(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
F27D 3/06 20060101AFI20241112BHJP
F27D 3/00 20060101ALI20241112BHJP
F27B 5/13 20060101ALI20241112BHJP
F27B 5/12 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F27D3/06 B
F27D3/00 B
F27B5/13
F27B5/12
(21)【出願番号】P 2020152118
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】有井 宏信
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-128409(JP,A)
【文献】特開平11-156528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00-3/18
F27B 5/13-5/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容しこの被処理物とともに加熱炉内に対して搬入および搬出されるバスケットと、
前記バスケットに衝撃伝達可能に連結され、前記バスケットから離隔した位置で、前記被処理物を前記バスケットから落下させる衝撃力を発生する衝撃付与機構と、
前記バスケットを、前記被処理物を保持する保持位置と、前記被処理物を落下させる落下位置と、の間で回転変位可能に支持する支持機構と、
を備え
、
前記衝撃付与機構は、前記バスケットが前記保持位置から前記落下位置へ変位することに伴う回転力を前記衝撃力に変換するように構成されており、
前記衝撃付与機構は、所定の回転軸線回りに前記バスケットと連動回転可能に連結された回転部材と、前記バスケットが前記保持位置から前記落下位置へ回転したときに前記回転部材と衝突するストッパと、を含んでいる、熱処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の熱処理装置であって、
前記支持機構は、前記バスケットに連結された連結部を有し前記バスケットを支持する支軸を含み、
前記回転部材は、前記支軸において前記連結部から離隔した位置に設けられている、熱処理装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の熱処理装置であって、
前記バスケットを前記保持位置から前記落下位置へ変位させる駆動力を発生するように且つ回転速度調整可能に構成されたモータをさらに備えている、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン素材等の素材に溶体化熱処理を施すことがある(例えば、特許文献1参照)。チタン素材への溶体化熱処理では、チタン素材の加熱後に、チタン素材を急冷させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶体化熱処理は、チタン素材単体に対して行われることもある。この場合の熱処理は、例えば、バスケットにチタン素材が載せられ、このバスケットとともにチタン素材が加熱される。そして、加熱処理の後に、バスケットを上下逆さまに反転させることで、チタン素材は水槽に落下されて冷却される。
【0005】
ここで、チタン素材は、高温になることで拡散しバスケットに拡散接合することがある。このようにバスケットにくっついたチタン素材は、バスケットを上下逆さまに反転させても落下しない。このため、従来は、バスケット自体に直接衝撃を加えることでバスケットからチタン素材を分離していた。しかしながら、高温で軟化したバスケットに直接衝撃を加えることになるため、バスケットの変形を招き、バスケットの損傷が激しい。
【0006】
上記の課題に鑑み、本発明の目的の一つは、被処理物を熱処理する際に用いられ被処理物を保持するバスケットの損傷を抑制できる熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置は、被処理物を収容しこの被処理物とともに加熱炉内に対して搬入および搬出されるバスケットと、前記バスケットに衝撃伝達可能に連結され、前記バスケットから離隔した位置で、前記被処理物を前記バスケットから落下させる衝撃力を発生する衝撃付与機構と、前記バスケットを、前記被処理物を保持する保持位置と、前記被処理物を落下させる落下位置と、の間で回転変位可能に支持する支持機構と、を備え、前記衝撃付与機構は、前記バスケットが前記保持位置から前記落下位置へ変位することに伴う回転力を前記衝撃力に変換するように構成されており、前記衝撃付与機構は、所定の回転軸線回りに前記バスケットと連動回転可能に連結された回転部材と、前記バスケットが前記保持位置から前記落下位置へ回転したときに前記回転部材と衝突するストッパと、を含んでいる。
【0008】
この構成によると、衝撃付与機構は、バスケットから離隔した位置で、被処理物をバスケットから落下させる衝撃力を発生する。よって、被処理物の加熱に伴って高温で軟化したバスケット自体に衝撃を与えるのではないので、バスケットの変形等の損傷を抑制できる。
【0010】
さらに、被処理物をバスケットから落下させる動作を利用して衝撃付与機構で衝撃力を発生できる。これにより、バスケットへ与える衝撃力を発生する機構と、バスケットから被処理物を落下させる機構と、を別々に設けなくてすみ、熱処理装置の構成をより簡素にできる。また、バスケットから被処理物を落下させると同時にバスケットに衝撃を付与できるので、被処理物をバスケットから迅速に落下させることができる。よって、例えば、複数の被処理物がバスケットから落下して冷却槽に投入される場合に、複数の被処理物をほぼ同時に冷却槽に投入できる。これにより、被処理物間で冷却開始時間に差がでることを抑制でき、その結果、被処理物間での熱処理品質のばらつきを抑制できる。
【0012】
さらに、回転部材をストッパに衝突させる簡易な構成で、衝撃付与機構を実現できる。
【0013】
(2)前記支持機構は、前記バスケットに連結された連結部を有し前記バスケットを支持する支軸を含み、前記回転部材は、前記支軸において前記連結部から離隔した位置に設けられている場合がある。
【0014】
この場合、回転部材が支軸において連結部から離隔しているので、回転部材がストッパから受ける衝撃がバスケットに直接伝わることを抑制しつつ、バスケットを揺らす衝撃力を支軸からバスケットへ伝達できる。
【0015】
(3)前記熱処理装置は、前記バスケットを前記保持位置から前記落下位置へ変位させる駆動力を発生するように且つ回転速度調整可能に構成されたモータをさらに備えている場合がある。
【0016】
この場合、モータの回転速度を調整することで、バスケットへ付与する衝撃力を適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、被処理物を熱処理する際に用いられ被処理物を保持するバスケットの損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理装置の斜視図であり、筐体の室内領域を露呈させた状態を示している。
【
図2】
図2は、熱処理装置の側面図であり、筐体の室内領域を露呈させた状態を示している。
【
図3】
図3は、熱処理装置の平面図であり、筐体の室内領域を露呈させた状態を示している。
【
図4】
図4は、熱処理装置の側面図であり、熱処理装置の回転機構側から見た状態を示している。
【
図6】
図6(A)および、
図6(B)は、それぞれ、熱処理装置における筐体の室内領域の側面図、および、平面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す一部断面図のうち筐体の前側壁の周囲および筐体の後端の周囲の拡大図である。
【
図8】
図8は、
図5に示す図のうち移動機構周辺の構成について示す拡大図である。
【
図9】
図9は、
図1の斜視図のうち支持機構および移動機構周辺の構成について示す拡大図である。
【
図10】
図10は、
図1の斜視図のうち支持機構および移動機構周辺の構成について示す拡大図である。
【
図12】
図12は、バスケット連結機構が分解された状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、室内軸受部およびロック機構の周囲の構成を示す一部断面斜視図である。
【
図15】
図15は、室内軸受部およびロック機構の周辺の構成を示す斜視図である。
【
図18】
図18(A)は、
図5および
図11のXVIIIA-XVIIIA線に沿う断面図であり、ドアがロックされている状態を示す。
図18(B)は、可動ロック部材のローラが固定ロック部材に対してロックおよびロック解除された状態を示す模式図である。
【
図19】
図19は、ロック機構によるドアロックが解除された状態を示す模式図である。
【
図21】
図21は、熱処理装置における熱処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22(A)および
図22(B)は、熱処理装置における熱処理動作を説明するための図である。
【
図23】
図23(A)および
図23(B)は、熱処理装置における熱処理動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理装置1の斜視図であり、筐体2の室内領域14を露呈させた状態を示している。
図2は、熱処理装置1の側面図であり、筐体2の室内領域14を露呈させた状態を示している。
図3は、熱処理装置1の平面図であり、筐体2の室内領域14を露呈させた状態を示している。
図4は、熱処理装置1の側面図であり、熱処理装置1の回転機構9側から見た状態を示している。
図5は、
図4のV-V線に沿う一部断面図である。
図6(A)および、
図6(B)は、それぞれ、熱処理装置1における筐体2の室内領域14の側面図、および、平面図である。
図7は、
図5に示す一部断面図のうち筐体2の前側壁18aの周囲および筐体2の後端の周囲の拡大図である。
【0021】
なお、
図6(A)および
図6(B)以外の図では、室内領域14の内部が室外に露呈した状態を示している。
【0022】
図1~
図6(B)を参照して、熱処理装置1は、被処理物200に熱処理を施すために設けられている。この熱処理は、加熱処理および冷却処理を含んでいる。熱処理の一例として、溶体化処理、浸炭処理、均熱処理、焼入処理等を例示できる。なお、熱処理装置1で行われる熱処理の具体例は、特に限定されないけれども、本実施形態では、溶体化熱処理を例に説明する。また、本実施形態では、被処理物200は、チタン等の金属部品である。熱処理装置1は、バッチ式の熱処理装置であり、一度に1つまたは複数の被処理物200を一括して熱処理する。
【0023】
熱処理装置1の動作の概要を説明すると、まず、熱処理装置1には、筐体2の室内領域14の天壁19に形成された開閉蓋20が開かれた状態で、被処理物200が投入される。これにより被処理物200は、筐体2内に設けられたバスケット5に投入される。被処理物200が投入されたバスケット5は、加熱炉3内に搬入されて加熱される。被処理物200の加熱後、バスケット5は、被処理物200とともに加熱炉3から搬出され、その後、上下反転されつつ衝撃を与えられることで、被処理物200を冷却槽4に落下させる。冷却槽4内の被処理物200は、冷却された後、冷却槽4から搬出される。このようにして、被処理物200が熱処理される。
【0024】
本実施形態の熱処理装置1では、加熱炉3への被処理物200の搬入、被処理物200への加熱、加熱炉3からの被処理物200の搬出、および、バスケット5から冷却槽4への被処理物200の投入による冷却までが、自動化されている。
【0025】
熱処理装置1は、全体として細長い形状に形成されている。以下では、熱処理装置1の長手方向を前後方向Xとし、水平方向のうち前後方向Xと直交する方向を左右方向Yとしとし、前後方向Xおよび左右方向Yと直交する方向を上下方向Zという。
【0026】
熱処理装置1は、筐体2と、加熱炉3と、冷却槽4と、バスケット5と、バスケット5を支持する支持機構6であって、バスケット5に連結された支軸7を含む支持機構6と、バスケット5を移動させる移動機構8と、バスケット5に衝撃を付与する衝撃付与機構10を含む回転機構9と、加熱炉3の開口部3aを開閉するドア11と、ドア11を加熱炉3の開口部3aにロックするためのロック機構12と、を有している。
【0027】
筐体2は、室外領域13と、室内領域14と、を有している。
【0028】
室外領域13は、熱処理装置1の一部の構成部材を熱処理装置1の外部に露呈させた領域である。一方、室内領域14は、熱処理装置1の一部の構成部材を熱処理装置1の内部に収容している領域である。
【0029】
室外領域13は、複数の柱および梁によって全体として直方体形状に形成された骨格を有しており、さらに、この骨格の上端部に、水平に配置された天壁13aが固定されている。室外領域13は、前後方向Xに細長く形成されている。室外領域13の後方に室内領域14が形成されている。
【0030】
室内領域14は、複数の柱および梁によって全体として直方体形状に形成された骨格を有しており、さらに、この骨格の側面、上面および下面に、壁が形成されている。
【0031】
より具体的には、室内領域14は、土台15と、土台15上に形成された複数の支柱16と、複数の支柱16に固定された複数の梁17と、複数の側壁18と、天壁19(
図6参照)と、を有している。
【0032】
土台15の形状は特に限定されないけれども、本実施形態では、土台15は、矩形状に形成されている。支柱16は、土台15から上方に延びる棒状部材であり、本実施形態では、土台15の四隅に配置されている。支柱16の上端部は、室外領域13の天壁19の高さ位置よりも高い位置に配置されている。梁17は、複数設けられており隣り合う支柱16同士を連結している。
【0033】
側壁18は、本実施形態では、直方体形状に形成された室内領域14の4つの側面に形成されている。側壁18として、前後方向Xに並ぶ前側壁18(18a)および後側壁18(18b)と、左右方向Yに並ぶ右側壁18および左側壁18と、が設けられている。隣り合う側壁18同士は、互いに接続されており、さらに、各側壁18の下端部は土台15に接続されている。また、天壁19は、4つの側壁18の上端部同士を接続する矩形状に形成されている。この構成により、室内領域14は、室外領域13とは区切られており、さらに、熱処理装置1の外部の空間から区切られている。天壁19には、開閉蓋20が形成されている。この開閉蓋20は、例えば矩形状の蓋であり、ヒンジ等を介して天壁19に取り付けられており、天壁19に対して開閉動作可能である。天壁19には、開口部が形成されており、開閉蓋20を開閉動作することで、この開口部を開閉できる。
【0034】
図5および
図7に示されているように、筐体2の前側壁18aには、貫通孔18a1が形成されている。この貫通孔18a1は、室外領域13と室内領域14とに亘って延びる支軸7が前側壁18aを通過するために形成されている。この貫通孔18a1と支軸7との間を流体でシールするための流体シール部21が設けられている。流体シール部21は、本実施形態では、前側壁18aの外側面に設置されている。
【0035】
流体シール部21は、前側壁18aに固定された筒状の部材であり、支軸7を取り囲んでいる。流体シール部21には、図示しないガス発生装置等からのガス(シールガス)が供給されている。流体シール部21に供給されたシールガスは、流体シール部21の内周面に形成されたノズルから支軸7に向けて噴射される。これにより、室外領域13の空気が室内領域14内に侵入することを抑制している。シールガスは、例えば、窒素ガス等の不活性ガスである。
【0036】
また、筐体2の後側壁18bには、加熱炉3が取り付けられている。具体的には、後側壁18bには、加熱炉3が取り付けられる部分に貫通孔が形成されている。この貫通孔に加熱炉3の前端部が通されている。
【0037】
加熱炉3は、バスケット5に収容された被処理物200を所定の温度(例えば、数百度)まで加熱するために用いられる。加熱炉3は、前端の開口部3aが室内領域14内の空間に開放され、後端部が閉じられたチューブ状の装置である。本実施形態では、開口部3aによって、円形状の開口が形成されている。開口部3aは、バスケット5とともに被処理物200が搬送される箇所である。加熱炉3には、図示しないガス管から熱処理ガスが供給される。また、加熱炉3には、図示しないヒータが設けられており、このヒータによって、加熱炉3内が加熱される。
【0038】
バスケット5は、被処理物200を収容しこの被処理物200とともにバッチ処理の加熱炉3内に対して搬入および搬出される。バスケット5は、上部が開放された中空の箱状に形成されており、前後方向Xに移動可能に、且つ、前後方向Xに延びる支軸7の軸線回りに回転可能に構成されている。バスケット5は、開閉蓋20の下方の位置(被処理物200を保持する操作・保持位置P11)と、加熱炉3内の位置(加熱位置P12)との間で前後方向Xに移動可能である。バスケット5は、操作・保持位置P11において開閉蓋20が開かれた状態で被処理物200を投入される。また、バスケット5は、操作・保持位置P11から支軸7回りに180度回転した落下位置P13において被処理物200を冷却槽4へ落下させる。
【0039】
冷却槽4は、バスケット5から落下した高温の被処理物200を冷却するために、室内領域14において操作・保持位置P11の下方に設置されている。冷却槽4は、本実施形態では、左右一対の支持梁25に支持されている。冷却槽4は、上方が開放された箱形に形成されている。冷却槽4には、冷媒として水等が溜められている。
【0040】
次に、バスケット5を移動させる移動機構8の構成と、バスケット5を支持する支持機構6の構成と、を説明する。
【0041】
移動機構8は、バスケット5を、加熱炉3内の位置としての加熱位置P12と、加熱炉3外においてバスケット5に対して被処理物200を出し入れするための操作・保持位置P11と、の間で移動させるために設けられている。加熱位置P12は、バスケット5が加熱炉3内に配置され、且つ、ドア11が加熱炉3の開口部3aを塞いでいるときのバスケット5の位置をいう。加熱位置P12では、バスケット5の全体が加熱炉3内に配置されている。操作・保持位置P11は、室内領域14に設定されており、加熱炉3の前方において冷却槽4の真上に設定されている。
【0042】
本実施形態では、移動機構8は、バスケット5を前後方向Xに直線移動させる直線移動機構として設けられており、後述する室外軸受部52および室内軸受部53と、支軸7と、を直線移動させる。なお、移動機構8は、バスケット5を加熱位置P12と操作・保持位置P11との間で移動させることが可能な構成であればよい。
【0043】
図8は、
図5に示す図のうち移動機構8の周辺の構成について示す拡大図である。
図9および
図10は、
図1の斜視図のうち支持機構6および移動機構8周辺の構成について示す拡大図である。
図11は、
図5の支持機構6の周辺の拡大図である。
【0044】
図1および
図8~
図10を参照して、移動機構8は、室外領域13および室内領域14に亘って配置された左右一対の支持梁25,25と、室外領域13においてこれらの支持梁25,25に支持された左右一対の室外レール26,26と、室外レール26,26上に配置された室外スライダ27と、室内領域14において支持梁25,25に支持された左右一対の室内レール28,28と、これらの室内レール28,28上に配置された室内スライダ29と、室外領域13に配置された駆動機構30と、を有している。
【0045】
各支持梁25は、室外領域13の天壁13a上に設置されたブラケット31や、室内領域14の梁17に支持されたブラケット32等を用いて筐体2に固定されている。各支持梁25は、前後方向Xに沿って延びており、室内領域14の前側壁18aを貫通している。各支持梁25は、室外領域13の前端付近から加熱炉3の開口部3aの付近まで延びている。各支持梁25上に室外レール26,26および室内レール28,28が設置されている。
【0046】
室外レール26,26および室内レール28,28は、前後方向Xに延びている。各室外レール26上を前後方向Xに移動するように室外スライダ27が設置されている。
【0047】
室外スライダ27は、室外スライド片35と、室外スライド片35上に形成された室外ベース部36と、を有している。
【0048】
室外スライド片35は、一対の室外レール26,26のそれぞれに配置されており、本実施形態では、各室外レール26上に前後方向Xに離隔して2つ配置されている。各室外スライド片35は、室外レール26の形状に対応する形状(本実施形態では、前後方向Xに見て上下方向Zの中央がくびれた形状)を有するブロック状部材であり、対応する室外レール26に嵌合している。各室外スライド片35は、前後方向Xに沿う駆動力を受けることで、対応する室外レール26上を前後方向Xにスライドする。
【0049】
室外ベース部36は、各室外スライド片35に固定されており、各室外スライド片35と前後方向Xに一体的に移動する。本実施形態では、室外ベース部36は、水平な板状部材であり、一対の室外レール26,26に跨がっている。
【0050】
室内スライダ29は、室内スライド片37と、室内スライド片37上に形成された室内ベース部38と、を有している。
【0051】
室内スライド片37は、一対の室内レール28,28のそれぞれに配置されており、本実施形態では、各室内レール28上に前後方向Xに離隔して2つ配置されている。各室内スライド片37は、室内レール28の形状に対応する形状(本実施形態では、前後方向Xに見て上下方向Zの中央がくびれた形状)を有するブロック状部材であり、対応する室内レール28に嵌合している。各室内スライド片37は、前後方向Xに沿う駆動力を受けることで、対応する室内レール28上を前後方向Xにスライドする。
【0052】
室内ベース部38は、各室内スライド片37に固定されており、各室内スライド片37と前後方向Xに一体的に移動する。本実施形態では、室内ベース部38は、水平な板状部材であり、一対の室内レール28,28に跨がっている。
【0053】
室外スライダ27は、駆動機構30からの駆動力を受けることで前後方向Xに移動し、室内スライダ29は、上記駆動力を支軸7および室内軸受部53等を介して受けることで前後方向Xに移動する。
【0054】
駆動機構30は、室外スライダ27、室外軸受部52、支軸7、バスケット5、室内軸受部53、および、室内スライダ29に前後方向Xの駆動力を付与するために設けられている。本実施形態では、駆動機構30は、動力源として電動モータが用いられているけれども、この通りでなくてもよい。駆動機構30は、油圧モータ等の液圧動力源が用いられてもよい。
【0055】
駆動機構30は、駆動モータ41と、駆動モータ41の出力軸にカップリング42を介して連結され駆動モータ41の回転を前後方向Xの直線運動に変換する運動変換機構43と、を有している。
【0056】
駆動モータ41は、本実施形態では、電動モータである。駆動モータ41は、室外領域13の前端に配置されている。駆動モータ41のハウジング41aは、ブラケット44を介して室外領域13の天壁13aに固定されている。ブラケット44は、本実施形態では、左右方向Yに見てU字状に形成されて前後一対の縦壁44a,44aを有している。縦壁44a,44aは縦向きに配置されており、前側の縦壁44aに駆動モータ41のハウジング41aが固定されている。各縦壁44a,44aには貫通孔が形成されている。前側の縦壁44aの貫通孔を通して駆動モータ41の出力軸41bが後方に延びている。この出力軸41bは、カップリング42を介して運動変換機構43に動力伝達可能に連結されている。
【0057】
運動変換機構43は、本実施形態では、ねじ機構を含んでいる。なお、運動変換機構43は、回転運動を前後方向Xの直線運動に変換可能な構成であればよく、ラックアンドピニオン機構等の他の機構を有していてもよい。運動変換機構43は、室外領域13の前端から後端にかけて配置されている。
【0058】
運動変換機構43は、雄ねじ軸43aと、この雄ねじ軸43aにねじ結合されたナット43bと、を有している。
【0059】
雄ねじ軸43aは、カップリング42を介して駆動モータ41の出力軸41bに一体回転可能に連結されている。雄ねじ軸43aは、一対の支持梁25,25の間において室外スライダ27の室外ベース部36の下方に配置されている。本実施形態では、左右方向Yにおける一対の支持梁25,25間の略中央に雄ねじ軸43aが配置されている。雄ねじ軸43aの前部は、ブラケット44の後側の縦壁44aの貫通孔に通されており、この縦壁44aに軸受45を介して回転可能に支持されている。雄ねじ軸43aの後部は、軸受46によって回転可能に支持されている。軸受46は、ブラケット47を介して、室外領域13の天壁13aに支持されている。
【0060】
ナット43bは、雄ねじ軸43aの回転に伴って前後方向Xに移動する。ナット43bの内周に形成された雌ねじが、雄ねじ軸43aの外周に形成された雄ねじにねじ結合している。ナット43bは、筒状のブラケット48を介して室外スライダ27の室外ベース部36に固定されており、室外ベース部36と前後方向Xに一体移動する。上記の構成により、駆動モータ41の出力軸41bが回転すると、雄ねじ軸43aが回転するとともにナット43bが室外ベース部36とともに前後方向Xに移動する。
【0061】
なお、本実施形態では、駆動モータ41の出力軸41bに雄ねじ軸43aが連結され且つ室外ベース部36にナット43bが固定された形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。例えば、駆動モータ41の出力軸41bにナット43bが一体回転可能に連結され、雄ねじ軸43aが室外スライダ27に固定されてもよい。この場合、駆動モータ41および雄ねじ軸43aの回転によって雄ねじ軸43aが室外スライダ27とともに前後方向Xに移動する。
【0062】
以上が移動機構8の概略構成である。次に、支持機構6のより具体的な構成を説明する。
【0063】
図5および
図9~
図11を参照して、支持機構6は、移動機構8の駆動力(直線移動力)を用いてバスケット5を前後方向Xに移動可能に、且つ、回転機構9の駆動力(回転力)を用いてバスケット5を支軸7回りに回転可能な態様で、バスケット5を支持する。本実施形態では、支持機構6は、前後方向Xにおいてバスケット5を操作・保持位置P11と加熱位置P12との間に移動可能に支持し、且つ、支軸7回りの回転方向においてバスケット5を操作・保持位置P11と落下位置P13との間に回転変位可能に支持する。操作・保持位置P11では、バスケット5の開口部は上向きに開放されて被処理物200を保持している。一方、落下位置P13ではバスケット5の開口部は下向きに開放されて被処理物200を自由落下させる。本実施形態では、支持機構6は、室外領域13と室内領域14の双方に設けられている。
【0064】
支持機構6は、支軸7と、支軸7をバスケット5に連結するバスケット連結機構51と、支軸7を室外領域13で支持する室外軸受部52と、支軸7を室内領域14で支持する室内軸受部53と、を有している。
【0065】
支軸7は、バスケット5を支持するために設けられている。支軸7は、前後方向Xに細長く形成されており、本実施形態では、中空の円筒状に形成されている。なお、支軸7は、多角環状に形成されていてもよいし、中実軸であってもよい。支軸7は、室外領域13および室内領域14に亘って延びている。支軸7は、前述したように、室内領域14の前側壁18aに設けられた流体シール部21に通されている。バスケット連結機構51を用いて支軸7とバスケット5とが取り外し可能に連結されている。
【0066】
図12は、バスケット連結機構51が分解された状態を示す斜視図である。
図12を参照して、バスケット連結機構51は、支軸7に設けられバスケット5に連結される支軸側連結部54と、バスケット5に設けられ支軸7に連結されるバスケット側連結部55と、これらの連結部54,55を連結するピン56,56と、を有している。
【0067】
支軸側連結部54は、支軸7の後端部に形成された複数の貫通孔部54aを有している。貫通孔部54aは、支軸7の径方向に支軸7を貫通して形成された孔部である。一つの貫通孔部54aは、支軸7の径方向に並ぶ一対の貫通孔を含んでいる。貫通孔部54aは、前後方向X(支軸7の軸方向)に離隔して複数設けられている。なお、貫通孔部54aは、2つのピン56,56をそれぞれ通すことが可能なように、少なくとも2つ設けられていればよい。
【0068】
バスケット側連結部55は、バスケット5の前端壁に固定された軸としてのバスケット側連結軸55aを含んでいる。バスケット側連結軸55aは、支軸7の形状に対応する形状(本実施形態では、円筒状)に形成されている。バスケット側連結軸55aは、支軸7に嵌合する。本実施形態では、バスケット側連結軸55aの内径が支軸7の外径より大きく設定されており、バスケット側連結軸55aは支軸7の後端部を覆うように支軸7に嵌合される。バスケット側連結軸55aは、複数の貫通孔部55bを有している。貫通孔部55bは、バスケット側連結軸55aの径方向にバスケット側連結軸55aを貫通して形成された孔部である。一つの貫通孔部55bは、バスケット側連結軸55aの径方向に並ぶ一対の貫通孔を含んでいる。貫通孔部55bは、前後方向X(支軸7の軸方向)に離隔して複数設けられている。なお、貫通孔部55bは、2つのピン56,56をそれぞれ通すことが可能なように、少なくとも2つ設けられていればよい。
【0069】
支軸7の複数の貫通孔部54aとバスケット側連結軸55aの複数の貫通孔部55bとは、前後方向Xの位置が異なる複数の位置で重なるように配置されている。これにより、支軸7とバスケット側連結軸55a(バスケット5)との前後方向Xにおける相対位置を調整できる。
【0070】
ピン56,56は、バスケット5と支軸7とを連結する「連結部材」の一例であり、バスケット側連結軸55a(バスケット5)および支軸7の少なくとも一方に対して分離可能に配置されている。本実施形態では、ピン56,56は、バスケット5および支軸7の双方に対して分離可能である。ピン56,56は、貫通孔部54a,55bの貫通孔が互いに重なり合った箇所に差し込まれている。ピン56,56は、前後方向Xにおける2箇所において貫通孔部54a,55bに差し込まれてこれらの貫通孔部54a,55bに固定されている。ピン56,56と対応する貫通孔部54a,55bとの結合態様は、圧入であってもよいし、抜け止めピン等の抜け止め部材を用いた結合であってもよい。上記の構成により、ピン56,56を取り外すことで、支軸7からバスケット5を取り外すことが可能である。なお、ピン56,56が先細りテーパ状に形成されていると、貫通孔部54a,55bに対する着脱を行いやすい。
【0071】
次に、支軸7を室外領域13で支持する室外軸受部52の構成を説明する。
【0072】
図8および
図9を参照して、室外軸受部52は、移動機構8の室外スライダ27上に設置されており、室外スライダ27と一体的に前後方向Xに直線移動する。
【0073】
室外軸受部52は、軸受受け部58と、軸受受け部58に支持された軸受59と、軸受59が支軸7から抜けることを防止するための抜け止めカラーとしての回転部材161と、を有している。
【0074】
軸受受け部58は、ブロック状の部材である。本実施形態では、軸受受け部58は、前後方向Xから見て、リング形状部58aの下端部に左右一対の片部58b,58bが設けられた構成を有している。一対の片部58b,58bは、左右一対の縦壁61,61に挟まれている。縦壁61,61は、室外スライダ27の室外ベース部36に固定されており、左右方向Yと直交するようにして互いに平行に配置されている。縦壁61,61の上部には、水平に配置された支持壁62が固定されており、支持壁62に軸受受け部58が固定されている。軸受受け部58のリング形状部58aには、軸受59が取り付けられている。
【0075】
軸受59は、例えば玉軸受け等の転がり軸受である。軸受59の外輪は、リング形状部58aに固定されている。軸受59の内輪は、支軸7の前端側部分に嵌合されている。軸受59の内輪の後端は、支軸7に形成された環状の段部7aに突き合わされている。また、支軸7には、軸受59の前方に雄ねじが形成されており、この雄ねじに回転部材161の筒状部161bがねじ結合している。筒状部161bは、内周に雌ねじが形成されている。筒状部161bの後端は、軸受59の内輪に突き合わされている。この構成により、軸受59の内輪は、支軸7の段部7aと回転部材161とに挟まれており、支軸7と一体回転する。なお、筒状部161bは、支軸7に固定されていればよく、上述の構成に限定されない。
【0076】
次に、室内軸受部53の構成を説明する。
【0077】
図13は、
図11に示す室内軸受部53の周囲の拡大図である。
図14は、室内軸受部53およびロック機構12の周囲の構成を示す一部断面斜視図である。
図15は、室内軸受部53およびロック機構12の周囲の構成を示す斜視図である。
【0078】
図10、
図11、および、
図13~
図15を参照して、室内軸受部53は、「軸受部」の一例である。室内軸受部53は、室内領域14において支軸7およびバスケット5を支軸7の中心軸線回りに回転可能に支持しており、また、加熱炉3の開口部3aを開閉するドア11を支持しており、さらに、ドア11を加熱炉3にロックするロック機構12の可動部111を支持している。室内軸受部53は、バスケット5が加熱炉3内の加熱位置P12にあるときに加熱炉3の開口部3aを塞ぐ。室内軸受部53は、移動機構8の室内スライダ29に支持されており、この室内スライダ29と前後方向Xに一体的に移動する。
【0079】
室内軸受部53は、ドア支持機構65と、ドア支持機構65に支持されたドアユニット66と、を有している。
【0080】
ドア支持機構65は、ドア11を含むドアユニット66を、左右方向Yに延びるドア支軸67回りに揺動可能に支持している。ドア支持機構65は、ドア11の開閉動作に伴いドア11とロック機構12の可動部111を連動して開閉方向(前後方向X)に移動させる。
【0081】
ドア支持機構65は、室内スライダ29の室内ベース部38に固定された左右一対の支柱68,68と、支柱68,68に設けられた高さ調整機構69と、高さ調整機構69に支持された軸受70,70と、軸受70,70に取り付けられたドア支軸67と、ドア支軸67とドア11とを繋ぐ左右一対の連結アーム72,72と、ドア11の揺動を規制するためのドアストッパ73と、を有している。
【0082】
左右一対の支柱68,68は、ドア支持機構65の土台として設けられている。支柱68,68は、本実施形態では、それぞれ、左右方向Yと直交する方向に延びる板状部材である。支柱68,68は、左右対称に配置されている。支柱68,68は、上下に延びる柱部材であればよく、具体的な形状は限定されない。支柱68,68に、高さ調整機構69が設けられている。
【0083】
高さ調整機構69は、ドア11の高さ位置を調整するために設けられている。本実施形態では、高さ調整機構69は、ドア支軸67の高さ位置を調整することで、ドア11の高さ位置を調整する。高さ調整機構69は、支柱68,68の上部に設置されている。本実施形態では、高さ調整機構69は、支柱68,68を左右方向Yに挟むようにして設けられている。本実施形態では、高さ調整機構69は、ねじ式の機構を有している。
【0084】
高さ調整機構69は、支柱68,68に固定されたナット部材75,75と、ナット部材75,75にねじ結合された調整ボルト76,76と、を有している。
【0085】
ナット部材75,75は、支柱68,68に固定されている。本実施形態では、ナット部材75,75は、右側の支柱68の右側面と、左側の支柱68の左側面に固定されている。各ナット部材75,75には、上下方向Zに貫通した雌ねじ孔が形成されている。調整ボルト76,76は、ドアユニット66およびロック機構12の可動部111の自重を支持する部材であり、ナット部材75,75にねじ結合することで上下方向Zに延びた姿勢に保持されている。本実施形態では、調整ボルト76,76は、頭付ボルトである。調整ボルト76,76の下端の頭部をスパナ等の工具で回すことで、上下方向Zにおける調整ボルト76,76の高さ位置を調整可能である。なお、高さ調整機構69は、ドア11の高さ位置を調整可能な機構であればよく、ねじ式以外の他の方式の機構であってもよい。調整ボルト76,76の上端は、軸受70,70を受けている。
【0086】
軸受70,70は、それぞれ、ブロック状の部材である。各軸受70,70のコーナー部には、上下方向Zに細長い長孔70aが複数(本実施形態では、4つ)形成されている。各長孔70aに固定ねじ77が取り付けられている。固定ねじ77は、対応する支柱68,68に形成された雌ねじ孔(図示せず)にねじ結合して支柱68,68に固定されている。この構成により、上下方向Zにおける軸受70,70の位置調整が可能である。なお、軸受70,70は、支柱68,68に対して上下方向Zに位置調整可能に構成されていればよく、上述した支柱68,68への固定構造に限定されない。軸受70,70は、ドア支軸67を当該ドア支軸67の中心軸線回りに回転可能に支持している。
【0087】
ドア支軸67は、ドア11を吊ることでドア11を支持する部材として設けられている。また、ドア支軸67は、ドア11の揺動軸としても機能しており、ドア支軸67の中心軸線回りをドア11が揺動可能である。すなわち、ドア11は、ドア支軸67回りを揺動可能にドア支軸67に支持されている。ドア支軸67は、左右方向Yに延びる軸部材であり、本実施形態では、丸軸状に形成されている。ドア支軸67は、支柱68,68の上端寄りの上部に配置されており、支軸7の上方に位置している。ドア支軸67は、支柱68,68を貫通するように延びており、支柱68,68とは接触していない。ドア支軸67の両端部に、軸受70,70が取り付けられている。ドア支軸67には、連結アーム72,72が固定されている。
【0088】
連結アーム72,72は、ドア支軸67とドア11とを一体的に移動するように連結している。連結アーム72,72は、本実施形態では、支柱68,68に隣接した箇所において、支柱68,68に挟まれるように配置されている。連結アーム72,72は、本実施形態では、左右方向Yと直交するように延びる板状部材であり、ドア支軸67から後方に延びている。連結アーム72,72の前部はドア支軸67に固定されている。一方、連結アーム72,72の後端部は、ドア11の前面に固定されている。この構成により、ドア11とドア支軸67とが互いに固定されており、軸受70,70の支持によってドア11およびドア支軸67がドア支軸67回りを揺動可能である。また、ドア11は、連結アーム72,72、ドア支軸67、軸受70,70、高さ調整機構69の調整ボルト76,76、ナット部材75,75、および、支柱68,68を介して、室内スライダ29の室内ベース部38に支持されている。
【0089】
ドア11の過度の揺動を規制するためのドアストッパ73は、本実施形態では、ドア支軸67の下方に配置されている。本実施形態では、ドアストッパ73は、支柱68,68の間で且つ、後述するロック機構アクチュエータ114と左側の支柱68との間に配置されている。
【0090】
ドアストッパ73は、ストッパ台78と、ストッパ台78に前後位置調整可能に取り付けられたストッパ部材79と、を有している。
【0091】
ストッパ台78は、ブロック状の部材であり、室内スライダ29の室内ベース部38に固定されている。ストッパ台78には、本実施形態では雌ねじ孔が形成されている。この雌ねじ孔に、ストッパ部材79がねじ結合している。ストッパ部材79は、本実施形態では、ボルトであり、前後方向Xに沿って軸線が延びるように配置されている。ストッパ部材79の後端は、ドア11の前面と向かい合っており、ドア11と接触することで、ドア支軸67回りのドア11の回転を規制する。すなわち、熱処理装置1の右側から見たときに、ドア11がドア支軸67回りに所定量まで時計回り方向に回転すると、ドア11はストッパ部材79に受けられてそれ以上の回転が規制される。また、ストッパ部材79の例えば後端に形成された頭部を回転させることで、前後方向Xにおけるストッパ部材79の後端位置をストッパ台78に対して調整できる。これにより、ドア11の揺動を停止させる位置を調整できる。すなわち、ドア支軸67回りのドア11の傾き量を調整できる。
【0092】
次に、ドアユニット66の構成を説明する。
【0093】
ドアユニット66は、ドア支持機構65の後方側に配置されており、加熱炉3の開口部3aを開閉することに伴って、ドア支持機構65および室内スライダ29とともに前後方向Xに移動する。
【0094】
ドアユニット66は、ドア11と、ドア11に取り付けられたヒートバリア80と、ヒートバリア80内に設置され支軸7を回転可能に支持する第1室内軸受81と、を有している。
【0095】
ドア11は、加熱炉3の開口部3aに押し当てられることで開口部3aを塞ぎ、開口部3aの前方へ移動することで加熱炉3を開く。ドア11は、本実施形態では、所定の板厚を有する円板状に形成されている。なお、ドア11は、開口部3aの全体を塞ぐことが可能な大きさであればよく、円形以外の多角形の板状であってもよいし、楕円の板状であってもよいし、ブロック形状であってもよい。ドア11は、ドア支軸67の後方に配置されている。本実施形態では、ドア11の上端11aの高さ位置は、ドア支軸67の高さ位置よりも高い。また、ドア11の下端11bの高さ位置は、室内スライダ29の室内ベース部38の高さ位置と概ね揃えられている。
【0096】
ドア11の右端は、右側の支柱68の右方に配置されており、また、ドア11の左端は、左側の支柱68の左方に配置されている。ドア11の中央には、支軸7を通すための貫通孔部11cが形成されている。ドア11の外周部のうち、開口部3aと対向する箇所には、Oリング等のシール部材84が取り付けられている。ドア11が開口部3aを塞いでいるとき、シール部材84は、ドア11と開口部3aとの間に挟まれてこれらドア11と開口部3aとの間を気密的にシールする。ドア11には、ヒートバリア80が固定されている。
【0097】
ヒートバリア80は、第1室内軸受81等を加熱炉3内の熱から保護するために設けられている。ヒートバリア80は、ドア11の後方に配置されている。ヒートバリア80は、加熱炉3による被処理物200の加熱処理時において加熱炉3内に配置される。ヒートバリア80は、本実施形態では、中空の筒状に形成されている。
【0098】
ヒートバリア80は、ドア11に固定された第1外筒87と、第1外筒87の後端に固定された第1端壁88と、第1端壁88の内周部に固定され第1外筒87に取り囲まれた第1内筒89と、第1内筒89の前方に配置され第1内筒89およびドア11に固定された第2内筒93と、を有している。
【0099】
第1外筒87は、ドア11に設置されたシール部材84の近傍に配置されており、筒状(本実施形態では、円筒状)に形成されている。第1外筒87は、第1室内軸受81を取り囲むように配置されている。第1外筒87の後端は、支軸側連結部54の貫通孔部54aの前方に配置されている。第1端壁88は、円環状に形成されている。第1端壁88の外周部が、第1外筒87に固定されている。第1端壁88の内周部は、第1内筒89に固定されている。第1内筒89は、第1端壁88から前方に延びる筒状(本実施形態では、円筒状)に形成されている。第1内筒89は、支軸7と僅かな(例えば数mm以内の)隙間をあけて支軸7を取り囲んでいる。第2内筒93は、筒状(本実施形態では、円筒状)に形成されている。第2内筒93の内周後端部に、第1内筒89が固定されている。第2内筒93の前端部は、ドア11の貫通孔部11cの内周部に固定されている。
【0100】
上記の構成により、ヒートバリア80内に断熱空間94が形成されている。断熱空間94は、第1外筒87、第1端壁88、第1内筒89、第2内筒93、および、ドア11によって取り囲まれた筒状の空間である。この断熱空間94には、断熱材が充填されているか、または、断熱用のガスもしくは断熱用の液体が供給されることが好ましい。このように、断熱空間94により、断熱空間94の周囲に配置された第1室内軸受81、および、シール部材等が高熱に曝されることを抑制している。
【0101】
図11および
図13を参照して、第1室内軸受81は、支軸7を支持しており、また、第2内筒93を介してドア11に支持されている。第1室内軸受81は、第2内筒93と支軸7との間に配置されている。第1室内軸受81の前方には、シール部材99およびドア蓋100が配置されている。
【0102】
シール部材99は、Oリング等の弾性部材を含んでおり、支軸7とドア蓋100との間を気密的にシールしている。
【0103】
ドア蓋100は、ドア11の貫通孔部11cを塞ぐために設けられている。ドア蓋100は、リング状に形成されている。ドア蓋100は、ドア11の前方に配置されてドア11に突き合わされた構成を有しており、且つ、ドア蓋100の一部がリング状凸部100aとしてドア11の後方に向けて延びた構成を有している。ドア蓋100の外周部は、後述する押えリング104とともに、図示しないボルト等の固定部材を用いてドア11に固定されている。
【0104】
ドア蓋100の外周部の後面には、環状の溝が形成されており、この溝にOリング等のシール部材102が嵌め込まれている。シール部材102は、ドア蓋100とドア11との間を気密的にシールしている。また、ドア蓋100の外周部の前面にも環状の溝が形成されており、この溝にOリング等のシール部材103が嵌め込まれている。シール部材103は、ドア蓋100と後述する押えリング104との間を気密的にシールしている。リング状凸部100aの内周側にシール部材99が配置されている。
【0105】
上記の構成により、支軸7は、第1室内軸受81、第2内筒93、ドア11、連結アーム72,72を介して、ドア支軸67に揺動可能に支持されている。
【0106】
以上がドアユニット66の構成である。次に、ドア11を加熱炉3にロックするためのロック機構12の構成を説明する。
【0107】
図16は、
図5のXVI-XVI線に沿う断面図である。
図17は、
図5および
図11のXVII-XVII線に沿う断面図である。
図18(A)は、
図5および
図11のXVIIIA-XVIIIA線に沿う断面図であり、ドア11がロックされている状態を示す。なお、
図18(A)では、固定ロック部材112についても一部を切断して示している。
図18(B)は、可動ロック部材113のローラ113cが固定ロック部材112に対してロックおよびロック解除された状態を示す模式図である。
図19は、ロック機構12によるドアロックが解除された状態を示す模式図である。なお、
図17~
図19において、一部の部材の図示は省略している。
【0108】
図10~
図19を参照して、ロック機構12は、ドア11の周囲に配置されている。ロック機構12は、ドア11の外周部の周方向に沿った等ピッチの位置でドア11を開口部3aにロックするように構成されている。ロック機構12の大部分は、前後方向Xにおいてドア11とドア支軸67との間に配置されており、ロック機構12のレイアウトがコンパクトにされている。
【0109】
ロック機構12は、前後方向Xにドア11と一体的に移動可能な可動部111と、加熱炉3の開口部3aの周囲に配置された固定部としての固定ロック部材112と、を有している。
【0110】
可動部111は、ドア支軸67回りにドア11と一体的に揺動するように構成されている。また、可動部111は、支軸7の周囲に配置されている。可動部111は、可動ロック部材113を1または複数(本実施形態では、6つ)有している。
【0111】
より詳細には、可動部111は、ロック機構アクチュエータ114と、ロック機構アクチュエータ114の出力を伝達する動力伝達機構115と、動力伝達機構115を介したロック機構アクチュエータ114の出力をドア11に対する可動ロック部材113の変位に変換する運動変換機構としてのリンク機構116と、を有している。
【0112】
ロック機構アクチュエータ114は、ドア11の開閉動作に連動してドア11とともに前後方向Xに変位するように配置されている。ロック機構アクチュエータ114は、リンク機構116の後述するコントロールリング131を支軸7回りに揺動することで、可動ロック部材113をロック位置P21とロック解除位置P22との間で変位するために設けられている。すなわち、ロック機構アクチュエータ114は、ロック機構12におけるドアロック動作およびドアロック解除動作を行う。本実施形態では、ロック機構アクチュエータ114は、電動モータである。ロック機構アクチュエータ114は、可動ロック部材113をロック位置P21とロック解除位置P22との間で変位可能な動力を発生できればよく、ソレノイド等のリニアアクチュエータ等を用いて形成されていてもよい。
【0113】
ロック機構アクチュエータ114は、支軸7の下方に配置されており、ハウジング114aと、このハウジング114aに図示しない軸受を介して回転可能に支持された出力軸114bと、を有している。
【0114】
ハウジング114aは、一部が支柱68,68の間に配置され、一部が支柱68,68の前方に配置されている。ハウジング114aは、円筒状に形成された前部114a1と、この前部114a1から後方に延びる四角柱状の後部114a2と、を有している。ハウジング114aの後部114b1は、ブラケット118に固定されている。ブラケット118の下部には、後方に突出する凸部118aが設けられており、この凸部118aがドア11に固定されている。これにより、ロック機構アクチュエータ114のハウジング114aおよびブラケット118は、ドア11に固定されている。後部114a2の後方に出力軸114bが突出している。この出力軸114bの出力回転は、動力伝達機構115に伝達される。
【0115】
動力伝達機構115は、ロック機構アクチュエータ114の出力をリンク機構116に伝達するために設けられている。動力伝達機構115は、本実施形態では、歯車減速機構である。なお、動力伝達機構115は、歯車増速機構であってもよく、また、歯車機構でなくてもよく、ねじ機構等の他の機構が用いられていてもよい。動力伝達機構115は、上下方向Zにおいてドア支軸67と室内スライダ29の室内ベース部38との間に配置されている。また、動力伝達機構115は、左右方向Yにおいて一対の支柱68,68の間に配置されている。さらに、動力伝達機構115の位置は、前後方向Xにおいてドア支軸67の位置と揃えられており、ドア支軸67の真下に動力伝達機構115が配置されている。
【0116】
動力伝達機構115は、ロック機構アクチュエータ114の出力軸114bに一体回転可能に連結された駆動歯車121と、駆動歯車121に噛み合う従動歯車122と、を有している。
【0117】
本実施形態では、駆動歯車121および従動歯車122は、平歯車であるけれども、はすば歯車等の他の歯車であってもよい。
【0118】
駆動歯車121は、支軸7の略直下に配置されている。駆動歯車121は、従動歯車122の下端部において従動歯車122と噛み合っている。
【0119】
従動歯車122は、駆動歯車121の動力を受けて支軸7回りを回転する。従動歯車122は、支軸7と同軸に配置されている。従動歯車122の前面には、角度指示板123が固定されている。角度指示板123は、支軸7回りの従動歯車122の回転角度を示すために設けられており、扇板状に形成され、従動歯車122の周方向に複数(例えば2つ)形成されている。この角度指示板123に隣接して角度センサ124が配置されている。角度センサ124は、角度指示板123が接近するとこの角度指示板123を非接触で検出する。これにより、従動歯車122の位置(リンク機構116の可動ロック部材113の位置)を検出できる。角度センサ124は、本実施形態では、板金のブラケット125を介してモータブラケット118に支持されている。
【0120】
図11および
図13を参照して、従動歯車122は、この従動歯車122の後方に配置された外側スリーブ126に固定されており、この外側スリーブ126と支軸7回りを一体回転する。従動歯車122は、外側スリーブ126、第2室内軸受82、内側スリーブ127、押えリング104、および、ドア蓋100を介して、ドア11に支持されている。
【0121】
外側スリーブ126は、支軸7を取り囲む円筒状部材である。外側スリーブ126は、第2室内軸受82と嵌合する主体部126aと、この主体部126aから後方に突出する環状凸部126bと、を有している。主体部126aの前部に従動歯車122が固定されている。本実施形態では、環状凸部126bの外径は、主体部126aの外径よりも小さく設定されている。
【0122】
第2室内軸受82は、外側スリーブ126と内側スリーブ127に嵌合している。
【0123】
内側スリーブ127は、押えリング104に固定されており、支軸7回りの回転が規制されている。内側スリーブ127は、従動歯車122および支軸7と相対回転可能である。
【0124】
内側スリーブ127は、支軸7に隣接して配置された主体部127aと、この主体部127aから後方に延びる環状凸部127bと、を有している。
【0125】
環状凸部127bは、内側スリーブ127の後端部を含んでいる。環状凸部127bの外周部に押えリング104が固定されている。内側スリーブ127は、押えリング104およびドア蓋100を介してドア11に支持されている。
【0126】
主体部127aは、内側スリーブ127の前端部を含んでいる。主体部127aの外周面に、第2室内軸受82が嵌合している。
【0127】
以上が、従動歯車122および外側スリーブ126の支持構造である。次に、従動歯車122の回転が伝達されるリンク機構116の構成を説明する。
【0128】
図14および
図17~
図19を参照して、リンク機構116は、ドア支軸67とドア11との間に配置されている。リンク機構116は、複数の可動ロック部材113を同期して移動させることで、ドア11のロック動作とロック解除動作とを行わせる。本実施形態では、リンク機構116は、可動ロック部材113をドア11に連結する第1リンク軸141を含んでおり、ロック機構アクチュエータ114の出力を第1リンク軸141回りの可動ロック部材113の変位に変換する。
【0129】
リンク機構116は、コントロールリング131と、このコントロールリング131に連結された複数のリンクユニット132と、を有している。
【0130】
コントロールリング131は、ロック機構アクチュエータ114の出力によって回転する回転部材の一例である。コントロールリング131は、複数のリンクユニット132を同期して動作させるために設けられている。コントロールリング131は、リング状部材であり、本実施形態では、支軸7と同軸に配置されている。コントロールリング131は、外側スリーブ126の後端部に固定されており、外側スリーブ126と支軸7回りを一体回転する。本実施形態では、コントロールリング131は、前後方向Xから見て星形に形成されており、コントロールリング131の外周部がコントロールリング131の周方向に沿って径方向に起伏した形状を有している。
【0131】
コントロールリング131は、本体131aと、この本体131aの周方向に離隔して複数配置され本体131aの外周部から突出する複数の凸部131bと、を有している。
【0132】
本体131aは、リング状に形成されており、コントロールリング131のうちの本体131aが、外側スリーブ126に固定されている。本実施形態では、前後方向Xから見て、本体131aは、従動歯車122に隠れる程度の外形に形成されている。
【0133】
凸部131bは、リンクユニット132(可動ロック部材113)の数と同じ数だけ設けられており、本実施形態では、6つ設けられている。凸部131bは、コントロールリング131の周方向に等ピッチに配置されている。各凸部131bは、本実施形態では、略三角形形状に形成されている。本実施形態では、前後方向Xから見て、各凸部131bの頂部は、従動歯車122の歯先から支軸7の径方向に突出するように配置されている。なお、前後方向Xに見て、コントロールリング131の全体が従動歯車122に隠れるように配置されていてもよい。コントロールリング131の各凸部131bの中央部には、貫通孔が形成されている。この貫通孔は、コントロールリング131と各リンクユニット132のリンク部材140とを連結するために設けられている。
【0134】
リンクユニット132は、支軸7回りの周方向に等ピッチに配置されており、本実施形態では、6つ設けられている。各リンクユニット132は、ロック機構アクチュエータ114の出力を対応する可動ロック部材113に伝達する。各リンクユニット132は、互いに同様の構成を有している。
【0135】
各リンクユニット132は、シャフト状のリンク部材140と、リンク部材140によって操作される可動ロック部材113と、可動ロック部材113を支持する第1リンク軸141と、リンク部材140とコントロールリング131とを連結する第2リンク軸142と、リンク部材140と可動ロック部材113とを連結する第3リンク軸143と、を有している。
【0136】
リンク部材140は、ロック機構アクチュエータ114の出力をコントロールリング131から可動ロック部材113へ伝達するために設けられており、本実施形態では、概ね支軸7の径方向に沿って延びてコントロールリング131および可動ロック部材113に連結されている。本実施形態では、複数のリンク部材140がそれぞれ対応する一の可動ロック部材113に連結されている。リンク部材140は、本実施形態では、ターンバックルであり、当該リンク部材140の全長を変更可能である。これにより、第1リンク軸141回りの可動ロック部材113の位置を調整することができる。
【0137】
リンク部材140は、内側部140aと、ロッド140bと、外側部140cと、を有している。
【0138】
ロッド140bは、両端に雄ねじが形成された軸部材であり、ロッド140bの両端に内側部140aの雌ねじ部と外側部140cの雌ねじ部とがねじ結合している。ロッド140bの一端は右ねじであり、ロッド140bの他端は左ねじである。この構成により、ロッド140bを当該ロッド140b回りの一方側に回転させることで内側部140aと外側部140cとの間の距離を大きくすることができ、また、ロッド140bを当該ロッド140b回りの他方側に回転させることで内側部140aと外側部140cとの間の距離を小さくすることができる。
【0139】
内側部140aは、ロッド140bに対して支軸7の径方向内側に配置された部分である。内側部140aは、スリットが形成されたスリット部140dを有するブロック状の小片部材である。このスリットは、内側部140aのうち支軸7の径方向の内側側面に開放されており、コントロールリング131の対応する凸部131bが通されている。スリット部140dには、貫通孔部が形成されている。第2リンク軸142が、このスリット部140dの貫通孔部と、凸部131bに形成された貫通孔部とを貫通している。第2リンク軸142は、前後方向Xに延びる軸であり、コントロールリング131の凸部131bと内側部140aのスリット部140dとを第2リンク軸142回りに相対回転可能に連結している。
【0140】
外側部140cは、ロッド140bに対して支軸7の径方向外側に配置された部分である。外側部140cは、ブロック状の小片部材である。外側部140cには、貫通孔部が形成されており、この貫通孔部に通された第3リンク軸143を用いて外側部140cが可動ロック部材113に連結されている。
【0141】
可動ロック部材113は、ドア11に取り付けられてドア11と一体的に前後方向Xに移動する部材である。また、可動ロック部材113は、加熱炉3の開口部3aへドア11をロックするため、および、このロックを解除するために、ドア11に対して変位可能である。可動ロック部材113は、ドア11の前方で且つドア11の外周部に配置されており、可動ロック部材113のうちのローラ113cが、ドア11に対してドア11の径方向外方に位置している。可動ロック部材113は、本実施形態では、L字状に形成された部材である。
【0142】
可動ロック部材113は、本体113aと、本体113aに取り付けられたローラ軸113bと、ローラ軸113bに支持されたローラ113cと、を有している。
【0143】
本体113aは、本実施形態では、前後方向Xから見てL字状に形成された部材である。本体113aは、ローラ113cを支持するとともに、リンク部材140の変位をローラ113cのロック動作/ロック解除動作に変換する。本体113aには、第1リンク軸141が挿入される貫通孔が形成されている。第1リンク軸141は、ドア11の外周部に支持されている。第1リンク軸141は、前後方向Xに延びる軸であり、可動ロック部材113の本体113aをドア11に対して第1リンク軸141回りに回転可能に連結している。
【0144】
本体113aのうち、リンク部材140の外側部140cに隣接する箇所は、スリットが形成されたスリット部113dを有している。このスリットは、リンク部材140の外側部140cと対向する部分に開放されており、外側部140cを通されている。そして、スリット部113dには、貫通孔部が形成されている。第3リンク軸143が、この貫通孔部と、外側部140cの貫通孔部とを貫通している。第3リンク軸143は、前後方向Xに延びる軸であり、リンク部材140の外側部140cと可動ロック部材113の本体113aとを第3リンク軸143回りに相対回転可能に連結している。本体113aのうち、第3リンク軸143に連結されている端部とは反対側の端部に、ローラ軸113bが取り付けられている。
【0145】
本実施形態では、ローラ軸113bに形成された雄ねじが、本体113aに形成された雌ねじにねじ結合することで、ローラ軸113bが本体113aに固定されている。ローラ軸113bは、概ね支軸7の径方向に沿って延びている。
【0146】
ローラ113cは、リンクユニット132の先端部材として設けられている。ローラ113cは、固定ロック部材112に結合することで、ドア11が開口部3aに突き当てられた状態、すなわち、ドア11がロックされた状態を維持する。ローラ113cは、ローラ軸113b回りに相対回転可能にローラ軸113bに連結されている。本実施形態では、ローラ軸113bの頭部とローラ113cとの間に抜け止めリングが取り付けられており、ローラ113cがローラ軸113bから抜けることを規制されている。ローラ113cの回転中心軸線と第3リンク軸143の中心軸線との距離は、リンク部材140から可動ロック部材113に伝達されるトルクに影響する。この距離が長いほど、可動ロック部材113のローラ113cに、より大きなトルクを付与できる。
【0147】
なお、ローラ113cとローラ軸113bとが一体成形され、且つ、ローラ軸113bが本体113aに相対回転可能に連結されてもよい。
【0148】
上記の構成により、ロック機構12がドアロックするときまたはドアロック解除するとき、ロック機構アクチュエータ114の出力軸114bの回転によって従動歯車122とともにコントロールリング131が支軸7回りの一方に回転する。これに伴い、コントロールリング131に対して各リンク部材140が対応する第2リンク軸142回りを回転しつつ移動する。これにより、各リンク部材140は、対応する可動ロック部材113を対応する第1リンク軸141回りに回転する。その結果、各可動ロック部材113のローラ113cが、対応する固定ロック部材112に出し入れされる。すなわち、コントロールリング131の回転によって、複数のリンク部材140が対応する可動ロック部材113を回転変位させる。そして、各可動ロック部材113のローラ113cが対応する固定ロック部材112に結合することで、ドア11がロックされる。一方、各ローラ113cと対応する固定ロック部材112との結合が解除されることで、ドア11のロックが解除される。
【0149】
固定ロック部材112は、可動ロック部材113のローラ113cと結合することで、ドア11が前後方向Xに移動することを規制する。固定ロック部材112は、加熱炉3の開口部3aに固定されており、筐体2から移動しない部材である。なお、固定ロック部材112は、加熱炉3に対して移動しない部材であればよく、支持される部材が加熱炉3以外の部材であってもよい。本実施形態では、固定ロック部材112は、開口部3aの周縁部に固定されており、加熱炉3の内周面からは離隔している。本実施形態では、固定ロック部材112は、可動ロック部材113の数と同じ数(6つ)設けられている。なお、一部の図では複数の固定ロック部材112のうちの一部のみ図示している。
【0150】
固定ロック部材112は、支軸7の径方向から見てU字状に形成された部材であり、支軸7の周方向の一方に向けて凹んだ形状を有している。本実施形態では、固定ロック部材112は、支軸7の周方向の一方側に凹んだ部分が設けられており、この凹んだ部分がくさび形状部112aを含んでいる。
【0151】
くさび形状部112aは、対応する可動ロック部材113のローラ113cが挿入される部分である。くさび形状部112aは、固定ロック部材112を支軸7の径方向に貫通するように形成されている。支軸7の周方向におけるくさび形状部112aの一端部は、固定ロック部材112の外部に開放されており、この一端部を通してローラ113cをくさび形状部112aに出し入れすることができる。くさび形状部112aは、支軸7の周方向における一端部(開放端部)から他端部(閉塞端部)にかけて、連続的に幅(前後方向Xの長さ)が狭くなる先細り形状部112bを含んでいる。本実施形態では、くさび形状部112aの全体が先細り形状部112bを構成しているけれども、くさび形状部112aの少なくとも一部が先細り形状部112bを含んでいればよい。
【0152】
可動ロック部材113のローラ113cが先細り形状部112bに挿入されることで、可動ロック部材113のローラ113cが先細り形状部112bに押し込まれる。これにより、ローラ113cは、先細り形状部112bによって前後方向Xに挟まれることとなり、可動ロック部材113が固定ロック部材112に固定される。
【0153】
以上がロック機構12の概略構成である。次に、回転機構9の構成を説明する。
【0154】
図20は、回転機構9の周辺の斜視図である。
図5、
図8、
図9および
図20を参照して、回転機構9は、支軸7およびバスケット5を支軸7の中心軸線回りに回転(揺動)させるために設けられている。回転機構9は、本実施形態では、室外領域13に設けられており、室内領域14内の高熱を受け難くされている。本実施形態では、回転機構9は、支持機構6の室外スライダ27上に配置されており、室外スライダ27および支軸7と前後方向Xに一体移動する。
【0155】
回転機構9は、回転駆動源としての回転モータ145と、回転モータ145の出力回転を支軸7に伝達する回転伝達機構146と、バスケット5に付与する衝撃力を発生する衝撃付与機構10と、を有している。
【0156】
回転モータ145は、支軸7を回転させる回転力を発生する。回転モータ145は、支軸7およびバスケット5を操作・保持位置P11から落下位置P13へ変位させる駆動力を発生するように構成されている。回転モータ145は、本実施形態では、電動モータであるけれども、油圧モータ等の他の回転駆動源が用いられてもよい。
【0157】
回転モータ145は、ハウジング145aと、このハウジング145aに支持された出力軸145bと、を有している。
【0158】
ハウジング145aは、本実施形態では、円筒状の後部と矩形ブロック状の前部とを有する形状に形成されており、ブラケット147を介して室外スライダ27の室外ベース部36に固定されている。ハウジング145aの前部は、モータドライバ(図示せず)を収容している。モータドライバは、図示しないコントローラまたは操作スイッチ等の制御部材に接続されている。回転モータ145は、この制御部材が操作されることで、出力軸145bの回転速度を調整可能である。ブラケット147は、前後方向Xと直交する方向に延びる縦壁147aを有しており、この縦壁147aに、ハウジング145aの前端部が固定されている。ブラケット147の縦壁147aには、貫通孔が形成されており、この貫通孔を通して出力軸145bがハウジング145aの前方に突出している。出力軸145bの出力回転は、回転伝達機構146を介して支軸7に伝達される。
【0159】
回転伝達機構146は、本実施形態では、室外スライダ27の前部に配置されている。回転伝達機構146として、本実施形態では、プーリ減速機構が用いられている。なお、回転伝達機構として、歯車機構等の他の機構が用いられてもよいし、回転伝達機構146が用いられなくてもよい。回転伝達機構146が用いられない場合、回転モータ145の出力軸145bは、支軸7と同軸に連結されて直接支軸7に出力を伝達する。
【0160】
回転伝達機構146は、駆動プーリ151と、ベルト152と、従動プーリ153と、を有している。
【0161】
駆動プーリ151は、回転モータ145の出力軸145bに一体回転可能に連結されている。従動プーリ153は、支軸7の前端部に中継軸154等を用いて一体回転可能に連結されている。ベルト152は、本実施形態では、無端状ベルトであり、駆動プーリ151と従動プーリ153に巻き掛けられている。上記の構成により、回転モータ145の出力は、駆動プーリ151からベルト152を介して従動プーリ153に伝達され、さらに、支軸7に伝達されることで、支軸7が回転する。
【0162】
なお、駆動プーリ151および従動プーリ153は、対応する出力軸145bおよび支軸7に取り外し可能に取り付けられていることが好ましい。この場合、駆動プーリ151および従動プーリ153の少なくとも一方の大きさ(ピッチ円直径)を変更することで、回転モータ145による支軸7の回転速度を変更でき、その結果、衝撃付与機構10によって生じる衝撃力を変更できる。
【0163】
衝撃付与機構10は、バスケット5に衝撃伝達可能に連結され、バスケット5から離隔した位置で、被処理物200をバスケット5から落下させる衝撃力を発生するために設けられている。衝撃付与機構10は、本実施形態では、室外スライダ27の前部寄りに配置されており、前後方向Xにおいて回転伝達機構146と室外軸受部52との間に位置している。衝撃付与機構10は、本実施形態では、バスケット5が操作・保持位置P11から落下位置P13へ変位することに伴う回転力を衝撃力に変換する。
【0164】
なお、本実施形態では、衝撃付与機構10は、支軸7の回転を急激に停止させることに伴う衝撃を支軸7に付与する構成であるけれども、この通りでなくてもよい。衝撃付与機構10は、支軸7を介してバスケット5へ衝撃を付与できる構成であればよく、例えば、支軸7を前後方向X、左右方向Y、または、上下方向Zに振動させる機構であってもよい。また、支軸7に振動発生器を設けることで衝撃付与機構10を構成してもよく、例えば、支軸7に超音波振動器を設けることで衝撃付与機構10を構成してもよいし、支軸7を打撃するハンマー装置を設けることで衝撃付与機構10を構成してもよい。
【0165】
衝撃付与機構10は、本実施形態では、支軸7の中心軸線回りに支軸7と一体回転可能に連結された回転部材161と、回転部材161に衝突するために設けられたストッパ162と、を有している。
【0166】
回転部材161は、バスケット5と連動回転可能に連結され支軸7の中心軸線(回転軸線)回りに回転する部材である。回転部材161は、室外領域13において支軸7に支持されていることから、室内領域14に配置されたバスケット連結機構51から離隔した位置に設けられている。
【0167】
回転部材161は、羽根161aと、筒状部161bと、を有している。
【0168】
筒状部161bは、前述したように、支軸7にねじ結合しており支軸7に固定されている。回転部材161は、本実施形態では、支軸7に片持ち支持された羽根部材であり、例えば1つの羽根161aが設けられている。羽根161aは、支軸7の径方向に沿って延びる矩形状の部分である。バスケット5が操作・保持位置P11にあるとき、羽根161aは、ストッパ162とは支軸7の周方向に約180度離隔して向かい合っている。
【0169】
ストッパ162は、バスケット5が操作・保持位置P11から落下位置P13へ回転したときに回転部材161の羽根161aと衝突する部材である。ストッパ162は、本実施形態では、頭付ボルトによって構成されている。室外ストッパ162は、室外スライダ27上の支持壁62に形成された雌ねじ部にねじ結合して縦向き姿勢で支持されている。これにより、ストッパ162は、室外スライダ27によって上下位置調整可能に支持されている。
【0170】
上記の構成により、バスケット5が支軸7とともに回転し、操作・保持位置P11から落下位置P13へ回転すると、回転部材161の羽根161aがストッパ162に衝突し、バスケット5が急激に回転方向を反転される。この衝突による衝撃力(振動)は、支軸7およびバスケット連結機構51を介してバスケット5に伝わる。
【0171】
なお、本実施形態では、羽根161aの前方において、角度指示板165が支軸7に一体回転可能に連結されている。角度指示板165は、支軸7回りの羽根161aの回転角度を示すために設けられており、扇板状に形成されている。この角度指示板165に隣接して角度センサ163が配置されている。角度センサ163は、角度指示板165を非接触で検出する。これにより、羽根161aの位置を検出できる。角度センサ163は、支持壁62に固定されたブラケット164に支持されている。
【0172】
以上が、熱処理装置1の概略構成である。次に、熱処理装置1における被処理物200の熱処理動作の一例を説明する。
図21は、熱処理装置1における熱処理動作の一例を示すフローチャートである。
図22(A)、
図22(B)、
図23(A)および
図23(B)は、熱処理装置1における熱処理動作を説明するための図である。以下では、フローチャートを参照しながら説明するときは、フローチャート以外の図も適宜参照する。
【0173】
図21を参照して、被処理物200を熱処理するときは、まず、被処理物200がバスケット5に投入される(ステップS1)。具体的には、
図22(A)に示すように、筐体2の室内領域14の上端の開閉蓋20が開かれ、開閉蓋20が開かれた位置から1または複数の被処理物200がバスケット5に投入される。このとき、バスケット5は、操作・保持位置P11に配置されており、加熱炉3の前方で且つ開閉蓋20の下方において、上向きに配置されている。
【0174】
次に、バスケット5が
図22(A)に示す操作・保持位置P11から
図22(B)に示すように加熱位置P12へ搬送される(ステップS2)。具体的には、駆動機構30の駆動モータ41が駆動することで、運動変換機構43の雄ねじ軸43aが回転するとともに、雄ねじ軸43aにねじ結合しているナット43bが、室外スライダ27とともに後方へ移動する。これにより、室外軸受部52、支軸7、バスケット5、室内軸受部53および室内スライダ29も後方へ移動する。その結果、バスケット5が加熱炉3内の加熱位置P12まで移動する。バスケット5が加熱位置P12まで移動すると、ドア11は、開口部3aと接触した状態となる。
【0175】
次に、ドア11がロックされる(ステップS3)。具体的には、
図14、
図18(A)、
図18(B)および
図19を参照して、ロック機構12のロック機構アクチュエータ114が駆動することで、出力軸114bが回転し、これにより、動力伝達機構115の駆動歯車121および従動歯車122が回転する。そして、従動歯車122の回転に伴い、外側スリーブ126およびコントロールリング131が、
図19に示す状態から前方から見て支軸7回りを反時計回り方向に回転する。これにより、各リンクユニット132において、コントロールリング131の回転がリンク部材140を介して可動ロック部材113に伝わり、可動ロック部材113が第1リンク軸141回りを回転する。その結果、ローラ113cは、
図18(A)に示すように、対応する固定ロック部材112のくさび形状部112aに挿入され、当該くさび形状部112aとくさび結合し、可動ロック部材113が固定ロック部材112に固定される。すなわち、ドア11がロックされる。
【0176】
次に、加熱炉3内の被処理物200が加熱される(ステップS4)。具体的には、加熱炉3に熱処理用ガスが供給されつつ、加熱炉3に設けられた図示しないヒータが加熱炉3内の被処理物200を加熱する。
【0177】
被処理物200の加熱が完了すると、ドア11のロックが解除される(ステップS5)。具体的には、
図14、
図18(A)、
図18(B)および
図19を参照して、ロック機構12のロック機構アクチュエータ114が駆動することで、出力軸114bが回転し、これにより、動力伝達機構115の駆動歯車121および従動歯車122が回転する。そして、従動歯車122の回転に伴い、外側スリーブ126およびコントロールリング131が、
図18(A)に示す状態から、前方から見て支軸7回りを時計回り方向に回転する。これにより、各リンクユニット132において、コントロールリング131の回転力が、リンク部材140を介して可動ロック部材113に伝わり、可動ロック部材113が第1リンク軸141回りを回転する。その結果、ローラ113cは、
図19に示すように、対応する固定ロック部材112のくさび形状部112aから外れて固定ロック部材112とは支軸7の周方向の位置がずらされる。すなわち、ドア11のロックが解除される。
【0178】
ドア11のロックが解除された後、
図22(A)に示すように、バスケット5は加熱炉3から搬出される(ステップS6)。すなわち、バスケット5が加熱位置P12から操作・保持位置P11へ搬送される。具体的には、駆動機構30の駆動モータ41が駆動することで、運動変換機構43の雄ねじ軸43aが回転するとともに、雄ねじ軸43aにねじ結合しているナット43bが、室外スライダ27とともに前方へ移動する。これにより、室外軸受部52、支軸7、バスケット5、室内軸受部53および室内スライダ29も前方へ移動する。その結果、バスケット5が加熱位置P12から加熱炉3外の操作・保持位置P11まで移動する。
【0179】
バスケット5が操作・保持位置P11まで戻された後、バスケット5は、操作・保持位置P11から落下位置P13に回転させられて被処理物200を落下させる(ステップS7)。具体的には、
図20に示す回転機構9の回転モータ145が駆動することで、回転モータ145の出力軸145bの出力回転が、回転伝達機構146を介して支軸7に伝達される。これにより、支軸7は、前方から見て反時計回り方向に回転し、その結果、バスケット5は、
図23(A)に示すように、下向き姿勢となる。また、このとき、
図23(B)を参照して、衝撃付与機構10の回転部材161が矢印R方向に回転してストッパ162に衝突し、回転部材161に衝撃力が付与される。この衝撃は、支軸7およびバスケット連結機構51を介してバスケット5に伝わる。バスケット5に伝達された衝撃力によって、バスケット5から被処理物200が剥がされ、被処理物200がバスケット5から冷却槽4へ落下する。これにより、被処理物200が冷却槽4内の冷媒にて冷却される。
【0180】
バスケット5から被処理物200が落下した後、バスケット5は、回転機構9の駆動によって前方から見て時計回り方向に回転させられることで、落下位置P13から操作・保持位置P11へ向きを戻される(ステップS8)。以上が、熱処理装置1におけるバッチ処理の一例である。
【0181】
以上説明したように、熱処理装置1の衝撃付与機構10は、バスケット5から離隔した位置で、被処理物200をバスケット5から落下させる衝撃力を発生する。よって、被処理物200の加熱に伴って高温で軟化したバスケット5自体に衝撃を与えるのではないので、バスケット5の変形等の損傷を抑制できる。
【0182】
また、熱処理装置1によると、衝撃付与機構10は、バスケットが操作・保持位置P11から落下位置P13へ変位することに伴う回転力を衝撃力に変換する。この構成によると、被処理物200をバスケット5から落下させる動作を利用して衝撃付与機構10で衝撃力を発生できる。これにより、バスケット5へ与える衝撃力を発生する機構と、バスケット5から被処理物200を落下させる機構と、を別々に設けなくてすみ、熱処理装置1の構成をより簡素にできる。また、バスケット5から被処理物200を落下させると同時にバスケット5に衝撃を付与できるので、被処理物200をバスケット5から迅速に落下させることができる。よって、複数の被処理物200がバスケット5から落下して冷却槽4に投入される場合に、複数の被処理物200をほぼ同時に冷却槽に投入できる。これにより、被処理物200間で冷却開始時間に差がでることを抑制でき、その結果、被処理物200間での熱処理品質のばらつきを抑制できる。
【0183】
また、熱処理装置1によると、衝撃付与機構10は、支軸7の中心軸線回りにバスケット5と連動回転可能に連結された回転部材161と、バスケット5が操作・保持位置P11から落下位置P13へ回転したときに回転部材161と衝突するストッパ162と、を含んでいる。この構成によると、回転部材161をストッパ162に衝突させる簡易な構成で、衝撃付与機構10を実現できる。
【0184】
また、熱処理装置1によると、支持機構6の支軸7は、バスケット5に連結された支軸側連結部54を有してバスケット5を支持しており、衝撃付与機構10の回転部材161は、支軸7において支軸側連結部54から離隔した位置に設けられている。この構成によると、回転部材161が支軸7において支軸側連結部54から離隔しているので、回転部材161がストッパ162から受ける衝撃がバスケット5に直接伝わることを抑制しつつ、バスケット5を揺らす衝撃力を支軸7からバスケット5へ伝達できる。
【0185】
また、熱処理装置1によると、回転機構9において回転モータ145が設けられており、この回転モータ145の出力軸145bの回転速度が調整可能とされている。この構成によると、回転モータ145の回転速度を調整することで、バスケット5へ付与する衝撃力を適宜調整することができる。
【0186】
また、熱処理装置1によると、移動機構8によって、バスケット5を加熱位置P12と操作・保持位置P11との間で移動させることができる。よって、バスケット5の搬入動作および搬出動作を、移動機構8を用いてスムーズに行うことができる。
【0187】
また、熱処理装置1によると、移動機構8は、バスケット5を前後方向Xに直線移動させる簡易な構成で、バスケット5の搬入動作および搬出動作をスムーズに行うことができる。
【0188】
また、熱処理装置1によると、支持機構6は、バスケット5を支持する支軸7と、この支軸7を支持する軸受部52,53と、を含んでいる。この構成によると、軸受部52,53が支軸7を回転可能に支持することとなる。これにより、支軸7と、この支軸7に支持されたバスケット5をスムーズに回転させてバスケット5を反転動作できる。この反転動作によって、バスケット5に載せられた被処理物200をバスケット5から払い出すことができる。よって、バスケット5の搬入動作および搬出動作を、支持機構6を用いてスムーズに行うことができる。
【0189】
また、熱処理装置1によると、室内軸受部53のドア11は、バスケット5が加熱位置P12にあるときに加熱炉3の開口部3aを塞ぐ。この構成によると、室内軸受部53は、加熱炉3の開口部3aを塞ぐドアとして機能できる。よって、室内軸受部53が移動機構8によって直線移動することで、加熱炉3に対するバスケット5の搬入動作および搬出動作に加えて、加熱炉3のドア11の開閉動作も行うことができる。
【0190】
また、熱処理装置1によると、バスケット5と支軸7とを連結するピン56,56は、バスケット5および支軸7の少なくとも一方(本実施形態では、双方)に対して分離可能に配置されている。この構成によると、支軸7を取り替えることなくバスケット5を取り替えることができる。バスケット5は、加熱炉3内において被処理物200とともに加熱されるので、熱による変形等が生じて損傷し易い傾向にある。よって、支軸7からバスケット5を取り替えることで、熱処理装置1のメンテナンスにかかる時間をより短くできる。
【0191】
また、熱処理装置1によると、ロック機構12の可動ロック部材113は、ドア11に取り付けられており、ドア11と開口部3aとをロックするため、および、このロックを解除するために、ドア11に対して変位可能である。この構成によると、ドア11に可動ロック部材113が設けられているので、ドア11を開くことで可動ロック部材113を加熱炉3の開口部3aから遠ざけることができる。すなわち、ドア11を開くときに熱い加熱炉3から離すように可動ロック部材113を動かすことができる。これにより、可動ロック部材113は、加熱炉3内から開口部3aを通して受ける熱量を小さくできる。このため、可動ロック部材113の熱負荷を小さくでき、可動ロック部材113の熱変形による損傷を生じ難くできる。また、ドア11をロック機構12の設置ベースとしても用いることができる結果、ロック機構12を含む熱処理装置1をよりコンパクトにできる。以上の次第で、加熱炉3を開閉するドア用のロック機構12について、コンパクトな構成にでき、さらに、加熱炉3からの熱の影響をより受け難くできる。
【0192】
また、熱処理装置1によると、加熱炉3の開口部3a側にドア11の外周を取り囲む大径のリング状ロック部材を設ける必要がないので、ロック機構12の部品加工コストを低くできる。また、複数の可動ロック部材113をドア11に取り付けた後にドア11を支持機構6に取り付けることが可能な構成であるので、複数の可動ロック部材113を支持機構6に個別に組み付ける手間を省略することが可能であり、熱処理装置1の組立作業を簡素にできる。
【0193】
また、熱処理装置1によると、ロック機構12は、ドア11の開閉動作に連動してドア11と変位するように配置されたロック機構アクチュエータ114と、ロック機構アクチュエータ114の出力を可動ロック部材113の変位に変換するリンク機構116と、を有している。この構成によると、ロック機構アクチュエータ114の出力によって、可動ロック部材113によるドア11のロックおよびロックの解除を行うことができる。また、ロック機構アクチュエータ114は、ドア11の開閉動作に連動してドア11と前後方向Xに変位するように構成されている。この構成により、ロック機構アクチュエータ114は、加熱炉3内から開口部3aを通して受ける熱量を小さくできる。このため、熱に起因するロック機構アクチュエータ114の故障を抑制できる。
【0194】
また、熱処理装置1によると、リンク機構116は、ロック機構アクチュエータ114の出力を第1リンク軸141回りの可動ロック部材113の変位に変換する。この構成によると、可動ロック部材113を第1リンク軸141回りに回転させる簡易な構成で、ロック機構アクチュエータ114の出力を用いて可動ロック部材113を動作させることができる。
【0195】
また、熱処理装置1によると、リンク機構116は、コントロールリング131に連結された複数のリンク部材140を有している。そして、コントロールリング131の回転によって、複数のリンク部材140が対応する可動ロック部材113を変位させる。この構成によると、複数の可動ロック部材113によって、ドア11の各部をより均等な加圧力で開口部3aにロックできる。
【0196】
また、熱処理装置1によると、リンク機構116のコントロールリング131は、本体131aと、複数の凸部131bと、を含み、各リンク部材140は、スリットが形成されたスリット部140dを含み、スリットには対応する凸部131bが通されている。そして、第2リンク軸142は、スリット部140dと対応する凸部131bとを連結しており、第2リンク軸142回りにおけるスリット部140dと対応する凸部131bとの相対回転を許容している。この構成によると、コントロールリング131のうち凸部131bにリンク部材140のスリット部140dが連結されていることで、コントロールリング131が回転したときに、コントロールリング131の本体131aとリンク部材140とが接触しないようにできる。また、第2リンク軸142と第1リンク軸141の相対位置を調整することで、リンク機構116が設けられていることによる、ロック機構アクチュエータ114の出力の増幅度合いを調整できる。
【0197】
また、熱処理装置1によると、固定ロック部材112のくさび形状部112aに先細り形状部112bが設けられている。そして、可動ロック部材113のローラ113cが先細り形状部112bに挿入されることで、ローラ113cが先細り形状部112bに押し込まれる。この構成によると、ローラ113cとくさび形状部112aとのくさび結合によって、可動ロック部材113とくさび形状部112aとの結合力を高くできる。また、くさび形状部112aは、簡易な形状である。このため、ドア11が開いたときに加熱炉3内の熱が開口部3aを通してくさび形状部112aに伝わったときでも、くさび形状部112aの熱による変形に起因する不具合を生じ難くできる。
【0198】
また、熱処理装置1によると、ドア支持機構65は、ドア11の開閉動作に伴いドア11と可動ロック部材113とを連動して前後方向X(開閉方向)に移動させる。この構成によると、ドア11を開くときに熱い加熱炉3から離すように可動ロック部材113を動かす構成を実現できる。これにより、ロック機構12の熱負荷を低くできる。
【0199】
また、熱処理装置1によると、ドア11をドア支軸67回りに揺動可能にすることで、ドア11の傾きを調整できる。これにより、開口部3aへのドア11の密着度をより高くできる。
【0200】
また、熱処理装置1によると、ロック機構アクチュエータ114は、ドア支軸67の下方に配置されている。この構成によると、ドア支軸67下方の空間をロック機構アクチュエータ114の配置空間として用いることができるので、熱処理装置1におけるスペースを有効に活用できる。その結果、熱処理装置1をよりコンパクトにできる。
【0201】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、ドア11の開閉方向が直線方向としての前後方向Xである形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、ドア11は、開口部3aの周囲に設けられたヒンジ回りを回転することで、開閉されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明は、熱処理装置として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0203】
1 熱処理装置
3 加熱炉
5 バスケット
6 支持機構
7 支軸
10 衝撃付与機構
54 支軸側連結部(連結部)
145 回転モータ
161 回転部材
162 ストッパ
200 被処理物
P11 操作・保持位置(保持位置)
P13 落下位置