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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】双方向増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/62 20060101AFI20241112BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H03F3/62
H03F3/45
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020572104
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2019049160
(87)【国際公開番号】W WO2020166196
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-06-16
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2019024200
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省「CMOSミリ波帯フェーズドアレイ無線機の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健一
(72)【発明者】
【氏名】パン ジェン
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】高野 洋
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/183194(WO,A1)
【文献】特公平7-118620(JP,B2)
【文献】特開昭60-246110(JP,A)
【文献】特公昭59-8083(JP,B2)
【文献】特開昭48-6611(JP,A)
【文献】特開2005-57724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子から入力した第1信号を増幅して第2端子から出力する第1増幅部と、
前記第2端子から入力した第2信号を増幅して前記第1端子から出力し、前記第1増幅部の性能の劣化を補償する補償素子を有する第2増幅部と、
前記第1増幅部の動作と前記第2増幅部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記第1増幅部は、
前記第1信号を増幅する2つの第1差動トランジスタと、前記2つの第1差動トランジスタに直列に設けられた第1制御トランジスタと、を有し、
前記第2増幅部は、
前記第2信号を増幅する2つの第2差動トランジスタと、前記2つの第2差動トランジスタに直列に設けられた第2制御トランジスタと、を有し、
前記制御部は、前記第1制御トランジスタ及び前記第2制御トランジスタを相補的にオン又はオフに制御することにより、前記第1増幅部の動作中は前記第2増幅部を動作させず、前記第2増幅部の動作中は前記第1増幅部を動作させないように制御する、
双方向増幅器。
【請求項2】
前記第1増幅部の性能と、前記第2増幅部の性能と、は異なる、
請求項1に記載の双方向増幅器。
【請求項3】
前記性能には、送信出力値と雑音指数とが含まれる、
請求項1または2に記載の双方向増幅器。
【請求項4】
前記第1増幅部の前記送信出力値は、前記第2増幅部の前記送信出力値よりも大きく、
前記第2増幅部の前記雑音指数は、前記第1増幅部の前記雑音指数よりも小さい、
請求項3に記載の双方向増幅器。
【請求項5】
前記第1増幅部は、前記第1信号を増幅する2つの第1差動トランジスタを有し、
前記第2増幅部は、前記第2信号を増幅する2つの第2差動トランジスタを有し、
前記第1差動トランジスタのサイズは、前記第2差動トランジスタのサイズよりも大きい、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の双方向増幅器。
【請求項6】
前記第1増幅部は、
前記第1差動トランジスタのソースとグランドとの間に、前記第1差動トランジスタの動作を制御する第1バイアストランジスタを有し、
前記第2増幅部は、
前記第2差動トランジスタのゲートとドレインとの間に、前記第1差動トランジスタの寄生成分を補償する前記補償素子を有し、
前記第2差動トランジスタのソースとグランドとの間に、前記第2差動トランジスタの動作を制御する第2バイアストランジスタと、を有する、
請求項5に記載の双方向増幅器。
【請求項7】
前記補償素子は、キャパシタ又は可変キャパシタである、
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の双方向増幅器。
【請求項8】
前記第1増幅部は、前記第1端子と前記第1増幅部との間に第1マッチング回路を有し、
前記第2増幅部は、前記第2端子と前記第2増幅部との間に第2マッチング回路を有する、
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の双方向増幅器。
【請求項9】
第1端子から入力した第1信号を増幅して第2端子から出力する第1増幅部と、
前記第2端子から入力した第2信号を増幅して前記第1端子から出力し、前記第1増幅部の性能の劣化を補償する補償素子を有する第2増幅部と、
前記第1増幅部の動作と前記第2増幅部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記第1増幅部は、前記第1信号を増幅する2つの第1差動トランジスタを有し、
前記第2増幅部は、前記第2信号を増幅する2つの第2差動トランジスタを有し、
前記第1差動トランジスタのサイズは、前記第2差動トランジスタのサイズよりも大きい、
双方向増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、双方向増幅器に関するものであり、特に、複数の増幅部のそれぞれが異なる性能を有する場合でも、小型化が可能な双方向増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の周波数帯を有効利用する技術には、指向性を有する電波を使用して無線通信を行うビームフォーミングという技術が有る。該ビームフォーミングを実現する1つとしてフェーズドアレイが有る。フェーズドアレイは、複数のアンテナ素子毎に無線信号の位相を調整し各アンテナ素子から放射される無線信号(電波)を空間で合成し所望の方向の電波を強める。ここで、複数のアンテナ素子は、無線信号の搬送波の半波長程度の間隔で配置されることが望ましく、高周波になるほどアンテナ素子の間隔は短くなる。アンテナと送受信機の高周波部を1つの基板に実装する一体型モジュールにおいては、アンテナ素子の間隔を短くするのに伴い、高周波部の小型化が必要となる。高周波部は、送信増幅器と受信増幅器とを有するので、これらのサイズの小型化が望まれる。小型化の方法の1つとして、送信増幅器と受信増幅器とを兼用した双方向増幅器を用いることが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、送信終段回路がベースを端子3Aと3Bに、コレクタを端子1Aと1Bにそれぞれ接続したトランジスタQ11とQ12から成る第1差動増幅回路と、信号C5により該差動増幅回路の動作電流を供給するトランジスタQ13とQ14から成る第1定電流源と、受信前置回路がベースを端子1Aと1Bに、コレクタを端子2Aと2Bにそれぞれ接続したトランジスタQ21とQ22から成る第2差動増幅回路と、信号C5と相補の信号C4により第2差動増幅回路の動作電流を供給するトランジスタQ23とQ24から成る第2定電流源と、を備え、信号C4とC5に制御される第1差動増幅回路と第2作動増幅回路の動作・停止により送受信の切換を行う無線通信装置が開示されている。特許文献1に開示の技術は、第1差動増幅回路と第2差動増幅回路の他に、外部に送受信を切替えるスイッチが必要となるので、小型化した双方向増幅器(無線通信装置)を提供することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-149038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、送信と受信とを行う双方向増幅器においては、小型化が難しいという課題があった。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を解決する双方向増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る双方向増幅器は、
第1端子から入力した第1信号を増幅して第2端子から出力する第1増幅部と、
前記第2端子から入力した第2信号を増幅して前記第1端子から出力し、前記第1増幅部の性能の劣化を補償する補償素子を有する第2増幅部と、
前記第1増幅部の動作と前記第2増幅部の動作を制御する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の増幅部のそれぞれが異なる性能を有する場合でも、小型化が可能な双方向増幅器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る双方向増幅器を例示するブロック図である。
図2】実施の形態1に係る双方向増幅器を例示する回路図である。
図3】実施の形態1の比較例に係る双方向増幅器を例示する回路図である。
図4】実施の形態2に係る双方向増幅器を例示する回路図である。
図5】実施の形態3に係る双方向増幅器を例示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明を省略する。
【0011】
[実施の形態1]
先ず、実施の形態1に係る双方向増幅器の概要を説明する。
図1は、実施の形態1に係る双方向増幅器を例示するブロック図である。
【0012】
図1に示すように、実施の形態1に係る双方向増幅器11は、第1増幅部111と、第2増幅部112と、制御部113と、を備える。第1増幅部111と第2増幅部112とをまとめて増幅部と称することもある。
【0013】
第1増幅部111は、第1端子p1から入力した第1信号を増幅して第2端子p2から出力する。
【0014】
第2増幅部112は、第2端子p2から入力した第2信号を増幅して第1端子p1から出力する。また、第2増幅部112は、第1増幅部111の性能の劣化を補償する補償素子(図示せず)を有する。第1増幅部111の性能の劣化と、これを補償するための補償素子についての詳細は後述する。
【0015】
制御部113は、第1増幅部111の動作と第2増幅部112の動作を制御する。双方向増幅器11においては、例えば、第1増幅部111を送信用増幅器とし、第2増幅部112を受信用増幅器として使用するため、第1増幅部111の性能と第2増幅部112の性能を異なるように構成する。ここで、性能とは、例えば、増幅部の送信出力値と雑音指数である。
【0016】
具体的には、第1増幅部111に大きなサイズのトランジスタを使用し、第2増幅部112に第1増幅部111に使用したものよりも小さいサイズのトランジスタを使用する。大きなサイズのトランジスタは、高出力なので送信用のPA(Power Amplifier)に適している。小さなサイズのトランジスタ、雑音が少ないので受信用のLNA(Low Noise Amplifier)に適している。
【0017】
これにより、第1増幅部111を送信用のPAとして動作させ、第2増幅部112を受信用のLNAとして動作させて、2つの増幅部の性能を異なるようにする。すなわち、増幅部のトランジスタに、異なるサイズのトランジスタを使用することにより、増幅部の性能を異なるようにする。尚、PAを送信増幅器と称し、LNAを受信増幅器と称することもある。
【0018】
このとき、双方向増幅器11は、第1増幅部111がPAとして動作し、第2増幅部112がLNAとして動作するので、第1増幅部111の送信出力値は、第2増幅部112の送信出力値よりも大きくなる。また、第2増幅部112の雑音指数は、第1増幅部111の雑音指数よりも小さくなる。
【0019】
また、双方向増幅器11を小型化するためPA(第1増幅部111)とLNA(第2増幅部112)を1つの基板に実装する場合、異なるサイズのトランジスタを使用することにより、第1増幅部111の性能が劣化する。双方向増幅器11は、第1増幅部111の性能の劣化を補償する補償素子を有するので、性能の劣化を抑えることができる。これにより、第1増幅部111をPAとして動作させ、第2増幅部112をLNAとして動作させる場合でも、すなわち、複数の増幅部のそれぞれが異なる性能を有する場合でも、小型化が可能な双方向増幅器11を提供することができる。
【0020】
また、制御部113は、第1増幅部111の動作中は第2増幅部112を動作させず、第2増幅部112の動作中は第1増幅部111を動作させないように制御する。
【0021】
これにより、第1増幅部111から出力された第1出力信号が第2増幅部112に回り込んだとしても、第2増幅部112が動作していないので第1出力信号は増幅されない。また、第2増幅部112から出力された第2出力信号が第1増幅部111に回り込んだとしても、第1増幅部111が動作していないので第2出力信号は増幅されない。よって、回り込みによる悪影響を低減することができる。
【0022】
次に、実施の形態1に係る双方向増幅器の詳細を説明する。
図2は、実施の形態1に係る双方向増幅器を例示する回路図である。
ただし、制御部113は簡単の為、省略する。
【0023】
図2に示すように、双方向増幅器11の第1増幅部111は、トランジスタ1111とトランジスタ1112とトランジスタ1113とを有する。2つのトランジスタ1111とトランジスタ1112は、第1信号を増幅する。トランジスタ1111のサイズとトランジスタ1112のサイズは、同じである。
【0024】
トランジスタ1111のソースSとグランドGNDとの間に、トランジスタ1113を有する。トランジスタ1113は、トランジスタ1111とトランジスタ1112の動作を制御する。
【0025】
第2増幅部112は、トランジスタ1121とトランジスタ1122とトランジスタ1123と補償素子C111と補償素子C112とを有する。2つのトランジスタ1121とトランジスタ1122は、第2信号を増幅する。トランジスタ1121のサイズとトランジスタ1122のサイズは、同じである。
【0026】
第2増幅部112は、トランジスタ1121のゲートGとドレインDとの間に、補償素子C111を有し、トランジスタ1122のゲートGとドレインDとの間に、補償素子C112をする。補償素子C111と補償素子C112は、トランジスタ1111とトランジスタ1112の寄生成分を補償する。補償素子C111と補償素子C112は、キャパシタ又は可変キャパシタである。
【0027】
第2増幅部112は、トランジスタ1121のソースSとグランドGNDとの間に、トランジスタ1123を有する。トランジスタ1123は、トランジスタ1121とトランジスタ1122の動作を制御する。
【0028】
トランジスタ1111のサイズは、トランジスタ1121及びトランジスタ1122のサイズよりも大きい。また、トランジスタ1112のサイズは、トランジスタ1121及びトランジスタ1122のサイズよりも大きい。
【0029】
これにより、第1増幅部111を送信増幅器として動作させ、第2増幅部112を受信増幅器として動作させることができる。
【0030】
制御部113は、第1バイアス端子b1を介してトランジスタ1113を制御することにより、トランジスタ1111とトランジスタ1112をオン又はオフに制御する。また、制御部113は、第2バイアス端子b2を介してトランジスタ1123を制御することにより、トランジスタ1121とトランジスタ1122をオン又はオフに制御する。
【0031】
そして、制御部113は、第1増幅部111の動作中(トランジスタ1111とトランジスタ1112とがオン)は、第2増幅部112を動作させない(トランジスタ1121とトランジスタ1122とがオフ)。制御部113は、第2増幅部112の動作中(トランジスタ1121とトランジスタ1122とがオン)は、第1増幅部111を動作させない(トランジスタ1111とトランジスタ1112とがオフ)。
【0032】
双方向増幅器11は、第1増幅部111と第2増幅部112のオン又はオフの制御に、トランジスタ1113とトランジスタ1123を使用するので、インダクタを使用して制御する場合と比べて回路面積をより小さくすることができる。
【0033】
尚、トランジスタ1111とトランジスタ1112が差動動作するので、このトランジスタを第1差動トランジスタと称することもある。また、トランジスタ1121とトランジスタ1122が差動動作するので、このトランジスタを第2差動トランジスタと称することもある。
【0034】
補償素子C111と補償素子C112は、トランジスタ1111とトランジスタ1112の寄生成分をキャンセルするためのものである。
【0035】
次に、実施の形態1に係る双方向増幅器の動作を説明する。
【0036】
図2に示すように、第1端子p1から入力された第1信号は、第1トランスts1により差動-シングル変換が行われる。また、第1トランスts1は第1増幅部111の負荷も兼ねている。一方、第2端子p2から入力された第2信号は、第2トランスts2により差動-シングル変換が行われる。また、第2トランスts2は第2増幅部112の負荷も兼ねている。
【0037】
制御部113が第1バイアス端子b1を介してトランジスタ1113をオンに制御し、第2バイアス端子b2を介してトランジスタ1123をオフに制御した場合を説明する。
【0038】
このとき、トランジスタ1111とトランジスタ1112がオンになり、トランジスタ1121とトランジスタ1122がオフになる。これにより、第1端子p1から入力した第1信号がトランジスタ1111とトランジスタ1112で増幅され、第2端子p2から出力される。
【0039】
高周波増幅器の性能の劣化要因は、配線等に起因する寄生成分である。特に、ソース接地型トランジスタを使用した場合、高周波増幅器の性能の劣化要因は、トランジスタのゲート-ドレイン間の寄生成分(寄生容量)である。このため、同等のキャパシタを差動入出力間でクロスカップルするように挿入することで、寄生成分をキャンセルすることができる。
【0040】
双方向増幅器11においては、トランジスタ1111とトランジスタ1112の寄生成分が、第1増幅部111の性能を劣化させる。このため、オフ状態のトランジスタ1121とトランジスタ1122の寄生成分を用いて、トランジスタ1111とトランジスタ1112の寄生成分を補償する。しかしながら、トランジスタ1111とトランジスタ1112のサイズが、トランジスタ1121とトランジスタ1122のサイズと異なるため、差動入出力間でクロスカップルしても、トランジスタ1111とトランジスタ1112の寄生成分を完全にキャンセル(補償)することができない。
【0041】
そこで、双方向増幅器11においては、補償素子C111と補償素子C112を使用して不足分の補償を行う。具体的には、補償素子C111を、トランジスタ1121のゲートGとドレインDとの間に設け、補償素子C112を、トランジスタ1122のゲートGとドレインDとの間に設ける。これにより、トランジスタ1111とトランジスタ1112の寄生成分は、トランジスタ1111とトランジスタ1122の寄生成分と補償素子C111と補償素子C112の合計により、キャンセルされる。
【0042】
制御部113が第1バイアス端子b1を介してトランジスタ1113をオフに制御し、第2バイアス端子b2を介してトランジスタ1123をオンに制御した場合も同様である。すなわち、トランジスタ1121とトランジスタ1122の寄生成分と補償素子C111と補償素子C112の合計は、トランジスタ1111とトランジスタ1112の寄生成分により、キャンセルされる。
【0043】
このように、実施の形態1によれば、双方向の増幅に異なるサイズのトランジスタを用いた場合でも、寄生成分の補償が可能となり、高性能な増幅器を提供することができる。
【0044】
また、送受信を切替えるため、面積が大きなインダクタ素子等のスイッチが必要でないので、増幅部のそれぞれが異なる性能を有する場合でも、小型化が可能な双方向増幅器を提供することができる。
【0045】
また、双方向増幅器11は、送受信を切替えるためのスイッチが必要でないので、その分の通過損失が無い。このため、スイッチが必要な場合と比べて、増幅部の利得の低下、送信出力の低下、及び受信時の雑音特性の劣化を抑制することができる。
【0046】
また、双方向増幅器11の第1増幅部111と第2増幅部112のバラつきを、補償素子C111と補償素子C112により補償することができる。
【0047】
ここで、実施の形態1に係る双方向増幅器11の特徴を記載する。
順方向(第1端子p1から第2端子p2に向う方向)で動作するトランジスタのサイズと、逆方向(第2端子p2から第1端子p1に向う方向)で動作するトランジスタのサイズと、が異なる。
第1増幅部111と第2増幅部112のそれぞれが差動構成であり、差動間にクロスカップル接続された補償素子C111と補償素子C112を有する。
【0048】
[比較例]
図3は、実施の形態1の比較例に係る双方向増幅器を例示する回路図である。
【0049】
図3に示すように、比較例に係る双方向増幅器51は、第1バイアス端子b1と第2バイアス端子b2とをそれぞれ制御することにより入出力の方向を制御する。双方向増幅器51がトランジスタ5111とトランジスタ5112とをオンに制御し、トランジスタ5121とトランジスタ5122とをオフに制御した場合、第1端子p1から第2端子p2の方向に第1信号が伝達する。双方向増幅器51がトランジスタ5111とトランジスタ5112とをオフに制御し、トランジスタ5121とトランジスタ5122とをオンに制御した場合、第2端子p2から第1端子p1の方向に第2信号が伝達する。
【0050】
双方向増幅器51においては、トランジスタ5111のコレクタCとトランジスタ5122のベースBとを接続し、トランジスタ5111のベースBとトランジスタ5121のコレクタCとを接続する。また、トランジスタ5112のコレクタCとトランジスタ5121のベースBとを接続し、トランジスタ5112のベースBとトランジスタ5122のコレクタCとを接続する。これにより、寄生容量をキャンセルすることができる。
【0051】
双方向増幅器51の第1バイアス端子b1がHighであり、第2バイアス端子b2がLowの場合、トランジスタ5111とトランジスタ5112はオンになり、トランジスタ5121とトランジスタ5122がオフになる。
【0052】
その結果、第1端子p1から入力した第1信号が増幅され第2端子p2から出力される。このとき、インダクタ5113とインダクタ5114とインダクタ5123とインダクタ5124は、第1増幅部511と第2増幅部512のマッチングを取ると共に、トランジスタ5111とトランジスタ5112とトランジスタ5121とトランジスタ5122がオフ動作になった際のアイソレーションの強化も兼ねている。
【0053】
また、このとき、オフ状態のトランジスタ5121のベースB-コレクタC間の寄生容量は、トランジスタ5111のベースB-コレクタC間の寄生容量によってキャンセルされる。オフ状態のトランジスタ5122のベースB-コレクタC間の寄生容量は、トランジスタ5112のベースB-コレクタC間の寄生容量によってキャンセルされる。第1バイアス端子b1がLowであり、第2バイアス端子b2がHighの場合も同様に動作する。
【0054】
尚、これらの動作が成立する条件として、第1増幅部511と第2増幅部512の寄生容量が等しいこと、すなわち、第1増幅部511と第2増幅部512内の同種の素子の特性値が全て同じであり、レイアウト構成(構造)なども対称にする必要がある。
【0055】
よって、第1増幅部511と第2増幅部512で異なるサイズのトランジスタを使用した場合には、トランジスタの寄生容量をキャンセルすることが難しい。その結果、比較例では、複数の増幅部のそれぞれが異なる性能を有する場合、双方向増幅器を小型化することが難しい。
【0056】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2に係る双方向増幅器を例示する回路図である。
【0057】
図4に示すように、実施の形態2に係る双方向増幅器21は、実施の形態1に係る双方向増幅器11と比べて、第1端子p1と第1増幅部111との間に、伝送線路2111~伝送線路2117が設けられている点が異なる。また、第2端子p2と第2増幅部112との間に、伝送線路2121~伝送線路2127が設けられている点が異なる。また、補償素子C111と補償素子C112の代わりにキャパシタC211とキャパシタC212が設けられている点が異なる。
【0058】
双方向増幅器21は、補償素子としてキャパシタを使用することで、複数の増幅部のそれぞれが異なる性能を有する場合でも小型化が可能である。
【0059】
また、双方向増幅器21は、伝送線路2111~伝送線路2117により、第1端子p1側の第1マッチング回路を形成してもよい。また、伝送線路2121~伝送線路2127により、第2端子p2側の第2マッチング回路を形成してもよい。
【0060】
これにより、双方向増幅器21は、順方向と逆方向で共通のマッチング回路を有することができる。尚、第1マッチング回路と第2マッチング回路は、実施の形態1に係る双方向増幅器11において適用してもよい。
【0061】
[実施の形態3]
図5は、実施の形態3に係る双方向増幅器を例示する回路図である。
【0062】
図5に示すように、実施の形態3に係る双方向増幅器31は、実施の形態2に係る双方向増幅器21と比べて、キャパシタC211とキャパシタC212の代わりに可変キャパシタC311と可変キャパシタC312が設けられている点が異なる。
【0063】
双方向増幅器31は、補償素子として可変キャパシタを使用することで、複数の増幅部のそれぞれが異なる性能を有する場合でも小型化が可能である。
【0064】
尚、実施の形態では、双方向増幅器を例に挙げて説明したが、これには限定されない。実施の形態は、双方向増幅器だけでなく、移相器やフィルタなどの送受信機に必要とされるコンポーネントにも適用できる。
【0065】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0066】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0067】
この出願は、2019年2月14日に出願された日本出願特願2019-024200を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0068】
11、51…双方向増幅器
111、511…第1増幅部
1111、1112、1113…トランジスタ
112、512…第2増幅部
1121、1122、1123…トランジスタ
C111、C112…補償素子
C211、C212…キャパシタ
2111~2117、2121~2127…伝送線路
C311、C312…可変キャパシタ
5113、5114、5123、5124…インダクタ
113…制御部
p1…第1端子
p2…第2端子
b1…第1バイアス端子
b2…第2バイアス端子
S…ソース
G…ゲート
D…ドレイン
B…ベース
C…コレクタ
ts1…第1トランス
ts2…第2トランス
GND…グランド
図1
図2
図3
図4
図5