(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】七草加工食品
(51)【国際特許分類】
A23L 27/14 20160101AFI20241112BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20241112BHJP
【FI】
A23L27/14
A23L19/00 Z
(21)【出願番号】P 2024123784
(22)【出願日】2024-07-30
【審査請求日】2024-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523480716
【氏名又は名称】株式会社米島本店
(74)【代理人】
【識別番号】100125531
【氏名又は名称】小野 曜
(72)【発明者】
【氏名】米島 信一
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-68489(JP,U)
【文献】特開平8-116866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
七草を構成するセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、カブ、およびダイコンの地上部と、ナズナの地下部と、を刻んで乾燥させた乾燥七草を含む七草加工食品。
【請求項2】
前記乾燥七草は、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、カブ、およびダイコンの地上部として、生育初期を過ぎ、地上部が成熟株の8割以下である未成熟な幼苗超過草を刻んで乾燥させたものである請求項1に記載の七草加工食品。
【請求項3】
前記乾燥七草は、カブおよびダイコンとして草丈15cm以上、セリ、ナズナ、ゴギョウ、およびハコベとして草丈10cm以上、並びにホトケノザとして草丈3cm以上の生育中期以降で未成熟な幼苗超過草を80℃以上の湯で湯通したのち乾燥させた、Lab値a値0未満の鮮緑七草乾燥品である請求項2に記載の七草加工食品。
【請求項4】
前記鮮緑七草乾燥品は、前記七草を収穫した状態を標準の香りとする感度試験において、標準の香りと同等以上の香りを有する芳香鮮緑七草乾燥品である請求項3に記載の七草加工食品。
【請求項5】
前記乾燥七草を0.5g以上、および乾燥させた調味料を1g以上3g以下含み、両者を混ぜ合わせずに個別包装した請求項1から4のいずれかに記載の七草加工品。
【請求項6】
前記乾燥させた調味料は、味噌を乾燥させた乾燥味噌である請求項5の七草加工食品。
【請求項7】
前記七草加工食品は、化学的に合成された着色料および香料を含む化学合成物質を含まない化学合成物質フリーの七草加工食品である請求項5に記載の七草加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、七草粥に用いられる7種類の食用植物の加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、およびスズシロ(ダイコン)からなる7種類の植物は、「春の七草」として食用に供されている。この「春の七草」を刻んで米と炊いた「七草粥」は、松の内(1月7日)に食されてきた。
【0003】
七草粥は、五節句のうちの年初の節句である人日(1月7日)に無病息災を願う行事食であり、七草それぞれが解毒や消炎といった薬効を有することから、正月料理で疲れた胃を休める効能がある薬膳の一種でもある。七草粥には、植物が持つ生命力を取り入れる願いを込めて、若い七草(若芽)が用いられてきた。七草の若芽を用いるのは、上述した縁起担ぎであるのみならず、薬膳を好まない者でも食べやすいという実用的な意義もある。すなわち、ほとんどの七草は若芽の時期(幼苗または生育初期と呼ばれる状態)を過ぎると、硬さやえぐみが強まって美味しく食しづらくなるが、若芽であれば柔らかく食べやすい。
【0004】
このように七草粥は、ハレの日の食べやすい薬膳として親しまれている。しかし、七草粥に用いられる春の七草には、ゴギョウやホトケノザのように、農作物として一般的に栽培されず、自然に発芽して生育した野草を摘むものとされているものもある。このため都市部では、春の七草を入手することは容易ではない。
【0005】
本願発明者は、都市化が進む中で七草粥を食する伝統を継続させたいと考え、関西の食の最先端最高峰が集まる場として知られていた旧阪神百貨店の地下食料売り場において、昭和58年にお正月用食品として春の七草の生鮮品のセット販売を開始した。
【0006】
この生鮮品としての春の七草セットの販売は販売開始当初は斬新な試みとして注目を集め、以後、都市では入手しづらい春の七草セットの生鮮品や加工品が提供されてきた。例えば、春の七草をフリーズドライした加工品が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
松の内の行事食である春の七草は、本来、若芽を用いて生鮮品として食される。特に春の七草は薬効を有し、その中には野趣味の強い野草も含まれることから、新鮮な若芽を用いた出来立ての粥としては色鮮やかで香りもよく食べやすくとも、調理してから時間が経ったり、品質や鮮度が悪い七草を用いたり、加工食品にしたりした場合、本来の魅力が失われることも少なくない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、かかる課題に対し、春の七草の乾燥品を用い、新鮮な若芽を用いた七草粥のような色や香りを持つ七草加工食品を開発した。具体的には本願は以下を提供する。
【0010】
(1)七草を構成するセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、カブ、およびダイコンの地上部と、ナズナの地下部と、を刻んで乾燥させた乾燥七草を含む七草加工食品。
(2)前記乾燥七草は、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、カブ、およびダイコンの地上部として、生育初期を過ぎ、地上部が成熟株の8割以下である未成熟な幼苗超過草を刻んで乾燥させたものである(1)に記載の七草加工食品。
(3)前記乾燥七草は、前記カブおよびダイコンとして草丈15cm以上、セリ、ナズナ、ゴギョウ、およびハコベとして草丈10cm以上、並びにホトケノザとして草丈3cm以上の生育中期以降で未成熟な幼苗超過草を80℃以上の湯で湯通したのち乾燥させた、Lab値a値0未満の鮮緑七草乾燥品である(2)に記載の七草加工食品。
(4)前記鮮緑七草乾燥品は、前記七草を収穫した状態を標準の香りとする感度試験において、標準の香りと同等以上の香りを有する芳香鮮緑七草乾燥品である(1)から(3)のいずれかに記載の七草加工食品。
(5)前記乾燥七草を0.5g以上、および乾燥させた調味料を1g以上3g以下含み、両者を混ぜ合わせずに個別包装した(1)から(4)のいずれかに記載の七草加工品。
(6)前記乾燥させた調味料は、味噌を乾燥させた乾燥味噌である(5)の七草加工食品。
(7)前記七草加工食品は、化学的に合成された着色料および香料を含む化学合成物質を含まない化学合成物質フリーの七草加工食品である(5)または(6)に記載の七草加工食品。
【0011】
本願は、七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、カブ、およびダイコン)の地上部と、ナズナの地下部とを刻んで乾燥させることで七草の生鮮品のように香り立つ七草加工食品を得られることを見出し、完成された発明である。本願(1)に係る七草加工食品は、ナズナ以外の七草については、地上部を地下部から分離して地上部のみを刻んで乾燥させ、ナズナについては地上部と地下部とを共に刻んで乾燥させて得られる。
【0012】
また、1月7日に食する七草粥で用いられる七草としては従来、若芽が用いられているところ、本願(2)においては、若芽の時期を過ぎてさらに育った(すなわち生育中期以降の)七草を用いる。一般的に、食用に供される植物は、地下部(根部)から地上部(茎や葉)が伸長し、地上部の長さ(草丈)が成熟した場合の5~10%程度(本葉が5~6枚程度)の大きさになるまでは、生育初期の若芽(幼苗または苗)とされる。
【0013】
春の七草の場合、カブ(スズナ)、およびダイコン(スズシロ)については、地上部の草丈は成熟すれば30~40cm程度、本葉は40~50本となる。セリ、ナズナ、ゴギョウ、およびハコベは成熟すれば地上部の草丈10~20cm程度で、10~20本程度の本葉をつけた茎とともに花芽をつける花茎が伸長する。ホトケノザ(コオニタビラコ)は成熟すれば地上部の草丈は10cm程度で10本前後の本葉をつけた茎の間から花茎が伸長する。
【0014】
本願明細書においては、地下部(根部)から地上部(茎や葉)が伸長し、草丈が成熟した場合の5~10%、本葉3~5枚程度であって、移植(定植)する場合であれば苗として扱われる状態を幼苗または生育初期の若芽と呼ぶ。本願(2)では、若芽(幼苗)の時期を過ぎて、草丈が成熟した場合の10~80%程度、好ましくは40~60%程度になり、生育初期を過ぎているが成熟していない生育中期から生育後期に至るような成長途中の地上部(本願明細書において「幼苗超過草」と称する)を原材料とする。
【0015】
例えばカブとダイコンについては、草丈が15~20cm程度で地下部が本格的に肥大を開始しいわゆる「間引き」されるような状態が幼苗超過草として好適である。セリ、ナズナ、ゴギョウ、およびハコベは、草丈10~15cm程度で花茎が形成されていない状態が幼苗超過草として好適である。ホトケノザについては、草丈3cm以上10cm前後で花茎が形成されていない状態が幼苗超過草として好ましい。なお本明細書において「草丈」とは、株元から伸長する地上部の株元から先端までの長さを指すものとする。
【0016】
なお、ナズナは上述した通り、地下部と地上部とを刻んで乾燥品とすることが好ましい。ナズナの幼苗超過草の場合、地下部は一般的に10cm~20cm程度の長さがあるが、地下部は地上部に対して20~60重量%程度あればよく、長さで言えば地上部一株当たり5cm~10cm程度の長さがあればよく、「ひげ根」と呼ばれる細い地下部は取り除いて用いてもよい。また、ナズナの地下部と地上部とは繋がった状態で刻んでもよいが、地上部と地下部との間、数mm程度(2mm~10mm程度)の部分を除去して刻んでもよい。
【0017】
幼苗超過草は、生鮮状態で0.5~3cm程度、好ましくは1cm前後に刻んで80℃以上の湯に湯通しした後、乾燥させるとよい。湯通しは1秒~数秒程度として、湯通しした後は冷水で冷却するとよい。このように処理することで、夾雑物の除去および殺菌が行われ、さらに鮮やかな緑に発色させることができる。湯通しした幼苗超過草は乾燥させる。乾燥工程では、湯通しした幼苗超過草の発色と香りとが失われないように留意すれば乾燥方法は限定されず、風乾または凍結乾燥などの方法で乾燥させればよい。凍結乾燥させた場合、含水率を低く(3%前後)にでき、保存性や復元性がよく、乾燥品の色味も明るくなる。一方、風乾する場合は、凍結乾燥に比べて含水率は高めになるが、含水率は5%以下程度であり、保存性は凍結乾燥させた場合と同等であり、乾燥品の色味はより濃くなる。風乾する場合は、低温(例えば40℃以上80℃以下程度)の温風で乾燥させると、香りが立つためよい。
【0018】
本願によれば、本来、新鮮な状態の若芽で仕立てられる七草粥を、若芽ではなく生育中期以降成熟前の幼苗超過草の地上部およびナズナの地下部の乾燥品で仕立てるようにすることで、新鮮な若芽で仕立てる七草粥の風味を持つ即席七草を仕立てることができる。また、七草を構成する7種類の植物の地上部について、幼苗超過草を用いることで、七草加工品の製造に必要な原料の確保および取扱いを容易にする。
【0019】
すなわち、七草加工品の材料として若芽を用いれば、乾燥品とした場合に風味が弱くなる。また、若芽は幼苗超過草より小さいため、収穫したり洗浄したりする手間がかかる。さらに、七草粥を仕立てる場合、伝統的には七草は小さく刻んで用いられることから、本願に係る七草加工品には刻んだ七草を乾燥させたものを用いるが、若芽は小さく柔らかいため、機械で刻むことが難しい。
【0020】
一方、幼苗超過草は若芽より大きく葉茎がしっかりしているため、若芽に比べて機械で刻みやすく、葉茎などの間にある土などの夾雑物を洗浄して除去しやすい。また、幼苗超過草は、乾燥させた場合、若芽を用いる場合に比べて、七草の風味を強くできる。一方で幼苗超過草は、成熟はしていないため、成熟株を用いる場合に問題となる雑味やえぐみを帯びることを回避し、さわやかで華やかな香りを保つことができる。さらに、本願ではナズナの地下部も乾燥させて含ませることで、七草らしい香りを感じやすくしている。
【0021】
(5)の態様では、七草の乾燥品を、乾燥した調味料と合わせることで、この七草加工食品を炊いた米に七草加工品を混合したとき、「変わり七草」の粥や湯漬けが即席で出来上がるようにした。春の七草は七草粥として食される場合は本来、白粥仕立てであるところ、本願発明は、調味料で風味を加えた「変わり七草粥」仕立てにできるようにすることで、七草粥らしい風味を持ちながら食しやすく、生鮮品としてではなく加工品として簡便に食せるようにした。
【0022】
(5)の態様において、乾燥七草は含水率が5%以下(概ね2~4%)で0.5g以上3g以下、乾燥調味料は同様の含水率で2g以上4g以上とし、両者は混ぜ合わせずに一つの小袋に充填して封印することが好ましい。特に、カブ、ダイコン、セリ、ハコベ、ナズナは0.2g以上0.8g以下、好ましくは0.3g程度とし、これら5種の中で、カブとダイコンとを5割以上とすることが好ましい。一方、ゴギョウとホトケノザは、乾燥七草全体の1%以上10%以下、好ましくは5%程度とすることが好ましい。カブとダイコンとは食味が良く、セリ、ナズナ、およびハコベは香りがよい一方、ゴギョウとホトケノザは食しづらい点があるためである。
【0023】
本願に係る七草加工食品は、乾燥加工により製造され即席で食することができる即席加工食品であり、粥や湯漬けなどに対し、多過ぎず少なすぎず添加されることが好ましい。上記配合は、個包装された(5)に係る七草加工品を、ご飯茶碗一杯分の炊飯した米飯にふりかけた場合、七草と調味料のバランスがちょうどよいと感じられる配合割合である。すなわち(5)に係る七草加工品によれば、ご飯茶碗一杯分の炊飯した米飯に対して、乾燥七草と調味料とを多過ぎず少なすぎない適量を、計量せずに使用できる。(5)に係る七草加工品は、乾燥七草と乾燥調味料とを混ぜ合わせることなく一つの小袋に充填することで、乾燥七草と調味料とを別の小袋に充填し、開封する手間を避けつつ、七草加工品の保存中に乾燥七草に乾燥調味料が浸み込んで風味を損なう恐れを減じている。ただし、本願発明には、乾燥七草と乾燥調味料とを一食分ずつ、別々の小袋に充填する態様も含まれる。
【0024】
調味料としては七草の乾燥品が持つ色や香りを引き立てる風味を持つ調味料が好ましく、例えば、(6)の態様である乾燥させた味噌が好ましい。調味料はまた、色味が薄いことが好ましく、調味料として味噌を用いる場合の味噌としては、白味噌を調味料全体の5割以上、合わせ味噌を調味料全体の2割以上とするとよい。(6)の態様に係る七草加工食品を用いれば、味噌仕立ての七草粥や湯漬けを即席で食せるようにできる。味噌仕立ての変わり七草を仕立てる(6)の態様において、調味料として味噌以外の調味料を含ませてもよい。味噌に代わる、または味噌と混合する調味料としては、昆布など出汁の材料として用いられる食材由来の調味料が好ましい。
【0025】
七草の幼苗超過草およびナズナの地下部は、80℃以上の湯で湯通しし、好ましくは湯通し後の熱い状態のまま水冷する前処理をすることで、七草粥を仕立てた場合の鮮やかな緑色(ナズナの地下部は除く)と香りになる。このため、七草について、上述した原材料を用いて前述した前処理をして乾燥させることで、行事食である七草粥として賞味される色味と香りとを再現できる加工品を得ることができる。具体的には、色味については、色差計によるLab値測定において、緑色の強さを示す指標であるa値の値が0未満(すなわちマイナスの値)、特に-5以下、より好ましくは-15以下とできる。そこで、上述した処理などにより得られ、a値の値が0未満である乾燥品を「鮮緑七草乾燥品」として本願(3)において好適に用いるとよい。
【0026】
また、香りについては、湯通しする前の状態の七草を標準として、感度試験において、標準の香りと同等以上の香りを有することが好ましい。そこで、上述した処理により得られた乾燥品について、感度試験で標準と同等以上の香りを有すると判定された乾燥品を「芳香七草乾燥品」として選別して本願(4)において好適に用いるとよい。色味について(3)で規定する性状を有し、香りについて(4)で規定する性状を有する七草の乾燥品は、「芳香鮮緑七草乾燥品」として本願において特に好適に用いることができる。
【0027】
鮮緑七草乾燥品、芳香七草乾燥品、および芳香鮮緑七草乾燥品は、原材料の選定と加工工程の工夫により、湯戻しした場合、七草粥として賞味される色味と香りの一方または両方を再現しうる。よって本願発明に係わる七草加工食品には、七草の乾燥品以外に七草の色や香りを表現する物質(例えば着色料や香料)は不要である。特に、化学的に合成された着色料や香料、調味料および保存料その他の化学合成物質からなる添加物は、上述した手順で調製した七草加工食品が持つ色合いや香りなどの風味と違う風味をもたらす。よって本願(7)に係る態様として、調味料と七草の乾燥品の両方を、自然由来の原材料から製造したものとし、化学合成物質を含ませない、人工添加物フリーの無添加の七草加工食品を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、正月の行事食として食されてきた春の七草を、手軽に食せる即席食品として食べられるようにできる。また、薬効がある野草を含む春の七草を用いて仕立てられる七草粥の薬効を感じさせる香りなどの風味を持ちながら、薬膳に慣れていない者でも食しやすい変わり七草粥や湯漬けを即席食品として食べられるようにできる。さらに、本発明によれば、七草と調味料以外の添加物、特に化学合成された着色料や香料を用いることなく生鮮食品として食される春の七草の色合いや風味を持つ加工食品を提供し、春の七草本来の味や香りを即席の薬膳として食することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を参照しながら、本発明について詳述する。
<実施例1>ハコベ、ゴギョウ、ホトケノザ、セリ、ダイコンおよびカブについて、幼苗超過成熟未満の状態の地上部を収穫した。ナズナは、幼苗超過成熟未満の株を地下部から引き抜き、地上部と地下部とを得た。セリ、ダイコン、カブ、およびナズナは草丈15cm前後の地上部を収穫し、ゴギョウおよびハコベは草丈7~10cm程度、ホトケノザは草丈3cm程度のいずれも生育中期以降の地上部を収穫した。
【0030】
収穫した七草は、根に近い部分や茎は1cm程度、葉や葉先に近い部分は1~3cm程度に刻み、沸騰させて80℃以上を保った湯の中をくぐらせた後、冷水をくぐらせ、60℃の温風で風乾する乾燥機で乾燥させた。なお、ナズナは、地上部と地下部との間を5mm程度の間隔で切除するとともに、地下部は地上部に近い部分から5cm程度の長さの部分を用いることとして、地下部のひげ根も取り除いた。
【0031】
得られた七草の乾燥品2gについて、最も多く見られる緑色(標準的な緑色A)の部分、Aより鮮やかな緑色(鮮緑B)の部分、Bよりくすんで見える緑色(暗緑C)の部分それぞれのLab値を、Lab値を計測できるアプリを搭載したスマートフォンを用いて測定した。測定値は、Lab値のa値が、Aについて-26、Bが-32、Cが-16であった。また、収穫前の状態を標準とした感度試験において、標準の香りと同等以上の香りがあると認められた。また調味料として、白みそと合わせ味噌と昆布茶の乾燥品とを用意した。
【0032】
用意した七草の乾燥品と調味料の乾燥品とを、3gずつ、透明なプラスチックフィルムに混合せずに別々に入れ、混ざり合わないように空気を抜いて密閉し、個別包装した。調味料の乾燥品3gの内訳は、白みその乾燥品が2g、合わせ味噌の乾燥品が1.5g、昆布茶(乾燥品)が0.5gである。
【0033】
この個別包装品を、茶碗によそった一杯分の炊き上げた白米に混合し、熱湯をかけて湯漬けとした。湯漬けには、収穫前の状態を標準とした感度試験において、標準の香りと同等以上の香りが認められ、湯漬けの中の七草について最も多く見られる緑色、より鮮やかな緑色、よりくすんだ緑色の3か所の緑色のLab値を測定したところ、a値は-28、-38、-18であった。
【要約】
【課題】行事食として食され、食される時期が限られる薬膳料理でもある七草粥を食しやすくする。
【解決手段】若芽の時期を過ぎた七草を原料としナズナの地下部を含む七草の乾燥品と、七草の風味を引き立て食しやすくできる調味料とを合わせた七草加工食品を提供する。この七草加工食品を粥や米飯に混合することで、七草粥を原型として七草粥本来の姿形や色合い、風味を持ち、簡便で食しやすい新規な薬膳を即席食品として食することができる。
【選択図】なし