(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】レールクランプ装置
(51)【国際特許分類】
B66C 9/18 20060101AFI20241112BHJP
F16B 31/02 20060101ALI20241112BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20241112BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B66C9/18
F16B31/02 A
F16J15/18 C
B66C15/00 B
(21)【出願番号】P 2020124459
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】有吉 政博
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085217(JP,A)
【文献】実開平03-049288(JP,U)
【文献】特開2015-209328(JP,A)
【文献】特開2016-147752(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106567549(CN,A)
【文献】米国特許第01762705(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/00-23/94
F16B 31/02
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って走行する荷役装置を前記レールに対して固定するレールクランプ装置であって、
前記レールをクランプするクランプ部と、
前記荷役装置側の第1の構造物と前記クランプ部側の第2の構造物とを接続する接続部材と、
前記接続部材、及び前記第1の構造物または
前記第2の構造物に挿入されることで互いを連結する軸部材と、
前記接続部材に設けられ、前記荷役装置と前記クランプ部との間の上下方向、及び水平方向の少なくとも何れか一方の傾きを許容する許容部と、を備え
、
前記軸部材には、前記第1の構造物または前記第2の構造物と、前記接続部材との間の境界部において、破断を誘発する破断誘発部が形成され、
前記第1の構造物または前記第2の構造物と、前記接続部材との間の前記境界部には、前記軸部材側への水の浸入を抑制するシール部が設けられる、レールクランプ装置。
【請求項2】
前記許容部は、前記荷役装置と前記クランプ部との間の相対的な傾きを全方向に傾くように変位して許容する、請求項1に記載のレールクランプ装置。
【請求項3】
前記許容部は、球面滑り軸受けによって構成される、請求項1または2に記載のレールクランプ装置。
【請求項4】
前記第1の構造物または第2の構造物と、前記接続部材との境界部には隙間が形成されている、請求項1~3の何れか一項に記載のレールクランプ装置。
【請求項5】
レールに沿って走行する荷役装置を前記レールに対して固定するレールクランプ装置であって、
前記レールをクランプするクランプ部と、
前記荷役装置側の第1の構造物と前記クランプ部側の第2の構造物とを接続する接続部材と、
前記接続部材、及び前記第1の構造物または第2の構造物に挿入されることで互いを連結する軸部材と、
前記接続部材に設けられ、前記荷役装置と前記クランプ部との間の上下方向、及び水平方向の少なくとも何れか一方の傾きを許容する許容部と、を備え、
前記第1の構造物及び前記第2の構造物のいずれか一方には、前記第1の構造物及び前記第2の構造物のいずれか他方に向かって延びるガイド部材が設けられ、
前記第1の構造物及び前記第2の構造物のいずれか他方には、前記ガイド部材に沿ってスライドするスライド部材が設けられ、
前記スライド部材は、前記ガイド部材を挟む一対の壁部を少なくとも有し、
一対の前記壁部と前記ガイド部材との間には隙間が形成される
、レールクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レールクランプ装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。このレールクランプ装置は、レールに沿って走行する荷役装置をレールに対して固定する装置である。レールクランプ装置は、レールに対して固定されるクランプ台車(クランプ部)と、荷役装置側のブラケットとクランプ台車側のブラケットとに挿入されることで互いを連結するシアーピン(軸部材)と、を備える。このような構成により、荷役装置はシアーピン及びクランプ台車を介してレールに固定される。地震が大きくなるなどして、シアーピンに所定の大きさの荷重が作用すると、シアーピンが破断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、装置の制作精度やレールの敷設精度などの影響により、クランプ台車と荷役装置とに、相対的な傾きが生じる場合がある。このような状況において、特許文献1に記載されたレールクランプ装置では、シアーピンに対して、荷役装置及び/又はクランプ台車が傾いた状態(すなわち垂直が維持されていない状態)となってしまう。これにより、シアーピンを取り付けることが難しくなるという問題や、設計された荷重にてシアーピンが破断されないなどの問題が生じる場合があった。従って、装置の制作精度やレールの敷設精度等によらず、設計通りの荷重でシアーピンを破断させることで、レールクランプ装置の設計に従った性能を発揮することが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、設計に従った性能を発揮し易くすることができるレールクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレールクランプ装置は、レールに沿って走行する荷役装置を前記レールに対して固定するレールクランプ装置であって、レールをクランプするクランプ部と、荷役装置側の第1の構造物とクランプ部側の第2の構造物とを接続する接続部材と、接続部材、及び第1の構造物または第2の構造物に挿入されることで互いを連結する軸部材と、接続部材に設けられ、荷役装置とクランプ部との間の相対的な傾きを許容する許容部と、を備える。
【0007】
接続部材は、荷役装置側の第1の構造物とクランプ部側の第2の構造物とを接続する。また、軸部材は、接続部材、及び第1の構造物または第2の構造物に挿入されることで互いを連結する。そのため、荷役装置は、接続部材及び軸部材を介してクランプ部に接続され、当該クランプ部を介してレールに固定された状態となる。また、地震等による荷役装置の揺れにより、軸部材が荷重を受ける。ここで、接続部材には、荷役装置とクランプ部との間の相対的な傾きを許容する許容部が設けられる。この場合、装置の制作精度やレールの敷設精度等により、荷役装置とクランプ部との間に相対的な傾きが発生した場合であっても、許容部は、接続部材において当該傾きを許容することができる。従って、軸部材は、接続部材と第1の構造物との連結箇所、または接続部材と第2の構造物との連結箇所において、前述の傾きに応じた態様で挿入可能となり、且つ、前述の傾きに応じた姿勢を維持することが可能となる。これにより、装置の制作精度やレールの敷設精度等によらず、設計通りの荷重で軸部材が破断し易くなる。以上より、レールクランプ装置は、設計に従った性能を発揮し易くなる。
【0008】
軸部材には、第1の構造物または第2の構造物と、接続部材との間の境界部において、破断を誘発する破断誘発部が形成されてよい。境界部は、軸部材に荷重が作用しやすい箇所である。軸部材は、当該箇所に破断誘発部を有するため、設計に従った位置にて、設計に従った荷重にて破断し易くなる。
【0009】
第1の構造物または第2の構造物と、接続部材との間の境界部には、軸部材側への水の浸入を抑制するシール部が設けられてよい。境界部は、軸部材に荷重が作用しやすい箇所である。シール部は、軸部材において破断し易い箇所に水が浸入することを抑制することで、軸部材の腐食を抑制できる。これにより、腐食の影響を低減し、軸部材が設計に従った荷重で破断し易くなる。
【0010】
第1の構造物及び第2の構造物のいずれか一方には、第1の構造物及び第2の構造物のいずれか他方に向かって延びるガイド部材が設けられ、第1の構造物及び第2の構造物のいずれか他方には、ガイド部材に沿ってスライドするスライド部材が設けられ、スライド部材は、ガイド部材を挟む一対の壁部を少なくとも有し、一対の壁部とガイド部材との間には隙間が形成されてよい。軸部材が破断した後に、スライド部材がガイド部材に沿ってスライドすることで、荷役装置は、ガイド部材に沿った方向へ移動する。ここで、一対の壁部とガイド部材との間には隙間が形成されている。従って、一対の壁部の対向方向において、荷役装置とクランプ部との間の位置ずれを許容することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、設計に従った性能を発揮し易くすることができるレールクランプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るレールクランプ装置が採用される荷役装置の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るレールクランプ装置の側面図である。
【
図4】
図1に示すIV-IV線に沿った断面図である。
【
図6】
図1に示すVI-VI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るレールクランプ装置が採用される荷役装置2の一例を示す図である。
図1では、荷役装置2として、コンテナクレーンが例示されている。荷役装置2は、岸壁4上にそれぞれ配置された脚部8,9と、脚部8,9に架け渡されると共に海側へ延びるブーム部10とを備えている。また、荷役装置2は、ブーム部10に沿って移動可能な吊り装置12を有する。脚部8は、レール6上を走行可能であり、脚部9は、レール7上を走行可能である。脚部8,9の下端部8a,9aには、レール6,7に沿って走行するための走行装置13がそれぞれ設けられている。走行装置13は、脚部8,9に対して設けられている。
【0015】
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態に係るレールクランプ装置100の構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るレールクランプ装置100の側面図である。本明細書では、レール7が延在する水平方向を「X軸方向」とし、X軸方向と直交する水平方向を「Y軸方向」とし、上下方向を「Z軸方向」とする。また、X軸方向の一方側をX軸方向の正側とし、Y軸方向の一方側(レール6,7のうちのレール7側)をY軸方向の正側とし、上側をZ軸方向の正側とする。なお、以降の説明において、特に言及がない場合は、クランプ部21と荷役装置2との間に相対的な傾きがない状態を基準として各構成要素の説明を行う。レールクランプ装置100は、レール7に沿って走行する荷役装置2をレール7に対して固定する装置である。レールクランプ装置100は、荷役装置2の動作中には走行装置13のX軸方向の移動を規制する。一方、レールクランプ装置100は、地震発生時等には後述のシアーピンに所定の大きさの荷重が作用した場合に当該シアーピンを破断させることで、走行装置13の固定を解除することができる。走行装置13の固定が解除されると、走行装置13は、レール7上をX軸方向に移動することができるため、荷役装置2に対してX軸方向に加わる振動外力を吸収することができる。なお、荷役装置2は、Y軸方向の揺れに対する免震機構をさらに有してもよい。
【0016】
図2に示すように、レールクランプ装置100は、クランプ部21と、荷役装置側ブラケット22(第1の構造物)と、クランプ部側ブラケット23(第2の構造物)と、接続部材24と、シアーピン26(軸部材)を有するシアーピンユニット27と、軸受部28(許容部)と、一対のガイド部材29と、一対のスライド部材30と、を備える。レールクランプ装置100は、荷役装置2の走行装置13に対してX軸方向の正側に設けられる。走行装置13は、レール7上を走行する車輪13aと、当該車輪13aを支持する本体部13bを有する。レールクランプ装置100は、本体部13bのX軸方向の正側の端部に設けられる。
【0017】
クランプ部21は、レール7をクランプする装置である。クランプ部21は、レール7上であって、荷役装置2の走行装置13からX軸方向の正側へ離間した位置に配置される。クランプ部21は、箱形の本体部21aと、レール7を走行するための車輪21bと、レール7をクランプするクランプ部材21cと、を備える。本体部21aの内部には、クランプ部材21cによるレール7のクランプとクランプ解除を切り替えるための機構が設けられている。
【0018】
荷役装置側ブラケット22は、荷役装置2の走行装置13に対して固定される構造物である。荷役装置側ブラケット22は、荷役装置2側、すなわちX軸方向の負側に取り付けられる。荷役装置側ブラケット22は、レール7から上側に離間した位置において、XY平面と平行に延びる底部22aを有する。また、荷役装置側ブラケット22は、底部22aのX軸方向の負側の領域に、YZ平面に平行に延びる側部22bを有する。側部22bのZ軸方向の負側の部分は、底部22aに対して、例えば溶接によって固定される。側部22bのZ軸方向の正側の部分は、走行装置13の本体部13bのX軸方向の正側の端部に固定される。側部22bのZ軸方向の正側の端部は、フランジ部13cを介して、例えばボルトの締結によって本体部13bに固定される。なお、底部22aは、側部22bを介さずに走行装置13に直接固定されてもよい。底部22aには、側部22bに対してX軸方向の正側で対向するように、側部22cが形成される。また、側部22bと側部22cとの間には、XZ平面に平行に延びる一対の補強部22d(
図4も参照)が形成される。荷役装置側ブラケット22は、底部22aのX軸方向の正側の領域(側部22cよりもX軸方向の正側)に、XZ平面に平行に延びる吊金具22eを有する。吊金具22eは、荷役装置側ブラケット22を走行装置13にボルト締結する際に、吊具を取り付けて荷役装置側ブラケット22を吊り下げるための金具である。
【0019】
クランプ部側ブラケット23は、クランプ部21の本体部21aに対して固定される構造物である。クランプ部側ブラケット23は、クランプ部21側、すなわちX軸方向の正側に取り付けられる。クランプ部側ブラケット23は、X軸方向の正側の端部において、YZ平面と平行に延びる側部23aを有する。側部23aは、クランプ部21の本体部21aのX軸方向の負側の端部に固定される。側部23aは、フランジ部21dを介して、例えばボルトの締結によってクランプ部21の本体部21aに固定される。また、クランプ部側ブラケット23は、側部23aからX軸方向の負側へ延びる複数の部材、及びYZ平面と平行に広がる部材を有する。例えば、クランプ部側ブラケット23は、側部23aのZ軸方向の上側の領域に接続され、XZ平面に平行に延びる吊金具23bを有する。吊金具23bは、クランプ部側ブラケット23をクランプ部21にボルト締結する際に、吊具を取り付けてクランプ部側ブラケット23を吊り下げるための金具である。
【0020】
接続部材24は、荷役装置側ブラケット22と、クランプ部側ブラケット23とを接続する部材である。これにより、接続部材24は、荷役装置2に作用する振動外力などをクランプ部21に伝達することができる。接続部材24は、荷役装置側ブラケット22及びクランプ部側ブラケット23の下側であって、レール7よりも上側の位置において、X軸方向に延びる。接続部材24は、荷役装置側ブラケット22及びクランプ部側ブラケット23における、Y軸方向の中央位置に配置される(
図4も参照)。
【0021】
接続部材24は、第1の部材31と、第2の部材32と、継手部材33と、を備える。第1の部材31は、X軸方向の負側の端部において、荷役装置側ブラケット22の底部22aと連結される。なお、第1の部材31と底部22aとは、後述のシアーピン26を介して連結される。また、第1の部材31は、当該連結箇所からX軸方向の正側へ向かって、クランプ部側ブラケット23の位置まで延びる。第2の部材32は、クランプ部側ブラケット23の側部23aに固定され、当該側部23aからX軸方向の負側へ向かって延びる。継手部材33は、第1の部材31のX軸方向の正側の端部に設けられ、第2の部材32のX軸方向の負側の端部と連結される。第2の部材32と継手部材33との連結箇所に、後述の軸受部28が設けられる。
【0022】
シアーピン26は、接続部材24の第1の部材31、及び荷役装置側ブラケット22の底部22aに挿入されることで、互いを連結する部材である。また、シアーピンユニット27は、当該連結箇所にシアーピン26を好適に挿入するためのユニットである。シアーピンユニット27は、第1の部材31に形成された貫通孔37、及び底部22aに形成された貫通孔38に挿入される(
図3参照)。なお、第1の部材31は、底部22aに対して下方へ僅かに離間した位置に配置される。これにより、第1の部材31と底部22aとの間の境界部40(
図3参照)には、僅かな隙間が形成される。シアーピンユニット27は、荷役装置側ブラケット22及び接続部材24におけるY軸方向の中央位置に設けられる。よって、挿入状態のシアーピン26はレール7の真上に配置される。
【0023】
ここで、
図3を参照して、シアーピンユニット27の詳細な構成について説明する。
図3は、シアーピンユニット27の拡大断面図である。
図3に示すように、シアーピンユニット27は、シアーピン26と、挿入部材41,42と、段差形成部材43と、蓋部材44と、シール部46と、を備える。
【0024】
挿入部材41は、シアーピン26を挿入するための貫通孔41aを形成する円筒状の部材である。挿入部材41は、接続部材24の第1の部材31の貫通孔37に嵌め込まれる。貫通孔37は、少なくともシアーピン26の挿入本体部26aの外径よりも大きな内径を有して、第1の部材31をZ軸方向に貫通する。挿入部材41は、中央位置に上下方向に平行に延びる円形の貫通孔41aを有する。挿入部材42は、シアーピン26を挿入するための貫通孔42aを形成する円筒状の部材である。挿入部材42は、底部22aの貫通孔38に嵌め込まれる。貫通孔38は、少なくともシアーピン26の挿入本体部26aの外径よりも大きな内径を有して、底部22aをZ軸方向に貫通する。挿入部材42は、中央位置に上下方向に平行に延びる円形の貫通孔42aを有する。段差形成部材43は、挿入部材42の貫通孔42a内に段差を形成するための円筒状の部材である。段差形成部材43は、貫通孔42aの下側の領域に配置される。段差形成部材43は、中央位置に上下方向に平行に延びる円形の貫通孔43aを有する。なお、貫通孔41a,42a,43aの中心線は、互いに一致する。蓋部材44は、挿入部材42の貫通孔42aを上方から塞ぐための部材である。蓋部材44は、貫通孔41a,42a,43a内にシアーピン26が挿入された後で、シアーピン26を上方から押さえつけた状態で、挿入部材42に取り付けられる。
【0025】
シール部46は、荷役装置側ブラケット22の底部22aと、接続部材24の第1の部材31との間の境界部40において、シアーピン26側への水の浸入を抑制する部分である。シール部46は、シアーピン26から外周側へ離間した位置において、シアーピン26の全周を取り囲むように、設けられる(
図4も参照)。シール部46は、ゴムやシリコンなどの水密性を確保するための部材によって構成される。なお、シール部46は、境界部40のうち、挿入部材41,42間に設けられている。挿入部材41の上面は、第1の部材31の上面と略同一平面を形成している。挿入部材41の下面は、底部22aの下面と略同一平面を形成している。従って、第1の部材31の上面と底部22aの下面との間の隙間と同じ大きさの隙間が、挿入部材41の上面と挿入部材42の下面との間に形成される。
【0026】
シアーピン26は、挿入本体部26aと、頭部26bと、ネジ部26cと、を有する。挿入本体部26aは、挿入部材41の貫通孔41a及び段差形成部材43の貫通孔43aに挿入される部分である。なお、貫通孔41a,43aの内径は同一であり、当該貫通孔41a,43aに挿入される挿入本体部26aの外径も同一である。頭部26bは、挿入本体部26aの上端部に形成され、挿入本体部26aよりも外径が大きい部分である。頭部26bの下面は、段差形成部材43の上面(すなわち段差面)に載置される。頭部26bは、挿入部材42の貫通孔42aのうち、段差形成部材43よりも上側の領域に収容される。ネジ部26cは、挿入本体部26aの下端部に形成され、挿入部材41よりも下方へはみ出る部分である。ネジ部26cには、ナット47が締結される。これにより、シアーピン26は、頭部26bとナット47とで挿入部材41及び段差形成部材43を挟み込むようにして、固定される。なお、シアーピン26のZ軸方向の正側の端部、すなわち、頭部26bのZ軸方向の正側の端部には、アイボルト26eが取り付けられる。アイボルト26eは、シアーピン26を抜く際に引っ張られる箇所である。
【0027】
シアーピン26には、境界部40において、破断を誘発する破断誘発部26dが形成される。破断誘発部26dは、境界部40において、挿入本体部26aの外径を部分的に細くすることによって形成される。具体的に、破断誘発部26dは、挿入本体部26aの外周面に、全周にわたって形成された溝部(くびれ部)によって構成される。破断誘発部26dの下端部の高さ位置は、挿入部材41(第1の部材31)の上面と略同位置に設定される。破断誘発部26dの上端部の高さ位置は、挿入部材42(底部22a)の下面と略同位置に設定される。
【0028】
次に、
図5を参照して、軸受部28の詳細な構成について説明する。
図5は、軸受部28の断面図であり、(a)は荷役装置2とクランプ部21との間に相対的な傾きが生じていない状態を示し、(b)は相対的な傾きが生じている状態を示す。(b)では、クランプ部21に対して荷役装置2が上側へ傾いたときの様子を示している。軸受部28は、接続部材24に設けられ、荷役装置2とクランプ部21との間の相対的な傾きを許容する部分である。軸受部28は、第2の部材32と継手部材33との連結部に設けられている。本実施形態では、軸受部28は、球面滑り軸受によって構成される。具体的に、
図5(a)に示すように、軸受部28は、第2の部材32と、継手部材33と、軸部51と、内輪52と、外輪53と、を備える。
【0029】
第2の部材32は、XY平面と平行に延びる部材である。継手部材33は、第2の部材32を上下から挟むように配置された上壁部33a及び下壁部33bと、上壁部33a及び下壁部33bを連結する連結壁部33cと、を有する。連結壁部33cは継手部材33のX軸方向の負側の端部に設けられる。また、連結壁部33cは、第1の部材31のX軸方向の正側の端部に固定される。
【0030】
軸部51は、継手部材33の上壁部33aと下壁部33bとの間で上下方向に延びる部材である。軸部51は、上壁部33a及び下壁部33bを貫通した状態で固定される。内輪52は、軸部51に固定された環状の部材である。内輪52の外周面は、外周側に凸となるような球面状の滑り面52aを有する。外輪53は、第2の部材32の貫通孔32aに嵌め込まれた環状の部材である。外輪53の内周面は、外周側に窪むような球面状の滑り面53aを有する。内輪52の滑り面52aと外輪53の滑り面53aとは、互いに接触した状態で滑ることができる。従って、軸部51の中心線は、第2の部材32に対して全方向に傾くように変位することができる。
【0031】
例えば、レール7の敷設精度や装置の制作精度の影響で、走行装置13がクランプ部21(
図2参照)に対して上側へ傾斜するような位置関係になるものとする。この場合、
図5(b)に示すように、第1の部材31が水平方向に対して上側へ傾斜するような力が作用する。このとき、内輪52が、外輪53に対して滑ることで、軸部51及び継手部材33が第1の部材31と共に傾斜することが許容される。なお、軸受部28が許容することができる傾きの方向は、上側に限定されず、下側、及び水平方向への傾きも許容できる。
【0032】
次に、
図2、
図4及び
図6を参照して、ガイド部材29及びスライド部材30の詳細な構成について説明する。
図4は、
図2に示すIV-IV線に沿った断面図である。
図6は、
図2に示すVI-VI線に沿った断面図である。
図2に示すように、荷役装置側ブラケット22には、クランプ部側ブラケット23に向かってX軸方向の正側に延びるガイド部材29が設けられる。ガイド部材29は、荷役装置側ブラケット22のうち、X軸方向の正側の領域に設けられている。ガイド部材29は、接続部材24よりも上側の位置において、X軸方向と平行をなすように延びる。ガイド部材29のX軸方向の正側の端部は、クランプ部側ブラケット23の側部23a付近に配置される。
【0033】
図4に示すように、一対のガイド部材29が、荷役装置側ブラケット22のY軸方向における両端部に設けられている。一対のガイド部材29は、少なくとも接続部材24よりもY軸方向における外側に配置され、本実施形態では、底部22aよりもY軸方向における外側に配置される。なお、Y軸方向における外側とは、レールクランプ装置100のY軸方向における中央から遠ざかる側を意味し、Y軸方向における内側とは、中央へ近づく側を意味する。ガイド部材29は、H型鋼によって構成されており、一対のフランジ部29a,29bと、ウェブ部29cと、を有する。ガイド部材29は、フランジ部29a,29bがXZ平面と平行をなすように配置される。フランジ部29aはY軸方向における外側に配置され、フランジ部29bはY軸方向における内側に配置される。また、フランジ部29bは、荷役装置側ブラケット22に固定される。
【0034】
図2に示すように、クランプ部側ブラケット23には、ガイド部材29に沿ってスライドするスライド部材30が設けられる。一対のスライド部材30が、クランプ部側ブラケット23のY軸方向における両端部に設けられている。スライド部材30は、ガイド部材29よりもY軸方向における内側に配置され、当該ガイド部材29を受容するように設けられる。なお、ガイド部材29のX軸方向の正側の端部は、クランプ部側ブラケット23には固定されておらず、スライド部材30に対して移動可能に受容されただけの状態である。スライド部材30は、クランプ部側ブラケット23よりもX軸方向の負側へは延びておらず、スライド部材30のX軸方向の長さは、クランプ部側ブラケット23のX軸方向の長さと略同じである。
【0035】
図6に示すように、スライド部材30は、ガイド部材29を上下方向に挟む一対の壁部61,62と、壁部61,62同士を連結する側部63と、を有する。スライド部材30は、壁部61,62及び側部63でスライド部材30のフランジ部29bを取り囲むように配置される。上側の壁部61の下面は、フランジ部29bの上端部と略接触するように配置される。下側の壁部62の上面は、フランジ部29bの下端部から下方へ離間するように配置される。これにより、一対の壁部61,62とガイド部材29との間には隙間66が形成される。なお、隙間66は、壁部61とフランジ部29bの上端部との間に形成されてもよい。側部63のY軸方向の外側面には、スライド板64が設けられる。これにより、フランジ部29bの側面は、スライド板64に沿ってX軸方向に滑ることが可能となる。
【0036】
図4に示すように、荷役装置側ブラケット22には、位置合わせガイドピン70が、設置されている。位置合わせガイドピン70は、シアーピン26を底部22aの貫通孔38及び接続部材24の第1の部材31の貫通孔37(
図3参照)に対して挿入するために用いられる工具である。シアーピン26の取付時には、シアーピン26が組み込まれた状態のシアーピンユニット27が、底部22a及び第1の部材31に対して取り付けられる。位置合わせガイドピン70は、押し込み部71と、押し込み部71から上方へ延びる棒状部72と、作業者が握るための把持部73と、を備える。押し込み部71の外径は、シアーピンユニット27の外径と等しい。押し込み部71は、シアーピン26を上側から押し込むための下端部71aと、位置合わせに用いるテーパ部71bと、を有する。
図3及び
図4を参照して説明すると、作業者は、シア―ピン26を挿入する前に、底部22aの貫通孔38と接続部材24の第1の部材31の貫通孔37を重ねて、位置合わせガイドピン70を下端部71aから挿入する。位置合わせガイドピン70の棒状部72まで挿入されると、底部22aの貫通孔38と接続部材24の貫通孔37は完全に重なる。この状態で、位置合わせガイドピン70を引き抜き、貫通孔37,38にシア―ピンユニット27を挿入する。荷役装置側ブラケット22のY軸方向の負側の端部付近には、位置合わせガイドピン70を収容して保持するための保持部76が形成されている。保持部76は、上下方向に延びる円筒状の部材であり、位置合わせガイドピン70を内部空間に収容可能である。このような位置に保持部76が設けられていることにより、作業者は、シアーピン26の挿入作業が必要になった時には、位置合わせガイドピン70をすぐに取り出すことができる。すなわち、作業者は、位置合わせガイドピン70を倉庫などに取りに行く必要はなく、レールクランプ装置100自体に設けられた保持部76から速やかに位置合わせガイドピン70を取り出し、作業後は、速やかに保持部76へ収容できる。
【0037】
次に、本発明の実施形態に係るレールクランプ装置100の作用・効果について説明する。
【0038】
レールクランプ装置100は、レール7に沿って走行する荷役装置2をレール7に対して固定するレールクランプ装置である。レールクランプ装置100は、レール7をクランプするクランプ部21と、荷役装置側ブラケット22とクランプ部側ブラケット23とを接続する接続部材24と、接続部材24、及び荷役装置側ブラケット22に挿入されることで互いを連結するシアーピン26と、接続部材24に設けられ、荷役装置2とクランプ部21との間の相対的な傾きを許容する軸受部28と、を備える。
【0039】
接続部材24は、荷役装置側ブラケット22とクランプ部側ブラケット23とを接続する。また、シアーピン26は、接続部材24、及び荷役装置側ブラケット22に挿入されることで互いを連結する。そのため、荷役装置2は、接続部材24及びシアーピン26を介してクランプ部21に接続され、当該クランプ部21を介してレール7に固定された状態となる。また、地震等による荷役装置2の揺れにより、シアーピン26が荷重を受ける。ここで、接続部材24には、荷役装置2とクランプ部21との間の相対的な傾きを許容する軸受部28が設けられる。この場合、装置の制作精度やレール7の敷設精度等により、荷役装置2とクランプ部21との間に相対的な傾きが発生した場合であっても、軸受部28は、接続部材24において当該傾きを許容することができる(例えば
図5(b)参照)。従って、シアーピン26は、接続部材24と荷役装置側ブラケット22の両方に対して垂直を維持することが可能となる。これにより、装置の制作精度やレールの敷設精度等によらず、設計通りの荷重でシアーピン26が破断し易くなる。以上より、レールクランプ装置100は、設計に従った性能を発揮し易くなる。
【0040】
シアーピン26には、荷役装置側ブラケット22と、接続部材24との間の境界部40において、破断を誘発する破断誘発部26dが形成される。境界部40は、シアーピン26に荷重が作用しやすい箇所である。シアーピン26は、当該箇所に破断誘発部26dを有するため、設計に従った位置にて、設計に従った荷重にて破断し易くなる。
【0041】
荷役装置側ブラケット22と、接続部材24との間の境界部40には、シアーピン26側への水の浸入を抑制するシール部46が設けられる。境界部40は、シアーピン26に荷重が作用しやすい箇所である。シール部46は、シアーピン26において破断し易い箇所に水が浸入することを抑制することで、シアーピン26の腐食を抑制できる。これにより、腐食の影響を低減し、シアーピン26が設計に従った荷重で破断し易くなる。
【0042】
荷役装置側ブラケット22には、クランプ部側ブラケット23に向かって延びるガイド部材29が設けられ、クランプ部側ブラケット23には、ガイド部材29に沿ってスライドするスライド部材30が設けられ、スライド部材30は、ガイド部材29を挟む一対の壁部61,62を少なくとも有し、一対の壁部61,62とガイド部材29との間には隙間66が形成される。シアーピン26が破断した後に、スライド部材30がガイド部材29に沿ってスライドすることで、荷役装置2は、ガイド部材29に沿った方向(X軸方向)へ移動する。ここで、一対の壁部61,62とガイド部材29との間には隙間66が形成されている。従って、一対の壁部61,62の対向方向(上下方向)において、荷役装置2とクランプ部21との間の位置ずれを許容することができる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
例えば、許容部は、上述の実施形態のような球面滑り軸受による軸受部に限定されない。すなわち、荷役装置とクランプ部との間の相対的な傾きを許容することができる構造であれば、具体的な構造は特に限定されない。例えば、複数のヒンジ構造を組み合わせることで、許容部を構成してもよい。ただし、許容部は、傾きを許容する機能を有すると同時に、軸方向の荷重に対して耐力を有することが好ましい。
【0045】
上述の実施形態では、シアーピンが荷役装置側に設けられていたが、クランプ部側に設けられてもよい。その場合、許容部は、クランプ部側に変えて、荷役装置側に設けられてよい。なお、許容部が接続部材におけるどの位置に設けられるかは特に限定されず、接続部材におけるX軸方向の中央位置付近に設けられてもよい。
【0046】
上述の実施形態では、ガイド部材は荷役装置側に固定され、スライド部材はクランプ部側に固定されていたが、ガイド部材がクランプ部側に固定され、スライド部材が荷役装置側に固定されてもよい。
【0047】
上述の実施形態では、荷役装置側の第1の構造物として、走行装置に対して荷役装置側ブラケットが追加で設けられていたが、走行装置自体にシアーピンを挿入する機構が設けられてもよい。同じく、クランプ部側の第2の構造物として、クランプ部に対してクランプ部側ブラケットが追加で設けられていたが、クランプ部自体に各部材が設けられてもよい。
【0048】
本発明のレールクランプ装置は、コンテナクレーン、橋形クレーンなどのクレーンのみならず、シアーピンが用いられる全ての荷役装置(連続式アンローダ、ヤード機器、シップローダ等)に採用可能である。
【符号の説明】
【0049】
2…荷役装置、21…クランプ部、22…荷役装置側ブラケット(第1の構造物)、23…クランプ部側ブラケット(第2の構造物)、24…接続部材、26…シアーピン(軸部材)、28…軸受部(許容部)、29…ガイド部材、30…スライド部材、46…シール部、61,62…壁部、100…レールクランプ装置。