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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】プローブカード
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G01R1/073 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023565664
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2021044633
(87)【国際公開番号】W WO2023105553
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000232405
【氏名又は名称】日本電子材料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004196
【氏名又は名称】弁理士法人ナビジョン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 親臣
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-155474(JP,A)
【文献】特開2012-093127(JP,A)
【文献】特開2007-033363(JP,A)
【文献】特開2019-152541(JP,A)
【文献】特開2018-044912(JP,A)
【文献】特開2017-150864(JP,A)
【文献】特開2019-196984(JP,A)
【文献】特表2018-523095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上のプローブ電極が形成された配線基板と、
前記配線基板から下側に離間し、前記配線基板と対向して配置され、1又は2以上の上部ガイド孔が形成された上部ガイド板と、
前記上部ガイド板から下側に離間し、前記上部ガイド板と対向して配置され、1又は2以上の下部ガイド孔が形成された下部ガイド板と、
同一の前記上部ガイド孔内に挿通されるとともに、同一の前記下部ガイド孔内に挿通された、同一の前記プローブ電極及び検査対象物の同一の電極に接続される2以上のプローブからなるプローブ群とを備え、
前記プローブ群を構成する各プローブは、前記上部ガイド板及び前記下部ガイド板間において互いに独立して所定の方向に座屈変形することが可能であり、下端が互いに独立して上下方向に移動可能であり、
前記プローブ群を構成する前記2以上のプローブが前記所定の方向に整列するように配置されていることを特徴とするプローブカード。
【請求項2】
前記プローブの側面には、摩擦抑制膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプローブカード。
【請求項3】
前記プローブは、前記上部ガイド板の上面に係止され、前記上部ガイド板からの脱落を防止する係止部を備え
前記係止部は、前記プローブの上端部である針元部から前記所定の方向と直交する方向に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のプローブカード。
【請求項4】
前記プローブにおいて座屈変形する部分である弾性変形部の断面が、前記所定の方向である短辺と、前記所定の方向と直交する長辺とからなる矩形であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のプローブカード。
【請求項5】
前記下部ガイド孔は、前記上部ガイド孔に対しオフセットするように形成され、非検査時の前記プローブが前記上部ガイド板及び前記下部ガイド板間において湾曲していることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のプローブカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカードに係り、更に詳しくは、2枚のガイド板により支持され、座屈変形することにより弾性力を生じる垂直型プローブを備えたプローブカードの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブカードは、配線基板上に多数のプローブを立設して構成され、半導体ウエハ上に形成された半導体デバイスの電気的特性検査に使用される検査装置である。半導体デバイスの検査は、プローブの先端を半導体ウエハ上の電極パッドに接触させ、半導体デバイスと外部装置を導通させることにより行われる。
【0003】
検査を行う場合、プローブカードと半導体ウエハとを近づけ、プローブが電極パッドに接触しはじめる状態に達した後、プローブカードと半導体ウエハとを更に近づけるオーバードライブが行われる。プローブは、オーバードライブによって弾性変形し、電極パッドに向けて付勢される。このため、一定のオーバードライブ量を確保すれば、プローブや電極パッドの高さのばらつきを吸収し、全てのプローブを電極パッドに確実に導通させることができる。
【0004】
近年、半導体デバイスの高速化にともなって、高周波信号を用いた検査を行うことができるプローブカードが求められている。プローブカードの高周波特性を向上させるためには、プローブの長さをできるだけ短くし、そのインダクタンスを低下させる必要がある。しかし、プローブの長さを短くしつつ、一定のオーバードライブ量を確保しようとすれば、オーバードライブ時にプローブをより大きく湾曲させる必要がある。その結果、プローブが応力限界を超えて塑性変形し、弾性力を保持することができないという問題が生じる。湾曲させたプローブは、その湾曲部の外側に最大の応力が作用する。このため、プローブの湾曲方向の厚さを減少させることにより、オーバードライブ時に発生する応力を抑制し、塑性変形を抑制することができる。
【0005】
図10は、従来のプローブカード300の一構成例を示した概略図である。このプローブカード300は、2枚のガイド板13,14により支持される垂直型のプローブ15を備えている。プローブ15は、上端がメイン基板10上のプローブ電極102に接続され、下端が検査対象物に接触する。また、プローブ15は、一定の間隔を隔てて配置された2枚のガイド板13,14に形成された2つのガイド孔131,141に挿通され、ガイド板13,14間において弾性変形する。対応する2つのガイド孔131,141はオフセット配置され、プローブ15は、非検査時でも緩やかに湾曲し、検査時には、大きく湾曲して座屈変形し、弾性力を保持する(例えば、特許文献1)。
【0006】
図11は、高周波特性を向上させたプローブカード301の一構成例を示した概略図である。図10の場合と比較すれば、間隔を短くしたガイド板13,14に長さがより短いプローブ15を挿通しているため、高周波特性を向上させることができる。また、プローブ15の座屈方向Dにおける厚さを減少させることにより、プローブ15が短くなっても、検査時における弾性力を保持することができる。ただし、プローブ15の厚さを減少させることにより、その断面積も減少することから、電流容量が低下し、耐電流特性が低下するという新たな問題が生じる。
【0007】
そこで、プローブの両端を除く中間領域に縦長のスリットが形成され、2以上の層板が離間して配置されたプローブが提案されている(例えば、特許文献2)。スリットを介して2以上の層板を備えることにより、塑性変形を抑制しつつ、電流容量を増大させることができる。ただし、スリットと両端との境界は、弾性変形時における応力の集中により破断し易いという新たな問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-050982号公報
【文献】特開2009-272308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のプローブは、その先端を検査対象物の電極パッドに接触させて導通させている。このため、電極パッドに凹凸が存在する場合には接触面積が小さくなり、また、電極パッド上に微細な異物が存在する場合に電極パッドに接触させることができないおそれがあった。
【0010】
図12は、従来のプローブ15の先端が電極パッド201上の凸部202に接触している様子を示した図である。電極パッド201の表面に凹凸が存在する場合、プローブ15の先端が、凸部202にのみ接触し、十分な接触面積が確保できず、電流容量が低下するおそれがある。
【0011】
図13は、従来のプローブ15の先端が電極パッド201上の異物203に接触している様子を示した図である。電極パッド201の表面上に異物203が存在する場合、プローブ15の先端が、異物203にのみ接触し、プローブ15を電極パッド201と導通させることができないおそれがある。
【0012】
さらに、プローブ15の上端とプローブ電極102との接続についても同様の問題が生じるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、プローブカードの信頼性を向上させることを目的とする。特に、接触不良が生じにくいプローブカードを提供することを目的とする。さらに、高周波特性及び耐電流特性が良好であり、かつ、導通性も良好なプローブカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の本発明の実施態様によるプローブカードは、1又は2以上のプローブ電極が形成された配線基板と、前記配線基板から下側に離間し、前記配線基板と対向して配置され、1又は2以上の上部ガイド孔が形成された上部ガイド板と、前記上部ガイド板から下側に離間し、前記上部ガイド板と対向して配置され、1又は2以上の下部ガイド孔が形成された下部ガイド板と、同一の前記上部ガイド孔内に挿通されるとともに、同一の前記下部ガイド孔内に挿通された、同一の前記プローブ電極及び検査対象物の同一の電極に接続される2以上のプローブからなるプローブ群とを備え、前記プローブ群を構成する各プローブが、前記上部ガイド板及び前記下部ガイド板間において互いに独立して座屈変形することが可能であり、下端が互いに独立して上下方向に移動可能であるように構成される。
【0015】
このような構成を採用することにより、検査対象物の電極パッド表面に凹凸がある場合や、電極パッドの一部の領域に異物がある場合でも、プローブを電極パッドと確実に導通することができる。また、プローブの断面積の減少をプローブ数の増大により緩和することができるため、電流容量の低下を抑制しつつ、高周波特性を向上させることができる。
【0016】
第2の本発明の実施態様によるプローブカードは、上記構成に加えて、前記プローブの側面には、摩擦抑制膜が形成されている。
【0017】
このような構成を採用することにより、隣接して配置されたプローブ同士が摩擦によって互いに干渉するのを防止することができる。
【0018】
第3の本発明の実施態様によるプローブカードは、上記構成に加えて、前記プローブが、前記上部ガイド板の上面に係止され、前記上部ガイド板からの脱落を防止する係止部を備える。
【0019】
第4の本発明の実施態様によるプローブカードは、上記構成に加えて、前記プローブが、その側面が上部ガイド孔の内壁面と対向するように配置され、前記係止部が、前記内壁面と対向する部位を含む側面において、前記上部ガイド板に係止されるように突出する突出部として構成される。
【0020】
このような構成を採用することにより、プローブ群が3以上のプローブで構成される場合であっても、各プローブの脱落を防止することができる。
【0021】
第5の本発明の実施態様によるプローブカードは、上記構成に加えて、前記下部ガイド孔が、前記上部ガイド孔に対しオフセットするように形成され、非検査時の前記プローブが前記上部ガイド板及び前記下部ガイド板間において湾曲しているように構成される。
【0022】
このような構成を採用することにより、同一のプローブ群に属する各プローブを同一方向に座屈変形させることができ、隣接して配置されたプローブ同士が干渉するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、プローブカードの信頼性を向上させることができる。特に、接触不良が生じにくいプローブカードを提供することができる。また、高周波特性及び耐電流特性が良好であり、かつ、導通性も良好なプローブカードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態1によるプローブカード100の一構成例を示した図である。
図2】プローブ群15Gの詳細構成の一例を示した斜視図である。
図3】検査時の各プローブ15の様子を示した図であり、図1と同一の鉛直面により切断したときの断面図である。
図4】各プローブ15を上部ガイド板13又は下部ガイド板14を通る水平面で切断したときの断面図である。
図5】各プローブ15を図1の切断面と交差する鉛直面で切断したときの断面図である。
図6】電極パッド201に凹凸がある場合における検査時の様子を示した図である。
図7】電極パッド201上に異物203がある場合における検査時の様子を示した図である。
図8】プローブ群15Gの他の構成例を示した図である。
図9】本発明の実施の形態2によるプローブ群15Gの要部の一例を示した図であり、各プローブ15を上部ガイド板13又は下部ガイド板14を通る水平面で切断したときの断面図である。
図10】従来のプローブカードの一構成例を示した概略図である。
図11】従来の高周波特性を向上させたプローブカードの一構成例を示した概略図である。
図12】従来のプローブ15の先端が電極パッド201上の凸部202に接触している様子を示した図である。
図13】従来のプローブ15の先端が電極パッド201上の異物203に接触している様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるプローブカード100の一構成例を示した図であり、水平に設置されたプローブカード100を鉛直面で切断したときの断面図である。プローブカード100は、プローブ15の設置面がステージ20上の半導体ウエハ200と対向するようにカードホルダ21に取り付けられ、ステージ20を上下動することにより、プローブ15を半導体ウエハ200上の電極パッド201に接触させることができる。
【0026】
プローブカード100は、メイン基板10と、補強板11と、プローブガイド12と、2以上のプローブ15とにより構成される。
【0027】
メイン基板10は、ウエハプローバーに着脱可能に取り付けられる配線基板であり、例えば、円板状のガラスエポキシ基板が用いられる。メイン基板10は、下面の外周縁部がウエハプローバーのカードホルダ21により支持され、水平に配置される。メイン基板10の上面の中央部には、メイン基板10の歪みを抑制するための補強板11が取り付けられ、上面の外周縁部には、テスター装置(不図示)の信号端子が接続される2以上の外部端子101が設けられている。また、下面の中央部には、プローブ15を接続するためのプローブ電極102が設けられている。
【0028】
プローブガイド12は、プローブ15を上下動可能に支持し、水平面内における位置決めを行うプローブ15の支持部材である。プローブガイド12は、プローブ15を支持する2つのガイド板13,14と、これらのガイド板13,14をメイン基板10に取り付けるガイド板取付部130,140とにより構成される。
【0029】
上部ガイド板13は、上部ガイド孔131が形成された板状部材、例えばセラミック板であり、ガイド板取付部130により、メイン基板10と平行に配置されている。上部ガイド板13は、メイン基板10から下方に離間し、メイン基板10と対向するように配置される。上部ガイド孔131は、上部ガイド板13を板厚方向に貫通する孔であり、プローブ15が挿通され、プローブ15の針元部を支持する。
【0030】
下部ガイド板14は、下部ガイド孔141が形成された板状部材、例えばセラミック板であり、ガイド板取付部140により、メイン基板10と平行に配置されている。下部ガイド板14は、上部ガイド板13から更に下方に離間し、上部ガイド板13と対向するように配置される。下部ガイド孔141は、下部ガイド板14を板厚方向に貫通する孔であり、プローブ15が挿通され、プローブ15の針先部を上下動可能に支持する。
【0031】
プローブ15は、メイン基板10と交差する方向に延び、オーバードライブにより座屈変形する垂直型のプローブである。プローブ15は、細長い形状を有する導電性材料からなり、上端がプローブ電極102に接続され、下端が検査対象物上の電極パッド201に接触する。また、プローブ15は、上部ガイド孔131に挿通され、さらに下部ガイド孔141にも挿通されている。プローブ15の材料には、ニッケル(Ni)合金、パラジウム(Pd)合金などの弾性特性及び導電特性がともに良好な金属材料が用いられる。プローブ15は、単一の導電性材料のみで形成してもよいが、異なる
導電性材料を積層して形成してもよい。例えば、特に高い導電特性を有する金(Au)、銅(Cu)などを一部に用いることもできる。
【0032】
プローブ群15Gは、互いに独立した2以上のプローブ15により構成され、プローブカード100上の各プローブ15は、いずれかのプローブ群15Gに属する。同一のプローブ群15Gに属するプローブ15は、同一の上部ガイド孔131に挿通され、同一のプローブ電極102に接続される。また、同一のプローブ群15Gに属するプローブ15は、同一の下部ガイド孔141に挿通され、半導体ウエハ200上の同一の電極パッド201に接触する。なお、同一のプローブ群15Gに属し、互いに隣接するプローブ15は、側面が互いに接触するように配置され、あるいは、僅かな隙間を挟んで対向するように配置される。つまり、本実施の形態によるプローブカード100におけるプローブ群15Gは、従来のプローブカードにおけるプローブに相当する。
【0033】
図2図5は、プローブ群15Gの詳細構成の一例を示した図であり、1つのプローブ群15Gを構成する3つのプローブ15が示されている。図2は、各プローブ15の外形を示した斜視図である。図3は、検査時の各プローブ15の様子を示した図であり、図1と同一の鉛直面により切断したときの断面図である。図4は、各プローブ15を上部ガイド板13又は下部ガイド板14を通る水平面で切断したときの断面図である。図5は、各プローブ15を図1の切断面と交差する鉛直面で切断したときの断面図である。
【0034】
プローブ15は、上端部である針元部151と、下端部である針先部152と、針元部151及び針先部152によって挟まれた弾性変形部150とにより構成される。また、プローブ15には、抜け落ち防止用の係止部155が設けられている。
【0035】
弾性変形部150は、上部ガイド板13及び下部ガイド板14の間に配置され、検査時のオーバードライブにより座屈変形する。針元部151の先端には、メイン基板10のプローブ電極102と接続するための接続チップ153が設けられている。また、針先部152の先端には、半導体ウエハ200の電極パッド201と接触するための接触チップ154が設けられている。
【0036】
上部ガイド孔131は、下部ガイド孔141に対し、座屈方向Dにオフセットさせて配置される(図3を参照)。座屈方向Dは、予め定められた水平面内の方向である。例えば、ガイド孔131,141の水平位置を一致させるようにガイド板13,14を配置した状態でプローブ15を両ガイド孔131,141に挿通した後、ガイド板13,14を座屈方向Dに所定の距離だけ相対的にスライドさせることによりガイド孔131,141をオフセット配置することができる。座屈方向Dは、プローブ15を座屈変形させる鉛直面(座屈面)上における水平方向である。このようなオフセット配置を行うことにより、プローブ15が湾曲していない直線形状であっても、非検査時の弾性変形部150を座屈面内において緩やかに湾曲させることができる。このため、検査時のオーバードライブにより弾性変形部150は、当該座屈面内においてより大きく湾曲し、座屈変形する。ガイド板13,14のオフセット配置により、プローブ15の座屈方向Dを予め定めることができ、同一のプローブ群15Gに属する各プローブ15の座屈方向Dを互いに一致させることができる。このため、各プローブ15は、互いに干渉することなく、互いに独立して座屈変形することができる。
【0037】
プローブ15は、例えば略四角柱の形成からなる(図4を参照)。この場合、弾性変形部150の断面は矩形からなり、座屈方向Dと一致する厚さHと、座屈方向Dと直交する幅Wとを有する。断面の厚さHは幅Wよりも短い。厚さHを小さくすれば、塑性変形を抑制しつつプローブ15の長さを短くすることができ、高周波特性を向上させることができる。
【0038】
ただし、厚さHを小さくすることにより、プローブ15の断面積が減少し、電流容量も減少することから、幅Wを厚さHよりも長くすることにより、断面積の減少を抑制し、電流容量の減少を抑制することができる。さらに、2以上のプローブ15を座屈方向Dに整列するように配置することにより、1つのプローブ15の断面積の減少をプローブ15の数の増加によって緩和又は補償し、電流容量を確保している。
【0039】
係止部155は、針元部151から水平方向に突出する突出部であり、上部ガイド板13の上面に係止され、プローブ15が上部ガイド板13から抜け落ちるのを防止している(図5を参照)。係止部155は、同一のプローブ群15G内の他のプローブ15と対向しない側面、つまり、上部ガイド孔131の内壁面と対向する部位を含む側面において、上部ガイド板13に係止されるように突出する突出部として形成される。なお、係止部155は、座屈変形により係止具合が浅くなり上部ガイド板13から抜け落ちることがないように、座屈方向Dと交差する方向に設けることが望ましい。
【0040】
図6は、電極パッド201に凹凸がある場合における検査時の様子を示した図である。本実施の形態によるプローブカード100では、同一のプローブ群15Gに属する各プローブ15が、独立して動作するように構成される。具体的には、針先部152が互いに独立して上下動し、弾性変形部150が互いに独立して座屈変形することができる。このため、電極パッド201の上面に凹凸が形成されている場合、当該上面の形状に応じて各プローブ15の下端の高さを異ならせることができ、全てのプローブ15を電極パッド201に接触させることができる。このため、十分な接触面積を確保し、検査の信頼性を向上させることができる。
【0041】
電極パッド201は、その領域の一部に凸部202が形成され、他の領域よりも高くなっている。図示した3つのプローブ15は、同一のプローブ群15Gに属するプローブであり、中央部のプローブ15は、凸部202に接触し、両端のプローブ15は、凸部202以外の領域に接触している。つまり、3本のプローブがそれぞれ電極パッド201と接触しているため、電極パッド201との間で十分な接触面積を確保することができる。
【0042】
図7は、電極パッド201上に異物203がある場合における検査時の様子を示した図である。図6の場合と同様、同一のプローブ群15Gに属する各プローブ15の下端の高さを異ならせることができるので、電極パッド201上に異物203があり、一部のプローブ15が異物に接触する場合であっても、他のプローブ15を電極パッド201に接触させることができる。このため、電極パッド201上に絶縁性の異物がある場合であっても、プローブ15と電極パッド201とを確実に導通させることができ、検査の信頼性を向上させることができる。
【0043】
図8の(a)~(f)は、プローブ群15Gの他の構成例を示した図であり、図4の場合と同様にして、各プローブ15を上部ガイド板13又は下部ガイド板14を通る水平面で切断したときの断面図である。
【0044】
(a)及び(b)のプローブ群15Gは、一列に配置された2つのプローブ15により構成される。(a)では、2つのプローブ15が座屈方向Dに整列して配置され、(b)では、2つのプローブ15が座屈方向Dと交差する方向に整列して配置されている。
【0045】
(c)のプローブ群15Gは、格子状に配置された4つのプローブ15により構成される。このプローブ群15Gでは、座屈方向Dに2つのプローブ15が整列し、座屈方向Dと交差する方向にも2つのプローブ15が整列するように配置されている。
【0046】
(d)のプローブ群15Gは、格子状に配置された6つのプローブ15により構成される。このプローブ群15Gでは、座屈方向Dに3つのプローブ15が整列し、座屈方向Dと交差する方向には2つのプローブ15が整列するように配置されている。
【0047】
(e)及び(f)のプローブ群15Gは、プローブ15として、互いに幅の異なるワイドプローブ15A及びナロープローブ15Bを備える。ワイドプローブ15Aの幅2Wは、ナロープローブ15Bの幅Wの2倍であり、座屈方向Dと交差する方向に整列させた2つのナロープローブ15Bの幅の合計2Wは、ワイドプローブ15Aの幅2Wと同一である。ここでは、便宜上、座屈方向Dと交差する方向に整列させた2つのナロープローブ15Bを分割プローブ15Cと呼ぶことにする。(e)及び(f)のプローブ群15Gでは、ワイドプローブ15Aと、分割プローブ15Cとを座屈方向Dに整列配置して構成される。(e)のプローブ群15Gでは、2つのワイドプローブ15Aが分割プローブ15Cを挟み込むように、座屈方向Dに整列して配置されている。一方、(f)のプローブ群15Gでは、2つの分割プローブ15Cがワイドプローブ15Aを挟み込むように、座屈方向Dに整列して配置されている。(e)及び(f)は、1又は2以上のワイドプローブ15Aと、1又は2以上の分割プローブ15Cとを混在させて、座屈方向Dに整列して配置する場合の一例である。
【0048】
(a)~(f)に示されたプローブ15は、抜け落ちを防止するための係止部155をそれぞれ備えている。このため、プローブ15は、ガイド孔131,141の内壁面と対向する部位を含む側面において、上部ガイド板13に係止されるように突出する係止部155を設ける必要がある。このため、係止部155を座屈方向Dと交差する方向に設ける場合、座屈方向Dと交差する方向に3以上のプローブ15が整列しないように配置される。つまり、座屈方向Dには、1又は2以上のプローブ15が整列し、座屈方向Dと交差する方向には、1又は2のプローブ15が整列する。
【0049】
また、(a)~(f)では、同一のプローブ群15Gに属するプローブ15は、その厚さHが全て同一であり、また、座屈方向Dと交差する方向におけるプローブ15の幅の合計が全て同一である。このため、各プローブ15の座屈変形に顕著な差が生じず、隣接するプローブ15同士が干渉するのを抑制することができる。
【0050】
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2によるプローブ群15Gの要部の一例を示した図であり、図4の場合と同様にして、各プローブ15を上部ガイド板13又は下部ガイド板14を通る水平面で切断したときの断面図である。プローブ15の側面には、摩擦抑制膜156が形成されている。
【0051】
摩擦抑制膜156は、互いに隣接して配置されたプローブ15が干渉するのを防止するための膜であり、プローブ15同士の対向する側面に形成される。例えば、接続チップ153及び接触チップ154を除き、プローブ15の側面の全周を覆うように形成されていることが望ましい。
【0052】
摩擦抑制膜156は、プローブ15の側面に、当該側面よりも摩擦係数が小さな材料からなる膜、例えば、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)膜を形成することにより得られる。DLC膜は、炭化水素又は炭素からなるアモルファスの硬質膜であり、PTFE膜よりも耐久性が高い。このため、摩擦抑制膜156としてDLC膜を用いることが望ましい。
【0053】
同一のプローブ群15Gに属するプローブ15は、同一のプローブ電極102と同一の電極パッド201とを接続しているため、プローブ15同士を絶縁する必要はなく、摩擦抑制膜156は、絶縁性の材料である必要はないが、摩擦係数の低減を優先し、プローブ15よりも導電性の低い材料を用いることができる。
【0054】
プローブ15の側面に摩擦抑制膜156を形成することにより、隣接するプローブ15間の摩擦を抑制し、独立して動作するプローブ15間に干渉が生じるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 プローブカード
10 メイン基板
101 外部端子
102 プローブ電極
11 補強板
12 プローブガイド
13 上部ガイド板
130 ガイド板取付部
131 上部ガイド孔
14 下部ガイド板
140 ガイド板取付部
141 下部ガイド孔
15 プローブ
150 弾性変形部
151 針元部
152 針先部
153 接続チップ
154 接触チップ
155 係止部
156 摩擦抑制膜
15A ワイドプローブ
15B ナロープローブ
15C 分割プローブ
15G プローブ群
20 ステージ
21 カードホルダ
200 半導体ウエハ
201 電極パッド
202 凸部
203 異物
D 座屈方向
図1
図2
図3
図4
図5
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図13