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7586735負極活物質、負極層およびフッ化物イオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】負極活物質、負極層およびフッ化物イオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20241112BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241112BHJP
   H01M 10/05 20100101ALI20241112BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M10/05
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021033737
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134553
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-11-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚久
(72)【発明者】
【氏名】森田 善幸
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187943(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/132550(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/104234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlFと、LiAlFと、LiZrFと、を含む、負極活物質。
【請求項2】
AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体を含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の負極活物質を含む、負極層。
【請求項4】
請求項3に記載の負極層と、電解質と、正極層と、を有する、フッ化物イオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、負極層およびフッ化物イオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高エネルギー密度を有する二次電池として、リチウムイオン二次電池が幅広く普及している。リチウムイオン二次電池は、正極と、負極との間に、セパレータが配置されており、電解液が充填されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の電解液は、通常、可燃性の有機溶媒を含むため、熱に対する安全性が問題となる場合があった。
【0004】
そこで、正極層と、負極層との間に、固体電解質層が配置されている全固体電池として、フッ化物イオン二次電池が検討されている(例えば、特許文献1~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-87403号公報
【文献】特開2017-50113号公報
【文献】特開2019-29206号公報
【文献】特開2018-206755号公報
【文献】特開2018-198130号公報
【文献】特開2018-92863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フッ化物イオン二次電池の負極活物質として、フッ化アルミニウムが検討されているが、フッ化アルミニウムは、絶縁性を有するため、電気化学的反応が起こりにくい。
【0007】
そこで、本出願人は、フッ化物イオン二次電池の負極活物質として、LiAlFを用いることを提案しているが、フッ化物イオン二次電池の充放電容量をさらに向上させることが望まれている。
【0008】
本発明は、フッ化物イオン二次電池の充放電容量を向上させることが可能な負極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、負極活物質において、AlFと、LiAlFと、LiZrFと、を含む。
【0010】
上記の負極活物質は、AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体を含んでいてもよい。
【0011】
本発明の他の一態様は、負極層において、上記の負極活物質を含む。
【0012】
本発明の他の一態様は、フッ化物イオン二次電池において、上記の負極層と、電解質と、正極層と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フッ化物イオン二次電池の充放電容量を向上させることが可能な負極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1のAlF-LiAlF-LiZrF複合体のXRDスペクトルである。
図2】実施例1のAlF-LiAlF-LiZrF複合体のSEM写真およびEPMA分析結果である。
図3】実施例1、2および比較例1、2の全固体フッ化物イオン二次電池の初回充放電曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
<負極活物質>
本実施形態の負極活物質は、AlFと、LiAlFと、LiZrFと、を含む。このため、本実施形態の負極活物質をフッ化物イオン二次電池に適用した場合の充放電容量が向上する。
【0017】
ここで、LiZrFは、充電時に、AlFおよびLiAlFよりも先に脱フッ化し、フッ化物イオン二次電池の電圧を安定化させることで、AlFおよびLiAlFが脱フッ化しやすくなるため、フッ化物イオン二次電池の充放電容量が向上する。
【0018】
AlFに対するLiAlFのモル比は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。AlFに対するLiAlFのモル比が0.1以上であると、LiAlFと、不活性なAlFとの接触が多くなるため、AlFの脱フッ化が起こりやすくなる。
【0019】
AlFに対するLiZrFのモル比は、0.1以上3以下であることが好ましく、0.3以上1.5以下であることがさらに好ましい。AlFに対するLiZrFのモル比が0.1以上であると、LiZrFと、不活性なAlFとの接触が多くなるとともに、フッ化物イオン二次電池の電圧の安定性が向上するため、AlFの脱フッ化が起こりやすくなる。また、AlFに対するLiZrFのモル比が3以下であると、フッ化物イオン二次電池の容量と電圧が向上する。
【0020】
本実施形態の負極活物質は、AlF、LiAlFおよびLiZrF以外の負極活物質をさらに含んでいてもよい。
【0021】
AlF、LiAlFおよびLiZrF以外の負極活物質としては、フッ化物イオン二次電池に用いられる負極活物質であれば、特に限定されない。
【0022】
[AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体]
本実施形態の負極活物質は、AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体を含んでいてもよい。これにより、本実施形態の負極活物質をフッ化物イオン二次電池に適用した場合の充放電容量が向上する。
【0023】
AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体は、例えば、AlFおよびLiAlFの表面の少なくとも一部がLiZrFにより被覆されている。
【0024】
AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体の粒径は、1mm以下であることが好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体の粒径が1mm以下であると、負極層用粉体組成物を作製する時に均一な粉末になりやすい。
【0025】
[AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体の製造方法]
AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体は、AlF、LiFおよびZrFを粉砕した後、焼成することにより、得られる。このとき、LiFとZrFがモル比2:1で反応してLiZrFが生成した後、残留したLiFとAlFがモル比3:1で反応してLiAlFが生成し、残留したAlFが存在する。
【0026】
AlFに対するLiFのモル比は、1以上5以下であることが好ましい。AlFに対するLiFのモル比が1以上5以下であると、AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体のイオン伝導性が高くなるため、AlFの脱フッ化が起こりやすくなる。
【0027】
AlFに対するZrFのモル比は、0.1以上3以下であることが好ましく、0.3以上1.5以下であることがさらに好ましい。AlFに対するZrFのモル比が0.1以上であると、AlFと、LiAlFと、LiZrFとの複合体のイオン伝導性が高くなるため、AlFの脱フッ化が起こりやすくなる。また、AlFに対するZrFのモル比が3以下であると、フッ化物イオン二次電池の容量と電圧が向上する。
【0028】
AlF、LiFおよびZrFを粉砕する方法としては、例えば、ボールミルを用いて、粉砕する方法等が挙げられる。
【0029】
焼成温度は、850℃以上900℃以下であることが好ましい。焼成温度が850℃以上であると、反応が十分に進行し、900℃以下であると、原料の蒸発が抑制される。
【0030】
焼成時間は、1時間以上3時間以下であることが好ましい。焼成時間が1時間以上であると、反応が十分に進行し、3時間以下であると、原料の蒸発が抑制される。
【0031】
<負極層>
本実施形態の負極層は、本実施形態の負極活物質を含み、導電助剤、固体電解質等をさらに含んでいてもよい。
【0032】
本実施形態の負極層中のAlF、LiAlFおよびLiZrFの総含有量は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の負極層中のAlF、LiAlFおよびLiZrFの総含有量が50質量%以下であると、本実施形態の負極層をフッ化物イオン二次電池に適用した場合の充放電容量が向上する。
【0033】
[導電助剤]
導電助剤としては、例えば、炭素材料等が挙げられる。
【0034】
炭素材料は、カーボンブラックであってもよい。
【0035】
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0036】
[固体電解質]
固体電解質としては、例えば、フッ化アルカリ土類金属でドープされているフッ化ランタノイド、フッ化アルカリ土類金属等が挙げられる。これらの中でも、イオン伝導性の点で、フッ化アルカリ土類金属でドープされているフッ化ランタノイドが好ましい。
【0037】
フッ化ランタノイドとしては、特に限定されないが、例えば、LaF、CeF、SmF、NdF等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0038】
フッ化ランタノイドをドープするフッ化アルカリ土類金属としては、イオン伝導性を有していれば、特に限定されないが、例えば、CaF、SrF、BaF等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0039】
フッ化アルカリ土類金属でドープされているフッ化ランタノイドとしては、例えば、La0.9Ba0.12.9、Ce0.95Ba0.052.95、Ce0.95Sr0.052.95、Ce0.95Ca0.052.95等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0040】
本実施形態の負極層が、導電助剤として、炭素材料を含む場合、フッ化アルカリ土類金属でドープされているフッ化ランタノイドは、炭素材料と複合化されていてもよい。すなわち、本実施形態の負極層は、フッ化アルカリ土類金属でドープされているフッ化ランタノイドと炭素材料との複合体(以下、フッ化ランタノイドと炭素材料との複合体ともいう)を含んでいてもよい。
【0041】
[フッ化ランタノイドと炭素材料との複合体]
フッ化ランタノイドと炭素材料との複合体は、例えば、フッ化ランタノイド粒子の表面の少なくとも一部が炭素材料により被覆されている。
【0042】
フッ化ランタノイドと炭素材料との複合体の粒径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。フッ化ランタノイドと炭素材料との複合体の粒径が10μm以下であると、イオン伝導性および電子伝導性が向上する。
【0043】
フッ化アルカリ土類金属でドープされているフッ化ランタノイドに対する炭素材料の質量比は、イオン伝導性および電子伝導性のバランスの点から、3質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の負極層中のフッ化ランタノイドと炭素材料との複合体の含有量は、60質量%以上70質量%以下であることが好ましい。本実施形態の負極層中のフッ化ランタノイドと炭素材料との複合体の含有量が60質量%以上70質量%以下であると、本実施形態の負極層をフッ化物イオン二次電池に適用した場合の放電容量が向上する。
【0045】
[フッ化ランタノイドと炭素材料との複合体の製造方法]
フッ化ランタノイドと炭素材料との複合体(以下、複合体ともいう)の製造方法は、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末を得る第1工程と、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末と、炭素材料と、を混合して、複合体前駆体を得る第2工程と、複合体前駆体を焼成して、複合体を得る第3工程と、を含む。
【0046】
第1工程は、フッ化ランタノイドと、フッ化アルカリ土類金属と、を混合し、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末を得る工程である。すなわち、フッ化ランタノイドと、フッ化アルカリ土類金属と、を混合することで、焼成時に、フッ化ランタノイドおよびフッ化アルカリ土類金属に由来する元素の固相拡散距離を短縮させることができる。また、焼成後に、フッ化ランタノイドおよびフッ化アルカリ土類金属の結晶構造が残存しない、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末が得られる。
【0047】
フッ化ランタノイドと、フッ化アルカリ土類金属と、を混合する方法としては、特に限定されず、乾式法および湿式法のいずれを用いてもよいが、例えば、乳鉢を用いて、混合する方法等が挙げられる。
【0048】
なお、フッ化ランタノイドと、フッ化アルカリ土類金属と、を混合する温度、時間等の条件は、適宜設定することができる。
【0049】
また、第1工程において、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末を粉砕してもよい。
【0050】
フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末を粉砕する方法としては、例えば、ボールミルを用いて、粉砕する方法等が挙げられる。
【0051】
第2工程は、第1工程で得られたフッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末と、炭素材料と、を混合し、複合体前駆体を得る工程である。
【0052】
複合体の製造方法は、第3工程の前段階に、第2工程を実施して、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末に炭素材料をあらかじめ混合する。これにより、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末の表面に、炭素材料が配置されている複合体前駆体が得られる。
【0053】
このため、第3工程において、複合体前駆体を焼成することで、フッ化アルカリ土類金属でドープされているフッ化ランタノイド粒子の表面の少なくとも一部が、炭素材料により被覆されている複合体が得られる。
【0054】
また、第2工程において、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末の表面に炭素材料を配置することで、第3工程における結晶化過程において、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末の粒成長や粒子界面の融着による粒径の粗大化を抑制し、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末の粒径をおおよそ維持した複合体が得られる。
【0055】
第2工程において、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末と、炭素材料と、を混合する方法としては、特に限定されず、乾式法および湿式法のいずれを用いてもよいが、例えば、乳鉢を用いて、混合する方法等が挙げられる。
【0056】
なお、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末と、炭素材料と、を混合する際には、せん断を印加することが好ましい。
【0057】
また、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末と、炭素材料と、を混合する温度等の条件は、適宜設定することができる。
【0058】
さらに、第2工程において、複合体前駆体を粉砕してもよい。
【0059】
複合体前駆体を粉砕する方法としては、例えば、ボールミルを用いて、粉砕する方法、乳鉢を用いて、粉砕する方法等が挙げられる。
【0060】
第3工程は、第2工程で得られた複合体前駆体を焼成して、複合体を得る工程である。
【0061】
第2工程において、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末の表面に炭素材料が配置されている複合体前駆体を得ることで、第3工程における結晶化過程において、フッ化ランタノイド-フッ化アルカリ土類金属混合粉末の粒成長や粒子界面の融着による粒径の粗大化を抑制し、その結果、複合体前駆体の粒径をおおよそ維持した複合体が得られる。
【0062】
なお、複合体前駆体を焼成する条件は、適宜設定することができる。
【0063】
また、第3工程において、複合体を粉砕してもよい。
【0064】
複合体を粉砕する方法としては、例えば、乳鉢を用いて、粉砕する方法等が挙げられる。
【0065】
<フッ化物イオン二次電池>
【0066】
本実施形態のフッ化物イオン二次電池は、本実施形態の負極層と、電解質と、正極層と、を有する。
【0067】
[電解質]
電解質は、電解液であってもよいし、固体電解質またはゲル状電解質であってもよい。また、固体電解質またはゲル状電解質は、有機系であってもよいし、無機系であってもよい。
【0068】
固体電解質としては、公知の固体電解質を用いることができる。例えば、固体電解質として、本実施形態の負極層に含まれる固体電解質を用いてもよい。
【0069】
なお、電解質として、固体電解質を用いる場合は、本実施形態のフッ化物イオン二次電池は、全固体フッ化物イオン二次電池となる。全固体フッ化物イオン二次電池は、例えば、正極集電体と、正極層と、固体電解質層と、負極層と、負極集電体とが、順次配置されている。
【0070】
[正極層]
正極層は、例えば、正極活物質と、固体電解質と、導電助剤と、を含む。このとき、本実施形態の負極層の標準電極電位に対して、十分に高い標準電極電位が得られる正極層を用いることが好ましい。
【0071】
正極活物質としては、例えば、Pb、Cu、Sn、Bi、Ag等が挙げられる。
【0072】
固体電解質としては、例えば、PbSnF、Ce1-xBa3-x等が挙げられる。
【0073】
導電助剤としては、例えば、炭素材料等が挙げられる。
【0074】
[正極集電体および負極集電体]
正極集電体としては、例えば、鉛板、アルミニウム箔等が挙げられる。また、負極集電体としては、例えば、金箔等が挙げられる。
【実施例
【0075】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
以下の方法により、全固体フッ化物イオン二次電池を作製した。なお、特に記載が無い場合は、各工程を、アルゴンガス循環精製装置付きパージ式グローブボックスDBO-1.5B(美和製作所製)の内部で実施した。
【0077】
[AlF-LiAlF-LiZrF複合体の作製]
AlF粉末4.7gと、LiF粉末4.4gと、ZrF粉末0.9gと、直径10mmの窒化ケイ素製の粉砕ボール(フリッチュ製)20個と、を、80ccの窒化ケイ素製のボールミルポットとしての、プレミアムラインPL-7専用容器(フリッチュ製)に投入した後、密封した。ここで、AlF、LiFおよびZrFのモル比は、1:3:0.5である。
【0078】
密封したボールミルポットをグローブボックスの外部に搬出した後、ボールミルによる粉砕処理を実施した。このとき、粉砕処理条件は、以下に記載されている通りである。
【0079】
回転数:400rpm
粉砕処理時間:15分
粉砕処理回数:40回
粉砕処理間の休止時間:5分
回転リバース:ON
【0080】
ボールミルポットをグローブボックスの内部に搬入した後、ボールミルポットの内部から、AlF-LiAlF-LiZrF混合粉末を回収した。
【0081】
AlF-LiAlF-LiZrF混合粉末を、アルミナ製るつぼに移し入れた後、小型電気炉KSL-1100X(MTI製)を用いて、焼成し、AlF-LiAlF-LiZrF複合体を得た。このとき、焼成条件は、以下に記載されている通りである。
【0082】
アルゴンガスの流速:300cc/min
昇温速度:184℃/h
到達最高温度:900℃
到達最高温度における保持時間:1時間
降温速度:制御なし
冷却方法:自然放冷
【0083】
アルミナ製るつぼの内部から、AlF-LiAlF-LiZrF複合体を回収した後、メノウ製乳鉢および乳棒を用いて、5~10分間粉砕した。
【0084】
XRDを用いて、AlF-LiAlF-LiZrF複合体を分析した。
【0085】
図1に、AlF-LiAlF-LiZrF複合体のXRDスペクトルを示す。なお、図1には、AlF、LiF、ZrF、LiAlFおよびLiZrFのXRDスペクトルも併せて示す。
【0086】
図1から、AlF-LiAlF-LiZrF複合体のXRDスペクトルは、原料のLiFおよびZrF由来のピークが消失し、生成物のLiAlFおよびLiZrF由来のピークが出現していることがわかる。
【0087】
SEM-EPMAを用いて、AlF-LiAlF-LiZrF複合体を観察した。このとき、マッピングの元素は、AlおよびZrを対象とした。
【0088】
図2に、AlF-LiAlF-LiZrF複合体のSEM写真およびEPMA分析結果を示す。
【0089】
図2から、AlF-LiAlF-LiZrF複合体は、AlFおよびLiAlFの表面がLiZrFにより被覆されていることがわかる。
【0090】
[Ce0.95Ba0.052.95-AB複合体の作製]
(第1工程)
CeF粉末(シグマアルドリッチ製;純度99.99%)8.598gおよびBaF粉末(高純度化学研究所製;純度99.9%)0.402gを秤量した後、メノウ製乳鉢および乳棒を用いて、5~10分間混合して、CeF-BaF混合粉末を得た。
【0091】
CeF-BaF混合粉末と、直径10mmの窒化ケイ素製の粉砕ボール(フリッチュ製)20個と、を、80ccの窒化ケイ素製のボールミルポットとしての、プレミアムラインPL-7専用容器(フリッチュ製)に投入した後、密封した。
【0092】
密封したボールミルポットをグローブボックスの外部に搬出した後、ボールミルによる粉砕処理を実施した。このとき、粉砕処理条件は、以下に記載されている通りである。
【0093】
回転数:800rpm
粉砕処理時間:60分
粉砕処理回数:40回
粉砕処理間の休止時間:5分
回転リバース:ON
【0094】
ボールミルポットをグローブボックスの内部に搬入した後、ボールミルポットの内部から、CeF-BaF混合粉末を回収した。
【0095】
(第2工程)
メノウ製乳鉢および乳棒を用いて、CeF-BaF混合粉末700mgと、アセチレンブラック(AB)としての、デンカブラック(電気化学工業製)50mgと、を混合し、Ce0.95Ba0.052.95-AB複合体前駆体を得た。
【0096】
Ce0.95Ba0.052.95-AB複合体前駆体と、直径10mmのジルコニア製の粉砕ボール(フリッチュ製)20個と、直径10mmの窒化ケイ素製の粉砕ボール(フリッチュ製)20個と、を、80ccの窒化ケイ素製のボールミルポットとしての、プレミアムラインPL-7専用容器(フリッチュ製)に投入した後、密封した。
【0097】
密封したボールミルポットをグローブボックスの外部に搬出した後、ボールミルによる粉砕処理を実施した。このとき、粉砕処理条件は、以下に記載されている通りである。
【0098】
回転数:800rpm
粉砕処理時間:60分
粉砕処理回数:40回
粉砕処理間の休止時間:5分
回転リバース:ON
【0099】
ボールミルポットをグローブボックスの内部に搬入した後、ボールミルポットの内部から、Ce0.95Ba0.052.95-AB複合体前駆体を回収した。回収したCe0.95Ba0.052.95-AB複合体前駆体を、メノウ製乳鉢および乳棒を用いて、5~10分間粉砕した。
【0100】
(第3工程)
Ce0.95Ba0.052.95-AB複合体前駆体を、アルミナ製るつぼに移し入れた後、小型電気炉KSL-1100X(MTI製)を用いて、焼成し、Ce0.95Ba0.052.95-AB複合体を得た。このとき、焼成条件は、以下に記載されている通りである。
【0101】
アルゴンガスの流速:300cc/min
昇温速度:184℃/h
到達最高温度:1100℃
到達最高温度における保持時間:1時間
降温速度:制御なし
冷却方法:自然放冷
【0102】
アルミナ製るつぼの内部から、Ce0.95Ba0.052.95-AB複合体を回収した後、メノウ製乳鉢および乳棒を用いて、5~10分間粉砕した。
【0103】
[負極層用粉体組成物の作製]
AlF-LiAlF-LiZrF複合体250mgと、Ce0.95Ba0.052.95-AB複合体750mgと、直径2mmの窒化ケイ素製の粉砕ボール(フリッチュ製)40gと、を、45ccの窒化ケイ素製のボールミルポットとしての、プレミアムラインPL-7専用容器(フリッチュ製)に投入した後、密封した。
【0104】
密封したボールミルポットをグローブボックスの外部に搬出した後、ボールミルによる粉砕処理を実施した。このとき、粉砕処理条件は、以下に記載されている通りである。
【0105】
回転数:300rpm
粉砕処理時間:15分
粉砕処理回数:40回
粉砕処理間の休止時間:5分
回転リバース:ON
【0106】
ボールミルポットをグローブボックスの内部に搬入した後、ボールミルポットの内部から、負極層用粉体組成物を回収した。
【0107】
[正極層用粉体(PbSnF-AB複合体)の作製]
フッ化鉛粉末(高純度化学製)63.7質量%と、フッ化スズ粉末(高純度化学製)29.6質量%と、ABとしての、デンカブラック(デンカ製)6.7質量%とを、ボールミルで混合した後、アルゴン雰囲気下、400℃で1時間焼成し、PbSnF-AB複合体とした。
【0108】
[固体電解質層用粉体(Ce0.95Ba0.052.95)の作製]
(第1工程)
CeF粉末(シグマアルドリッチ製;純度99.99%)8.598gおよびBaF粉末(高純度化学研究所製;純度99.9%)0.402gを秤量した後、メノウ製乳鉢および乳棒を用いて、5~10分間混合して、CeF-BaF混合粉末を得た。
【0109】
CeF-BaF混合粉末と、直径10mmの窒化ケイ素製の粉砕ボール(フリッチュ製)20個と、を、80ccの窒化ケイ素製のボールミルポットとしての、プレミアムラインPL-7専用容器(フリッチュ製)に投入した後、密封した。
【0110】
密封したボールミルポットをグローブボックスの外部に搬出した後、ボールミルによる粉砕処理を実施した。このとき、粉砕処理条件は、以下に記載されている通りである。
【0111】
回転数:800rpm
粉砕処理時間:60分
粉砕処理回数:40回
粉砕処理間の休止時間:5分
回転リバース:ON
【0112】
ボールミルポットをグローブボックスの内部に搬入した後、ボールミルポットの内部から、CeF-BaF混合粉末を回収した。
【0113】
(第2工程)
CeF-BaF混合粉末を、アルミナ製るつぼに移し入れた後、小型電気炉KSL-1100X(MTI製)を用いて、焼成し、Ce0.95Ba0.052.95を得た。このとき、焼成条件は、以下に記載されている通りである。
【0114】
アルゴンガスの流速:300cc/min
昇温速度:184℃/h
到達最高温度:1100℃
到達最高温度における保持時間:1時間
降温速度:制御なし
冷却方法:自然放冷
【0115】
アルミナ製るつぼの内部から、Ce0.95Ba0.052.95を回収した後、メノウ製乳鉢および乳棒を用いて、5~10分間粉砕した。
【0116】
[全固体フッ化物イオン二次電池の作製]
錠剤成型器を用いて、圧力40MPaでプレスすることにより、圧粉成型した円柱状のペレット型セルを作製した。具体的には、負極集電体としての、厚さ20μmの金箔(ニラコ製;純度99.99%)と、負極層用粉体組成物10mgと、固体電解質層用粉体150mgと、正極層用粉体20mgと、正極活物質且つ正極集電体としての、厚さ200μmの鉛板(ニラコ製;純度99.99%)と、正極集電体としての、厚さ20μmのアルミニウム箔(ニラコ製;純度99+%)とを、この順に錠剤成型器に投入することにより、ペレット型セルを作製した。
【0117】
[実施例2]
負極層用粉体組成物を作製する際に、AlF-LiAlF-LiZrF複合体250mgの代わりに、AlF粉末28mg、LiAlF粉末110mgおよびLiZrF粉末112mgの混合物(モル比0.5:1:0.8)を用い、粉砕処理条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、全固体フッ化物イオン二次電池を作製した。
【0118】
回転数:300rpm
粉砕処理時間:15分
粉砕処理回数:40回
粉砕処理間の休止時間:5分
回転リバース:ON
【0119】
[比較例1]
負極層用粉体組成物を作製する際に、AlF粉末、LiAlF粉末およびLiZrF粉末の混合物の代わりに、LiAlF粉末を用いた以外は、実施例2と同様にして、全固体フッ化物イオン二次電池を作製した。
【0120】
[比較例2]
負極層用粉体組成物を作製する際に、AlF粉末、LiAlF粉末およびLiZrF粉末の混合物の代わりに、LiZrF粉末を用いた以外は、実施例2と同様にして、全固体フッ化物イオン二次電池を作製した。
【0121】
[AlF-LiAlF-LiZrF複合体およびCe0.95Ba0.052.95-AB複合体の粒径]
走査電子顕微鏡SU-6600(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、粉末を撮影した後、複数視野のSEM像における粉末の長さを計測し、粒径とした。
【0122】
その結果、AlF-LiAlF-LiZrF複合体およびCe0.95Ba0.052.95-AB複合体の粒径は、それぞれ200μmおよび50μmであった。
【0123】
[充放電試験]
全固体フッ化物イオン二次電池の定電流充放電試験を実施した。具体的には、ポテンショガルバノスタット装置SI1287/1255B(ソーラトロン製)を用いて、真空、140℃の環境下、充電時の電流を0.04mA、放電時の電流を0.02mAとし、下限電圧-2.44V、上限電圧-0.1Vとして、充電より開始して、定電流充放電試験を実施した。
【0124】
図3に、実施例1、2および比較例1、2の全固体フッ化物イオン二次電池の初回充放電曲線を示す。
【0125】
図3から、実施例1、2の全固体フッ化物イオン二次電池は、比較例1、2の全固体フッ化物イオン二次電池よりも、充放電容量が高いことがわかる。
図1
図2
図3