(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両用ドアロックシステム
(51)【国際特許分類】
E05B 83/38 20140101AFI20241112BHJP
E05B 77/02 20140101ALI20241112BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20241112BHJP
E05B 85/24 20140101ALI20241112BHJP
E05B 85/04 20140101ALI20241112BHJP
【FI】
E05B83/38
E05B77/02
B60J5/06 A
E05B85/24
E05B85/04
(21)【出願番号】P 2022041200
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大揮
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 奈津美
(72)【発明者】
【氏名】糸長 尚司
(72)【発明者】
【氏名】小田 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】山口 功洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲柳▼ 進介
(72)【発明者】
【氏名】金谷 俊助
(72)【発明者】
【氏名】羽山 暢夫
(72)【発明者】
【氏名】池内 翼
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0241167(US,A1)
【文献】特開2020-111311(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0135349(US,A1)
【文献】特開2005-088812(JP,A)
【文献】特開2005-325533(JP,A)
【文献】特開2021-031907(JP,A)
【文献】特開昭57-044975(JP,A)
【文献】特公昭46-015883(JP,B1)
【文献】実公昭44-020331(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の幅方向における少なくとも片側にドア開口部を有する車体と、前記ドア開口部を開閉するドアと、を備える前記車両に適用される車両用ドアロックシステムであって、
前記車体と前記ドアとの一方に設置されるストライカ構造と、
前記車体と前記ドアとの他方に設置されるドアロック装置と、を備え、
前記ストライカ構造は、前記幅方向に間隔をあけて並ぶ第1係合部及び第2係合部を有し、
前記ドアロック装置は、前記第1係合部に係止可能な係止位置及び前記第1係合部に係止不能な退避位置の間を変位するフックを有し、
前記フックは、前記係止位置に位置するとき、前記幅方向において、前記第1係合部及び前記第2係合部の間に位置して
おり、
前記フックは、前記係止位置に位置するときに、前記第2係合部と前記幅方向に対向する部位に前記第2係合部を収容可能な係合凹部を有する
車両用ドアロックシステム。
【請求項2】
前記フックの前記係合凹部は、前記係合凹部の開口から前記係合凹部の底に進むにつれて、前記係合凹部の深さ方向と直交する幅が次第に狭くなっている
請求項
1に記載の車両用ドアロックシステム。
【請求項3】
前記車両の前後方向を軸方向とし、前記フックを回転可能に支持するフック支持軸と、
前記フック支持軸の第1端を支持する第1ベースと、
前記フック支持軸の第2端を支持する第2ベースと、を備える
請求項1
又は請求項
2に記載の車両用ドアロックシステム。
【請求項4】
駆動部から伝達される動力を前記フックに中継する中継リンクと、
前記フックと前記中継リンクとを相対回転可能に連結する連結軸と、を備え、
前記第1ベースは、前記フックの回転軌跡に沿って延びる第1ガイド溝を有し、
前記第2ベースは、前記フックの回転軌跡に沿って延びる第2ガイド溝を有し、
前記フックが前記係止位置及び前記退避位置の間で回転するとき、前記連結軸の第1端は前記第1ガイド溝と摺動し、前記連結軸の第2端は前記第2ガイド溝と摺動する
請求項
3に記載の車両用ドアロックシステム。
【請求項5】
前記ドアロック装置は、前記ドアの下端部に設置され、
前記ストライカ構造は、前記車体における前記ドア開口部よりも下方に設置される
請求項1~請求項
4の何れか一項に記載の車両用ドアロックシステム。
【請求項6】
前記ドアは、前記ドア開口部の前側半分をスライドしつつ開閉するフロントドアと、前記ドア開口部の後側半分をスライドしつつ開閉するリアドアと、を有するものであり、
前記フロントドアに設置される前記ドアロック装置としてのフロントドアロック装置と、
前記リアドアに設置される前記ドアロック装置としてのリアドアロック装置と、を備え、
前記ストライカ構造は、
前記フロントドアロック装置に対応する前記第1係合部及び前記第2係合部としての第1フロント係合部及び第2フロント係合部と、
前記リアドアロック装置に対応する前記第1係合部及び前記第2係合部としての第1リア係合部及び第2リア係合部と、を有する
請求項
5に記載の車両用ドアロックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア開口部を有する車体と、ドア開口部を開閉するフロントスライドドア及びリアスライドドアと、を備える車両が記載されている。フロントスライドドアは、前方にスライドすることによりドア開口部の前側半分を開放する。リアスライドドアは、後方にスライドすることによりドア開口部の後側半分を開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、両開き式のスライドドアを備える車両は、センターピラーが存在しない点で、センターピラーにストライカを設置することができない。このため、上記のような車両は、スライドドアを全閉位置に拘束するための機構を必要とする。なお、こうした実情は、センターピラーを介さずに、両開き式でないスライドドアを車体に拘束する場合においても共通している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用ドアロックシステムは、車両の幅方向における少なくとも片側にドア開口部を有する車体と、前記ドア開口部を開閉するドアと、を備える前記車両に適用される車両用ドアロックシステムであって、前記車体と前記ドアとの一方に設置されるストライカ構造と、前記車体と前記ドアとの他方に設置されるドアロック装置と、を備え、前記ストライカ構造は、前記幅方向に間隔をあけて並ぶ第1係合部及び第2係合部を有し、前記ドアロック装置は、前記第1係合部に係止可能な係止位置及び前記第1係合部に係止不能な退避位置の間を変位するフックを有し、前記フックは、前記係止位置に位置するとき、前記幅方向において、前記第1係合部及び前記第2係合部の間に位置している。
【0006】
車両用ドアロックシステムにおいて、フックは、係止位置において第1係合部に係止している。このため、車両用ドアロックシステムは、車体に対してドアを拘束できる。また、フックは、係止位置において、第1係合部及び第2係合部の間に位置している。このため、ドアに幅方向を向く衝撃が作用することにより、フックが第1係合部から離れる方向に相対的に移動する場合には、フックが第2係合部に接近する方向に相対的に移動する。つまり、フックは、第1係合部に係止しなくなるものの、第2係合部に係止するようになる。したがって、ドアに衝撃が作用する場合であっても、車両用ドアロックシステムは、ドアの車体に対する拘束状態を維持できる。こうして、車両用ドアロックシステムは、ドアを車体に拘束することができる。
【0007】
上記車両用ドアロックシステムにおいて、前記フックは、前記係止位置に位置するときに、前記第2係合部と前記幅方向に対向する部位に前記第2係合部を収容可能な係合凹部を有することが好ましい。
【0008】
フックに第2係合部に係合する凸状の構成を設けると、フックが係止位置及び退避位置の間で変位するときに、上記凸状の構成が他の構成に接しないようにする必要がある。この点、車両用ドアロックシステムにおいて、フックは第2係合部を収容可能な係合凹部を有する。このため、フックが係止位置及び退避位置の間で変位するときに、係合凹部が他の構成に接しにくくなる。
【0009】
上記車両用ドアロックシステムにおいて、前記フックの前記係合凹部は、前記係合凹部の開口から前記係合凹部の底に進むにつれて、前記係合凹部の深さ方向と直交する幅が次第に狭くなっていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、ドアロック装置のフックがストライカ構造の第2係合部に相対的に接近するとき、第2係合部が係合凹部の底に導かれやすくなる。つまり、車両用ドアロックシステムは、ドアに衝撃が作用する場合において、フックを第2係合部に係止させやすくなる。
【0011】
上記車両用ドアロックシステムは、前記車両の前後方向を軸方向とし、前記フックを回転可能に支持するフック支持軸と、前記フック支持軸の第1端を支持する第1ベースと、前記フック支持軸の第2端を支持する第2ベースと、を備えることが好ましい。
【0012】
フック支持軸の両端部は、第1ベース及び第2ベースに支持されている。このため、フックを介して、フック支持軸に負荷が作用する場合であっても、フック支持軸が変形しにくくなる。
【0013】
上記車両用ドアロックシステムは、駆動部から伝達される動力を前記フックに中継する中継リンクと、前記フックと前記中継リンクとを相対回転可能に連結する連結軸と、を備え、前記第1ベースは、前記フックの回転軌跡に沿って延びる第1ガイド溝を有し、前記第2ベースは、前記フックの回転軌跡に沿って延びる第2ガイド溝を有し、前記フックが前記係止位置及び前記退避位置の間で回転するとき、前記連結軸の第1端は前記第1ガイド溝と摺動し、前記連結軸の第2端は前記第2ガイド溝と摺動することが好ましい。
【0014】
連結軸の両端部は、第1ガイド溝及び第2ガイド溝を介して、第1ベース及び第2ベースに支持されている。このため、フックを介して、連結軸に負荷が作用する場合であっても、連結軸が変形しにくくなる。
【0015】
上記車両用ドアロックシステムにおいて、前記ドアロック装置は、前記ドアの下端部に設置され、前記ストライカ構造は、前記車体における前記ドア開口部よりも下方に設置されることが好ましい。
【0016】
車両用ドアロックシステムは、ドアの下端部を車体に拘束することができる。
前記ドアは、前記ドア開口部の前側半分をスライドしつつ開閉するフロントドアと、前記ドア開口部の後側半分をスライドしつつ開閉するリアドアと、を有するものであり、上記車両用ドアロックシステムは、前記フロントドアに設置される前記ドアロック装置としてのフロントドアロック装置と、前記リアドアに設置される前記ドアロック装置としてのリアドアロック装置と、を備え、前記ストライカ構造は、前記フロントドアロック装置に対応する前記第1係合部及び前記第2係合部としての第1フロント係合部及び第2フロント係合部と、前記リアドアロック装置に対応する前記第1係合部及び前記第2係合部としての第1リア係合部及び第2リア係合部と、を有する。
【0017】
車両用ドアロックシステムは、フロントドア及びリアドアの間にセンターピラーが存在しない車両において、フロントドア及びリアドアを車体に拘束することができる。
【発明の効果】
【0018】
車両用ドアロックシステムは、ドアを車体に拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、車両の概略構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は、ロアストライカ構造とロアロック装置との斜視図である。
【
図3】
図3は、ロアストライカ構造の斜視図である。
【
図4】
図4は、ロアストライカ構造の断面図である。
【
図5】
図5は、ロアロック装置の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、ロアロック装置の分解斜視図である。
【
図9】
図9は、ロアストライカ構造とロアロック装置との作用を説明する概略図である。
【
図10】
図10は、ロアストライカ構造とロアロック装置との作用を説明する概略図である。
【
図11】
図11は、ロアストライカ構造とロアロック装置との作用を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、車両用ドアロックシステム(以下、「ドアロックシステム」ともいう。)を備える車両の一実施形態について説明する。図中において、X軸は車両前後方向に延びる軸であり、Y軸は車両幅方向に延びる軸であり、Z軸は車両上下方向に延びる軸である。以降の説明では、車両前後方向を前後方向ともいい、車両幅方向を幅方向ともいい、車両上下方向を上下方向ともいう。
【0021】
<車両10>
図1に示すように、車両10は、車体20と、スライドドア30と、ドア駆動部40と、を備える。
【0022】
<車体20>
図1に示すように、車体20は、ドア開口部21と、アッパレール22F,22Rと、センターレール23F,23Rと、フロントストライカ24Fと、リアストライカ24Rと、を備える。また、
図1及び
図2に示すように、車体20は、フロアパネル25と、ロアストライカ構造100と、を備える。
【0023】
ドア開口部21は、車体20の幅方向における少なくとも片側に開口している。車両10の左側通行を採用している地域であれば、ドア開口部21は少なくとも車両10の左側に開口していることが好ましい。一方、車両10の右側通行を採用している地域であれば、ドア開口部21は少なくとも車両10の右側に開口していることが好ましい。
【0024】
アッパレール22F,22Rは、ドア開口部21の上方に配置され、センターレール23F,23Rは、アッパレール22F,22Rよりも下方に配置されている。アッパレール22Fは、ドア開口部21の前後方向における中央よりも前方に配置され、センターレール23Fは、ドア開口部21よりも前方に配置されている。アッパレール22Rは、ドア開口部21の前後方向における中央よりも後方に配置され、センターレール23Rは、ドア開口部21よりも後方に配置されている。アッパレール22F,22R及びセンターレール23F,23Rは、主に前後方向を長手方向としている。
【0025】
フロントストライカ24Fは、ドア開口部21よりも前方に配置されている。リアストライカ24Rは、ドア開口部21よりも後方に配置されている。ロアストライカ構造100は、ドア開口部21の下方に配置されている。ロアストライカ構造100については、後で詳細を説明する。
【0026】
図2に示すように、フロアパネル25は、板状をなしている。フロアパネル25は、車室の底部を構成している。フロアパネル25は、ロアストライカ構造100を上方に露出させる貫通孔26を有する。
図1及び
図2では図示を省略しているが、貫通孔26は、フロアパネル25において、前後方向に間隔をあけて2つ開口している。貫通孔26は、上下方向における平面視においてT字状をなしている。
【0027】
<スライドドア30>
図1に示すように、スライドドア30は、ドア開口部21の前側半分を開閉するフロントドア30Fと、ドア開口部21の後側半分を開閉するリアドア30Rと、を備える。
【0028】
フロントドア30Fは、前方にスライドすることで開作動し、後方にスライドすることで閉作動する。一方、リアドア30Rは、後方にスライドすることで開作動し、前方にスライドすることで閉作動する。つまり、フロントドア30F及びリアドア30Rは、互いに離れる方向に移動することで開作動し、互いに接近する方向に移動することで閉作動する。こうして、フロントドア30F及びリアドア30Rは、ドア開口部21を全開する「全開位置」及びドア開口部21を全閉する「全閉位置」の間を開閉作動する。フロントドア30F及びリアドア30Rは、「ドア」に相当している。
【0029】
<フロントドア30F>
図1に示すように、フロントドア30Fは、ドア本体31と、アッパガイドユニット32F及びセンターガイドユニット33Fと、ドアハンドル34Fと、を備える。また、フロントドア30Fは、フロントロック装置35Fと、センターロック装置36Fと、ロアロック装置200Fと、フロントロック駆動装置37Fと、ロアロック駆動装置38Fと、リモコン39Fと、を備える。
【0030】
ドア本体31は、側面視において、ドア開口部21の前側半分の形状に応じた矩形状をなしている。ドア本体31は、幅方向に間隔をあけて位置するインナパネル及びアウタパネルを有する。フロントドア30Fの構成部品の一部は、インナパネル及びアウタパネルの間の空間に収容されている。図示を省略するが、ドア本体31において、幅方向における内方を向く面には、ドア本体31の外縁に沿ってシール部材が貼付されている。シール部材は、全閉位置に位置するフロントドア30Fとドア開口部21との間で弾性的に圧縮される。こうして、シール部材は、フロントドア30Fとドア開口部21との間から車室内に雨が浸入することを抑制する。
【0031】
アッパガイドユニット32Fは、ドア本体31の上端部であってドア本体31の後端部に固定されている。アッパガイドユニット32Fは、アッパレール22Fの長手方向に移動できるように、アッパレール22Fに係合している。センターガイドユニット33Fは、ドア本体31の上下方向における中間部であってドア本体31の前端部に固定されている。センターガイドユニット33Fは、センターレール23Fの長手方向に移動できるように、センターレール23Fに係合している。アッパガイドユニット32F及びセンターガイドユニット33Fがアッパレール22F及びセンターレール23Fに沿ってそれぞれ移動することにより、フロントドア30Fは車体20に対して前後方向に移動できる。
【0032】
ドアハンドル34Fは、ドア本体31における車両10の内側を向く面に設けられるインサイドドアハンドルである。ドアハンドル34Fは、ドア本体31における車両10の外側を向く面に設けられるアウトサイドドアハンドルであってもよい。
【0033】
フロントロック装置35Fは、ドア本体31の前端部であってドア本体31の上下方向における中間部に設けられている。フロントロック装置35Fは、フロントストライカ24Fに係止する係止状態と、フロントストライカ24Fに係止しない解除状態と、に切替可能に構成されている。フロントロック装置35Fは、係止状態に切り替わることで、全閉位置に位置するフロントドア30Fの前端部を車体20に拘束する。一方、フロントロック装置35Fは、解除状態に切り替わることで、全閉位置に位置するフロントドア30Fの拘束を解除する。
【0034】
センターロック装置36Fは、ドア本体31の後端部であってドア本体31の上下方向における中間部に設けられている。センターロック装置36Fは、後述するリアドア30Rのセンターストライカ36Rに係止する係止状態と、センターストライカ36Rに係止しない解除状態と、に切替可能に構成されている。センターロック装置36Fは、係止状態に切り替わることで、全閉位置に位置するフロントドア30Fの後端部とリアドア30Rの前端部とを連結する。一方、センターロック装置36Fは、解除状態に切り替わることで、全閉位置に位置するフロントドア30Fとリアドア30Rとの連結を解除する。
【0035】
ロアロック装置200Fは、ドア本体31の後端部であってドア本体31の下端部に設けられている。ロアロック装置200Fは、ロアストライカ構造100に係止する係止状態と、ロアストライカ構造100に係止しない解除状態と、に切替可能に構成されている。ロアロック装置200Fは、係止状態に切り替わることで、全閉位置に位置するフロントドア30Fの下端部を車体20に拘束する。一方、ロアロック装置200Fは、解除状態に切り替わることで、全閉位置に位置するフロントドア30Fの拘束を解除する。ロアロック装置200Fについては、後で詳細を説明する。
【0036】
フロントロック駆動装置37Fは、フロントロック装置35Fを解除状態から係止状態に移行させたり、フロントロック装置35Fを係止状態から解除状態に移行させたりする。フロントロック駆動装置37Fは、フロントドア30Fが全閉位置の近傍の全閉近傍位置まで閉作動された後に、フロントロック装置35Fを解除状態から係止状態に移行させる。一方、フロントロック駆動装置37Fは、フロントドア30Fを全閉位置から開作動させる際に、フロントロック装置35Fを係止状態から解除状態に移行させる。
【0037】
ロアロック駆動装置38Fは、ロアロック装置200Fを解除状態から係止状態に移行させる。ロアロック駆動装置38Fは、フロントロック駆動装置37Fがフロントロック装置35Fを係止状態に移行させた後、すなわち、フロントドア30Fが全閉位置まで閉作動した後に、ロアロック装置200Fを係止状態に移行させる。
【0038】
リモコン39Fは、ドアハンドル34F、フロントロック駆動装置37F、センターロック装置36F及びロアロック装置200Fの間で伝達される動力を中継する。詳しくは、リモコン39Fは、フロントロック駆動装置37Fがフロントロック装置35Fを解除状態に移行させるときに、センターロック装置36F及びロアロック装置200Fに動力を伝達する。そして、リモコン39Fは、センターロック装置36F及びロアロック装置200Fを係止状態から解除状態に移行させる。また、リモコン39Fは、ユーザがドアハンドル34Fを操作するときに、フロントロック装置35F、センターロック装置36F及びロアロック装置200Fに動力を伝達する。そして、リモコン39Fは、フロントロック装置35F、センターロック装置36F及びロアロック装置200Fを係止状態から解除状態に移行させる。
【0039】
フロントドア30Fのロアロック装置200Fは、「ドアロック装置」及び「フロントドアロック装置」に相当している。また、フロントドア30Fのロアロック駆動装置38Fは「駆動部」に相当している。
【0040】
<リアドア30R>
図1に示すように、リアドア30Rは、ドア本体31と、アッパガイドユニット32R及びセンターガイドユニット33Rと、ドアハンドル34Rと、を備える。また、リアドア30Rは、リアロック装置35Rと、センターストライカ36Rと、リアロック駆動装置37Rと、ロアロック装置200Rと、ロアロック駆動装置38Rと、リモコン39Rと、を備える。
【0041】
リアドア30Rは、フロントドア30Fと略同様に構成される。フロントドア30Fとの相違点は、フロントロック装置35F及びフロントロック駆動装置37Fの代わりにリアロック装置35R及びリアロック駆動装置37Rを備える点と、センターロック装置36Fの代わりにセンターストライカ36Rを備える点である。このため、リアドア30Rにおいて、センターストライカ36Rを除く構成については説明を省略する。
【0042】
センターストライカ36Rは、リアドア30Rの前端部であって上下方向における中間部に設置されている。言い換えれば、センターストライカ36Rは、フロントドア30Fのセンターロック装置36Fと前後方向に対向する位置に設置されている。センターストライカ36Rは、センターロック装置36Fが係止する対象である。
【0043】
リアドア30Rのロアロック装置200Rは、「ドアロック装置」及び「リアドアロック装置」に相当している。また、リアドア30Rのロアロック駆動装置38Rは「駆動部」に相当している。
【0044】
<ドア駆動部40>
図1に示すように、ドア駆動部40は、フロントドア30Fを開閉方向に駆動するフロントドア駆動部40Fと、リアドア30Rを開閉方向に駆動するリアドア駆動部40Rと、を備える。フロントドア駆動部40F及びリアドア駆動部40Rは、例えば、モータと、モータの動力をスライドドア30に伝達する伝達機構と、を含んで構成される。フロントドア駆動部40F及びリアドア駆動部40Rの伝達機構は、プーリとベルトとを含んで構成することもできるし、ドラムとケーブルとを含んで構成することもできる。なお、フロントドア駆動部40F及びリアドア駆動部40Rは、スライドドア30に内蔵することもできる。フロントドア30F及びリアドア30Rは、それぞれフロントドア駆動部40F及びリアドア駆動部40Rにより開閉作動される点で、いわゆるパワースライドドアであるといえる。
【0045】
<ロアストライカ構造100>
図3及び
図4に示すように、ロアストライカ構造100は、ベースプレート110と、2本の第1係合部120と、複数の締結部材130と、を備える。
図3に示すように、ロアストライカ構造100は、前後方向に対して対象な構造である。このため、以降の説明では、主に、ロアストライカ構造100の前側半分について説明する。
【0046】
図3及び
図4に示すように、ベースプレート110は、矩形板状をなしている。ベースプレート110は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形されている。ベースプレート110は、ベースプレート110の大部分を占める第1部分111を有する。また、ベースプレート110の前側部分は、第1部分111よりも上方に位置する第2部分112と、第2部分112よりも上方に位置する第3部分113と、第2部分112から延びる2つの屈曲部114と、幅方向に延びるスリット115と、を有する。
【0047】
第1部分111、第2部分112及び第3部分113は、ともに平板状をなしている。第1部分111、第2部分112及び第3部分113の板厚は、ともに等しくなっている。第1部分111、第2部分112及び第3部分113の板厚方向は、概ね上下方向となっている。
【0048】
第1部分111は、例えば、車体20のフレーム構造及びモノコック構造などに固定される部位である。また、第1部分111は、フロアパネル25が固定される部位でもある。第2部分112は、第1部分111に対して上方に膨出している。第2部分112における第1部分111との境界部分は、第1部分111に対して湾曲している。第3部分113は、第1部分111及び第2部分112に対して上方に膨出している。第3部分113における第2部分112及び第3部分113との境界部分は湾曲している。第3部分113は、第2部分112と幅方向に隣り合っている。第3部分113は、第2部分112よりも幅方向における内方に位置している。
【0049】
2つの屈曲部114は、前後方向に間隔をあけた状態で第2部分112から屈曲している。詳しくは、2つの屈曲部114は、スリット115の両側で、幅方向における外方に僅かに延びた後に上方に延びている。このため、前後方向から2つの屈曲部114を見たとき、2つの屈曲部114はL字状をなしている。2つの屈曲部114の幅方向における長さは、2つの屈曲部114の上下方向における長さよりも短くなっている。
【0050】
スリット115は、第2部分112から第3部分113にかけて延びている。このため、スリット115は、第2部分112を前後方向に分断している。また、スリット115の底部は、第3部分113に位置している。以降の説明では、第3部分113におけるスリット115の底部を構成する部位を第2係合部116という。スリット115は、上下方向における平面視において、前後方向を短手方向とし幅方向を長手方向とする矩形状をなしている。つまり、スリット115の幅方向は、前後方向である。
【0051】
第1係合部120は、前後方向を軸方向とする棒状をなしている。第1係合部120の軸方向における長さは、ベースプレート110のスリット115の幅よりも長くなっている。第1係合部120の軸方向と直交する断面形状は、長円形状をなしている。他の実施形態において、第1係合部120の軸方向と直交する断面形状は、円形状をなしていてもよいし、多角形状をなしていてもよい。
【0052】
第1係合部120は、スリット115を跨ぐようにベースプレート110に固定されている。詳しくは、第1係合部120は、2つの締結部材130により、第2部分112に固定されている。このとき、第1係合部120は第2部分112の上方に位置している。また、第1係合部120は、幅方向において、2つの屈曲部114に接している。2つの締結部材130は、第2部分112の下方から、第1係合部120を第2部分112に締結している。
【0053】
図3に示すように、ロアストライカ構造100において、前側の第1係合部120及び第2係合部116は、フロントドア30Fのロアロック装置200Fの係止対象である。一方、後側の第1係合部120及び第2係合部116は、リアドア30Rのロアロック装置200Rの係止対象である。こうした点で、本実施形態のロアストライカ構造100は、1つのベースプレート110に、フロントドア30Fのロアロック装置200F及びリアドア30Rのロアロック装置200Rの双方の係止対象が設けられているといえる。
【0054】
さらに、前側の第1係合部120は「第1フロント係合部」に相当し、後側の第1係合部120は「第1リア係合部」に相当している。また、前側の第2係合部116は「第2フロント係合部」に相当し、後側の第2係合部116は「第2リア係合部」に相当している。さらに、ロアストライカ構造100は、「ストライカ構造」に相当している。
【0055】
<ロアロック装置200F,200R>
以下、ロアロック装置200F,200Rについて詳しく説明する。フロントドア30Fのロアロック装置200F及びリアドア30Rのロアロック装置200Rは、前後方向に対して対称な構成である。このため、以降の説明では、フロントドア30Fのロアロック装置200Fについて説明する。
【0056】
図5~
図8に示すように、ロアロック装置200Fは、第1ベース210と、第2ベース220と、駆動レバー230と、中継リンク240と、フック250と、リリースレバー260と、ポール270と、を備える。また、ロアロック装置200Fは、複数のストッパー311,312と、複数のスプリング321,322と、複数の支持軸331~334と、複数の連結軸341~343と、を備える。
【0057】
第1ベース210は、メインプレート211と、メインプレート211に対して屈曲するサブプレート212と、を有する。メインプレート211及びサブプレート212はともに板状をなしている。メインプレート211及びサブプレート212の間をなす角度は、90度程度となっている。第1ベース210は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形される。
【0058】
メインプレート211は、フック250の回転をガイドするフックガイド溝213と、リリースレバー260の回転をガイドするレバーガイド溝214と、を有する。フックガイド溝213は、第2支持軸332の軸線を中心とする円弧状をなし、レバーガイド溝214は、第3支持軸333の軸線を中心とする円弧状をなしている。フックガイド溝213の幅は、第2連結軸342の外径よりも大きく、レバーガイド溝214の幅は、第3連結軸343の外径よりも大きくなっている。フックガイド溝213は「第1ガイド溝」に相当している。メインプレート211には、駆動レバー230の作動範囲を制限する第1ストッパー311と、リリースレバー260の作動範囲を制限する第2ストッパー312と、が固定されている。
【0059】
第2ベース220は、メインプレート221と、メインプレート221に対して屈曲するサブプレート222と、を有する。メインプレート221及びサブプレート222はともに板状をなしている。メインプレート221及びサブプレート222の間をなす角度は、90度程度となっている。つまり、第2ベース220は、第1ベース210と対応する形状をなしている。第2ベース220は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形される。メインプレート221は、フック250の回転をガイドするフックガイド溝223を有する。フックガイド溝223は、第2支持軸332の軸線を中心とする円弧状をなしている。フックガイド溝223は「第2ガイド溝」に相当している。
【0060】
第1ベース210及び第2ベース220は、重なった状態で連結されている。このとき、第1ベース210のメインプレート211及び第2ベース220のメインプレート221の間には隙間が存在している。一方、第1ベース210のサブプレート212及び第2ベース220のサブプレート222は密着している。第1ベース210及び第2ベース220の連結には、例えば、ボルト及びリベットなどの締結部材を用いればよい。
【0061】
以降の説明では、第1ベース210のメインプレート211の板厚方向における一方の面であって
図5に図示される面を正面といい、第1ベース210のメインプレート211の板厚方向における他方の面であって
図6に図示される面を背面という。同様に、第2ベース220のメインプレート221の板厚方向における一方の面であって
図5に図示される面を正面といい、第2ベース220のメインプレート221の板厚方向における他方の面であって
図6に図示される面を背面という。
【0062】
図5,
図6及び
図7に示すように、駆動レバー230は、異なる方向に延びる第1レバー231及び第2レバー232を有する。駆動レバー230は、前後方向を軸方向とする第1支持軸331により、第1ベース210のメインプレート211の中央部であって第1ベース210のメインプレート211の正面側に支持されている。こうして、駆動レバー230は、第1支持軸331の軸線回りに回転可能となっている。なお、第1支持軸331は、先端が第1ベース210及び第2ベース220に固定され、基端で駆動レバー230を支持している。この点で、第1支持軸331は、軸方向における一端部のみが固定されているといえる。
【0063】
図7に示すように、駆動レバー230は、第1スプリング321によって、第1回転方向R11に付勢されている。本実施形態において、第1スプリング321は、ねじりコイルばねであるが、駆動レバー230を第1回転方向R11に付勢できるのであれば他の種類のばねであってもよい。
図7に示す状態では、駆動レバー230は、第1ストッパー311に接触することにより位置決めされている。
【0064】
図5,
図6及び
図7に示すように、中継リンク240は、駆動レバー230からフック250に動力を伝達するリンクである。中継リンク240の長手方向における第1端は、前後方向を軸方向とする第1連結軸341により、駆動レバー230の第2レバー232に連結されている。こうして、中継リンク240と駆動レバー230とは、第1連結軸341の軸線回りに相対回転可能となっている。一方、中継リンク240の長手方向における第2端は、前後方向を軸方向とする第2連結軸342により、フック250に連結されている。こうして、中継リンク240とフック250とは、第2連結軸342の軸線回りに相対回転可能となっている。中継リンク240は、駆動レバー230と同様に、第1ベース210のメインプレート211の正面側に位置している。
【0065】
図5,
図6及び
図8に示すように、フック250は、板状をなしている。フック250の板厚は、ロアストライカ構造100のスリット115の幅よりも薄くなっている。フック250は、板厚方向から見たときに扇形状をなすとともに、板厚方向に対して一定の形状をなしている。フック250は、ロアストライカ構造100の第1係合部120に係止可能な第1係合凹部251と、ロアストライカ構造100の第2係合部116に係止可能な第2係合凹部252と、を有する。第1係合凹部251及び第2係合凹部252は、互いに接近する方向に凹んでいる。つまり、第1係合凹部251の深さ方向は、第2係合凹部252の深さ方向の逆方向となっている。第1係合凹部251は、深さ方向に対して、深さ方向と直交する幅が略一定となっている。第2係合凹部252は、深さ方向に対して、深さ方向と直交する幅が次第に狭くなっている。
【0066】
フック250は、第1ベース210のメインプレート211の下端部及び第2ベース220のメインプレート221の下端部の間で、前後方向を軸方向とする第2支持軸332により支持されている。こうして、フック250は、第1ベース210及び第2ベース220に対して、第2支持軸332の軸線回りに回転可能となっている。その結果、フック250は、第1係合部120に係止可能な係止位置及び第1係合部120に係止不能な退避位置の間を変位可能となっている。なお、第2支持軸332の軸方向における第1端は第1ベース210に固定され、第2支持軸332の軸方向における第2端は第2ベース220に固定されている。第2支持軸332は、軸方向における中間部でフック250を支持している。この点で、第2支持軸332の両端部は、固定端であるといえる。第2支持軸332は「フック支持軸」に相当している。
【0067】
本実施形態では、第1ベース210及び第2ベース220と駆動レバー230と中継リンク240とフック250とにより、いわゆる4節リンク機構が構成されている。つまり、駆動レバー230と中継リンク240とフック250とは連動している。このため、駆動レバー230が第1回転方向R11に付勢されている点で、フック250は第1回転方向R21に付勢されているといえる。その結果、
図7及び
図8に示す状態において、フック250は退避位置に位置している。
【0068】
図7及び
図8に示すように、第2連結軸342の第1端は、第1ベース210のフックガイド溝213を貫通し、第2連結軸342の第2端は、第2ベース220のフックガイド溝223を貫通している。このとき、第2連結軸342は、第1ベース210を貫通する部分で中継リンク240を支持し、第1ベース210及び第2ベース220の間でフック250を支持している。第1ベース210のフックガイド溝213及び第2ベース220のフックガイド溝223は、第2支持軸332の軸線を中心とする円弧状をなしている点で、フック250の回転軌跡に沿って延びている。このため、フック250が第2支持軸332の軸線回りに回転する場合、第2連結軸342は、第1ベース210のフックガイド溝213及び第2ベース220のフックガイド溝223に沿って移動する。こうした点で、第2連結軸342は「連結軸」に相当し、第1ベース210のフックガイド溝213は「第1ガイド溝」に相当し、第2ベース220のフックガイド溝223は「第2ガイド溝」に相当している。
【0069】
図5,
図6及び
図7に示すように、リリースレバー260は、異なる方向に延びる第3レバー261及び第4レバー262を有する。リリースレバー260は、前後方向を軸方向とする第3支持軸333により、第1ベース210の上部であって第1ベース210の正面側に支持されている。こうして、リリースレバー260は、第1ベース210に対して、第3支持軸333の軸線回りに回転可能となっている。なお、第3支持軸333は、先端が第1ベース210及び第2ベース220に固定され、第2ベース220よりも基端寄りの位置で駆動レバー230を支持している。この点で、第3支持軸333は、軸方向における一端部のみが固定されているといえる。
【0070】
図7に示すように、リリースレバー260は、第2スプリング322によって、第1回転方向R31に付勢されている。本実施形態において、第2スプリング322はねじりコイルばねであるが、リリースレバー260を第1回転方向R31に付勢できるのであれば他の種類のばねであってもよい。
【0071】
図5,
図6及び
図8に示すように、ポール270は、棒状をなしている。ポール270は、長手方向における一端部を構成する基端部271と、長手方向における他端部を構成する先端部272と、を有する。基端部271には、平面視において長円形状をなす長孔273が設けられている。先端部272は、先端に進むにつれて先細りしている。
【0072】
ポール270は、第1ベース210のメインプレート211の中央部及び第2ベース220のメインプレート221の中央部の間で、前後方向を軸方向とする第4支持軸334により支持されている。このとき、第4支持軸334は、ポール270を貫通している。こうして、ポール270は、第1ベース210及び第2ベース220に対して、第4支持軸334の軸線回りに回転可能となっている。なお、第4支持軸334の軸方向における第1端は第1ベース210に固定され、第4支持軸334の軸方向における第2端は第2ベース220に固定されている。第4支持軸334は、軸方向における中間部でポール270を支持している。この点で、第4支持軸334の両端部は、固定端であるといえる。
【0073】
また、ポール270の基端部271は、前後方向を軸方向とする第3連結軸343により、リリースレバー260の第4レバー262に連結されている。このとき、第3連結軸343は、ポール270の長孔273を挿通している。こうして、ポール270は、リリースレバー260に対して相対的に変位可能となっている。
【0074】
ここで、ポール270とリリースレバー260とを連結する第3連結軸343は、第1ベース210のレバーガイド溝214を貫通している。第1ベース210のレバーガイド溝214は、第3支持軸333の軸線を中心とする円弧状をなしている点で、リリースレバー260の回転軌跡に沿って延びている。このため、リリースレバー260が第3支持軸333の軸線回りに回転する場合、第3連結軸343は、第1ベース210のレバーガイド溝214に沿って移動する。
【0075】
本実施形態では、第1ベース210とリリースレバー260と長孔273を有するポール270とにより、いわゆる4節スライダクランク機構が構成されている。つまり、リリースレバー260とポール270とは連動している。このため、リリースレバー260が第1回転方向R31に付勢されている点で、ポール270は第1回転方向R41に付勢されているといえる。ただし、ポール270は、フック250に接触することにより、第1回転方向R41への回転が制限されている。
【0076】
ロアロック装置200Fにおいて、第1支持軸331、第2支持軸332、第3支持軸333及び第4支持軸334は、第1ベース210及び第2ベース220に対して、相対回転可能に固定されていてもよいし、相対回転不能に固定されていてもよい。第1支持軸331、第2支持軸332、第3支持軸333及び第4支持軸334の第1ベース210及び第2ベース220に対する固定方法は、例えば、カシメ加工を用いればよいが、溶接または嵌合などでもよい。
【0077】
以上説明したように、本実施形態では、
図2に示すように、ロアストライカ構造100と、フロントドア30Fのロアロック装置200Fと、リアドア30Rのロアロック装置200Rと、を含んで、ドアロックシステム50が構成されている。
【0078】
<本実施形態の作用>
図1及び
図9~
図11を参照して、スライドドア30が閉作動するときの作用について説明する。
【0079】
図1に示すように、スライドドア30が閉作動される場合には、フロントドア駆動部40Fによって、フロントドア30Fが全閉近傍位置まで閉作動されるとともに、リアドア駆動部40Rによって、リアドア30Rが全閉近傍位置まで閉作動される。なお、全閉近傍位置とは、全閉位置よりも開方向に僅かにずれた位置である。
【0080】
フロントドア30F及びリアドア30Rが全閉近傍位置まで到達すると、リアロック駆動装置37Rにより、リアロック装置35Rが係止状態に移行される。つまり、リアドア30Rが全閉近傍位置から全閉位置まで閉作動される。リアロック装置35Rが係止状態に移行し終わると、フロントロック駆動装置37Fにより、フロントロック装置35Fが係止状態に移行される。つまり、フロントドア30Fが全閉近傍位置から全閉位置まで閉作動される。
【0081】
リアドア30Rが全閉位置に位置する状況下で、フロントドア30Fが全閉位置に閉作動する場合には、リアドア30Rの前端部に対してフロントドア30Fの後端部が接近する。言い換えれば、リアドア30Rのセンターストライカ36Rにフロントドア30Fのセンターロック装置36Fが接近する。その結果、センターロック装置36Fが係止状態に移行される。
【0082】
フロントロック装置35F、リアロック装置35R及びセンターロック装置36Fが係止状態に移行すると、ロアロック装置200F,200Rを係止状態に移行させるために、ロアロック駆動装置38F,38Rが駆動される。以下、係止状態に移行するときのロアロック装置200Fの作用について、詳しく説明する。ロアロック装置200Rの作用は、ロアロック装置200Fの作用と略等しいため、説明を省略する。
【0083】
図9は、フロントロック装置35F、リアロック装置35R及びセンターロック装置36Fが係止状態に移行したときのロアロック装置200F及びロアストライカ構造100の位置関係を示している。
図9に示すように、ロアロック装置200Fが係止状態に移行する前は、フロントドア30Fの下端部が車体20に対して幅方向における外方に位置している。フロントドア30Fの位置は、ドア開口部21とフロントドア30Fとの間に位置するシール部材の弾性率の大きさ、フロントドア30Fの重心位置及びフロントドア30Fの支持態様などが関係している。
【0084】
ロアロック装置200Fを係止状態に移行させる場合には、ロアロック駆動装置38Fは、
図9に実線矢印で示す荷重を駆動レバー230の第1レバー231に伝達する。すると、駆動レバー230が第2回転方向R12に回転することで、中継リンク240とフック250とが動作する。このとき、中継リンク240は、ロアロック駆動装置38Fから伝達される動力をフック250に中継する。その結果、フック250は、第2回転方向R22に回転する。フック250が回転する場合には、ポール270の先端部272がフック250の背面と摺動する。また、フック250が回転する場合には、第2連結軸342の第1端は第1ベース210のフックガイド溝213と摺動し、第2連結軸342の第2端は第2ベース220のフックガイド溝223と摺動する。
【0085】
ロアロック駆動装置38Fにより、駆動レバー230の第2回転方向R12への回転が継続されると、フック250の第1係合凹部251がロアストライカ構造100の第1係合部120に接する。フック250が第1係合部120に接した後も、フック250の第2回転方向R22への回転が継続されると、フック250の第1係合凹部251と第1係合部120とが摺動する。このとき、フック250は、第1係合部120を幅方向における外方に押す。ここで、第1係合部120を備えるロアストライカ構造100は変位不能であるが、フロントドア30Fの下端部は幅方向に僅かに変位可能である。このため、フック250に作用する反力により、ロアロック装置200Fは、第1係合部120に対して幅方向における内方に変位する。つまり、フロントドア30Fの下端部は、ロアストライカ構造100に対して幅方向における内方に変位する。
【0086】
図10に示すように、フック250が第1係合部120に完全に係止すると、ロアロック装置200Fの係止状態への移行が完了する。このとき、第1係合部120は、フック250の第1係合凹部251に完全に収まる。また、
図10に示すフック250の位置は係止位置である。ロアロック装置200Fの係止状態への移行が完了すると、ロアロック駆動装置38Fの駆動が停止される。
【0087】
フック250が係止位置まで回転すると、ポール270の先端部272がフック250の背面と摺動しなくなる。このため、ポール270は第2スプリング322の付勢力に従って第1回転方向R41に回転する。そして、ポール270の先端部272がフック250に係止することにより、フック250は第1回転方向R21に回転できなくなる。つまり、駆動レバー230は、第1スプリング321の付勢力に従って第1回転方向R11に回転できなくなる。したがって、ロアロック駆動装置38Fの駆動が停止した後も、フック250が第1係合部120に係止する状態が維持される。こうして、スライドドア30の閉作動が完了する。
【0088】
フック250が係止位置まで回転すると、幅方向において、フック250は第1係合部120と第2係合部116との間に位置する。このとき、フック250の第1係合凹部251と第1係合部120とは幅方向に接している。一方、フック250の第2係合凹部252と第2係合部116とは幅方向に離れて位置している。言い換えれば、フック250の第2係合凹部252は、幅方向において、第2係合部116と対向している。
【0089】
続いて、スライドドア30が全閉位置に位置するときにスライドドア30に衝撃が作用するときの作用について説明する。
例えば、車両10の側面に他車両が衝突する場合などには、フロントドア30Fに対して幅方向における内方を向く衝撃が作用する場合がある。この場合、
図11に示すように、フロントドア30Fが車体20に対して幅方向における内方に変位する。このとき、ロアロック装置200Fのフック250は、ロアストライカ構造100の第2係合部116に接触する。詳しくは、フック250の第2係合凹部252に第2係合部116が進入する。そして、フック250の第2係合凹部252の底面に第2係合部116が接触する。
【0090】
こうして、フロントドア30Fが幅方向における内方に移動しようとする場合には、ロアロック装置200Fのフック250がロアストライカ構造100の第2係合部116に係止する。その結果、フロントドア30Fの幅方向における内方への移動が制限される。つまり、ロアロック装置200Fのフック250がロアストライカ構造100の第2係合部116に係止した後は、フロントドア30Fが車室の容積を減少させる方向に変位しにくくなる。
【0091】
最後に、スライドドア30が開作動するときの作用について説明する。
図1に示すように、スライドドア30を開作動させる場合には、フロントロック駆動装置37F及びリアロック駆動装置37Rが駆動される。その結果、フロントロック装置35F及びリアロック装置35Rが解除状態に移行される。このとき、リモコン39Fは、フロントロック装置35Fから伝達される動力をセンターロック装置36Fに伝達する。その結果、センターロック装置36Fは、解除状態に移行される。また、リモコン39Fは、フロントロック装置35Fから伝達される動力をロアロック装置200Fに伝達し、リモコン39Rは、リアロック装置35Rから伝達される動力をロアロック装置200Rに伝達する。以下、解除状態に移行するときのロアロック装置200Fの作用について、詳しく説明する。
【0092】
図10に実線矢印で示すように、リモコン39Fから伝達される動力は、リリースレバー260の第3レバー261に伝達される。すると、リリースレバー260が第2回転方向R32に回転することで、ポール270が第2回転方向R42に回転する。つまり、ポール270の先端部272がフック250から離れる方向に移動することにより、ポール270の先端部272がフック250に係止しなくなる。その結果、フック250が第1スプリング321の付勢力に従って第1回転方向R21に回転し、フック250が第1係合部120に係止しなくなる。このとき、フック250は、係止位置から退避位置まで回転する。こうして、ロアロック装置200Fの解除状態への移行が完了する。ロアロック装置200Rについても同様に、リモコン39Fから伝達される動力に基づき解除状態に移行される。その後、フロントドア駆動部40Fによって、フロントドア30Fが開作動され、リアドア駆動部40Rによって、リアドア30Rが開作動される。こうして、スライドドア30の開作動が完了する。
【0093】
<本実施形態の効果>
(1)ロアロック装置200F,200Rのフック250は、係止位置において第1係合部120に係止している。このため、ドアロックシステム50は、車体20に対してスライドドア30を拘束できる。また、フック250は、係止位置において、第1係合部120及び第2係合部116の間に位置している。このため、スライドドア30に衝撃が作用することにより、フック250が第1係合部120から離れる方向に移動する場合には、フック250が第2係合部116に接近する方向に移動する。つまり、フック250は、第1係合部120に係止しなくなるものの、第2係合部116に係止するようになる。したがって、スライドドア30に衝撃が作用する場合であっても、ドアロックシステム50は、スライドドア30の車体20に対する拘束状態を維持できる。また、ドアロックシステム50は、スライドドア30が車室の容積を減少させる方向に移動し続けることを抑制できる。
【0094】
(2)フック250に第2係合部116に係合する凸状の構成を設けると、フック250が係止位置及び退避位置の間で回転するときに、上記凸状の構成が他の構成に接しないようにする必要がある。例えば、回転するフック250が、ロアストライカ構造100のベースプレート110に接触しないようにスリット115を大きくする必要がある。この点、ドアロックシステム50において、フック250は第2係合部116を収容可能な第2係合凹部252を有する。このため、フック250が係止位置及び退避位置の間で回転するときに、第2係合凹部252が他の構成に接しにくくなる。
【0095】
(3)フック250の第2係合凹部252は、第2係合凹部252の開口から第2係合凹部252の底に進むにつれて、次第に幅狭になっている。このため、スライドドア30に衝撃が作用するのに伴い、フック250がロアストライカ構造100の第2係合部116に相対的に接近する場合に、第2係合部116が第2係合凹部252の底に導かれやすくなる。つまり、ドアロックシステム50は、フック250を第2係合部116に係止させやすくなる。
【0096】
(4)第2支持軸332の両端部は、第1ベース210及び第2ベース220に支持されている。このため、フック250を介して、第2支持軸332に負荷が作用する場合であっても、第2支持軸332が変形しにくくなる。第4支持軸334についても、ポール270との関係で同様である。
【0097】
(5)第2連結軸342の両端部は、フックガイド溝213,223を介して、第1ベース210及び第2ベース220に支持されている。このため、フック250を介して、第2連結軸342に負荷が作用する場合であっても、第2連結軸342が変形しにくくなる。
【0098】
(6)ドアロックシステム50は、フロントドア30F及びリアドア30Rの下端部を車体20に拘束することができる。つまり、ドアロックシステム50は、車両10がセンターピラーを備えない場合であっても、フロントドア30F及びリアドア30Rを車体20に拘束できる。
【0099】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0100】
・ロアストライカ構造100において、第1係合部120のベースプレート110に対する固定態様は適宜に変更可能である。例えば、第1係合部120は、ベースプレート110に対して溶接されていてもよい。
【0101】
・ロアストライカ構造100において、第1係合部120及び第2係合部116の形状は適宜に変更可能である。例えば、第1係合部120及び第2係合部116は、一般的なU字状をなすストライカであってもよい。また、第2係合部116は、第1係合部120と同様に軸状部材であってもよい。
【0102】
・ロアストライカ構造100は、前後方向における中央部で分離していてもよい。すなわち、ドアロックシステム50は、フロントドア30F用のロアストライカ構造と、リアドア30R用のロアストライカ構造と、を備えていてもよい。
【0103】
・ロアロック装置200F,200Rのフック250は、係止位置及び退避位置の間を直線的に往復動するように構成することも可能である。この場合、ロアロック装置200F,200Rは、駆動レバー230の回転運動をフック250の直線運動に変換する伝達機構を備えることが好ましい。また、この場合、フックガイド溝213,223は、フック250の移動軌跡に沿うように直線状に延びていることが好ましい。
【0104】
・ロアロック装置200F,200Rのフック250は、退避位置から係止位置に回転するときにロアストライカ構造100の第1係合部120に係止できるのであれば、適宜に形状を変更することができる。例えば、上記実施形態では、
図10に示すように、ベースプレート110の第1係合部120が凸形状をなし、フック250の第1係合凹部251が凹形状をなしている。これに対し、変更例において、ベースプレート110の第1係合部120が凹形状をなし、フック250の第1係合凹部251が凸形状をなしていてもよい。また、フック250から第1係合凹部251を省略してもよい。
【0105】
・ロアロック装置200F,200Rのフック250は、係止位置からロアストライカ構造100の第2部分112に向かって移動するときに第2部分112に係止できるのであれば、適宜に形状を変更することができる。例えば、上記実施形態では、
図11に示すように、ベースプレート110の第2係合部116が凸形状をなし、フック250の第2係合凹部252が凹形状をなしている。これに対し、変更例において、ベースプレート110の第2係合部116が凹形状をなし、フック250の第2係合凹部252が凸形状をなしていてもよい。また、フック250から第2係合凹部252を省略してもよい。
【0106】
・ロアロック装置200F,200Rの第2ベース220は省略可能である。この場合、フック250を回転可能に支持する第2支持軸332及びポール270を回転可能に支持する第4支持軸334は、第1ベース210のみに支持される。つまり、第2支持軸332及び第4支持軸334は軸方向における一端部のみが第1ベース210に支持される。
【0107】
・ロアロック装置200F,200Rにおいて、フックガイド溝213及びレバーガイド溝214は、第1ベース210から省略可能である。同様に、フックガイド溝223は、第2ベース220から省略可能である。
【0108】
・ロアロック装置200F,200Rは、車体20のフロアに設置してもよい。この場合、ロアストライカ構造100の前側部分は、フロントドア30Fの下端部に設置することが好ましく、ロアストライカ構造100の後側部分は、リアドア30Rの下端部に設置することが好ましい。
【0109】
・「ドアロック装置」は、フロントドア30Fの上部に設置されるアッパロック装置であってもよい。この場合、「ストライカ構造」は、車体20のドア開口部21よりも上方に設置されることが好ましい。
【0110】
・車両10は、フロントドア30F及びリアドア30Rの一方を備える車両であってもよい。
・フロントドア30F及びリアドア30Rは、上下方向に延びる軸線回りに回転するスイングドアであってもよい。この場合、フロントドア30Fの回転軸線は、フロントドア30Fの前端部に設けられることが好ましく、リアドア30Rの回転軸線は、リアドア30Rの後端部に設けられることが好ましい。
【0111】
・車体20は、幅方向における両側にドア開口部21を有していてもよい。この場合、車両10は、右側のドア開口部21に対応するフロントドア30F及びリアドア30Rと、左側のドア開口部21に対応するフロントドア30F及びリアドア30Rと、を備えることが好ましい。
【符号の説明】
【0112】
10…車両
20…車体
21…ドア開口部
25…フロアパネル
26…貫通孔
30…スライドドア(ドアの一例)
30F…フロントドア
30R…リアドア
31…ドア本体
38F,38R…ロアロック駆動装置
40…ドア駆動部
40F…フロントドア駆動部
40R…リアドア駆動部
50…車両用ドアロックシステム
100…ロアストライカ構造(ストライカ構造の一例)
110…ベースプレート
111…第1部分
112…第2部分
113…第3部分
114…屈曲部
115…スリット
116…第2係合部(第2フロント係合部及び第2リア係合部の一例)
120…第1係合部(第1フロント係合部及び第1リア係合部の一例)
130…締結部材
200F…ロアロック装置(ドアロック装置及びフロントドアロック装置の一例)
200R…ロアロック装置(ドアロック装置及びリアドアロック装置の一例)
210…第1ベース
213…フックガイド溝(第1ガイド溝の一例)
220…第2ベース
223…フックガイド溝(第2ガイド溝の一例)
230…駆動レバー
240…中継リンク
250…フック
251…第1係合凹部
252…第2係合凹部(係合凹部の一例)
260…リリースレバー
270…ポール
331…第1支持軸
332…第2支持軸(フック支持軸の一例)
333…第3支持軸
334…第4支持軸
341…第1連結軸
342…第2連結軸(連結軸の一例)
343…第3連結軸