユニットと、これらの容器保持ユニットおよび回動ユニットを駆動制御する制御ユニットとを備え、調理容器に収容された具材を少なくとも撹拌調理する自動調理装置において、調理容器が、容器本体の内底面または内側面に設けて容器本体の内部空間内に向けて突出する撹拌部材を有している自動調理装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-175791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した自動調理装置では、撹拌部材が容器本体と一体になって回転することから、料理人の鍛錬された撹拌動作の技能を再現するには更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、料理人の鍛錬された撹拌動作の技能をよりリアルかつ高度に再現する自動調理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、具材を収容する有底円筒状の容器本体と該容器本体に収容された具材を撹拌する撹拌部材とを有する調理容器と、該調理容器を自転自在に保持する容器保持ユニットとを備え、前記調理容器に収容された具材を撹拌調理する自動調理装置であって、前記容器保持ユニットが、前記調理容器の容器本体と係合して該容器本体へ容器回転トルクを伝達して前記容器本体を容器本体中心軸まわりに自転させる容器回転軸と、該容器回転軸と独立して回転する撹拌部材回転軸とを有し、前記容器保持ユニットの撹拌部材回転軸と前記調理容器の撹拌部材との間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成していることにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された自動調理装置の構成に加えて、前記撹拌部材の凹部に挿入される凸部が、前記容器本体の底面に形成され、前記撹拌部材の凹部と点接触する球状体が、前記凸部の上面に保持され、前記容器本体の底面と前記撹拌部材とが離間して対向配置されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載された自動調理装置の構成に加えて、前記調理容器の容器本体および前記容器保持ユニットの容器回転軸のいずれか一方に回り止め突起が形成され、前記調理容器の容器本体および前記容器保持ユニットの容器回転軸のいずれか他方に前記回り止め突起と係合する回り止め凹溝が形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された自動調理装置の構成に加えて、前記調理容器の容器本体が、磁性体からなり容器加熱ユニットから誘導加熱される側面と、非磁性体領域を含む底面とから形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の自動調理装置によれば、容器保持ユニットが、調理容器の容器本体と係合してこの容器本体へ容器回転トルクを伝達して容器本体を容器本体中心軸まわりに自転させる容器回転軸と、容器回転軸と独立して回転する撹拌部材回転軸とを有し、容器保持ユニットの撹拌部材回転軸と調理容器の撹拌部材との間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成していることにより、撹拌部材が容器本体に対して独立して回転自在となるため、撹拌部材を容器本体よりも高速に回転させたり撹拌部材を容器本体よりも低速に回転させたりすることで料理人の鍛錬された撹拌動作の技能をよりリアルかつ高度に再現して、多種多様な料理を調理することができる。
さらに、容器保持ユニットの撹拌部材回転軸と調理容器の撹拌部材との間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成していることにより、撹拌部材を容器本体にネジ止め等で固定する場合に比べて、容器本体の底部が簡素な形状となるため、撹拌部材と容器本体との装着部位に対する具材の残留を解消し、保守メンテナンス時に容器本体に対する撹拌部材の脱着操作も簡単に達成することができる。
【0011】
請求項2に係る発明の自動調理装置によれば、請求項1に係る発明の自動調理装置が奏する効果に加えて、撹拌部材の凹部と点接触する球状体が、凸部の上面に保持され、容器本体の底面と撹拌部材とが離間して対向配置されていることにより、容器本体と撹拌部材との間の摺動抵抗が低減されるため、撹拌部材を容器本体に対してより確実かつ高速に回転させることができる。
【0012】
請求項3に係る発明の自動調理装置によれば、請求項1に係る発明の自動調理装置が奏する効果に加えて、調理容器の容器本体および容器保持ユニットの容器回転軸のいずれか一方に回り止め突起が形成され、調理容器の容器本体および容器保持ユニットの容器回転軸のいずれか他方に回り止め突起と係合する回り止め凹溝が形成されていることにより、回り止め突起と回り止め凹溝とを係合するだけで調理容器と容器保持ユニットとが相互に位置決めされ保持されるため、簡単な構造で容器保持ユニットから調理容器の容器本体へ容器本体回転トルクを確実に伝達させることができる。
【0013】
請求項4に係る発明の自動調理装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明の自動調理装置が奏する効果に加えて、調理容器の容器本体が、磁性体からなり容器加熱ユニットから誘導加熱される側面と、非磁性体領域を含む底面とから形成されていることにより、容器本体の側面と容器加熱ユニットとで形成される磁気回路と、マグネットカップリング内で形成される磁気回路とが別個のものとなるため、容器保持ユニットによる容器本体および撹拌部材の自転と容器加熱ユニットによる誘導加熱とを確実に両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例である自動調理装置10の斜視図。
図2図1に示す自動調理装置10の要部組立図。
図3A図1に示す自動調理装置10の左側面部分断面図。
図3B図3AのIIIB拡大図。
図4A図1に示す自動調理装置10に形成される磁気回路を示す模式図。
図4B図4AのIVB拡大図。
図5図2に示す撹拌部材320の分解図。
図6A】調理容器に具材が投入された状態を示す模式図。
図6B】撹拌部材が具材を撹拌している状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の自動調理装置は、具材を収容する有底円筒状の容器本体とこの容器本体に収容された具材を撹拌する撹拌部材とを有する調理容器と、この調理容器を自転自在に保持する容器保持ユニットとを備え、調理容器に収容された具材を撹拌調理する自動調理装置であって、容器保持ユニットが、調理容器の容器本体と係合してこの容器本体へ容器回転トルクを伝達して容器本体を容器本体中心軸まわりに自転させる容器回転軸と、この容器回転軸と独立して回転する撹拌部材回転軸とを有し、容器保持ユニットの撹拌部材回転軸と調理容器の撹拌部材との間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成し、調理人の鍛錬された撹拌動作の技能をよりリアルかつ高度に再現するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0016】
例えば、本発明の自動調理装置は、主に飲食店の店舗内に設置されるが、本発明の自動調理装置の設置場所については、これに限られるものではなく、コンビニエンスストア、フードコート、事業所、家庭等に設置されてもよい。
【0017】
例えば、本発明の自動調理装置が調理する具材については、米や麺、野菜、魚、穀物、各種調味料等いかなる食材であってもよい。
【0018】
例えば、本実施例の自動調理装置では、調理容器を誘導加熱する容器加熱ユニットを有して調理容器に収容された具材を加熱調理してもよいが、この調理容器に収容された具材を加熱せずに撹拌調理するだけであってもよい。
この場合は、調理容器に収容された具材を加熱せずに撹拌調理するだけの場合、調理容器をすべて非磁性体で形成してもよい。
【0019】
例えば、本発明の調理容器の撹拌部材の回転軸は、容器本体中心軸と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【実施例1】
【0020】
以下、図1乃至図6Bに基づいて、本発明の一実施例である自動調理装置10を説明する。
【0021】
<1.自動調理装置の基本構成>
まず、自動調理装置の斜視図である図1に基づいて、自動調理装置10の基本構成について説明する。
【0022】
まず、自動調理装置10は、図1に示すように、床面Fに移動自在に配置されている。
そして、この自動調理装置10は、基台となる調理台100と、この調理台100に載置される容器保持ユニット200と、この容器保持ユニット200により自転自在に保持される調理容器300と、調理台100に載置されて調理容器300を誘導加熱する容器加熱ユニット400と、調理台100に配設される容器洗浄ユニット500および掻き落としユニット600と、調理容器300の開口面を開閉自在にするカバー700と、調理台100に載置されて自動調理装置10全体を統合制御する制御ユニット800とを備え、調理容器300に収容された具材を撹拌調理して料理を自動調理するものである。
【0023】
調理台100は、底面に設けられた複数のキャスター110と、天面100Aの前方域に形成されたシンク120と、このシンク120を開閉自在にすると共に皿などを載置する皿載せ台130とを有している。
皿載せ台130は、左右方向にスライド自在でシンク120の開口面を閉鎖すると共に撹拌調理後の食材を盛り付ける皿が載置される盛付用プレート131と、この盛付用プレート131を収容すると共に皿等を仮置きするプレート収納部材132とを有している。
【0024】
容器加熱ユニット400は、シンク120の後方側に載置されており、誘導加熱によって調理容器300の側面312を加熱する。
【0025】
容器洗浄ユニット500は、シンク120の内部に設けられて、濯ぎ水等を調理容器300に噴出する。
【0026】
掻き落としユニット600は、シンク内120に設けられて、調理容器300に付着した焦げなどの汚れを除去する。
【0027】
カバー700は、左右方向に延びるカバー中心軸を中心に回動自在となっている。
カバー700の大半は、調理容器300の開口面を塞いだ際に調理容器300の内部が見えるように、網状になっている。
【0028】
制御ユニット800は、操作用の操作パネル810と、自動調理装置10による調理動作を緊急停止させる非常停止ボタン820とを有し、操作パネル810への入力に基づき、各ユニットの駆動制御を行う。
【0029】
この制御ユニット800は、さらに、不図示のプロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、ネットワークインタフェースを少なくとも有している。
制御ユニット800を構成する各構成要素は、各構成要素間のデータ伝送路であるバスを介して接続されている。
なお、プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現され、主記憶装置や補助記憶装置に記憶されているプログラムに従って各種処理を実行する。
主記憶装置は、SRAМ(スタティックRAМ(Random Access Memory))、DRAМ(ダイナミックRAМ)、又はフラッシュメモリ等で構成され、制御ユニット800で演算処理をするために必要なデータを一時的に記憶する。
補助記憶装置は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカードなどのリムーバブルメディア、又はROM(Read Only Memory)などで実現され、記録媒体を有している。
ネットワークインタフェースは、インターネットを含む通信ネットワークを介して他の端末・システム等との間で通信を行う。
【0030】
<2.容器保持ユニットおよび調理容器の詳細>
次に、図2乃至図5に基づき、容器保持ユニット200および調理容器300の詳細について説明する。
図2図1に示す自動調理装置10の要部組立図であり、図3A図1に示す自動調理装置10の左側面部分断面図であり、図3B図3AのIIIB拡大図であり、図4A図1に示す自動調理装置10に形成される磁気回路を示す模式図であり、図4B図4AのIVB拡大図であり、図5図2に示す撹拌部材320の分解図である。
なお、図2において、盛付用プレート131がスライドしてシンク120の開口面を閉鎖している。
【0031】
<2.1.容器保持ユニット>
容器保持ユニット200は、図2等に示すように、調理台100の天面100Aに設けられる基部210と、この基部210に対して前後方向に回動自在な回動部220と、この回動部220に取り付けられて自動調理装置10の使用者が把持するハンドル230(図1も参照)とを有している。
したがって、本実施例では、自動調理装置10の使用者がハンドル230を把持して回動部220を基部210に対して前後させることで、容器保持ユニット200に保持された調理容器300が前後に起伏する。
【0032】
回動部220は、調理容器300の容器深さ方向に延びる容器本体中心軸ACを中心として調理容器300を自転自在に保持する。
この回動部220は、図3A等に示すように、基部210と連結される筐体221と(図1および図2も参照)、この筐体221に挿通される円筒状の容器回転軸222と、筐体221と容器回転軸222との間に設けられて容器回転軸222を筐体221に対して回転自在に支持するオイルシール223と、容器回転軸222を回転させる第1駆動ユニット224と、容器回転軸222に内挿されてこの容器回転軸222と同心状に配置して相互に独立して回転する撹拌部材回転軸225と、この撹拌部材回転軸225を回転させる第2駆動ユニット226とを有している。
【0033】
容器回転軸222は、前端側に鍔部222aを有し、この鍔部222aには図2に示すような周方向に突出する回り止め突起222a1が形成されている。
【0034】
第1駆動ユニット224は、不図示の第1駆動モーターと、容器回転軸222の後端部に取り付けられるタイミングプーリー224aと、このタイミングプーリー224aと不図示の第1駆動モーターとに架け渡されて第1駆動モーターの動力をタイミングプーリー224aに伝達するタイミングベルト224bとから構成されている。
【0035】
撹拌部材回転軸225は、前端側に磁化された円盤状の駆動側強磁性体225aが取り付けられている。
この駆動側強磁性体225aには、周方向にN極とS極とが交互に配置されている。
すなわち、本実施例における駆動側強磁性体225aは、4対のN極とS極とを有している。
また、撹拌部材回転軸225の軸心は、容器回転軸222の軸心と一致している。
【0036】
第2駆動ユニット226は、不図示の第2駆動モーターと、撹拌部材回転軸225の後端部に取り付けられるタイミングプーリー226aと、このタイミングプーリー226aと不図示の第2駆動モーターとに架け渡されて第2駆動モーターの動力をタイミングプーリー226aに伝達するタイミングベルト226bとから構成されている。
【0037】
<2.2.調理容器>
調理容器300は、具材を収容する容器本体310と、この容器本体310に装着されて容器本体310に収容された具材を撹拌する撹拌部材320とを有している。
【0038】
<2.2.1.容器本体>
容器本体310は、図2に示すように、円盤状の底面311と、この底面311の外周端と接続される円筒状の側面312とから形成されている。
【0039】
底面311は、図3Aに示すように、磁性体からなり側面312と連続する円環状の磁性体領域311aと、この磁性体領域311aの内周縁に溶接されて磁性体領域311aと構造的に一体となった円盤状の非磁性体部材(非磁性体領域)311bとから形成されている。
すなわち、本実施例の容器本体310の底面311は、非磁性体領域を含んでいる。
【0040】
この非磁性体部材311bは、図2に示すように、容器本体310の外方(すなわち、容器保持ユニット200)に向けて伸びる円筒状の筒状部311b1を有している。
この筒状部311b1には、図2に示すように、容器保持ユニット200の回り止め突起222a1と係合する回り止め凹溝311b2が形成されている。
したがって、容器回転軸222の回り止め突起222a1が調理容器300の容器本体310に形成された回り止め凹溝311b2と係合することで、容器回転軸222から容器本体310へ容器回転トルクが伝達され、容器本体310が図3A等に示す容器本体回転軸CAを中心に自転する。
すなわち、容器回転軸222は、調理容器300の容器本体310と係合してこの容器本体310へ容器回転トルクを伝達して容器本体310を容器本体中心軸ACまわりに自転させるものである。
【0041】
また、非磁性体部材311bは、図2図3Aおよび図3Bに示すように、容器本体310の内方に向けて突出する円筒状の凸部311b3を有している。
この凸部311b3の中心は、容器本体中心軸ACと一致している。
そして、凸部311b3の上面には、図3Bに示すように、球状体313および球状体固定部材314が保持されており、球状体313の一部が凸部311b3より突出している。
【0042】
側面312は磁性体で形成されており、図2に示すような円筒状の円筒面312aとこの円筒面312aと底面311とを繋ぐ円錐台筒状の傾斜面312bとから構成されている。
傾斜面312bは、調理容器300に収容した具材を撹拌調理する際に、図4Bに示すように、容器加熱ユニット400の天板410と離間して対向配置した状態で誘導加熱さする。
すなわち、本実施例の容器本体310の側面312における傾斜面312bは、磁性体からなり容器加熱ユニット400から誘導加熱される。
【0043】
<2.2.2.撹拌部材>
撹拌部材320は、図2および図5に示すように、容器本体310に装着される円柱状の基部321と、この基部321の側面に組み付けられるヘラ322とから形成されている。
【0044】
基部321は、図3A図3B図5等に示すように、周側面と天面とからなる基部本体321aと、この基部本体321aの内部空間321a1に挿入される磁化された円盤状の受動側強磁性体321bと、この受動側強磁性体321bを基部本体321aに固定する固定ネジ321cと、容器本体310の凸部311b3を内挿する受動側強磁性体321bの凹部321b1に挿入される平板321dと、この平板321dと固定ネジ321cとの間に介挿されるシール部材321eと、受動側強磁性体321bの凹部321b1に圧入される円環状の滑り軸受321fとを有している。
【0045】
受動側強磁性体321bは、基部本体321aに挿入された状態では基部本体321aに対して位置決めされている。
この受動側強磁性体321bは、周方向にN極とS極とが交互に配置されており、駆動側強磁性体225aと同数のN極とS極とを有している。
また受動側強磁性体321bの凹部321b1は、受動側強磁性体321bの中央に形成されている。
したがって、撹拌部材320の凹部321b1が、容器本体310の凸部311b3を内挿した際の、撹拌部材320の自転は容器本体中心軸ACまわりとなる。
【0046】
平板321dは、円盤状であり、図3Bに示すように、容器本体310の球状体313と点接触している。
滑り軸受321fは、図3Bに示すように、容器本体310の筒状部311b1を内挿している。
したがって、撹拌部材320は、図3Aおよび図3Bに示すように容器本体310の底面311と離間対向しているだけでなく、滑り軸受321fを介して容器本体310の筒状部311b1に対して回転摺動自在となっている。
【0047】
<2.3.マグネットカップリング機構>
以上の説明より、本実施例における自動調理装置10は、容器保持ユニット200に設けられた駆動側強磁性体225aと調理容器300に設けられた受動側強磁性体321bとの間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成していることになる。
したがって、調理容器300の容器本体310と撹拌部材320とは容器本体中心軸ACを中心に独立して自転可能となっている。
【0048】
さらに、図4Aに示すように、容器保持ユニット200(駆動側強磁性体225a)と撹拌部材320(受動側強磁性体321b)との間には磁場による引力MFが発生している。
この磁場による引力MFにより、撹拌部材320が容器本体310を容器保持ユニット200に押しつけている。
【0049】
また、図4Bに示すように、容器本体310の底面311が、磁性体領域311aと非磁性体領域311bとから構成されていることにより、容器保持ユニット200の駆動側強磁性体225aと撹拌部材320の受動側強磁性体321bとの間で形成される磁気回路MC1と、容器本体310の側面312(傾斜面312b)と容器加熱ユニット400の誘導加熱コイル420との間で形成される磁気回路MC2とが独立分離する。
【0050】
<3.調理姿勢における撹拌調理>
次に、図6Aおよび図6Bに基づいて、調理容器300の容器本体310と撹拌部材320とが独立して回転すること生かした自動調理装置10による撹拌調理について説明する。
図6Aは調理容器に具材が投入された状態を示す模式図であり、図6Bは撹拌部材が具材を撹拌している状態を示す模式図である。
【0051】
図6Aに示すように容器本体310に具材Iが投入された後、本実施例において、容器本体310は容器本体中心軸ACを中心に反時計回りに自転し、撹拌部材320は容器本体中心軸ACを中心に時計回りに自転する。
その結果、図6Bに示すように、撹拌部材320のヘラ322が容器本体310に投入された具材Iを撹拌する。
なお、容器本体310の回転速度、撹拌部材320の回転速度は変更自在であり、調理する料理に応じて設定される。
【0052】
<4.自動調理装置10が奏する効果>
以上説明した本発明の一実施例である自動調理装置10によれば、容器保持ユニット200が、調理容器300の容器本体310と係合してこの容器本体310へ容器回転トルクを伝達して容器本体310を容器本体中心軸ACまわりに自転させる容器回転軸222と、容器回転軸222と独立して回転する撹拌部材回転軸225とを有し、容器保持ユニット200の撹拌部材回転軸225と調理容器300の撹拌部材320との間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成していることにより、撹拌部材320が容器本体310に対して独立して回転自在となるため、撹拌部材320を容器本体310よりも高速に回転させたり撹拌部材320を容器本体310よりも低速に回転させたりすることで料理人の鍛錬された撹拌動作の技能をよりリアルかつ高度に再現して、多種多様な料理を調理することができる。
さらに、容器保持ユニット200の撹拌部材回転軸225と調理容器300の撹拌部材320との間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成していることにより、撹拌部材320を容器本体310にネジ止め等で固定する場合に比べて、容器本体310の底部が簡素な形状となるため、撹拌部材320と容器本体310との装着部位に対する具材の残留を解消し、保守メンテナンス時に容器本体310に対する撹拌部材320の脱着操作も簡単に達成することができる。
【0053】
また、撹拌部材320の凹部321b1と点接触する球状体313が、容器本体310の凸部311b3の上面に保持され、容器本体310の底面11と撹拌部材320とが離間して対向配置されていることにより、容器本体310と撹拌部材320との間の摺動抵抗が低減されるため、撹拌部材320を容器本体310に対してより確実かつ高速に回転させることができる。
【0054】
また、容器保持ユニット200の容器回転軸222に回り止め突起222a1が形成され、調理容器300の容器本体310に回り止め突起222a1と係合する回り止め凹溝311b2が形成されていることにより、回り止め突起222a1と回り止め凹溝311b2とを係合するだけで調理容器300と容器保持ユニット200とが相互に位置決めされ保持されるため、簡単な構造で容器保持ユニット200から調理容器300の容器本体310へ容器本体回転トルクを確実に伝達させることができる。
【0055】
また、調理容器300の容器本体310が、磁性体からなり容器加熱ユニット400から誘導加熱される側面312と、非磁性体領域311bを含む底面311とから形成されていることにより、容器本体310の側面312と容器加熱ユニット400とで形成される磁気回路MC2と、マグネットカップリング機構内で形成される磁気回路(容器保持ユニット200と撹拌部材320との間に形成される磁気回路MC1)とが別個のものとなるため、容器保持ユニット200による容器本体310および撹拌部材320の自転と容器加熱ユニット400による誘導加熱とを確実に両立させることができる。
【0056】
<変形例>
以上、本発明の一実施例である自動調理装置について説明したが、本発明の自動調理装置は、上述した実施例の自動調理装置10に限定されるものではない。
【0057】
例えば、本実施例において、容器保持ユニット200の駆動側強磁性体225aと調理容器300の受動側強磁性体321bとには、一対のN極とS極とがそれぞれの周方向に四対配置されていたが、容器保持ユニット200の駆動側強磁性体225aと調理容器300の受動側強磁性体321bとの間でマグネットカップリング機構を構成することが可能であれば、N極およびS極の数は如何なるものであってもよい。
【0058】
例えば、本実施例において、容器保持ユニット200の容器回転軸222に回り止め突起222a1、調理容器300の容器本体310に回り止め凹溝311b2を形成していたが、容器保持ユニット200の容器回転軸222に回り止め凹溝、調理容器300の容器本体310に回り止め突起を形成してもよい
また、回り止め突起および回り止め凹溝は、本実施例では2対であったが、1対であってもよいし、3対以上であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 ・・・ 自動調理装置
100 ・・・ 調理台
100A ・・・ 天面
110 ・・・ キャスター
120 ・・・ シンク
130 ・・・ 皿載せ台
131 ・・・ 盛付用プレート
132 ・・・ プレート収容部材
200 ・・・ 容器保持ユニット
210 ・・・ 基部
220 ・・・ 回動部
221 ・・・ 筐体
222 ・・・ 容器回転軸
222a ・・・ 鍔部
222a1 ・・・ 回り止め突起
223 ・・・ オイルシール
224 ・・・ 第1駆動ユニット
224a ・・・ タイミングプーリー
224b ・・・ タイミングベルト
225 ・・・ 撹拌部材回転軸
225a ・・・ 駆動側強磁性体
226 ・・・ 第2駆動ユニット
226a ・・・ タイミングプーリー
226b ・・・ タイミングベルト
230 ・・・ ハンドル
300 ・・・ 調理容器
310 ・・・ 容器本体
311 ・・・ 底面
311a ・・・ 磁性体領域
311b ・・・ 非磁性体部材(非磁性体領域)
311b1 ・・・ 筒状部
311b2 ・・・ 回り止め凹溝
311b3 ・・・ 凸部
312 ・・・ 側面
312a ・・・ 円筒面
312b ・・・ 傾斜面
313 ・・・ 球状体
314 ・・・ 球状体固定部材
320 ・・・ 撹拌部材
321 ・・・ 基部
321a ・・・ 基部本体
321a1 ・・・ 内部空間
321b ・・・ 受動側強磁性体
321b1 ・・・ 凹部
321c ・・・ 固定ネジ
321d ・・・ 平板
321e ・・・ シール部材
321f ・・・ 滑り軸受
322 ・・・ ヘラ
400 ・・・ 容器加熱ユニット
410 ・・・ 天板
420 ・・・ 誘導加熱コイル
500 ・・・ 容器洗浄ユニット
600 ・・・ 掻き落としユニット
700 ・・・ カバー
800 ・・・ 制御ユニット
810 ・・・ 操作パネル
820 ・・・ 非常停止ボタン

F ・・・ 床面
I ・・・ 具材
MF ・・・ 磁気による引力
MC1 ・・・ 容器保持ユニットと撹拌部材との間に形成される磁気回路
MC2 ・・・ 容器本体と容器加熱ユニットとの間に形成される磁気回路
AC ・・・ 容器本体中心軸
【要約】
【課題】料理人の鍛錬された撹拌動作の技能をよりリアルかつ高度に再現する自動調理装置を提供すること。
【解決手段】具材Iを収容する有底円筒状の容器本体310と容器本体310に収容された具材Iを撹拌する撹拌部材320とを有する調理容器300を自転自在に保持する容器保持ユニット200が、容器本体310と係合して容器本体310へ容器回転トルクを伝達して容器本体310を容器本体中心軸ACまわりに自転させる容器回転軸222と、容器回転軸222と独立して回転する撹拌部材回転軸225とを有し、容器保持ユニット200の撹拌部材回転軸225と調理容器300の撹拌部材320との間で撹拌部材回転トルクを非接触で伝達するマグネットカップリング機構を構成している。
【選択図】図2
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B