(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】界面活性剤組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C11D 1/72 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
C11D1/72
(21)【出願番号】P 2020158124
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019173624
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 篤
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 享
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-102608(JP,A)
【文献】特表2011-509334(JP,A)
【文献】特開2008-188480(JP,A)
【文献】特開2009-270222(JP,A)
【文献】特開昭50-123704(JP,A)
【文献】特開2004-352859(JP,A)
【文献】特開2014-131872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00 - 19/00
C07B 31/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
で示され、Aが、炭素数1~3のアルキレン基であり、xが、1~50であり、m+nが9であるC12体と;上記式(1)で示され、Aが、炭素数1~3のアルキレン基であり、xが、1~50であり、m+nが10であるC13体と;上記式(1)で示され、Aが、炭素数1~3のアルキレン基であり、xが、1~50であり、m+nが11であるC14体と;を含み、前記C12体の含有量が、
50~90質量
%であり、前記C13体の含有量が、0~40質量%であり、前記C14体の含有量が、
2~20質量%である、界面活性剤組成物。
【請求項2】
前記アルキレン基が、エチレン基である、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項3】
前記C
13体の含有量が、
30質量%
以下であ
り、前記C14体の含有量が、4質量%以上である、請求項1または2に記載の界面活性剤組成物。
【請求項4】
下記式(2):
【化2】
で示され、m+nが9であるC12前駆体
50~90質量
%と;上記式(2)で示され、m+nが10であるC13前駆体 0~40質量%と;上記式(2)で示され、m+nが11であるC14前駆体
2~20質量%と;を含む、第2級アルコール混合物に、アルキレンオキサイドを付加することを有する、界面活性剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級第2級アルコールエトキシレートは、流動点が低く、取り扱いが容易なので非イオ
ン界面活性剤として広範に使われている。公知例として、例えば、洗浄力を向上すること
を目的とした、特定の化学式で表される高級第2級アルコールアルコキシレート付加物を
含むノニオン界面活性剤と、第1級アルコールアルコキシレート、アニオン界面活性剤ま
たはカチオン界面活性剤とを含む洗浄剤組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
界面活性剤には、大きく分けて、浸透作用、乳化作用、分散作用の3つの作用があり、
これらが総合的に働いて、繊維や食器などの被洗浄物の汚れを落とす。このうち、浸透作
用は、水が汚れと被洗浄物との間に染み込む作用であり、これが高いほど、被洗浄物の奥
の汚れを取ることができる。また、界面活性剤は、泡切れがよければ、すすぎが速くでき
、洗浄の作業時間の短縮に繋がる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、浸透作用が高く、泡切れのよい新規な界面活性剤組成物を提
供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、下記の発明によって解決することができる。
【0007】
下記式(1):
【0008】
【0009】
で示され、Aが、炭素数1~3のアルキレン基であり、xが、1~50であり、m+nが
9であるC12体と;上記式(1)で示され、Aが、炭素数1~3のアルキレン基であり
、xが、1~50であり、m+nが10であるC13体と;上記式(1)で示され、Aが
、炭素数1~3のアルキレン基であり、xが、1~50であり、m+nが11であるC1
4体と;を含み、前記C12体の含有量が、25質量%超100質量%以下であり、前記
C13体の含有量が、0~40質量%であり、前記C14体の含有量が、0~20質量%
である、界面活性剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浸透作用が高く、泡切れのよい新規な界面活性剤組成物を提供するこ
とができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)の条件で測定す
る。また「含有量」との記載は文脈によっては「含有比率」と解釈されうる。
【0012】
<界面活性剤組成物>
本発明の一形態の界面活性剤組成物は、下記式(1):
【0013】
【0014】
で示され、Aが、炭素数1~3のアルキレン基であり、xが、1~50であり、m+nが
9であるC12体と;上記式(1)で示され、Aが、炭素数1~3のアルキレン基であり
、xが、1~50であり、m+nが10であるC13体と;上記式(1)で示され、Aが
、炭素数1~3のアルキレン基であり、xが、1~50であり、m+nが11であるC1
4体と;を含み、前記C12体の含有量が、25質量%超100質量%以下であり、前記
C13体の含有量が、0~40質量%であり、前記C14体の含有量が、0~20質量%
である、界面活性剤組成物である。かかる界面活性剤組成物(「洗浄剤組成物」と称する
こともある)は、浸透作用が高く、泡切れのよい新規な洗浄剤組成物となる。
【0015】
本発明の一形態において、炭素数1~3のアルキレン基としては、エチレン基またはプ
ロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。かかる形態によって安価に洗浄力の
高い界面活性剤組成物を得ることができる。
【0016】
本発明の一形態において、xが、5~50であることが好ましく、6~30であること
がより好ましく、7~15であることがさらに好ましく、9~12であることがよりさら
に好ましい。かかる形態によって、水への溶解性と油への親和性を付与し、優れた洗浄力
を発揮することができる。なお、C12体、C13体、C14体のA、xは、それぞれ異
なるものであってもよい。
【0017】
本発明の一形態において、前記C12体の含有量が、25質量%超100質量%以下で
ある。前記C12体の含有量が、25質量%以下であると、本発明の所期の効果を奏さな
い虞がある。本発明の一形態において、前記C12体の含有量が、30質量%以上、40
質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、あるいは、65質量%以上が好ましい。
かかる形態によって、優れた浸透力を発揮することができる。本発明の一形態において、
前記C12体の含有量が、100質量%未満、90質量%以下、80質量%以下、あるい
は、75質量%以下である。かかる形態によって、浸透力が向上する、泡切れがよくなる
、および、液体洗剤としての流動性を向上させる、ことの少なくとも1つ以上の効果を有
する。
【0018】
本発明の一形態において、前記C13体の含有量が、0~40質量%である。前記C1
3体の含有量が、40質量%超であると、本発明の所期の効果を奏さない虞がある。本発
明の一形態において、前記C13体の含有量が、0質量%超、5質量%以上、10質量%
以上、15質量%以上、あるいは、18質量%以上であることがより好ましい。かかる形
態によって、液体洗剤としての流動性を向上させることが出来る。本発明の一形態におい
て、前記C13体の含有量が、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、ある
いは、23質量%以下であることが好ましい。かかる形態によって、浸透力が向上する、
泡切れがよくなる、および、液体洗剤としての流動性を向上させる、少なくとも1つ以上
の効果を有する。
【0019】
本発明の一形態において、前記C14体の含有量が、0~20質量%である。前記C1
4体の含有量が、20質量%超であると、本発明の所期の効果を奏さない虞がある。本発
明の一形態において、前記C14体の含有量が、0質量%超、2質量%以上、4質量%以
上、6質量%以上、あるいは、8質量%以上であることが好ましい。かかる形態によって
、優れた洗浄力を発揮することが出来る。本発明の一形態において、前記C14体の含有
量が、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、あるいは、12質量%以下で
あることが好ましい。かかる形態によって、優れた浸透力を発揮することができる。
【0020】
本発明の一形態において、前記C12体の含有量、前記C13体の含有量および前記C
14体の含有量の合計が100質量%である。
【0021】
なお、本明細書において、様々な含有量(含有比率)の上限値、下限値、範囲の開示を
行っているが、本明細書においては、全ての上限値、下限値、範囲またはそれらの組み合
わせ開示されているものとする。つまり補正の適法性の根拠となる。
【0022】
<界面活性剤組成物の製造方法>
本発明の一形態において、界面活性剤組成物の製造方法は、下記式(2):
【0023】
【0024】
で示され、m+nが9であるC12前駆体 25質量%超100質量%以下と;上記式(
2)で示され、m+nが10であるC13前駆体 0~40質量%と;上記式(2)で示
され、m+nが11であるC14前駆体 0~20質量%と;を含む、第2級アルコール
混合物に、アルキレンオキサイドを付加することを有する。かかる製造方法によれば、浸
透作用が高く、泡切れのよい界面活性剤組成物を製造することができる。
【0025】
(第2級アルコール混合物の準備)
本発明の一形態において、上記式(2)で示される第2級アルコール混合物は、原料飽
和脂肪族炭化水素混合物を酸化する酸化工程、アルコール化工程を経ることによって得る
ことができる。
【0026】
本発明の一形態において、前記酸化工程は、従来公知の知見を参照し、あるいは組み合
わせることによって行うことができ、例えば、特開昭48-34807号公報、油化学,
24,7,p.p.427-434(1975)における酸化工程に関する記載を適宜参
照、あるいは組み合わせることができるがこれらの方法に限定されない。一例を挙げて説
明すると、原料飽和脂肪族炭化水素混合物をホウ素化合物の存在下、酸素と、窒素とを含
むガスを吹き込むことで、酸化反応を行う。ホウ素化合物としては、メタホウ酸、オルト
ホウ酸等が好適である。続いて、熱水処理等の加水分解によって作製したアルコールのオ
ルトホウ酸エステル化を行う。好適には、10~300hPa、150~190℃の条件
にて、アルコールとホウ酸を反応させオルトホウ酸エステル化する。このオルトホウ酸エ
ステルを含む混合物を好適には1~100hPaでフラッシュ蒸留することによって未反
応飽和脂肪族炭化水素を除去することができる。次いで、蒸留残留物を加水分解してホウ
酸と有機層とに分離する加水分解工程を経て、分離された有機層をアルカリでケン化して
、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層に分離するケン化、また水洗を行い、有機酸およ
び有機酸エステルを除去する。その後、分留を行い、第2級アルコール混合物を得ること
ができる。
【0027】
以上より、本発明の一形態において、前記酸化工程は、本発明の原料飽和脂肪族炭化水
素混合物をホウ素化合物の存在下、酸素と窒素とを含むガスを添加し、酸化反応をするこ
とを含む。また、本発明の一形態において、前記酸化反応で生成されたアルコールのオル
トホウ酸エステル化を行うによってオルトホウ酸エステルを含む混合物を作製することを
含む。また、本発明の一形態において、前記オルトホウ酸エステルを含む混合物を蒸留し
、未反応飽和脂肪族炭化水素を除去することを含む。また、本発明の一形態において、蒸
留残留物を加水分解してホウ酸と有機層とに分離する加水分解工程を経る。また、本発明
の一形態において、分離された有機層をアルカリでケン化、より具体的には、アルカリ水
溶液層と粗製アルコール層に分離するケン化、また水洗を行うことを含む。本発明の一形
態において、有機酸および有機酸エステルを除去した後、分留を行い、第2級アルコール
混合物を得ることを含む。
【0028】
〔原料飽和脂肪族炭化水素混合物〕
ここで、原料飽和脂肪族炭化水素混合物は、上記式(2)で示される第2級アルコール
混合物を得るための原料である。本発明の一形態において、原料飽和脂肪族炭化水素混合
物は、炭素数12の飽和脂肪族炭化水素と、炭素数13の飽和脂肪族炭化水素と、炭素数
14の飽和脂肪族炭化水素とが、所定の割合で含まれている。
【0029】
つまり、原料飽和脂肪族炭化水素混合物は、炭素数12の飽和脂肪族炭化水素(C12
体に相当する)と、炭素数13の飽和脂肪族炭化水素(C13体に相当する)と、炭素数
14の飽和脂肪族炭化水素(C14体に相当する)とを、それぞれ、25質量%超100
質量%以下、0~40質量%、0~20質量%の含有量で含む。なお、原料飽和脂肪族炭
化水素混合物における、各炭素数の飽和脂肪族炭化水素の好ましい含有量(含有比率、(
質量%))やその範囲、上限、下限については、上記の<界面活性剤組成物>の項にて行
った説明が同様に妥当するのでここでは説明を省略する。より具体的には、C12体の説
明を炭素数12の飽和脂肪族炭化水素の説明に、C13体の説明を炭素数13の飽和脂肪
族炭化水素の説明に、C14体の説明を炭素数14の飽和脂肪族炭化水素の説明にそれぞ
れ読み替えて適用することができる。
【0030】
具体例としては、上述の「本発明の一形態において、前記C12体の含有量が、25質
量%超100質量%以下である。前記C12体の含有量が、25質量%以下であると、本
発明の所期の効果を奏さない虞がある。本発明の一形態において、前記C12体の含有量
が、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、あるいは、6
5質量%以上が好ましい」は、「本発明の一形態において、前記炭素数12の飽和脂肪族
炭化水素の含有量が、原料飽和脂肪族炭化水素混合物中、25質量%超100質量%以下
である。前記炭素数12の飽和脂肪族炭化水素の含有量が、25質量%以下であると、本
発明の所期の効果を奏さない虞がある。本発明の一形態において、前記炭素数12の飽和
脂肪族炭化水素の含有量が、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質
量%以上、あるいは、65質量%以上が好ましい。」と読み替えられる。
【0031】
本発明の一形態において、上述の、炭素数12の飽和脂肪族炭化水素と、炭素数13の
飽和脂肪族炭化水素と、炭素数14の飽和脂肪族炭化水素とが所定の割合で含まれている
、原料飽和脂肪族炭化水素混合物の準備も、従来公知の知見を参照し、あるいは組み合わ
せることにより行うことができ、例えば、常法(例えば、蒸留)で分離操作等を行うこと
によって行うことができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、アルキレンオキサイドの付加の対象である、第2級アル
コール混合物は、原料飽和脂肪族炭化水素混合物に酸化工程を施すことを含んで準備され
、当該原料飽和脂肪族炭化水素混合物は、原料飽和脂肪族炭化水素混合物は、炭素数12
の飽和脂肪族炭化水素と、炭素数13の飽和脂肪族炭化水素と、炭素数14の飽和脂肪族
炭化水素とを、それぞれ、25質量%超100質量%以下、0~40質量%、0~20質
量%で含む。このように準備した第2級アルコール混合物にアルキレンオキサイドの付加
を行って界面活性剤組成物を製造することができる。
【0033】
(アルキレンオキサイドの付加)
本発明の一形態において、界面活性剤組成物の製造方法は、例えば、上記方法で準備さ
れた、下記式(2):
【0034】
【0035】
で示され、m+nが9であるC12前駆体 25質量%超100質量%以下と;上記式(
2)で示され、m+nが10であるC13前駆体 0~40質量%と;上記式(2)で示
され、m+nが11であるC14前駆体 0~20質量%と;を含む、第2級アルコール
混合物に、アルキレンオキサイドを付加することを有する。かかる製造方法によれば、浸
透作用が高く、泡切れのよい界面活性剤組成物を作製することができる。
【0036】
なお、第2級アルコール混合物における、各前駆体の好ましい含有量(含有比率(質量
%))やその範囲、上限、下限については、上記の<界面活性剤組成物>の項にて行った
説明が同様に妥当するのでここでは説明を省略する。より具体的には、C12体の説明を
C12前駆体の説明に、C13体の説明をC13前駆体の説明に、C14体の説明をC1
4前駆体の説明にそれぞれ読み替えて適用することができる。より具体的には、〔原料飽
和脂肪族炭化水素混合物〕で説明した具体例において、原料飽和脂肪族炭化水素混合物を
第2級アルコール混合物に読み替えて適用できる。
【0037】
本発明の一形態において、前記アルキレンオキサイドの付加は、従来公知の知見を参照
し、あるいは組み合わせることによって行うことができる。従来公知の例としては、例え
ば、特開2003-221593号公報、特開昭48-34807号、油化学,24,7
,p.p.427-434(1975)に記載の方法を挙げることができる。以下、アル
キレンオキサイドの付加につき具体例を挙げて説明するが以下に限定されない。
【0038】
本発明の一形態において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロ
ピレンオキサイド等が好適である。本発明の一形態において、アルキレンオキサイドを付
加する際、窒素置換しておく。窒素置換する際の初期窒素圧は、0.05~1.0MPa
が好ましく、0.05~0.4MPaがより好ましい。本発明の一形態において、反応温
度としては、40~100℃が好ましく、40~70℃がより好ましい。本発明の一形態
において、第2級アルコール混合物における水酸基1モルに対するアルキレンオキサイド
のフィードモル数は、1~5モルが好ましく、2~4モルがより好ましい。触媒としては
、三フッ化ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランなどの酸触媒が好ましい。
反応後、得られた油層を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液で水洗すること
で、触媒や副生成物を除去し、アルキレンオキサイド付加物を得ることができる。さらに
純度を高めるために、蒸留を行うことで、未反応のアルコールを除去することが好ましい
。得られたアルキレンオキサイド付加物に対し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど
のアルカリ化合物を添加し、再度アルキレンオキサイドを付加することで洗剤組成物に使
用するのに適したアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。平均付加モル数は、
水酸基1モルに対し、5~50であることが好ましく、6~30であることがより好まし
く、7~15であることがさらに好ましく、9~12であることがよりさらに好ましい。
【0039】
<界面活性剤組成物の用途>
本発明の一形態において、界面活性剤組成物の用途としては、本発明の界面活性剤組成
物は、浸透作用が高く、泡切れのよいことから、洗浄剤としての使用が望ましい。
【0040】
本発明の一形態において、界面活性剤組成物を単独で使用してもよいが、従来の公知の
他の界面活性剤を併用してもよい。このような界面活性剤としては、例えば、アルキルベ
ンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル
スルホン酸塩、脂肪族アミドスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルエー
テル硫酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム
塩などの陽イオン界面活性剤、アルキルベタインなどの両性イオン界面活性剤などがあげ
られる。
【0041】
本発明の一形態において、界面活性剤組成物は、種々の添加剤を加えることができる。
このような添加剤としては、例えば、アルカリ剤、ビルダー、香料、蛍光増白剤、着色剤
、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、酵素、防腐剤、染料、溶剤などが挙
げられる。
【0042】
本発明の一形態において、界面活性剤組成物を洗浄剤として使用する場合、衣類、繊維
製品、食器、容器、雑貨器具、食品、ビルメインテナンス製品、住居、家具、自動車、航
空機、金属製品などの洗浄剤、シャンプー、ボディシャンプーなどとして有効に用いるこ
とができる。
【0043】
本発明の一形態において、界面活性剤組成物を乳化剤として使用してもよい。乳化剤を
用いることのできる油性物質については、特に制限はなく、鉱物油、動植物油、合成油な
どを使用することができる。これらは、単独でも、あるいは2種以上混合して使用するこ
ともできる。鉱物油の例としては、例えば、スピンドル油、マシン油、流動パラフィン油
などを挙げることができる。動植物油の例としては、牛脂、豚脂、魚油、鯨油、ナタネ油
、ゴマ油、ヤシ油、大豆油、パーム油、ツバキ油、ヒマシ油などを挙げることができる。
本発明の一形態において、乳化剤は、農薬、金属加工油、塗料および乳化重合用乳化剤な
どに用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら
実施例および比較例に限定して解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手
段を適宜組み合わせて得られる実施例も本発明の範囲に含まれる。
【0045】
<実施例1>
(酸化工程、アルコール化工程)
炭素数の分布が下記の表1に示されるとおりの飽和脂肪族炭化水素の混合物1000g
と、メタホウ酸25gとを容量3Lの円筒形反応器に入れ、酸素濃度3.5vol%、窒
素濃度96.5vol%のガスを1時間当たり430Lの割合で吹き込み、常圧下170
℃で2時間酸化反応を行った。
【0046】
この酸化反応混合液の50質量%を多量の熱水(95℃)で加水分解し、生成したアル
コールを含む油層を分離した。この油層に残りの酸化反応液50%を混合することにより
、オルトホウ酸エステル当量として1.04当量のホウ酸エステル形成化合物が存在する
ように調整した。これを200hPa170℃にて処理し、それに含まれるアルコールを
オルトホウ酸エステル化した。このオルトホウ酸エステルを含む混合物を7hPaでフラ
ッシュ蒸留し、残留液の温度が170℃になるまで未反応飽和脂肪族炭化水素を除去した
。次いで残留液を多量の95℃の熱水で加水分解し、ホウ酸を水相に除去した。得られた
油層をケン化および水洗を行い有機酸および有機酸エステルを除去した。この油相を7h
Paで分留し、第一留分として沸点範囲95℃以上120℃未満留分は、少量のパラフィ
ン、カルボニル化合物、及び1価一級アルコールの混合物であった。第二留分(沸点範囲
120~150℃留分)は、微量のカルボニル化合物と、多価第2級アルコールとが得ら
れたが、大部分が一価第2級アルコールであった。この第二留分として、一価第2級アル
コールを得た。以上のようにして、第2級アルコール混合物を得た。
【0047】
(アルキレンオキサイド付加工程)
上記で得られた第2級アルコール混合物を、攪拌装置、温度計、エチレンオキサイド(
EO)が導入される導入管付きのSUS 3Lオートクレーブに1kg仕込み、窒素置換
した。その後、BF3-Et触媒(BF3:46-49%)を1.68g仕込み、初期窒
素圧0.05MPa、55±5℃にてエチレンオキサイド(EO)を水酸基1モルに対し
1.7モルフィードして付加した。その後NaOH液を加えて90℃で反応液を洗い、さ
らにpHが7以下になるまで水洗した。次いで油相を3Lのガラス製三口フラスコに仕込
み、蒸留塔(充填物 ディクソンパッキン内径40mm、長さ200mm、理論段数3段
)を取り付け、蒸留することにより平均付加モル数水酸基1モルに対し3モルのエトキシ
レート付加物を得た。次に得られたエトキシレート付加物558gと水酸化カリウム1g
を前記と同様のオートクレーブに仕込み、窒素置換後、反応器内の圧力を窒素にて15k
Paとし、150℃に加熱し、442gのエチレンオキサイドを反応させた。反応後、酢
酸で中和しエチレンオキサイド付加物である界面活性剤を得た。なお、得られた界面活性
剤組成物は、上記式(1)で示すことができ、m+nが9であるC12体、m+nが10
であるC13体、m+nが11であるC14体、(以下、炭素数の分布)が表1に示すと
おりであることを確認した。EOの平均付加モル数が、8.6であることを以下の水酸基
価測定法によって確認した。
【0048】
<比較例1、2>
実施例1における、飽和脂肪族炭化水素の混合物を以下の表1に示すように変更した以
外は、実施例1と同様にしてエトキシレート付加物である界面活性剤組成物を得た。なお
、得られた界面活性剤組成物は、上記式(1)で示すことができ、比較例1、2の界面活
性剤組成物の炭素数の分布は表1に示すとおりであることを確認した。EOの平均付加モ
ル数が、それぞれ、9.0、9.4であることを以下の水酸基価測定法によって確認した
。
【0049】
なお、原料パラフィン(飽和脂肪族炭化水素の混合物)の炭素数の分布と、2級アルコ
ール(第2級アルコールの混合物)の炭素数の分布と、アルコキシレート(エトキシレー
ト付加物)の炭素数の分布とは同じとなる。
【0050】
<評価方法>
(水酸基価測定方法)
試薬特級無水フタル酸444gを取り、試薬特級ピリジンに溶解して、全量3Lのフタ
ル化試薬を作製した。テフロンフラスコに試料約1gを精秤採取し、フタル化試薬9mL
を加え、テフロン蓋を付けた。このとき試料を入れないものを空試験とした。表面温度1
20℃に調節したホットプレートにフラスコを置き、90分間加熱した。なお、加熱中は
15分に1回の割合でフラスコを軽く振って攪拌した。加熱後、純水15mLを加えて、
10分間放冷した後、純水を50mL加え、軽く攪拌した。フラスコを自動滴定装置(京
都電子株式会社製、AT-610)にセットし、0.5mol/L水酸化カリウム溶液(
関東化学株式会社製、容量分析用滴定液)で中和滴定を行った。1試料につき3回ずつ測
定を行い、以下の式より水酸基価を算出した。
【0051】
HV={(VB-VS)×N×F×56.11}/S
HV:水酸基価(mgKOH/g)
VB:空試験の0.5mol/L水酸化カリウム水溶液滴定量(mL)
VS:試料の0.5mol/L水酸化カリウム水溶液の滴定量(mL)
N:0.5(水酸化カリウム水溶液の濃度(mol/L))
F:0.5mol/L水酸化カリウム水溶液のファクター
S:試料の採取量(g)。
【0052】
得られた水酸基価から平均分子量を算出し、第2級アルコールの平均分子量との差から
EOの平均付加mol数を算出した。
【0053】
n=(56110/HV-Mw)/44.05
Mw:第2級アルコールの平均分子量。
【0054】
(飽和脂肪族炭化水素の炭素数の分布測定方法)
下記の装置を使用し、下記の条件で飽和脂肪族炭化水素の炭素数の分布測定を行った。
【0055】
装置:GC-2010 (SHIMAZU)
条件:カラム:UA1(MS/HT)-30M-0.25F (GL Science
)
注入量:0.5ml
注入方法:スプリットレス
インジェクション温度:400℃
カラム温度:50℃(10min)~5℃/min-400℃(30min)
キャリアガス:He,1ml/min
検出器:FID(400℃,H2 50ml/min,Air 400ml/min,
N2 20ml/min)。
【0056】
(界面活性剤組成物の炭素数の分布測定方法)
装置:Alliance 2695 HPLC(Waters)
カラム:Intersil ODS-2 内径3.0mm,長さ150mm(GL S
cience)
カラム温度:40℃
注入量:100μl
サンプル濃度:2%
溶離液:アセトニトリル/水=65/35(vol%)
流速:1ml/min
検出器:RI。
【0057】
(HLB)
実施例、比較例の界面活性剤組成物のHLBを表1に示す。なお、HLBは、グリフィ
ン法により求めた値である。本発明の一実施形態によれば、界面活性剤組成物のHLBは
、好ましくは10.0~16.0であり、より好ましくは11.0~15.0であり、さ
らに好ましくは12.0~14.0である。
【0058】
(1)浸透力
浸透力は、キャンパスディスク法により評価した。ビーカー(外径87mm)に界面活
性剤組成物水溶液500mlを加え、試験布を浮かべた後、素早くグーチガラス漏斗(胴
外径45mm、足外径33mm、胴部長さ80mm)を用いて試験布を液中に沈めた。試
験布に水溶液が含浸し、気泡が抜けることで試験布が沈み、ビーカーの底に着くまでの時
間を測定した。
【0059】
測定は、3回行って、その相加平均値を表1に示した。
【0060】
≪条件≫
界面活性剤組成物の水中の濃度:0.1wt%
試験布:木綿、6号帆布(直径25mm)。
【0061】
(2)泡切れ
装置として、ターゴトメーター 形式TM-4 (大栄科学精器製作所)を使用し、泡
切れを評価した。すなわち、下記の洗浄条件で洗浄を行い、下記のすすぎ条件ですすぎを
行い、下記の評価を行った。
【0062】
≪洗浄条件≫
布:コットン(5×5cm2)30g、
界面活性剤組成物の水中における濃度:0.05wt%、
水:900g (正確には、Ca 1.5mmol/L, Mg 1.0mmol/L
になるよう調整)、
界面活性剤組成物が含まれた水の温度:30℃、
撹拌速度:120rpm、
洗浄時間:20分。
【0063】
≪すすぎ条件≫
温度:30℃
水:純水900g
撹拌速度:120rpm
すすぎ時間:5分。
【0064】
≪評価≫
洗浄とすすぎを一度ずつ行った後、コットン布1枚と純水50gを100mlのサンプ
ル管に入れて振り、泡の様子を確認した。
【0065】