(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/2466 20180101AFI20241112BHJP
H01R 4/62 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
H01R4/2466
H01R4/62 A
(21)【出願番号】P 2021025338
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】池部 晃一
(72)【発明者】
【氏名】中田 洋人
(72)【発明者】
【氏名】原 涼介
(72)【発明者】
【氏名】河辺 一仁
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-272772(JP,A)
【文献】実開平04-023057(JP,U)
【文献】特開2001-057249(JP,A)
【文献】米国特許第04527852(US,A)
【文献】特開2022-061655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24-4/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に端子が取り付けられた端子付き電線であって、
前記電線は、
導電性の複数の素線が撚り合わされた形状を有する導体芯線を有し、
前記端子は、
前記電線の軸線に交差する方向に前記導体芯線を挟んで圧接する複数の圧接刃を有し、
前記複数の前記圧接刃は、
前記軸線に沿う方向に互いに所定間隔をあけて並ぶように配置され、
前記複数の前記素線のうちの前記導体芯線の外周に位置する外側素線の各々は、
前記複数の前記圧接刃の少なくとも一つに接触することにより、前記端子に導通接続され
、
前記素線が周方向に1周するために要する前記導体芯線の前記軸線に沿う方向の長さを撚りピッチPとしたとき、
前記端子は、前記複数の前記圧接刃として、前記軸線に沿う方向において互いに撚りピッチP/4だけ離れて配置された第1圧接刃及び第2圧接刃と、前記軸線に沿う方向において前記第1圧接刃と前記第2圧接刃との間に位置する第3圧接刃と、を有している、
端子付き電線。
【請求項2】
請求項1に記載の端子付き電線において、
前記複数の前記圧接刃の各々は、
前記軸線に交差する方向の一方側から前記外側素線に圧接する一の接点部と、前記軸線に交差する方向の他方側から前記外側素線に圧接する他の接点部と、を有し、
前記複数の前記圧接刃の少なくとも一つは、
前記一の接点部及び前記他の接点部の一方又は双方が、複数の前記外側素線に一括して圧接可能であるように、構成される、
端子付き電線。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の端子付き電線において、
前記複数の前記圧接刃は、
一の前記圧接刃が複数の前記外側素線の一部に圧接し、他の前記圧接刃が複数の前記外側素線の一部とは異なる他部に圧接するように、互いに前記所定間隔をあけて並ぶように配置される、
端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子に設けられた圧接刃を介して電線の導体芯線と端子とが導通接続される端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、端子に設けた圧接刃で電線の導体芯線を挟みながら押圧接触する(即ち、圧接する)ことで端子と電線とを導通接続した端子付き電線が提案されている。この種の端子付き電線は、典型的には、導体芯線が絶縁被覆に覆われた状態の電線をそのまま圧接刃の間に押し込むことで、圧接刃によって絶縁被覆を切り裂きながら圧接刃を導体芯線に接触させることで、導通接続の作業性を高めるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線の導体芯線が複数本の素線から構成されている場合(例えば、複数本の素線が束ねられている場合)、圧接刃は、その構造上、一部の素線には直接的に接触するものの、他の素線には直接的には接触できない。そこで、この種の端子付き電線では、素線の側面同士を密着させて素線間の導通を図ることで、圧接刃が直接的には接触できない素線と、圧接刃と、の間の導通(即ち、間接的な接続)を図るようになっている。しかし、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等で素線が構成される場合、素線の表面に自然生成する絶縁性の酸化皮膜に起因して素線間の導通性が低いため、圧接刃が直接的に接触する一部の素線のみが端子と電線との間の導通に寄与し、圧接刃が直接的には接触できない他の素線は実質的にその導通に寄与しないことになる。端子と電線との間の電気的接続の信頼性を高める観点から、複数の素線の全体と圧接刃との間の良好な導通を実現することが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上可能な端子付き電線の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
電線に端子が取り付けられた端子付き電線であって、
前記電線は、
導電性の複数の素線が撚り合わされた形状を有する導体芯線を有し、
前記端子は、
前記電線の軸線に交差する方向に前記導体芯線を挟んで圧接する複数の圧接刃を有し、
前記複数の前記圧接刃は、
前記軸線に沿う方向に互いに所定間隔をあけて並ぶように配置され、
前記複数の前記素線のうちの前記導体芯線の外周に位置する外側素線の各々は、
前記複数の前記圧接刃の少なくとも一つに接触することにより、前記端子に導通接続され、
前記素線が周方向に1周するために要する前記導体芯線の前記軸線に沿う方向の長さを撚りピッチPとしたとき、
前記端子は、前記複数の前記圧接刃として、前記軸線に沿う方向において互いに撚りピッチP/4だけ離れて配置された第1圧接刃及び第2圧接刃と、前記軸線に沿う方向において前記第1圧接刃と前記第2圧接刃との間に位置する第3圧接刃と、を有している、
端子付き電線であること。
[2]
上記[1]に記載の端子付き電線において、
前記複数の前記圧接刃の各々は、
前記軸線に交差する方向の一方側から前記外側素線に圧接する一の接点部と、前記軸線に交差する方向の他方側から前記外側素線に圧接する他の接点部と、を有し、
前記複数の前記圧接刃の少なくとも一つは、
前記一の接点部及び前記他の接点部の一方又は双方が、複数の前記外側素線に一括して圧接可能であるように、構成される、
端子付き電線であること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の端子付き電線において、
前記複数の前記圧接刃は、
一の前記圧接刃が複数の前記外側素線の一部に圧接し、他の前記圧接刃が複数の前記外側素線の一部とは異なる他部に圧接するように、互いに前記所定間隔をあけて並ぶように配置される、
端子付き電線であること。
【0007】
上記[1]の構成の端子付き電線によれば、電線は、複数の素線が撚り合わされた形状の導体芯線を有する。端子は複数の圧接刃を有し、複数の圧接刃は電線の軸線に沿う方向に所定間隔をあけて並べて配置されている。そして、複数の素線のうちの導体芯線の外周に位置する外側素線の各々が、少なくとも一つの圧接刃に接触するように、電線が端子に取り付けられる。これにより、上述した従来の端子付き電線に比べ、圧接刃に直接的に接触する素線(外側素線)の数を増大させることができる。換言すると、電線と端子との間の導通に寄与する素線の数を増大させることができる。したがって、本構成の端子付き電線は、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上可能である。
【0008】
上記[2]の構成の端子付き電線によれば、圧接刃が一対の接点部を有し、それら接点部の一方又は双方が、複数の外側素線に一括して圧接可能である。このような一括した圧接は、例えば、一対の接点部の間の間隔(いわゆる、スロット幅)を、導体芯線の太さに対して十分に狭くすることで、実現可能である。これにより、単一の外側素線にのみ圧接刃の接点部が接触する場合に比べ、少ない数の圧接刃で全ての外側素線との導通を図ることができる。その結果、端子の小型・軽量化に貢献することができる。
【0009】
上記[3]の構成の端子付き電線によれば、一の圧接刃が、複数の外側素線の一部に圧接し、他の圧接刃が、その一部とは異なる複数の外側素線の他部に圧接するように、圧接刃同士の間の間隔(所定間隔)が定められている。これにより、一の圧接刃が複数の外側素線の一部にも他部にも圧接する(即ち、素線との導通を図る圧接刃が重複する)場合に比べ、少ない数の圧接刃で全ての外側素線との導通を図ることができる。その結果、端子の小型・軽量化に貢献することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子と電線との間の電気的接続の信頼性を向上可能な端子付き電線を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る端子付き電線を構成することになる電線及び端子を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示す電線及び端子の側面図であり、
図2(b)は、
図1に示す電線の断面図である。
【
図3】
図3(a)は、端子の第1圧接刃に対応する箇所の電線が第1圧接刃に押圧接触する様子を示す断面図であり、
図3(b)は、端子の第2圧接刃に対応する箇所の電線が第2圧接刃に押圧接触する様子を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)は、耐久試験に使用された電線の断面図であり、
図4(b)は、耐久試験前後における端子-素線間の抵抗の測定結果を示すグラフであり、
図4(c)は、耐久試験前後における内側素線-外側素線間の抵抗の測定結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、変形例に係る端子を示し、
図5(a)は、その斜視図であり、
図5(b)は、その側面図である。
【
図6】
図6は、他の変形例に係る端子を示し、
図6(a)は、その斜視図であり、
図6(b)は、その側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る端子付き電線1について説明する。
図1及び
図2(a)に示すように、端子付き電線1は、端子20に設けられた後述する第1、第2圧接刃42a,42bで電線10の導体芯線11を挟みながら押圧接触することで、端子20と電線10とが導通接続される端子付き電線である。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図1~
図6に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」、及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、端子付き電線1(より具体的には、端子20)の延在方向と一致し、前側及び後側はそれぞれ、端子20の先端側及び基端側に対応している。以下、端子付き電線1を構成する各部材について順に説明する。
【0015】
まず、電線10について説明する。
図1及び
図2(a)に示すように、電線10は、導体芯線11と、導体芯線11の外周を覆う絶縁被覆12と、からなる。なお、
図1及び
図2(a)では、電線10の内部構造の理解容易化のため、電線10の先端から所定長さの部分だけ、絶縁被覆12を破線で示すことで、実際には絶縁被覆12によって覆われている導体芯線11を視認させている。
【0016】
導体芯線11は、本例では、複数本の素線13が撚り合わされた、いわゆる撚り線である。導体芯線11(複数本の素線13)の撚り方向は、導体芯線11の延在方向全域に亘って同じ一方向である。各素線13は、アルミニウム又はアルミニウム合金などの導電性を有する金属によって形成されている。絶縁被覆12は、絶縁性を有する樹脂により構成されている。
【0017】
導体芯線11は、本例では、
図2(b)に示すように、7本の素線13が撚り合わされで構成されている。以下、説明の便宜上、7本の素線13のうち、導体芯線11の外周に位置するもの(導体芯線11の外部から視認できるもの)を「外側素線13」と呼び、導体芯線11の外周に位置しないもの(導体芯線11の外部から視認できないもの)を「内側素線13」と呼ぶ。更に、7本の素線13の各々に、1~7の素線番号(
図2(b)参照)を付す。本例では、素線番号1の1本の素線13が内側素線13に対応し、素線番号2~7の6本の素線13が外側素線13に対応している。素線番号2~7の6本の素線13は、周方向に等間隔(60°等配)で、内側素線13の周りに位置している。
【0018】
なお、このような導体芯線11は、例えば、素線番号1の1本の直線状に延びた素線13の周りに素線番号2~7の6本の素線13を巻き付けることで形成され得る。以下、導体芯線11において、各素線13が周方向に1周するために要する導体芯線11の軸線方向の長さを「撚りピッチP」と呼ぶ。
【0019】
次いで、端子20について説明する。端子20は、本例では、母材としての導電性の金属板(例えば、銅板、銅合金)の表面がメッキ材(メッキ層)で覆われた金属板材に対して、プレス加工及び曲げ加工等が施されることで、形成されている。端子20は、
図1及び
図2(a)に示すように、端子接続部30、導体圧接部40、及び被覆加締部50を一体に備えている。端子接続部30、導体圧接部40、及び被覆加締部50は、この順で、前側から後側に向けて前後方向に沿って一列に並んでいる。
【0020】
端子接続部30は、端子20のうち、相手側端子と接続される部分であり、本例では、前後方向に延びる矩形筒状の形状を有する。導体圧接部40は、電線10の先端部の導体芯線11が圧接により接続される部分である。導体圧接部40は、前後方向に延びる底板及び一対の側板からなる板状部41を有する。板状部41には、2つの第1圧接刃42a及び第2圧接刃42bが、前後方向に間隔を空けて並ぶように設けられている。
【0021】
第1、第2圧接刃42a,42bの各々は、幅方向に隙間(スロット幅)W(
図3参照))を空けて幅方向に対向配置された一対の平板状の刃部43で構成されている。各刃部43は、本例では、板状部41の側板から幅方向内側(他方の側板)に向けて切り起こされた切り起し片である。スロット幅Wは、導体芯線11の外径より小さい。
【0022】
被覆加締部50は、電線10の絶縁被覆12に加締めにより圧着される部分であり、底板部51と、底板部51の幅方向両側縁から上方に延びる一対の加締め片52と、を備える。以上、端子付き電線1を構成する各部材について説明した。
【0023】
電線10に端子20を取り付けるためには、
図1及び
図2(a)に示すように、端子20の上方に電線10を配置した状態から、まず、電線10の先端部(導体芯線11が絶縁被覆12で覆われたままの部分)を、上方から、第1、第2圧接刃42a,42bの各々について、一対の刃部43の間に押し込む。これにより、第1、第2圧接刃42a,42bの各々について、一対の刃部43によって絶縁被覆12が切り裂かれると共に、導体芯線11が一対の刃部43によって幅方向に挟まれた状態で一対の刃部43と押圧接触する(
図3参照)。これにより、電線10の導体芯線11と、第1、第2圧接刃42a,42b(即ち、導体圧接部40)とが、導通接続する。
【0024】
次いで、被覆加締部50の一対の加締片52を加締めて、被覆加締部50に対応する箇所に位置する電線10の絶縁被覆12に対して被覆加締部50を圧着させる。以上により、電線10への端子20の取り付けが完了し、端子付き電線1が得られる。
【0025】
本実施形態に係る端子付き電線1において注目すべき点は、
図2(a)に示すように、2つの第1、第2圧接刃42a,42bの前後方向の間隔L=(撚りピッチP/4)に設定されていることである。以下、この点について説明する。
【0026】
間隔Lが、撚りピッチP/4と等しい値に設定されていることは、第1圧接刃42aに接触している導体芯線11の箇所に位置する各外側素線13の周方向の位相に対して、第2圧接刃42bに接触している導体芯線11の箇所に位置する各外側素線13の周方向の位相が、360°/4=90°だけずれている、ことを意味する。
【0027】
より具体的には、例えば、
図3(a)に示すように、第1圧接刃42aに接触している導体芯線11の箇所にて、素線番号2~7の6本の外側素線13のうち、素線番号3,6の2本の外側素線13が幅方向両端部に位置することで、素線番号3と6の2本の外側素線13のみが、第1圧接刃42aに押圧接触しているものとする。この場合、
図3(b)に示すように、第2圧接刃42bに接触している導体芯線11の箇所では、各外側素線13の周方向の位相が90°ずれることで、素線番号3と6の2本の外側素線13が上下方向両端部に位置し、幅方向両端部に位置する素線番号4,5,7,2の4本の外側素線13が、第2圧接刃42bに押圧接触する。
【0028】
この結果、素線番号2~7の6本の外側素線13の各々が、2つの第1、第2圧接刃42a,42bのうちの何れかに接触することになる。これにより、上述した従来の端子付き電線(複数の外側素線のうちの一部の素線が圧接刃に接触しないもの)に比べ、電線10と端子20との間の導通に寄与する素線13の数を増大させることができる。この結果、本実施形態に係る端子付き電線1は、端子20と電線10との間の導通性に優れる。
【0029】
以下、本実施形態に係る端子付き電線1が端子20と電線10との間の導通性に優れることを確認するために行われた試験について説明する。この試験では、本実施形態に係る端子付き電線1と同様、
図4(a)に示すように、素線番号1の1本の内側素線13の周りに素線番号2~7の6本の外側素線13が巻き付けられることで得られた導体芯線11を有する電線10が使用された。この電線10が端子20に取り付けられることで、試験用の端子付き電線1が準備された。試験用の端子付き電線1では、本実施形態と同様、2つの第1、第2圧接刃42a,42bの前後方向の間隔L=(撚りピッチP/4)に設定され、且つ、導体芯線11の外径に対するスロット幅W(
図3参照)の割合が60%とされた。
【0030】
この試験では、試験用の端子付き電線1に対して、まず、端子20と、導体芯線11を構成する7本の各素線13と、の間のそれぞれの電気抵抗(端子-素線間の抵抗)、並びに、1本の内側素線13と、6本の各外側素線13と、の間のそれぞれの電気抵抗(内側素線-外側素線間の抵抗)、が測定された。次いで、試験用の端子付き電線1に対して、所定の耐久試験が実行された。耐久試験としては、雰囲気温度の急激の上昇と急激な下降を繰り返す熱耐久試験(いわゆるサーマルショック試験)が実行された。
【0031】
そして、耐久試験後の試験用の端子付き電線1に対して、再び、端子20と、7本の各素線13と、の間のそれぞれの端子-素線間の抵抗、並びに、1本の内側素線13と、6本の各外側素線13と、の間のそれぞれの内側素線-外側素線間の抵抗、が測定された。
【0032】
図4(b)は、耐久試験前後における、端子-素線間のそれぞれの抵抗の推移を示し、
図4(c)は、耐久試験前後における、内側素線-外側素線間のそれぞれの抵抗の推移を示す。
図4(b)から理解できるように、試験用の端子付き電線1では、導体芯線11を構成する7本の素線13の全てについて、耐久試験後における端子-素線間の抵抗の増大が殆ど見られない。更に、
図4(c)から理解できるように、6本の外側素線13の全てについて、耐久試験後における内側素線-外側素線間の抵抗の増大が殆ど見られない。以上より、本実施形態に係る端子付き電線1は、耐久試験後においても、端子20と電線10との間の導通性に優れていることが判った。
【0033】
なお、
図4(b)に示すように、内側素線13が端子20(圧接刃42)と接触していないにもかかわらず、内側素線13についての端子-素線間の抵抗が、6本の外側素線13についての端子-素線間の抵抗と同等の値に抑えられている。これは、導体芯線11の外径に対するスロット幅W(
図3参照)の割合(=60%)を比較的小さく設定した(即即ち、第1、第2圧接刃42a,42bによる導体芯線11の圧縮割合を比較的大きく設定した)ことで、内側素線13と外側素線13との間の接触面圧が大きくなり、内側素線13と外側素線13との間の接触箇所での電気抵抗が小さくなったことに因る、と考えられる。
【0034】
(作用・効果)
以上、本実施形態に係る端子付き電線1によれば、電線10は、複数の素線13が撚り合わされた形状の導体芯線11を有する、いわゆる撚り線である。端子20には、複数の圧接刃42a,42bが電線10の軸線に沿う方向に並べて配置されている。そして、複数の素線13のうちの導体芯線11の外周に位置する素線13の各々が、少なくとも一つの圧接刃に接触するように、電線10が端子20に取り付けられる。これにより、上述した従来の端子付き電線に比べ、電線10と端子20との間の導通に寄与する素線13の数を増大させることができる。したがって、本実施形態に係る端子付き電線1は、端子20と電線10との間の導通性に優れる。
【0035】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0036】
例えば、上記実施形態では、2つの第1、第2圧接刃42a,42bの前後方向の間隔Lが、撚りピッチP/4と等しい値に設定されている。これに対し、導体芯線11に含まれる6本の外側素線13の全てが2つの圧接刃42a,42bの何れかと接触する限りにおいて、間隔Lが、撚りピッチP/4より僅かに小さい値又は僅かに大きい値に設定されていてもよい。更には、導体芯線11に含まれる複数本の外側素線13の全てが複数の圧接刃42の少なくとも一つと接触するように、導体芯線11に含まれる外側素線13の数、撚りピッチP、刃部43に一括して接触可能な外側素線13の数などを考慮しながら、端子20に設けられる圧接刃42の数や、隣接する圧接刃42の間隔を定めればよい。
【0037】
更に、上記実施形態では、導体芯線11は、1本の直線状に延びた素線13の周りに複数本の素線13を巻き付けることで形成されている。これに対し、導体芯線11が、直線状に延びた複数の素線13を束ねて一括して撚ることで形成されてもよいし、導体芯線11が、複数の素線13を撚って得られた撚り線を複数束ねて更に撚り合わせることで形成されてもよい。
【0038】
更に、上記実施形態では、間隔L=撚りピッチP/4だけ離れた2つの第1、第2圧接刃42a,42bが、端子20に設けられている。これに対し、
図5に示すように、間隔L=撚りピッチP/4だけ離れた2つの第1、第2圧接刃42a,42bに加えて、第1、第2圧接刃42a,42bの間に位置する第3圧接刃42cが、端子20に更に設けられていてもよい。これによっても、第1、第2圧接刃42a,42bの間隔L=撚りピッチP/4に設定されていることで、電線10の導体芯線11に含まれる6本の外側素線13の各々が第1、第2圧接刃42a,42bのうちの何れかに接触することになる。この結果、端子20と電線10との間の導通性に優れる。
図5に示す例では、2つの第1、第2圧接刃42a,42bに加えて更に第3圧接刃42cによっても電線10が保持されることで、端子20による電線10の保持機能が増大する。
【0039】
更に、上記実施形態では、端子20は、端子接続部30、導体圧接部40、及び被覆加締部50を一体に備えている。これに対し、
図6に示すように、端子20が、導体圧接部40のみを備えたジョイント端子であってもよい。
図6に示す例では、端子20の導体圧接部40は、連結部44によって間隔L=撚りピッチP/4だけ前後方向に離れるように連結された2つの第1、第2圧接刃42a,42bが、板状部41の幅方向の一側端部から前方に延びるように設けられ、且つ、連結部44によって間隔L=撚りピッチP/4だけ前後方向に離れるように連結された2つの第3、第4圧接刃42c,42dが、板状部41の幅方向の他側端部から後方に延びるように設けられている。
【0040】
図6に示す例では、6本の外側素線13を含む導体芯線11を備えた第1の電線10が第1、第2圧接刃42a,42bによって圧接・保持され、6本の外側素線13を含む導体芯線11を備えた第2の電線10が第3、第4圧接刃42c,42dによって圧接・保持されることで、第1の電線10及び第2の電線10が導通接続される。この場合においても、2つの第1、第2圧接刃42a,42bの間隔L=撚りピッチP/4に設定されていることで、第1の電線10の導体芯線11に含まれる6本の外側素線13の各々が第1、第2圧接刃42a,42bのうちの何れかに接触し、2つの第3、第4圧接刃42c,42dの間隔L=撚りピッチP/4に設定されていることで、第2の電線10の導体芯線11に含まれる6本の外側素線13の各々が第3、第4圧接刃42c,42dのうちの何れかに接触することになる。この結果、端子20(導体圧接部40)と、第1の電線10及び第2の電線10と、の間の導通性に優れる。
【0041】
ここで、上述した本発明に係る端子付き電線1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電線(10)に端子(20)が取り付けられた端子付き電線(1)であって、
前記電線(10)は、
導電性の複数の素線(13)が撚り合わされた形状を有する導体芯線(11)を有し、
前記端子(20)は、
前記電線(10)の軸線に交差する方向に前記導体芯線(11)を挟んで圧接する複数の圧接刃(42a,42b)を有し、
前記複数の前記圧接刃(42a,42b)は、
前記軸線に沿う方向互いに所定間隔をあけて並ぶように配置され、
前記複数の前記素線(13)のうちの前記導体芯線(11)の外周に位置する外側素線(13)の各々は、
前記複数の前記圧接刃(42a,42b)の少なくとも一つに接触することにより、前記端子(20)に導通接続される、
端子付き電線(1)。
[2]
上記[1]に記載の端子付き電線において、
前記複数の前記圧接刃(42a,42b)の各々は、
前記軸線に交差する方向の一方側から前記外側素線(13)に圧接する一の接点部(43)と、前記軸線に交差する方向の他方側から前記外側素線(13)に圧接する他の接点部(43)と、を有し、
前記複数の前記圧接刃(42a,42b)の少なくとも一つは、
前記一の接点部(43)及び前記他の接点部(43)の一方又は双方が、複数の前記外側素線(13)に一括して圧接可能であるように、構成される、
端子付き電線(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の端子付き電線において、
前記複数の前記圧接刃(42a,42b)は、
一の前記圧接刃(42a)が複数の前記外側素線(13)の一部に圧接し、他の前記圧接刃(42b)が複数の前記外側素線(13)の一部とは異なる他部に圧接するように、互いに前記所定間隔(L)をあけて並ぶように配置される、
端子付き電線(1)。
【符号の説明】
【0042】
1 端子付き電線
10 電線
11 導体芯線
13 素線
20 端子
42a 第1圧接刃(圧接刃)
42b 第2圧接刃(圧接刃)
43 刃部(接点部)