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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】磁気アレイ
(51)【国際特許分類】
   H10B 61/00 20230101AFI20241112BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20241112BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/10 Z
H01L29/82 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020199587
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087584
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智生
(72)【発明者】
【氏名】塩川 陽平
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0341079(US,A1)
【文献】特開2018-074141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0213865(US,A1)
【文献】特開2013-243336(JP,A)
【文献】特開2018-082124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 61/00
H10N 50/10
H01L 29/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と第1ユニットと第2ユニットとワードラインと第1リードラインと第2リードラインと第1ゲートラインと第2ゲートラインとソースラインと、を有し、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとはそれぞれ、磁気抵抗効果素子と第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを有し、
前記磁気抵抗効果素子は、積層体と前記積層体上にある配線とを有し、
前記積層体は、前記基板に近い側から順に、参照層と非磁性層と自由層とを少なくとも有し、
前記第1スイッチング素子は、前記参照層に接続され、
前記第2スイッチング素子は、前記配線に接続され、
前記第1リードラインは、前記第1ユニットの前記第1スイッチング素子に接続され、
前記第2リードラインは、前記第2ユニットの前記第1スイッチング素子に接続され、
前記ワードラインは、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの前記第2スイッチング素子に接続され、
前記第1ゲートラインは、前記第1ユニットの前記第1スイッチング素子のゲートと、前記第2ユニットの前記第2スイッチング素子のゲートと、に接続され、
前記第2ゲートラインは、前記第1ユニットの前記第2スイッチング素子のゲートと、前記第2ユニットの前記第1スイッチング素子のゲートと、に接続され、
前記ソースラインは、前記第1ユニットの前記配線及び前記第2ユニットの前記配線に接続されている、磁気アレイ。
【請求項2】
基板と第1ユニットと第2ユニットとワードラインと第1リードラインと第2リードラインと第1ゲートラインと第2ゲートラインとソースラインと、を有し、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとはそれぞれ、磁気抵抗効果素子と第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを有し、
前記磁気抵抗効果素子は、積層体と前記積層体上にある配線とを有し、
前記積層体は、前記基板に近い側から順に、参照層と非磁性層とを少なくとも有し、
前記配線は、内部に磁壁を有する磁性層を含み、
前記第1スイッチング素子は、前記参照層に接続され、
前記第2スイッチング素子は、前記配線に接続され、
前記第1リードラインは、前記第1ユニットの前記第1スイッチング素子に接続され、
前記第2リードラインは、前記第2ユニットの前記第1スイッチング素子に接続され、
前記ワードラインは、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの前記第2スイッチング素子に接続され、
前記第1ゲートラインは、前記第1ユニットの前記第1スイッチング素子のゲートと、前記第2ユニットの前記第2スイッチング素子のゲートと、に接続され、
前記第2ゲートラインは、前記第1ユニットの前記第2スイッチング素子のゲートと、前記第2ユニットの前記第1スイッチング素子のゲートと、に接続され、
前記ソースラインは、前記第1ユニットの前記配線及び前記第2ユニットの前記配線に接続されている、磁気アレイ。
【請求項3】
前記第1リードライン及び前記第2リードラインに接続された比較部をさらに備える、請求項1又は2に記載の磁気アレイ。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子の前記ゲートの幅は、前記第2スイッチング素子の前記ゲートの幅より狭い、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気アレイ。
【請求項5】
前記第1ユニットの第1スイッチング素子と前記第2ユニットの第2スイッチング素子とが隣接し、
前記第1ユニットの第2スイッチング素子と前記第2ユニットの第1スイッチング素子とが隣接する、請求項1~4のいずれか一項に記載の磁気アレイ。
【請求項6】
前記積層体の側面を被覆する絶縁層と、前記絶縁層上にある第1電極と第2電極と、をさらに備え、
前記第1電極と前記第2電極とは、前記配線を介して電気的に接続されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の磁気アレイ。
【請求項7】
前記第1電極及び前記第2電極は、前記配線と接する下地層を備える、請求項6に記載の磁気アレイ。
【請求項8】
前記下地層は、前記配線と同じ材料を含む、請求項7に記載の磁気アレイ。
【請求項9】
前記第1電極に接続される第1ビア配線と、前記第2電極に接続される第2ビア配線とをさらに有し、
前記第1ビア配線は、前記第1電極の内側にある又は前記第1電極の側面に接し、
前記第2ビア配線は、前記第2電極の内側にある又は前記第2電極の側面に接している、請求項6~8のいずれか一項に記載の磁気アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
微細化に限界が見えてきたフラッシュメモリ等に代わる次世代の不揮発性メモリに注目が集まっている。例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、ReRAM(Resistance Randome Access Memory)、PCRAM(Phase Change Random Access Memory)等が次世代の不揮発性メモリとして知られている。
【0003】
MRAMは、磁気抵抗効果素子を用いたメモリ素子である。磁気抵抗効果素子の抵抗値は、非磁性層を挟む二つの磁性膜の磁化の向きの相対角の違いによって変化する。MRAMは、磁気抵抗効果素子の抵抗値をデータとして記録する。
【0004】
磁気抵抗変化を利用したスピン素子の中でも、スピン軌道トルク(SOT)を利用したスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子(例えば、特許文献1)や、磁壁の移動を利用した磁壁移動型磁気記録素子(例えば、特許文献2)に注目が集まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-216286号公報
【文献】特許第5441005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3端子型のスピン素子は、データを書き込む際の電流経路と、データを読み出す際の電流経路が異なる。これらのスピン素子は、読み出し電流と書き込み電流をそれぞれ制御するために、複数のトランジスタが必要である。つまり、一つのスピン素子を動作させるには、複数のトランジスタ分の面積を確保する必要がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、集積性を高めることができる磁気アレイ及び磁気アレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の態様にかかる磁気アレイは、基板と第1ユニットと第2ユニットとワードラインと第1リードラインと第2リードラインと第1ゲートラインと第2ゲートラインとソースラインと、を有し、前記第1ユニットと前記第2ユニットとはそれぞれ、磁気抵抗効果素子と第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを有し、前記磁気抵抗効果素子は、積層体と前記積層体上にある配線とを有し、前記積層体は、前記基板に近い側から順に、参照層と非磁性層とを少なくとも有し、前記第1スイッチング素子は、前記参照層に接続され、前記第2スイッチング素子は、前記配線に接続され、前記第1リードラインは、前記第1ユニットの前記第1スイッチング素子に接続され、前記第2リードラインは、前記第2ユニットの前記第1スイッチング素子に接続され、前記ワードラインは、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの前記第2スイッチング素子に接続され、前記第1ゲートラインは、前記第1ユニットの前記第1スイッチング素子のゲートと、前記第2ユニットの前記第2スイッチング素子のゲートと、に接続され、前記第2ゲートラインは、前記第1ユニットの前記第2スイッチング素子のゲートと、前記第2ユニットの前記第1スイッチング素子のゲートと、に接続され、前記ソースラインは、前記第1ユニットの前記配線及び前記第2ユニットの前記配線に接続されている。
【0009】
(2)上記態様にかかる磁気アレイは、前記第1リードライン及び前記第2リードラインに接続された比較部をさらに備えてもよい。
【0010】
(3)上記態様にかかる磁気アレイにおいて、前記第1スイッチング素子の前記ゲートの幅は、前記第2スイッチング素子の前記ゲートの幅より狭くてもよい。
【0011】
(4)上記態様にかかる磁気アレイにおいて、前記第1ユニットの第1スイッチング素子と前記第2ユニットの第2スイッチング素子とが隣接し、前記第1ユニットの第2スイッチング素子と前記第2ユニットの第1スイッチング素子とが隣接していてもよい。
【0012】
(5)上記態様にかかる磁気アレイは、前記積層体の側面を被覆する絶縁層と、前記絶縁層上にある第1電極と第2電極と、をさらに備え、前記第1電極と前記第2電極とは、前記配線を介して電気的に接続されていてもよい。
【0013】
(6)上記態様にかかる磁気アレイにおいて、前記第1電極及び前記第2電極は、前記配線と接する下地層を備えてもよい。
【0014】
(7)上記態様にかかる磁気アレイにおいて、前記下地層は、前記配線と同じ材料を含んでもよい。
【0015】
(8)上記態様にかかる磁気アレイは、前記第1電極に接続される第1ビア配線と、前記第2電極に接続される第2ビア配線とをさらに有し、前記第1ビア配線は、前記第1電極の内側にある又は前記第1電極の側面に接し、前記第2ビア配線は、前記第2電極の内側にある又は前記第2電極の側面に接していてもよい。
【0016】
(9)上記態様にかかる磁気アレイにおいて、前記積層体は、前記基板に近い側から順に、自由層と非磁性層と参照層とを有してもよい。
【0017】
(10)上記態様にかかる磁気アレイにおいて、前記配線は、内部に磁壁を有する磁性層を含み、前記積層体は、前記基板に近い側から順に、非磁性層と参照層とからなってもよい。
【0018】
(11)上記態様にかかる磁気アレイの製造方法は、基板に近い側から順に参照層と非磁性層とを少なくとも有する積層体上に配線を積層する工程と、前記配線上に無機物のマスクを形成し、前記マスクを介して前記配線を加工する工程と、前記マスクを除去し前記配線を露出させ、前記配線の異なる2点が露出するように絶縁層を形成する工程と、前記配線の露出した異なる2点のうちの一方に第1電極を形成し、他方に第2電極を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
上記態様にかかる磁気アレイは集積性に優れる。また上記態様にかかる磁気アレイの製造方法は、集積性に優れる磁気アレイを少ない手順で作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態にかかる磁気アレイのブロック図である。
図2】第1実施形態にかかる磁気アレイの一部の回路図である。
図3】第1実施形態にかかる磁気アレイの一部の斜視図である。
図4】第1実施形態にかかる磁気アレイの一部の平面図である。
図5】第1実施形態にかかる磁気アレイの一部の断面図である。
図6】第1実施形態にかかる磁気アレイの一部の別の断面図である。
図7】第1実施形態にかかる磁気アレイの磁気抵抗効果素子の近傍の断面図である。
図8】第1実施形態にかかる磁気アレイの製造方法を説明するための断面図である。
図9】第1実施形態にかかる磁気アレイの製造方法を説明するための断面図である。
図10】第1実施形態にかかる磁気アレイの製造方法を説明するための断面図である。
図11】第1実施形態にかかる磁気アレイの製造方法を説明するための断面図である。
図12】第1実施形態にかかる磁気レイの製造方法を説明するための断面図である。
図13】第1実施形態にかかる磁気アレイの製造方法を説明するための断面図である。
図14】第1変形例にかかる磁気アレイの一部の平面図である。
図15】第2実施形態にかかる磁気アレイの一部の斜視図である。
図16】第2実施形態にかかる磁気アレイの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
まず方向について定義する。後述する基板Sub(図2参照)の一面の一方向をx方向、x方向と直交する方向をy方向とする。x方向は、例えば、ワードラインWLが延びる方向である。y方向は、例えば、第1ゲートラインGL1及び第2ゲートラインGL2が延びる方向である。z方向は、x方向及びy方向と直交する方向である。z方向のうち基板Subから積層体10、30へ向かう方向を+z方向という。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
【0023】
また本明細書において「接続する」とは、2つの物体が直接接している場合に限られない。例えば、間に他の構造体を介して間接的に接続している場合、2つの物体が電気的に接続されている場合も「接続する」に含まれる。また「x方向に延びる」とは、x方向の長さが他の方向の長さより長いことを意味する。
【0024】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかる磁気アレイ200のブロック図である。磁気アレイ200は、集積領域IAと周辺領域PAとを有する。
【0025】
集積領域IAは、例えば、第1領域R1と第2領域R2とを有する。第1領域R1は、データを記録する記録セルが集積された領域である。第2領域R2は、記録セルとの比較に用いられるリファレンスセルが集積された領域である。記録セルは、データを記録、保持するセルである。リファレンスセルは、記録セルに適切なデータが記録されているかを判断する指標となるセルである。集積領域IA内の集積性を高まると、磁気アレイ200の記録密度が高まる。
【0026】
周辺領域PAは、集積領域IA内のセルの動作を制御する制御素子が実装されている領域である。周辺領域PAは、例えば、集積領域IAの外側にある。周辺領域PAは、例えば、電源PSと制御部CTと比較部CPと演算部OPとを有する。
【0027】
電源PSは、セルに印加する電圧又は電流を出力する。制御部CTは、電圧又は電流を印加するセルのアドレスを指定する。比較部CPは、記録セルとリファレンスセルとを比較する。記録セルとリファレンスセルとは同様の構成であり、同様のデータが原則記録されている。比較部CPは、これらのデータの間に大きな乖離がある場合に、記録セルに何らかの故障が生じたと判断する。比較部CPは、後述する第1リードラインRL1及び第2リードラインRL2に接続されている。演算部OPは、比較部CPで比較され出力された結果に基づいて、データを出入力する。
【0028】
図2は、第1実施形態にかかる磁気アレイ200の一部の回路図である。図2は、例えば、複数の記録セルが集積された第1領域R1の回路図である。第2領域R2の回路図も第1領域R1の回路図と同様である。
【0029】
磁気アレイ200は、例えば、第1ユニットU1と第2ユニットU2とワードラインWLと第1リードラインRL1と第2リードラインRL2と第1ゲートラインGL1と第2ゲートラインGL2とソースラインSLと第3スイッチング素子Sw3と第4スイッチング素子Sw4とを有する。
【0030】
第1ユニットU1、第2ユニットU2はそれぞれ、磁気抵抗効果素子100と第1スイッチング素子Sw1と第2スイッチング素子Sw2とを有するユニットである。これらのユニットは、例えば、行列状に配列している。ユニットの数は特に問わない。第1ユニットU1と第2ユニットU2とは、例えば、列方向に隣接し、ワードラインWLを共有する。
【0031】
第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2、第3スイッチング素子Sw3及び第4スイッチング素子Sw4はそれぞれ、電流の流れを制御する素子であり、例えば、電界効果型のトランジスタである。スイッチング素子は、例えば、オボニック閾値スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)のように結晶層の相変化を利用した素子、金属絶縁体転移(MIT)スイッチのようにバンド構造の変化を利用した素子、ツェナーダイオード及びアバランシェダイオードのように降伏電圧を利用した素子、原子位置の変化に伴い伝導性が変化する素子でもよい。
【0032】
ワードラインWLは、例えば、第1ユニットU1及び第2ユニットU2の第2スイッチング素子Sw2に接続されている。ワードラインWLは、磁気抵抗効果素子100へデータを書き込む際に、書き込み電流が流れる配線である。
【0033】
第1リードラインRL1は、例えば、第1ユニットU1に属する第1スイッチング素子Sw1に接続されている。第1リードラインRL1は、第1ユニットU1に属する磁気抵抗効果素子100からデータを読み出す際に、読出し電流が流れる配線である。第2リードラインRL2は、例えば、第2ユニットU2に属する第1スイッチング素子Sw1に接続されている。第2リードラインRL2は、第2ユニットU2に属する磁気抵抗効果素子100からデータを読み出す際に、読出し電流が流れる配線である。
【0034】
第1ゲートラインGL1は、第1ユニットU1の第1スイッチング素子Sw1及び第2ユニットU2の第2スイッチング素子Sw2に接続されている。第2ゲートラインGL2は、第1ユニットU1の第2スイッチング素子Sw2及び第2ユニットU2の第1スイッチング素子Sw1に接続されている。第1ゲートラインGL1及び第2ゲートラインGL2は、第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2のON/OFF動作を制御するゲートGに接続されている。
【0035】
ソースラインSLは、書き込み電流及び読出し電流が流れる配線であり、基準電位に接続されている。基準電位は、例えば、グラウンドである。ソースラインSLは、第1ユニットU1及び第2ユニットU2の後述する配線20に接続されている。ソースラインSLの基準電位に対する電位によって書き込み電流の流れ方向が変わる。
【0036】
磁気抵抗効果素子100にデータを書き込む際は、制御部CTで指定されたアドレスのユニットの第1スイッチング素子Sw1をOFFにし、第2スイッチング素子Sw2をONにする。第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2のON/OFF動作は、例えば、第1ゲートラインGL1と第2ゲートラインGL2の電位を変えて制御する。そして、第3スイッチング素子Sw3をONにすると、指定されたアドレスの磁気抵抗効果素子100に繋がるワードラインWLとソースラインSLとの間に書き込み電流が流れる。磁気抵抗効果素子100の抵抗値は、書き込み電流によって変化する。磁気抵抗効果素子100は、抵抗値としてデータを記録する。書き込み電流の流れ方向によって磁気抵抗効果素子100のデータの書き換えが可能になる。
【0037】
磁気抵抗効果素子100からデータを読み出す際は、制御部CTで指定されたアドレスのユニットの第1スイッチング素子Sw1をONにし、第2スイッチング素子Sw2をOFFにする。そして、第4スイッチング素子Sw4をONにすると、指定されたアドレスの磁気抵抗効果素子100に繋がる第1リードラインRL1又は第2リードラインRL2とソースラインSLとの間に読出し電流が流れる。ソースラインSLから出力される読出し電流の大きさは磁気抵抗効果素子100の抵抗値によって変化する。すなわち、磁気抵抗効果素子100に記録されたデータ(抵抗値)は、読出し電流に換算されて読み出される。
【0038】
図3は、第1実施形態にかかる磁気アレイ200の一部の斜視図である。図3では、内部構造を見やすくするためにソースラインSLを点線で図示している。図4は、第1実施形態にかかる磁気アレイ200の一部の平面図である。図4では、理解を容易にするために、ソースラインSL、第1リードラインRL1及び第2リードラインRL2を省略している。図5及び図6は、第1実施形態にかかる磁気アレイ200の一部の断面図である。図5は、図4のA-A線に沿った断面であり、図6は、図4のB-B線に沿った断面である。図3図6では、第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2を電界効果型トランジスタとしている。
【0039】
ワードラインWL、第1リードラインRL1、第2リードラインRL2、第1ゲートラインGL1、第2ゲートラインGL2、ソースラインSL及び磁気抵抗効果素子100は、基板Sub上に三次元的に積層されている。これらの素子間は、z方向に延びるビア配線V1、V2、V3、V4、V5を除いて、絶縁層90、92、93、94、95によって電気的に分離されている。
【0040】
絶縁層90、92、93、94、95は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁層である。絶縁層90、92、93、94、95は、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)等である。
【0041】
第1スイッチング素子Sw1と第2スイッチング素子Sw2とは、基板Subに形成されている。例えば、第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2はそれぞれ、ソースS、ドレインD、ゲートGを有する。ソースSとドレインDは、電流の流れ方向によって既定されるものであり、これらは同一の領域である。図3~6では一例を示しただけであり、ソースSとドレインDの位置関係はそれぞれ反転していてもよい。また明細書中におけるソースSはドレインDと読み替えることができ、ドレインDはソースSと読み替えることができる。ゲートGは、第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2のON/OFF動作を担う部分である。ゲートGは、例えば、第1ゲートラインGL1又は第2ゲートラインGL2と基板Subとの間にある絶縁層である。
【0042】
第1スイッチング素子Sw1のソースSは、例えば、ビア配線V1を介して、第1リードラインRL1又は第2リードラインRL2に接続されている。第1スイッチング素子Sw1のドレインDは、例えば、ビア配線V2及び電極Eを介して、積層体10に接続されている。第1スイッチング素子Sw1のゲートGは、第1ゲートラインGL1に接続されている。第1ゲートラインGL1に電圧が印加されると、ソースSとドレインDとの間にチャネルが形成され、第1スイッチング素子Sw1がONになる。
【0043】
第2スイッチング素子Sw2のソースSは、例えば、ビア配線V4を介して、ワードラインWLに接続されている。第2スイッチング素子Sw2のドレインDは、例えば、ビア配線V3及び第1電極E1を介して、配線20の第1端に接続されている。配線20の第2端は、第2電極E2及びビア配線V5を介して、ソースラインSLに接続されている。第2スイッチング素子Sw2のゲートGは、第2ゲートラインGL2に接続されている。第2ゲートラインGL2に電圧が印加されると、ソースSとドレインDとの間にチャネルが形成され、第2スイッチング素子Sw2がONになる。
【0044】
第1スイッチング素子Sw1は、例えば、第2スイッチング素子Sw2より小さい。第1スイッチング素子Sw1が制御する読出し電流は、第2スイッチング素子Sw2が制御する書き込み電流より小さいためである。すなわち、第1スイッチング素子Sw1を流れる最大電流量は、第2スイッチング素子Sw2を流れる最大電流量よりも小さい設計でよい。第1スイッチング素子Sw1の幅は、例えば、第2スイッチング素子Sw2の幅より狭い。スイッチング素子の幅は、ソースSとドレインDとを結ぶ直線と直交する方向の幅であり、例えば、ゲートGのy方向の幅である。スイッチング素子に流れる最大電流量の調整はゲートGのy方向の幅で設計できる。また、複数個のスイッチング素子を並列に設置し、実質上のゲート幅を広くすることによっても同様な効果が得られる。例えば、FinFETではチャンネル層の側壁にゲート電圧を印可することによって、チャンネル層の反転領域を大きくし、大きな電流な電流を流すことができる構造である。FinFETをスイッチング素子として用いる場合にはスイッチング素子を並列に並べる方が大きな電流を得ることができるため、実質上ゲート幅を大きくすることと同様な効果が得られる。
【0045】
第1スイッチング素子Sw1と第2スイッチング素子Sw2とは、例えば、基板Sub上に交互に配列している。第1ユニットU1及び第2ユニットU2は、例えば、y方向に隣接する。第1ユニットU1及び第2ユニットU2はそれぞれ、第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2の外周を覆う領域内にある。第1ユニットU1の第1スイッチング素子Sw1と第2ユニットU2の第2スイッチング素子Sw2とは、例えば、y方向に隣接する。また第1ユニットU1の第2スイッチング素子Sw2と第2ユニットU2の第1スイッチング素子Sw1とは、例えば、y方向に隣接する。第1ユニットU1と第2ユニットU2とは、第1スイッチング素子Sw1と第2スイッチング素子Sw2の位置関係が反対であり、第1ユニットU1と第2ユニットU2とは点対称な関係にある。第1ユニットU1のy方向の幅が狭い部分に、第2ユニットU2のy方向の幅が広い部分が嵌ることで、第1ユニットU1及び第2ユニットU2の集積性が高くなる。
【0046】
ビア配線V1、V2、V3、V4、V5は、絶縁層90、92、93、94、95によってz方向に区分された異なる階層の素子間を接続している。ビア配線V1は、第1リードラインRL1又は第2リードラインと第1スイッチング素子Sw1とを接続する。ビア配線V2は、第1スイッチング素子Sw1と磁気抵抗効果素子100とを接続する。ビア配線V3は、第2スイッチング素子Sw2と磁気抵抗効果素子100とを接続する。ビア配線V4は、第2スイッチング素子Sw2とワードラインWLとを接続する。ビア配線V5は、ソースラインSLと磁気抵抗効果素子100とを接続する。
【0047】
図7は、第1実施形態にかかる磁気アレイ200の磁気抵抗効果素子100の近傍の断面図である。図7は、図4のA-A線に沿った断面である。磁気抵抗効果素子100は、積層体10と配線20とを有する。磁気抵抗効果素子100は、スピン軌道トルク(SOT)を利用したスピン素子であり、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子、スピン注入型磁気抵抗効果素子、スピン流磁気抵抗効果素子と言われる場合がある。また配線20は、スピン軌道トルク配線と言われる場合がある。
【0048】
積層体10は、柱状体である。積層体10のz方向からの平面視形状は、例えば、円形、楕円形、四角形である。積層体10は、例えば、電極E上にある。積層体10上には、例えば、配線20がある。
【0049】
積層体10は、基板Subに近い側から順に、第1強磁性層1、非磁性層3、第2強磁性層2を有する。第1強磁性層1と第2強磁性層2とは、z方向に非磁性層3を挟む。第1強磁性層1は、電極Eを介して、第1スイッチング素子Sw1のドレインDに接続されている。
【0050】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、それぞれ磁化を有する。第1強磁性層1の磁化は、所定の外力が印加された際に第2強磁性層2の磁化よりも配向方向が変化しにくい。第1強磁性層1は固定層、参照層と言われ、第2強磁性層2は自由層と言われる。積層体10は、非磁性層3を挟む第1強磁性層1と第2強磁性層2との磁化の相対角の違いに応じて抵抗値が変化する。磁気抵抗効果素子100は、この抵抗値をデータとして記憶、出力する。
【0051】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、強磁性体を含む。強磁性体は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。強磁性体は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Fe、Co-Ho合金、Sm-Fe合金、Fe-Pt合金、Co-Pt合金、CoCrPt合金である。
【0052】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、ホイスラー合金を含んでもよい。ホイスラー合金は、XYZまたはXYZの化学組成をもつ金属間化合物を含む。Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金は、例えば、CoFeSi、CoFeGe、CoFeGa、CoMnSi、CoMn1-aFeAlSi1-b、CoFeGe1-cGa等である。ホイスラー合金は高いスピン分極率を有する。
【0053】
積層体10は、第1強磁性層1と電極Eとの間に、スペーサ層を介して反強磁性層を有してもよい。第1強磁性層1、スペーサ層、反強磁性層は、シンセティック反強磁性構造(SAF構造)となる。シンセティック反強磁性構造は、非磁性層を挟む二つの磁性層からなる。第1強磁性層1と反強磁性層とが反強磁性カップリングすることで、反強磁性層を有さない場合より第1強磁性層1の保磁力が大きくなる。反強磁性層は、例えば、IrMn,PtMn等である。スペーサ層は、例えば、Ru、Ir、Rhからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【0054】
積層体10は、第1強磁性層1、第2強磁性層2及び非磁性層3以外の層を有してもよい。例えば、積層体10は、第1強磁性層1の下に下地層を有してもよい。下地層は、積層体10を構成する各層の結晶性を高める。また例えば、積層体10は、第2強磁性層2の上にキャップ層を有してもよい。
【0055】
配線20は、積層体10上にある。配線20は、例えば、積層体10の第2強磁性層2と接する。配線20は、第1電極E1と第2電極E2との間に電流が流れる際に生じるスピンホール効果によってスピン流を発生させ、第2強磁性層2にスピンを注入する。配線20は、例えば、第2強磁性層2の磁化を反転できるだけのスピン軌道トルク(SOT)を第2強磁性層2の磁化に与える。
【0056】
スピンホール効果は、電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の流れる方向と直交する方向にスピン流が誘起される現象である。スピンホール効果は、運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で、通常のホール効果と共通する。通常のホール効果は、磁場中で運動する荷電粒子の運動方向がローレンツ力によって曲げられる。これに対し、スピンホール効果は磁場が存在しなくても、電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)でスピンの移動方向が曲げられる。
【0057】
例えば、配線20のx方向に電流が流れると、-y方向に配向した第1スピンが+z方向に曲げられ、+y方向に配向した第2スピンが-z方向に曲げられる。非磁性体(強磁性体ではない材料)は、スピンホール効果により生じる第1スピンの電子数と第2スピンの電子数とが等しい。すなわち、+z方向に向かう第1スピンの電子数と-z方向に向かう第2スピンの電子数とは等しい。第1スピンと第2スピンは、スピンの偏在を解消する方向に流れる。第1スピン及び第2スピンのz方向への移動において、電荷の流れは互いに相殺されるため、電流量はゼロとなる。電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
【0058】
第1スピンの電子の流れをJ、第2スピンの電子の流れをJ、スピン流をJと表すと、J=J-Jで定義される。スピン流Jは、z方向に生じる。第1スピンは、配線20から第2強磁性層2に注入される。
【0059】
配線20は、第1電極E1と第2電極E2との間に電流が流れる際に生じるスピンホール効果によってスピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物のいずれかを含む。
【0060】
配線20は、例えば、主元素として非磁性の重金属を含む。主元素とは、配線20を構成する元素のうち最も割合の高い元素である。配線20は、例えば、イットリウム(Y)以上の比重を有する重金属を含む。非磁性の重金属は、原子番号39以上の原子番号が大きく、最外殻にd電子又はf電子を有するため、スピン軌道相互作用が強く生じる。スピンホール効果はスピン軌道相互作用により生じ、配線20内にスピンが偏在しやすく、スピン流Jが発生しやすくなる。配線20は、例えば、Au、Hf、Mo、Pt、W、Taからなる群から選択されるいずれかを含む。
【0061】
配線20は、磁性金属を含んでもよい。磁性金属は、強磁性金属又は反強磁性金属である。非磁性体に含まれる微量な磁性金属は、スピンの散乱因子となる。微量とは、例えば、配線20を構成する元素の総モル比の3%以下である。スピンが磁性金属により散乱するとスピン軌道相互作用が増強され、電流に対するスピン流の生成効率が高くなる。
【0062】
配線20は、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。トポロジカル絶縁体は、物質内部が絶縁体又は高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。トポロジカル絶縁体は、スピン軌道相互作用により内部磁場が生じる。トポロジカル絶縁体は、外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する。トポロジカル絶縁体は、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率に生成できる。
【0063】
トポロジカル絶縁体は、例えば、SnTe、Bi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3、TlBiSe、BiTe、Bi1-xSb、(Bi1-xSbTeなどである。トポロジカル絶縁体は、高効率にスピン流を生成することが可能である。
【0064】
配線20の第1端は、例えば、第1電極E1及びビア配線V3を介して、第2スイッチング素子Sw2のドレインDに接続されている。配線20の第2端は、例えば、第2電極E2及びビア配線V5を介して、ソースラインSLに接続されている。
【0065】
第1電極E1及び第2電極E2はそれぞれ、配線20に接続されている。第1電極E1と第2電極E2との間には柱状体Pがあり、第1電極E1と第2電極E2とは直接接続されていない。柱状体Pは、配線20上の一部に積層されている。配線20は、少なくとも異なる2カ所が柱状体Pによって被覆されず、露出している。第1電極E1は、配線20の露出する部分の一方に接続され、第2電極E2は、配線20の露出する部分の他方に接続されている。第1電極E1と第2電極E2とは、配線20を介して電気的に接続されている。柱状体Pは、絶縁体である。柱状体Pは、例えば、絶縁層90、92、93、94、95と同様の材料からなる。第1電極E1及び第2電極E2は、導電性の優れる材料からなる。第1電極E1及び第2電極E2は、例えば、Ag、Cu、Co、Al、Auからなる群から選択されるいずれか一つを含む。
【0066】
第1電極E1及び第2電極E2は、例えば、配線20と接する下地層ULを有してもよい。下地層ULは、第1電極E1及び第2電極E2と配線20との密着性を高める。また下地層ULは、加工時の加熱処理等により互いの元素がマイグレーションすることを抑制する。下地層ULは、例えば、配線20と同じ材料を含む。下地層ULは、例えば、タングステンである。
【0067】
第1電極E1及び第2電極E2と積層体10との間には、絶縁層91がある。絶縁層91は、積層体10と第1電極E1及び第2電極E2とを電気的に分離する。絶縁層91は、例えば、絶縁層90、92、93、94、95と同様の材料からなる。絶縁層91は、積層体10の側面を被覆する。第1電極E1及び第2電極E2は、例えば、絶縁層91上にある。
【0068】
第1電極E1及び第2電極E2のx方向の幅は、例えば、配線20の柱状体Pから露出している部分の幅より広い。配線20の柱状体Pから露出している部分にビア配線を接続することは難しいが、第1電極E1及び第2電極E2のx方向の幅が広いことで、第1電極E1とビア配線V3との電気的な接続、及び、第2電極E2とビア配線V5との電気的な接続が容易になる。
【0069】
第1電極E1は例えばビア配線V3に接続され、第2電極E2は例えばビア配線V5に接続されている(図5参照)。ビア配線V3は、第1ビア配線の一例であり、ビア配線V5は第2ビア配線の一例である。ビア配線V3は、第1電極E1の側面に接している。ビア配線V5は、第2電極E2の内側にある。ビア配線V3と第1電極E1及びビア配線V5と第2電極E2との接触面が広いと、これらの界面における電気的な接続が強くなる。
【0070】
次いで、第1実施形態に係る磁気アレイ200の集積領域IAの製造方法の一例について説明する。集積領域IAは、各層の積層工程と、各層の一部を所定の形状に加工する加工工程により形成される。各層の積層は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、原子レーザデポジッション法等を用いることができる。各層の加工は、フォトリソグラフィー等を用いて行うことができる。図8図13は、第1実施形態にかかる磁気アレイの製造方法を説明するための断面図である。図8図13は、図4のA-A線に沿った断面である。
【0071】
まず図8に示すように。基板Subの所定の位置に、第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2を作製する。第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2は、公知の方法で作製できる。また第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2が形成された基板Subを購入してもよい。
【0072】
次いで、基板Sub上に絶縁層90を積層する。そして絶縁層90の第1スイッチング素子Sw1のドレインDと重なる位置に開口を形成する。開口内は導電体で充填され、ビア配線V2となる。その後、電極E、第1強磁性層1、非磁性層3、第2強磁性層2を順に積層し、所定の形状に加工することで、積層体10を形成する。積層体10の周囲は、例えば、絶縁層90で覆う。
【0073】
次いで、絶縁層90と第2強磁性層2の表面を、例えば化学機械研磨(CMP)で平坦化し、その上に配線21を積層する。さらに配線21上の所定の位置に、マスクMを形成する。マスクMは、無機物からなる。マスクMは、例えば、シリコンである。マスクMは、後処理で除去される。
【0074】
次いで、図9に示すように、マスクMを介して、配線21及び積層体10の一部をエッチングする。エッチングは、例えば、イオンビームでエッチングする。積層体10の側面は、エッチングによりz方向に対して傾斜する。配線21は、エッチングにより配線20となる。そして、積層体10、配線20及びマスクMを覆うように、絶縁層91を成膜する。絶縁層91は、例えば、積層体10及び配線20の側面を被覆する。次いで、マスクMをリフトオフし、マスクM及びマスクM上に形成された絶縁層91を除去する。マスクMがリフトオフされると、配線20の上面が露出する。
【0075】
次いで、図10に示すように、配線20の異なる2点が露出するように柱状体Pを形成する。次いで、絶縁層91、配線20の露出部分、柱状体Pを覆うように、下地層UL、導電層を積層する。その後、柱状体Pの上面より上方に積層された下地層UL及び導電層を除去することで、第1電極E1及び第2電極E2が形成される。
【0076】
次いで、図11に示すように、第1電極E1及び第2電極E2の不要部を除去し、除去された部分を絶縁層92で覆う。そして絶縁層92の第2スイッチング素子Sw2のドレインDと重なる位置に開口を形成する。開口内は導電体で充填され、ビア配線V3となる。ビア配線V3は、例えば、第1電極E1の側面と接する。ビア配線V3は、第1電極E1内を貫通するように形成してもよい。
【0077】
次いで、図12に示すように、第1電極E1、第2電極E2及び絶縁層92上に、絶縁層93を積層する。そして、絶縁層93の第2電極E2と重なる位置に開口を形成する。開口は、例えば、第2電極E2内まで形成する。開口内は導電体で充填され、ビア配線V5となる。開口を第2電極E2内まで形成すると、ビア配線V5が第2電極E2の内側に形成される。
【0078】
次いで、図13に示すように、絶縁層93及びビア配線V5上に、絶縁層94を積層する。そして、絶縁層94の一部を除去し、除去された部分にソースラインSLを形成する。
【0079】
次いで、絶縁層94及びソースラインSL上に、絶縁層95を積層する。そして絶縁層95の第1スイッチング素子Sw1のソースSと重なる位置に開口を形成する。開口内は導電体で充填され、ビア配線V1となる。そして、絶縁層95及びビア配線V1上のビア配線V1と重なる位置に、第1リードラインRL1及び第2リードラインRL2を形成する。上記手順を経ることで、図5に示す磁気アレイ200が形成される。
【0080】
本実施形態にかかる磁気アレイ200は、積層体10の第1強磁性層1が基板Sub側にあることで、z方向に延びるビア配線V2のみでスイッチング素子との接続が可能となり、配線の引き回しが簡便化されている。また配線20が積層体10の上にあることで、配線20と第1電極E1及び第2電極E2との電気的な接続を容易に確保できる。さらに、第1電極E1及び第2電極E2を配線20の柱状体Pからの露出部分よりも広く形成することで、ビア配線V3、V5の作製が容易になる。
【0081】
また第1ユニットU1及び第2ユニットU2を交互に配列することで、集積領域IA内におけるユニットの集積性を高めることができる。
【0082】
ここまで第1実施形態の一例を例示したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、図14は、第1変形例にかかる磁気アレイの一部の平面図である。第1変形例にかかる磁気アレイは、第1ユニットU1と第2ユニットU2の配置が異なる。第1変形例にかかる磁気アレイにおいて、図4と同様の構成には同様の符号を付す。
【0083】
第1変形例にかかる磁気アレイは、第1ユニットU1の第1スイッチング素子Sw1の側方に、第2ユニットU2の第2スイッチング素子Sw2がある。第1ユニットU1と第2ユニットU2とは、第1スイッチング素子Sw1と第2スイッチング素子Sw2の位置関係が同じである。ワードラインWLは、例えば、第1ゲートラインGL1及び第2ゲートラインGL2と直交せず、交差する。第1ユニットU1のy方向の幅が狭い部分に、第2ユニットU2のy方向の幅が広い部分が嵌ることで、第1ユニットU1及び第2ユニットU2の集積性が高くなる。
【0084】
「第2実施形態」
図15は、第2実施形態にかかる磁気アレイ201の一部の斜視図である。図15では、内部構造を見やすくするためにソースラインSLを点線で図示している。図16は、第1実施形態にかかる磁気アレイ201の一部の断面図である。図15、16では、第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2を電界効果型トランジスタとしている。
【0085】
第2実施形態に係る磁気アレイ201は、磁気抵抗効果素子101の構成が第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100と異なる。図15,16において、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省く。
【0086】
磁気抵抗効果素子101は、積層体30と配線40を備える。積層体30は、基板Subに近い側から順に、第1強磁性層31、非磁性層32を有する。磁気抵抗効果素子101は、磁壁の移動により抵抗値が変化する素子であり、磁壁移動素子、磁壁移動型磁気抵抗効果素子と言われる場合がある。
【0087】
配線40は、磁性層である。配線40は、強磁性体を含む。配線40を構成する磁性体は、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。具体的には、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Feが挙げられる。
【0088】
配線40は、内部の磁気的な状態の変化により情報を磁気記録可能な層である。配線40は、x方向に、第1磁区と第2磁区とを有する。第1磁区の磁化と第2磁区の磁化とは、例えば、反対方向に配向する。第1磁区と第2磁区とのx方向の境界が磁壁である。配線40は、磁壁を内部に有することができる。
【0089】
磁気抵抗効果素子101は、配線40の磁壁の位置によって、データを多値又は連続的に記録できる。配線40に記録されたデータは、読み出し電流を印加した際に、磁気抵抗効果素子101の抵抗値変化として読み出される。
【0090】
磁壁は、配線40のx方向に書き込み電流を流す、又は、外部磁場を印加することによって移動する。例えば、配線40の+x方向に書き込み電流(例えば、電流パルス)を印加すると、電子は電流と逆の-x方向に流れるため、磁壁は-x方向に移動する。第1磁区から第2磁区に向って電流が流れる場合、第2磁区でスピン偏極した電子は、第1磁区の磁化を磁化反転させる。第1磁区の磁化が磁化反転することで、磁壁が-x方向に移動する。
【0091】
第1強磁性層31と非磁性層32のそれぞれは、第1実施形態にかかる第1強磁性層1と非磁性層3と同様である。
【0092】
第2実施形態にかかる磁気アレイ201は、磁気抵抗効果素子101の構成が異なるだけであり、第1実施形態にかかる磁気アレイ200と同様の効果を得ることができる。第2実施形態にかかる磁気アレイ201は、ニューロモルフィックデバイスに適用できる。ニューロモルフィックデバイスは、ニューラルネットワークにより人間の脳を模倣した素子である。ニューロモルフィックデバイスは、人間の脳におけるニューロンとシナプスとの関係を人工的に模倣している。
【0093】
ニューロモルフィックデバイスは、例えば、階層状に配置されたチップ(脳におけるニューロン)と、これらの間を繋ぐ伝達手段(脳におけるシナプス)と、を有する。ニューロモルフィックデバイスは、伝達手段(シナプス)が学習することで、問題の正答率を高める。学習は将来使えそうな知識を情報から見つけることであり、ニューロモルフィックデバイスでは入力されたデータに重み付けをする。
【0094】
それぞれのシナプスは、数学的には積和演算を行う。第2実施形態にかかる磁気アレイ201は、磁気抵抗効果素子101がアレイ状に配列することで、積和演算を行うことができる。例えば、磁気抵抗効果素子の読出し経路に電流を流すと、入力された電流と磁気抵抗効果素子の抵抗との積が出力され、積演算が行われる。複数の磁気抵抗効果素子を共通配線でつなぐと、積演算は共通配線で加算され、和演算される。したがって、第2実施形態にかかる磁気アレイは、積和演算器としてニューロモルフィックデバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0095】
1、31 第1強磁性層
2 第2強磁性層
3、32 非磁性層
10、30 積層体
20、21、40 配線
90、91、92、93、94、95 絶縁層
100、101 磁気抵抗効果素子
200、201 磁気アレイ
CP 比較部
CT 制御部
E1 第1電極
E2 第2電極
GL1 第1ゲートライン
GL2 第2ゲートライン
IA 集積領域
M マスク
OP 演算部
P 柱状体
PA 周辺領域
PS 電源
R1 第1領域
R2 第2領域
RL1 第1リードライン
RL2 第2リードライン
SL ソースライン
Sw1 第1スイッチング素子
Sw2 第2スイッチング素子
Sw3 第3スイッチング素子
Sw4 第4スイッチング素子
U1 第1ユニット
U2 第2ユニット
UL 下地層
V1、V2、V3、V4、V5 ビア配線
WL ワードライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16