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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】デストリビュータのブーム装置用運搬台
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
E04G21/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020214254
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100095
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 幹也
(72)【発明者】
【氏名】須田 智之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠
(72)【発明者】
【氏名】松本 実
(72)【発明者】
【氏名】礒村 涼
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530497(JP,A)
【文献】実開昭60-162646(JP,U)
【文献】米国特許第06675822(US,B1)
【文献】特開2013-091934(JP,A)
【文献】特開平09-217489(JP,A)
【文献】特開昭60-047162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース装置(10)より起立するマスト装置(20)と、そのマスト装置(20)上に支持されるブーム装置(30)とを備え、前記ブーム装置(30)が、互いに直列に配列され且つ相互間が屈折揺動可能に連結される複数のブーム(B1~B4)よりなるブーム列(BT)と、前記マスト装置(20)の上部に取付けられて前記ブーム列(BT)における最も基端側のブーム(B1)を起伏可能に軸支するブーム支持台(BS)と、前記基端側のブーム(B1)を起伏動作させる油圧シリンダ(C1)とを有し、前記ブーム支持台(BS)が、前記マスト装置(20)に固定される固定台(31)と、前記固定台(31)に旋回可能に支持される旋回台(32)とを備えるコンクリート供給用デストリビュータ(D)の前記ブーム装置(30)を運搬するのに使用するブーム装置用運搬台(U)であって、
前記ブーム列(BT)が折り畳まれて横向き姿勢にある状態の前記ブーム装置(30)の下側で、該ブーム装置(30)の長手方向に略沿うように延び且つ運搬車両(V)に積載可能なメインフレーム(90)と、前記メインフレーム(90)に固定されて前記ブーム支持台(BS)を着脱可能に結合、固定し得るブーム支持台支持部(Z0)と、前記メインフレーム(90)に固定されて前記ブーム列(BT)の中間部を保持可能なブーム列保持部(Z1,Z2)とを備えたことを特徴とする、デストリビュータのブーム装置用運搬台。
【請求項2】
前記ブーム列(BT)が折り畳まれて横向き姿勢にある状態の前記ブーム装置(30)を前記運搬台(U)を介してクレーンで吊り上げる際に使用されて吊り上げ用索条(W)を取付可能な索条取付部(T5,T6)が前記メインフレーム(90)に連結されることを特徴とする、請求項1に記載のデストリビュータのブーム装置用運搬台。
【請求項3】
前記索条取付部には支持台側索条取付部(T5)が含まれ、
前記支持台側索条取付部(T5)の少なくとも一部は、前記ブーム支持台支持部(Z0)の一部と前記長手方向で略同一の位置に存することを特徴とする、請求項2に記載のデストリビュータのブーム装置用運搬台。
【請求項4】
前記メインフレーム(90)は、前記長手方向に互いに間隔をおいて配置される少なくとも2つの前記ブーム列保持部(Z1,Z2)を備え、
前記索条取付部には、前記2つのブーム列保持部(Z1,Z2)間で前記吊り上げ用索条(W)を取付可能なブーム列側索条取付部(T6)が含まれることを特徴とする、請求項2又は3に記載のデストリビュータのブーム装置用運搬台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース装置より起立するマスト装置と、そのマスト装置上に支持されるブーム装置とを備えたコンクリート供給用デストリビュータに関し、特にそのデストリビュータのブーム装置を運搬するのに使用するブーム装置用運搬台に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンクリート供給用デストリビュータにおいて、ブーム装置が、互いに直列に配列され且つ相互間が屈折揺動可能に連結される複数のブームよりなるブーム列と、マスト装置の上部に取付けられてブーム列における最も基端側のブームを起伏回動可能に支持するブーム支持台とを有するものは、例えば特許文献1に開示されるように従来公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-503133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に示されるようなデストリビュータでは、ブーム装置のうちブーム列単体を(即ちブーム列をブーム支持台から分離して)車両で運搬し、ベース装置上に起立したマスト装置の最上部にブーム支持台を設置した後でそのブーム支持台にブーム列を結合して、ブーム装置をマスト装置上に組立・設置するが、その組立・設置作業をマスト装置の最上部、即ち高位置で行う必要があり、作業性が悪い。
【0005】
そこで、ブーム列とブーム支持台とを予め結合して成る組立体(即ちブーム装置全体)を車両に搭載して現場近くまで運搬することが考えられる。この場合、車両の荷台面上にブーム支持台を単に固定支持しただけでは、車両走行中、ブーム列が振動してブーム列作動用の油圧シリンダ、特に基端側の第1シリンダに無用の負荷が作用する虞れがある。
【0006】
そこで車両の荷台面に更にブーム列支持部を設けることも考えられるが、車両の荷台面におけるブーム列支持部と、ブーム支持台支持部との相対位置や相対高さが不適切であるとブーム列の振動を的確には抑制できず、上記問題が解消されない。
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、従来構造の問題を簡単な構造で解決可能とした、デストリビュータのブーム装置用運搬台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、ベース装置より起立するマスト装置と、そのマスト装置上に支持されるブーム装置とを備え、前記ブーム装置が、互いに直列に配列され且つ相互間が屈折揺動可能に連結される複数のブームよりなるブーム列と、前記マスト装置の上部に取付けられて前記ブーム列における最も基端側のブームを起伏可能に軸支するブーム支持台と、前記基端側のブームを起伏動作させる油圧シリンダとを有し、前記ブーム支持台が、前記マスト装置に固定される固定台と、前記固定台に旋回可能に支持される旋回台とを備えるコンクリート供給用デストリビュータの前記ブーム装置を単独で運搬するのに使用するブーム装置用運搬台であって、前記ブーム列が折り畳まれて横向き姿勢にある状態の前記ブーム装置の下側で、該ブーム装置の長手方向に略沿うように延び且つ運搬車両に積載可能なメインフレームと、前記メインフレームに固定されて前記ブーム支持台を着脱可能に結合、固定し得るブーム支持台支持部と、前記メインフレームに固定されて前記ブーム列の中間部を保持可能なブーム列保持部とを備えたことを第1の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記ブーム列が折り畳まれて横向き姿勢にある状態の前記ブーム装置を前記運搬台を介してクレーンで吊り上げる際に使用されて吊り上げ用索条を取付可能な索条取付部が前記メインフレームに連結されることを第2の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記索条取付部には支持台側索条取付部が含まれ、前記支持台側索条取付部の少なくとも一部は、前記ブーム支持台支持部の一部と前記長手方向で略同一の位置に存することを第3の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第2又は第3の特徴に加えて、前記メインフレームは、前記長手方向に互いに間隔をおいて配置される少なくとも2つの前記ブーム列保持部を備え、前記索条取付部には、前記2つのブーム列保持部間で前記吊り上げ用索条を取付可能なブーム列側索条取付部が含まれることを第4の特徴とする。
【0012】
本発明において、「横向き姿勢」とは、最小サイズに折り畳まれたブーム列の長手方向が略水平方向(即ち水平方向、又は実施形態の図14図15の如く水平方向から若干傾いた横方向)となる場合のブーム列の折り畳み姿勢という。
【0013】
また本発明、特に第3の特徴において、「支持台側索条取付部の少なくとも一部は、ブーム支持台支持部の一部と前記長手方向で略同一の位置に存する」とは、支持台側索条取付部の少なくとも一部とブーム支持台支持部の一部とが前記長手方向で同一の位置に存する(即ちその両者の長手方向位置がオーバラップ、換言すれば重なる位置関係にある)ものが含まれることは元より、厳密な意味では同一の位置になくても、支持台側索条取付部の少なくとも一部がブーム支持台支持部に対し前記長手方向で近傍位置に存する(即ち第3の特徴による効果を達成可能な程度に近い位置に存する)ものも含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブーム列が折り畳まれて横向き姿勢にある状態のブーム装置の下側で、ブーム装置の長手方向に略沿うように延び且つ運搬車両に積載可能なメインフレームと、メインフレームに固定されてブーム支持台を着脱可能に結合、固定し得るブーム支持台支持部と、メインフレームに固定されてブーム列の中間部を保持可能なブーム列保持部とを備えるので、運搬車両に積載可能な共通1個のメインフレーム上にブーム支持台支持部とブーム列保持部とを、相互の位置関係を適切に設定しつつ配設可能となる。これにより、横向き姿勢のブーム装置を最適姿勢でメインフレーム上に支持することができ、車両走行中もブーム列の振動が効果的に抑制され、油圧シリンダの負荷軽減に寄与することができる。
【0015】
また第2の特徴によれば、ブーム列が折り畳まれて横向き姿勢にある状態のブーム装置を運搬台を介してクレーンで吊り上げる際に使用されて吊り上げ用索条を取付可能な索条取付部がメインフレームに連結されるので、運搬台を介してブーム装置をクレーンで吊り上げて運搬車両に積み込んだり降ろしたりすることができる。これにより、ブーム装置を直接吊り上げて積み降ろしする場合と比べ、積み降ろし時に油圧シリンダに作用する負荷をより軽減することができる。
【0016】
また第3の特徴によれば、索条取付部には支持台側索条取付部が含まれ、その支持台側索条取付部の少なくとも一部は、ブーム支持台支持部の一部と前記長手方向で略同一の位置に存するので、大重量のブーム支持台を、これを支えるブーム支持台支持部の間近に存する支持台側索条取付部で効率よく吊り上げ可能となり、その吊り上げの際のメインフレームの荷重負担の軽減に寄与することができる。
【0017】
また第4の特徴によれば、メインフレームは、長手方向に互いに間隔をおいて配置される少なくとも2つのブーム列保持部を備え、索条取付部には、2つのブーム列保持部間で吊り上げ用索条を取付可能なブーム列側ワイヤ取付部が含まれるので、2つのブーム列保持部間に位置するブーム列側ワイヤ取付部を介してメインフレーム(従って、その上に2つのブーム列保持部を介して保持したブーム列)をバランスよく吊り上げ可能となり、吊り上げ作業を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は、本発明の一実施形態に係るデストリビュータの稼働状態の一例を示す全体縦断面図、また(B)は、図1(A)の1B矢視図
図2】ベース装置の全体側面図(図1(A)の2矢視部拡大図)
図3】ベース装置の全体平面図(図2の3矢視図)
図4図3の4矢視部の一部破断拡大平面図
図5】(A)は図4の5A-5A線断面図、また(B)は図4の5B-5B線断面図
図6】(a)は図4と同側より見たベース本体要部及びアウトリガの分解平面図、また(b)は図6(a)のb-b線断面図、(c)は図6(a)のc-c線断面図
図7】ベース装置の全体斜視図
図8】アウトリガの格納時・展開時において、作動状態となる上下結合ピンと上下ピン挿入孔との関係を示す簡略平面図
図9】マスト装置の要部側面図
図10】(A)は図9の10A-10A線断面図、また(B)は図9の10B-10B線断面図、また(C)は図9の10C-10C線断面図
図11】ブーム列が横向き姿勢にあるブーム装置の全体側面図(図1の11矢視部の拡大側面図)
図12】(A)は図11の12A-12A線断面図、また(B)は図12(A)の12B-12B線断面図
図13】ブーム支持台の全体斜視図
図14】デストリビュータの[組立工程]の概略工程図
図15】(A)は図14の15A矢視部の拡大側面図、また(B)は図15(A)の15B矢視図
図16】デストリビュータの[盛替え工程]の概略工程図
図17】(A)は図16(F)の17A矢視部の拡大側面図、また(B)は図17(A)の17B矢視図
図18】(A)は図17(B)の18A矢視部の拡大側面図、また(B)は図17(A)の18B矢視部の拡大側面図
図19】デストリビュータの[盛替え工程]の後半過程のバリエーションを示す概略工程図
図20】デストリビュータのブーム装置用運搬台の一例を示す全体側面図(図21の20矢視図)
図21】運搬台の平面図(図20の21矢視図)
図22】運搬台上に横向き姿勢のブーム装置を搭載した状態の一例を示す側面図(図23の22矢視図)
図23】運搬台上に横向き姿勢のブーム装置を搭載した状態の一例を示す平面図(図22の23矢視図)
図24】運搬台のメインフレームにおけるブーム支持台支持部の一例を示す斜視図(図21の24矢視図)
図25】ブーム装置搭載状態の運搬台の要部拡大横断面図(図22の25-25線拡大断面図)
図26】ブーム装置搭載状態の運搬台の要部拡大底面図(図22の26矢視図)
図27】(A)は図20・21の27A-27A線拡大断面図、(B)は図20・21の27B-27B線拡大断面図、(C)は図20・21の27C-27C線拡大断面図
図28】横向き姿勢のブーム装置を搭載した運搬台をクレーンで吊り上げた状態の一例を示す側面図(図22対応図)
図29】横向き姿勢のブーム装置を搭載した運搬台をクレーンで吊り上げた場合の吊り上げ用ワイヤの一例を示す正面図(図28の29-29線矢視より見た拡大図)
図30】ブーム装置搭載状態の運搬台を運搬車両の荷台上に積載した状態の一例を示す全体側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を、添付図面により以下に具体的に説明する。
【0020】
コンクリート供給用デストリビュータDは、例えばビル等の建設現場において構造物の躯体各所(例えば床スラブや各壁体等)を構築するための生コンクリートを、現場の地上に置かれた不図示のコンクリートポンプから受け取り、高所に在る打設現場の随所に供給するために使用される。その使用例を図1に示す。
【0021】
このデストリビュータDは、土台となるベース装置10と、このベース装置10上に起立状態で支持される高さ調節可能なマスト装置20と、そのマスト装置20上に搭載されるブーム装置30とを備えている。次にその各装置10,20,30の一例について、図2図13を併せて参照して、順に説明する。
【0022】
先ず、図2図7によりベース装置10について説明すると、それは、ベース本体10mと、そのベース本体10mに基部16bが回動支軸17を介して回動可能に支持されるアウトリガ16とを有する。アウトリガ16は、ベース本体10m内に収まる格納位置16Bと、その格納位置16Bより外方(即ちベース本体10mの外側)に張出す所定の展開位置16Aとの間を回動操作可能となっている。ベース本体10mは、複数の金属製フレームを枠組みして構成される剛体枠で構成される。
【0023】
即ち、ベース本体10mは、中央の骨格体となるベースフレーム11を備え、このベースフレーム11は、横断面矩形状に形成されて上下方向に延びる角筒部11bと、この角筒部11bの前後左右の頂部より放射状に延びる4個の鉛直壁部11aとを一体に有する。各鉛直壁部11aは、図2図7で明らかなように複雑な三次元形態を有するため、複数の壁要素相互を一体的に結合(例えば溶接、ボルト止め等)されて構成される。尚、各鉛直壁部11aの上部には、ベース装置10をクレーンで単独で吊り下げる場合(例えば図14(A)参照)に吊り下げ用ワイヤの下端部を係止させるための係止孔付きブラケット11abが固着(例えば溶接等)される。
【0024】
また特に実施形態の角筒部11bは、マスト装置20の後述するマストMと略同一の横断面形状を有しており、この角筒部11bの上端部外周には複数の結合用ブロック21が間隔をおいて固定される。これらの結合用ブロック21と、最下部のマストMの下端部外周に固定の複数の結合用ブロック21′とを用いて、後述するように最下部のマストMと角筒部11b(従ってベース本体10m)とが互いに結合される。
【0025】
またベース本体10mは、上記したベースフレーム11と、ベースフレーム11に固定され且つベースフレーム11を取り囲むように配列される複数(図示例は4個)の上フレーム12と、隣り合う上フレーム12の隣接端部間を各々結合する上部軸受14と、ベースフレーム11に固定され且つ複数の上フレーム12にそれぞれ対応して上フレーム12直下に間隔をおいて配列される複数の下フレーム13と、隣り合う下フレーム13の隣接端部間を各々結合する下部軸受15とを備える。上部軸受14及び下部軸受15は、円筒状の軸受本体14b,15bと、その軸受本体14b,15bに固定(例えば溶接)されてその外周を囲繞する囲い枠14k,15kとを各々備える。下フレーム13の下面には、接地可能な複数の支持脚13aが突設される。
【0026】
而して、上部軸受14は、これを隣り合う上フレーム12の隣接端部にその間を繋ぐよう結合する構造としたことで、平面視で隣り合う上フレーム12の長手方向に沿う外側面の延長線相互の交点Oよりも内方側(即ち角筒部11b側、換言すればベース本体10mの中心側)に上部軸受14の少なくとも一部が位置するように、上フレーム12の隣接端部に上部軸受14が結合されることとなる。一方、下部軸受15は、これを隣り合う下フレーム13の隣接端部にその間を繋ぐよう結合する構造としたことで、平面視で隣り合う下フレーム13の長手方向に沿う外側面の延長線相互の交点Oよりも内方側(即ち角筒部11b側、換言すればベース本体10mの中心側)に下部軸受15の少なくとも一部が位置するように、隣り合う下フレーム13の隣接端部に下部軸受15が結合されることとなる。
【0027】
これにより、上部軸受14と下部軸受15間に配置されるアウトリガ基部16bが、隣り合う上フレーム12の隣接端部にベースフレーム11の内方寄り(即ち角筒部11b寄り、換言すればベース本体10mの中心寄り)で結合される上部軸受14と、隣り合う下フレーム13の隣接端部にベースフレーム11の内方寄り(即ち角筒部11b寄り、換言すればベース本体10mの中心寄り)で結合される下部軸受15との間の空間に配置されるレイアウトとなる。このため、格納時におけるベース本体10m(即ちベースフレーム11や上,下フレーム12,13を含むフレーム枠)外側へのアウトリガ16の張出しを効果的に抑制可能となるから、ベース装置10の小型化が図られ、占有スペースを小さくできる。その結果、ベース装置10を建設現場の狭小な空間(例えば床スラブの上下を貫通する貫通孔等)を無理なく移動通過可能となって、作業性が良好となる。
【0028】
また、上記した囲い枠14k,15kは、軸受本体14b,15bを環状の空隙を挟んで囲繞する板状の囲い枠本体140,150と、囲い枠本体140,150を上下より挟むようにして囲い枠本体140,150の上下端にそれぞれ固定(例えば突き合わせ溶接)される上下各一対の第1,第2支持板部141,142;151,152とを有する。そして、上下各一対の第1,第2支持板部141,142;151,152と、これを貫通する上部軸受14又は下部軸受15とが固定(例えば溶接)される。
【0029】
特に実施形態の囲い枠本体140,150は、上フレーム12又は下フレーム13との対向面に、それら上,下フレーム12,13の長手方向中心線と直交する平坦な取付面14kf,15kfをそれぞれ有する。これら取付面14kf,15kfには、上フレーム12又は下フレーム13の端面12e,13eが固定(実施形態は突き合わせ溶接)される。これにより、軸受本体14b,15bが円筒状であっても、それの外周面と上,下フレーム端面12e,13eとの間に囲い枠14k,15kが介在することで、軸受本体14b,15bと上,下フレーム12,13間で荷重を片寄りなく略均等に伝達可能となり、それだけ各部の荷重負担が軽減されるから、耐久性が高められる。
【0030】
尚、本実施形態では、上側で対をなす第1,第2支持板部141,142のうちの何れか一方(142)と、下側で対をなす第1,第2支持板部151,152のうちの何れか一方(151)とが、ベースフレーム11の対応する鉛直壁部11aの一部と一体に形成されるが、これを別体に形成して後付けで鉛直壁部11aの先部に固定(例えば溶接、ボルト止め等)してもよい。
【0031】
またベースフレーム11における各鉛直壁部11aの外側縁部には、対応する上部軸受14と下部軸受15との中間において、内方側(即ち角筒部11b側)に円弧状に凹んだ凹曲部18が形成される。
【0032】
囲い枠本体140,150の上記した取付面14kf,15kfと、これに対応する上フレーム12又は下フレーム13との当接面は、図4で明らかなように、取付面14kf,15kfを有する囲い枠14k,15kが囲繞する上部軸受14又は下部軸受15の中心軸線を通り且つ対応する上フレーム12又は下フレーム13の長手方向中心線と平行な仮想鉛直面Xよりも外側に配置される。
【0033】
その上、各々のアウトリガ16は、これの格納時に対応する上,下フレーム12,13との間の空間に進入できるように、上,下フレーム12,13の相対向面の相互間隔よりも小さい上下方向最大幅L1(図6(c)を参照)、並びに格納時のアウトリガ16の先部16aが隣接する他のアウトリガ16の基部16bと干渉しない長手方向長さL2(図6(a)を参照)に設定されている。
【0034】
各々のアウトリガ16の主要部をなすアウトリガ本体16mは、横断面が扁平矩形状の頑丈な中空閉断面構造とされた金属製フレーム枠で構成され、側面視で横長の長方形状に形成される。そのアウトリガ16は、各々の基部16bに上下方向に延びる軸受筒部16baを一体に有しており、その各軸受筒部16baが、対応する上部軸受14と下部軸受15間に配置される。そして、各アウトリガ16をベース本体10mにセットした状態では、同一の鉛直軸線上に並ぶ上部軸受14、軸受筒部16ba及び下部軸受15に回動支軸17が相対回動可能に嵌挿される。これにより、アウトリガ16は、上フレーム12及び下フレーム13に沿う格納位置16Bと、その格納位置16Bより外方に張出す展開位置16Aとの間を回動支軸17回りに回動可能である。
【0035】
尚、回動支軸17と上部軸受14(又は下部軸受15)との間には、回動支軸17の抜け出しを阻止する抜け止め手段19が、上部軸受14(又は下部軸受15)に対し着脱可能として介装される。
【0036】
図3でも明らかなように、実施形態ではアウトリガ16の展開位置16Aとして、平面視で鉛直壁部11aの延長方向に延びる主展開位置16A0と、上,下部軸受14,15を挟んで一方側及び他方側の上,下フレーム12,13の各延長方向に延びる第1,第2副展開位置16A1,16A2とが選択的に設定可能である。
【0037】
また実施形態では、アウトリガ16が少なくとも展開位置16Aにあるときに(本実施形態では格納位置16Bにあるときにも)アウトリガ16をベース本体10mに固定可能な結合ピンP1,P2を抜差可能に挿入させるピン挿入孔16h0,16h1~16h3;10h0,10h1,10h2が、それらアウトリガ16及びベース本体10mの各々に設けられる。それらピン挿入孔16h0,16h1~16h3;10h0,10h1,10h2の内径は同一径に設定され、上下の結合ピンP1,P2の外径は、上記内径よりも僅かに小さい同一径に設定される。
【0038】
本実施形態において、上側の結合ピンP1は、作業性向上や紛失防止のために各上部軸受14の上部にワイヤを介して連結され、また下側の結合ピンP2は、作業性向上や紛失防止のために各アウトリガ16の基部16b外面にワイヤを介して連結される。尚、このような形で結合ピンP1,P2をベース本体10mに付設しないで、作業員が現場の適所に保管しておき、必要な場合に随時取り出して使用してもよい。
【0039】
次に各々のピン挿入孔の構造を図4図6を併せて参照して、具体的に説明する。矩形断面のアウトリガ本体16mの上、下壁161,162は、アウトリガ本体16mの上下中間部の平面形態よりもやや幅広に形成される。これら上、下壁161,162の、アウトリガ本体16mの上下中間壁より各々外方に張り出した上下の延出部161f,162fには、特にアウトリガ16の基部16b側において、展開位置固定用の3つのアウトリガ16側のピン挿入孔16h1~16h3が周方向に間隔をあけて設けられる。この展開位置固定用のピン挿入孔16h1~16h3は、アウトリガ16の前記した3つの展開位置16A(即ち主展開位置16A0および第1,第2副展開位置16A1,16A2)に対応して、図6(a)で明らかなように3箇所に分散配置される。また、アウトリガ16の先部16aの上側の延出部161fには、格納位置固定用のピン挿入孔16h0が設けられる。
【0040】
尚、アウトリガ16側に設けられるピン挿入孔16h0,16h1~16h3は、それらの少なくとも1つを、上下の延出部161f,162fに設ける代わりにアウトリガ本体16mの主体部分、例えばアウトリガ本体16mの閉断面を構成する壁部分を孔明け加工して設けてもよい。
【0041】
一方、ベース本体10mは、アウトリガ16の先部16a側のピン挿入孔16h0及び上側の結合ピンP1と協働してアウトリガ16を格納位置16Bに固定するためのベース本体10m側の第1のピン挿入孔10h0を有しており、この第1のピン挿入孔10h0は、上フレーム12の中間部に固定のブラケット12bに配設される。
【0042】
またベース本体10m、特に上,下部軸受14,15を各々上下より挟着する囲い枠14k,15kの上下の支持板部141,142;151,152は、アウトリガ16の基部16b側の上下のピン挿入孔16h1~16h3と協働してアウトリガ16を前記3つの展開位置16A0,16A1,16A2にそれぞれ固定するためのベース本体10m側の複数(図示例は2つ)の第2のピン挿入孔10h1,10h2を有する。
【0043】
而して、複数の第2のピン挿入孔10h1,10h2のうちの一部(特に下部軸受15の囲い枠15kの上下の支持板部151,152に設けたピン挿入孔10h1)は、図5(A)で明らかなように、アウトリガ16の基部16b側のピン挿入孔16h1~16h3の1つ(図示例は下側のピン挿入孔16h2)と共に下側の結合ピンP2に挿入されることで、アウトリガ16を格納位置16Bに固定可能である。
【0044】
図8には、実施形態におけるアウトリガ16を各作動位置(即ち格納位置16B,3つの展開位置16A0,16A1,16A2)に固定するために使用すべき上下の結合ピンP1,P2とピン挿入孔16h0,16h1~16h3;10h0,10h1,10h2との互いの挿入関係がどのように変化するかを判り易く説明した図である。
【0045】
この図8において、太めの黒点は、アウトリガ16を当該作動位置(16B,16A0,16A1,16A2)に固定するために選択された結合ピンP1,P2を示しており、また括弧内のピン挿入孔の参照符号は、その選択された結合ピンP1,P2が挿入されるピン挿入孔を示している。
【0046】
このように本実施形態では、アウトリガ16が格納位置16B又は展開位置16Aにあるときにアウトリガ16及びベース本体10mの各ピン挿入孔16h1~16h3,10h1,10h2に結合ピンP1,P2を挿入することで、ベース本体10mに対しアウトリガ16を格納位置16B又は展開位置16Aに各々確実に固定可能となり、ベース装置10の支持、延いてはデストリビュータDの支持を安定させることができる。
【0047】
次に図9図10を併せて参照して、マスト装置20の一例を説明する。
【0048】
マスト装置20は、ベース装置10上に起立状態で支持され且つ互いに縦列状態で結合される複数のマストMより分割構成されており、そのマストMの接続個数を増やすことでマスト装置20の全長(従って全高)を長く(高く)することができる。そして、マスト装置20の上部(即ち最上位のマストMの上部)にブーム装置30が搭載される。
【0049】
それらマストMは、基本的に同一構造であり、横断面矩形状の頑丈な閉断面構造となっている。各々のマストMの外周面には、作業員がマスト装置20に沿って昇降するための梯子23が固定され、また最上位のマストMの上部には、そこで作業員が各種作業を安全に行うための作業台24が固定され、それらの固定作業は、例えば不図示の固定手段(例えばボルト止め、ピン止め、カシメ等)でマスト装置20をベース装置10上に据え付ける前に予め行われる。尚、作業台24上の上記した各種作業には、例えば、デストリビュータDの後述する[組立工程]でマスト装置20とブーム装置30間を結合する作業や、各種配管を接続する作業が含まれ、またブーム支持台BS各部の点検整備、給油等のメンテナンス作業も含まれる。
【0050】
さらに各々のマストMの外周には、不図示のコンクリートポンプから延びるコンクリート圧送管に接続可能であってマストMに沿って縦列配置状態で延びる接続配管28がそれぞれ固定され、隣り合う接続配管28相互は適当なジョイントで液密に接続可能となっている。接続配管28の長さは、実施形態では1本のマストMの長さの1/2に設定され、例えば全長4mのマストMに対して、2mの接続配管28を2本直列に接続して使用される。
【0051】
また各々のマストMの上端部及び下端部の各外周には、その両端部で周方向位置を同じくして周方向に互いに間隔をおいて並ぶ複数の結合用ブロック21,21′がそれぞれ固定(例えば溶接)される。而して、隣り合う一対のマストMの、互いに隣接した端部外周にそれぞれ固定の結合用ブロック21,21′は、その両マストMを上下に縦列配置した状態で相互が当接する。その当接面22,22′の一方(即ち上向きの当接面)に少なくとも1つの凸部22tが設けられ、またその当接面22,22′の他方(即ち下向きの当接面)に少なくとも1つの凹部22dが設けられる。そして、これら凸部22t及び凹部22dは、隣り合う一対のマストM相互を正しく位置決めし且つ当接面22,22′に沿う方向の一対のマストM相互の周方向及び径方向の位置ずれを抑制し得るように互いに係合する。
【0052】
そして、上記した互いに当接する結合用ブロック21,21′の対は、その両結合用ブロック21,21′を貫通する複数のボルト25で相互間が一体的に結合され、その結合により、結合用ブロック21,21′相互の当接、従って凸部22t及び凹部22d相互の係合が維持される。この場合、ボルト25による当接面の締付け効果と、凹凸係合部の噛み合わせ効果とが相俟って(即ち結合用ブロック21,21′及びボルト25の協働により)、隣り合う一対のマストM相互の位置ずれを確実に阻止しつつ両マストM間を緊密、強固に結合可能となる。
【0053】
また特に実施形態のボルト25には、図10(A)(B)で明らかなように、凸部22tの先端面と該先端面に当接する凹部22dの底面とを貫通する第1のボルト25と、凸部22tの一側で両結合用ブロック21,21′相互の当接面22,22′を貫通する第2のボルト25と、凸部22tの他側で両結合用ブロック21,21′相互の当接面22,22′を貫通する第3のボルト25とが含まれる。これにより、第1~第3のボルトによる当接面相互の締付け効果が、凸部及び凹部相互の係合部及びその周辺部でより強力に発揮されるため、その凹凸係合部の噛み合わせ効果が増強されて、隣り合う一対のマスト相互の位置ずれを一層確実に阻止しつつ両マスト間を強固に結合可能となる。
【0054】
尚、上記した第1~第3のボルト25の使用に代えて、凸部22t・凹部22dを貫通する上記第1のボルト25のみを使用しても両マストM,M間の結合は可能である。また凸部22t・凹部22dの両側を貫通する上記第2,第3のボルト25を使用しても両マストM,M間の結合は可能である。
【0055】
また図(B)(C)で明らかなように、本実施形態の結合用ブロック21,21′は、これが端部外周に固定されるマストMの端面より当接面22,22′がそれぞれ張り出すように配置される。これにより、隣り合うマストMの相対向する端面間には多少のクリアランス29が存する。これにより、マストMの端面の加工誤差に影響されずに結合用ブロック21,21′相互を的確に当接させることができるから、マストMの加工コストの節減を図りつつ隣り合うマストM相互が的確に結合可能となる。
【0056】
尚、上記クリアランス29を省略して、隣り合うマストMの相対向する端面相互を直接接触させてもよい。
【0057】
かくして、上記した結合用ブロック21,21′相互の当接面の凹凸係合により、隣り合う一対のマストM相互を容易に位置決めでき、しかもその当接面に沿う方向の一対のマストM相互の位置ずれを上記凹凸係合により確実に阻止することができるから、マストM相互の結合作業を迅速且つ的確に行うことができ、作業効率が大幅に向上する。
【0058】
また各々の結合用ブロック21,21′の背面、即ちマストM外周との対向面26には、結合用ブロック21,21′が接するマストMの端部に設けた支持孔27に嵌合する突起21tが一体に設けられる。そして、この突起21tが支持孔27に嵌合されることで各結合用ブロック21,21′のマストMの端部への設置部位が簡単且つ的確に位置決め可能となる。しかもその突起21tと支持孔27との嵌合部が溶接されると共に、結合用ブロック21,21′の上記対向面26の外周部がマストM外面に対し周方向に広範囲に溶接されることで、全体として溶接領域が増やすことができ、これにより、全体として各結合用ブロック21,21′とマストMとの結合強度が効果的に高められる。
【0059】
尚、結合用ブロック21,21′の背面とマストM外周との相対向面において、上記突起21t及び支持孔27による凹凸係合部を省略してもよく、その場合は、各々を平坦面とした上記相対向面の相互を直接、平面接触させて溶接する。
【0060】
尚、本実施形態では、結合用ブロック21,21′相互の当接面の凹凸係合構造として、当接面の一方及び他方に各々設けられる凸部22t及び凹部22dをステップ状の凹凸面としたものを例示したが、凹凸係合構造は実施形態に限定されず、例えば、互いに嵌合する突起及び凹孔を、凸部及び凹部としてもよい。
【0061】
ところでベース装置10の前記したベースフレーム11の構造説明において、マストMと略同一の横断面形状である角筒部11bの上端部外周に複数の結合用ブロック21が間隔をおいて固定される説明をしたが、この角筒部11bの結合用ブロック21は、マストMの上端側の結合用ブロック21と同一構造であり、且つ角筒部11bに対するブロック固定構造も、マストMに対する結合用ブロック21,21′の固定構造と同様である。即ち、角筒部11bの結合用ブロック21と、最下部のマストMの下端部に固定の結合用ブロック21′との結合手法は、上記した隣り合うマストM間の結合用ブロック21,21′相互の結合手法と同じである。
【0062】
次に図11~13,15を併せて参照して、ブーム装置30の一例を説明する。
【0063】
ブーム装置30は、互いに直列に配列され且つ相互間が屈折揺動可能に枢支連結される複数のブームB1~B4よりなるブーム列BTと、マスト装置20の上部(具体的には最上位のマストMの上端部)に取付けられてブーム列BTにおける最も基端側の第1ブームB1を枢軸J1を介して起伏回動可能に支持するブーム支持台BSとを備える。
【0064】
ブーム支持台BSは、マスト装置20の上部に固定される固定台31と、その固定台31に鉛直方向の旋回軸J5を介して旋回可能に支持される旋回台32とを備えており、旋回軸J5の上部は、これが旋回台32に一体的に回転するよう連結される。
【0065】
固定台31内には、旋回軸J5を軸方向相対移動不能で且つ相対回転可能に嵌合、支持する複数の旋回軸受31bが固定されている。旋回軸J5と、固定台31内の不図示の旋回用アクチュエータとの間には、該アクチュエータに連動して旋回軸J5(従って旋回台32)を鉛直軸線回りに強制回動させる不図示の連動連結機構が介設される。尚、この旋回用アクチュエータおよび連動連結機構の構造は、多段ブーム付きのクレーン装置の技術分野において従来周知であるので、固定台31に連設されてアクチュエータおよび連動連結機構を被覆するカバー体31cを図12図13に図示するにとどめ、これ以上の説明を省略する。
【0066】
固定台31の下端部外周には、マストMの下端部に固定したのと同一構造の複数の結合用ブロック21′が固定され、この固定台31側の結合用ブロック21′と、最上部のマストMの上端側の結合用ブロック21とを当接させ且つその相互間をボルト25で締結することで、固定台31と最上部のマストM間が結合される。即ち、固定台31側の結合用ブロック21′と、最上部のマストMの上端側の結合用ブロック21との結合手法は、隣り合うマストM間の結合用ブロック21,21′相互の結合手法と同じである。
【0067】
旋回台32は、旋回軸J5の上端部を固定する旋回台本体32mと、その旋回台本体32mの上面に一体に立設された左右一対の起立壁部32sとを備え、その両起立壁部32s間は複数の連結壁32cで結合される。一方、第1ブームB1の基部は、両起立壁部32sを左右両側から挟むよう横断面コ字状に形成される。
【0068】
そして、その第1ブームB1基部の左右一対の側壁部35と、その各々に隣接する旋回台32の起立壁部32sとが、左右一対の短円筒状の枢軸J1を介して相対回動可能に連結される。かくして、第1ブームB1が旋回台32に枢軸J1回りに起伏回動可能に支持される。従って、枢軸J1は、第1ブームB1を旋回台32に起伏回動可能に軸支する回動軸支部を構成する。
【0069】
ところで旋回軸J5は、鉛直方向に延びる円筒状に形成され、その中空部には、固定台31に保持されて固定台31の内外を通る第1中継管38の途中が挿通される。この第1中継管38の上流端(即ち下端部)は、前記した最上部のマストMに沿設した接続配管28の下流端(即ち上端部)にジョイントを介して液密に接続される。一方、第1中継管38の、旋回軸J5よりも下流側部分(上部)は、左右一方の枢軸J1内を経由して第1ブームB1の外側に引き出され、その引き出し端すなわち下流端が、ブーム列BT側に配した後述の第2中継管39に液密に接続される。
【0070】
またブーム列BTにおいて、第1ブームB1とブーム支持台BS(特に後述する旋回台32の起立壁部32s)間には、第1ブームB1をブーム支持台BSに対し強制的に起伏揺動させる油圧シリンダC1が介装される。またブーム列BTの相隣なるブーム相互間(即ち基端側の第1ブームB1と次の第2ブームB2間、第2ブームB2と次の第3ブームB3間、並びに第3ブームB3と最も先端側の第4ブームB4間)には、その相互間を強制的に屈折揺動させる油圧シリンダC2~C4が直接、又はリンク機構を介してそれぞれ介装される。
【0071】
また各々の油圧シリンダC1~C4には、ブーム支持台BS(特に後述する固定台31)に設置した油圧供給装置(例えば油タンク・油圧ポンプ・制御弁等を含む)が、ブーム列BTに沿って取り回される不図示の油圧配管を介して接続される。この油圧供給装置と各油圧シリンダC1~C4との間での作動油圧の給排制御は、作業員の操作に基づいて行われる。その油圧制御系の構成もまた、多段ブーム付きクレーン装置の技術分野において従来周知である。
【0072】
また第4ブームB4の先部には、可撓性を有して生コンクリートを先部から吹出可能な吹出チューブ37が取付けられる。この吹出チューブ37の基端と、マストMに沿設された前述の接続配管28の下流端とは、ブーム支持台BSに設けた前記第1中継管38と、ブーム列BTの各ブームB1~B4に支持されて各ブームB1~B4に沿うよう配置された第2中継管39とを介して接続される。
【0073】
その第2中継管39は、隣り合うブームB1,B2;B2,B3;B3,B4相互の枢支連結部となる中空の枢軸J2~J4内を貫通する折返し部を途中に有して屈曲し、且つ隣り合うブームB1~B4に沿って取り回される。
【0074】
しかも第2中継管39の上流端と前記第1中継管38の下流端との間は、相互間を枢軸J1の軸線回りに相対回動可能に接続する継ぎ手を介して接続される。また第2中継管39の途中、特に上記した各折返し部の近傍において、上流管部と下流管部を相対回動可能に接続する継ぎ手がそれぞれ介設される。従って、それらの継ぎ手により、第1ブームB1の起伏回動、並びに隣り合うブームB1,B2;B2,B3;B3,B4相互の屈折揺動の際に、それら起伏回動及び屈折揺動に対し第2中継管39が無理なく追従できるようになっている。
【0075】
ところで固定台31には、ブーム列BTが折り畳まれて横向き姿勢(図15参照)又は縦向き姿勢(図17参照)にある状態でブーム装置30をクレーンで第1索条W1を介して吊り上げる際に使用され且つ第1索条W1に連結可能な複数の第1取付部T1が設置される。各々の第1取付部T1に連結される第1索条W1は、本実施形態では両端部に目玉状の被連結部51aを各々有する1条のワイヤ51(図15参照)で構成される。尚、ブーム装置30を吊り上げるクレーンは従来周知であるので、実施形態ではクレーン本体は図示せず、クレーム本体のブーム先部よりワイヤを介して懸吊されるクレーンフック80のみを示す。
【0076】
また特に本実施形態では、第1ブームB1基部の枢軸J1の軸線に沿う所定方向(以下、単にブーム列BTの幅方向という)で間隔をおいて並ぶ一対の第1取付部T1の組が固定台31に、上記幅方向と直交する水平方向に間隔をおいて2組(即ち固定台31の前後左右の都合4カ所に)配設される。尚、上記一対の第1取付部T1の組は、3組以上設けてもよい。
【0077】
而して、ブーム列BTを縦向き姿勢としてブーム装置30をクレーンで第1索条W1を介して吊り上げる場合に、ブーム支持台BSを、相互に間隔をおいて少なくとも3箇所以上に分散する第1取付部T1を介して同数の第1索条W1で吊り上げるようにすれば、ブーム装置30を極力安定した鉛直姿勢で吊り上げ可能となる。
【0078】
また各々の第1取付部T1は、例えば固定台31に各々固着した4つの支持ブラケット41に設けた支持孔42付きの支持壁41wと、この支持壁41wに着脱可能に連結される連結具40とを備えており、その連結具40は、支持壁41wを挟む一対の腕部43aを有するU字状の連結フック43と、両腕部43a及び支持壁41wの支持孔42を相対回動可能に貫通する取付軸44とを有する。その取付軸44の一端部には、一方の腕部43aに係合するストッパ兼用の撮み44aが一体に連設されており、また取付軸44の他端部には、他方の腕部43aに係合する抜け止め部材45(例えば割りピン)が係脱可能に係止される。
【0079】
而して、第1取付部T1に第1索条W1の目玉状の被連結部51aを取付けるには、例えば割りピン45を外して取付軸44を支持壁41wより引き抜くことにより連結フック43を支持ブラケット41から取り出し、これを第1索条W1の被連結部51aに連結(挿通)してから、連結フック43を先刻とは逆の手順で、取付軸44を介して支持ブラケット41に再度、取付ければよい。この場合、取付軸44は、これが連結フック43にセットされた状態で連結フック43の両腕部43a間の隙間を閉じるロック部材の機能を果たし、これにより、連結フック43(従って第1取付部T1)と、第1索条W1端部の被連結部51aとの連結状態を確実に保持する。
【0080】
尚、第1取付部T1に第1索条W1の被連結部51aを連結する連結具40の構造は、実施形態に限定されず、少なくとも固定台31(支持ブラケット41)に取付けられて第1索条W1の被連結部51aに対し随時に着脱可能な連結構造であればよい。例えば、連結具40の不図示のバリエーションとして、フック開口部が常時開放状態にある鉤状の連結フックや、或いは、フック本体に、フック開口部を開閉可能な外れ止め用ストッパ片を軸支し且つこのストッパ片を、フック開口部を閉じる位置に常時弾発付勢したストッパ片付きフックを連結具として用いてもよい。
【0081】
ところで以上説明した第1取付部T1は、ブーム支持台BSの特に固定台31に支持ブラケット41を介して設けられるが、固定台31に直接設けてもよい。また第1取付部T1を、固定台31に設ける代わりに、旋回台32に直接又はブラケット等の支持部材を介して設けてもよい。
【0082】
また第1ブームB1の途中には、ブーム列BTが横向き姿勢にある状態でブーム装置30をクレーンで第2索条W2を介して吊り上げる際に使用され且つ第2索条W2に連結可能な第2取付部T2が設けられる。尚、第2取付部T2に連結される第2索条W2は、第1索条W1と同様、両端部に目玉状の被連結部52aを有する1条のワイヤ52(図15参照)で構成される。
【0083】
第2取付部T2の設置部位は、ブーム列BTの横向き姿勢でブーム装置30をクレーンで第1,第2索条W1,W2を介して吊り上げる際に、ブーム装置30全体の重心位置(図15の参照符号Gを参照)が、ブーム列BTの長手方向で第1,第2取付部T1,T2の中間位置なるような部位に設定される。
【0084】
また第2取付部T2は、例えば第1ブームB1の中間部を上方より跨ぐ連結アーム46と、その連結アーム46の上部支持壁46wに着脱可能に連結した連結具40とを備えており、連結アーム46の二股状をなす一対の脚部46aは、第1ブームB1の左右側壁にそれぞれ回動可能に軸支46pされる。連結具40は、前記した第1取付部T1の連結具40と同一構造であり、即ち、上部支持壁46wに設けた支持孔に取付軸44を介してU字状の連結フック43が回動可能に支持される。
【0085】
そして、取付軸44を取り外して連結フック43を上部支持壁46wより分離した状態で、その連結フック43を第2索条W2の目玉状の被連結部51aに係止させてから取付軸44を介して上部支持壁46wに再び取付けるようにすれば、第2索条W2を連結具40及び連結アーム46を介して第1ブームB1の上部支持壁46wに着脱可能に連結することができる。尚、第2取付部T2の連結具40は、第1取付部T1と同様、実施形態に限定されず、例えば、第1取付部T1で説明した不図示のバリエーションも採用可能である。
【0086】
而して、図15で明らかなように、ブーム列BTが横向き姿勢にある状態でブーム装置30をクレーンで第1,第2索条W1,W2を介して吊り上げる際に、本実施形態では、第1索条W1が側面視でブーム支持台BSの第1ブームB1に対する回動軸支部(枢軸J1)の軸線よりも第1ブームB1の先部側を通るように、ブーム支持台BSに対する第1取付部T1の配設位置が設定される。この場合、図15の図示例では、第1索条W1を第1ブームB1の先部側(図15で右側)の第1取付部T1に連結しているが、その反対側(図15で左側)の第1取付部T1に連結してもよい。
【0087】
尚、第1取付部T1の上記した配設位置の設定は、後述するように上記横向き姿勢でブーム装置30を吊り上げる際にブーム支持台BSに対しブーム列BTが開き揺動するのを効果的に抑制する観点から定められるが、そのような抑制効果を重視しない場合は、第1索条W1が側面視で上記回動軸支部(枢軸J1)よりも外側、即ち図15で左側を通るように、ブーム支持台BSに対する第1取付部T1の配設位置を設定してもよい。
【0088】
さらに第1ブームB1の基部には、不使用時の第2索条W2を第2取付部T2と協働して第1ブームB1に保持するための第3取付部T3がそれぞれ設けられる。その第3取付部T3は、例えば第1ブームB1の基部上面に突設された支持孔48付きの上部支持壁49と、その上部支持壁49に着脱可能に連結した連結具40とを備える。この連結具40もまた、前記した第1取付部T1の連結具40と同一構造であり、即ち、上部支持壁49wに設けた支持孔に取付軸44を介してU字状の連結フック43が回動可能に支持される。尚、第3取付部T3の連結具40もまた実施形態に限定されず、例えば第1取付部T1で説明した不図示のバリエーションを採用可能である。
【0089】
尚また、上記した第3取付部T3は、省略可能である。その場合、コンクリート打設作業時には不要となる第2索条W2を第2取付部T2(第1ブームB1)から取り外しておき、またデストリビュータDの組立・解体時には第2索条W2を第2取付部T2に取付けて使用すればよい。
【0090】
次に本実施形態のコンクリート供給用デストリビュータDを使用して、ブーム列BTが縦向き姿勢にある状態でブーム装置30をクレーンで複数の第1索条W1を介して吊り上げる際に使用可能なブーム装置吊り上げ用補助装置の一例について、図17図18を参照して説明する。
【0091】
即ち、補助装置は、図17で示すように全ての第1取付部T1に各々第1索条W1を連結し且つそれら第1索条W1を介して縦向き姿勢でブーム装置30をクレーンで吊り上げる際に、前記した少なくとも1つの組の一対の第1索条W1の途中に両端部が着脱可能に連結される吊り棒50を備える。この吊り棒50は、ブーム列BTの、所定方向の最大幅よりも長く形成されて剛性を有する棒状体で構成される。また吊り棒50の第1索条W1との連結位置は、吊り棒50が縦向き姿勢のブーム装置30の上端近くでブーム装置30を跨ぎ得る高さ位置となるよう設定される。吊り棒50の両端部には、一対の三角状支持板55が固定(例えば溶接)され、支持板55には、一対の支持孔56が互いに間隔をおいて設けられる。
【0092】
また第1索条W1は、吊り棒50よりも上側の第1索条部分W1uと、下側の第2索条部分W1dとに分割構成される。それら第1,第2索条部分W1u,W1dの被連結部51aは、対応する支持板55に上下一対の連結具40を介して各々着脱可能に連結される。その上下一対の連結具40は、前記した第1取付部T1の連結具40と各々同一構造であり、即ち、支持板55の一対の支持孔56に取付軸44を介してU字状の連結フック43が回動可能に支持される。従って、この吊り棒50に用いる連結具40の着脱操作も、第1取付部T1の連結具40と同様である。
【0093】
尚、この吊り棒50に用いる連結具40の構造もまた、実施形態に限定されず、例えば第1取付部T1で説明した不図示のバリエーションを採用可能である。
【0094】
更に補助装置は、上記したようにブーム列BTが縦向き姿勢にある状態でブーム装置30をクレーンで複数の第1索条W1を介して吊り上げる際に、上下方向で吊り棒50と第1取付部T1との間で少なくとも2本の第1索条W1の途中(図示例ではブーム装置30の上端寄りの位置)に着脱可能に連結され且つ全ての第1索条W1及びブーム列BTを囲繞する環状支持体60を備える。
【0095】
この環状支持体60は、ブーム列BTの縦向き姿勢でブーム装置30を複数の第1索条W1を介して吊り上げる際に、第1取付部T1を傾動支点としてブーム列BTが所定角度以上、傾動するのを抑制するためのものである。環状支持体60は、可撓性を有し且つ頑丈な環状体(例えば、無端状のワイヤロープ、チェーン等)で構成され、それの途中には、少なくとも2本の第1索条W1の途中(吊り棒50寄りの部位)に各々固定(例えばカシメ結合、溶接、ボルト止め等)された連結部材61が連結具40を介して着脱可能に連結される。
【0096】
環状支持体60の連結に用いる連結具40は、前記した第1取付部T1の連結具40と同一構造であり、即ち、連結部材61の支持孔62に取付軸44を介してU字状の連結フック43が回動可能に支持される。従って、この環状支持体60の連結に用いる連結具40の着脱操作も、第1取付部T1の連結具40と同様である。尚、環状支持体60に用いる連結具40の構造もまた、実施形態に限定されず、例えば第1取付部T1で説明した不図示のバリエーションを採用可能である。
【0097】
ところでブーム支持台BSの固定台31には、グリス注入部としてのグリスポンプGiと、このグリスポンプGiに単一のグリス基部配管GL0を介して接続される分配弁Vdと、グリス基部配管GL0(従ってグリスポンプGi)に分配弁Vdを介して並列に接続される複数のグリス配管即ち第1~第4グリス配管GL1~GL4とが固定、支持される。グリスポンプGiは、例えば所定量のグリスを貯溜可能なグリス保持部と、そのグリス保持部内の貯溜グリスを手動でグリス基部配管GL0に圧送可能なピストン等のグリス押込手段とを備えており、その構造は従来周知である。また分配弁Vdは、これに流入したグリスを第1~第4グリス配管GL1~GL4に等容量で分配するもので、その構造も従来周知である。
【0098】
第1~第4グリス配管GL1~GL4は大部分が可撓性を有しており、且つそれらの途中部分は相互に束ねられて固定台31の外側を上方に延び、更に旋回台32内および第1ブームB1の基部内を通る。その基部内から第1ブームB1の外側に出た第1~第4グリス配管GL1~GL4のうち、特に第1グリス配管GL1は、第1ブームB1の回動軸支部としての枢軸J1近傍まで延びて、その枢軸J1周辺の被潤滑部(例えば枢軸J1外周と軸受との嵌合部、並びに枢軸J1内周と前記第2中継管39との嵌合部)にグリスを供給可能である。
【0099】
また第1ブームB1の外側に出た第2~第4グリス配管GL2~GL4は、第1ブームB1に沿って固定されて第1ブームB1の先部まで延びる。そして、第1ブームB1の先部では、第2~第4グリス配管GL2~GL4のうち特に第2グリス配管GL2は、第1,第2ブームB1,B2の枢支連結部となる枢軸J2近傍まで延びて、その枢軸J2周辺の被潤滑部(例えば枢軸J2外周と軸受との嵌合部、並びに枢軸J2内周と前記第2中継管39との嵌合部)にグリスを供給可能である。一方、第3,第4グリス配管GL3,GL4は、第2ブームB2に沿って固定されて第2ブームB2の先部まで延びる。
【0100】
そして、第2ブームB2の先部では、その第3,第4グリス配管GL3,GL4のうち特に第3グリス配管GL3は、第2,第3ブームB2,B3の枢支連結部となる枢軸J3近傍まで延びて、その枢軸J3周辺の被潤滑部(例えば枢軸J3外周と軸受との嵌合部、並びに枢軸J3内周と前記第2中継管39との嵌合部)にグリスを供給可能である。一方、第4グリス配管GL4は、第3ブームB3に沿って固定されて第3ブームB3の先部まで延びる。また第3ブームB3の先部では、第4グリス配管GL4が第3,第4ブームB3,B4の枢支連結部となる枢軸J4近傍まで延びて、その枢軸J4周辺の被潤滑部(例えば枢軸J4外周と軸受との嵌合部、並びに枢軸J4内周と前記第2中継管39との嵌合部)にグリスを供給可能である。
【0101】
かくして、第1~第4GL1~GL4は、ブーム列BTの複数のブームB1~B4の各被潤滑部までそれぞれ延びて、それら被潤滑部にグリスを供給する。
【0102】
ところで図12でも明らかなように、第1~第4グリス配管GL1~GL4の途中からは、第1~第4バックアップ配管GE1~GE4が個別に分岐している。それらバックアップ配管GE1~GE4は、対応するバックアップ配管GE1~GE4にグリスを個別に注入可能なバックアップ用グリス注入部としてのグリス注入口GEi1~GEi4を有する。各々のグリス注入口GEi1~GEi4には、これを平時は閉塞する手動式の栓体が付設され、各栓体は、グリス注入口GEi1~GEi4を随時に開閉可能である。また第1~第4グリス配管GL1~GL4には、それらグリス配管GL1~GL4の、バックアップ配管GE1~GE4が分岐する分岐部と分配弁Vdとの間で、グリス配管GL1~GL4から分配弁Vdへのグリス逆流を阻止する逆止弁Vcが配設される。
【0103】
上記したグリス供給構造によれば、共通1個のグリスポンプGiより分配弁Vdを介して複数のグリス配管GL1~GL4に一斉にグリスを供給可能となる。これにより、ブーム列BTをブーム支持台BS上に取付けたままの状態でも(即ち各ブームB1~B4を降ろさなくても)、ブーム列BTにおける複数のブームB1~B4の被潤滑部に対しグリスを迅速且つ容易に補給できる。
【0104】
次に図14図19を併せて参照して、実施形態のデストリビュータDの使用例を説明する。
【0105】
デストリビュータDを例えばビルの建設現場で使用する場合には、最下層(例えば1階)の鉄筋コンクリート製床スラブFS1を予め構築しておき、床スラブFS1は、これの上下の空間を連通させる貫通孔Hを有する。そして、床スラブFS1上にデストリビュータDを組立てて据え付ける組立工程と、その据え付けたデストリビュータDを用いて行う生コンクリートの打設作業に基づいて、上側の床スラブ及びこれに付随する壁体を構築する工程とを順次行う。
【0106】
このようにして上層の床スラブFS2,FS3等が構築されると、更に上層の床スラブ等を構築するためにデストリビュータD全体を、上層の床スラブ上に載せ替える工程(この工程を現場では「盛替え」と呼ぶ)を行う。そこで、上記したデストリビュータDの組立工程と盛替え工程について、順に説明する。
[組立工程]
先ず、図14(A)で例示したように、デストリビュータDのベース装置10をクレーンで懸吊して床スラブFS1と略同一レベルまで降ろすと共に、展開位置16Aのアウトリガ16を床スラブFS1上に載置し、このアウトリガ16を従来周知の固定手段(例えば、アウトリガ16を貫通するアンカボルト等)で固定する。
【0107】
次いで図14(B)で例示したように、予め別の場所で、梯子23、接続配管28及び作業台24を1又は2以上のマストMと共に一纏めに組立てたマスト装置20をクレーンで懸吊して、ベース装置10(ベースフレーム11の角筒部11b上)に載せ、結合用ブロック21,21′やボルト25を介してベース装置10に結合する。
【0108】
次いで、図14(C)で示すように、予め別の場所でブーム列BT及びブーム支持台BSの組立体として予め組立てたブーム装置30を、折り畳んだブーム列BTを略水平の横向き姿勢とした状態で、固定台31及び第1ブームB1上の第1,第2取付部T1,T2に第1,第2索条W1,W2の下端の被連結部51aをそれぞれ連結する。そして、それら第1,第2索条W1,W2の上部をクレーンで吊り上げて、図14(D)に示すようにマスト装置20の最上部のマストMの上端部に載せ、結合用ブロック21,21′やボルト25を介して最上部のマストMに結合する。尚、この結合作業は、作業台24上に登った作業員がクレーンの操作員と連係して行う。
【0109】
その後、第1索条W1はクレーンフック80及び第1取付部T1より取外して別の保管場所に保管する。また第2索条W2は、これの上端側をクレーンから取外して第3取付部T3に付け替え、また下端側は第2取付部T2に連結状態のままとしておく。
【0110】
また、マストMに固定の接続配管28の下流端(上端)は、固定台31側の第1中継管38の上流端(下端)にジョイントを介して液密に接続され、その接続作業も作業台24上の作業員が行う。一方、接続配管28の上流端(下端)は、図示はしないが外部のコンクリートポンプから延びるコンクリート圧送管にジョイントを介して液密に接続される。これにより、コンクリートポンプからの生コンクリートを、接続配管28、第1,第2中継管38,39及び吹出チューブ37に順次、圧送供給できるようになる。
【0111】
かくして、最下層の床スラブFS1上へのデストリビュータDの設置が終了するので、この状態からデストリビュータDは、ブーム列BTのブームB1~B4相互を適宜屈折させ且つ旋回台32(従ってブーム列BT)を旋回させることで、ブーム列BT先部の吹出チューブ37から生コンクリートを所望の打設場所に供給可能となる。これにより、次の階層の床スラブFS2や壁体、さらには次の階層の床スラブFS3や壁体を順次に構築可能となる。
【0112】
このようにして上層の床スラブFS2,FS3や壁体が積み上がると、更に上層の床スラブFS4等を構築するためにデストリビュータD全体を、例えば床スラブFS2上に載せ替える次の盛替え工程に移行する。
[盛替え工程]
本工程では、例えば、マストMに固定の接続配管28を前記コンクリートポンプに連なるコンクリート圧送管より切り離すと共に、アウトリガ16の床スラブFS1への固定を解除する。そして、図16(E)に示すように、折り畳んだブーム列BTを略鉛直の縦向き姿勢になるまで起立揺動させ、この状態のままブーム支持台BS(固定台31)の4つの第1取付部T1に4条の第1索条W1の下端の被連結部51aをそれぞれ連結する。そして、それら第1索条W1の上端の被連結部51aをクレーンフック80に係止させて、クレーンでデストリビュータD全体を吊り上げる。
【0113】
次いで、図16(F)に示すように、アウトリガ16を格納位置16Bまで回動させ、これにより、デストリビュータDの上昇時に、階上の床スラブFS2の貫通孔H周辺部にアウトリガ16が干渉しないようにする。そして、ベース装置10が階上の床スラブFS2と略同一レベルとなるまで、デストリビュータD全体をクレーンで吊り上げ、上昇させる。
【0114】
その上昇後は、図16(G)に示すように、アウトリガ16を再び展開位置16Aまで展開させた後、階上の床スラブFS2上に載置、固定する。次いで、全部の第1索条W1の下端を固定台31の第1取付部T1より取り外して、別の保管場所に保管しておく。またマストMに固定の接続配管28の上流端(下端)には、下方に延びる延長配管28′の上端を接続、固定し、その延長配管28′の途中は、階下の床スラブ(例えば床スラブFS2)の貫通孔H周辺の梁部等に固定手段81を介して支持される。そして、延長配管28′の下端に、前記コンクリートポンプに連なるコンクリート圧送管を接続すれば、生コンクリートを接続配管28、第1,第2中継管38,39及び吹出チューブ37に順次、圧送供給できるようになる。
【0115】
かくして、デストリビュータDの上層階への盛り替え作業が終了するので、この状態からデストリビュータDは、ブーム列BTの第1ブームB1を伏倒させつつブームB1~B4相互を適宜屈折させ且つ旋回台32(従ってブーム列BT)を旋回させることで、ブーム列BT先部の吹出チューブ37から生コンクリートを上層階での所望の打設場所に供給可能となる。これにより、上層階の床スラブFS4や壁体を構築可能となる。
【0116】
而して、上記したような盛り替え工程を床スラブFSの階層が上がるのに応じて順次行うことで、同じデストリビュータDを用いて中層のビルや、高層のビルを無理なく建設可能となる。
【0117】
以上説明した本実施形態によれば、折り畳んだブーム列BTが横向き姿勢又は縦向き姿勢にある状態でブーム装置30をクレーンで第1索条W1を介して吊り上げる際に使用されて第1索条W1に連結可能な第1取付部T1が、ブーム支持台BS(図示例では固定台31)に設けられるので、ブーム列BTとブーム支持台BSとを一纏めに組立てた組立体の状態でブーム装置30をクレーンで第1索条W1を介して吊り上げ可能となる。これにより、従来のように高いマスト装置20上でブーム装置30を組立てる作業を行う必要はなくなり、それだけブーム装置30の組立作業性が良好となる。
【0118】
また特にブーム列BTが縦向き姿勢の状態でブーム装置30を吊り上げる所謂盛り替え作業時には、ブーム支持台BSの複数の第1取付部T1及び複数の第1索条W1を介してブーム装置30全体が、特にブーム支持台BSにおいて吊り上げられるため、その吊り上げの際のブーム列BTの基端部(第1ブームB1基部)とブーム支持台BSとの接続部の荷重負担を、従来のようにブーム列BTで吊り上げる場合と比べ効果的に軽減できる。これにより、その接続部の構造簡素化、延いてはコスト節減が図られる。
【0119】
また実施形態のブーム支持台BSは、マスト装置20の上部に固定される固定台31と、その固定台31に旋回軸J5回りに旋回可能に支持されて、第1ブームB1の基部を起伏回動可能に軸支する旋回台32とを備え、そのうち固定台31に第1取付部T1が設けられる。これにより、ブーム支持台BSのうち特に固定台31を第1索条W1で吊り上げる形となるため、旋回台32を第1索条W1で吊り上げる場合と比べ、固定台31を旋回台32に旋回可能に支持する旋回機構(即ち旋回軸J5、旋回軸受31b等)の荷重負担が軽減され、それだけ旋回機構の構造簡素化、延いてはコスト節減が図られる。
【0120】
また実施形態では、ブーム列BTが特に横向き姿勢にある状態でブーム装置30をクレーンで第2索条W2を介して吊り上げる際に使用されて第2索条W2に連結可能な第2取付部T2が、第1ブームB1の途中に設けられる。これにより、ブーム列BTが横向き姿勢にある状態でブーム装置30をクレーンで第1,第2索条W1,W2を介して(従って水平方向に長い支持スパンを以て)吊り上げ可能となるため、吊り上げ支持の安定が図られ、作業性が良好となる。
【0121】
更に実施形態では、ブーム列BTが横向き姿勢にある状態でブーム装置30をクレーンで第1,第2索条W1,W2を介して吊り上げる際に、側面視でブーム支持台BSの第1ブームB1に対する回動軸支部(即ち枢軸J1)の軸線よりも第1ブームB1の先部側を第1索条W1が通るように、ブーム支持台BSに対する第1取付部T1の配設位置が設定される。これにより、ブーム列BTが横向き姿勢にあるブーム装置30の吊り上げ過程で、第1索条W1が第1取付部T1を経てブーム支持台BSに加わる吊り上げ荷重がブーム支持台BSに及ぼすモーメントを以て、ブーム支持台BSに対しブーム列BTが開き揺動するのを効果的に抑制できるため、上記吊り上げ荷重を利用した簡単な開き抑制構造で作業の安全性向上が図られる。
【0122】
また第1ブームB1の基部には、不使用時の第2索条W2を第2取付部T2と協働して第1ブームB1に保持するための第3取付部T3がそれぞれ設けられる。これにより、第2索条W2の不使用時にこれの一端を第2取付部T2に連結したままにしても、第2索条W2の他端側を第3取付部T3に連結保持させることにより、第2索条が打設作業の邪魔になるのを回避しながら第2索条を第1ブームに保持しておくことができる。しかも、次に第2索条W2を使用する際に、これの一端を第2取付部T2に連結する手間が省かれ、それだけ作業能率アップが図られる。
【0123】
また特に前記盛り替え作業を行うために、ブーム列BTが縦向き姿勢にある状態で全ての第1取付部T1に各々第1索条W1を連結し且つそれら第1索条W1を介して縦向き姿勢のブーム装置30をクレーンで吊り上げる際に、ブーム列BTの幅方向に並ぶ一対の第1索条W1の途中(特にブーム列BTの上端部よりも上位)に、幅方向でブーム列の最大幅より長い吊り棒50の両端部を連結することが望ましい。この場合、吊り棒50の両端部が途中に連結された一対の第1索条W1は、その両第1索条W1間に介在する吊り棒50の突っ張り作用を受けることにより、その両第1索条W1の、ブーム列BTへの過度の干渉が確実に防止される。
【0124】
また上記盛り替え作業のために、第1索条W1を介して縦向き姿勢のブーム装置30をクレーンで吊り上げる際に、上下方向で吊り棒50と第1取付部T1との間で少なくとも1本の第1索条W1の途中(特に吊り棒50寄り部位)に、全ての第1索条W1及びブーム列BTを囲繞する環状支持体60を連結することが望ましい。この場合、環状支持体60は、第1取付部T1を傾動支点としてブーム列BTが過度に(即ち所定角度以上)傾動するのを抑制できるため、ブーム装置30の吊り上げの際にブーム列BTが傾き過ぎて転倒するのを効果的に防止可能となる。
【0125】
尚、以上説明した縦向き姿勢のブーム装置30をクレーンで吊り上げる際に、吊り棒50及び環状支持体60の両方の使用を省略してもよい。また環状支持体60は使用しないで吊り棒50のみを使用することも可能である。更に吊り棒50は使用しないで環状支持体60のみを使用することも可能であり、この場合、例えばブーム支持台BS側の1つの第1取付部T1を介して1本の第1索条W1だけで縦向き姿勢のブーム装置30を吊り、その際に第1索条W1に連結した環状支持体60でブーム装置30の倒れを阻止するようなことも可能である。
【0126】
尚また、前記[盛替え工程]の実行に当たり、実施例では図16に示すように第1索条W1を介して縦向き姿勢のブーム装置30をクレーンで吊り上げるようにした作業形態を示した。しかしブーム装置30を横向き姿勢のまま第1,第2索条W1,W2を介して吊り上げても、構築済みの構造物(例えば上層の床スラブ等)とブーム装置30が干渉しなければ、ブーム装置30を横向き姿勢のまま盛り替え作業を行ってもよい。
【0127】
ところで図20図30には、前記したデストリビュータDのブーム装置30を、ブーム列BTを横向き姿勢とした状態にして運搬車両Vで運搬するのに使用するブーム装置用運搬台Uの一例と、その使用態様の一例が示される。
【0128】
この運搬台Uは、ブーム列BTが折り畳まれて横向き姿勢(図22図23を参照)にあるブーム装置30の下側で、ブーム装置30の長手方向に略沿うように延び且つ運搬車両Vの荷台Va(図30参照)に積載可能なメインフレーム90と、メインフレーム90に固定されてブーム支持台BSを結合、固定可能なブーム支持台支持部Z0と、メインフレーム90にその長手方向に間隔をおいて固定される第1,第2ブーム列保持部Z1,Z2とを備える。この場合、メインフレーム90の長手方向(前後方向)は、横向き姿勢のブーム装置30の長手方向と略一致するが、特に本明細書では、メインフレーム90の、長手方向でブーム支持台BS側の端部を「前端部」と呼び、またその反対側の端部を「後端部」と呼ぶ。
【0129】
而して、第1ブーム列保持部Z1は、横向き姿勢のブーム列BTの先部(即ち第1ブームB1の先部)寄りの位置でブーム列BTの下部(具体的には第4ブームB4の中間部)を保持すべくメインフレーム90の後端部に設置される。また、第2ブーム列保持部Z2は、横向き姿勢のブーム列BTの基部(即ち第1ブームB1の基端)寄りの位置でブーム列BTの下部(より具体的には第4ブームB4の中間部)を保持すべくメインフレーム90の前端寄りの中間部に設置される。
【0130】
メインフレーム90は、図20図21で明らかなように、横向き姿勢のブーム列BTの長手方向に各々延びて互いに平行する左右一対の縦フレーム91と、その両縦フレーム91間を一体に結合(例えば溶接)し且つ前記長手方向に間隔をおいて並ぶ複数の横フレーム92とを有して、平面視で梯子状の剛体枠で構成される。図24で明らかなように、前側2本の横フレーム92間には、その間を一体に接続するよう縦フレーム91に沿って延び且つ縦フレーム91の下面に接合、固定(例えば溶接)される左右一対の補強枠93が配設される。
【0131】
図25で明らかなように、横フレーム92及び補強枠93の下端面は、同一レベルに形成されて接地面として機能し、例えば、運搬台Uが地面に保管される場合には前記下端面が地面に載置され、また図30に示すように運搬車両Vの荷台Va上に運搬台Uが搭載される場合は、前記下端面が荷台Va上に載置される。尚、実施形態において、縦・横フレーム91,92及び補強枠93は、何れも横断面コ字状の枠材で構成されるが、その他の断面形態(例えばI字状)の枠材を使用してもよい。
【0132】
左右の補強枠93には、前側2本の横フレーム92に沿って延びる前後一対の支持板94の両端が突き合わせ溶接され、その両支持板94は、各々横断面L字状をなし且つ前側2本の横フレーム92の相対向する側面に一側縁部が隣接、固定(例えば溶接)される。各支持板94は、それと補強枠93と縦フレーム91とに渡って溶接される三角形状の補強板95により支持強度が高められる。
【0133】
前後の支持板94の水平な上面は、ブーム装置30の運搬時にブーム支持台BSの固定台31の座面となるものであって、そこに固定台31の外周下部に固定の結合用ブロック21′の下端面が載置、固定される。その固定は、例えば結合用ブロック21′のボルト挿通孔とそれに対応して各支持板94に設けた複数のボルト挿通孔94hとを貫通するボルト25と、ボルト挿通孔94hに対応して各支持板94の裏面に溶接され且つボルト25を螺挿させるウエルドナット25とを用いて行われる。
【0134】
而して、前後の支持板94は、前側2本の横フレーム92、左右の補強枠93及び補強板95、並びにボルト25・ウエルドナット25と協働してブーム支持台BSをメインフレーム90上に着脱可能に結合、固定するブーム支持台支持部Z0を構成する。
【0135】
また図20図27(C)で明らかなように、メインフレーム90の後端部(より具体的には最後端の横フレーム92の左右中央部)には、複数の枠材で枠組みされた剛体枠よりなる第1支持枠96が立設、固定(例えばボルト結合又は溶接)される。この第1支持枠96の上部は、横向き姿勢にあるブーム列BTの先部寄りの中間部(第4ブームB4)下半部を嵌合、保持する上向きの凹溝状保持面96aを有しており、その保持面96aの底面には、第4ブームB4の下面が接離可能な硬質ゴム材よりなる緩衝用ゴムシート97が接合、固定(例えばボルト結合、接着)される。
【0136】
而して、このゴムシート97及び第1支持枠96は互いに協働して、横向き姿勢のブーム列BTの先部寄りの位置でブーム列BTの下部(第4ブームB4の下半部)を嵌合、保持する第1ブーム列保持部Z1を構成する。
【0137】
更に図20図27(B)で明らかなように、メインフレーム90の中間部(より具体的には前後中央よりも前端寄りの横フレーム92の左右中央部)には、複数の枠材で枠組みされた剛体枠よりなる第2支持枠98が立設、固定(例えばボルト結合又は溶接)される。この第2支持枠98の上部枠の頂面には、円筒状に形成されて左右方向に延びる硬質ゴムよりなる緩衝保持筒99が固定(例えば下端をボルト結合、接着)される。この緩衝保持筒99は、横向き姿勢にあるブーム列BTの下部(第4ブームB4)下面を載置、保持可能であり、その保持状態で多少の弾性変形する。
【0138】
而して、緩衝保持筒99及び第2支持枠98は互いに協働して、横向き姿勢にあるブーム列BTの基部寄りの位置でブーム列BTの中間部(第4ブームB4)の下面を載置、保持する第2ブーム列保持部Z2を構成する。
【0139】
ところでメインフレーム90には、ブーム列BTが折り畳まれて横向き姿勢にある状態のブーム装置30を運搬台Uを介してクレーンで吊り上げる際に使用されて吊上げ用索条Wを取付可能な4つの索条取付部T5,T6が、メインフレーム90の前後左右に相互に間隔をおいて配設される。
【0140】
その前側の左右一対の索条取付部T5は、これの少なくとも一部がブーム支持台支持部Z0の一部とメインフレーム90の長手方向で同一の位置に存する(即ち前記長手方向の位置がオーバラップ、換言すれば重なり合う)支持台側索条取付部として機能し、一方、後側の左右一対の索条取付部T6は、第1,第2ブーム列保持部Z1,Z2間で吊り上げ用索条Wを取付可能なブーム列側索条取付部として機能する。
【0141】
尚、前側の左右一対の索条取付部T5は、これの少なくとも一部が、ブーム支持台支持部Z0の一部と前記長手方向で同一の位置ではなくてもその近傍位置に存するように配置してもよい。
【0142】
左右の支持台側索条取付部T5は、メインフレーム90の前端寄りの横フレーム92の左右両端部の上面にそれぞれ立設、固定された支持孔92bh付きの支持壁92bと、この支持壁92bに着脱可能に連結される連結具40とを備える。一方、左右のブーム列側索条取付部T6は、メインフレーム90の後端に位置する横フレーム92の左右両端部の上面にそれぞれ立設、固定された支持孔92bh付きの支持壁92bと、この支持壁92bに着脱可能に連結される連結具40とを備える。
【0143】
それら索条取付部T5,T6で用いる連結具40の構造・機能は、ブーム装置30を直接吊り上げるためにブーム支持台BS及びブーム列BTに設けた前述の第1,第2取付部T1,T2で用いた、U字状連結フック43・取付軸44を主要部とする連結具40(図15の部分拡大図参照)と基本的に同一構造であるので、それ以上の説明は省略する。
【0144】
次に図28図29を参照して、支持台側索条取付部T5やブーム列側索条取付部T6にそれぞれ連結される前後の運搬台吊上げ用索条Wの一例を説明する。尚、前後の運搬台吊上げ用索条Wは何れも同様の構成であるので、前側の吊上げ用ワイヤWについてのみ説明する。
【0145】
即ち、前側の吊上げ用ワイヤWは、左右の支持台側索条取付部T5に連結具40を介してそれぞれ連結される左右の下部索条Wdと、クレーンフック80に上端が連結、係止される左右の上部索条Wuとを備える。そして、左右の上,下部索条Wu,Wdの相互間は、左右方向に延びる間隔保持バー100を介して接続され、その接続のために間隔保持バー100の左右両端部には、支持孔を各々有する上向き支持壁101及び下向き支持壁102が突設される。そして、上向き支持壁101及び下向き支持壁102には、前述の第1,第2取付部T1,T2で用いた連結具40と基本構成を同じくする連結具40が連結され、その連結具40を介して左右の下部索条Wdの上端部と左右の上部索条Wuの下端部とがそれぞれ連結される。
【0146】
而して、クレーンフック80で吊上げ用ワイヤWを介して運搬台90を吊り上げる際には、左右の下部索条Wdと左右の上部索条Wuとの各間の、左右方向の相互間隔が間隔保持バー100の突っ張り作用に基づき十分且つ一定に確保される。これにより、左右の下部索条Wdが運搬台U上のブーム列BTやブーム支持台BSと接触することが効果的に回避される。
【0147】
尚、上記した支持台側索条取付部T5・ブーム列側索条取付部T6や吊上げ用索条W中間の間隔保持バー100で用いる連結具40の構造は、実施形態に限定されず、少なくとも支持壁92bに取付けられて吊上げ用索条Wの被連結部51a′に対し随時に着脱可能な連結構造であればよい。例えば、連結具40の不図示のバリエーションとして、フック開口部が常時開放状態にある鉤状の連結フックや、或いは、フック本体に、フック開口部を開閉可能な外れ止め用ストッパ片を軸支し且つこのストッパ片を、フック開口部を閉じる位置に常時弾発付勢したストッパ片付きフックを連結具として用いてもよい。
【0148】
実施形態のコンクリート供給用デストリビュータDを、建設現場から離れた製造工場、整備工場或いは保管場所等から建設現場まで移送するに際しては、例えば図30に例示したような運搬車両Vが使用される。そして、ブーム支持台BSと横向き姿勢のブーム列BTとが予め組まれた組立体であるブーム装置30をクレーンで索条Wを介して吊り上げ・吊り降ろすことで、運搬台上にブーム装置30を載置、固定する。更にこのブーム装置30を載せた運搬台をクレーンで索条Wを介して吊り上げ・吊り降ろすことで、運搬車両Vの荷台Va上に運搬台を載置、固定する。
【0149】
その運搬台へのブーム装置30の載置、固定の際に、メインフレーム90のブーム支持台支持部Z0においてはブーム支持台BSの固定台31の下端部がボルト25で締結、固定される一方、第1,第2ブーム列保持部Z1,Z2においてはブーム列BTの下部(第4ブームB4)が緩衝用ゴムシート97及び緩衝保持筒99を介して載置、保持される。これにより、運搬台上において、ブーム装置30のうちブーム支持台BS(固定台31)を強固に固定する一方、横向き姿勢のブーム列BTの中間部を安定よく保持可能となり、また運搬中の振動でブーム列BTが多少振動しようとしても緩衝用ゴムシート97及び緩衝保持筒99の緩衝作用で振動衝撃を効果的に緩和可能となる。
【0150】
また運搬台の荷台Vaへの固定手段としては、図示はしないがトラックの荷台に重量積載物を強固に固定するのに使用される従来周知の固定手段(例えば緊締具付きの固縛用索条、固縛用クランプ、ボルト等)が適宜採用可能である。また荷台Va側には、上記固定手段と協働して運搬台を荷台Vaにより強固に固定するための係止爪やストッパ突起等を必要に応じて設けてもよい。
【0151】
尚、運搬台の縦フレーム91上面には、支持孔91bh付きの支持ブラケット91bが複数、突設されており、その支持孔91bhに上記固定手段の索条を通す等することで、支持ブラケット91bを運搬台の固定に利用可能である。尚また、支持ブラケット91bは、運搬台のブーム支持台支持部Z0上にブーム支持台BSをより確実に固定するための固定手段(例えば、緊締具付きの固縛用索条)を係止させるのに利用してもよい。


【0152】
また実施形態の運搬台Uは、ブーム列BTが横向き姿勢にあるブーム装置30の下側で、ブーム装置30の長手方向に略沿うように延び且つ運搬車両Vの荷台Vaに積載可能なメインフレーム90と、メインフレーム90に固定されてブーム支持台BSを結合、固定可能なブーム支持台支持部Z0と、メインフレーム90にその長手方向に間隔をおいて固定される第1,第2ブーム列保持部Z1,Z2とを備える。これにより、運搬車両Vに積載可能な共通1個のメインフレーム90上にブーム支持台支持部Z0とブーム列保持部Z1,Z2とを、相互の位置関係を適切に設定しつつ配設可能となるため、ブーム列BTが横向き姿勢のブーム装置30を最適姿勢でメインフレーム90上に支持でき、運搬車両Vの走行中もブーム列BTの振動が効果的に抑制され、特に基端側の第1ブームB1を起伏させる第1油圧シリンダC1の負荷軽減を図る上で有利となる。
【0153】
また実施形態の運搬台Uは、ブーム列BTを横向き姿勢とした状態のブーム装置30を運搬台Uを介してクレーンで吊り上げる際に使用されて吊り上げ用索条Wを取付可能な複数の索条取付部T5,T6がメインフレーム90に配備される。これにより、運搬台Uを介してブーム装置30をクレーンで吊り上げて運搬車両Vに積み込んだり降ろしたりすることができるため、ブーム装置30を直接吊り上げて運搬車両Vに積み降ろしする場合と比べ、積み降ろし時に第1油圧シリンダC1に作用する負荷をより軽減可能となる。
【0154】
この場合、特に支持台側索条取付部T5は、これの少なくとも一部と、ブーム支持台支持部Z0(従って該ブーム支持台支持部Z0上の固定台31の下端部)の一部とがメインフレーム90(従ってブーム装置30)の長手方向で同一の位置に存するよう配置される。この配置によれば、大重量のブーム支持台BSを、これを支えるブーム支持台支持部Z0の間近に存する支持台側索条取付部T5で効率よく吊り上げ可能となるため、その吊り上げの際のメインフレーム90の荷重負担を効果的に軽減可能となる。
【0155】
またメインフレーム90上で、長手方向に互いに間隔をおいて配置される2つのブーム列保持部Z1,Z2が配設され、その2つのブーム列保持部Z1,Z2間で吊り上げ用索条Wを取付可能なブーム列側索条取付部T6がメインフレーム90上に配備される。これにより、2つのブーム列保持部Z1,Z2間に位置するブーム側索条取付部T6を介してメインフレーム90(従って、その上に2つのブーム列保持部Z1,Z2を介して保持したブーム列BT)をバランスよく吊り上げ可能となり、吊り上げ作業を安定させることができる。
【0156】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施形態を実施可能である。
【0157】
たとえば、実施形態では、横向き姿勢にあるブーム装置30を運搬台Uを介してクレーンで吊り上げる場合に、メインフレーム90上の前・後の索条取付部T5,T6で索条Wを連結して吊り上げ作業を行うようにしたが、前・後の索条取付部T5,T6に加えて、補助的にブーム支持台BSの第1取付部T1でも索条Wを連結して吊り上げ作業を行うことも可能である。その場合、第1取付部T1でも吊り上げることで、ブーム装置30の第1シリンダC1への悪影響を回避しながらブーム装置30及び運搬台Uの吊り上げ作業を更に安定させることができる。
【0158】
また前記実施形態では、マストMの下端部に設けた結合用ブロック21′の下端面が、ブーム支持台支持部Z0の支持板94の平坦な上面に載置され且つボルト25で結合されるものを示したが、その支持板94の平坦な上面に、結合用ブロック21′下端面の凹部22dに嵌合する位置ずれ防止用凸部を突設してもよい。
【0159】
また前記実施形態では、第2ブーム列保持部Z2でブーム列BTの中間部(第4ブームB4)が第2支持枠98上に緩衝保持筒99を介して実質的にフローティング支持するものを示したが、緩衝保持筒99のような弾性体を介さずに第2支持枠98(第2ブーム列保持部Z2)上にブーム列BTの中間部(第4ブームB4)に当接、支持させるようにしてもよい。
【0160】
また前記実施形態では、縦列配置されて相互に結合される2個のマストMでマスト装置20を構成し、そのマスト装置20及びベース装置10ごとブーム装置30の盛替え作業を行うものを示したが、マストMの長さや現場の作業態様によっては、1個のマストMでマスト装置20を構成してもよく、或いは3個以上のマストMを縦列状態で結合してマスト装置20を構成してもよい。
【0161】
また前記実施形態では、相隣なるマストMの隣接端部外周に周方向に互いに間隔をおいて固定した各複数の結合用ブロック21,21′相互を上下に隣接させて上下方向に対面、当接させ、その当接面相互をボルト25で結合するものを示したが、その結合手段としては、ボルト以外の結合手段(例えば溶接、カシメ、ピン止め等)も実施可能である。また結合用ブロック21,21′相互をマストMの周方向に隣接させて周方向に対面、当接させ、その当接面相互をボルト25その他の結合手段で結合してもよく、この場合に当接面相互を結合するボルト又は固定ピンとしては、横向きの(即ち周方向を向く)ボルト又は固定ピンが使用される。
【0162】
また前記実施形態では、ブーム装置30におけるブーム列BTを、直列配置されて相互に屈折揺動可能な第1~第4ブームB1~B4で構成したものを示したが、ブーム列BTは、少なくとも2本のブームを繋げればよく、実施形態のブーム数に限定されない。
【0163】
また前記実施形態では、第1,第2索条W1,W2に関し、従来周知のチェーンブロック等の長さ調整補助具を使用していないが、そのような長さ調整補助具を用いて第1,第2索条W1,W2の少なくとも一部を、長さ調整可能としつつ第1,第2取付部T1,T2の少なくとも一部に連結してもよい。
【0164】
また前記実施形態では、デストリビュータDの[組立工程]において、図14(A)~(D)に示すようにベース装置10及びマスト装置20を現場に設置後、ブーム列BTが横向き状態のブーム装置30のブーム列BT(実施形態では第1ブームB1)と、ブーム旋回台BS(実施形態では固定台31)とを、クレーンで第1,第2索条W1,W2及び第1,第2取付部T1,T2を介して吊り下げ、その吊り上げ状態で固定台31と最上部のマストMとを結合するものを示した。これに対し、デストリビュータDの[組立工程]において、図14(A)(B)⇒図19(C′)(D′)に示す流れのように、ベース装置10及びマスト装置20を現場に設置後、ブーム列BTが縦向き状態のブーム装置30の固定台31をクレーンで4条の第1索条W1及び第1取付部T1を介して吊り下げ、その吊り下げ状態で固定台31と最上部のマストMとを結合するようにしてもよい。
【0165】
また前記実施形態では、デストリビュータDの[組立工程]において、図14(A)~(D)に示すように、ベース装置10を先ず現場の最下層(例えば地下又は一階)の床スラブFS1上に設置してから、その後のマスト装置20の構築や、その上のブーム装置30の組付けを行うようにしたものを示したが、デストリビュータDの[組立工程]よりも以前に(従ってデストリビュータDを使用しないで)、最下層より多少上位の低層(例えば実施形態でいう床スラブFS2又はFS3)をも構築した後で、その上位の床スラブFS2又はFS3上にベース装置10を最初に設置して[組立工程]を開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0166】
BS・・・・・ブーム支持台
BT・・・・・ブーム列
B1・・・・・複数のブーム、基端側のブームとしての第1ブーム
B2~B4・・複数のブームとしての第1~第4ブーム
C1・・・・・油圧シリンダとしての第1油圧シリンダ
D・・・・・・コンクリート供給用デストリビュータ
T5・・・・・索条取付部としての支持台側索条取付部
T6・・・・・索条取付部としてのブーム列側索条取付部
U・・・・・・運搬台
V・・・・・・運搬車両
W・・・・・・索条
Z0・・・・・ブーム支持台支持部
Z1,Z2・・ブーム列保持部としての第1,第2ブーム列保持部
10・・・・・ベース装置
20・・・・・マスト装置
30・・・・・ブーム装置
90・・・・・メインフレーム
図1
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