(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】往復動工具
(51)【国際特許分類】
B23D 49/16 20060101AFI20241112BHJP
B27B 19/09 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B23D49/16
B27B19/09
(21)【出願番号】P 2020184429
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 智大
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇太
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0259701(US,A1)
【文献】特開平09-277167(JP,A)
【文献】特開2015-085429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 49/00、51/08
B27B 3/00、19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動工具であって、
前記往復動工具の前後方向を規定する第1の軸を有するハウジングと、
前記ハウジングに支持された支持体と、
前記支持体によって、直線状に移動可能に支持されたスライダであって、刃先を有するブレードを装着可能な前端部を有するスライダと、
モータと、
前記スライダに動作可能に連結され、前記モータの動力によって、前記支持体に対して前記スライダを往復動させるように構成された駆動機構と、
前記スライダを選択的に付勢するように構成された第1付勢部材と、
手動操作部材と、
前記手動操作部材に動作可能に連結され、前記手動操作部材の手動操作に応じて、選択的に、前記第1付勢部材による前記スライダの付勢を可能とする、あるいは不能とするように構成された第1切替機構とを備え、
前記第1の軸に直交する上下方向において、前記往復動工具の通常使用時に前記ブレードの前記刃先が向く方向が下方向を規定し、
前記第1切替機構によって付勢が可能とされている場合、前記第1付勢部材は、前記スライダの前端部が下方へ向かうように、前記スライダを付勢するように構成されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項2】
往復動工具であって、
前記往復動工具の前後方向を規定する第1の軸を有するハウジングと、
第2の軸を有する支持体であって、前記ハウジング内で概ね前後方向に延在し、前記ハウジングに対して前記第1の軸に直交する上下方向に揺動可能に支持された支持体と、
前記支持体によって、前記第2の軸に沿って直線状に移動可能に支持された長尺のスライダであって、刃先を有するブレードを装着可能な前端部を有するスライダと、
モータと、
前記スライダに動作可能に連結され、前記モータの動力によって、前記スライダを、前記支持体に対して前記第2の軸に沿って往復動させるように構成された駆動機構と、
前記支持体を選択的に付勢するように構成された第1付勢部材と、
手動操作部材と、
前記手動操作部材に動作可能に連結され、前記手動操作部材の手動操作に応じて、選択的に、前記第1付勢部材による前記支持体の付勢を可能とする、あるいは不能とするように構成された第1切替機構とを備え、
前記上下方向において、前記往復動工具の通常使用時に前記ブレードの前記刃先が向く方向が下方向を規定し、
前記第1切替機構によって付勢が可能とされている場合、前記第1付勢部材は、前記支持体を、前記支持体の前端部が下方へ揺動する第1方向に付勢するように構成されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の往復動工具であって、
前記第1付勢部材の付勢力を選択的に遮断するように構成された遮断部材を更に備え、
前記第1切替機構は、前記手動操作部材の手動操作に応じて、前記遮断部材に前記付勢力を選択的に遮断させるように構成されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項4】
請求項3に記載の往復動工具であって、
前記第1切替機構は、前記手動操作に応じて移動することで、前記遮断部材を、前記付勢力を遮断する遮断位置に選択的に移動させるように構成された可動部材を含むことを特徴とする往復動工具。
【請求項5】
請求項4に記載の往復動工具であって、
前記可動部材は、前記手動操作部材に動作可能に連結され、前記手動操作部材の手動操作に応じて回動可能なシャフトであって、
前記シャフトは、前記シャフトの回動に応じて前記遮断部材に選択的に当接し、前記遮断部材を前記遮断位置へ移動させるように構成されたカム部を有することを特徴とする往復動工具。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1つに記載の往復動工具であって、
前記駆動機構による前記スライダの往復動中に、前記スライダを前記上下方向に揺動させることで、前記ブレードにオービタル運動を選択的に行わせるように構成されたオービタル機構と、
前記手動操作部材に動作可能に連結され、前記手動操作部材の手動操作に応じて、選択的に、前記オービタル機構の動作を変化させるように構成された第2切替機構とを更に備えることを特徴とする往復動工具。
【請求項7】
請求項6に記載の往復動工具であって、
前記第1切替機構および前記第2切替機構は、前記手動操作部材に動作可能に連結され、前記手動操作部材の手動操作に応じて回動可能な共通のシャフトを含み、
前記第1切替機構は、前記シャフト上に設けられ、前記シャフトの回動に応じて、選択的に、前記第1付勢部材による付勢を可能とする、あるいは不能とするように構成された第1切替部を含み、
前記第2切替機構は、前記シャフト上に設けられ、前記シャフトの回動に応じて、選択的に、前記オービタル機構の前記動作を変化させるように構成された第2切替部を含むことを特徴とする往復動工具。
【請求項8】
請求項7に記載の往復動工具であって、
前記手動操作部材は、少なくとも、第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置に回動可能であって、
前記第1切替部は、
前記手動操作部材が前記第1回動位置に配置されている場合、前記付勢部材による付勢を可能とし、且つ、
前記手動操作部材が前記第2回動位置に配置されている場合、および、前記第3回動位置に配置されている場合、前記付勢部材による付勢を不能とするように構成されており、
前記第2切替部は、少なくとも、前記手動操作部材が前記第2回動位置に配置されている場合と前記第3回動位置に配置されている場合とで、前記オービタル機構の前記動作を変化させるように構成されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項9】
請求項7または8に記載の往復動工具であって、
前記支持体と前記第1付勢部材の間に介在する遮断部材を更に備え、
前記第1切替部および前記第2切替部は、夫々、第1カム部および第2カム部として構成されており、
前記駆動機構は、前記支持体の後端部の下側に配置され、前記モータの前記動力によって、前記上下方向に延在する回転軸周りに回転駆動されるクランク板であって、前記回転軸から偏心した位置に固定され、前記スライダに動作可能に連結されたクランクピンを有するクランク板を含み、
前記オービタル機構は、
前記クランク板に設けられた円環状の突出部であって、前記クランク板の上面から上方に突出し、且つ、前記回転軸周りの周方向において前記上下方向の厚みが変化するように構成された第3カム部と、
前記支持体の後端部を、前記第3カム部に当接させる方向に付勢する第2付勢部材と含み、
前記第1カム部は、
前記手動操作部材が前記第1回動位置に配置されている場合、前記遮断部材を前記第1付勢部材の前記付勢力を遮断する遮断位置から解放し、且つ、
前記手動操作部材が前記第2回動位置に配置されている場合、および、前記第3回動位置に配置されている場合、前記遮断部材に当接して、前記遮断部材を前記遮断位置に保持するように構成されており、
前記第2カム部は、
前記手動操作部材が前記第2回動位置に配置されている場合、前記クランク板が1回転する過程の少なくとも一部で前記支持体に当接し、前記支持体の前記後端部が前記第3カム部に当接するのを阻害し、且つ、
前記手動操作部材が前記第3回動位置に配置されている場合、前記クランク板が1回転する過程の全てにおいて、前記支持体の前記後端部が前記第3カム部に当接するのを許容するように構成されていることを特徴とする往復動工具。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1つに記載の往復動工具であって、
前記支持体は、前記ハウジングに対し、前記前後方向および前記上下方向に直交する左右方向に延在する軸周りに揺動可能であることを特徴とする往復動工具。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1つに記載の往復動工具であって、
前記支持体または前記スライダに当接することで、前記第1付勢部材による付勢方向とは逆の第2方向への前記スライダの移動量を規定するように構成された当接部を更に備えたことを特徴とする往復動工具。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1つに記載の往復動工具であって、
前記第1付勢部材は、前記上下方向において、前記支持体と前記ハウジングの間に配置された圧縮コイルバネであることを特徴とする往復動工具。
【請求項13】
請求項12に記載の往復動工具であって、
前記支持体と前記圧縮コイルバネの間に、前記上下方向に移動可能に配置された遮断部材を更に備え、
前記第1切替機構は、前記手動操作部材の手動操作に応じて、選択的に、前記遮断部材を前記支持体から離間した遮断位置に保持する、あるいは前記遮断部材の前記支持体への当接を許容するように構成されており、
前記圧縮コイルバネは、前記遮断部材の前記支持体への当接が許容されている場合、前記遮断部材を介して前記支持体を付勢することを特徴とする往復動工具。
【請求項14】
請求項13に記載の往復動工具であって、
前記圧縮コイルバネおよび前記遮断部材は、前記上下方向に延在する共通の支持部材によって支持されていることを特徴とする往復動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレードを往復動させるように構成された往復動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの動力によって、ブレードを往復動させるように構成された往復動工具が知られている。例えば、特許文献1には、防振構造を備えたレシプロソーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のレシプロソーによれば、振動がインナハウジングからアウタハウジングに伝達されるのを抑制することで、使用時の快適性が高められている。一方で、様々な作業状況での使いやすさに関しては、更なる改良の余地がある。
【0005】
本開示は、往復動工具の使いやすさの向上に資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、ハウジングと、支持体と、スライダと、モータと、駆動機構と、第1付勢部材と、手動操作部材と、第1切替機構とを備えた往復動工具が提供される。
【0007】
ハウジングは、往復動工具の前後方向を規定する第1の軸を有する。支持体は、ハウジングに支持されている。スライダは、支持体によって、直線状に移動可能に支持されている。スライダは、刃先を有するブレードを装着可能な前端部を有する。駆動機構は、スライダに動作可能に連結され、モータの動力によって、支持体に対してスライダを往復動させるように構成されている。第1付勢部材は、スライダを選択的に付勢するように構成されている。第1切替機構は、手動操作部材に動作可能に連結され、手動操作部材の手動操作に応じて、選択的に、第1付勢部材による前記スライダの付勢を可能とする、あるいは不能とするように構成されている。第1の軸に直交する上下方向において、往復動工具の通常使用時にブレードの刃先が向く方向は、下方向を規定する。第1切替機構によって付勢が可能とされている場合、第1付勢部材は、スライダを下方に付勢するように構成されている。なお、本態様において、スライダは、第1付勢部材によって直接付勢されても間接的に付勢されてもよい。
【0008】
本態様の往復動工具によれば、使用者は、手動操作部材を手動操作することで、第1切替機構を介して、第1付勢部材の状態を、スライダを付勢する状態(以下、単に付勢状態という)と、スライダを付勢しない状態(以下、単に非付勢状態という)との間で切り替えることができる。よって、使用者は、作業状況(例えば、被加工材の種類)に応じて手動操作部材を手動操作し、第1付勢部材を適切な状態とすることができる。これにより、往復動工具の使いやすさを向上させることができる。
【0009】
本開示の一態様によれば、ハウジングと、支持体と、スライダと、モータと、駆動機構と、第1付勢部材と、手動操作部材と、第1切替機構とを備えた往復動工具が提供される。
【0010】
ハウジングは、往復動工具の前後方向を規定する第1の軸を有する。支持体は、第2の軸を有する。支持体は、ハウジング内で概ね前後方向に延在する。支持体は、ハウジングに対して第1の軸に直交する上下方向に揺動可能に支持されている。スライダは、長尺に形成されている。スライダは、支持体によって、第2の軸に沿って直線状に移動可能に支持されている。また、スライダは、刃先を有するブレードを装着可能な前端部を有する。駆動機構は、スライダに動作可能に連結されている。駆動機構は、モータの動力によって、スライダを、支持体に対して第2の軸に沿って往復動させるように構成されている。
【0011】
第1付勢部材は、支持体を選択的に付勢するように構成されている。第1切替機構は、手動操作部材に動作可能に連結されている。第1切替機構は、手動操作部材の手動操作に応じて、選択的に、第1付勢部材による支持体の付勢を可能とする、あるいは不能とするように構成されている。上下方向において、往復動工具の通常使用時にブレードの刃先が向く方向は、下方向を規定する。第1切替機構によって付勢が可能とされている場合、第1付勢部材は、支持体を、支持体の前端部が下方へ揺動する第1方向に付勢するように構成されている。なお、本態様において、支持体は、第1付勢部材によって直接付勢されても間接的に付勢されてもよい。
【0012】
本態様の往復動工具によれば、使用者は、手動操作部材を手動操作することで、第1切替機構を介して、第1付勢部材の状態を、支持体を付勢する状態(以下、単に付勢状態という)と、支持体を付勢しない状態(以下、単に非付勢状態という)との間で切り替えることができる。よって、使用者は、作業状況(例えば、被加工材の種類)に応じて手動操作部材を手動操作し、第1付勢部材を適切な状態とすることができる。これにより、往復動工具の使いやすさを向上させることができる。
【0013】
本開示の一態様において、往復動工具は、第1付勢部材の付勢力を選択的に遮断するように構成された遮断部材を更に備えてもよい。第1切替機構は、手動操作部材の手動操作に応じて、遮断部材に付勢力を選択的に遮断させるように構成されていてもよい。本態様によれば、遮断部材を用いて、付勢状態と非付勢状態とを容易に切り替えることができる。
【0014】
本開示の一態様において、第1切替機構は、可動部材を含んでもよい。可動部材は、手動操作に応じて移動することで、遮断部材を、付勢力を遮断する遮断位置に選択的に移動させるように構成されていてもよい。本態様によれば、遮断部材を遮断位置に移動させるだけで、付勢力を容易に遮断することができる。
【0015】
本開示の一態様において、可動部材は、手動操作部材に動作可能に連結され、手動操作部材の手動操作に応じて回動可能なシャフトであってもよい。シャフトは、シャフトの回動に応じて遮断部材に選択的に当接し、遮断部材を遮断位置へ移動させるように構成されたカム部を有してもよい。本態様によれば、カム部を有するシャフトという簡易な構成によって、遮断部材を移動させることができる。
【0016】
本開示の一態様において、往復動工具は、オービタル機構と、第2切替機構とを更に備えてもよい。オービタル機構は、駆動機構によるスライダの往復動中に、スライダを上下方向に揺動させることで、ブレードにオービタル運動を選択的に行わせるように構成されていてもよい。なお、オービタル運動とは、典型的には、楕円状の軌道経路に沿った移動をいう。第2切替機構は、手動操作部材に動作可能に連結され、手動操作部材の手動操作に応じて、選択的に、オービタル機構の動作を変化させるように構成されていてもよい。なお、本態様でいう「オービタル機構の動作を変化させる」とは、例えば、オービタル機構の動作を不能とすること、および、オービタル機構によるスライダの揺動量を変化させること(つまり、ブレードのオービタル運動の軌道経路を変化させること)を含む。
【0017】
本態様によれば、使用者は、手動操作部材を手動操作することで、第2切替機構を介して、オービタル機構の動作を変化させることができる。使用者は、作業状況(例えば、被加工材の種類)に応じて手動操作部材を手動操作し、オービタル機構の動作を適切な状態とすることができる。また、同じ手動操作部材が、第1切替機構および第2切替機構の両方の状態を切り替えることができる。これにより、部品数の増加を抑え、操作性を高めることができる。
【0018】
本開示の一態様において、第1切替機構および第2切替機構は、手動操作部材に動作可能に連結され、手動操作部材の手動操作に応じて回動可能な共通のシャフトを含んでもよい。第1切替機構は、シャフト上に設けられ、シャフトの回動に応じて、選択的に、第1付勢部材による付勢を可能とする、あるいは不能とするように構成された第1切替部を含んでもよい。また、第2切替機構は、シャフト上に設けられ、シャフトの回動に応じて、選択的に、オービタル機構の動作を変化させるように構成された第2切替部を含んでもよい。本態様によれば、単一のシャフトと、シャフト上に夫々設けられた第1切替部および第2切替部という簡易な構成により、第1付勢部材およびオービタル機構の両方の状態を切り替えることができる。
【0019】
本開示の一態様において、手動操作部材は、少なくとも、第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置に回動可能であってもよい。第1切替部は、手動操作部材が第1回動位置に配置されている場合、第1付勢部材による付勢を可能とし、且つ、手動操作部材が第2回動位置に配置されている場合、および、第3回動位置に配置されている場合、第1付勢部材による付勢を不能とするように構成されていてもよい。第2切替部は、少なくとも、手動操作部材が第2回動位置に配置されている場合と第3回動位置に配置されている場合とで、オービタル機構の動作を変化させるように構成されていてもよい。本態様によれば、使用者は、手動操作部材を回動するだけで、第1付勢部材の状態およびオービタル機構の状態の少なくとも3種類の組合せから、作業状況に応じて適切な組み合わせを選択することができる。
【0020】
本開示の一態様において、往復動工具は、支持体と第1付勢部材の間に介在する遮断部材を更に備えてもよい。第1切替部および前記第2切替部は、夫々、第1カム部および第2カム部として構成されていてもよい。駆動機構は、クランク板を含んでもよい。クランク板は、支持体の後端部の下側に配置され、モータの動力によって、上下方向に延在する回転軸周りに回転駆動されるように構成されてもよい。クランク板は、回転軸から偏心した位置に固定され、スライダに動作可能に連結されたクランクピンを有してもよい。オービタル機構は、第3カム部と、第2付勢部材とを含んでもよい。第3カム部は、クランク板に設けられた円環状の突出部であって、クランク板の上面から上方に突出し、且つ、回転軸周りの周方向において上下方向の厚みが変化するように構成されていてもよい。第2付勢部材は、支持体の後端部を、第3カム部に当接させる方向に付勢してもよい。第1カム部は、手動操作部材が第1回動位置に配置されている場合、遮断部材を、第1付勢部材の付勢力を遮断する遮断位置から解放するように構成されていてもよい。第1カム部は、更に、手動操作部材が第2回動位置に配置されている場合、および、第3回動位置に配置されている場合、遮断部材に当接して、遮断部材を遮断位置に保持するように構成されていてもよい。第2カム部は、手動操作部材が第2回動位置に配置されている場合、クランク板が1回転する過程の少なくとも一部で支持体に当接し、支持体の後端部が第3カム部に当接するのを阻害するように構成されていてもよい。第2カム部は、更に、手動操作部材が第3回動位置に配置されている場合、クランク板が1回転する過程の全てにおいて、支持体の後端部が第3カム部に当接するのを許容するように構成されていてもよい。本態様によれば、クランク板を用いて、スライダを往復動させるのと同時に、ブレードにオービタル運動を行わせる合理的な機構が実現される。また、単一のシャフトと、シャフト上に夫々設けられた第1カム部および第2カム部という簡易な構成により、第1付勢部材およびオービタル機構の両方の状態を切り替えることができる。なお、本態様によれば、手動操作部材が第3回動位置に配置されている場合、手動操作部材が第2回動位置に配置されている場合に比べて、ブレードのより大きなオービタル運動が許容される。
【0021】
本開示の一態様において、支持体は、ハウジングに対し、前後方向および上下方向に直交する左右方向に延在する軸周りに揺動可能であってもよい。本態様によれば、支持体の合理的な支持構造が実現される。
【0022】
本開示の一態様において、往復動工具は、支持体またはスライダに当接することで、第1付勢部材による付勢方向とは逆の第2方向へのスライダの移動量を規定するように構成された当接部を更に備えてもよい。本態様によれば、使用者がブレードを被加工材に押し付け、第1付勢部材がある程度弾性変形すると、当接部が、スライダがそれ以上第2方向に移動するのを阻害することができる。これにより、使用者の押し付け力を効率的に被加工材に伝達することが可能となる。
【0023】
本開示の一態様において、第1付勢部材は、上下方向において、支持体とハウジングの間に配置された圧縮コイルバネであってもよい。本態様によれば、簡易な構成の第1付勢部材が実現される。
【0024】
本開示の一態様において、往復動工具は、支持体と圧縮コイルバネの間に、上下方向に移動可能に配置された遮断部材を更に備えてもよい。第1切替機構は、手動操作部材の手動操作に応じて、選択的に、遮断部材を支持体から離間した遮断位置に保持する、あるいは遮断部材の支持体への当接を許容するように構成されていてもよい。圧縮コイルバネは、遮断部材の支持体への当接が許容されている場合、遮断部材を介して支持体を付勢してもよい。本態様によれば、圧縮コイルバネと遮断部材を用いて、付勢部材の状態を切り替え可能な比較的簡易で合理的な構成が実現される。
【0025】
本開示の一態様において、圧縮コイルバネおよび遮断部材は、上下方向に延在する共通の支持部材によって支持されていてもよい。本態様によれば、コンパクトで簡易な圧縮コイルバネおよび遮断部材の支持構造が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】レシプロソーの断面図であって、第3動作モードにおいて、スライダが第1スライダ位置に配置された状態を示す。
【
図4】
図3に対応する断面図であって、スライダが第2スライダ位置に配置された状態を示す。
【
図5】第3動作モードが選択されたときの付勢機構、切替レバー、および切替機構の斜視図である。
【
図7】
図2のVII-VII線における断面図である。
【
図8】レシプロソーの部分断面図であって、第1動作モードの無負荷状態において、スライダが第1スライダ位置に配置された状態を示す。
【
図9】第1動作モードが選択されたときの付勢機構、切替レバー、および切替機構の斜視図である。
【
図11】
図8のXI-XI線における断面図である。
【
図12】レシプロソーの部分断面図であって、第2動作モードにおいて、スライダが第1スライダ位置に配置された状態を示す。
【
図13】第2動作モードが選択されたときの付勢機構、切替レバー、および切替機構の斜視図である。
【
図16】
図12に対応する断面図であって、スライダが第2スライダ位置に配置された状態を示す。
【
図17】
図8に対応する断面図であって、第1動作モードの無負荷状態において、スライダが第2スライダ位置に配置された状態を示す。
【
図18】レシプロソーの部分断面図であって、第1動作モードの負荷状態において、スライダが第1スライダ位置に配置された状態を示す。
【
図19】
図18に対応する断面図であって、第1動作モードの負荷状態において、スライダが第2スライダ位置に配置された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、実施形態に係るレシプロソー1について説明する。
図1および
図2に示すレシプロソー1は、手持ち式の往復動工具の一例である。レシプロソー1は、取り外し可能に装着された薄板状のブレード91を往復動することで、被加工材(木材、プラスチック材、鋼材等)を切断するように構成されている。なお、レシプロソーは、セーバーソーとも称されうる。
【0028】
まず、レシプロソー1の概略構成について説明する。
【0029】
図1および
図2に示すように、レシプロソー1の外郭は、主として、本体ハウジング11と、ハンドル18とによって形成されている。
【0030】
本体ハウジング11は、長尺の中空体である。本体ハウジング11は、長軸A1を有する。本体ハウジング11には、モータ31と、ブレード91を装着可能なスライダ5と、モータ31の動力を用いてスライダ5を往復動させる駆動機構4等が収容されている。本体ハウジング11の長軸A1の延在方向(以下、単に長軸方向ともいう)における一端部には、開口111が設けられている。開口111は、長軸A1上に配置されており、スライダ5に装着されたブレード91は、開口111を通じて本体ハウジング11の外側に延びる。開口111の近傍には、作業時に被加工材に当接されるシュー113が、取り外し可能に装着されている。
【0031】
ハンドル18は、略C字状に形成された中空体である。ハンドル18は、本体ハウジング11の長軸方向における他端部に連結されて、本体ハウジング11の後端部とともにループを形成している。ハンドル18は、使用者によって把持される把持部181を含む。把持部181は、本体ハウジング11の長軸A1に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に延在する。把持部181には、モータ31の起動用のトリガ182が設けられている。把持部181内には、スイッチ183が収容されている。また、ハンドル18には、バッテリハウジング187が設けられている。バッテリハウジング187には、レシプロソー1の電源である充電式のバッテリ(バッテリパックともいう)93を着脱可能である。なお、詳細な図示および説明は省略するが、バッテリハウジング187は、ハンドル18とは別個の部材であって、弾性体を介してハンドル18に連結されている。但し、バッテリハウジング187に代えて、ハンドル18の下端部に、バッテリ93を着脱可能なバッテリ装着部が設けられていてもよい。また、ハンドル18内には、コントローラ30が収容されている。
【0032】
使用者がトリガ182を押圧操作すると、スイッチ183がオンとされ、モータ31が通電されて、駆動機構4によって、ブレード91が概ね本体ハウジング11の長軸方向に往復動される。
【0033】
以下、レシプロソー1の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、本体ハウジング11の長軸A1の延在方向を、レシプロソー1の前後方向と規定する。前後方向において、開口111が設けられている側をレシプロソー1の前側、反対側(ハンドル18側)を後側と規定する。長軸A1に直交し、且つ、スライダ5に装着されたブレード91の板面911に略平行な方向(あるいは、長軸A1に直交し、且つ、把持部181の延在方向に概ね対応する方向)を、レシプロソー1の上下方向と規定する。上下方向において、通常使用時にブレード91の刃先913が向く方向を下方向、反対方向を上方向と規定する。更に、前後方向および上下方向に直交する方向を、レシプロソー1の左右方向と規定する。
【0034】
まず、本体ハウジング11の内部構造について説明する。
【0035】
図2に示すように、本体ハウジング11の内部には、主に、モータ31と、駆動機構4と、支持体13と、スライダ5とが収容されている。
【0036】
モータ31は、本体ハウジング11の後端部に収容されている。本実施形態のモータは、ブラシレスDCモータである。モータ31は、ステータおよびロータを含む本体部311と、ロータと一体的に回転可能なモータシャフト315とを有する。モータ31は、モータシャフト315の回転軸が本体ハウジング11の長軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在するように配置されている。モータシャフト315の前端部には、ピニオン316が設けられている。ピニオン316は、ベベルギヤである。ピニオン316は、モータシャフト315と一体的に形成されており、モータシャフト315と共に回転軸周りに回転する。
【0037】
なお、本実施形態では、モータ31の駆動は、コントローラ30によって制御される。詳細な図示は省略するが、コントローラ30は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータを備えている。コントローラ30は、スイッチ183がオンとされると、モータ31を駆動する。
【0038】
本実施形態では、駆動機構4とスライダ5は、本体ハウジング11内で、モータ31の前側に収容されている。なお、本実施形態では、駆動機構4とスライダ5は、ギヤハウジング12に収容されている。なお、ギヤハウジング12は、本体ハウジング11内に固定状に保持されている。このことから、ギヤハウジング12は、本体ハウジング11と一体的な単一のハウジングとしてとらえることもできる。、また、スライダ5は、ギヤハウジング12内で、支持体13によって支持されている。ギヤハウジング12は、全体としては長尺状の中空体であって、前端に開口121を有する。スライダ5に装着されたブレード91は、開口121を通じてギヤハウジング12の外側に延びる。
【0039】
以下、駆動機構4について説明する。駆動機構4は、モータシャフト315の回転動力をスライダ5に伝達し、スライダ5を駆動するように構成された機構である。
【0040】
図3に示すように、駆動機構4は、中間シャフト41と、ベベルギヤ43と、クランク板45とを含む。
【0041】
中間シャフト41は、モータシャフト315の前端部よりも前側で、本体ハウジング11(ギヤハウジング12)の下端部内に配置されている。中間シャフト41は、2つの軸受によって回転可能に支持されている。中間シャフト41の回転軸A3は、上下方向に延在する。
【0042】
ベベルギヤ43は、中間シャフト41に同軸状に取り付けられており、中間シャフト41の回転軸A3周りに、中間シャフト41と一体的に回転可能である。ベベルギヤ43は、モータシャフト315の下側に配置されており、ピニオン316に噛合している。よって、ベベルギヤ43は、モータ31の駆動に伴い、中間シャフト41と共に回転する。
【0043】
クランク板45は、平面視円形の板状部材であって、中間シャフト41と同軸状に配置され、中間シャフト41の上側に固定されている。よって、クランク板45は、回転軸A3周りに、中間シャフト41と一体的に回転可能である。
【0044】
クランク板45は、クランクピン451を有する。クランクピン451は、回転軸A3に対して偏心した位置でクランク板45に固定され、クランク板45の上面から上方に突出している。クランクピン451の周囲には、概ね円筒状の連結部材455が配置されている。クランクピン451の径方向において、クランクピン451と連結部材455の間には、軸受(詳細には、針軸受)453が介在している。よって、連結部材455は、クランクピン451に対し、クランクピン451の軸周りに回転可能である。なお、連結部材455の外周面は、純粋な円柱面ではなく、上端と下端に向けて湾曲している。
【0045】
以下、支持体13について説明する。支持体13は、長尺部材であって、ギヤハウジング12内で概ね前後方向に延在するように支持されている。本実施形態では、支持体13は、上壁と、左壁と、右壁とを有する。
【0046】
支持体13の前端部と後端部には、夫々、滑り軸受(プレーンベアリングともいう)131、132が固定されている。滑り軸受131、132は同軸状に配置されており、滑り軸受131、132の軸は、支持体13の長軸を規定する。スライダ5は、滑り軸受131、132に同軸状に挿通されて、滑り軸受131、132によって、支持体13の長軸に沿って摺動可能に支持されている。つまり、支持体13の長軸は、スライダ5の駆動軸A2を規定する。
【0047】
また、支持体13は、ギヤハウジング12に対して上下方向に揺動可能に支持されている。より詳細には、支持体13は、ピン141を介してギヤハウジング12に連結されている。ピン141は、ギヤハウジング12内で左右方向に延在し、両端部がギヤハウジング12に支持されている。ピン141は、支持体13の左壁および右壁の下前端部に夫々設けられた支持孔130に挿通されている。このような構成により、支持体13は、ピン141を支点として、ピン141の軸周りに上下方向に揺動可能である。
【0048】
以下、スライダ5について説明する。
図3に示すように、スライダ5は、全体としては、直線状に延びる長尺の部材である。スライダ5は、本体ハウジング11(ギヤハウジング12)内に概ね前後方向に延在するように配置されている。本実施形態では、スライダ5は、本体51と、ブレード装着部53と、ピン連結部55とを含む。
【0049】
本体51は、スライダ5のうち、支持体13の滑り軸受131、132によって支持される部分である。本体51は、概ね均一の径を有する円筒状に形成されている。ブレード装着部53は、スライダ5の前端部に設けられている。ブレード装着部53には、ブレード91の基端部が取り外し可能に装着される(
図2参照)。
【0050】
ピン連結部55は、本体51の前後方向における中央部よりもやや後側の部分に、本体51と一体的に設けられている。ピン連結部55は、本体51の軸(つまり、駆動軸A2)に直交するように、左右方向に延在する。詳細な図示は省略するが、ピン連結部55の左右方向の幅は、本体51の径よりも大きく、ピン連結部55の左端部および右端部は、夫々、本体51よりも左方および右方に突出している。ピン連結部55の下部には、上方に凹むガイド凹部551が形成されている。ガイド凹部551は、ピン連結部55の左右方向の全長に亘って延びている。
【0051】
ピン連結部55は、クランクピン451と動作可能に連結されている。より詳細には、ガイド凹部551内には、軸受453および連結部材455が装着された状態のクランクピン451の上部が挿入されている。ガイド凹部551の前後方向の幅は、連結部材455の最大径と概ね等しい。一方、ガイド凹部551の左右方向の長さは、回転軸A3を中心するクランクピン451の周回軌道の径よりも若干大きく設定されている。なお、連結部材455は、上述のような外周面を有するため、スライダ5の上下方向の位置にかかわらず、ガイド凹部551内をスムーズに移動可能である。
【0052】
このような構成により、クランクピン451は、ガイド凹部551に対する前後方向の移動が規制された状態で、ガイド凹部551内を左右方向に移動可能である。クランク板45が中間シャフト41と共に回転すると、クランクピン451は、回転軸A3を中心として周回する。このとき、クランクピン451の周回運動における前後方向成分のみがピン連結部55に伝達され、スライダ5は、支持体13に対し、駆動軸A2沿って概ね前後方向に往復動される。このように、クランクピン451を有するクランク板45、および、スライダ5のピン連結部55は、モータシャフト315の回転運動をスライダ5の直線状の往復動に変換する運動変換機構を構成している。
【0053】
本実施形態のレシプロソー1は、3つの動作モード(第1動作モード、第2動作モード、第3動作モード)を有する。レシプロソー1は、第1動作モード、第2動作モードおよび第3動作モードのうち、使用者によって選択された動作モードに応じて動作する。
【0054】
第1動作モードは、刃先913が下方へ揺動する方向に支持体13を付勢することで、刃先913の上方への跳ねを抑える動作モードである。
【0055】
第2動作モードおよび第3動作モードは、スライダ5を前後方向に直線状に往復動させるのと同時に上下方向に揺動させることで、ブレード91を楕円状の軌道経路に沿って移動させる動作モードである。なお、以下では、ブレード91の楕円状の軌道経路に沿った移動を、オービタル運動またはオービタル動作ともいう。第2動作モードと第3動作モードの相違点は、ブレード91のオービタル運動量(つまり、ブレード91の軌道経路)である。具体的には、第3動作モードでは、第2動作モードよりも大きなブレード91のオービタル運動が許容される。
【0056】
以下、刃先913が下方へ揺動する方向に支持体13を付勢するための機構(以下、付勢機構7という)について説明する。
図5~
図8に示すように、付勢機構7は、本体ハウジング11(ギヤハウジング12)の後端部内に配置されている。付勢機構7は、2つの付勢部材71と、遮断部材73とを含む。
【0057】
本実施形態の付勢部材71は、圧縮コイルバネである。付勢部材71は、2つの支持ピン123によって支持されている。支持ピン123は、ギヤハウジング12に固定され、上方に突出している。2つの支持ピン123は、支持体13の後端よりも後方且つ下方において、左右方向に離間して配置されている。付勢部材71は、支持ピン123によって、コイルの軸が上下方向に延在するように支持されている。
【0058】
遮断部材73は、左右一対の第1当接部731と、連結部733と、第2当接部735とを含む金属製の単一部材である。第1当接部731は、左右方向に離間して配置され、互いに平行に、前後方向に延在する矩形状の板状部である。連結部733は、左右一対の第1当接部731の後端部を連結する部分であって、逆U字状(上方に凸)に湾曲された板状部である。第2当接部735は、連結部733の前端から前方に延在する矩形板状の部分である。一対の第1当接部731の後端部には、夫々、支持孔が設けられている。支持孔は、支持ピン123の径に概ね等しい径を有する。遮断部材73は、支持孔に支持ピン123が挿通され、第1当接部731が付勢部材71の上側に載置された状態で支持されている。
【0059】
遮断部材73は、付勢部材71の付勢力によって、ギヤハウジング12に対して上方に付勢されている。詳細は後述するが、第1動作モードが選択されているときには、第2当接部735が支持体13の後端部(詳細には、滑り軸受132の下端部を覆う固定板(以下、当接部133という))に当接する。一方、第1動作モードが選択されていない場合には、第1当接部731は上方から押圧され、付勢部材71を圧縮した状態で、所定位置に保持される。このとき、第2当接部735は支持体13の当接部133から下方に離間した位置に配置され、支持体13に対する付勢部材71の付勢力が遮断される。
【0060】
以下、ブレード91のオービタル運動を生じさせるための機構(以下、オービタル機構6という)について説明する。オービタル機構6は、スライダ5の前後方向の移動に伴って支持体13を上下方向に揺動させるように構成された機構である。本実施形態では、オービタル機構6は、カム部61と、付勢部材63とを含む。
【0061】
図3および
図4に示すように、カム部61は、上述のクランク板45に設けられている。カム部61は、クランク板45の上面から上方に突出するように、クランク板45の外縁に沿って設けられた円環状の部分である。クランク板45の上面からのカム部61の突出量(つまり、上下方向におけるカム部61の厚み)は、周方向において変化する。より詳細には、カム部61の上端面(カム面)は、
図3に示すように、カム部61のうち最も厚い部分が最後方位置にあるとき、中間シャフト41の回転軸A3に直交する仮想的な平面に対して前方に傾斜するように構成されている。以下、カム部61のうち最も厚い部分が最後方位置にあるときのクランク板45の回動位置を、第1回動位置という。クランク板45が第1回動位置にあるときのスライダ5の前後方向位置を、第1スライダ位置という。また、カム部61のうち最も薄い部分が最後方位置にあるときのクランク板45の回動位置を、第2回動位置という。クランク板45が第2回動位置にあるときのスライダ5の前後方向位置を、第2スライダ位置という。
【0062】
付勢部材63は、ギヤハウジング12の上壁と、支持体13の上壁との間に配置されている。本実施形態では、付勢部材63には圧縮コイルバネが採用されている。付勢部材63は、ギヤハウジング12の後端部と支持体13の後端部の間に圧縮状態で配置されており、支持体13の後端部を、本体ハウジング11(ギヤハウジング12)に対して常に下方に付勢している。つまり、付勢部材63は、支持体13の前端部(ブレード91)が上方に揺動する方向に支持体13を付勢している。なお、詳細な図示は省略するが、本実施形態では、付勢部材63は、支持体13の左端部と右端部に対応して、2つ設けられている。
【0063】
また、支持体13に取り付けられた後側の滑り軸受132の前端部の外周には、軸受145が嵌め込まれている。なお、軸受145は玉軸受であって、軸受145の内輪が滑り軸受132に圧入固定されている。軸受145の外輪は、支持体13に対して駆動軸A2周りに回転可能である。上下方向において、軸受145の真下には、クランク板45の後端部(カム部61の一部)が配置されている。
【0064】
上述のように、支持体13の後端部は、付勢部材63によって下方(つまり、軸受145がカム部61に近づく方向)に付勢されている。このため、支持体13の揺動が禁止されない限り、あるいは、支持体13を逆方向に揺動させる外力が付与されない限り、軸受145は、クランク板45のカム部61に上方から当接した状態で保持される。
【0065】
軸受145がカム部61に当接する状態でモータ31が駆動されると、クランク板45の回転に伴って、軸受145は、カム部61の上端面(カム面)上を回転しながら移動する。クランク板45の回転に伴って、カム部61のうち、軸受145に当接する部分の厚みは変化する。このため、軸受145は上下方向に移動する。
【0066】
より詳細には、
図3に示すように、クランク板45が第1回動位置に配置されると、軸受145は、カム部61のうち最も厚い部分に当接する。このとき、スライダ5は、第1スライダ位置に配置され、軸受145は、
カム部61に当接して上下動する範囲内において最上方位置に配置される。一方、
図4に示すように、クランク板45が第2回動位置まで回転されると、軸受145は、カム部61のうち最も薄い部分に当接する。このとき、スライダ5は、第2スライダ位置に配置され、軸受145は、
カム部61に当接して上下動する範囲内において最下方位置に配置される。
【0067】
このような構成により、支持体13は、クランク板45の回転(つまり、スライダ5の往復動)に応じて、ピン141を支点として、上下方向に揺動することができる。ブレード91は、前方へ移動しつつ上方に揺動し、後方へ移動しつつ下方に揺動するオービタル運動を行う。
【0068】
以下、レシプロソー1の動作モードを切り替えるための機構について説明する。
【0069】
本実施形態では、レシプロソー1の動作モードは、使用者による切替レバー81の手動操作に応じて、切替機構82によって切り替えられる。
図1に示すように、切替レバー81は、本体ハウジング11の外部(詳細には、本体ハウジング11の左側面)に設けられている。
図3、
図5~
図7に示すように、切替機構82は、切替シャフト83と、第1切替部84と、第2切替部85を含む。
【0070】
切替シャフト83は、ギヤハウジング12の後端部内で左右方向に延在するシャフトである。切替シャフト83は、その両端部がギヤハウジング12の左壁と右壁に形成された支持孔に挿通された状態で、ギヤハウジング12に支持されている。切替シャフト83は、左右方向に延在する回転軸A4周りに回動可能である。切替シャフト83の左端部には、切替レバー81が固定されている。よって、切替レバー81の回動操作に応じて、切替シャフト83も回動する。
【0071】
なお、切替シャフト83は、支持体13の当接部133(詳細には、軸受145の後方の部分)の真下に配置されている。また、切替シャフト83は、付勢機構7の遮断部材73のうち、第1当接部731の真上、且つ、第2当接部735の前側に配置されている。
【0072】
第1切替部84および第2切替部85は、何れも切替シャフト83上に設けられている。第1切替部84は、切替シャフト83の回動位置に応じて、付勢機構7の動作(支持体13の付勢)を可能とする状態と、付勢機構7の動作を不能とする状態との間で切り替えられる。第2切替部85は、切替シャフト83の回動位置に応じて、オービタル機構6の動作(支持体13の上下方向の揺動)を完全に許容する(阻害しない)状態と、オービタル機構6の動作を部分的に阻害する状態との間で切り替えられる。つまり、本実施形態では、切替シャフト83という単一部材を用いて、付勢機構7の状態の切替えと、オービタル機構6の状態の切替えの両方が実現される。
【0073】
以下、第1切替部84の詳細について説明する。
【0074】
図3、
図5~
図6に示すように、第1切替部84は、左右一対のカム部841を含む。カム部841は、切替シャフト83の左端部および右端部に夫々設けられている。カム部841は、概ね半月(半円)型の断面を有するカム部である。カム部841の外面は、回転軸A4を含む平面部842と、円弧状の曲面部843とを含む。一対のカム部841は、夫々、遮断部材73の左右一対の第1当接部731の真上に配置されている。
【0075】
図8~
図11に示すように、平面部842が長軸A1と平行に延在し(つまり、上下方向に直交し)、且つ、曲面部843が平面部842の上方に突出する回動位置に第1切替部84が配置されている場合には、付勢部材71は、遮断部材73を介して支持体13の後端部を上方へ付勢する。以下、このときの第1切替部84の回動位置を、解除位置という。
【0076】
より詳細には、付勢部材71がギヤハウジング12に対して遮断部材73を上方へ付勢することで、第2当接部735が支持体13の当接部133に下方から当接し、支持体13の後端部を押し上げる(つまり、支持体13を、ブレード91の刃先が下方へ揺動する方向へ付勢する)。なお、上述のように、支持体13の後端部は、オービタル機構6の2つの付勢部材63(
図3参照)によって下方に付勢されているが、2つの付勢部材71による上方への付勢力は、この付勢力を上回るように設定されている。遮断部材73は、第1当接部731がカム部841の平面部842に当接する最上方位置で保持され、支持体13の後端部は、支持体13の上壁がギヤハウジング12の上壁に概ね当接する最上方位置に保持される。このように、第1切替部84は、解除位置において、付勢機構7の動作を可能とする。
【0077】
図12~
図15に示すように、平面部842が長軸A1と直交し(つまり、上下方向に延在し)、且つ、曲面部843が平面部842の後方に突出する回動位置に第1切替部84が配置されている場合には、カム部841の平面部842と曲面部843の角が、遮断部材73の第1当接部731を上方から押圧し、付勢部材71を圧縮した状態で、遮断部材73を所定位置で保持する。以下、このときの第1切替部84の回動位置を、第1遮断位置という。このときの遮断部材73の上下方向における位置を、遮断位置という。
【0078】
遮断部材73が遮断位置にあるときには、遮断部材73の第2当接部735は、支持体13の後端部が最大限下方まで移動されても、支持体13から下方に離間する位置に配置される(
図16参照)。よって、付勢部材71の付勢力は、支持体13には作用しない。言い換えると、遮断部材73は、支持体13に対する付勢部材71の付勢力を遮断する。このように、第1切替部84は、第1遮断位置において、付勢機構7の動作を不能とする。
【0079】
図3、
図5~
図7に示すように、平面部842が長軸A1と平行に延在し(つまり、上下方向に直交し)、且つ、曲面部843が平面部842の下方に突出する回動位置に第1切替部84が配置されている場合には、一対のカム部841が遮断部材73の一対の第1当接部731を上方から夫々押圧し、付勢部材71を圧縮した状態で、遮断部材73を遮断位置で保持する。以下、このときの第1切替部84の回動位置を、第2遮断位置という。遮断部材73の第2当接部735は、支持体13の後端部が最大限下方まで移動されても、支持体13から下方に離間する位置に配置される(
図4参照)。遮断部材73は、支持体13に対する付勢部材71の付勢力を遮断する。このように、第1切替部84は、第2遮断位置においても、付勢機構7の動作を不能とする。
【0080】
以下、第2切替部85の詳細について説明する。
【0081】
図3、
図5~
図6に示すように、第2切替部85は、切替シャフト83の左右方向の中央部に設けられたカム部である。より詳細には、第2切替部85は、第1切替部84のカム部841と同様、概ね半月(半円)型の断面を有するカム部である。第2切替部85の外面は、回転軸A4を含む平面部852と、円弧状の曲面部853とを含む。平面部852は、第1切替部84のカム部841の平面部842と同一平面内にある。また、第2切替部85(カム部)の半径は、カム部841の半径よりも小さく設定されている。第2切替部85の左右方向の長さは、支持体13の当接部133の左右方向の幅よりも僅かに大きく設定されている。
【0082】
図3、
図5~
図6に示すように、平面部852が長軸A1と平行に延在し(つまり、上下方向に直交し)、且つ、曲面部853が平面部852の下方に突出する回動位置に第2切替部85が配置されている場合には、支持体13の後端部が最大限下方まで移動されても、支持体13の当接部133は、第2切替部85に接触しない(
図3、
図4参照)。以下、このときの第2切替部85の回動位置を、非接触位置という。第2切替部85が非接触位置にあるときには、支持体13の後端部は、クランク板45が1回転する過程の全てにおいて、軸受145がクランク板45の
カム部61の上端面(カム面)に当接する位置まで下方に移動することができる(
図4参照)。このように、第2切替部85は、非接触位置において、オービタル機構6の動作を完全に許容する。
【0083】
図12~
図15に示すように、平面部852が長軸A1と直交し(つまり、上下方向に延在し)、且つ、曲面部853が平面部852の後方に突出する回動位置に第2切替部85が配置されている場合には、クランク板45が1回転する過程の少なくとも一部で、平面部852と曲面部853の角が、支持体13の当接部133に下方から当接する(
図16参照)。以下、このときの第2切替部85の回動位置を、第1当接位置という。第2切替部85は、第1当接位置において、支持体13の当接部133に当接し、支持体13の後端部がそれ以上下方へ移動するのを禁止可能である。
【0084】
これにより、クランク板45が1回転する過程の少なくとも一部で、軸受145は、カム部61の上端面に当接不能となる。よって、支持体13は、スライダ5の前後方向の移動に伴って上下方向に若干は揺動するが、ブレード91のオービタル運動は、第2切替部85が非接触位置にある場合と比べて小さくなる。このように、第2切替部85は、第1当接位置において、オービタル機構6の動作を部分的に阻害する。
【0085】
図8~
図11に示すように、平面部852が長軸A1と平行に延在し(つまり、上下方向に直交し)、且つ、曲面部853が平面部852の上方に突出する回動位置に第2切替部85が配置されている場合には、クランク板45が1回転する過程の少なくとも一部で、曲面部853の最も突出している部分が、支持体13の当接部133に下方から当接する(
図19参照)。以下、このときの第2切替部85の回動位置を、第2当接位置という。第2切替部85は、第1当接位置におけるのと同様、第2当接位置において、支持体13の当接部133に当接し、支持体13の後端部がそれ以上下方へ移動するのを禁止する。
【0086】
これにより、クランク板45が1回転する過程の少なくとも一部で、軸受145は、
カム部61の上端面に当接不能となる(
図19参照)。このように、第2切替部85は、第2当接位置においても、オービタル機構6の動作を部分的に阻害する。
【0087】
以下、第1~第3動作モードの夫々におけるレシプロソー1の動作について説明する。
【0088】
まず、第1動作モードの選択時の動作について説明する。
【0089】
使用者は、切替レバー81を、第1動作モードに対応する回動位置(以下、第1回動位置という)に配置させる。本実施形態では、第1動作モードに対応する回動位置は、
図9に示すように、切替レバー81の先端が前方を向く位置である。切替レバー81が第1回動位置に配置されると、第1切替部84が解除位置に配置されることで、付勢機構7の動作は可能とされる。また、切替シャフト83の第2切替部85は、第2当接位置に配置されることで、オービタル機構6の動作を部分的に阻害する。
【0090】
モータ31が駆動され、クランク板45が回転するのに応じて、スライダ5は、支持体13の駆動軸A2に沿って往復動する。
【0091】
上述のように、第1動作モードでは、付勢部材71は、遮断部材73の第2当接部735を介して当接部133を上方へ付勢することで、支持体13を、ブレード91の刃先913が下方へ揺動する方向へ付勢している。
【0092】
よって、ブレード91の刃先913が被加工材に押し付けられていない場合、つまり、ブレード91に対し、刃先913が上方へ移動する方向の負荷が付与されていない場合(無負荷状態ともいう)には、
図8に示すように、スライダ5が第1スライダ位置にあるとき、支持体13の後端部は最上方位置に配置される。当接部133は、第2切替部85よりも上方に位置する。このとき、軸受145は、クランク板45の
カム部61の最も厚い部分の上端面よりも上方に位置する。また、
図17に示すように、スライダ5が第2スライダ位置にあるときにも、支持体13の後端部は最上方位置に配置される。当接部133は、第2切替部85よりも上方に位置する。
【0093】
一方、ブレード91の刃先913が被加工材に押し付けられた場合、つまり、ブレード91に対し、刃先913が上方へ移動する方向の負荷が付与されている場合(負荷状態ともいう)には、支持体13の後端部は、付勢部材71の付勢力に抗して、遮断部材73を押下げつつ、下方に揺動可能である。
【0094】
より詳細には、
図18に示すように、スライダ5が第1スライダ位置にあるとき、支持体13の後端部は、軸受145が
カム部61の最も厚い部分の上端面に当接する位置まで下方へ揺動可能である。また、
図19に示すように、スライダ5が第2スライダ位置にあるとき、支持体13の後端部は、当接部133が第2切替部85(曲面部853の突出端)に当接する位置まで下方へ揺動可能である。つまり、
カム部61および第2切替部85は、第1動作モードにおいて、付勢部材71による付勢方向とは逆方向への支持体13およびスライダ5の揺動量(上下方向の移動量)を規定する。言い換えると、
カム部61および第2切替部85は、第1動作モードにおいて、刃先913が上方へ揺動する方向への支持体13の揺動を制限する。
【0095】
レシプロソー1による被加工材の切断作業開始時には、ブレード91の刃先913が被加工材に押し付けられる。このとき、被加工材から、ブレード91に対して上方への反動が生じる。特に、比較的硬い被加工材に押し付けられると、ブレード91は、反動で上方へ跳ねる可能性がある。これに対し、第1動作モードでは、付勢部材71が、ブレード91が下方へ揺動する方向に支持体13を付勢しているため、ブレード91の跳ねを効果的に抑えることができる。また、使用者がブレード91を被加工材に押し付け、付勢部材71がある程度弾性変形すると、上述のように、カム部61および第2切替部85が、支持体13の揺動を制限する。これにより、使用者は、刃先913を被加工材にしっかりと押付けることができるようになる。
【0096】
次に、第2動作モードの選択時の動作について説明する。
【0097】
使用者は、切替レバー81を、第2動作モードに対応する回動位置(以下、第2回動位置という)に配置させる。本実施形態では、第2動作モードに対応する回動位置は、
図13に示すように、切替レバー81の先端が上方を向く位置である。切替レバー81が第2回動位置に配置されると、第1切替部84が第1遮断位置に配置されることで、付勢機構7の動作が不能とされる。また、切替シャフト83の第2切替部85が第1当接位置に配置されることで、オービタル機構6の動作が部分的に阻害される。
【0098】
モータ31が駆動され、クランク板45が回転するのに応じて、スライダ5は、支持体13の駆動軸A2に沿って往復動する。第1切替部84によって遮断部材73は遮断位置に保持されているため、この間、スライダ5の動きにかかわらず、第2当接部735は、支持体13の当接部133からは常に下方に離間している。
【0099】
一方、
図12に示すように、スライダ5が第1スライダ位置にあるときには、第2切替部85は当接部133よりも下側にあり、軸受145は、
カム部61の最も厚い部分に当接する。
図16に示すように、スライダ5が第2スライダ位置にあるときには、第2切替部85が当接部133に下方から当接して支持体13の後端部が下方へ移動するのを禁止するため、軸受145は、
カム部61の最も薄い部分からは上方に離間している。よって、スライダ5が往復動する間の支持体13の上下方向の揺動は比較的小さく、ブレード91は、比較的小さなオービタル運動を行う。
【0100】
次に、第3動作モードの選択時の動作について説明する。
【0101】
使用者は、切替レバー81を、第3動作モードに対応する回動位置(以下、第3回動位置という)に配置させる。本実施形態では、第3動作モードに対応する回動位置は、
図5に示すように、切替レバー81の先端が後方を向く位置である。切替レバー81が第3回動位置に配置されると、第1切替部84が第2遮断位置に配置されることで、付勢機構7の動作は不能とされる。また、切替シャフト83の第2切替部85が非接触位置に配置されることで、オービタル機構6の動作が完全に許容される。
【0102】
モータ31が駆動され、クランク板45が回転するのに応じて、スライダ5は、支持体13の駆動軸A2に沿って往復動する。第2動作モードと同様、第1切替部84によって遮断部材73は遮断位置に保持されているため、この間、スライダ5の動きにかかわらず、第2当接部735は、支持体13の当接部133からは常に下方に離間している。
【0103】
一方、
図3に示すように、スライダ5が第1スライダ位置にあるときには、第2切替部85は当接部133よりも下側にあり、軸受145は、
カム部61の最も厚い部分に当接する。
図4に示すように、スライダ5が第2スライダ位置にあるときにも、第2切替部85は当接部133よりも下側にあり、支持体13の後端部は、付勢部材63によって下方へ付勢され、軸受145は、
カム部61の最も薄い部分に当接する。よって、スライダ5が往復動する間に支持体13は上下方向に揺動し、ブレード91は、第2動作モードに比べて大きなオービタル運動を行う。
【0104】
以上に説明したように、本実施形態では、使用者は、切替レバー81を手動で回動させることで、第1切替部84を介して、付勢部材71の状態を切り替えることができる。よって、上述のように、例えば、被加工材からの反動が比較的大きいと予想される場合には、切替レバー81で第1動作モードを選択し、付勢部材71を、支持体13を付勢可能な状態とすればよい。一方、被加工材からの反動が比較的小さいと予想される場合には、切替レバー81で第2動作モードまたは第3動作モードを選択し、付勢部材71を、支持体13を付勢不能な状態とすればよい。付勢部材71が支持体13を付勢不能な状態にある場合、本体ハウジング11(ギヤハウジング12)に対して支持体13の後端部が上方に付勢されていない。このため、支持体13の後端部の下方への移動が禁止されるまでの揺動量は、第1動作モードよりも小さくなる。よって、使用者は、刃先913を被加工材にしっかりと押付けやすくなる。このように、本実施形態のレシプロソー1によれば、使用者は、作業状況に応じて切替レバー81を手動操作し、付勢部材71を適切な状態とすることができる。
【0105】
また、本実施形態では、第1切替部84は、切替レバー81に動作可能に連結され、切替レバー81の回動操作に応じて回動する切替シャフト83に設けられたカム部841である。カム部841は、切替シャフト83の回動に応じて遮断部材73に選択的に当接し、遮断部材73を遮断位置へ移動させる。このように、カム部841を有する切替シャフト83という簡易な構成によって、遮断部材73を移動させ、付勢部材71の状態を容易に切り替えることができる。
【0106】
また、本実施形態では、付勢部材71は圧縮コイルバネであって、遮断部材73は、支持体13と圧縮コイルバネの間に、上下方向に移動可能に配置されている。そして、カム部841は、切替レバー81の回動操作に応じて、選択的に、遮断部材73を支持体13から離間した遮断位置に保持する、あるいは遮断部材73の支持体13への当接を許容する。付勢部材71(圧縮コイルバネ)は、遮断部材73の支持体への当接が許容されている場合、遮断部材73を介して支持体13を付勢する。このように、本実施形態では、付勢部材71(圧縮コイルバネ)と遮断部材73を用いて、付勢部材71の状態を切り替え可能な比較的簡易で合理的な構成が実現されている。更に、付勢部材71および遮断部材73は、何れも支持ピン123によって支持されている。よって、コンパクトで簡易な付勢部材71および遮断部材73の支持構造が実現されている。
【0107】
また、本実施形態のレシプロソー1では、使用者は、切替レバー81を手動で回動させることで、付勢機構7の状態のみならず、第2切替部85を介して、オービタル機構6の状態(ブレード91のオービタル運動量)も切り替えることができる。ブレード91のオービタル運動は、切断効率を高めることができる一方、比較的硬い金属製の被加工材にはあまり適さないという一面もある。よって、使用者は、作業状況に応じて切替レバー81を手動操作し、オービタル機構6を適切な状態とすることができる。これにより、レシプロソー1の利便性が更に向上する。
【0108】
また、本実施形態では、オービタル機構6の状態を切り替えるための第2切替部85は、付勢部材71の状態を切り替えるための第1切替部84と同じ切替シャフト83に設けられたカム部である。そして、切替レバー81が、第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置のうち何れか1つに配置されることで、付勢部材71の状態およびオービタル機構6の状態が選択的に切り替えられる。つまり、使用者は、切替レバー81を手動で回動させるだけで、付勢部材71の状態およびオービタル機構6の状態の少なくとも3種類の組合せ(第1動作モード、第2動作モードおよび第3動作モード)から、作業状況に応じて適切な組み合わせを選択することができる。
【0109】
また、本実施形態では、クランクピン451およびカム部61を有するクランク板45を用いて、スライダ5を往復動させるのと同時に、ブレード91にオービタル運動を行わせる合理的な機構が実現されている。そして、単一の切替シャフト83と、切替シャフト83上に夫々設けられた第1切替部84(カム部841)および第2切替部(カム部)85という簡易な構成により、付勢部材71の状態およびオービタル機構6の状態の両方の状態を切り替えることができる。
【0110】
本実施形態の各構成要素と、本開示または本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本開示の各構成要素を限定するものではない。レシプロソー1は、「往復動工具」の一例である。本体ハウジング11およびギヤハウジング12の各々は、「ハウジング」の一例である。長軸A1は、「第1の軸」の一例である。支持体13は、「支持体」の一例である。スライダ5は、「スライダ」の一例である。ブレード91、刃先913は、夫々、「ブレード」、「刃先」の一例である。モータ31は、「モータ」の一例である。駆動機構4は、「駆動機構」の一例である。付勢部材71は、「第1付勢部材」の一例である。切替レバー81は、「手動操作部材」の一例である。切替機構8(詳細には、切替シャフト83および第1切替部84)は、「第1切替機構」の一例である。
【0111】
遮断部材73は、「遮断部材」の一例である。切替シャフト83は、「可動部材」の一例である。カム部841は、「カム部」の一例である。オービタル機構6は、「オービタル機構」の一例である。切替機構8(詳細には、切替シャフト83および第2切替部85)は、「第2切替機構」の一例である。切替シャフト83は、「共通のシャフト」の一例である。第1切替部84(カム部841)は、「第1切替部」の一例である。第2切替部85は、「第2切替部」の一例である。カム部841は、は、「第1カム部」の一例である。第2切替部85(カム部)は、「第2カム部」の一例である。クランク板45およびクランクピン451は、夫々、「クランク板」および「クランクピン」の一例である。カム部61は、「第3カム部」の一例である。付勢部材63は、「第2付勢部材」の一例である。カム部61および第2切替部85の各々は、「当接部」の一例である。付勢部材71は、「圧縮コイルバネ」の一例である。支持ピン123は、「共通の支持部材」の一例である。
【0112】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本開示に係る往復動工具は、例示されたレシプロソー1に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうち少なくとも1つが、実施形態に示すレシプロソー1、あるいは各請求項に記載された特徴と組み合わされて採用されうる。
【0113】
例えば、本開示に係る往復動工具は、例えば、ジグソーとして構成されてもよい。レシプロソー1は、バッテリ93ではなく、電源ケーブルを介して外部の交流電源から供給される電力によって動作してもよい。モータ31には、交流モータが採用されてもよい。また、モータ31には、ブラシを有するモータが採用されてもよい。
【0114】
ブレード91を往復動させる機構は、駆動機構4に限られない。モータシャフト315の回転運動を直線状の往復動に変換してブレード91に伝達可能であれば、いかなる公知の機構が採用されてもよい。例えば、運動変換には、回転体の回転に伴って揺動する揺動部材(いわゆるスワッシュベアリング)が採用されてもよい。また、クランク板のクランクピンが、コネクティングロッドを介してスライダ5と連結されていてもよい。各種シャフトやギヤの組み合わせおよび配置も、適宜変更されうる。
【0115】
同様に、ブレード91にオービタル運動を行わせる機構は、オービタル機構6に限られない。支持体13またはスライダ5に作用して、ブレード91にオービタル運動を行わせることが可能であれば、いかなる公知の機構が採用されてもよい。例えば、クランク板45と別個に、支持体13に動作可能に連結され、支持体13を揺動させる部材が設けられてもよい。また、オービタル機構6は省略されてもよい。つまり、レシプロソー1は、第1動作モードと、ブレード91を直線状に前後方向にのみ往復動させる動作モードのみを有してもよい。あるいは、レシプロソー1は、第1動作モードと第3動作モードのみを有してもよい。つまり、レシプロソー1は、1種類のオービタル運動のみが可能であってもよい。この場合、オービタル機構6の動作を変化させるための第2切替部85は省略される。また、第2動作モードは、ブレード91を直線状に前後方向にのみ往復動させる動作モードであってもよい。つまり、第2切替部85は、選択的に、オービタル機構6の動作を可能とする、あるいは不能とするように構成されてもよい。
【0116】
また、本体ハウジング11内におけるモータ31、駆動機構4、スライダ5の配置は、上記実施形態の例に限られない。例えば、モータ31は、モータシャフト315の回転軸が本体ハウジング11の長軸A1と交差するように配置されていてもよい。クランク板45が左右方向に延在する回転軸周りに回転可能に配置され、スライダ5は、クランク板45の右側または左側に配置されていてもよい。
【0117】
本体ハウジング11およびハンドル18の形状、構成部材、連結態様等は特に限定されるものではなく、適宜変更されうる。同様に、本体ハウジング11内部に配置されるギヤハウジング12についても、ギヤハウジング12内部に配置される駆動機構4、スライダ5等の変更に応じて、あるいは変更にかかわらず、適宜変更可能である。また、ギヤハウジング12が外部に露出する構造のハウジングが採用されてもよい。
【0118】
スライダ5の形状、構成部材、駆動機構4との連結態様等は、特に限定されるものではなく、適宜変更されうる。例えば、スライダ5は、円筒状ではなく、例えば、角柱状であってもよい。スライダ5は、複数の部材が連結されることで形成されていてもよい。
【0119】
スライダ5の支持構造は、支持体13によるものに限られない。例えば、上記実施形態では、支持体13は、ギヤハウジング12内で前後方向に延在し、スライダ5の本体51と同程度の長さを有する。しかしながら、支持体13は、支持体13に対して直線状に移動可能にスライダ5を支持可能である限りにおいて、その長さや形状は、適宜変更されうる。
【0120】
例えば、上記実施形態では、支持体13は、ピン141を介してギヤハウジング12に連結されており、ピン141の軸周りに上下方向に揺動可能である。しかしながら、支持体13は、ギヤハウジング12に連結されている必要はなく、ギヤハウジング12に、上下方向に揺動可能に収容されていてもよい。つまり、支持体13は、支持体13の一部を支点として、ギヤハウジング12内で揺動可能であってもよい。この場合、ギヤハウジング12内に、支持体13および/またはスライダ5の揺動を案内する部材が配置されてもよい。更に、支持体13は、ギヤハウジング12に、上下方向に移動可能に収容され、付勢部材(例えば、ゴム、各種バネ、弾性を有する合成樹脂(例えば、ウレタン発泡体)、フェルト等で形成された弾性体)によって、全体が下方に付勢されていてもよい。
【0121】
上記実施形態では、第3動作モードにおいて、カム部61および第2切替部85が、支持体13およびスライダ5の上下方向の移動量を規定している。しかしながら、カム部61および第2切替部85に代えて、ギヤハウジング12内に、支持体13またはスライダ5に当接することで、支持体13およびスライダ5の上下方向の移動量を規定するように構成された当接部が別個に設けられてもよい。
【0122】
支持体13またはスライダ5を付勢するための付勢部材71の種類、数、配置等は、特に限定されるものではなく、適宜変更されうる。例えば、付勢部材71には、圧縮コイルバネ以外のバネ(例えば、引張りコイルバネ、板バネ、捩じりバネ)、ゴム、弾性を有する合成樹脂(例えば、ウレタン発泡体)、フェルト等で形成された弾性体)が採用されてもよい。また、付勢部材71は、1つのみでもよいし、3つ以上が設けられてもよい。
【0123】
上記実施形態では、付勢部材71は、支持体13を付勢することで、スライダ5を間接的に付勢している。これに代えて、付勢部材71は、スライダ5を、直接、または支持体13以外の部材(例えば、遮断部材73)を介して付勢するように構成されていてもよい。また、支持体13およびスライダ5が上下方向に揺動する場合、付勢部材71は、支持体13またはスライダ5の後端部を上方に付勢するのではなく、支持体13またはスライダ5の前端部を下方に付勢してもよい。また、少なくとも1つの付勢部材71が支持体13またはスライダ5の後端部を上方に付勢し、別の少なくとも1つの付勢部材が、支持体13またはスライダ5の前端部を下方に付勢してもよい。
【0124】
付勢部材71の付勢を遮断するための構成も、適宜変更されうる。例えば、遮断部材73に代えて、切替レバー81の回動操作に応じて、支持体13の後端部またはスライダ5の後端部に上方から当接し、支持体13およびスライダ5の揺動を阻害する部材が採用されてもよい。
【0125】
切替レバー81および切替機構82も、適宜変更されうる。また、例えば、回動式の切替レバー81に代えて、使用者によって手動で直線状に移動されるように構成された操作部材が採用されてもよい。かかる変更に応じて、切替シャフト83に代えて、操作部材の直線状の移動に応じて、直線状に移動する可動部材が採用されてもよい。かかる可動部材は、上記実施形態と同様、遮断部材73を移動させることで付勢部材71の付勢力を遮断してもよい。あるいは、遮断部材73は省略され、可動部材自体が付勢力を遮断するように構成されてもよい。切替シャフト83上の第1切替部84、第2切替部85の配置、夫々のカム部の形状や大きさは、変更されてもよい。例えば、第1切替部84の平面部842と第2切替部85の平面部852とは、交差するように配置されてもよい。また、カム部841の半径と、第2切替部(カム部)85の半径は、同一であってもよい。
【符号の説明】
【0126】
1:レシプロソー、11:本体ハウジング、111:開口、113:シュー、12:ギヤハウジング、121:開口、123:支持ピン、13:支持体、130:支持孔、131:滑り軸受、132:滑り軸受、133:当接部、141:ピン、145:軸受、18:ハンドル、181:把持部、182:トリガ、183:スイッチ、187:バッテリハウジング、30:コントローラ、31:モータ、311:本体部、315:モータシャフト、316:ピニオン、4:駆動機構、5:スライダ、6:オービタル機構、7:付勢機構、41:中間シャフト、43:ベベルギヤ、45:クランク板、451:クランクピン、453:軸受、455:連結部材、46:カム部、51:本体、53:ブレード装着部、55:ピン連結部、551:ガイド凹部、61:カム部、63:付勢部材、71:付勢部材、73:遮断部材、731:第1当接部、733:連結部、735:第2当接部、81:切替レバー、82:切替機構、83:切替シャフト、84:第1切替部、841:カム部、842:平面部、843:曲面部、85:第2切替部、852:平面部、853:曲面部、91:ブレード、911:板面、913:刃先、93:バッテリ、A1:長軸、A2:駆動軸、A3:回転軸、A4:回転軸