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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】コエンザイムQ10入り固形ヨーグルト
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/13 20060101AFI20241112BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A23C9/13
A23C9/123
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021008979
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112936
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香山 佳代子
(72)【発明者】
【氏名】扇元 修志
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-062347(JP,A)
【文献】特開平06-038691(JP,A)
【文献】特開昭60-241846(JP,A)
【文献】特開2003-102379(JP,A)
【文献】国際公開第2003/061395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 9/13
A23C 9/123
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーグルト全体中、コエンザイムQ10を0.02~0.3重量%含有し、
寒天を更に含有し、
以下で規定する前記寒天の強度(g・重量%/cm)、及び、乳蛋白質の含有量(重量%)が、図1中のA点(30、4.7)、B点(90、4.6)、C点(90、4.0)、及びD点(30、3.2)の四点を順に結ぶ直線で囲まれた領域(A)内にあり、
ヨーグルト粒子のメジアン径が50~85μmである、コエンザイムQ10入り固形ヨーグルト。
寒天の強度:前記寒天のゼリー強度(g/cm)×ヨーグルト全体中の前記寒天の添加量(重量%)
【請求項2】
前記寒天が、ゼリー強度10~300g/cmの寒天をヨーグルト全体中0.04~0.175重量%、及び、ゼリー強度500~720g/cmの寒天をヨーグルト全体中0.04~0.13重量%含む、請求項1に記載のコエンザイムQ10入り固形ヨーグルト。
【請求項3】
コエンザイムQ10がユビキノールである、請求項1又は2に記載のコエンザイムQ10入り固形ヨーグルト。
【請求項4】
原料ミックス全体中、コエンザイムQ10を0.02~0.3重量%含有し、寒天を更に含有し、以下で規定する前記寒天の強度(g・重量%/cm)、及び、乳蛋白質の含有量(重量%)が、図1中のA点(30、4.7)、B点(90、4.6)、C点(90、4.0)、及びD点(30、3.2)の四点を順に結ぶ直線で囲まれた領域(A)内にある原料ミックスを、10~20MPaの圧力で均質化し、100~120℃で1~60秒間殺菌後、40~46℃に温調し、乳酸菌を添加してから、pHが5.7に下がるまでに容器に充填し、35~45℃で、pHが4.4~4.85になるまで発酵させ、1~10℃に冷却する工程を含む、コエンザイムQ10入り固形ヨーグルトの製造方法。
寒天の強度:前記寒天のゼリー強度(g/cm)×ヨーグルト全体中の前記寒天の添加量(重量%)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10を含有する固形ヨーグルト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10は、人の生体内の細胞中におけるミトコンドリアの電子伝達系構成因子であり、酸化的リン酸化反応における電子の運搬子として働くことでATPの生成に関与しており、各種疾病に対して優れた薬理及び生理効果を示す物質として多くの研究結果が報告されている。そこで、コエンザイムQ10を含む様々な食品が開発されている。
【0003】
特許文献1には、ユビキノール(還元型コエンザイムQ10)を富化した油脂含有食品が記載されており、その一例としてヨーグルトに言及されている。しかし、ヨーグルトを実際に製造したことを示す記載はなく、ヨーグルトにコエンザイムQ10を添加する際の課題についても記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-278994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々がコエンザイムQ10を添加したヨーグルトの作製を検討する中で、コエンザイムQ10をヨーグルトに多量に添加すると、コエンザイムQ10は油溶性であるが故にヨーグルト表面に浮上し、容器上部空間の酸素により酸化・分解されたり、コエンザイムQ10由来の色ムラが出ることが判明した。また、これを改良するために、ヨーグルトの硬さや粘度を上げると、食感が悪くなる場合があることも分かった。
【0006】
以上の課題に鑑み、本発明の目的は、コエンザイムQ10の均一分散安定性が良好で、通常のヨーグルト並みの柔らかさと滑らかさを持つ、コエンザイムQ10入り固形ヨーグルト及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、コエンザイムQ10入り固形ヨーグルトにおいて、コエンザイムQ10の含有量を特定範囲とし、寒天を更に配合して、該寒天の強度と乳蛋白質の含有量がそれぞれ特定の範囲になるように設定し、更に、ヨーグルト粒子のメジアン径を特定のサイズに制御することで、通常のヨーグルト並みの柔らかさと滑らかさを持ちつつ、コエンザイムQ10を均一に分散安定化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、ヨーグルト全体中、コエンザイムQ10を0.02~0.3重量%含有し、寒天を更に含有し、以下で規定する前記寒天の強度(g・重量%/cm)、及び、乳蛋白質の含有量(重量%)が、図1中のA点(30、4.7)、B点(90、4.6)、C点(90、4.0)、及びD点(30、3.2)の四点を順に結ぶ直線で囲まれた領域(A)内にあり、ヨーグルト粒子のメジアン径が50~85μmである、コエンザイムQ10入り固形ヨーグルトに関する。
寒天の強度:前記寒天のゼリー強度(g/cm)×ヨーグルト全体中の前記寒天の添加量(重量%)
好ましくは、前記寒天が、ゼリー強度10~300g/cmの寒天をヨーグルト全体中0.04~0.175重量%、及び、ゼリー強度500~720g/cmの寒天をヨーグルト全体中0.04~0.13重量%含む。
好ましくは、コエンザイムQ10がユビキノールである。
本発明の第二は、原料ミックス全体中、コエンザイムQ10を0.02~0.3重量%含有し、寒天を更に含有し、以下で規定する前記寒天の強度(g・重量%/cm)、及び、乳蛋白質の含有量(重量%)が、図1中のA点(30、4.7)、B点(90、4.6)、C点(90、4.0)、及びD点(30、3.2)の四点を順に結ぶ直線で囲まれた領域(A)内にある原料ミックスを、10~20MPaの圧力で均質化し、100~120℃で1~60秒間殺菌後、40~46℃に温調し、乳酸菌を添加してから、pHが5.7に下がるまでに容器に充填し、35~45℃で、pHが4.4~4.85になるまで発酵させ、1~10℃に冷却する工程を含む、コエンザイムQ10入り固形ヨーグルトの製造方法に関する。
寒天の強度:前記寒天のゼリー強度(g/cm)×ヨーグルト全体中の前記寒天の添加量(重量%)
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、コエンザイムQ10の均一分散安定性が良好で、通常のヨーグルト並みの柔らかさと滑らかさを持つ、コエンザイムQ10入り固形ヨーグルト及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るヨーグルトの配合における、寒天の強度及び乳蛋白質の含有量の好適な範囲を示すグラフである。
図2】本発明の一実施形態に係るヨーグルトの配合における、寒天の強度及び乳蛋白質の含有量のより好適な範囲を示すグラフである。
図3】本発明の一実施形態に係るヨーグルトの配合における、寒天の強度及び乳蛋白質の含有量の更に好適な範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係るヨーグルトは、コエンザイムQ10を特定量含有し、寒天を更に含有し、該寒天の強度及び乳蛋白質の含有量がそれぞれ特定範囲内にあり、ヨーグルト粒子のメジアン径が特定範囲内にある、ヨーグルトである。本実施形態に係るヨーグルトは、飲用のものではなく、食べるタイプの所謂固形ヨーグルトとして供されるものである。
【0012】
本実施形態に係るヨーグルトは、コエンザイムQ10の均一分散安定性がより良好となることから、後発酵型のヨーグルトであることが好ましい。ここで、後発酵型のヨーグルトとは、ヨーグルトの原料である原料ミックスに、乳酸菌を添加し、容器に充填した後に発酵させる(後発酵)ことにより製造されるタイプのヨーグルトを指す。
【0013】
前記コエンザイムQ10は、ヒトに多く含まれ、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ポリプレニル-1,4-ベンゾキノンの内、側鎖のイソプレン単位の数が10のものをいう。また、前記コエンザイムQ10には、酸化型と還元型が知られており、酸化型は「ユビキノン」、還元型は「ユビキノール」と命名されている。本実施形態では、コエンザイムQ10として、ユビキノン、ユビキノールのいずれを使用してもよく、また、両者を併用してもよいが、経口吸収性及びバイオアベイラビリティの観点から、ユビキノールを使用することが好ましい。
【0014】
前記コエンザイムQ10の含有量は、ヨーグルト全体中、0.02~0.3重量%であることが好ましく、0.03~0.3重量%がより好ましく、0.05~0.3重量%が更に好ましく、0.1~0.3重量%が特に好ましい。コエンザイムQ10の含有量が0.02重量%より少ないと、ヨーグルトの摂食によるコエンザイムQ10の補給が効率的でない場合がある。一方、0.3重量%より多いと、ヨーグルト中のコエンザイムQ10の均一分散安定性が劣る場合がある。
【0015】
前記コエンザイムQ10の含有量は、例えば次のようにして測定することができる。まずヨーグルトが均一になるように、よく混合撹拌する。カップに入ったヨーグルトの場合は、蓋を開封せずに強く200~300回振ることで容易に均一化可能である。均一になったヨーグルト4gをキャップ付き試験管に正確に量り取り、蒸留水10mLと飽和食塩水1mLを加え、約30秒間超音波処理を行いヨーグルトの塊がなくなるまでよく懸濁させる。次いでエタノール20mLとn-ヘキサン20mLを加え、振とう器にて200rpmで5分間振とうさせる。振とうには、株式会社ヤヨイ製の振とう器Model YS-8Dを使用し、弧を描くように振とうすることが好ましい。振とう後に2000rpmで2分間遠心分離を行い、上清を100mLのナスフラスコに入れてエバポレーターにて乾燥させた後、窒素シールする。ナスフラスコに入れる際には、パスツールピペットを用い、可能な限り上清を全て回収することが肝要である。また、エバポレーターで乾燥させる際には発泡や突沸がないように注意する。再度、試験管を約30秒間超音波処理により懸濁させた後、n-ヘキサン20mLを加え、振とう器にて200rpmで5分間振とうさせる。2000rpmで2分間遠心分離を行い、上清を前記100mLのナスフラスコに入れてエバポレーターにて乾燥させた後、窒素シールする。エタノール/n-ヘキサン混液(4:1)5mLでナスフラスコの内容物を溶解し、褐色メスフラスコに移液する。メスフラスコに移液する際にはパスツールピペットを使用し、全量を移液する。
【0016】
再度エタノール/n-ヘキサン混液(4:1)5mLでナスフラスコの内容物を溶解し、前記褐色メスフラスコに移液し、超音波処理を行う。エタノール/n-ヘキサン混液(4:1)を加えて正確に20mLとし、よく撹拌した後、その約1mLを0.45μmのフィルターでろ過しHPLC分析を行う。この時のHPLC条件は、カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相:COH:CHOH=4:3(v:v)、検出波長:210nm、流速:1ml/min、還元型コエンザイムQ10の保持時間:9.1min、酸化型コエンザイムQ10の保持時間:13.3minとする。
【0017】
本実施形態に係るヨーグルトは乳蛋白質を含有する。該乳蛋白質は、乳製品に含まれている蛋白質のことを意味し、カゼイン蛋白質、ホエー蛋白質などが挙げられる。乳蛋白質を含み乳蛋白質の供給源となる乳原料としては特に制限はなく、例えば、バターミルク、チーズ、クリームチーズ、濃縮ホエー、ホエー、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、乳飲料、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、発酵乳又はそれらの粉体や、ホエー蛋白質濃縮物(WPC)、トータルミルクプロテイン等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用すればよい。なかでも、風味の観点から、生乳、牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、脱脂粉乳が好ましい。また、健康志向の観点からは、乳脂肪の含有量が少ない、脱脂乳、脱脂粉乳が好ましい。
【0018】
本実施形態に係るヨーグルトは更に寒天を含有する。前記寒天は、テングサ(天草)、オゴノリ等の紅藻類から得られる多糖類であり、ガラクトースを基本骨格とするものである。当該寒天としては1種類のみを使用してもよいし、ゼリー強度が異なる複数種の寒天を併用してもよい。
【0019】
本実施形態に係るヨーグルトでは、前記寒天の強度(g・重量%/cm)、及び、前記乳蛋白質の含有量(重量%)が、図1中のA点(30、4.7)、B点(90、4.6)、C点(90、4.0)、及びD点(30、3.2)の四点を結ぶ直線で囲まれた領域(A)内にあることが好ましい。また、図2中のE点(50、4.7)、B点(90、4.6)、C点(90、4.0)、及びF点(50、3.5)の四点を結ぶ直線で囲まれた領域(B)内にあることがより好ましい。更に、図3中のG点(70、4.6)、B点(90、4.6)、C点(90、4.0)、H点(70、3.7)の四点を結ぶ直線で囲まれた領域(C)内にあることが更に好ましい。
【0020】
前記図1のA点とD点の2点を結ぶ直線よりも左側、即ち寒天の強度が30g・重量%/cm未満の領域では、コエンザイムQ10の均一分散安定性が悪かったり、ヨーグルトの食感が低下する場合がある。前記図1のA点とB点の2点を結ぶ直線よりも上側で、且つ、前記寒天の強度が30~90g・重量%/cmの範囲では、ヨーグルトの食感が低下する場合がある。B点とC点の2点を結ぶ直線よりも右側、即ち寒天の強度が90g・重量%/cmを超える領域では、ヨーグルトの食感が低下する場合がある。前記図1のC点とD点の2点を結ぶ直線よりも下側で、且つ、前記寒天の強度が30~90g・重量%/cmの範囲では、ヨーグルトの食感が低下する場合がある。
【0021】
ここで、前記寒天の強度とは、ヨーグルトに添加された寒天のゼリー強度(g/cm)とヨーグルト全体中の前記寒天の添加量(重量%)の積で表される。なお、ゼリー強度が異なる複数種の寒天を併用する場合、それぞれの寒天のゼリー強度と添加量に基づいて各寒天の強度を算出し、得られた各強度を合計して得られた値を、前記寒天の強度とする。
【0022】
寒天として1種類の寒天のみを使用する場合、当該寒天のゼリー強度が低い時には寒天の含有量を多めにし、当該寒天のゼリー強度が高い時には寒天の含有量が少なくても良い。具体的には、ゼリー強度10~720g/cmの寒天をヨーグルト全体中0.04~3重量%含むことが好ましい。前記ゼリー強度10~720g/cmの寒天の含有量は、0.05~1.5重量%であることがより好ましく、0.07~1.0重量%が更に好ましく、0.07~0.5重量%が特に好ましい。前記寒天の含有量が上記範囲内であると、コエンザイムQ10の均一分散安定性やヨーグルトの食感がより良好なものになり得る。前記ゼリー強度10~720g/cmの寒天は、平均分子量が4万~35万の寒天から容易に選択できる。
【0023】
ゼリー強度が異なる複数種の寒天を併用する場合、ゼリー強度が低い寒天とゼリー強度が高い寒天を併用することが好ましく、具体的には、ゼリー強度10~300g/cmの寒天をヨーグルト全体中0.04~0.175重量%、及び、ゼリー強度500~720g/cmの寒天をヨーグルト全体中0.04~0.13重量%含むことが好ましい。前記ゼリー強度10~300g/cmの寒天の含有量は、0.05~0.15重量%であることがより好ましく、0.07~0.12重量%が更に好ましい。前記ゼリー強度500~720g/cmの寒天の含有量は、0.05~0.125重量%であることがより好ましく、0.07~0.12重量%が更に好ましい。各寒天の含有量がそれぞれ上記範囲内であると、コエンザイムQ10の均一分散安定性やヨーグルトの食感がより良好なものになり得る。
【0024】
前記ゼリー強度10~300g/cmの寒天は、平均分子量が4万~18万の寒天から容易に選択でき、前記ゼリー強度500~720g/cmの寒天は、平均分子量の20万~35万の寒天から容易に選択できる。なお、前記寒天の強度を満足する範囲内において、前記2種以外の寒天を更に含有してもよい。
【0025】
寒天のゼリー強度は、既知の日寒水式の測定方法により測定することができる。具体的には、寒天の1.5%溶液を調製し20℃で15時間放置凝固せしめたゲルについてその表面1cm当たり20秒間耐え得る最大荷重(g)を求めればよい。また、寒天の平均分子量は、公知の方法により測定することができ、例えばゲル浸透クロマトグラフィー法により測定することができる。
【0026】
本実施形態に係るコエンザイムQ10入り固形ヨーグルトは、含まれるヨーグルト粒子のメジアン径が50~85μmであることが好ましく、54~80μmがより好ましく、54~75μmが更に好ましい。ヨーグルト粒子のメジアン径が50μmより小さいとコエンザイムQ10の均一分散安定性が劣る場合がある。一方、85μmを超えると、ヨーグルトの食感が低下する場合がある。前記ヨーグルト粒子のメジアン径は、公知の方法で測定することができ、その測定方法としては、例えば、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定する方法等が挙げられる。この場合、水を分散媒として用いる。前記レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置としては、例えば、LA-960V2((株)堀場製作所製)等が挙げられる。なお、測定の際、ヨーグルトカードを崩さないように採取し、そのまま測定装置にセットする。
【0027】
本実施形態に係るヨーグルトは、発明の効果を損なわない限り、前記コエンザイムQ10、前記寒天、及び、前記乳蛋白質を含む乳原料に加えて、他の成分を含有してもよい。前記他の成分としては、例えば、糖質、安定剤、油脂、乳化剤、着香料、着色料、風味材、酸化防止剤等が挙げられる。
【0028】
前記糖質としては、特に限定はないが、例えば、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、還元パラチノース、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0029】
これら糖質の中でも、良好な甘味を有するという観点から、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、還元パラチノース、キシリトール、ラクチトール等)が好ましい。
【0030】
また、健康志向における低糖質の観点から、前記糖質を高甘味度甘味料に代替することができる。前記高甘味度甘味料としては、特に限定はないが、例えば、アスパルテーム、アリテーム、モナチン、カンゾウ抽出物、甘茶抽出物、ラカンカ抽出物、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、ソーマチン、ラカンカ抽出物等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。良好な甘味と低糖質の両方の観点から、還元パラチノースとスクラロースを併用することが好ましい。
【0031】
前記安定剤としては、特に限定はないが、例えば、アラビアガム、カラギナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、ローメトキシルペクチン(LMペクチン)、ハイメトキシルペクチン(HMペクチン)、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、水溶性大豆多糖類、グルコマンナン、でん粉、化工でん粉、加工でん粉、デキストリン、ジェランガム、キサンタンガム、プルラン、カードラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース塩、メチルセルロース、キチン、キトサン、ゼラチン等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0032】
前記油脂としては、食用であれば特に限定はないが、例えば、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム核油、乳脂、ラード、魚油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂などが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0033】
前記乳化剤としては、食用であれば特に限定はないが、例えば、モノグリセリド、有機酸が結合したモノグリセリド誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0034】
前記着香料は、特に限定はないが、天然香料または合成香料であって、例えば、ヨーグルトフレーバー、フルーツフレーバー、植物フレーバー、またはこれらの混合物が挙げられる。前記フルーツフレーバーとしては、例えば、レモン、オレンジ、蜜柑、グレープフルーツ、シークヮーサー、柚及びライム等の柑橘類、苺、桃、葡萄、林檎、パイナップル、マンゴー、メロン、及びバナナ等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0035】
前記着色料としては、食用であれば特に限定はないが、例えば、ベニコウジ色素、クチナシ、ラック、コチニール、カロテンなどが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0036】
前記風味材としては、食用であれば特に限定はないが、イチゴ、桃、マンゴー、パパイヤ、スイカ、メロン、リンゴ、柿、梨(洋なしも含まれる)、バナナ、ビワ、ザクロ、レイシ、プラム、杏、パイナップル、ぶどう、キーウイ、すもも、うめ、さくらんぼ、パッションフルーツ、ブラックカラント、レッドカラント;クランベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、及びラズベリーなどのベリー類;オレンジやグレープフルーツ等の柑橘類、アロエ等の果肉・葉肉・種子・果皮をカットしたり、ピューレ状、すりおろし状としたもの、また、これらのフルーツを模したゼリー、寒天ゲル、ナタデココ、杏仁豆腐などのカット品などが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0037】
前記酸化防止剤としては、食用であれば特に限定はないが、ビタミンA、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、セレン、フラボノイド、ポリフェノール、リコペン、ルテイン、リグナンなどが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0038】
本実施形態に係るコエンザイムQ10入り固形ヨーグルトは、原料の混合溶解工程、均質化工程、殺菌工程、乳酸菌の添加工程、容器への充填工程、発酵工程、及び冷却工程を経て製造することができる。各工程の詳細を以下に説明するが、本実施形態に係るヨーグルトを製造する方法は以下の記載に限定されるものではない。
【0039】
(混合溶解工程)
前述したヨーグルトの原料(即ち、コエンザイムQ10、寒天、乳蛋白質を含む乳原料、及び他の任意成分)を全て混合し、溶解して原料ミックスを得る。この時、前記コエンザイムQ10は、他の原料と同時に混合してもよいが、コエンザイムQ10の均一分散安定性を高める観点から、まず、コエンザイムQ10を除く原料を混合・溶解した混合液を作製し、該混合液の一部を抜き取り、抜き取った混合液にコエンザイムQ10を添加し、ホモミキサーで混合攪拌してから、残りの混合液と混合攪拌することが好ましい。なお、コエンザイムQ10の融点が約50℃であることから、コエンザイムQ10を除く原料を混合・溶解した混合液は50~70℃に温調して、そこにコエンザイムQ10を添加することが好ましい。ホモミキサーでの混合攪拌条件は、80~250S-1で1~10分間であることが好ましく、100~200S-1で3~7分間がより好ましい。攪拌速度が80S-1以上で、攪拌時間が1分間より長いと、コエンザイムQ10の均一分散安定性の向上を図ることができる。しかし、攪拌速度が200S-1より早かったり、攪拌時間が10分間より長いと、その効果は頭打ちになる場合がある。
【0040】
(均質化工程)
前記混合溶解工程で得られる原料ミックスを50~70℃に温調後、均質化処理して、均質化処理後の原料ミックスを得る。該均質化処理は、公知の均質化装置を用いて実施することができ、そのような装置としては、特に限定されないが、ホモゲナイザー、マイクロフルイダイザー、コロイドミル等が挙げられる。前記均質化処理時の圧力は、10~20MPaであることが好ましく、12~20MPaがより好ましく、12~18MPaが更に好ましい。均質化処理時の圧力が10MPaよりも小さいと、ヨーグルトの食感にザラツキが感じられたり、油溶性であるコエンザイムQ10の微細化が不十分で、コエンザイムQ10の均一分散安定性が劣る場合がある。一方、20MPaを超えると、一旦微細化したコエンザイムQ10の油滴が壊れて、油滴同士が合一し、コエンザイムQ10の均一分散安定性が悪くなる場合がある。
【0041】
(殺菌工程)
前記均質化工程で得られる均質化処理後の原料ミックスを、100~120℃で1~60秒間殺菌処理して、殺菌処理後の原料ミックスを得る。前記殺菌温度は105~120℃であることがより好ましく、105~115℃が更に好ましい。殺菌温度が100℃より低いと、殺菌処理の効果を得ることが難しかったり、寒天の溶解が不十分となる場合がある。一方、120℃を超えると、蛋白質が熱変性してヨーグルトの滑らかさが低下する場合がある。前記殺菌の実施時間は1~30秒間であることがより好ましく、1~15秒間が更に好ましい。殺菌の実施時間が1秒間より短くなると、殺菌処理の効果を得ることが難しかったり、寒天の溶解が不十分となる場合がある。一方、60秒間より長くなると、蛋白質が熱変性してヨーグルトの滑らかさが低下する場合がある。
【0042】
(乳酸菌の添加工程)
前記殺菌工程で得られる殺菌処理後の原料ミックスを40~46℃に温調後、前記乳酸菌を添加後、攪拌して、乳酸菌添加後の原料ミックスを得る。前記温調温度は、40~44℃であることがより好ましく、40~42℃が更に好ましい。前記温調温度が40~46℃の範囲を外れると、乳酸菌の活性が低下して、発酵に時間がかかったり、ヨーグルトの風味が低下する場合がある。
【0043】
前記乳酸菌としては、乳酸菌スターターを用いればよい。該乳酸菌スターターとしては、特に限定されず、通常ヨーグルトに使用されるものを用いることができる。例えば、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)に属する乳酸球菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)に属する乳酸桿菌、ビフィズス菌(Bifidobacterium)等が挙げられる。具体例としては、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus、Lactobacillus acidophilus、Bifidobacterium lactis等が挙げられる。
【0044】
前記乳酸菌の添加量としては特に限定されないが、ヨーグルトの作製に通常使用される量であってよく、例えば、原料ミックス全体100重量部に対して、0.00001~5重量部添加すればよく、凍結乾燥タイプでは0.00001~0.05重量部、発酵液タイプでは0.01~5重量部を目安とすればよい。
【0045】
(容器への充填工程)
前記乳酸菌の添加工程で得られる乳酸菌添加後の原料ミックスを、乳酸菌を添加してから原料ミックスのpHが5.7に下がるまでに容器に充填し、容器に充填後の原料ミックスを得る。前記充填時のpHは6.1以上であることがより好ましく、6.3以上が更に好ましい。充填時のpHが5.7未満では、充填前に発酵カードの形成が進み、充填時に破壊されるためにホエー分離などが生じる場合がある。前記充填時のpHの上限は特に限定されないが、例えば、6.7以下であってよい。前記充填時のpHに調整するには、乳酸菌を添加してから2.5時間以内を目安に容器に充填すればよい。なお、pHの測定は、常法に従えばよく、例えばpHメーター(株式会社堀場製作所製「F-52」)を用いて測定することができる。
【0046】
(発酵工程)
前記容器への充填工程で得られる容器に充填後の原料ミックスを、35~45℃で、pHが4.4~4.85になるまで発酵させ、発酵処理後の原料ミックスを得る。前記発酵温度は、37~43℃であることがより好ましく、38~42℃が更に好ましい。前記発酵温度が35~45℃の範囲外になると、乳酸菌の活性が低下して、発酵に時間がかかったり、後述の冷却工程を経て得られるヨーグルトの風味が低下する場合がある。前記発酵終了時のpHは4.5~4.8であることがより好ましい。発酵終了時のpHが4.4未満では、冷却工程を経て得られるヨーグルトの風味や食感が低下する場合がある。一方、pHが4.85より高いと、冷却工程を経て得られるヨーグルトの風味が不足する場合がある。前記発酵終了時のpHを前記範囲内に調整するには、前記発酵温度での保持時間を、例えば5~10時間程度とすればよい。
【0047】
(冷却工程)
前記発酵工程で得られる発酵処理後の原料ミックスを、1~10℃に冷却することで、本実施形態に係るヨーグルトを得ることができる。前記冷却温度は1~8℃であることがより好ましく、1~6℃が更に好ましい。冷却温度が1℃よりも低いと、ヨーグルトが凍結して、コエンザイムQ10の均一分散安定性が悪くなる場合がある。一方、10℃よりも高いと、衛生的な日持ちが低下する場合がある。
【0048】
以上説明したヨーグルトの製造方法によれば、コエンザイムQ10の均一分散安定性が良好で、通常のヨーグルト並みの柔らかさと滑らかさを持つ、固形ヨーグルトを製造することができる。
【実施例
【0049】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0050】
また、実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
1)(株)カネカ製「カネカ脱脂粉乳」(乳蛋白質含有量:34.0%)
2)伊那寒天(株)製「伊那寒天SY-6」(ゼリー強度:630g/cm、平均分子量:27万)
3)三栄源エフ・エフ・アイ(株)製「サンスイートSU-100」(スクラロース15%、還元パラチノース85%)
4)(株)カネカ製「カネカQH」(還元型コエンザイムQ10)
5)Glanbia Nutritionals社製「MPC80 SOLMIKO」(乳蛋白質含有量:80.5%)
6)伊那寒天(株)製「ウルトラ寒天AX-200」(ゼリー強度:200g/cm、平均分子量:11万)
7)(株)カネカ製「カネカQ10」(酸化型コエンザイムQ10)
8)(株)ニッピ製「AP-50F」
9)三栄源エフ・エフ・アイ(株)製「スマートテイスト」
10)ユニテックフーズ(株)製「UNIPECTINE LMSN325 CITRUS」
【0051】
<ヨーグルト粒子のメジアン径の測定>
ヨーグルト粒子のメジアン径は、ヨーグルトカードを崩さないように採取し、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2((株)堀場製作所製)により、分散媒として水を用いて測定した。
【0052】
<ヨーグルトのpHの測定>
ヨーグルトのpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製「F-52」)により測定した。
【0053】
<コエンザイムQ10含有量の測定方法>
ヨーグルト4gをキャップ付き試験管に正確に量り取り、蒸留水10mLと飽和食塩水1mLを加え、約30秒間超音波処理を行い懸濁させた。エタノール20mLとn-ヘキサン20mLを加え、振とう器にて200rpmで5分間振とうした。2000rpmで2分間遠心分離を行い、上清を100mLのナスフラスコに入れてエバポレーターにて乾燥させた後、窒素シールした。再度、試験管を約30秒間超音波処理により懸濁させた後、n-ヘキサン20mLを加え、振とう器にて200rpmで5分間振とうさせた。2000rpmで2分間遠心分離を行い、上清を前記100mLのナスフラスコに入れてエバポレーターにて乾燥させた後、窒素シールした。エタノール/n-ヘキサン混液(4:1)5mLでナスフラスコの内容物を溶解し、褐色メスフラスコに移液した。再度エタノール/n-ヘキサン混液(4:1)5mLでナスフラスコの内容物を溶解し、前記褐色メスフラスコに移液し、超音波処理を行った。エタノール/n-ヘキサン混液(4:1)を加えて正確に20mLとし、その約1mLを0.45μmのフィルターでろ過しHPLC分析を行った。
【0054】
(HPLC条件)
分析カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)
移動相:COH:CHOH=4:3(v:v)
検出波長:210nm
流速:1ml/min
還元型コエンザイムQ10の保持時間:9.1min
酸化型コエンザイムQ10の保持時間:13.3min
【0055】
<ヨーグルトの評価>
(コエンザイムQ10の均一分散安定性)
実施例および比較例で得られた各ヨーグルトのカップの上蓋を剥がし、表面から約10mm以内のヨーグルト中のコエンザイムQ10含有量(X)、及び、容器の底から約10mm以内(ヨーグルトの表面からは約27~37mm)のヨーグルト中のコエンザイムQ10含有量(Y)を測定し、次式により均一分散安定性を算出した。
均一分散安定性(%)=[{(X)-(Y)}/{(X)+(Y)}/2]×100
【0056】
測定は、各実施例または比較例あたり5個の測定を行い、その平均値に基づいて評価を行った。その際の評価基準は以下の通りであった。
5点:均一分散安定性が5%未満
4点:均一分散安定性が5%以上、10%未満
3点:均一分散安定性が10%以上、15%未満
2点:均一分散安定性が15%以上、25%未満
1点:均一分散安定性が25%以上
【0057】
(ヨーグルトの食感)
熟練した10人のパネラーに、実施例および比較例で得られた各ヨーグルトを10℃に温調したものを食してもらって官能評価を行い、その評価点の平均値を官能評価とした。その際の評価基準は以下の通りであった。
3点:一般的なヨーグルト(雪印メグミルク(株)製「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト」、以下同じ)並みの柔らかさと滑らかさを持つ食感である
2点:一般的なヨーグルトよりも、柔らかさと滑らかさが若干劣る食感である
1点:一般的なヨーグルトよりも、柔らかさと滑らかさが明らかに劣る食感である
【0058】
(総合評価)
コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、ヨーグルトの食感の評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:食感が2.5点以上3.0点以下であって、且つ、コエンザイムQ10の均一分散安定性が5点であるもの
B:食感が2.5点以上3.0点以下であって、且つ、コエンザイムQ10の均一分散安定性が4点であるもの
C:食感が2.5点以上3.0点以下であって、且つ、コエンザイムQ10の均一分散安定性が3点であるもの
D:食感が1.5点以上2.5点未満であって、且つ、コエンザイムQ10の均一分散安定性が3点、4点又は5点であるもの、又は、コエンザイムQ10の均一分散安定性が2点であって、且つ、食感が1.5点以上3.0点以下であるもの
E:食感が1.5点未満であるもの、又は、コエンザイムQ10の均一分散安定性が1点であるもの
【0059】
(実施例1) ヨーグルトの作製
脱脂粉乳:10.0重量部、寒天A:0.05重量部、甘味料:0.05重量部、水:89.76重量部を添加・溶解して原料ミックスを調製した。原料ミックス:3重量部を抜き取り、還元型コエンザイムQ10:0.14重量部を添加した後、ホモミキサーを用いて、160S-1で5分間攪拌して、溶解分散させた溶液を、残りの原料ミックスに添加した。得られた原料ミックスを60℃に予備加熱し、高圧ホモジナイザーを用いて14MPaの圧力で均質化し、プレート式熱交換器を用いて110℃まで昇温し、2秒間保持して殺菌処理を行った。その後、40℃まで冷却し、乳酸菌スターター(Streptococcus thermophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus、Lactobacillus acidophilus、Bifidobacterium lactis)を0.0176重量部添加し、10分間攪拌後、容器(上面直径:64.4mm、底面直径:50.6mm、高さ:54.4mmの円柱形)に90gを充填した。容器充填時の原料ミックスのpHは6.5であった。40℃でpHが4.7になるまで発酵を行った後、4℃の冷蔵庫に移動して冷却し、ヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目に、pH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の測定又は評価を行い、それらの結果を表1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
(実施例2) ヨーグルトの作製
表1の配合に従って、実施例1において脱脂粉乳:10.0重量部を13.5重量部に変更し、水で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表1に示した。
【0062】
(実施例3~8) ヨーグルトの作製
表1の配合に従って、実施例1において脱脂粉乳:10.0重量部と寒天A:0.05重量部をそれぞれ、12.0重量部と0.06重量部(実施例3)、11.0重量部と0.08重量部(実施例4)、13.2重量部と0.12重量部(実施例5)、12.7重量部と0.13重量部(実施例6)、12.0重量部と0.14重量部(実施例7)、又は、13.4重量部と0.14重量部(実施例8)に変更し、水で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表1に示した。
【0063】
表1から明らかなように、寒天の強度及び乳蛋白質の含有量が、図1中の領域(A)の範囲内にある実施例1~8のヨーグルトは、コエンザイムQ10の均一分散安定性と食感の評価が良好であった。特に、図2中の領域(B)の範囲内にある実施例4~8のヨーグルトの評価はより良好であり、殊に、図3中の領域(C)の範囲内にある実施例5~8のヨーグルトの評価は更に良好であった。
【0064】
(比較例1~6) ヨーグルトの作製
表2の配合に従って、実施例1において脱脂粉乳:10.0重量部と寒天A:0.05重量部をそれぞれ、9.0重量部と0.04重量部(比較例1)、14.0重量部と0.04重量部(比較例2)、9.0重量部と0.10重量部(比較例3)、14.5重量部と0.10重量部(比較例4)、11.0重量部と0.15重量部(比較例5)、又は、14.0重量部と0.15重量部(比較例6)に変更し、水で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表2に示した。
【0065】
【表2】
【0066】
表2から明らかなように、寒天の強度及び乳蛋白質の含有量が、図1中の領域(A)の範囲内にない比較例1~6のヨーグルトは、いずれも食感が劣るものであり、特に寒天の強度が30g・重量%/cm未満の比較例1及び2のヨーグルトはコエンザイムQ10の均一分散安定性も劣るものであった。
【0067】
(実施例9) ヨーグルトの作製
表3の配合に従って、実施例6において脱脂粉乳:12.7重量部を9.5重量部に変更し、更に乳蛋白:1.5重量部を添加して、水で全体量を調整した以外は、実施例6と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表3に示した。
【0068】
【表3】
【0069】
表3から明らかなように、乳蛋白質の種類を変更した実施例9のヨーグルトは、実施例6のヨーグルトと同様に、コエンザイムQ10の均一分散安定性と食感の評価が良好であった。
【0070】
(実施例10) ヨーグルトの作製
表3の配合に従って、実施例6において寒天A:0.13重量部を0.10重量部に変更し、更に寒天B:0.10重量部を添加して、水で全体量を調整した以外は、実施例6と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表3に示した。
【0071】
表3から明らかなように、寒天の強度を変更し、ゼリー強度10~300g/cmの範囲にある寒天Bと、ゼリー強度500~720g/cmの範囲にある寒天Aの2種類を使用した実施例10のヨーグルトは、コエンザイムQ10の均一分散安定性と食感の評価が良好であり、食感は実施例6のヨーグルトよりも優れていた。
【0072】
(実施例11) ヨーグルトの作製
表3の配合に従って、実施例6において還元型コエンザイムQ10:0.14重量部を0.30重量部に変更し、水で全体量を調整した以外は、実施例6と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表3に示した。
【0073】
表3から明らかなように、ヨーグルト中の還元型コエンザイムQ10が0.30重量%と多い実施例11のヨーグルトは、実施例6と同様に、コエンザイムQ10の均一分散安定性と食感の評価が良好であった。
【0074】
(実施例12) ヨーグルトの作製
表3の配合に従って、実施例6において還元型コエンザイムQ10を酸化型コエンザイムQ10に変更した以外は、実施例6と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表3に示した。
【0075】
表3から明らかなように、酸化型コエンザイムQ10を添加した実施例12のヨーグルトは、実施例6と同様に、コエンザイムQ10の均一分散安定性と食感の評価が良好であった。
【0076】
(比較例7~9) ヨーグルトの作製
表4の配合に従って、実施例10において寒天A:0.1重量部と寒天B:0.1重量部を、ゼラチン:0.2重量部(比較例7)、デキストリン:0.3重量部(比較例8)、又は、ペクチン:0.13重量部(比較例9)に変更し、水で全体量を調整した以外は、実施例10と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表4に示した。
【0077】
【表4】
【0078】
表4から明らかなように、ゼラチンを添加したヨーグルト(比較例7)、デキストリンを添加したヨーグルト(比較例8)、及び、ペクチンを使用したヨーグルト(比較例9)はいずれも、コエンザイムQ10の均一分散安定性の評価が劣るものであり、特にゼラチンを添加したヨーグルト(比較例7)、及び、ペクチンを使用したヨーグルト(比較例9)は食感も劣るものであった。
【0079】
(実施例13~14) ヨーグルトの作製
表5の配合に従って、実施例10において発酵終了時のpH4.7を、pH4.5(実施例13)、又は、pH4.8(実施例14)に変更した以外は、実施例10と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表5に示した。
【0080】
【表5】
【0081】
表5から明らかなように、発酵終了時のpHを変更して得られたヨーグルト(実施例13~14)はいずれも、コエンザイムQ10の均一分散安定性と食感の評価が良好であった。
【0082】
(実施例15) ヨーグルトの作製
表5の配合に従って、実施例10において、容器充填時のpH6.5を、pH5.7に変更した以外は、実施例10と同様にしてヨーグルトを作製した。得られたヨーグルトの製造後7日目のpH、ヨーグルト粒子のメジアン径、コエンザイムQ10の均一分散安定性、及び、食感の結果を表5に示した。
【0083】
表5から明らかなように、容器充填時のpHを変更して得られたヨーグルト(実施例15)は、コエンザイムQ10の均一分散安定性と食感の評価が良好であった。
図1
図2
図3