IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タムロンの特許一覧

<>
  • 特許-レンズユニット 図1
  • 特許-レンズユニット 図2
  • 特許-レンズユニット 図3
  • 特許-レンズユニット 図4
  • 特許-レンズユニット 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20241112BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20241112BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G03B30/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020217930
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102895
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井上 道夫
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏行
(72)【発明者】
【氏名】中井 正剛
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105791(JP,A)
【文献】特開昭61-180201(JP,A)
【文献】特開2003-195010(JP,A)
【文献】特開2009-210693(JP,A)
【文献】国際公開第2011/021450(WO,A1)
【文献】特開2020-098359(JP,A)
【文献】特開2018-105905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と、
前記鏡筒内に軸方向に沿って設けられた複数のレンズと、
前記複数のレンズのうち前記軸方向に隣接するいずれかのレンズ間に設けられた環状のスペーサと、を備え、
前記スペーサの外周部における前記いずれかのレンズ側に、径方向内側に窪んだ環状の段部が形成されており、
前記いずれかのレンズにおける前記スペーサ側の少なくとも外縁部は、前記軸方向に対して垂直な平面状に形成されており、前記スペーサの前記段部は、前記いずれかのレンズの外縁部に形成されたバリを収容する、ことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記いずれかのレンズは、ガラスモールド成形によって成形されていることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記鏡筒の前記軸方向の一端側に設けられ、径方向内側に突出し、前記複数のレンズのうち前記軸方向の一端側のレンズの外縁部に係止する係止部と、
前記鏡筒の前記軸方向の他端側に設けられ、前記複数のレンズを前記係止部側に押圧する環状の押さえ部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記いずれかのレンズの少なくとも一方のレンズ面は、凸曲面状に形成され、
前記段部は、前記スペーサの外周部における前記いずれかのレンズの前記一方のレンズ面側に設けられていることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記鏡筒内における前記軸方向の他端側のレンズと前記押さえ部材との間に設けられた環状のフィルタ保持部材と、
前記フィルタ保持部材に前記押さえ部材によって押圧された状態で設けられ、所定の周波数成分を除去する光学フィルタと、を備え、
前記押さえ部材の外縁部における前記光学フィルタ側のうち前記光学フィルタの外縁に対向する領域に、前記軸方向に窪んだ環状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラ(又は監視用カメラ)等のカメラに用いられるレンズユニットとして、特許文献1に示すものがある。特許文献1のレンズユニットは、略円筒状の鏡筒を備えており、鏡筒は、軸方向(レンズユニットの軸方向)に延びている。鏡筒内には、複数のレンズが軸方向に沿って設けられている。複数のレンズのうち軸方向に隣接するいずれかのレンズ間には、環状のスペーサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-98359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レンズが例えばガラスモールド成形によって成形され、レンズの外縁部が軸方向に対して垂直な平面状に形成されていると、そのレンズの外縁部の端にバリが発生することがある。このような場合には、レンズ間の間隔が変化したり、又はレンズが軸方向に対して傾動したりして、カメラの撮像品質が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、いずれかのレンズの外縁部にバリが形成されていても、レンズ間の間隔を一定に保ちながら、レンズの軸方向に対する傾動を防止して、カメラの撮像品質を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るレンズユニットは、鏡筒と、前記鏡筒内に軸方向(レンズユニットの軸方向)に沿って設けられた複数のレンズと、前記複数のレンズのうち前記軸方向に隣接するいずれかのレンズ間に設けられた環状のスペーサと、を備え、前記スペーサの外周部における前記いずれかのレンズ側に、径方向内側に窪んだ環状の段部(凹部)が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、いずれかのレンズの外縁部にバリが形成されていても、レンズ間の間隔を一定に保ちながら、レンズの軸方向に対する傾動を防止して、カメラの撮像品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るレンズユニットの側断面図である。
図2図1におけるA部の拡大断面図である。
図3図1におけるB部の拡大断面図である。
図4図2におけるC部の拡大断面図である。
図5図3におけるD部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。なお、明細書及び特許請求の範囲において、軸方向とは、レンズユニットの軸方向、換言すれば、鏡筒の軸方向のことであり、レンズユニットの光軸方向と同義である。径方向とは、レンズユニットの径方向、換言すれば、鏡筒の径方向のことである。径方向外側とは、径方向のうちの外側のことをいい、径方向内側とは、径方向のうちの内側のことをいう。図面中、「SD」は軸方向、「RDo」は径方向外側、「RDi」は径方向内側をそれぞれ指している。図面中、複数のレンズのハッチングは省略している。
【0010】
〔レンズユニット10の全体的な構成〕
図1~3を参照して、本実施形態に係るレンズユニット10の全体的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係るレンズユニット10の側断面図である。図2は、図1におけるA部の拡大断面図である。図3は、図1におけるB部の拡大断面図である。
【0011】
図1から3に示すように、本実施形態に係るレンズユニット10は、車載用カメラに用いられる光学ユニットである。車載用カメラのカメラ本体(不図示)に着脱可能である。なお、レンズユニット10が車載用カメラではなく監視用カメラ等の他のカメラに用いられてもよい。
【0012】
レンズユニット10は、略円筒状の鏡筒12を備えており、鏡筒12は、軸方向に延びている。鏡筒12の軸方向の一端側及び他端側は、それぞれ開口されており、鏡筒12は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の合成樹脂により構成されている。鏡筒12の軸方向の一端側には、半径方向内側に突出した環状の係止爪12kが形成されている。鏡筒12内における軸方向の他端側には、雌ネジ部12sが形成されている。鏡筒12の軸方向の一端側が被写体(物体)側を向き、鏡筒12の軸方向の他方側が結像側を向く。
【0013】
鏡筒12内には、第1レンズ14、第2レンズ16、第3レンズ18、第4レンズ20、及び第5レンズ22が軸方向の一端側から他端側にかけて軸方向に沿って設けられている。換言すれば、鏡筒12内には、複数のレンズ14,16,18,20,22からなるレンズ群24が設けられている。換言すれば、鏡筒12は、複数のレンズ14,16,18,20,22からなるレンズ群24を収容する。
【0014】
第1レンズ14は、軸方向の一端側に位置しており、第1レンズ14は、ガラス又はプラスチックにより構成されている。第1レンズ14の一方の外縁部を含む一方のレンズ面14a、及び第1レンズ14の他方の外縁部を含む他方のレンズ面14bは、それぞれ軸方向に対して垂直な平面状に形成されている。第1レンズ14の2つのレンズ面14a,14bの周縁には、それぞれ面取り加工が施されている。第1レンズ14の一方の外縁部は、鏡筒12の係止爪12kに係止する。換言すれば、鏡筒12の軸方向の一端側には、第1レンズ14の一方の外縁部に係止する係止部としての係止爪12kが設けられている。なお、第1レンズ14の2つのレンズ面14a,14bのうちのいずれかのレンズ面が凸曲面状又は凹曲面状に形成されるようにしてもよい。係止部として、鏡筒12の一部である係止爪12kを用いる代わりに、鏡筒12の外周面の軸方向の一端側に設けた環状のリテーナ(不図示)に形成され環状の係止爪(不図示)を用いてもよい。
【0015】
第2レンズ16は、第1レンズ14に接触した状態で軸方向に隣接しており、ガラス又はプラスチックにより構成されている。第2レンズ16の一方の外縁部を含む一方のレンズ面16a、及び第2レンズ16の他方の外縁部を含む他方のレンズ面16bは、それぞれ軸方向に対して垂直な平面状に形成されている。第2レンズ16の2つのレンズ面16a,16bの周縁には、それぞれ面取り加工が施されている。第2レンズ16の一方の外縁部は、第1レンズ14の他方の外縁部に面接触する。第2レンズ16の2つのレンズ面16a,16bのうちのいずれかのレンズ面が凸曲面状又は凹曲面状に形成されるようにしてもよい。
【0016】
第3レンズ18は、第2レンズ16に離隔した状態で軸方向に隣接しており、ガラスにより構成されている。第3レンズ18は、プレス金型(不図示)を用いたガラスモールド成形によって成形されている。第3レンズ18の一方の外縁部を含む一方のレンズ面18a、及び第3レンズ18の他方の外縁部を含む他方のレンズ面18bは、それぞれ軸方向に対して垂直な平面状に形成されている。第3レンズ18の外縁部の端には、第3レンズ18の成形時にバリ18tが形成される。なお、第3レンズ18の一方の外縁部を除く一方のレンズ面18a、及び第3レンズ18の他方の外縁部を除く他方のレンズ面18bのうちいずれかが凸曲面状又は凹曲面状に形成されるようにしてもよい。
【0017】
第4レンズ20は、第3レンズ18に離隔した状態で軸方向に隣接しており、ガラス又はプラスチックにより構成されている。第4レンズ20の一方の外縁部を含む一方のレンズ面20a、および第4レンズ20の他方の外縁部を含む他方のレンズ面20bは、それぞれ軸方向に対して垂直な平面状に形成されている。第4レンズ20の2つのレンズ面20a,20bの周縁には、それぞれ面取り加工が施されている。なお、第4レンズ20の2つのレンズ面20aが凸曲面状又は凹曲面状に形成されるようにしてもよい。
【0018】
第5レンズ22は、軸方向の軸方向の他端側に位置しており、かつ第4レンズ20に離隔した状態で軸方向に隣接している。第5レンズ22は、ガラス又はプラスチックにより構成されている。第5レンズ22の一方の外縁部を含む一方のレンズ面22aは、凸曲面状に形成されている。第5レンズ22の他方の外縁部を含む他方のレンズ面22bは、軸方向に対して垂直な平面状に形成されている。第5レンズ22の他方のレンズ面22bの周縁には、面取り加工が施されている。なお、第5レンズ22の他方のレンズ面22bが凸曲面状又は凹曲面状に形成されるようにしてもよい。
【0019】
なお、複数のレンズ14,16,18,20,22の2つのレンズ面14a,14b,16a,16b,18a,18b,20a,20b,22a,22bには、必要に応じて、それぞれ反射防止膜、親水膜、撥水膜等が形成される。
【0020】
鏡筒12内における第2レンズ16と第3レンズ18の間には、環状の第1スペーサ26が設けられており、第1スペーサ26の外周部26cは、鏡筒12の内周部12fに篏合する。第1スペーサ26は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂により構成されている。第1スペーサ26は、軸方向の一方側に、第2レンズ16の他方の外縁部を保持する環状の保持面26gを有している。第1スペーサ26は、軸方向の他方側に、第3レンズ18の一方の外縁部を保持する環状の保持面26pを有している。第1スペーサ26の2つの保持面26g,26pは、それぞれ軸方向に対して垂直な平面状に形成されている。
【0021】
鏡筒12内における第3レンズ18と第4レンズ20との間には、環状の第2スペーサ28が設けられており、第2スペーサ28の外周部28cは、鏡筒12の内周部12fに篏合する。第2スペーサ28は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂により構成されている。第2スペーサ28は、軸方向の一方側に、第3レンズ18の他方の外縁部を保持する環状の保持面28gを有している。第2スペーサ28は、軸方向の他方側に、第4レンズ20の一方の外縁部を保持する環状の保持面28pを有している。第2スペーサ28の2つの保持面28g,28pは、それぞれ軸方向に対して垂直な平面状に形成されている。
【0022】
鏡筒12内における第4レンズ20と第5レンズ22との間には、環状の第3スペーサ30が設けられており、第3スペーサ30の外周部30cは、鏡筒12の内周部12fに篏合する。第3スペーサ30は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂により構成されている。第3スペーサ30は、軸方向の一方側に、第4レンズ20の他方の外縁部を保持する環状の保持面30gを有しており、保持面30gは、軸方向に対して垂直な平面状に形成されている。第3スペーサ30は、軸方向の他方側に、第5レンズ22の一方の外縁部を保持する環状の保持面30pを有しており、保持面30pは、凹曲面状に形成されている。
【0023】
鏡筒12内における軸方向の他端側には、環状の押さえ部材(押さえ環)32が螺合して設けられており、押さえ部材32は、複数のレンズ14,16,18,20,22を複数のスペーサ26,28,30と共に鏡筒12の係止爪12k側に押圧する。換言すれば、複数のレンズ14,16,18,20,22は、押さえ部材32と鏡筒12の係止爪12kとの協働によって複数のスペーサ26,28,30と共に挟持される。押さえ部材32の外周部には、鏡筒12の雌ネジ部12sに螺合する雄ネジ部32sが形成されている。
【0024】
鏡筒12内における第5レンズ22と押さえ部材32との間には、環状のフィルタ保持部材34が設けられている。フィルタ保持部材34は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂により構成されている。フィルタ保持部材34は、軸方向の他方側に、環状の取付部34mを有しており、取付部34mは、軸方向(軸方向の一方側)に窪んでいる。フィルタ保持部材34は、第5レンズ22と押さえ部材32の間に設けられたスペーサとして機能を有している。
【0025】
フィルタ保持部材34の取付部34mには、近赤外線領域の光を除去する円形状の赤外線カットフィルタ36が押さえ部材32によって押圧された状態で設けられている。赤外線カットフィルタ36は、押さえ部材32とフィルタ保持部材34の取付部34mによって挟持されている。押さえ部材32は、赤外線カットフィルタ36及びフィルタ保持部材34を介して、複数のレンズ14,16,18,20,22を複数のスペーサ26,28,30と共に係止爪12k側に押圧する。複数の赤外線カットフィルタ36の厚みは、0.4mm以上に設定されている。なお、赤外線カットフィルタ36の代わりに、所定の周波数成分の光を除去する他の光学フィルタを用いてもよい。
【0026】
複数のレンズ14,16,18,20,22のうち軸方向に隣接するいずれのレンズ間には、通過光量を制限する環状の絞り部材(不図示)が設けられている。
【0027】
〔第3レンズ18周辺の構成及びその作用〕
図1、2、4を参照して、第3レンズ18周辺の構成及びその作用について説明する。図4は、図2におけるC部の拡大断面図である。
【0028】
図1に示すように、第3レンズ18がガラスモールド成形によって成形され、第3レンズ18の外縁部が軸方向に対して垂直な平面状に形成されていると、第3レンズ18の外縁部の端にバリ18tが発生することがある。このような場合には、複数のレンズ14,16,18,20,22のうちいずれかのレンズ間の間隔が変化し、又はいずれかのレンズが軸方向に対して傾動して、車載用カメラの撮像品質が低下する。
【0029】
前記の問題を解決するために、本実施形態においては、図2、4に示すように、レンズユニット10においては、第1スペーサ26の外周部26cにおける第3レンズ18側には、径方向内側に窪んだ環状の段部(凹部)26sが形成されている。第1スペーサ26の段部26sは、第3レンズ18の一方の外縁部の端に形成されたバリ18tを収容する。また、第2スペーサ28の外周部28cにおける第3レンズ18側には、径方向内側に窪んだ環状の段部28sが形成されている。第2スペーサ28の段部28sは、第3レンズ18の他方の外縁部の端に形成されたバリ18tを収容する。これにより、第3レンズ18の外縁部の端にバリが形成されていても、レンズ間の間隔を一定に保ちながら、レンズの軸方向に対する傾動を防止して、車載用カメラの撮像品質を維持することができる。
【0030】
〔第5レンズ22周辺の構成及びその作用〕
図1、3、5を参照して、第5レンズ22周辺の構成及びその作用について説明する。図5は、図3におけるD部の拡大断面図である。
【0031】
図1に示すように、車載用カメラに用いられるレンズユニット10は、-40℃以上でかつ125℃以下の温度域において、複数のレンズ14,16,18,20,22を安定的に保持するために、押さえ部材32によって複数のレンズ14,16,18,20,22を大きな押圧力(例えば100N~150N)で締め付けることが必要になる。一方、第3スペーサ30の保持面30pが第5レンズ22の凹曲面状のレンズ面24aに面接触する場合に、押さえ部材32による押圧力が大きくなると、第3スペーサ30が変形して、第3スペーサ30の外周部30cが鏡筒12の内周部12fとの摩擦(接触圧)が大きくなる。すると、押さえ部材32による軸方向の押圧力(締付け力)が安定せず、複数のレンズ14,16,18,20,22のうちいずれかのレンズ間の間隔が変化し、又はいずれかのレンズが軸方向に対して傾動して、カメラの撮像品質が低下する。
【0032】
前記の問題を解決するため、本実施形態においては、図3、5に示すように、第3スペーサ30の外周部28cにおける第5レンズ22側には、径方向内側に窪んだ環状の段部(凹部)28sが形成されている。第3スペーサ30の段部30sは、第3スペーサ30の段部30sの窪み量αは、0.4μm以上に設定されている。これにより、押さえ部材32による押圧力が大きくなって、第3スペーサ30が変形しても、第3スペーサ30の外周部30cが鏡筒12の内周部12fとの摩擦を低減して、押さえ部材32による軸方向の押圧力を安定させることができる。その結果、レンズ間の間隔を一定に保ちながら、レンズの軸方向に対する傾動を防止して、車載用カメラの撮像品質を維持することができる。
【0033】
〔押さえ部材32周辺の構成及びその作用〕
図1、3、5を参照して、押さえ部材32周辺の構成及びその作用について説明する。
【0034】
図1に示すように、フィルタ保持部材34の取付部34mに赤外線カットフィルタ36が押さえ部材32によって押圧された状態で設けられており、押さえ部材32による押圧力が大きくなると、赤外線カットフィルタ36が変形して、赤外線カットフィルタ36の外縁部の端にピリ欠けが発生する。
【0035】
前記の問題を解決するため、本実施形態においては、図3、5に示すように、押さえ部材32の外縁部における赤外線カットフィルタ36側には、軸方向の他方側に窪んだ環状の凹部32dが形成されている。押さえ部材32の凹部32dは、赤外線カットフィルタ36の外縁部のうち、押さえ部材32の押さえ付けによって変形した部分を収容する。これにより、押さえ部材32による押圧力が大きくなって、赤外線カットフィルタ36が変形しても、赤外線カットフィルタ36の外縁部の端のピリ欠けの発生を防止することができる。
【0036】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、第3レンズ18の外縁部の端にバリが形成されていても、レンズ16,18間の間隔の変化、レンズ18,20間の間隔の変化、第3レンズ18の軸方向に対する傾動を十分に防止して、車載用カメラの撮像品質を維持することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、押さえ部材32による押圧力が大きくなって、第3スペーサ30が変形しても、押さえ部材32による軸方向の締付け力を安定させることできる。その結果、レンズ16,18間の間隔及びレンズ18,20間の間隔を一定に保ちながら、第3レンズ18の軸方向に対する傾動をより十分に防止して、車載用カメラの撮像品質をより維持することができる。
【0038】
更に、本実施形態によれば、押さえ部材32による押圧力が大きくなって、赤外線カットフィルタ36が変形しても、赤外線カットフィルタ36の外縁部の端のピリ欠けの発生を防止することができる。
【0039】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るレンズユニットは、鏡筒と、前記鏡筒内に軸方向に沿って設けられた複数のレンズと、前記複数のレンズのうち前記軸方向に隣接するいずれかのレンズ間に設けられた環状のスペーサと、を備え、前記スペーサの外周部における前記いずれかのレンズ側に、径方向内側に窪んだ環状の段部が形成されている。
【0040】
前記の構成によれば、前記複数のレンズのうちいずれかのレンズの外縁部にバリが形成されていても、レンズ間の間隔を一定に保ちながら、レンズの軸方向に対する傾動を防止して、カメラの撮像品質を維持することができる。
【0041】
本発明の態様2に係るレンズユニットは、前記態様1において、前記いずれかのレンズにおける前記スペーサ側の少なくとも外縁部は、前記軸方向に対して垂直な平面状に形成されており、前記スペーサの前記段部は、前記いずれかのレンズの外縁部に形成されたバリを収容するようにしてもよい。
【0042】
前記の構成によれば、前記スペーサの前記段部が前記いずれかのレンズの外縁部に形成されたバリを収容するため、レンズ間の間隔を一定に保ちながら、レンズの軸方向に対する傾動をより防止することができる。
【0043】
本発明の態様3に係るレンズユニットは、前記態様2において、前記いずれかのレンズは、ガラスモールド成形によって成形されてもよい。
【0044】
前記の構成によれば、ガラスモールド成形によって成形されたレンズを含む、レンズ間の間隔を一定に保ちながら、レンズの軸方向に対する傾動をより防止することができる。
【0045】
本発明の態様4に係るレンズユニットは、前記態様1において、前記鏡筒の前記軸方向の一端側に設けられ、径方向内側に突出し、前記複数のレンズのうち前記軸方向の一端側のレンズの外縁部に係止する係止部と、前記鏡筒の前記軸方向の他端側に設けられ、前記複数のレンズを前記係止部側に押圧する環状の押さえ部材と、を備えてもよい。
【0046】
前記の構成によれば、前記押さえ部材が前記複数のレンズを前記係止部側に押圧することにより、前記押さえ部材と前記係止部によって前記複数のレンズを挟持する。これにより、前記複数のレンズを安定的に保持することができる。
【0047】
本発明の態様5に係るレンズユニットは、前記態様4において、前記いずれかのレンズの少なくとも一方のレンズ面は、凸曲面状に形成され、前記段部は、前記スペーサの外周部における前記いずれかのレンズの前記一方のレンズ面側に設けられてもよい。
【0048】
前記の構成によれば、前記押さえ部材による押圧力が大きくなって、前記スペーサが変形しても、前記スペーサの外周部が前記鏡筒の内周部との摩擦を低減して、前記押さえ部材による軸方向の押圧力を安定させることができる。これにより、レンズ間の間隔を一定に保ちながら、レンズの軸方向に対する傾動を防止して、カメラの撮像品質を維持することができる。
【0049】
本発明の態様6に係るレンズユニットは、前記態様4において、前記鏡筒内における前記軸方向の他端側のレンズと前記押さえ部材との間に設けられた環状のフィルタ保持部材と、
前記フィルタ保持部材に前記押さえ部材によって押圧された状態で設けられ、所定の周波数成分を除去する光学フィルタと、を備え、前記押さえ部材の外縁部における前記光学フィルタ側に、前記軸方向に窪んだ環状の凹部が形成されてもよい。
【0050】
前記の構成によれば、前記押さえ部材による押圧力が大きくなって、前記光学フィルタが変形しても、前記光学フィルタの外縁部の端のピリ欠けの発生を防止することができる。
【0051】
〔付記事項〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 レンズユニット
12 鏡筒
12k 係止爪(係止部)
12f 内周部
12s 雌ネジ部
14 第1レンズ
16 第2レンズ
18 第3レンズ
18a 一方のレンズ面
18b 他方のレンズ面
18t バリ
20 第4レンズ
22 第5レンズ
22a 一方のレンズ面
22b 他方のレンズ面
24 レンズ群
26 第1スペーサ
26s 段部
28 第2スペーサ
28s 段部
30 第3スペーサ
30s 段部
32 押さえ部材
32s 雄ネジ部
32d 凹部
34 フィルタ保持部材
34m 取付部
36 赤外線カットフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5