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特許7586594半導体ベースの光通信システムにおける冗長性の改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】半導体ベースの光通信システムにおける冗長性の改善
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/032 20130101AFI20241112BHJP
   H04B 10/291 20130101ALI20241112BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20241112BHJP
   H04J 14/06 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
H04B10/032
H04B10/291
H04J14/02
H04J14/06
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020118088
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2021035046
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】16/540,743
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520096002
【氏名又は名称】サブコン、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ ジー.フォーサ
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0279910(US,A1)
【文献】特開2015-139098(JP,A)
【文献】米国特許第06301037(US,B1)
【文献】特開2014-239309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/032
H04B 10/291
H04J 14/02
H04J 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器であって、
波長分割多重化回(WDM回路)と、
第1の動作波長に対応している第1の半導体光増幅器(第1のSOA)と、
前記第1の動作波長と異なる第2の動作波長に対応している第2の半導体光増幅器(第2のSOAとを備え、
前記WDM回路は、
(i)前記第1の動作波長において送信機から光信号を受信し、受信した前記光信号を、増幅を目的として前記第1のSOAへと供給し、前記第1の動作波長において前記光信号を受信することは、前記送信機の少なくとも1つのプロセッサが、前記第2のSOAで故障が発生したかどうかを判定し、前記故障が発生したという前記判定に基づいて、前記送信機が、前記第1の動作波長において前記光信号を伝送することに基づく、又は
(ii)前記第2の動作波長において前記送信機から前記光信号を受信し、受信した前記光信号を、増幅を目的として前記第2のSOAへと供給し、前記第2の動作波長において前記光信号を受信することは、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記第1のSOAで故障が発生したかどうかを判定し、前記故障が発生したという前記判定に基づいて、前記送信機が、前記第2の動作波長において前記光信号を伝送することに基づく、ように構成されている、
機器。
【請求項2】
第3の動作波長において動作するように構成された、第3の半導体光増幅器(第3のSOAを更に備え、
前記WDM回路は、(i)前記第3の動作波長において前記光信号を受信し、(ii)受信した前記光信号を、増幅を目的として前記第3のSOAへと供給するように更に構成されている、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
(i)前記第1のSOAが前記光信号を増幅するとき、前記第1のSOAがオンにされ、前記第2のSOAがオフにされるか、又は(ii)前記第2のSOAが前記光信号を増幅するとき、前記第2のSOAがオンにされ、前記第1のSOAがオフにされる、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
前記第1又は第2のSOAで故障が発生したかどうかを判定することが、前記第1又は第2のSOAが故障モードにあるか、又は電流が印加又は引き込まれていないかを判定するように、前記少なくとも1つのプロセッサを更に構成することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の機器。
【請求項5】
前記機器が光リピータである、請求項1からのいずれか一項に記載の機器。
【請求項6】
基板パッケージであって、
少なくとも1つの光コンバイナと、
少なくとも1つの光スイッチと、
前記少なくとも1つの光コンバイナ及び前記少なくとも1つの光スイッチに結合された、第1の半導体光増幅器(第1のSOA)と、
前記少なくとも1つの光コンバイナ及び前記少なくとも1つの光スイッチに結合された、第2の半導体光増幅器(第2のSOAとを備え、
前記少なくとも1つの光コンバイナ、前記少なくとも1つの光スイッチ、前記第1のSOA、及び前記第2のSOAは、前記基板パッケージ内に集積させており、
前記少なくとも1つの光スイッチは、増幅を目的として、光信号を前記第1のSOA又は前記第2のSOAへと供給するように構成され、
前記少なくとも1つの光コンバイナが偏波ビームコンバイナであり、前記少なくとも1つの光スイッチがアクティブ偏波回転子である、
基板パッケージ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光コンバイナ、前記少なくとも1つの光スイッチ、前記第1のSOA、及び前記第2のSOAの集積化がフォトニクス集積化によって実行され、前記フォトニクス集積化が、(i)InP集積化技術、(ii)Si集積化技術、(iii)Ge/Si集積化技術、及び(iv)異種集積化技術のうちの1つ又はそれ以上を含む、請求項に記載の基板パッケージ。
【請求項8】
前記光信号の増幅を目的として、前記第1のSOA又は前記第2のSOAを選択することが、(i)前記少なくとも1つの光スイッチを介して、前記第1のSOA又は前記第2のSOA間で切り替えること、及び/又は(ii)前記第1のSOA又は前記第2のSOAをオン又はオフにすることによって実行されている、請求項6又は7に記載の基板パッケージ。
【請求項9】
方法であって、
信号を光リピータへと伝送することであって、前記光リピータは、少なくとも第1の動作波長に対応している第1の半導体光増幅器(第1のSOA)及び前記第1の動作波長と異なる第2の動作波長に対応している第2の半導体光増幅器(第2のSOAを含み、前記第1のSOAは、送信機から前記第1の動作波長で送信された記光信号を増幅している、光信号を伝送することと、
前記送信機の少なくとも1つのプロセッサを介して、前記光リピータ内の前記第1のSOAが動作していないか、又は故障モードにあると判定することと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記第1のSOAで故障が発生したと判定することに基づいて、前記送信機が、前記第2の動作波長において前記光信号を伝送することにより前記第2のSOAを選択することと、
前記第2のSOAが前記光信号を増幅するように、前記第2の動作波長において記光信号を伝送することとを含む、方法。
【請求項10】
前記第2のSOAを選択することが、波長分割多重化(WDM)送信機を介して、前記第2の動作波長で前記光信号を伝送することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記光リピータが第3の動作波長に対応している第3の半導体光増幅器(第3のSOAを含み、前記方法が、
前記少なくとも1つのプロセッサを介して、前記光リピータ内の前記第2のSOAが動作していないか、又は故障モードにあると判定することと、
前記第3のSOAを選択することと、
前記第3のSOAが前記光信号を増幅するように、前記第3の動作波長において記光信号を伝送することとを更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、光通信システムの分野に関する。より詳細には、本開示は、半導体ベースの構成要素を含む光通信システムにおける冗長性を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
海底光通信システムなどの長距離光通信システムは一般に、散乱、吸収、及び屈曲を含む様々な要因から生じる信号減衰の影響を受けている。減衰を補償するために、これらの長距離システムは、送信機と受信機との間の伝送路に沿って間隔を置いて配置された、一連の光増幅器又は「リピータ」を備えている可能性がある。このリピータは、受信機で確実に検出ができるように、光信号を増幅している。複数のリピータは通常、光通信システムの長さに応じて、伝送路に沿って配置されている。
【0003】
長距離光通信システムで一般的に使用されている光増幅器の例としては、誘導ラマン散乱(stimulated Raman scattering:SRS)現象に基づいて光信号を増幅することを含むラマン増幅器と、レーザダイオードからの光で励起されて光信号を増幅するコア・エルビウム・ドープ光ファイバを含み得る、エルビウム・ドープ・ファイバ増幅器(erbium doped fiber amplifiers:EDFAs)とが挙げられる。ドープされた様々な活性ファイバに基づく他の種類の光増幅器も、同様に想定可能である。それら他の光増幅器としては、プラセオジム・ドープ・ファイバ増幅器、ビスマス・ドープ・ファイバ増幅器、及びツリウム・ドープ・ファイバ増幅器が挙げられるが、これらに限定されない。別の種類の光増幅器には半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier:SOA)があり、誘導放出によって入射光を増幅するように、この半導体光増幅器を構成することができる。たとえば、SOAのアクティブ領域を通って光が移動すると、電子は光子の形態でエネルギーを失い、接地状態に戻る可能性がある。「誘導される」光子の波長は光信号の波長と同じになり得、光信号を効果的に増幅することになる。
【0004】
SOAは通常通信システムで使用されるが、地上用途及び海底用途を含み得る長距離光通信システムに、これを実装してもよい。しかしながら、SOAの例示的な欠点の1つとして、それらが機能的に「オール・オア・ナッシング」型の増幅器であることが挙げられる。たとえば、SOAの一部が故障した場合、SOA全体が故障する恐れがある。また、SOAに電流が全く印加されない場合、SOAが完全に動作不能になる恐れがある。したがって、システム実行型SOAが動作不能になるか、又は故障モードになった場合、システム内で極めて不透明になり得る。したがって、所用のシステム耐用年数にわたって動作することができるほどの十分な冗長機構を備える、SOA実行型システムなどの半導体ベースの通信システムを設計する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、半導体ベースの光通信システムにおける冗長性を改善するための技術を対象とする。一実施形態では、機器は、少なくとも波長分割多重化(wavelength division multiplexing:WDM)回路と、第1の半導体光増幅器(SOA)と、第2のSOAとを備えていてもよい。第1のSOAは第1の動作波長に対応していてもよく、また第2のSOAは第2の動作波長に対応していてもよい。WDM回路は、第1の動作波長において光信号を受信し、受信した光信号を、増幅を目的として第1のSOAへと供給するように構成されてもよいし、又は第2の動作波長において光信号を受信し、受信した光信号を、増幅を目的として第2のSOAへと供給するように構成されてもよい。
【0006】
別の実施形態では、機器は、少なくとも光スイッチング回路と、第1のSOAと、第2のSOAとを備え、これら第1及び第2のSOAを光スイッチング回路に結合している。光スイッチング回路は、光信号を受信し、受信した光信号を、増幅を目的として第1のSOAへと供給するように構成されてもよいし、又は光信号を受信し、受信した光信号を、増幅を目的として第2のSOAへと供給するように構成されてもよい。
【0007】
更に別の実施形態では、基板パッケージは、少なくとも1つの光コンバイナと、少なくとも1つの光スイッチと、第1のSOAと、第2のSOAとを備えていてもよい。これら第1及び第2のSOAは、少なくとも1つの光コンバイナ及び少なくとも1つの光スイッチに結合されていてもよい。更に、少なくとも1つの光コンバイナと、少なくとも1つの光スイッチと、第1のSOAと、第2のSOAとが基板パッケージ内に集積されていてもよい。少なくとも1つの光スイッチは、増幅を目的として、光信号を第1のSOA又は第2のSOAへと供給するように構成されていてもよい。
【0008】
別の実施形態では、方法は、第1の光信号を光リピータへと伝送することを含んでいてもよく、この光リピータは、少なくとも第1のSOA及び第2のSOAを含み、第1のSOAは、伝送された第1の光信号を増幅している。本方法は、光リピータ内の第1のSOAが動作していないか、又は故障モードにあると判定することと、第2のSOAを選択するか、又は第2のSOAに切り替えることと、第2のSOAが第2の光信号を増幅するように、第2の光信号を伝送することとを更に含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】例示的な光通信システムを示す。
【0010】
図2A】WDMを用いた、例示的な冗長構成を示す。
図2B】WDMを用いた、例示的な冗長構成を示す。
【0011】
図3】光スイッチを用いた、例示的な冗長構成を示す。
【0012】
図4】偏波多重化を伴う、光スイッチを用いた例示的な冗長構成を示す。
【0013】
図5】SOA集積化を用いた、例示的な冗長構成を示す。
【0014】
図6】複数のファイバ対に対応する例示的な冗長構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、半導体ベースの通信システムにおける冗長性を改善することを対象とする。たとえば、2つ以上の異なる増幅経路をそれぞれ形成している、2つ以上の半導体光増幅器(SOA)を実装することにより、冗長性の改善を実現することができる。これら2つ以上のSOAを、同じ光リピータ内に実装してもよい。一実施形態によれば、送信機を介して、所定の動作波長で光信号を伝送することにより、波長分割多重化(WDM)を使用して特定のSOAの増幅経路を選択することができる。別の実施形態によれば、2つ以上のSOAを結合している光スイッチを使用して、特定の増幅経路を選択することができる。別の実施形態によれば、コンバイナ、光スイッチなどの他の光学構成要素と共に、2つ以上のSOAを基板パッケージ内に集積させてもよく、これによって少なくとも構成要素レベルで、本システム内の全体的な効率が上昇することになる。
【0016】
上述のように、これらのSOAは「オール・オア・ナッシング」型の構成要素である可能性があり、長距離光通信システムに実装している場合、本システムでそれらが故障すると数多くの問題を引き起こす恐れがある。したがって、本明細書に記載している実施例及び/又は実施形態は、SOAベースの(若しくは他の任意の半導体ベースの)光通信システムに関連して生じる、前述の問題を克服している。本発明の1つの利点は、光信号の増幅を目的として2つ以上の異なる増幅経路を設けることにより、それらの経路のうちの1つに故障が発生した場合でも、信号増幅が妨害されないことである。これらの経路上での信号増幅は、WDM又は光スイッチング機構を使用して、容易に切り替えることができる。本発明の別の利点は、同じ基板パッケージ内に2つ以上のSOAと、他の光学構成要素とを実装できることであり、これによって少なくとも構成要素レベルで、本光通信システム内の効率及び冗長性が改善されることになる。
【0017】
ここで、本発明の好ましい実施形態が示される添付図面を参照しながら、本発明をより完全に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全になるように、かつ、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。図面においては、全ての図をとおして、同じ数字は、同じ要素を指す。
【0018】
図面を参照すると、図1は、例示的な双方向光通信システム101を示している。この双方向光通信システム101では、広帯域光ファイバを使用して、膨大な量のデータを長距離にわたって伝送してもよい。光ファイバ内に光ファイバ経路対を構築し、また、たとえば、波長分割多重化チャネルなどの1つ又はそれ以上のチャネルをファイバ対ごとに伝送することにより、双方向データ伝送を実行することができる。
【0019】
図示のように、光通信システム101は、双方向光経路対を共に形成している2つの一方向光経路111、121、によって結合された、端末103及び105を備えていてもよい。光経路111は、端末103の送信機113から端末305の受信機115へと、一方向に(たとえば、右方に)情報を伝送してもよい。光経路121は、端末105の送信機125から端末103の受信機123へと、他方向に(たとえば、左方に)に情報を伝送してもよい。端末103に対して、光経路111はアウトバウンド経路であり、光経路121はインバウンド経路である。光経路111は、光ファイバ117-1~117-n及び光増幅器119-1~119-nを含んでいてもよく、また光経路121は、光ファイバ127-1~127-n及び光増幅器129-1~129-nを含んでいてもよい。いくつかの実施例では、送信機113及び受信機123を、端末103でトランスポンダとして共に収容でき、同様に、送信機115及び受信機125も、端末105でトランスポンダとして共に収容できることが理解されてもよい。
【0020】
光経路対(たとえば、光経路111、121)を、光ファイバ対117-1~117-n及び127-1~127-nによって結合された、リピータ131-1~131-n内の1組の増幅器対119-1~119-n及び129-1~129-nとして構成してもよく、これらの光ファイバ対は、追加の経路対を支持しているファイバと共に、光ファイバケーブル内に含まれていてもよい。リピータ131はそれぞれ、各経路対用に一対の増幅器119、129を含んでいてもよく、また追加の経路対用に追加の増幅器を含んでいてもよい。光増幅器119、129では、EDFA若しくは他の希土類ドープファイバ増幅器、ラマン増幅器、又は半導体光増幅器(SOA)を利用してもよい。結合経路133-1~133-nを光経路111、121間で、たとえばリピータ131-1~131-nのうちの1つ又はそれ以上において結合していてもよい。本明細書で使用している「結合する」又は「結合された」という用語は、直接的若しくは間接的接続及び/又は有線若しくは無線接続のいずれかを指し、いかなる方法によっても限定を意図するものではないことが理解されてもよい。
【0021】
光通信システム101の例示的な一実施形態を示し、かつ記載しているが、光通信システム101の変形例も本開示の範囲内にある。光通信システム101は、たとえば、より多数の光経路対と、より多数の、又はより少数のリピータとを備えていてもよい。あるいは、光通信システム101はいずれの光増幅器も備えていなくてもよいし、又は光増幅器の代わりに、リピータを結合している光ファイバ内のラマン増幅によって、光学利得を実現するのに好適な光ポンプ電源を備えていてもよい。
【0022】
更に、送信機、受信機、これらの送信機及び受信機を含むトランスポンダ、又はデータを送受信するのに適した他の任意の装置は、少なくとも1つのメモリ及び1つ又はそれ以上のプロセッサ(たとえば、CPU、ASIC、FGPA、任意の従来型プロセッサなど)を含み、これによってメモリに記憶された命令を実行して、たとえば以下に更に記載しているように、偏波状態(State-of-Polarization:SOP)分析に基づいて外部からの攻撃を特定かつ検出できることが理解されてもよい。
【0023】
図2Aは、いくつかの実施形態による、例示的な波長分割多重化(WDM)冗長構成200を示す。このWDM冗長構成200を、光リピータ内に実装していてもよい。図示のように、リピータ内の冗長構成200は、WDM回路201と、2つの別個の増幅経路204及び208をそれぞれ形成し得る、2つの別個のSOA 202及び206とを含んでいてもよい。したがって、増幅経路202を優先経路として使用する場合、増幅経路208を冗長経路と見なしてもよい(又はその逆も可能である)。
【0024】
一実施例では、1つ又はそれ以上の光信号を伝送するために、1つ又はそれ以上のトランスポンダによってWDM通信を使用してもよい。このようにWDM通信を使用することにより、1つ又はそれ以上のトランスポンダにおける送信機が、所定の波長で1つ又はそれ以上の光信号を伝送することができる。SOA 202及びSOA 206はそれぞれ、所定の動作波長に対応していてもよい。したがって、たとえば、SOA 202に対応している動作波長又は波長範囲においてWDM回路201が光信号(又はその一部)を受信した場合、SOA 202のみを使用して、この光信号を増幅してもよい。同様に、SOA 206に対応している動作波長又は波長範囲においてWDM回路201が光信号を受信した場合、SOA 206のみを使用して、この光信号を増幅してもよい。
【0025】
したがって、光信号の増幅を目的として、特定の光増幅経路(たとえば、経路204又は経路208)を、その増幅経路に関連付けられたSOAに対応している特定の動作波長又は波長範囲において光信号を伝送することで選択することができる。SOA 202に対応している動作波長又は波長範囲は、SOA 206に対応している動作波長又は波長範囲とは異なっていることが理解されてもよい。ここで対応している動作波長又は波長範囲を、任意の好適な電磁スペクトル、たとえばEU/NATO/米国無線ECM帯域(A~N帯域)、無線ITU帯域、無線IEEE帯域(HF、VHF、UHF、L、S、CX、K、V、W、mmなど)から選択できることが更に理解されてもよい。
【0026】
一実施形態によれば、リピータ内の1つのSOAのみをオンにし、その一方で他のSOAをオフにすることにより、電力効率を改善することができる。したがって、リピータ内のあるSOAが故障したか、又は動作不能になった場合(たとえば、SOA 202が)、「未使用の」又は非給電のSOA(たとえば、SOA 206)を、この未使用又は非給電のSOAに対応している動作波長又は波長範囲において光信号を伝送するように、当該送信機を構成若しくは調整することにより、「オン」に切り替えてもよい。いくつかの実施例では、対応しているSOAへの駆動電流をオン又はオフにすることにより、伝送帯域を選択してもよい。
【0027】
挿入損失を最小限に抑えること、動作可能な光学構成要素を別途設ける必要がなくなること、及び増幅器の雑音指数(noise figure:NF)に与える影響が最小限になることなど、リピータ内にWDMベースの冗長構成を実装する上で、数多くの利点が存在する。別の利点は、本システムにおいて電力量の余剰損失が許容される場合、NFに対するペナルティなしに、パッシブ光コンバイナによって出力WDM信号を置換できることにあり得る。
【0028】
図2Bは、いくつかの実施形態による、冗長構成240の別の実施例を示す。図示のように、図2Bにおいて2つを超えるSOA(たとえば、SOA 242及び244から最大「n」個までのSOA)を1つの光リピータ内に配置できる点を除いて、冗長構成240を図2Aの構成200と同様としている。各SOA 242、244、及びSOA nは、それぞれの動作波長又は波長範囲に対応していてもよい。したがって、SOAに対応している特定の動作波長又は波長範囲において伝送された光信号をWDM回路241が受信した場合、WDM回路241は、上述のように当該SOAを選択してその光信号を増幅してもよい。更に、図2Aの冗長構成200と同様に、一度に1つのSOAのみをオンにして、電力を節約してもよい。
【0029】
図3は、いくつかの実施形態による、例示的な光スイッチの冗長構成300を示す。この光スイッチの冗長構成300を、光リピータ内に実装していてもよい。図示のように、1つ又はそれ以上の光スイッチ又は光スイッチング回路301を、2つ以上のSOA 302、304から最大SOA「n」個までに結合していてもよい。ここで2つの別個の光スイッチを図3に図示しているが、1つの光スイッチが2つのスイッチの機能を実行できることが理解されてもよく、又は2つの光スイッチを1つの光スイッチング回路パッケージ内に配置できることが更に理解されてもよい。
【0030】
例示的な一実施形態によれば、特定の帯域に限定することなく、あるSOAを選択したり、これに切り替わるように、光スイッチング回路301を構成したりしてもよい。更に、図2A及び2Bの例示的な冗長構成200並びに240をそれぞれ用いて上述したように、1つのSOAのみ(たとえば、動作中のSOA)を「オン」にし、その一方で他のSOAをオフにすることで、光リピータ内の電力効率を維持してもよい。いくつかの実施例では、SOAへの駆動電流を切り替えるように、光スイッチング回路を更に構成してもよい。
【0031】
一実施例では、SOA 302が故障したか、又は動作不能になった場合、光スイッチング回路301は、動作しているSOA(たとえば、SOA 304、SOA n)を選択及び/又はこれに切り替えてもよい。関連システムにおいて電力量の余剰損失が許容される場合、雑音指数(NF)に対するペナルティなしに、出力においてパッシブ光コンバイナを使用できることが理解されてもよい。
【0032】
図4は、いくつかの実施形態による、偏波多重化と組み合わせて光スイッチを使用する、例示的な冗長構成を示す。例示的な一実施形態によれば、図示している2つの増幅経路(たとえば、垂直偏波増幅経路402、水平偏波増幅経路404)のそれぞれについては、偏波保持(polarization maintaining:PM)構成要素とすることができる光スイッチに結合する形態で、2つ以上のSOAを実装することにより、冗長性を実現してもよい。
【0033】
たとえば、偏波ビームコンバイナ(polarization beam combiner:PBC)420で入力され得る光信号を増幅するために、SOA 408若しくはSOA 410のいずれかを選択するか、又はこれに切り替えるように、PM光スイッチ406を構成してもよい。同様に、別の実施例では、光信号を増幅するために、SOA 414若しくはSOA 416のいずれかを選択するか、又はこれに切り替えるように、PM光スイッチ412を構成してもよい。少なくともその点では、偏波多重化を用いて光信号を増幅するときに、PM光スイッチ及びそれぞれのSOAによって冗長性を実現することができる。いくつかの実施例では、それぞれのSOAに対して電流を駆動するように、PM光スイッチ406及び412を更に構成してもよい。また光信号の各偏波のために、光スイッチング技術に加えて、WDM及びSOA集積化(以下に更に記載する)を用いて、冗長性を更に実現できることが理解されてもよい。
【0034】
図5は、いくつかの実施形態による、SOA集積化を用いた例示的な冗長構成500を示す。図示のように、2つ以上のSOA(たとえば、SOA 502、SOA 504、SOA「n」)を、同じ基板パッケージ内に集積させてもよい。たとえば、SOA集積化技術としてはフォトニクス集積化が挙げられ、これは一例としてInP集積化技術、Si集積化技術、Ge/Si集積化技術、異種集積化技術などの様々な方法を用いて実行され得る。冗長構成500を有する、図4に示すものを例とするSOA集積型パッケージ又は基板のうちの1つ又はそれ以上を、光通信システムのリピータ内に実装又は配置できることが理解されてもよい。
【0035】
一実施形態によれば、1つ又はそれ以上のスイッチング機構を、同じSOA集積化プロセスに更に実装してもよい。たとえばスイッチング機構は、一例として、1xN及び/又はNx1光スイッチングの形態であってもよい。別の実施例では、このスイッチング機構をWDM結合、又は光経路を他の任意の好適な形態で組み合わせたものとすることができる。更に別の実施例では、スイッチとして効果的に機能する偏波ビームコンバイナ及びアクティブ偏波回転子を使用することにより、偏波結合を実行してもよい。上述の実施例と同様に、光増幅経路の選択を、SOA間で切り替えることによって実行してもよい。異なる実施例では、特定のSOAをオンにするか、又はオフにすることで、スイッチング効果を得てもよい。少なくとも光電力量、システム要件、及びシステム複雑度に基づいて、パッシブ又はアクティブ光結合を使用できることが理解されてもよい。
【0036】
例示的な一実施形態では、SOA 502をオンにし、その一方で各リピータ内の他のSOAをオフにしてもよい。本システムの1つ又はそれ以上のリピータにおいて、SOA 502などのSOAが故障した場合、SOA 502への電流をオフにしてもよく、また1つ又はそれ以上の冗長SOA(たとえば、SOA 504、SOA n)への電力をオンにしてもよい。記載のとおり、いくつかの実施例では、特定のSOAを選択的にオン又はオフにすることで、切替えを実行してもよい。異なる実施例では、1つ又はそれ以上の光スイッチ若しくは光スイッチング回路を介して、切替えを実行してもよい。
【0037】
図6は、いくつかの実施形態による、3つの別個のファイバ対を有する光デジタル伝送路に対応する例示的な冗長構成600を示す。それぞれのファイバ対は、受信機ファイバと送信機ファイバとを含む。また、3つのファイバ対を図6に示しているが、より多数の、又はより少数のファイバ対を実装できることが理解されてもよい。
【0038】
図示のように、それぞれのファイバ対における増幅経路の数は、1つ又はそれ以上のSOAとすることができる増幅器の数に依存してもよい。例示的な実施形態では、光経路ごとに2つ以上のSOA(たとえば、リピータに関連付けられた経路)を使用して、冗長性及びシステム信頼性の全体的な改善を実現してもよい。これらの冗長構成は、上述の実施例又は実施形態のいずれか、たとえばWDM、光スイッチング、SOA集積化に基づいていてもよい。いくつかの実施例では、コマンド制御チャネルを光デジタル伝送路に含めることで、たとえば光スイッチング、並びに光コンバイナ及び/又は光スイッチとSOAとの集積化を用いた冗長構成に対応してもよい。
【0039】
上述の冗長構成のうちの1つ又はそれ以上において、利得及び利得傾斜の調整を、SOA及び/又は駆動電流の温度制御によって達成してもよい。これにより、本システムにおける利得設定、及び伝送路における時効効果及び修復の調整が可能になってもよい。温度の調整をこのように行うことから、SOAの温度制御部と、本システム内の全てのリピータ又はリピータのごく一部のコマンド制御機構とを実装することが想定される。SOAの全体的な利得を制御する他の方法を用いてもよく、これには可変光減衰器、及び所定の光減衰器又は光学フィルタを有する光スイッチが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書では、半導体ベースの通信システムにおける冗長性を改善するための、新規かつ独創的な機器、システム、及び方法を開示している。本開示は、本明細書に記載される特定の実施形態によって、その範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び本開示への様々な修正が、これまでの説明及び添付の図面から当業者には明らかとなるであろう。
【0041】
したがって、そのような他の実施形態及び修正は、本開示の範囲内に含まれるということが意図される。更に、本開示は、特定の目的のための特定の環境における特定の実装の文脈で本明細書に記載されているが、当業者であれば、その有用性はこれに限定されず、本開示は任意の数の目的のために任意の数の環境で有益に実装され得ることを認識するであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の最大の範囲及び趣旨を考慮して解釈されるべきである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6