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  • 特許-血液保存用組成物及び血液採取容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】血液保存用組成物及び血液採取容器
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20241112BHJP
   C12M 1/28 20060101ALI20241112BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20241112BHJP
   G01N 33/48 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12M1/28 ZNA
A61J1/05 353
G01N33/48 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024513115
(86)(22)【出願日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2023032121
(87)【国際公開番号】W WO2024070504
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2022156247
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホセイン エムディ シャハダット
(72)【発明者】
【氏名】駒井 邦哉
(72)【発明者】
【氏名】内山 嵩也
(72)【発明者】
【氏名】井上 智雅
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/201612(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/142375(WO,A1)
【文献】特表2014-528719(JP,A)
【文献】特表2016-518827(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109750087(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112359091(CN,A)
【文献】国際公開第2020/132747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68-6897
C12M
G01N 33/48
C12N 15/
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Pubmed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗凝固剤(A)と、
二糖類、二糖類の誘導体、多糖類又は多糖類の誘導体である化合物(B)と、
ポリエチレンオキサイド又はポリエチレングリコールであるポリエーテル化合物(C)とを含み、
前記化合物(B)が、二糖類と、多糖類又は多糖類の誘導体とを含み、
前記ポリエーテル化合物(C)の含有量の、前記化合物(B)の含有量に対する重量比が、0.01以上5以下である、血液保存用組成物。
【請求項2】
前記化合物(B)100重量%中、前記二糖類の含有量が、10重量%以上80重量%以下である、請求項1に記載の血液保存用組成物。
【請求項3】
前記化合物(B)が、前記多糖類を含み、
前記化合物(B)100重量%中、前記多糖類の含有量が、10重量%以上90重量%以下である、請求項1又は2に記載の血液保存用組成物。
【請求項4】
前記化合物(B)が、前記多糖類の誘導体を含み、
前記化合物(B)100重量%中、前記多糖類の誘導体の含有量が、10重量%以上90重量%以下である、請求項1又は2に記載の血液保存用組成物。
【請求項5】
前記化合物(B)が、トレハロース又はスクロースと、デキストラン又はヒドロキシエチルスターチとを含む、請求項1又は2に記載の血液保存用組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテル化合物(C)が、ポリエチレングリコールを含む、請求項1又は2に記載の血液保存用組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が、500以上25000以下である、請求項6に記載の血液保存用組成物。
【請求項8】
アポトーシス阻害剤(D)を含む、請求項1又は2に記載の血液保存用組成物。
【請求項9】
前記アポトーシス阻害剤(D)が、Q-VD-OPH、Z-DEVD-FMK、又はZ-VAD-FMKを含む、請求項に記載の血液保存用組成物。
【請求項10】
無機塩(E)を含む、請求項1又は2に記載の血液保存用組成物。
【請求項11】
前記無機塩(E)の含有量の、前記化合物(B)の含有量に対する重量比が、0.01以上10以下である、請求項10に記載の血液保存用組成物。
【請求項12】
水を含む、請求項1又は2に記載の血液保存用組成物。
【請求項13】
血液採取容器本体と、
前記血液採取容器本体内に収容された血液保存用組成物とを備え、
前記血液保存用組成物が、請求項1又は2に記載の血液保存用組成物である、血液採取容器。
【請求項14】
前記血液採取容器本体内に、血漿分離材が収容されていない、請求項13に記載の血液採取容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液と混合されて用いられる血液保存用組成物に関する。また、本発明は、上記血液保存用組成物を用いた血液採取容器に関する。
【背景技術】
【0002】
血液には、遊離DNA(cell free DNA,cfDNA)が含まれる。悪性腫瘍を有する人及び感染症に罹患した人などの体液中には、健常者と比べて、cfDNAが高濃度で存在することが知られている。また、近年、がん及び遺伝子疾患等の領域において、cfDNAを検体とする検査が行われている。cfDNAを検体とする検査は、患者から病変組織を採取して行う検査と比べて、患者への負担が小さい。
【0003】
臨床検査では、一般に、以下の(1)~(3)の手順で検査が行われる。(1)抗凝固剤を含む組成物が収容された血液採取容器に血液を採取する。(2)血液が採取された血液採取容器を遠心分離等することにより、血球層と血漿層とに分離する。(3)血漿を回収し、血漿に含まれるcfDNAを検体とする検査を行う。
【0004】
下記の特許文献1には、EDTAと特定の尿素とグリシンとを含む組成物が容器内に収容された血液採取デバイスを用いて、cfDNAを安定的に回収する方法が記載されている。
【0005】
下記の特許文献2には、ポリエチレングリコール(PEG)及びEDTA等を含む組成物が容器内に収容された採血管を用いて、cfDNAを保存する方法が記載されている。特許文献2には、上記組成物が血液を安定化させることにより、血漿中へのゲノムDNAの混入が抑えられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2013/123030A2
【文献】WO2017/201612A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
臨床現場では、患者から採血した検体が検査に供されるまでに、ある程度の時間が経過することがある。例えば、検体を検査施設に輸送したり、検査施設において検査待ちの検体が多量に存在していたりする場合には、採血してから検体が検査に供されるまでに、数日程度の時間が経過することがある。そのため、臨床現場では、血液採取容器中にて抗凝固剤を含む組成物と血液とが混合された状態で数日間保存されたり、血球層と血漿層とが分離された後に数日程度保存されたりすることがある。
【0008】
抗凝固剤を含む従来の組成物が収容された血液採取容器では、保存中に、血球細胞が破壊されたり、死滅したりして、白血球等の血球細胞からゲノムDNA(gDNA)が細胞外へ漏出し、血球細胞由来DNAが血漿層中に混入することがある。cfDNAを検体とする検査では、血球細胞由来DNAが血漿層中に比較的多量に混入すると、検査結果が変動しやすい。
【0009】
また、抗凝固剤を含む従来の組成物が収容された血液採取容器では、血漿中の水分が血球細胞によって徐々に吸収されるため、保存前の血漿量と比べて保存後の血漿量が減少することがある。この場合には、検査又は再検査に必要な血漿量が確保できなくなる可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入を抑えることができ、かつ保存前の血漿量と比べて保存後の血漿量の減少を抑えることができる血液保存用組成物を提供することである。また、本発明は、上記血液保存用組成物を用いた血液採取容器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面では、抗凝固剤(A)と、二糖類、二糖類の誘導体、多糖類又は多糖類の誘導体である化合物(B)と、ポリエチレンオキサイド又はポリエチレングリコールであるポリエーテル化合物(C)とを含む、血液保存用組成物が提供される。
【0012】
本発明に係る血液保存用組成物のある特定の局面では、前記化合物(B)が、二糖類と、多糖類又は多糖類の誘導体とを含む。
【0013】
本発明に係る血液保存用組成物のある特定の局面では、前記化合物(B)が、トレハロース又はスクロースと、デキストラン又はヒドロキシエチルスターチとを含む。
【0014】
本発明に係る血液保存用組成物のある特定の局面では、前記ポリエーテル化合物(C)が、ポリエチレングリコールを含む。
【0015】
本発明に係る血液保存用組成物のある特定の局面では、前記血液保存用組成物は、アポトーシス阻害剤(D)を含む。
【0016】
本発明に係る血液保存用組成物のある特定の局面では、前記アポトーシス阻害剤(D)が、Q-VD-OPH、Z-DEVD-FMK、又はZ-VAD-FMKを含む。
【0017】
本発明に係る血液保存用組成物のある特定の局面では、前記血液保存用組成物は、無機塩(E)を含む。
【0018】
本発明に係る血液保存用組成物のある特定の局面では、前記血液保存用組成物は、水を含む。
【0019】
本発明の広い局面では、血液採取容器本体と、前記血液採取容器本体内に収容された血液保存用組成物とを備え、前記血液保存用組成物が、上述した血液保存用組成物である、血液採取容器が提供される。
【0020】
本発明に係る血液採取容器のある特定の局面では、前記血液採取容器本体内に、血漿分離材が収容されていない。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る血液保存用組成物は、抗凝固剤(A)と、二糖類、二糖類の誘導体、多糖類又は多糖類の誘導体である化合物(B)と、ポリエチレンオキサイド又はポリエチレングリコールであるポリエーテル化合物(C)とを含む。本発明に係る血液保存用組成物では、上記の構成が備えられているので、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入を抑えることができ、かつ保存前の血漿量と比べて保存後の血漿量の減少を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
(血液保存用組成物)
本発明に係る血液保存用組成物は、抗凝固剤(A)と、二糖類、二糖類の誘導体、多糖類又は多糖類の誘導体である化合物(B)と、ポリエチレンオキサイド又はポリエチレングリコールであるポリエーテル化合物(C)とを含む。
【0025】
本発明に係る血液保存用組成物では、上記の構成が備えられているので、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入を抑えることができ、かつ保存前の血漿量と比べて保存後の血漿量の減少を抑えることができる。
【0026】
本発明に係る血液保存用組成物は、血液と混合されて用いられる。本発明に係る血液保存用組成物では、化合物(B)及びポリエーテル化合物(C)が血球細胞の細胞膜を良好に保護するため、血球細胞の安定性を高めることができる。従って、血球細胞由来DNAの細胞外への漏出を抑えることができる。本発明では、例えば、上記血液保存用組成物と血液とが混合された状態にて室温(4℃~40℃)で約1週間保存されたとしても、血漿中に混入する血球細胞由来DNA量を低く抑えることができる。
【0027】
また、本発明では、血球層と血漿層とが分離された後に室温(4℃~40℃)で約1週間保管されたとしても、血漿中の水分が血球細胞に吸収されにくくすることができる。そのため、保存前の血漿量(血球層と血漿層とに分離した直後の血漿量)と比べて、保存後の血漿量の減少を抑えることができる。
【0028】
以下、本発明に係る血液保存用組成物の詳細などを説明する。なお、本明細書において、血液保存用組成物に含まれる各成分の含有量とは、血液保存用組成物中に含まれる全ての該成分の含有量の合計を意味する。例えば、抗凝固剤(A)の含有量とは、血液保存用組成物中の全ての抗凝固剤(A)の合計含有量を意味する。
【0029】
<抗凝固剤(A)>
上記血液保存用組成物は、抗凝固剤(本明細書において、抗凝固剤(A)と記載することがある)を含む。抗凝固剤(A)として、従来公知の抗凝固剤を用いることができる。抗凝固剤(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
抗凝固剤(A)としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの金属塩、ヘパリン、ヘパリンの金属塩、クエン酸及びクエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
抗凝固性能を良好に発揮させる観点から、抗凝固剤(A)は、EDTA、EDTAの金属塩、ヘパリン、ヘパリンの金属塩又はクエン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0032】
上記血液保存用組成物中の抗凝固剤(A)の含有量は、抗凝固性能を発揮させることができる限り特に限定されない。
【0033】
上記血液保存用組成物が水を含む場合、上記血液保存用組成物100重量%中、抗凝固剤(A)の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下である。上記抗凝固剤(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、抗凝固性能を良好に発揮させることができる。
【0034】
上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合、上記血液保存用組成物100重量%中、抗凝固剤(A)の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記抗凝固剤(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、抗凝固性能を良好に発揮させることができる。
【0035】
<二糖類、二糖類の誘導体、多糖類又は多糖類の誘導体である化合物(B)>
上記血液保存用組成物は、二糖類、二糖類の誘導体、多糖類又は多糖類の誘導体である化合物(本明細書において、化合物(B)と記載することがある)を含む。化合物(B)は、二糖類、二糖類の誘導体、多糖類及び多糖類の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。化合物(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
化合物(B)は、水溶性化合物であることが好ましい。化合物(B)における「水溶性」とは、25℃の水100gに、0.5g以上溶解することを意味する。
【0037】
上記二糖類としては、スクロース、ラクトース、マルトース、ラクチトール及びトレハロース等が挙げられる。上記二糖類は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記二糖類の誘導体としては、トレハロース6-リン酸等が挙げられる。上記二糖類の誘導体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記多糖類としては、セルロース、及びデキストラン等が挙げられる。上記多糖類は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記多糖類の誘導体としては、ヒドロキシエチルスターチ及びヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。上記多糖類の誘導体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記多糖類又は上記多糖類の誘導体の数平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは10万以上、好ましくは400万以下、より好ましくは100万以下である。上記数平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0042】
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたプルラン換算での数平均分子量を意味する。
【0043】
化合物(B)は、二糖類、多糖類又は多糖類の誘導体である化合物であることが好ましく、二糖類又は多糖類である化合物であることがより好ましい。
【0044】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、化合物(B)は、二糖類と、多糖類又は多糖類の誘導体とを含むことが好ましく、二糖類と、多糖類とを含むことがより好ましい。上記血液保存用組成物は、二糖類と、多糖類又は多糖類の誘導体とを含むことが好ましく、二糖類と、多糖類とを含むことがより好ましい。
【0045】
本発明の効果を更に一層効果的に発揮する観点からは、上記二糖類は、トレハロース又はスクロースであることが好ましく、トレハロースであることがより好ましい。また、上記多糖類は、デキストランであることが好ましい。また、上記多糖類の誘導体は、ヒドロキシエチルスターチ又はヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましく、ヒドロキシエチルスターチであることがより好ましい。本発明の効果を更に一層効果的に発揮する観点からは、化合物(B)は、トレハロース又はスクロースと、デキストラン又はヒドロキシエチルスターチとを含むことが好ましく、トレハロース又はスクロースと、デキストランとを含むことがより好ましく、トレハロースと、デキストランとを含むことが更に好ましい。本発明の効果を更に一層効果的に発揮する観点からは、上記血液保存用組成物は、トレハロース又はスクロースと、デキストラン又はヒドロキシエチルスターチとを含むことが好ましく、トレハロース又はスクロースと、デキストランとを含むことがより好ましく、トレハロースと、デキストランとを含むことが更に好ましい。
【0046】
化合物(B)100重量%中、上記二糖類の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。上記二糖類の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0047】
化合物(B)100重量%中、上記多糖類の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記多糖類の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0048】
化合物(B)100重量%中、上記多糖類の誘導体の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記多糖類の誘導体の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0049】
上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合、上記血液保存用組成物100重量%中、化合物(B)の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。上記化合物(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0050】
上記血液保存用組成物が水を含む場合、上記血液保存用組成物100重量%中、化合物(B)の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。上記化合物(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0051】
<ポリエチレンオキサイド又はポリエチレングリコールであるポリエーテル化合物(C)>
上記血液保存用組成物は、ポリエチレンオキサイド又はポリエチレングリコールであるポリエーテル化合物(本明細書において、ポリエーテル化合物(C)と記載することがある)を含む。ポリエーテル化合物(C)は、ポリエチレンオキサイドであってもよく、ポリエチレングリコールであってもよく、ポリエチレンオキサイドとポリエチレングリコールとの双方であってもよい。ポリエーテル化合物(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
ポリエーテル化合物(C)は、水溶性ポリエーテル化合物であることが好ましい。ポリエーテル化合物(C)における「水溶性」とは25℃の水100gに、0.5g以上溶解することを意味する。
【0053】
上記ポリエチレンオキサイドの数平均分子量は、好ましくは600以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、好ましくは20000以下、より好ましくは8000以下である。上記数平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0054】
上記ポリエチレングリコールの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、特に好ましくは3000以上、好ましくは25000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは6000以下である。上記数平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0055】
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたプルラン換算での数平均分子量を意味する。
【0056】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、ポリエーテル化合物(C)は、ポリエチレングリコールを含むことが好ましく、ポリエチレングリコールであることがより好ましい。上記血液保存用組成物は、ポリエチレングリコールを含むことが好ましい。
【0057】
ポリエーテル化合物(C)の含有量の、化合物(B)の含有量に対する重量比(ポリエーテル化合物(C)の含有量/化合物(B)の含有量)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは5以下、より好ましくは1以下である。上記重量比(ポリエーテル化合物(C)の含有量/化合物(B)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0058】
上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合、上記血液保存用組成物100重量%中、ポリエーテル化合物(C)の含有量は、好ましくは5.0重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。上記ポリエーテル化合物(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0059】
上記血液保存用組成物が水を含む場合、上記血液保存用組成物100重量%中、ポリエーテル化合物(C)の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、更に好ましくは5.0重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。上記ポリエーテル化合物(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0060】
<アポトーシス阻害剤(D)>
上記血液保存用組成物は、アポトーシス阻害剤(本明細書において、アポトーシス阻害剤(D)と記載することがある)を含むことが好ましい。アポトーシス阻害剤(D)を用いることにより、保存中の血球細胞の細胞死が効果的に抑えられるので、血球細胞由来DNAの細胞外への漏出をより一層効果的に抑えることができる。アポトーシス阻害剤(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
アポトーシス阻害剤(D)としては、Q-VD-OPH、Z-DEVD-FMK及びZ-VAD-FMK等が挙げられる。
【0062】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、アポトーシス阻害剤(D)は、カスパーゼ阻害剤であることが好ましく、Q-VD-OPH、Z-DEVD-FMK、又はZ-VAD-FMKを含むことがより好ましく、Q-VD-OPHを含むことが更に好ましく、Q-VD-OPHであることが特に好ましい。上記血液保存用組成物は、Q-VD-OPH、Z-DEVD-FMK、又はZ-VAD-FMKを含むことが好ましく、Q-VD-OPHを含むことがより好ましい。
【0063】
アポトーシス阻害剤(D)の含有量の、化合物(B)の含有量に対する重量比(アポトーシス阻害剤(D)の含有量/化合物(B)の含有量)は、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.0005以上、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.01以下である。上記重量比(アポトーシス阻害剤(D)の含有量/化合物(B)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入をより一層抑えることができる。
【0064】
上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合、上記血液保存用組成物100重量%中、アポトーシス阻害剤(D)の含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。上記アポトーシス阻害剤(D)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入をより一層抑えることができる。
【0065】
上記血液保存用組成物が水を含む場合、上記血液保存用組成物100重量%中、アポトーシス阻害剤(D)の含有量は、好ましくは0.0001重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、更に好ましくは0.005重量%以上、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下である。上記アポトーシス阻害剤(D)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入をより一層抑えることができる。
【0066】
<無機塩(E)>
上記血液保存用組成物は、無機塩(本明細書において、無機塩(E)と記載することがある)を含むことが好ましい。無機塩(E)を用いることにより、血液保存用組成物と血液との混合液の浸透圧を好適な範囲にすることができるので、保存中の血球細胞の細胞死が効果的に抑えられる。このため、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入をより一層抑えることができる。無機塩(E)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
無機塩(E)としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸塩、炭酸塩等、及びホウ酸塩が挙げられる。上記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム及びリン酸二カリウム等が挙げられる。上記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸アンモニウム等が挙げられる。上記ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。
【0068】
無機塩(E)の含有量の、化合物(B)の含有量に対する重量比(無機塩(E)の含有量/化合物(B)の含有量)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。上記重量比(無機塩(E)の含有量/化合物(B)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入をより一層抑えることができる。
【0069】
上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合、上記血液保存用組成物100重量%中、無機塩(E)の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは5.0重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記無機塩(E)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入をより一層抑えることができる。
【0070】
上記血液保存用組成物が水を含む場合、上記血液保存用組成物100重量%中、無機塩(E)の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5.0重量%以下である。上記無機塩(E)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血漿層中への血球細胞由来DNAの混入をより一層抑えることができる。
【0071】
<水>
上記血液保存用組成物は、水を含まないか又は含む。上記血液保存用組成物は、水を含んでいてもよく、実質的に水を含んでいなくてもよい。実質的に水を含まないとは、意図して水を添加していないことを意味し、例えば、原料中に含まれる微量の水(例えば水和物として存在する水や、不純物として存在する水)や、大気中から混入する水については、許容範囲にあるという意味である。具体的には、上記血液保存用組成物が実質的に水を含まないとは、上記血液保存用組成物100重量%中、水の含有量が0重量%以上5重量%以下であることを意味し、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。上記血液保存用組成物が水を含む場合には、例えば、該血液保存用組成物を液体の状態で血液採取容器本体内に収容することができる。上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合には、例えば、該血液保存用組成物を粉末の状態で血液採取容器本体内に収容することができる。
【0072】
上記血液保存用組成物が水を含む場合に、上記血液保存用組成物100重量%中、水の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
【0073】
<他の成分>
上記血液保存用組成物は、上述した成分(抗凝固剤(A)、化合物(B)、ポリエーテル化合物(C)、アポトーシス阻害剤(D)、無機塩(E)及び水)以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0074】
上記他の成分としては、単糖類、アミノ酸、ネクロトーシス阻害剤、抗酸化物質及び代謝阻害剤等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
<血液保存用組成物の他の詳細>
上記血液保存用組成物は、25℃で液状であってもよく、粉末状であってもよい。上記血液保存用組成物は、乾燥物であってもよく、凍結乾燥物であってもよい。
【0076】
上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合、上記血液保存用組成物100重量%中、抗凝固剤(A)と化合物(B)とポリエーテル化合物(C)との合計含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0077】
上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合、上記血液保存用組成物100重量%中、抗凝固剤(A)と化合物(B)とポリエーテル化合物(C)と無機塩(E)との合計含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、より一層好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。上記合計含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。なお、上記血液保存用組成物が実質的に水を含まない場合、上記血液保存用組成物100重量%中、抗凝固剤(A)と化合物(B)とポリエーテル化合物(C)と無機塩(E)との合計含有量は、100重量%以下であり、100重量%未満であってもよく、99重量%以下であってもよく、95重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよい。
【0078】
上記血液保存用組成物が水を含む場合、上記血液保存用組成物100重量%中、抗凝固剤(A)と化合物(B)とポリエーテル化合物(C)と水との合計含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0079】
上記血液保存用組成物が水を含む場合、上記血液保存用組成物100重量%中、抗凝固剤(A)と化合物(B)とポリエーテル化合物(C)と無機塩(E)と水との合計含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、より一層好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。上記合計含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。なお、上記血液保存用組成物が水を含む場合、上記血液保存用組成物100重量%中、抗凝固剤(A)と化合物(B)とポリエーテル化合物(C)と無機塩(E)と水との合計含有量は、100重量%以下であり、100重量%未満であってもよく、99重量%以下であってもよく、95重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよい。
【0080】
(血液採取容器)
本発明に係る血液採取容器は、血液採取容器本体と、上記血液採取容器本体内に収容された血液保存用組成物とを備え、上記血液保存用組成物が、上述した血液保存用組成物である。
【0081】
図1は、本発明の一実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【0082】
図1に示す血液採取容器5は、血液採取容器本体1と、血液保存用組成物2と、栓体3とを備える。血液採取容器本体1は、一端に開口を有し、他端に閉じられている底部を有する。血液保存用組成物2は、血液採取容器5を正立状態としたときに、血液採取容器本体1の底部に収容されている。血液保存用組成物2は、抗凝固剤(A)と化合物(B)とポリエーテル化合物(C)とを含む。栓体3は、血液採取容器本体1の開口に挿入されている。
【0083】
<血液採取容器本体>
上記血液採取容器本体の形状としては、特に限定されない。上記血液採取容器本体は、有底の管状容器であることが好ましい。
【0084】
上記血液採取容器本体の素材は特に限定されない。上記血液採取容器本体の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ-アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂;酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂;ソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス、石英ガラス等のガラスが挙げられる。上記血液採取容器本体の素材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
<栓体>
上記血液採取容器は、栓体を備えることが好ましい。上記栓体は、血液採取容器本体の開口に取り付けられていることが好ましい。上記栓体として、従来公知の栓体を用いることができる。上記栓体は、血液採取容器本体の開口に、気密的かつ液密的に取付けることが可能な素材、形状からなる栓体であることが好ましい。上記栓体は、採血針が刺通され得るように構成されていることが好ましい。
【0086】
上記栓体としては、血液採取容器本体の開口に嵌合する形状を有する栓体、シート状のシール栓体等が挙げられる。
【0087】
また、上記栓体は、ゴム栓等の栓本体と、プラスチック等で構成されたキャップ部材とを備える栓体であってもよい。この場合には、血液採取後に、血液採取容器本体の開口から栓体を引き抜く際に、血液が人体と接触するリスクを抑えることができる。
【0088】
上記栓体(又は上記栓本体)の材料としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、ゴム、金属箔等が挙げられる。上記ゴムとしては、ブチルゴム、及びハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。上記金属箔としては、アルミニウム箔等が挙げられる。密封性を高める観点からは、上記栓体の材料は、ブチルゴムであることが好ましい。上記栓体(又は上記栓本体)は、ブチルゴム栓であることが好ましい。
【0089】
<血液採取容器の他の詳細>
上記血液採取容器は、所定量の血液が採取される血液採取容器である。上記血液の上記所定量は、血液採取容器のサイズ及び内圧等により適宜変更される。上記血液の上記所定量は、1mL以上であってもよく、2mL以上であってもよく、4mL以上であってもよく、12mL以下であってもよく、11mL以下であってもよく、10mL以下であってもよい。
【0090】
上記血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を上記血液採取容器内に採取して、上記生理食塩水と上記血液保存用組成物とが混合された混合液を得る。例えば、5mLの血液が採取される血液採取容器では、5mLの生理食塩水を該血液採取容器内に採取して、転倒混和するなどして、上記生理食塩水と上記血液保存用組成物とを混合し、混合液を得る。上記生理食塩水と上記血液保存用組成物とが混合された上記混合液の浸透圧は、好ましくは300mOsm/L以上、より好ましくは330mOsm/L以上、更に好ましくは350mOsm/L以上、好ましくは3000mOsm/L以下、より好ましくは2000mOsm/L以下、更に好ましくは1500mOsm/L以下である。上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、白血球への過度なストレスが抑えられ、白血球をより一層安定化させることができるので、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0091】
上記混合液の浸透圧は、浸透圧計(例えば、アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定される。
【0092】
上記血液採取容器本体内に収容されている血液保存用組成物の量は、血液採取容器本体のサイズ、及び採取される血液量等により適宜変更される。上記血液保存用組成物が25℃で液状である場合に、上記血液採取容器本体内に収容されている血液保存用組成物の量は、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.5mL以上、更に好ましくは0.7mL以上、好ましくは5mL以下、より好ましくは3mL以下、更に好ましくは2.5mL以下である。上記血液保存用組成物の量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液が過度に希釈されることなく、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0093】
上記血液保存用組成物が25℃で液状である場合に、上記血液採取容器では、収容されている上記血液保存用組成物1mLに対して、血液が3mL以上で採取されることが好ましく、4mL以上で採取されることがより好ましく、11mL以下で採取されることが好ましく、10mL以下で採取されることがより好ましい。この場合には、血液が過度に希釈されることなく、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0094】
上記血液採取容器では、上記血液採取容器本体内に、血漿分離材が収容されていないことが好ましい。上記血漿分離材は、遠心分離時に血漿層と血球層との間に移動して隔壁を形成する組成物(血漿分離用組成物)又は冶具(血漿分離用冶具)である。上記血漿分離用組成物としては、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含む組成物(例えば、WO2010/053180A1に記載の組成物)等が挙げられる。上記血漿分離用冶具としては、例えば、WO2010/132783A1等に記載の機械的セパレータ等が挙げられる。上記血液保存用組成物が収容された上記血液採取容器では、保存前の血漿量と比べて保存後の血漿量の減少を抑えることができるので、血漿分離材が備えられていなくてもよい。
【0095】
上記血液採取容器は、採血管であることが好ましい。上記血液採取容器本体は、採血管本体であることが好ましい。
【0096】
上記血液採取容器は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0097】
抗凝固剤(A)と化合物(B)とポリエーテル化合物(C)と、必要に応じて他の成分とを混合して、血液保存用組成物を得る。得られた血液保存用組成物を血液採取容器本体内に収容する。
【0098】
上記血液採取容器の内圧は特に限定されない。上記血液採取容器の内圧は、減圧されていることが好ましい。上記血液採取容器が減圧容器である場合には、所定量の血液を簡便に血液採取容器に採取することができる。上記血液採取容器は、内部が排気された上で、上記栓体によって密閉された真空採血管として用いることもできる。真空採血管である場合、採血者の技術差によらず一定量の血液採取を簡便に行うことができる。
【0099】
細菌感染を防止する観点から、上記血液採取容器の内部はISO又はJISの基準に則って滅菌されていることが好ましい。
【0100】
(血漿の分離方法)
上記血液採取容器を用いて、血液から血漿を分離することができる。上記血漿の分離方法は、上記血液採取容器内に血液を採取する工程を備えることが好ましく、血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離する工程を備えることが好ましい。
【0101】
上記血漿の分離方法では、上記血液を採取する工程と上記遠心分離する工程との間に、採取された血液と上記血液保存用組成物とを混合する工程を備えることが好ましい。採取された血液と上記血液保存用組成物とを混合する方法としては、転倒混和等が挙げられる。
【0102】
上記遠心分離する工程における遠心分離条件は、特に限定されない。上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で10分間以上120分間以下で遠心分離する条件等が挙げられる。
【0103】
(細胞外遊離核酸の分離方法及び細胞外小胞の分離方法)
上記血液採取容器を用いて、血液から細胞外遊離核酸を分離することができる。上記細胞外遊離核酸の分離方法は、上記血液採取容器内に血液を採取する工程を備えることが好ましく、上記血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離して、血液から血漿を分離する工程を備えることが好ましく、分離された上記血漿から、細胞外遊離核酸を分離する工程を備えることが好ましい。
【0104】
上記血液採取容器を用いて、血液から細胞外小胞を分離することができる。上記細胞外小胞の分離方法は、上記血液採取容器内に血液を採取する工程を備えることが好ましく、上記血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離して、血液から血漿を分離する工程を備えることが好ましく、分離された上記血漿から、細胞外小胞を分離する工程を備えることが好ましい。
【0105】
上記細胞外遊離核酸の分離方法及び上記細胞外小胞の分離方法では、上記血液を採取する工程と上記遠心分離する工程との間に、採取された血液と上記血液保存用組成物とを混合する工程を備えることが好ましい。採取された血液と上記血液保存用組成物とを混合する方法としては、転倒混和等が挙げられる。
【0106】
上記遠心分離する工程における遠心分離条件は、特に限定されない。上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で10分間以上120分間以下で遠心分離する条件等が挙げられる。
【0107】
上記細胞外遊離核酸を分離する工程では、従来公知の方法を用いて、血漿から細胞外遊離核酸を分離することができる。上記細胞外遊離核酸としては、cell free DNA(cfDNA)、cell free RNA(cfRNA)等が挙げられる。上記血漿から細胞外遊離核酸を分離する方法としては、市販の核酸精製キットを用いる方法等が挙げられる。市販の核酸精製キットを用いることで、血漿から細胞外遊離核酸を簡便に分離することができる。核酸精製キットの市販品としては、QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit(QIAGEN社製)、QIAamp MinElute ccfDNA Kits(QIAGEN社製)及びMagMAX Cell-Free DNA Isolation Kit(Applied biosystems社製)等が挙げられる。
【0108】
上記細胞外小胞を分離する工程では、従来公知の方法を用いて、血漿から細胞外小胞を分離することができる。
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0110】
血液保存用組成物の材料として、以下を用意した。
【0111】
(抗凝固剤(A))
エチレンジアミン四酢酸二カリウム二水和物(EDTA2K・2HO)
【0112】
(化合物(B))
トレハロース
スクロース
デキストラン(数平均分子量:37500、富士フイルム和光純薬社製「Dextran40000」)
ヒドロキシエチルスターチ(数平均分子量:約20000、Santa Cruz Biotechnology Inc.社製「Hydroxyethyl starch」)
【0113】
(ポリエーテル化合物(C))
ポリエチレングリコール(1)(数平均分子量:3000、富士フイルム和光純薬社製「ポリエチレングリコール 4,000」)
ポリエチレングリコール(2)(数平均分子量:600、富士フイルム和光純薬社製「ポリエチレングリコール600」)
ポリエチレングリコール(3)(数平均分子量:20000、富士フイルム和光純薬社製「ポリエチレングリコール20,000」)
【0114】
(アポトーシス阻害剤(D))
Q-VD-OPH(Cayman Chemical Co.社製「Q-VD-OPH」)
Z-DEVD-FMK(コスモバイオ社製「Z-DEVD-FMK」)
Z-VAD-FMK(コスモバイオ社製「Z-VAD-FMK」)
【0115】
(無機塩(E))
塩化ナトリウム
【0116】
【0117】
(実施例1)
血液保存用組成物の作製:
表1に記載の配合割合で各成分を混合し、血液保存用組成物(水溶液)を作製した。
【0118】
血液採取容器の作製:
血液採取容器本体として、長さ100mm、開口部の内径14mmのポリエチレンテレフタレート有底管(PET有底管)を用意した。PET有底管に、得られた血液保存用組成物1.0mLを収容した。次いで、血液採取容器内部を50kPaに減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにして血液5.0mLを採取及び保存するための血液採取容器を作製した。
【0119】
(実施例2~5、参考例6,7、実施例8~10及び比較例1,2)
血液保存用組成物の配合組成を表1~3に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、血液保存用組成物及び血液採取容器を作製した。
【0120】
(比較例3)
抗凝固剤(EDTA2K・2HO)33重量部を、水67重量部に溶解して、抗凝固剤含有液を得た。また、血液採取容器本体として、長さ100mm、開口部の内径14mmのポリエチレンテレフタレート有底管(PET有底管)を用意した。得られた抗凝固剤含有液26mgを、血液採取容器本体の内壁面に塗布し、乾燥させた。次いで、血液採取容器内部を、血液採取量が5.0mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにして血液採取容器を作製した。
【0121】
(評価)
(1)血漿層中への血球細胞由来DNAの混入(血漿中のDNA濃度)
実施例1~5、参考例6,7、実施例8~10及び比較例1,2では、得られた血液採取容器に血液5.0mLを採取し、血液と血液保存用組成物(水溶液)とを転倒混和により混合した。比較例3では、得られた血液採取容器に血液5.0mLを採取し、血液と血液採取容器本体の内壁面に付着したEDTA2Kとを転倒混和により混合した。次いで、混合液が収容された血液採取容器を25℃の環境下で保存した。保存から8日後に、上記混合液が収容された血液採取容器を1900Gで15分間遠心分離し、血漿層(上方)と血球層(下方)とに分離した。次いで、血液採取容器から血漿を回収した。cfDNA精製キット(QIAGEN社製「QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit」)を用いて、回収した血漿に含まれるDNAを精製した。なお、DNAの精製操作は、血液採取容器から血漿を回収した日に実施した。
【0122】
精製後の抽出液中のDNA濃度を、Qubit dsDNA HS Assay kit(Invitrogen社製)を用いて測定した。次いで、下記式により、DNA濃度(血漿1mLあたりに含まれるDNAの含量)を算出した。
【0123】
DNA濃度(ng/血漿1mL)=[A]×[B]/[C]
【0124】
[A]:精製後の抽出液中のDNA濃度の測定値(ng/mL)
[B]:精製後の抽出液の全用量(mL)
[C]:DNA精製に使用した血漿の用量(mL)
【0125】
比較例3で算出された上記DNA濃度(ng/血漿1mL)に対する、実施例1~5、参考例6,7、実施例8~10及び比較例1,2で算出された上記DNA濃度(ng/血漿1mL)の割合(比較例3に対する相対割合)を、下記式により求めた。
【0126】
比較例3に対する相対割合(%)=[P]/[Q]×100
【0127】
[P]:実施例1~5、参考例6,7、実施例8~10及び比較例1,2で算出されたDNA濃度(ng/血漿1mL)
[Q]:比較例3で算出されたDNA濃度(ng/血漿1mL)
【0128】
上記相対割合が小さいほど、血球細胞由来DNAの漏出(細胞外へのゲノムDNAの漏出)が抑えられていることを意味する。なお、表中の結果は、2名の血液でそれぞれ試験したときの平均値である。
【0129】
(2)保存前後の血漿量の変化率
実施例1~5、参考例6,7、実施例8~10及び比較例1,2では、得られた血液採取容器に血液5.0mLを採取し、血液と血液保存用組成物(水溶液)とを転倒混和により混合した。比較例3では、得られた血液採取容器に血液5.0mLを採取し、血液と血液採取容器本体の内壁面に付着したEDTA2Kとを転倒混和により混合した。混合液が収容された血液採取容器を1900Gで15分間遠心した。遠心後、血液採取容器内の血漿層の長さ(高さ)をノギスにより測定した。次いで、血球と血漿とを転倒混和により混合し、血液採取容器を25℃の環境下で7日間保存した。7日間の保管後、血液採取容器を1900Gで15分間遠心した。遠心後、血液採取容器内の血漿層の長さ(高さ)をノギスにより測定した。次いで、下記式により、保存前の血漿量に対する、保存後の血漿量の相対割合を算出した。また、保存前後の血漿量の変化率を下記の基準で評価した。なお、上記血漿層の長さは、2名の血液でそれぞれ試験したときの平均値である。
【0130】
保存後の血漿量の相対割合(%)=[X]/[Y]×100
【0131】
[X]:7日間保存後の血漿層の長さ(mm)
[Y]:保存前の血漿層の長さ(mm)
【0132】
<保存前後の血漿量の変化率の判定基準>
○:保存後の血漿量の相対割合が89%以上
×:保存後の血漿量の相対割合が89%未満
【0133】
構成及び結果を下記の表1~3に示す。なお、表中、抗凝固剤の濃度は、EDTA2K・2HOの濃度ではなく、EDTA2Kの濃度を意味する。それ以外の成分の含有量は、純分量である。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【符号の説明】
【0137】
1…血液採取容器本体
2…血液保存用組成物
3…栓体
5…血液採取容器
図1
【配列表】
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