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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】成形装置、表皮一体パッド、車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/06 20060101AFI20241112BHJP
   B68G 15/00 20060101ALI20241112BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20241112BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20241112BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20241112BHJP
   B29C 33/16 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 44/58 20060101ALI20241112BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
B68G7/06 A
B68G15/00
A47C7/18
A47C27/14 A
B60N2/90
B29C33/16
B29C39/10
B29C39/26
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C44/58
B29L31:58
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021037740
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137985
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和樹
(72)【発明者】
【氏名】秋元 厚志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克司
(72)【発明者】
【氏名】堀井 礼奈
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166638(JP,A)
【文献】実開平04-132913(JP,U)
【文献】特開昭63-168315(JP,A)
【文献】特開2006-315348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/00-12
B68G 15/00
A47C 7/18
A47C 27/14
B60N 2/00-90
B29C 33/16
B29C 39/00-44
B29C 44/00-60
B29L 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド材が一体化され、端末部が前記パッド材の裏面側に配置された状態で当該パッド材を被覆する表皮と、
前記表皮の端末部において前記パッド材とは反対側に設けられ、当該パッド材を成形する成形装置の一部を構成する成形用型に固定される固定部材と、
を含んで構成されている表皮一体パッドを成形する前記成形用型は、
前記表皮が収容される下型と、
前記下型との間で前記表皮一体パッドを成形する空間を形成する上型と、
前記上型と前記下型の間に配置され、当該下型に収容された表皮の端末部に設けられた前記固定部材が固定される中型と、
を含んで構成されている成形装置。
【請求項2】
前記中型において前記固定部材が当接する箇所に設けられ当該固定部材が固定される固定部は略平面状に形成されている請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記中型の少なくとも一部には、前記固定部材が固定されるマグネット又は磁性体が設けられている請求項1に記載の成形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の成形装置の一部を構成する成形用型で前記パッド材と前記表皮が一体に成形され、当該表皮の端末部において当該パッド材とは反対側に前記固定部材が設けられている表皮一体パッド。
【請求項5】
前記固定部材は、前記中型にマグネットが設けられる場合に磁性体シール若しくはマグネットシールが用いられ、前記中型に磁性体が設けられる場合にマグネットシールが用いられる請求項4に記載の表皮一体パッド。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の前記表皮一体パッドが、乗員が着座するシートクッションに適用され、前記固定部材は前記シートクッションにおける車両上下方向の下方側に設けられている車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置、表皮一体パッド、車両用シーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両等のシートに用いられるクッション体を表皮と共に一体発泡させて成形する表皮一体発泡シートの製造方法に関する技術が開示されている。
【0003】
この先行技術では、シートを成形する成形用型が、下型と、上型と、を備えており、下型と上型の間には支持具が配置され、下型に表皮を固定させた後、表皮の端部を下型と上型の間に配置された支持具で支持する。そして、下型に表皮を固定させた後、表皮を加温して軟化させ、吸引装置により表皮を吸引して当該表皮を下型の表面に沿わせた後、下型内の表皮上に発泡材を注入し、上型を閉じて発泡材を発泡させ、クッション体と表皮を一体化させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭52-91070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術では、表皮の端部(以下、「端末部」と称する)が下型と上型の間で支持されるため、表皮が一体化された状態でクッション体(以下、「パッド材」と称する)を成形用型から取り出した後、パッド材の表面から表皮の端末部が張り出すため、表皮の端末部をトリミング、タッカー留め等により処理する必要がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、表皮の端末部を処理しなくても済むように形成された表皮一体パッドを成形する成形装置、表皮一体パッド、車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る成形装置は、パッド材が一体化され、端末部が前記パッド材の裏面側に配置された状態で当該パッド材を被覆する表皮と、前記表皮の端末部において前記パッド材とは反対側に設けられ、当該パッド材を成形する成形装置の一部を構成する成形用型に固定される固定部材と、を含んで構成されている表皮一体パッドを成形する前記成形用型が、前記表皮が収容される下型と、前記下型との間で前記表皮一体パッドを成形する空間を形成する上型と、前記上型と前記下型の間に配置され、当該下型に収容された表皮の端末部に設けられた前記固定部材が固定される中型と、を含んで構成されている。
【0008】
請求項1に記載の発明に係る成形装置によって形成される表皮一体パッドでは、表皮と、固定部材と、を含んで構成されている。表皮にはパッド材が一体化されており、表皮の端末部がパッド材の裏面側に配置された状態で当該表皮によってパッド材は被覆されている。一方、固定部材は、表皮の端末部においてパッド材とは反対側に設けられており、パッド材を成形する成形装置の一部を構成する成形用型に固定される。
【0009】
一般に、表皮一体パッドは、上型及び下型によって構成された成形用型を含む成形装置によって成形される。本発明では、表皮の端末部がパッド材の裏面側に配置された状態でパッド材が表皮によって被覆されるため、表皮が成形用型内に収容された状態で、表皮の端末部は、成形用型に固定された状態で、成形用型内に収容されることになる。すなわち、表皮の端末部はパッド材に一体化されることになる。したがって、本発明では、表皮の端末部の処理を行う必要がなくなる。
【0010】
ここで、表皮の端末部は、パッド材の裏面側に配置されるため、当該表皮の端末部はパッド材の表面側から裏面側へ折り返された状態でパッド材に配置されることになる。表皮によってパッド材は被覆されるため、固定部材が設けられる「パッド材の反対側」とは、表皮一体パッドの表面側となる。また、当該固定部材は、表皮の端末部を成形用型に固定することができればよく、一例として、マグネットが挙げられるが、これ以外にも、ピン留め、テープ留め等が挙げられる。
【0011】
一方、本発明では、成形用型が下型と上型と中型とを含んで構成されており、下型には、表皮が収容される。上型は、下型との間で表皮一体パッドを成形する空間を形成する。中型は、上型と下型の間に配置されており、当該中型には、下型に収容された表皮の端末部に設けられた固定部材が固定される。
【0012】
ここで、表皮の端末部は、パッド材の裏面側に配置されるため、当該表皮の端末部は、パッド材の表面側から裏面側へ折り返した状態で表皮一体パッドは形成されることになる。つまり、本発明では、表皮の端末部が成形用型内に収容された状態で表皮一体パッドを形成することができる。
【0014】
請求項に記載の発明に係る成形装置は、請求項1に記載の発明に係る成形装置において、前記中型において前記固定部材が当接する箇所に設けられ当該固定部材が固定される固定部は略平面状に形成されている。
【0015】
請求項に記載の発明に係る成形装置では、中型には、表皮の端末部に設けられた固定部材が当接する箇所に当該固定部材が固定される固定部が設けられており、当該固定部は略平面状に形成されている。これにより、固定部材及び固定部を介して表皮の端末部を中型に面接触させることが可能となり、パッドを発泡させる際にパッドの漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0016】
請求項に記載の発明に係る成形装置は、請求項1に記載の発明に係る成形装置において、前記中型の一部には、前記固定部材が固定されるマグネット又は磁性体が設けられている
【0017】
請求項に記載の発明に係る成形装置では、中型の一部にはマグネット又は磁性体が設けられており、マグネット又は磁性体に対して固定部材が固定される。例えば、成形用型が鉄等の磁性体で形成された場合、固定部材にマグネットシールが選択され、当該マグネットシールが表皮の端末部に接着され、当該マグネットシールを介して、表皮の端末部が成形用型に磁着される。このように、成形用型に表皮の端末部を固定させるに当たって、磁力を利用し表皮の端末部にマグネットシールを接着させることによって、必要に応じて、容易に、当該マグネットシールの接着位置を変更したり接着箇所を増減させたりすることができる。
【0018】
一方、成形用型がアルミニウム合金等の非磁性体で形成された場合、当該マグネット又は磁性体が成形用型に設けられることになる。
【0019】
請求項に記載の発明に係る表皮一体パッドは、請求項1に記載の成形装置の一部を構成する成形用型で前記パッド材と前記表皮が一体に成形され、当該表皮の端末部において当該パッド材とは反対側に前記固定部材が設けられている。
請求項4に記載の発明に係る表皮一体パッドでは、成形用型でパッド材と表皮が一体に成形されている。この表皮一体パッドでは、当該表皮の端末部において当該パッド材とは反対側に固定部材が設けられている。
【0020】
請求項5に記載の発明に係る表皮一体パッドは、請求項4に記載の表皮一体パッドにおいて、前記固定部材は、前記中型にマグネットが設けられる場合に磁性体シール若しくはマグネットシールが用いられ、前記中型に磁性体が設けられる場合にマグネットシールが用いられる。
請求項5に記載の発明に係る表皮一体パッドでは、固定部材は、成形用型の一部を構成する中型にマグネットが設けられる場合、磁性体シール若しくはマグネットシールが用いられる。また、中型に磁性体が設けられる場合は、固定部材にマグネットシールが用いられる。
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、請求項4又は請求項5に記載の前記表皮一体パッドが、乗員が着座するシートクッションに適用され、前記固定部材は前記シートクッションにおける車両上下方向の下方側に設けられている。
請求項6に記載の発明に係る車両用シートでは、表皮一体パッドが、乗員が着座するシートクッションに適用されており、表皮一体パッドの表皮の端末部に設けられた固定部材は当該シートクッションにおける車両上下方向の下方側に設けられている。つまり、当該固定部材は、外観上、見え難い位置に設けられるように設定される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の成形装置によれば、表皮の端末部が成形用型内に収容された状態で表皮一体パッドを成形することができるため、表皮の端末部を処理しなくても済む。
【0022】
請求項2に記載の成形装置によれば、表皮の端末部を中型に面接触させることで、パッドを発泡させる際にパッドの漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0023】
請求項3に記載の成形装置によれば、表皮の端末部の固定位置を容易に変更したり、固定箇所を容易に増減させたり固定力を容易に調整することができる。
【0024】
請求項4に記載の表皮一体パッドによれば表皮の端末部を処理しなくても済む。
【0025】
請求項5記載の表皮一体パッドによれば、表皮の端末部の固定位置を容易に変更したり、固定箇所を容易に増減させたり固定力を容易に調整することができる。
請求項6記載の車両用シートによれば、固定部材が車室内側から見えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る表皮一体パッドが適用されたベンチシートタイプの車両用シートのシートクッションを示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る表皮一体パッドの構成を示す断面図である。
図3】本実施形態に係る表皮一体パッド及び表皮一体パッドを成形する成形用型の構成を示す分解断面図である。
図4】(A)、(B)は、本実施形態に係る表皮一体パッドの成形工程を示す断面図である。
図5】(A)、(B)は、本実施形態に係る表皮一体パッドの成形工程を示す断面図である。
図6】(A)、(B)は、本実施形態に係る表皮一体パッドの成形工程を示す断面図である。
図7図4(B)の一部が拡大された拡大断面図である。
図8】(A)は、図5(B)の一部が拡大された拡大断面図であり、(B)は(A)の比較例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る表皮一体パッドが適用された車両用シートについて説明する。
【0028】
図1には、ベンチシートタイプの車両用シート10において、乗員が着座するシートクッション12が図示されている。このシートクッション12の後端部から、図示はしないがシートクッション12に着座した乗員の上体を支持するシートバックが立設されている。
【0029】
本実施形態では、当該シートクッション12において、本実施形態に係る表皮一体パッド14が適用されるが、シートバックに適用されてもよいのは勿論のことであり、さらに、ベンチシートタイプの車両用シート10以外に、左右セパレートタイプの車両用シートに適用されてもよい。
【0030】
(表皮一体パッドの構成)
図2図6(B)に示されるように、表皮一体パッド14は、パッド材16を形成するウレタン等の発泡材を発泡成形させて当該パッド材16とシート表皮18とを一体に形成させたものである。
【0031】
シート表皮18は、例えば、図2に示されるように、表層20と、中間層22と、裏層24と、を含んで構成されている。表層20は、表皮一体パッド14の意匠面14A側に設けられ、布系又はレザー系が用いられる。また、中間層22には、ワディング材が用いられ、裏層24には、ウレタン系、オレフィン系等のフィルムが用いられる。
【0032】
このように、裏層24としてフィルム層を設けることによって、ウレタンを発泡させる際に、ウレタンを表層20側に含浸させないようにすることができる。これにより、ウレタンの含浸によるシート表皮18の硬化を防ぐことができ、座り心地を悪化させないようにすることができる。なお、図2では、各層の厚みが、裏層24<表層20<中間層22の関係となっているが、適用箇所に応じて各層の厚みは変更可能とされる。
【0033】
ここで、本実施形態では、シート表皮18の端末部18Aにおいて、表皮一体パッド14の意匠面(表面)14A側に、磁性体シール(固定部材)26が複数設けられている。なお、表皮一体パッド14が適用されたシートクッション12(図1参照)では、磁性体シール26は、シートクッション12の下面12A(図1参照)側に設けられるように設定される。
【0034】
(表皮一体パッドの成形装置)
本実施形態では、図3に示されるように、表皮一体パッド14を成形する成形装置28には成形用型30が備わっている。この成形用型30は、例えば、アルミニウム合金で形成されており、下型32と、上型34と、中型36と、を含んで構成され、中型36は下型32と上型34の間に配置されている。
【0035】
なお、中型36は略枠状を成しており、中型36の外形は下型32の外形よりも若干大きく形成されている。また、中型36の内形は下型32の内形よりも小さくなるように形成されており、後述するが、シート表皮18が下型32内に収容された状態でシート表皮18の端末部18Aよりも張り出す長さとなるように設定されている。
【0036】
また、下型32、中型36及び上型34において、表皮一体パッド14の意匠面14Aが形成される。但し、表皮一体パッド14が、シートクッション12(図1参照)として適用された場合、下型32でシートクッション12の上面12B(図1参照)側が形成され、中型36、上型34でシートクッション12の下面12A(図1参照)側が形成される。
【0037】
また、当該成形用型30は、車両用シート10(図1参照)の車両前後方向の前端側と対応する位置に図示しないヒンジ部が設けられており、当該ヒンジ部を中心に中型36及び上型34が下型32に対して回動可能とされている。図5(B)に示されるように、中型36及び上型34が下型32の上に重なった(セットした)状態で成形用型30はいわゆる型締め(閉止)され、中型36及び上型34が下型32に対して起立した状態で成形用型30はいわゆる型開き(開放)されることになる。
【0038】
前述のように、中型36の内形はシート表皮18が下型32内に収容された状態でシート表皮18の端末部18Aよりも張り出す長さとなるように設定されている。ここで、成形用型30はアルミニウム合金で形成されているため、図4(B)、図7に示されるように、中型36が下型32にセットされた状態における中型36の下面36A側(下型32側)には、凹部38が形成され、当該凹部38内にはマグネット(固定部)40等の磁性体が設けられている。
【0039】
このマグネット40にシート表皮18の端末部18Aに設けられた磁性体シール26が磁着可能とされる。なお、中型36において、マグネット40が設けられる箇所は、略平面状に形成されており、シート表皮18の端末部18Aに設けられた磁性体シール26が面接触可能とされている。
【0040】
(表皮一体パッドの成形方法)
ここで、表皮一体パッド14の成形方法について説明する。
【0041】
まず、第1工程では、図3図4(A)に示されるように、下型32内にシート表皮18が収容される。当該下型32の内面32Aは、表皮一体パッド14の意匠面14Aとなるため、シート表皮18の表層20(図2参照)側が下型32の内面32A側となるように、シート表皮18は下型32内に収容される。
【0042】
シート表皮18が下型32内に収容された状態で、シート表皮18の端末部18Aは、下型32の上端32Bからはみ出す長さとなるように設定されており、シート表皮18の端末部18Aは、下型32の上端32Bから内側へ向かって折り返された状態で下型32内に収容可能とされる。
【0043】
前述のように、シート表皮18の端末部18Aには、表皮一体パッド14の意匠面14A側に磁性体シール26が複数接着されている。一方、図3に示されるように、中型36には、マグネット40が設けられ、当該マグネット40には磁性体シール26が磁着可能とされる。
【0044】
このため、第2工程では、図4(B)に示されるように、下型32にシート表皮18が収容された状態で、中型36を下型32に閉止する(セットする)。これにより、中型36のマグネット40にシート表皮18の磁性体シール26が磁着される。中型36は略枠状を成しているため、シート表皮18の磁性体シール26が中型36のマグネット40に確実に磁着されているか否かについて、中型36の開口側から確認又は位置を調整することができる。
【0045】
なお、ここでは、下型32にシート表皮18を収容させた後、中型36を閉止するようにしているが、下型32にシート表皮18を収容した後、中型36を下型32にセットする場合、下型32と中型36の間にシート表皮18が挟まれる可能性もある。このため、下型32に中型36をセットした後に、シート表皮18を、下型32に収容すると共に中型36にセットしてもよい。
【0046】
次に、第3工程では、図5(A)に示されるように、下型32、中型36及びシート表皮18に対してパッド材となるウレタン42を注入する。
【0047】
そして、第4工程では、図5(B)に示されるように、下型32及び中型36に上型34をセットする。所定時間が経過し、注入したウレタン42が発泡すると、シート表皮18にパッド材16が一体化され、表皮一体パッド14が完成する。
【0048】
次に、第5工程では、図6(A)に示されるように、上型34及び中型36(図5(B)参照)を開放させ、成形用型30を型開きさせる。
【0049】
そして、第6工程では、図6(B)に示されるように、表皮一体パッド14を下型32(図6(A)参照)から脱型させる。
【0050】
(表皮一体パッドの作用及び効果)
次に、本実施形態に係る表皮一体パッドの作用及び効果について説明する。
【0051】
図6(B)に示されるように、本実施形態では、表皮一体パッド14の意匠面14Aの一部を構成するシート表皮18の端末部18Aがパッド材16の裏面16A側に配置されており、シート表皮18の端末部18Aには、磁性体シール26が設けられている。
【0052】
一方、図3に示されるように、表皮一体パッド14を成形する成形用型30は、下型32と上型34と中型36とを含んで構成されており、中型36は、上型34と下型32の間に配置され、当該中型36にはマグネット40が設けられ、下型32に収容されたシート表皮18の端末部18Aに設けられた磁性体シール26が固定されるように設定されている。
【0053】
シート表皮18の端末部18Aは、パッド材16の裏面16A側に配置されるため、当該シート表皮18の端末部18Aは、パッド材16の表面16B側から裏面16A側へ折り返された状態でパッド材16と一体に形成されることになる。つまり、本実施形態では、図5(B)に示されるように、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30内に収容された状態で、表皮一体パッド14が成形されることになる。
【0054】
例えば、比較例として、図8(B)に示されるように、成形用型100を構成する下型102と上型104の間にシート表皮106の端末部106Aを挟んだ状態で表皮一体パッドを成形する場合、シート表皮106の端末部106Aは成形用型100の外側に露出しているため、ウレタンを発泡させると、当該シート表皮106の端末部106Aを通じてウレタンが表皮一体パッドの外側に漏れ出す可能性がある。
【0055】
これに対して、本実施形態では、図8(A)に示されるように、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30内に収容された状態で表皮一体パッド14を成形することができるため、ウレタンの漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0056】
また、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30内に収容された状態で表皮一体パッド14を成形することで、図6(B)に示されるように、当該シート表皮18の端末部18Aは、パッド材16に一体化されることになる。したがって、本実施形態では、シート表皮18の端末部18Aの処理を行う必要がなくなる。
【0057】
また、本実施形態では、シート表皮18の端末部18Aがパッド材16の表面16B側から裏面16A側へ折り返された状態で表皮一体パッド14を形成させる。例えば、図示はしないが、上型と下型とで構成された成形装置の場合では、成形後に下型から表皮一体パッドを取り出すとき、図5(B)に示されるシート表皮18の端末部18Aがいわゆるアンダーカット部となり、表皮一体パッド14を下型から無理矢理取り出さなければならなくなる(いわゆる無理抜き)。このように、表皮一体パッド14を下型から無理矢理取り出そうとすると、表皮一体パッド14が変形する可能性がある。
【0058】
これに対して、本実施形態では、図3に示されるように、成形用型30において、下型32と上型34の間に中型36を設け、シート表皮18の端末部18Aを中型36に固定させることによって、成形後に下型32から表皮一体パッド14を取り出すとき、図6(A)に示されるように、中型36を開放させることによって、シート表皮18の端末部18Aがパッド材16の表面16B側から裏面16A側へ折り返された状態まま下型32から表皮一体パッド14を取り出すことができる。つまり、表皮一体パッド14を下型32から無理矢理取り出す必要はなく、無理矢理取り出すことによる変形を防止することができる。
【0059】
また、本実施形態では、図7に示されるように、シート表皮18の端末部18Aに磁性体シール26を設け、成形用型30の中型36には、マグネット40を設けている。これにより、シート表皮18の端末部18Aがパッド材16の表面16B側から裏面16A側へ折り返された状態で、当該シート表皮18の端末部18Aが中型36に磁着されるようになっている。これにより、下型32にシート表皮18が収容された状態で、シート表皮18の端末部18Aを中型36側に固定し、シート表皮18の端末部18Aが垂れないようにしている。
【0060】
このように、中型36にシート表皮18の端末部18Aを固定させるに当たって、磁力を利用しシート表皮18の端末部18Aに磁性体シール26を接着させることによって、必要に応じて、容易に、当該磁性体シール26の接着位置を変更したり接着箇所を増減させたりすることができる。つまり、磁着力を容易に調整することができ、ウレタンの発泡による漏れ出しに対して、マグネット40及び磁性体シール26を追加するだけですぐに対策を図ることができ、対策費用を抑制することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、中型36において、マグネット40が設けられる箇所は、略平面状に形成されており、シート表皮18の端末部18Aに設けられた磁性体シール26が面接触可能とされている。磁性体シール26及びマグネット40を介してシート表皮18の端末部18Aを中型36に面接触させることによって、ウレタン42(図5(A)参照)を発泡させる際にウレタン42の漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、当該磁性体シール26は、シート表皮18の端末部18Aに接着され、図6(B)に示されるように、表皮一体パッド14の意匠面14Aを構成するパッド材16の裏面16A側に設けられているが、当該磁性体シール26は、表皮一体パッド14において車両上下方向の下方側を向く位置に設けられている。
【0063】
すなわち、表皮一体パッド14が適用されたシートクッション12(図1参照)では、磁性体シール26は、シートクッション12の下面12A(図1参照)側に設けられることになる。このように、磁性体シール26は、表皮一体パッド14の意匠面14Aの一部に設けられるものの、外観上、見え難い位置に設けることで、磁性体シール26が車室内側から見えないようにすることができる。
【0064】
また、シート表皮18の端末部18Aは、外観上、見え難い位置に設けられるため、ウレタン42(図5(A)参照)を発泡させる際に多少ウレタン42の漏れ出しがあったとしても、外観への影響がないため、漏れ出したウレタンをカットしたり、削ったりする等の対処が不要なため、対処に伴う追加の工数が削減される。
【0065】
(実施形態の補足説明)
以上の実施形態では、図1に示されるシートクッション12へ適用した実施形態を説明したが、本発明では、これに限らず、車両用シート10のシートバックに適用されてもよい。なお、シートバックに適用する場合、当該シートバックを補強するため樹脂板等が別途必要になる場合もある。さらには、車両用シート10に限らず、図示はしないが家具用シートに適用されてもよい。
【0066】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能である。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 表皮一体パッド
16 パッド材
16A 裏面(パッド材の裏面)
18 シート表皮(表皮)
18A 端末部(表皮の端末部)
26 磁性体シール(固定部材)
28 成形装置
30 成形用型
32 下型
34 上型
36 中型
40 マグネット(固定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8