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特許7586625車両接近報知装置および該装置を備えたピッキングトラック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両接近報知装置および該装置を備えたピッキングトラック
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20241112BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20241112BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F9/06 B
B66F9/075 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022177380
(22)【出願日】2022-11-04
(65)【公開番号】P2024067364
(43)【公開日】2024-05-17
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6984987(JP,B1)
【文献】特許第7084101(JP,B1)
【文献】実開昭50-049838(JP,U)
【文献】特開2019-099079(JP,A)
【文献】特開2000-344005(JP,A)
【文献】特開2021-102501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の昇降可能な運転台に設けられる、車両後方の路面である後方路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、
前記車両の昇降不能な車両本体に設けられる、前記後方路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、
前記車両本体に設けられる、車両前方の路面である前方路面に向かって第3報知光を照射する第3照明部と、
前記車両本体の走行状態および前記運転台の昇降位置に応じて前記第1照明部、前記第2照明部および前記第3照明部の点灯状態を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、(1)前記走行状態が後進であり、かつ前記昇降位置が予め定められた閾値未満であるときは、前記第1照明部を点灯させるとともに前記第2照明部および前記第3照明部を消灯させ、(2)前記走行状態が後進であり、かつ前記昇降位置が前記閾値以上であるときは、前記第1照明部および前記第3照明部を消灯させるとともに前記第2照明部を点灯させ、(3)前記走行状態が前進であるときは、前記第1照明部および前記第2照明部を消灯させるとともに前記第3照明部を点灯させ、(4)前記走行状態が停止であり、かつ前記昇降位置が前記閾値未満であるときは、前記第1照明部、前記第2照明部および前記第3照明部を消灯させ、(5)前記走行状態が停止であり、かつ前記昇降位置が前記閾値以上であるときは、前記第1照明部を消灯させるとともに前記第2照明部および前記第3照明部を点滅または点灯させる
ことを特徴とする車両接近報知装置。
【請求項2】
前記第1照明部および前記第2照明部は、前記昇降位置が前記閾値に等しいときに、前記第1報知光および前記第2報知光の軸が前記後方路面上で交わるように設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両接近報知装置。
【請求項3】
前記第2報知光の色は、前記第1報知光の色と異なっている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両接近報知装置。
【請求項4】
走行装置を有する車両本体と、
前記車両本体の後方に設けられたマストと、
前記マストに沿って昇降可能な運転台と、
前記運転台に設けられた、車両後方の路面である後方路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、
前記車両本体に設けられた、前記後方路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、
前記車両本体に設けられた、車両前方の路面である前方路面に向かって第3報知光を照射する第3照明部と、
前記車両本体の走行状態および前記運転台の昇降位置に応じて前記第1照明部、前記第2照明部および前記第3照明部の点灯状態を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、(1)前記走行状態が後進であり、かつ前記昇降位置が予め定められた閾値未満であるときは、前記第1照明部を点灯させるとともに前記第2照明部および前記第3照明部を消灯させ、(2)前記走行状態が後進であり、かつ前記昇降位置が前記閾値以上であるときは、前記第1照明部および前記第3照明部を消灯させるとともに前記第2照明部を点灯させ、(3)前記走行状態が前進であるときは、前記第1照明部および前記第2照明部を消灯させるとともに前記第3照明部を点灯させ、(4)前記走行状態が停止であり、かつ前記昇降位置が前記閾値未満であるときは、前記第1照明部、前記第2照明部および前記第3照明部を消灯させ、(5)前記走行状態が停止であり、かつ前記昇降位置が前記閾値以上であるときは、前記第1照明部を消灯させるとともに前記第2照明部および前記第3照明部を点滅または点灯させる
ことを特徴とするピッキングトラック。
【請求項5】
前記第1照明部は、前記運転台のヘッドガードに設けられている
ことを特徴とする請求項に記載のピッキングトラック。
【請求項6】
前記第3照明部は、前記車両本体の上方空間から逸脱しないように該車両本体の上部に設けられている
ことを特徴とする請求項に記載のピッキングトラック。
【請求項7】
前記第1照明部および前記第2照明部は、前記昇降位置が前記閾値に等しいときに、前記第1報知光および前記第2報知光の軸が前記後方路面上で交わるように設けられている
ことを特徴とする請求項に記載のピッキングトラック。
【請求項8】
前記第2報知光の色は、前記第1報知光の色と異なっている
ことを特徴とする請求項に記載のピッキングトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の路面に向けて光を照射することより車両の接近を周辺にいる者に報知する車両接近報知装置、および該装置を備えたピッキングトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1照明部と第2照明部とを含む車両接近報知装置を備えたピッキングトラックが知られている(例えば、特許文献1参照)。第1照明部は、車両の昇降可能な運転台に設けられ、運転台の昇降位置が予め定められた閾値未満であるとき、すなわち低揚高時に車両後方の路面に向かって第1報知光を照射する。一方、第2照明部は、車両の昇降不能な車両本体に設けられ、運転台の昇降位置が上記閾値以上であるとき、すなわち高揚高時に車両後方の路面に向かって第2報知光を照射する。この車両接近報知装置およびピッキングトラックによれば、第1照明部の第1報知光が路面に十分に届かなくなる高揚高時に該第1照明部に代わって第2照明部が第2報知光を路面に向かって照射するので、車両の接近を車両後方にいる者に確実に報知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6984987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両接近報知装置およびピッキングトラックは、車両前方への報知が十分ではなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、車両の接近を車両周辺にいる者により確実に報知することが可能な車両接近報知装置およびピッキングトラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両接近報知装置は、車両の昇降可能な運転台に設けられる、車両後方の路面である後方路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、車両の昇降不能な車両本体に設けられる、後方路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、車両本体に設けられる、車両前方の路面である前方路面に向かって第3報知光を照射する第3照明部と、車両本体の走行状態および運転台の昇降位置に応じて第1照明部、第2照明部および第3照明部の点灯状態を制御する制御部と、を備え、制御部は、(1)走行状態が後進であり、かつ昇降位置が予め定められた閾値未満であるときは、第1照明部を点灯させるとともに第2照明部および第3照明部を消灯させ、(2)走行状態が後進であり、かつ昇降位置が閾値以上であるときは、第1照明部および第3照明部を消灯させるとともに第2照明部を点灯させ、(3)走行状態が前進であるときは、第1照明部および第2照明部を消灯させるとともに第3照明部を点灯させ、(4)走行状態が停止であり、かつ昇降位置が閾値未満であるときは、第1照明部、第2照明部および第3照明部を消灯させ、(5)走行状態が停止であり、かつ昇降位置が閾値以上であるときは、第1照明部を消灯させるとともに第2照明部および第3照明部を消灯、点滅または点灯させることを特徴とする。
【0007】
上記車両接近報知装置の制御部は、(5’)走行状態が停止であり、かつ昇降位置が閾値以上であるときは、第1照明部を消灯させるとともに第2照明部および第3照明部を点灯または点滅させることが好ましい。
【0008】
上記車両接近報知装置の第1照明部および第2照明部は、昇降位置が閾値に等しいときに、第1報知光および第2報知光の軸が後方路面上で交わるように設けられることが好ましい。
【0009】
上記車両接近報知装置の第2報知光の色は、第1報知光の色と異なっていることが好ましい。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るピッキングトラックは、走行装置を有する車両本体と、車両本体の後方に設けられたマストと、マストに沿って昇降可能な運転台と、運転台に設けられた、車両後方の路面である後方路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、車両本体の後方に設けられた、後方路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、車両本体に設けられた、車両前方の路面である前方路面に向かって第3報知光を照射する第3照明部と、車両本体の走行状態および運転台の昇降位置に応じて第1照明部、第2照明部および第3照明部の点灯状態を制御する制御部と、を備え、制御部は、(1)走行状態が後進であり、かつ昇降位置が予め定められた閾値未満であるときは、第1照明部を点灯させるとともに第2照明部および第3照明部を消灯させ、(2)走行状態が後進であり、かつ昇降位置が閾値以上であるときは、第1照明部および第3照明部を消灯させるとともに第2照明部を点灯させ、(3)走行状態が前進であるときは、第1照明部および第2照明部を消灯させるとともに第3照明部を点灯させ、(4)走行状態が停止であり、かつ昇降位置が閾値未満であるときは、第1照明部、第2照明部および第3照明部を消灯させ、(5)走行状態が停止であり、かつ昇降位置が閾値以上であるときは、第1照明部を消灯させるとともに第2照明部および第3照明部を消灯、点滅または点灯させることを特徴とする。
【0011】
上記ピッキングトラックの制御部は、(5’)走行状態が停止であり、かつ昇降位置が閾値以上であるときは、第1照明部を消灯させるとともに第2照明部および第3照明部を点灯または点滅させることが好ましい。
【0012】
上記ピッキングトラックの第1照明部は、運転台のヘッドガードに設けられていてもよい。
【0013】
上記ピッキングトラックの第3照明部は、車両本体の上方空間から逸脱しないように該車両本体の上部に設けられていてもよい。
【0014】
上記ピッキングトラックの第1照明部および第2照明部は、昇降位置が閾値に等しいときに、第1報知光および第2報知光の軸が後方路面上で交わるように設けられていることが好ましい。
【0015】
上記ピッキングトラックの第2報知光の色は、第1報知光の色と異なっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両の接近を車両周辺にいる者により確実に報知することが可能な車両接近報知装置およびピッキングトラックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係るピッキングトラックの模式的な側面図である。
図2】本発明の実施例に係る車両接近報知装置のブロック図である。
図3】本発明の実施例における各照明部の点灯状態および照射距離の変化を示す、(A)走行状態が前進である場合のグラフ、(B)走行状態が走行停止である場合のグラフ、(C)走行状態が後進であるときのグラフである。
図4】本発明の実施例に係るピッキングトラックの、(A)低揚高時の模式的な側面図、(B)高揚高時の模式的な側面図である。
図5】本発明の変形例における各照明部の点灯状態および照射距離の変化を示す、(A)走行状態が前進である場合のグラフ、(B)走行状態が走行停止である場合のグラフ、(C)走行状態が後進であるときのグラフである。
図6】本発明の別の変形例における各照明部の点灯状態および照射距離の変化を示す、(A)走行状態が前進である場合のグラフ、(B)走行状態が走行停止である場合のグラフ、(C)走行状態が後進であるときのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る車両接近報知装置およびピッキングトラックの実施例について説明する。
【0019】
[実施例]
図1に、本発明の実施例に係るピッキングトラック10を示す。同図に示すように、本実施例に係るピッキングトラック10は、走行装置を有する車両本体11と、車両本体11の後方に設けられた左右一致のレッグ12,12およびマスト13と、マスト13に沿って昇降可能な運転台14とを備えている。また、運転台14は、オペレータによって操作される各種レバー等からなる操作盤15と、オペレータの転落を防ぐための転落ガード16と、後方に向かって延びた左右一対のフォーク17,17と、オペレータの頭上を覆うヘッドガード18とを有している。フォーク17,17は、運転台14の床板に設けられている。
【0020】
本実施例に係るピッキングトラック10は、さらに、車両接近報知装置20を構成する制御部21、第1照明部22、第2照明部23および第3照明部24と、昇降位置検知部30と、走行状態検知部40とを備えている。
【0021】
第1照明部22は、車両後方の路面Fbに向かって第1報知光L1を照射するLEDライトからなる。路面Fbに現れる第1報知光L1の像は、輪郭が曖昧な円状であってもよいし、第1照明部22に設けられたレンズやスリットの作用により、輪郭が明確なスポット状、ライン状または矢印状とされていてもよい。また、第1報知光L1の色は、報知効果を高めるために、路面Fbに対して目立つ色であることが好ましい。本実施例では、第1報知光L1の色は青である。
【0022】
第1照明部22は、不図示の適当なブラケットを介してヘッドガード18の後端部に設けられている。第1照明部22は、その照射方向(すなわち、第1報知光L1の軸)が鉛直線Pに対して角度θ1をなすように設けられている。
【0023】
第2照明部23は、車両後方の路面Fbに向かって第2報知光L2を照射するLEDライトからなる。路面Fbに現れる第2報知光L2の像は、第1報知光L1の像と同様、輪郭が曖昧な円状であってもよいし、輪郭が明確なスポット状、ライン状または矢印状であってもよい。また、第2報知光L2の色は、報知効果を高めるために、路面Fbに対して目立つ色であることが好ましく、第1報知光L1の色と異なっていることがさらに好ましい。本実施例では、第2報知光L2の色は赤である。
【0024】
第2照明部23は、不図示の適当なブラケットを介して車両本体11の後方に設けられている。第2照明部23は、その照射方向(すなわち、第2報知光L2の軸)が鉛直線Pに対して角度θ2(ただし、θ2>θ1)をなすように設けられている。
【0025】
第3照明部24は、車両前方の路面Ffに向かって第3報知光L3を照射するLEDライトからなる。路面Ffに現れる第3報知光L3の像は、他の報知光L1,L2の像と同様、輪郭が曖昧な円状であってもよいし、輪郭が明確なスポット状、ライン状または矢印状であってもよい。また、第3報知光L3の色は、報知効果を高めるために、路面Ffに対して目立つ色であることが好ましい。本実施例では、第3報知光L3の色は青である。
【0026】
第3照明部24は、車両本体11の上方空間から逸脱しないように、ブラケットを介して車両本体11の上部に設けられている。なお、第3照明部24が車両本体11の上方空間から逸脱していると、ピッキングトラック10の最小旋回半径が増加し、操縦性が悪くなる。
【0027】
図2に示すように、制御部21は、昇降位置検知部30が検知した運転台14の昇降位置Hおよび走行状態検知部40が検知した車両本体11の走行状態に応じて、第1照明部22、第2照明部23および第3照明部24の点灯状態を変化させるように構成されている。
【0028】
なお、図1では、車両本体11の内部に制御部21が設けられているが、制御部21の位置は任意に変更することができる。例えば、制御部21は、運転台14に設けられていてもよい。また、図1では、車両本体11の内部に昇降位置検知部30および走行状態検知部40が設けられているが、これらの位置も任意に変更することができる。
【0029】
図1図3および図4を参照しながら、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20の動作をさらに詳しく説明する。
【0030】
(1)走行状態が後進であり、かつ昇降位置Hが閾値Hth未満である場合
この場合、制御部21は、第1照明部22を点灯させるとともに第2照明部23および第3照明部24を消灯させる。これにより、車両後方の路面Fbに、第1報知光L1による青色の像が現れる。なお、「昇降位置Hが閾値Hthよりも小さい場合」の一例は、図4(A)に示す昇降位置Hが下限値Hminである場合である。
【0031】
フォーク17,17の先端から第1報知光L1の像の中心までの距離D1を「第1照射距離」と呼ぶ。図3(C)に示すように、第1照射距離D1は、昇降位置Hに応じて変化する。より詳しくは、第1照射距離D1は、昇降位置Hが高くなると長くなる。
【0032】
本実施例では、閾値Hthは1mである。閾値Hthは、昇降位置Hが該閾値Hthに等しいときに、第2報知光L2が運転台14によって遮られないような値に設定されている。
【0033】
第3照明部24は、車両前方の路面Ffを照射するためのものなので、後進中のピッキングトラック10と周辺にいる者との接触の回避にほとんど寄与しない。このため、本実施例では、後進中に第3照明部24を消灯させることにより、第3照明部24における後進中の消費電力を実質的にゼロにする。
【0034】
(2)走行状態が後進であり、かつ昇降位置Hが閾値Hth以上である場合
この場合、制御部21は、第1照明部22および第3照明部24を消灯させるとともに第2照明部23を点灯させる。これにより、車両後方の路面Fbに、第2報知光L2による赤色の像が現れる。第3照明部24を消灯させる理由は、上で述べた通りである。
【0035】
フォーク17,17の先端から第2報知光L2の像の中心までの距離D2を「第2照射距離」と呼ぶ。本実施例では、昇降位置Hが閾値Hthに等しいときに、第1照射距離D1と第2照射距離D2とが等しくなるように、閾値Hthおよび角度θ1,θ2が決定されている(図1および図3(C)参照)。つまり、本実施例では、昇降位置Hが閾値Hthに等しいときに、第1報知光L1および第2報知光L2の軸が路面Fb上で交わるようになっている。これにより、昇降位置Hが閾値Hthに等しくなったときに報知光の像が瞬間的に移動して、周辺にいる者が像を見失ってしまうのを防ぐことができる。
【0036】
図3(C)に示すように、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20では、昇降位置Hが閾値Hthと上限値Hmaxとの間で変化しても第2照射距離D2は変化しない。このため、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20によれば、路面Fbに常に十分な報知光を届けることができる。言い換えると、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20によれば、高揚高時の報知効果の低下を防ぐことができる。
【0037】
また、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20では、昇降位置Hに応じて路面Fbに現れる像の色が変化する。ピッキングトラック10のオペレータは、高揚高時に周辺にいる者に気付きにくくなる傾向にあるところ、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20によれば、路面Fbに現れている像の色に基づいて周辺にいる者が高揚高であることに気付き、周囲をより警戒することで、ピッキングトラック10との接触を自ら回避することができる。
【0038】
(3)走行状態が前進である場合
この場合、制御部21は、昇降位置Hの高低にかかわらず、第1照明部22および第2照明部23を消灯させるとともに第3照明部24を点灯させる(図3(A)参照)。これにより、車両前方の路面Ffに、第3報知光L3による青色の像が現れる。
【0039】
車両本体11の前端から第3報知光L3の像の中心までの距離D3を「第3照射距離」と呼ぶ。本実施例では、昇降位置Hが下限値Hminであるときの第1照射距離D1と第3照射距離D3が概ね等しくなっている。
【0040】
第1照明部22および第2照明部23は、車両後方の路面Fbを照射するためのものなので、前進中のピッキングトラック10と周辺にいる者との接触の回避にほとんど寄与しない。このため、本実施例では、前進中に第1照明部22および第2照明部23を消灯させることにより、これらにおける前進中の消費電力を実質的にゼロにする。
【0041】
(4)走行状態が走行停止である場合
この場合、制御部21は、昇降位置Hの高低にかかわらず、第1照明部22、第2照明部23および第3照明部24を消灯させる(図3(B)参照)。
【0042】
走行停止中のピッキングトラック10に周辺にいる者が接触する可能性は低い。すなわち、走行停止中は、第1照明部22、第2照明部23および第3照明部24を点灯させる必要性が低い。このため、本実施例では、走行停止中に全ての照明部22,23,24を消灯させることにより、これらにおける走行停止中の消費電力を実質的にゼロにする。
【0043】
(1)~(4)をまとめると、制御部21は、下表の通りに第1照明部22、第2照明部23および第3照明部24の点灯状態を制御する。
【表1】
【0044】
このように、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20では、後進中は第1照明部22または第2照明部23が点灯し、前進中は第3照明部24が点灯する。したがって、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20によれば、車両の接近を車両周辺にいる者に確実に報知することができる。
【0045】
また、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20では、後進中は第3照明部24が消灯し、前進中は第1照明部22および第2照明部23が消灯し、走行停止中は全ての照明部22,23,24が消灯する。したがって、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20によれば、接触の回避に寄与しない無駄な電力消費を防ぐことができる。
【0046】
[変形例]
【0047】
以上、本発明に係る車両接近報知装置およびピッキングトラックの実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。
【0048】
例えば、本発明では、制御部21は、走行状態が走行停止であっても、昇降位置Hが閾値Hth以上であれば、第2照明部23および第3照明部24を点灯(表2および図5参照)、または点滅(表3および図6参照)させてもよい。
【表2】
【表3】
【0049】
前述した通り、走行停止中のピッキングトラック10に周辺にいる者が接触する可能性は低い。しなしながら、高揚高時に周辺にいる者がピッキングトラック10に万が一接触すると、運転台14が揺れ、高所作業中のオペレータに転落の危険が及ぶ。第2照明部23および第3照明部24を点灯または点滅させれば、ピッキングトラック10と周辺にいる者との接触の可能性がより一層低くなり、高所作業の安全性を高めることができる。
【0050】
また、本発明では、第1照明部22が運転台14の任意の位置に設けられてもよい。
【0051】
また、本発明では、昇降位置Hが閾値Hthであるときに、第1照射距離D1と第2照射距離D2とが必ずしも一致しなくてもよい。
【0052】
また、前述の第1報知光L1の色(青)、第2報知光L2の色(赤)および第3報知光L3の色(青)は、単なる例示に過ぎない。本発明では、第1報知光L1、第2報知光L2および第3報知光L3の色は、全部または一部が同一であってもよいし、全部が異なっていてもよい。
【0053】
前述の閾値Hth(1m)も単なる例示に過ぎない。
【符号の説明】
【0054】
10 ピッキングトラック
11 車両本体
12 レッグ
13 マスト
14 運転台
15 操作盤
16 転落ガード
17 フォーク
18 ヘッドガード
20 車両接近報知装置
21 制御部
22 第1照明部
23 第2照明部
24 第3照明部
30 昇降位置検知部
40 走行状態検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6