(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】穿孔方法及び穿孔装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20241112BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20241112BHJP
B23B 47/00 20060101ALI20241112BHJP
B23B 47/34 20060101ALI20241112BHJP
B23B 51/04 20060101ALI20241112BHJP
B23B 51/05 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B28D1/14
B28D7/02
B23B47/00 B
B23B47/34 Z
B23B51/04 D
B23B51/05 D
(21)【出願番号】P 2020199808
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 立
(72)【発明者】
【氏名】渡部 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬英
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135640(JP,A)
【文献】特開2016-129913(JP,A)
【文献】特開平01-178405(JP,A)
【文献】特開2001-254585(JP,A)
【文献】特開2009-041758(JP,A)
【文献】特開2007-175864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B28D 7/00 - 7/02
B23B 47/00
B23B 47/34
B23B 51/04 - 51/05
E04G 23/00 ー 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材に隣接して鋼板が配置された鋼板付きコンクリートブロックに
貫通孔を形成する穿孔方法であって、
前記コンクリート部材に、前記鋼板に達するコンクリート孔を形成し、
前記コンクリート孔に内嵌可能な筒部と、前記筒部の内部を吸引可能とする前記コンクリート孔の入口の外側に設けた排出部とを有したケーシングを、前記コンクリート孔内に配置し、
前記筒部との間に空間を区画
するように、前記筒部の内側に湿式コアドリルを配置し、
前記湿式コアドリルのチップに水を供給するとともに、前記筒部の内部を前記排出部から吸引することにより、
前記コンクリート孔側から前記水を回収しながら、
前記筒部の内部に配置した前記湿式コアドリルによって、前記鋼板を
、前記コンクリート孔側から切り出すことにより、前記鋼板付きコンクリートブロックに貫通孔を形成することを特徴とする穿孔方法。
【請求項2】
前記湿式コアドリルのコアビットには、基端部側に空気供給孔が形成され、
前記コアビットの内部には、前記水を供給するとともに、前記空気供給孔から空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の穿孔方法。
【請求項3】
前記コンクリート部材には、前記鋼板が両面に設けられており、
前記コンクリート孔を形成する前に、前記入口側の前記鋼板を、湿式コアドリルで穿孔し、
前記入口側の前記鋼板に形成した孔に整合するように、前記コンクリート孔を、乾式コアドリルで形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の穿孔方法。
【請求項4】
コンクリート部材に隣接して鋼板が配置された鋼板付きコンクリートブロックに
貫通孔を形成する穿孔装置であって、
前記コンクリート部材に形成された前記鋼板に達するコンクリート孔に内嵌可能な筒部と、前記筒部の内部を吸引可能とする基端部側に設けた排出部とを有したケーシングと、
前記筒部との間に空間を区画
するように、前記筒部の内側に配置可能な湿式コアドリルと、
前記湿式コアドリルのチップに水を供給する水供給部と、
前記湿式コアドリルのコアビットを回転させる回転駆動機構と、
前記筒部の内部を吸引する吸引機構と
、を備え
、
前記湿式コアドリルのチップに、前記水供給部からの水を供給するとともに、前記筒部の内部を前記排出部から吸引することにより、前記コンクリート孔側から前記水を回収しながら、前記筒部の内部に配置した前記湿式コアドリルによって、前記鋼板を、前記コンクリート孔側から切り出すことにより、前記鋼板付きコンクリートブロックに貫通孔を形成することを特徴とする穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材に隣接して鋼板が配置された鋼板付きコンクリートブロックに孔を形成する穿孔方法及び穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等の構造物を穿孔するために、円筒形状のコアビットを備えた穿孔装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載された穿孔装置は、コアビットを、回転させながら直進させて、穿孔対象物に孔を形成する。更に、この穿孔装置は、コアビットのシャンクの内部空間に配置され外周に吸引口が形成された吸引部を備える。そして、この吸引部は、穿孔により発生した切粉を吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、穿孔を行なうコンクリートブロックには、表面に鋼板を設けた物がある。この鋼板を、乾式コアドリルで穿孔することは難しく、湿式コアドリルで穿孔する。しかしながら、湿式コアドリルでは、穿孔時に水を用いるため、水が飛散する可能性がある。特に、コンクリートブロックの貫通孔の出口側に鋼板がある場合には、貫通時に、飛散した水の回収が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する穿孔方法は、コンクリート部材に隣接して鋼板が配置された鋼板付きコンクリートブロックに孔を形成する穿孔方法であって、前記コンクリート部材に、前記鋼板に達するコンクリート孔を形成し、前記コンクリート孔に内嵌可能な筒部と、前記筒部の内部を吸引可能とする前記コンクリート孔の入口の外側に位置する排出部とを有したケーシングを、前記コンクリート孔内に配置し、前記筒部との間に空間を区画して、前記筒部の内側に湿式コアドリルを配置し、前記湿式コアドリルのチップに水を供給するとともに、前記筒部の内部を前記排出部から吸引することにより、前記水を回収しながら、前記湿式コアドリルによって、前記鋼板を穿孔する。
【0006】
また、上記課題を解決する穿孔装置は、コンクリート部材に隣接して鋼板が配置された鋼板付きコンクリートブロックに孔を形成する穿孔装置であって、前記コンクリート部材に形成された前記鋼板に達するコンクリート孔に内嵌可能な筒部と、前記筒部の内部を吸引可能とする基端部側に設けた排出部とを有したケーシングと、前記筒部との間に空間を区画して、前記筒部の内側に配置可能な湿式コアドリルと、前記湿式コアドリルのチップに水を供給する水供給部と、前記湿式コアドリルのコアビットを回転させる回転駆動機構と、前記筒部の内部を吸引する吸引機構とを備える。
【0007】
更に、上記課題を解決するケーシングは、コンクリート部材に隣接して鋼板が配置された鋼板付きコンクリートブロックの前記鋼板に、湿式コアドリルを用いて孔を形成するときに用いる水を回収するために用いるケーシングであって、前記コンクリート部材に形成したコンクリート孔に内嵌可能な筒部と、前記コンクリート孔の入口の外側に設けた前記筒部の内部を吸引可能な排出部と、前記筒部との間に空間を区画して、前記筒部の内側に配置される前記湿式コアドリルを進退可能に支持する支持部材とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鋼板の湿式穿孔時に用いる水を効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の穿孔装置の全体構成を説明する構成図。
【
図2】実施形態の穿孔装置のケーシングとコアビットの斜視図。
【
図3】実施形態のケーシングと挿入されたコアビットの右側面図。
【
図4】実施形態の穿孔装置のケーシングとコアビットの正面断面図。
【
図5】実施形態の穿孔方法を説明する図であって、(a)は表面側の鋼板を湿式コアドリルで穿孔している状態、(b)は表面側の鋼板に孔が形成された状態、(c)はコンクリート部材を乾式コアドリルで穿孔した状態、(d)はコンクリート部位に孔が形成され、ケーシングを挿入する状態を示す。
【
図6】実施形態の穿孔方法を説明する図であって、(a)はコンクリート部位にケーシングが挿入されて、湿式コアドリルを挿入する状態、(b)はケーシング内に湿式コアドリルを挿入した状態を示す。
【
図7】実施形態の穿孔方法において湿式コアドリルを挿入した側とは反対側の鋼板の穿孔を開始した時の状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図7を用いて、穿孔方法
及び穿孔装
置を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、原子炉設備に用いられる鋼板付きコンクリートに円筒形状の孔を形成する穿孔方法及び穿孔装置として説明する。この孔には、ワイヤーソーを挿入し、コンクリートブロックを切り出す。ここでは、ワイヤーソーを挿入可能な大きさの孔を形成する。
【0011】
本実施形態では、
図1に示すように、穿孔対象としての鋼板付きコンクリートブロック10は、コンクリート部材15の両表面に鋼板11,12が設けられている。鋼板11,12は、約60mmの肉厚鋼板であって、SS400(一般構造用圧延鋼材)で構成される。コンクリート部材15は、1000mmの厚みを有する。なお、本実施形態の図では、便宜上、各部材の寸法比率を変更して示している。
【0012】
穿孔装置20は、コアドリル21、ケーシング30、吸引装置27、流量計28及びタンク29を備える。
コアドリル21は、ポールベース22b、ポール22p、ドリルヘッド23、コアビット25を備える。ポールベース22bは、鋼板付きコンクリートブロック10の表面に固定される。ポールベース22bに立設されたポール22pは、鋼板付きコンクリートブロック10の鋼板11の表面に対して直交する方向に延在する。このポール22pのラック(図示せず)には、ドリルヘッド23のスライドブロック23sのピニオン(図示せず)が噛み合っている。そして、スライドブロック23sを、ポール22pの延在方向に移動させることにより、ドリルヘッド23が穿孔方向(
図1の左方向)に直進可能になる。ドリルヘッド23には、コアビット25の先端に冷却水を供給するための供給管(図示せず)が設けられている。更に、ドリルヘッド23は、モータを備える。そして、このモータの回転力によって、ドリルヘッド23の先端に設けられたコアビット25が回転する。
【0013】
吸引装置27は、ケーシング30の排出管33に取り付けられたホースh1内を吸引して、ケーシング30内から水及び空気を強制的に排出する。吸引装置27として、例えば、最大風量5.6m3/ minで、最大真空圧18.7kPaの装置を用いる。吸引装置27で排出された水は、流量計28で流量を計測されてタンク29に収容される。
【0014】
次に、コアビット25及びケーシング30について説明する。
図2~
図4は、コアビット25と、これを挿入した状態のケーシング30の斜視図、右側面図及び正面断面図である。
【0015】
図2に示すように、コアビット25は、基端部(右側の一端部)が閉塞した円筒形状を有している。本実施形態では、このコアビット25は、例えば約203mm(8インチ)の孔を形成する。このコアビット25の基端部25pの中心部には、取付部25aが突出して形成されている。この取付部25aは、コアビット25をドリルヘッド23のモータの回転軸に取り付けられる。更に、この取付部25aの軸中心には、冷却水を供給するための貫通孔が形成されている。
【0016】
図3に示すように、コアビット25の基端部25pには、正面視の中心から半径r1の円周上に、複数(3個)の貫通孔25hが形成されている。ここでは、半径r1として62.5mmを用いる。各貫通孔25hは、穿孔時に空気を取り入れる空気供給孔であって、直径が約10mmで形成される。
【0017】
図2に示すように、コアビット25の先端側(基端部25pの反対側)には、複数の略直方体形状のチップ26が周方向に離間して設けられている。
【0018】
ケーシング30は、円筒部31、フランジ部32、排出管33、支持部35を備える。
円筒部31は、コンクリート部材15に形成された孔15hに嵌合する大きさを有する。
フランジ部32は、円筒部31の外周に嵌合する。このフランジ部32は、ケーシング30が鋼板付きコンクリートブロック10の孔15hに配置された場合、孔15hの入口の外側に位置する。
図3に示すように、このフランジ部32には、複数(3個)の長孔32hが形成されている。これら長孔32hは、ボルト等が挿入されて、鋼板付きコンクリートブロック10に固定されることにより、ケーシング30の回り止めとして用いられる。
【0019】
図2に示すように、排出管33は、フランジ部32よりも更に基端部25p側(右側)に位置し、外周の1箇所に設けられている。この排出管33は、約50mm(2インチ)の直径を有する。
【0020】
更に、円筒部31の内面には、支持部材としての複数の支持部35が設けられている。
図3に示すように、円筒部31の内面には、径方向の同じ断面内において3つの支持部35が均等に設けられている。各支持部35は、ケーシング30の円筒部31内に挿入されるコアビット25との間に隙間(空間S1)を区画し、コアビット25を直進可能及び回転可能に支持する。各支持部35は、例えば、内側にローラ又はボールを回転可能に支持した部材で構成される。
【0021】
更に、
図4に示すように、ケーシング30の基端部(右側の一端部)の内周には、シール部材36と、このシール部材36の押え部材37とが嵌合されている。また、ケーシング30の先端部(左側の他端部)には、内側に折れ曲がった天板部38が形成されている。そして、ケーシング30の先端部には、天板部38の内側(基端部側)にシール部材39が嵌合されている。
【0022】
(穿孔方法)
次に、
図5~
図7を参照して、上述した穿孔装置20を用いて、鋼板付きコンクリートブロック10に貫通孔を形成する穿孔方法について説明する。
【0023】
まず、
図5(a)に示すように、鋼板付きコンクリートブロック10の穿孔側(入口側)の表面の鋼板11に、湿式コアドリル50を用いて、孔を形成する。ここでは、直径が約22.86mm(9インチ)の孔を形成するコアドリル50を用いる。更に、この場合、コアドリル50の先端の下方に、穿孔で用いた冷却水を受け止める容器55を配置する。そして、コアドリル50のコアビットを回転させながら、コアビットのチップに冷却水を供給するとともに前進させることにより、鋼板11を切削して円筒状の切り込みを形成していく。この場合、チップに供給された冷却水は、容器55に回収されて排出される。なお、この鋼板11の穿孔速度は、約0.83mm/min前後である。
【0024】
そして、コアドリル50のコアビットが、鋼板付きコンクリートブロック10のコンクリート部材15に当接し、鋼板11を貫通する。
そして、コアドリル50の回転、前進及び冷却水の供給を停止した後、コアドリル50を取り外す。これにより、
図5(b)に示すように鋼板11には孔11hが形成される。
【0025】
次に、乾式コアドリル60を用いて、鋼板付きコンクリートブロック10のコンクリート部材15を穿孔する。ここでは、コアドリル50と同じ大きさの孔を形成するコアドリル60を用いる。この場合、鋼板11の孔11hから乾式コアドリル60を挿入する。そして、冷却水は供給せずに、コアドリル60のコアビットを回転させながら前進させることにより、コンクリート部材15を切削して円筒状の切り込みを形成していく。なお、このコンクリート部材15の穿孔速度は、約45mm/minである。
【0026】
その後、
図5(c)に示すように、コアドリル60のコアビットが、鋼板付きコンクリートブロック10の鋼板12に当接し、コンクリート部材15を貫通する。これにより、孔11hに続く孔(コンクリート孔)15hが形成される。そして、コアドリル60の回転及び前進を停止した後、コアドリル60を取り外す。
【0027】
次に、
図5(d)に示すように、これら孔15h,11hに、ケーシング30を挿入する。ここでは、ケーシング30の先端が12に当接するように挿入する。この場合、ケーシング30のフランジ部32は、入口の外側に位置する。
そして、
図6(a)に示すように、孔15h,11hに挿入したケーシング30を固定する。この場合、ケーシング30のフランジ部32の長孔32hを用いて、ボルトで固定する。
【0028】
そして、
図6(b)に示すように、ケーシング30内に、上述した湿式のコアドリル21のコアビット25を挿入する。そして、コアビット25の先端を、鋼板付きコンクリートブロック10の鋼板12に当接させる。この場合、コアビット25は、ケーシング30の支持部35によって支持され、ケーシング30との間に円筒形状の空間S1が形成される。更に、この空間S1のコアビット25の先端及び挿入側は、それぞれシール部材39,36で密閉される。
【0029】
そして、鋼板12の穿孔を行なう。
次に、
図7を用いて、冷却水と空気との流れを説明する。なお、便宜上、空間S1を大きく示している。白色矢印及び黒色矢印は、それぞれ冷却水及び空気の流れを示している。
【0030】
図7に示すように、鋼板12の穿孔開始時には、コアドリル21のドリルヘッド23の供給管を介して、コアビット25の取付部25aの貫通孔から内部に冷却水を供給する。更に、ケーシング30の排出管33にホースh1を介して接続した吸引装置27を稼働させる。なお、冷却水は、約2.4L/minで供給する。
【0031】
これにより、コアビット25内に供給された冷却水は、コアビット25の貫通孔25hから供給された空気とともに、コアビット25内を流れて、チップ26に供給される。そして、吸引装置27の吸引力によって、チップ26に至った冷却水は、空気とともに、チップ26の間の空間S2から径外方向に流出し、ケーシング30の円筒部31とコアビット25との間に区画された空間S1に流れる。更に、空間S1に至った冷却水は、空気とともに、排出管33に集められて、ホースh1を介して、吸引装置27に吸引される。そして、冷却水は、吸引装置27から流量計28によって流量が計測された後、タンク29に回収される。
【0032】
その後、コアビット25による鋼板12の穿孔時には、チップ26に供給された冷却水及び空気は、チップ26の間の空間S2から径外方向に流出する。そして、鋼板12において穿孔された領域の隙間を介して、空間S1に流れ、排出管33を介して吸引装置27に吸引される。
【0033】
そして、鋼板12の孔が貫通した場合、吸引装置27の吸引力によって、チップ26に供給された冷却水及び空気は、排出管33に排出されるとともに、鋼板12において切り出された円板も、コアビット25の先端位置において吸着されて保持される。なお、この鋼板12の穿孔速度は、約0.77mm/minである。
【0034】
(作用)
鋼板付きコンクリートブロック10に貫通孔を形成する場合、ケーシング30の空間S1を、排出管33を介して吸引する。これにより、吸引装置27の吸引力によって、コアビット25の内側からチップ26に供給された冷却水が、チップ26の間の空間S2、ケーシング30とコアビット25との間の空間S1及び排出管33を介して吸引されて回収される。
【0035】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、端部に排出管33を有するケーシング30の内部に、空間S1を設けるようにして、湿式のコアビット25を配置する。これにより、コアビット25内を流れてチップ26に供給された冷却水を、チップ26の間の空間S2、ケーシング30とコアビット25との間の空間S1及び排出管33を介して、外部に飛散させることなく回収することができる。
【0036】
(2)本実施形態では、コアビット25の基端部25pに複数の貫通孔25hを設けた。これにより、コアビット25の内部に、冷却水とともに、貫通孔25hを介して空気を供給することができるので、チップ26を冷却した冷却水を排出管33へと円滑に流すことができる。
【0037】
(3)本実施形態では、鋼板11,12の間にあるコンクリート部材15は、乾式コアドリル60で穿孔する。これにより、吸水する性質のコンクリート部材15を、水を用いずに穿孔するので、水によるコンクリート部材15の汚染を抑制することができる。
【0038】
(4)本実施形態では、ケーシング30には、排出管33の近傍で排出管33よりも先端側に、長孔32hが形成されたフランジ部32が設けられている。フランジ部32の長孔32hにボルトを挿通することにより、ケーシング30を鋼板付きコンクリートブロック10の鋼板11に固定した状態で、排出管33から安定して冷却水及び空気を排出することができる。
【0039】
(5)本実施形態では、ケーシング30は、内部にコアビット25を回転可能に支持する複数の支持部35を設ける。これにより、コアビット25の回転の邪魔をせずに、コアビット25とケーシング30との間に空間S1を区画して、冷却水及び空気の排出を円滑に行なうことができる。
【0040】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、ケーシング30には、1個の排出管33を設けた。ケーシング30に設ける排出管33は、1個に限られず、鋼板付きコンクリートブロック10の入口側に設けることができれば、複数、設けてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、コアビット25の基端部25pに、中心から半径r1の位置に、直径が約10mmの3個の貫通孔25hを設けた。空気供給孔としての貫通孔25hの大きさや個数は、コアビット25に供給される冷却水の量、排出管33の大きさ、吸引装置27の吸引量等によって、変更することが可能である。
【0042】
・上記実施形態では、コンクリート部材15の両表面に鋼板11,12を設けた鋼板付きコンクリートブロック10に貫通孔を形成する穿孔方法として説明した。穿孔対象は、この鋼板付きコンクリートブロック10に限られず、コンクリート部材に隣接する鋼板が、穿孔する途中又は最後に配置され、湿式のコアビットを用いて穿孔する部材であればよい。
【符号の説明】
【0043】
h1…ホース、r1…半径、S1,S2…空間、10…鋼板付きコンクリートブロック、11,12…鋼板、11h…孔、15h…コンクリート孔としての孔、15…コンクリート部材、20…穿孔装置、21…コアドリル、22b…ポールベース、22p…ポール、23…ドリルヘッド、23s…スライドブロック、25…コアビット、25a…取付部、25h…空気供給孔としての貫通孔、25p…基端部、26…チップ、27…吸引装置、28…流量計、29…タンク、30…ケーシング、31…筒部としての円筒部、32…フランジ部、32h…長孔、33…排出管、35…支持部材としての支持部、36,39…シール部材、37…押え部材、38…天板部、50…湿式コアドリル、55…容器、60…乾式コアドリル。