(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】シンク及び調理台
(51)【国際特許分類】
E03C 1/18 20060101AFI20241112BHJP
A47B 77/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
E03C1/18
A47B77/00
(21)【出願番号】P 2021046194
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000108661
【氏名又は名称】タカラスタンダード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 優花
(72)【発明者】
【氏名】鶴谷 知紀
(72)【発明者】
【氏名】三谷 智穂
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155456(JP,A)
【文献】特開2009-011394(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104068652(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0172379(US,A1)
【文献】中国実用新案第209669984(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12- 1/33
A47B 77/00-77/18
日本意匠分類 D5-1900
C5-4560
D6-20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び側壁部を有し、上方に開口する内部空間が形成されたシンク本体と、
収納ラックを着脱可能に取り付けるためのバーを有する固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、
前記側壁部から前記内部空間に突出する複数のピンと、
複数の前記ピンに対してそれぞれ着脱可能な状態で、複数の前記ピンにより支持される前記バーと、
を有し、
複数の前記ピンにより前記バーが支持された状態において、前記バーの上端は少なくとも1つの前記ピンの上端よりも上方に突出
し、
複数の前記ピンは、天面に前記バーを載置するための凹みを有する、
シンク。
【請求項2】
前記ピンは、
前記側壁部に固定されるベース部と、
前記バーを取り付けるバー取付部と、
を有し、
前記バー取付部は、前記ベース部に着脱可能に取り付けられる、
請求項1に記載のシンク。
【請求項3】
前記ピンの天面は、前記内部空間から前記側壁部に向かうにつれて下向きに傾斜する、
請求項1又は請求項2に記載のシンク。
【請求項4】
前記側壁部は、
前記側壁部の左側部分及び右側部分のうちの一方である第1壁部と、
前記側壁部の奥側部分である第2壁部と、を有し、
複数の前記ピンは、
前記第1壁部から突出する第1ピンと、
前記第2壁部から突出する第2ピンと、を有し、
前記バーは、
前記第1ピンに支持された状態において前記第1壁部に対向する第1部分と、
前記第2ピンに支持された状態において前記第2壁部に対向する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に介在する屈曲部と、を有する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシンク。
【請求項5】
前記側壁部は、前記側壁部の左側部分及び右側部分のうちの他方である第3壁部を有し、
水栓を取り付けるための水栓取付部から前記第1壁部までの左右方向の距離は、前記水栓取付部から前記第3壁部までの左右方向の距離よりも長い、
請求項4に記載のシンク。
【請求項6】
前記第1部分に着脱可能に取り付けられる前記収納ラックをさらに備え、
前記収納ラックの前後方向の幅は、前記第1壁部の前後方向の幅よりも小さい、
請求項4又は請求項5に記載のシンク。
【請求項7】
キャビネット部と、
前記キャビネット部の上部を閉塞する天板と、
前記天板に設けられた請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシンクと、
を備える調理台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンク及び調理台に関する。
【背景技術】
【0002】
シンクに、スポンジ等を収納する収納ラックを着脱可能に装着する技術が知られている。例えば、特許文献1には、シンクの壁面にコの字型の固定部材を取り付け、当該固定部材に収納ラックを固定する技術が開示されている。また、収納ラックを取り付けるための固定部材としては、特許文献2にバー状の固定部材が、特許文献3にピン状の固定部材が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-246725号公報
【文献】特開平10-195949号公報
【文献】特開2006-274711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピン状の固定部材(例えば、特許文献3)の場合、収納ラックを支持できる部分がバー状の固定部材よりも小さいため、バー状の固定部材を用いる場合と比べ、固定部材への収納ラックの取り付け位置が制限される。このため、収納ラックを取り付ける自由度を高めるためには、バー状の固定部材の方が好適である。
【0005】
一方で、シンクの壁面に固定されたバー状の固定部材(例えば、特許文献1,2)は、清掃しにくいという課題がある。例えば、固定部材のうちシンクの壁面に対向する部分(内側の部分)は、固定部材と壁面との隙間に清掃具を挿し込んで清掃する必要がある。このため、当該隙間よりも幅が広い清掃具を差し込むことができず、清掃しにくい。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑み、シンク及び調理台において、収納ラックを取り付けるバーを含む固定部材の清掃性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のシンクは、底部及び側壁部を有し、上方に開口する内部空間が形成されたシンク本体と、収納ラックを着脱可能に取り付けるためのバーを有する固定部材と、を備え、前記固定部材は、前記側壁部から前記内部空間に突出する複数のピンと、複数の前記ピンに対してそれぞれ着脱可能な状態で、複数の前記ピンにより支持される前記バーと、を有するシンクである。
【0008】
本発明のシンクによれば、固定部材に含まれるバーをピンから取り外すことができるため、固定部材を清掃しやすい。
【0009】
(2)好ましくは、複数の前記ピンにより前記バーが支持された状態において、前記バーの上端は少なくとも1つの前記ピンの上端よりも上方に突出する。
このように構成することで、バー上を移動する収納ラックとピンとの干渉を避けることができ、収納ラックの移動範囲を拡大することができる。
【0010】
(3)好ましくは、前記ピンは、前記側壁部に固定されるベース部と、前記バーを取り付けるバー取付部と、を有し、前記バー取付部は、前記ベース部に着脱可能に取り付けられる。
このように構成することで、ピンのメンテナンス性を向上させることができる。
【0011】
(4)好ましくは、前記ピンの天面は、前記内部空間から前記側壁部に向かうにつれて下向きに傾斜する。
このように構成することで、ピンの天面に付着した水が流れやすくなり、ピンの清掃性を向上させることができる。
【0012】
(5)好ましくは、前記側壁部は、前記側壁部の左側部分及び右側部分のうちの一方である第1壁部と、前記側壁部の奥側部分である第2壁部と、を有し、複数の前記ピンは、前記第1壁部から突出する第1ピンと、前記第2壁部から突出する第2ピンと、を有し、前記バーは、前記第1ピンに支持された状態において前記第1壁部に対向する第1部分と、前記第2ピンに支持された状態において前記第2壁部に対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に介在する屈曲部と、を有する。
このように構成することで、ピンに取り付けられたバーの移動を規制することができる。
【0013】
(6)好ましくは、前記側壁部は、前記側壁部の左側部分及び右側部分のうちの他方である第3壁部を有し、水栓を取り付けるための水栓取付部から前記第1壁部までの左右方向の距離は、前記水栓取付部から前記第3壁部までの左右方向の距離よりも長い。
このように構成することで、水栓と収納ラックとを遠ざけ、収納ラックに汚水がかかって汚れることを抑制することができる。
【0014】
(7)好ましくは、前記第1部分に着脱可能に取り付けられる前記収納ラックをさらに備え、前記収納ラックの前後方向の幅は、前記第1壁部の前後方向の幅よりも小さい。
このように構成することで、シンク本体の手前側に空間を確保することができるため、シンクの作業性を向上させることができる。
【0015】
(8)本発明の調理台は、キャビネット部と、前記キャビネット部の上部を閉塞する天板と、前記天板に設けられた上記(1)から(7)のいずれかのシンクと、を備える調理台である。本発明の調理台によれば、上記(1)から(7)のいずかと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シンク及び調理台において、収納ラックを取り付けるバーを含む固定部材の清掃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】ピンにバーを着脱する様子を説明する模式図である。
【
図6】
図5の矢印VIにて示す切断線により切断した部分的な断面図である。
【
図7】収納ラックをバーに取り付けた様子を説明する模式図である。
【
図8】
図7の矢印VIIIから見た収納ラックを示す模式図である。
【
図9】収納ラックをバーの第1部分に取り付けた様子を示す模式図である。
【
図10】比較例における固定部材と収納ラックとの関係を説明する図である。
【
図11】実施形態の固定部材と収納ラックとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では、例えば調理台に設けられるシンク(流し台)について説明する。なお、本発明のシンクは、洗面台のシンク、掃除用のシンク、研究室等の実験用のシンク等、調理台以外の用途に適用してもよい。
【0019】
<調理台の構成>
図1は、実施形態に係る調理台1を示す斜視図である。
調理台1は、本体部2と、シンク3とを備える。本体部2は、左右方向に延びるキャビネット部21と、キャビネット部21の上部を閉塞する天板22と、キャビネット部21に前後方向に出し入れ可能に収納された複数の引き出し23と、天板22に設けられた加熱調理器24と、を有する。シンク3は、天板22に設けられている。シンク3には水栓6と、収納ラック7とが設けられている。
【0020】
図2及び
図3は、実施形態に係るシンク3を示す斜視図である。
図2は後述の複数のピン51からバー52を取り外した状態を示し、
図3は複数のピン51にバー52を取り付けた状態を示している。シンク3は、シンク本体4と、固定部材5と、を有する。
【0021】
<シンク本体の構成>
シンク本体4は、例えば人造大理石、又はステンレスにより形成されている。シンク本体4は、左右方向に長いほぼ長方形状の底部41と、底部41の各辺から上方に立ち上がる側壁部42と、を有する。底部41と側壁部42とにより、上方に開口する内部空間S1が形成されている。
【0022】
側壁部42は、それぞれ内部空間S1に面する左壁部42a、右壁部42b、奥壁部42c及び前壁部42dを含む。本実施形態において、左壁部42aは本発明の「第1壁部」の一例であり、奥壁部42cは本発明の「第2壁部」の一例であり、右壁部42bは本発明の「第3壁部」の一例である。側壁部42は、奥壁部42cの右側において、内部空間S1へ張り出したデッキ部43と、水栓6を取り付ける水栓取付部44と、を有する。水栓取付部44は、デッキ部43の天面に貫通孔を形成する内周面である。底部41は、排水口45を有する。
【0023】
<固定部材の構成>
固定部材5は、収納ラック7(
図3)を取り付けるための部材である。固定部材5は、側壁部42から内部空間S1に突出する複数のピン51a,51b,51cと、複数のピン51a,51b,51cにより支持されるバー52と、を有する。ピン51a(本発明の「第1ピン」の一例)は、左壁部42aに固定されている。ピン51b,51c(本発明の「第2ピン」の一例)は、奥壁部42cに固定されている。
【0024】
ピン51a,51b,51cは、固定される場所が異なるだけで、個々の構成は共通する。このため以下の説明では、ピン51a,51b,51cについて、特に区別しない場合、単にピン51と称する。本実施形態では、3個のピン51を例示する。しかしながらピン51の個数は限定されず、複数のピン51であれば、2個であっても、4個以上であってもよい。
【0025】
バー52は、例えばステンレス製の棒状の部材である。バー52は、ほぼL字形状を有する。具体的には、バー52は、ピン51aに支持された状態において左壁部42aに対向する第1部分52aと、ピン51b,51cに支持された状態において奥壁部42cに対向する第2部分52bと、第1部分52aと第2部分52bとの間に介在する屈曲部52cと、を有する。
【0026】
バー52には、収納ラック7が着脱可能に取り付けられる。収納ラック7は、第1部分52aに取り付けられてもよいし、第2部分52bに取り付けられてもよい。また、複数の収納ラック7が第1部分52a及び第2部分52bのそれぞれに取り付けられてもよい。
【0027】
図3に示すように、バー52は、3個のピン51にそれぞれ下方から支持されている状態で、3個のピン51に装着される。このとき、第1部分52aはピン51aと当接し、第2部分52bはピン51b,51cと当接する。ピン51a,51b,51cは、それぞれバー52を介して接続される。すなわち、バー52は、3個のピン51の間に架け渡される。
【0028】
図4は、本実施形態のピン51を説明する模式図である。
図4(a)はピン51を分解した斜視図であり、
図4(b)はピン51の斜視図である。
図5は、ピン51にバー52を着脱する様子を説明する模式図である。
図5では、代表的にピン51bを示しているが、他のピン51a,51cについても同様である。
図5(a)はピン51からバー52を取り外した状態を示し、
図5(b)はピン51にバー52を取り付けた状態を示している。
図6は、
図5(b)中の矢印VIにて示す切断線により切断したピン51、バー52及び側壁部42(奥壁部42c)の部分的な断面図である。
【0029】
<ピンの構成>
以下、
図4及び
図6を適宜参照して、ピン51の構成を説明する。
図4(a)に示すように、ピン51は、ベース部81と、バー取付部82と、キャップ部83と、を有する。ここで、側壁部42から内部空間S1へ向かう方向(すなわち、ピン51の各部81~83を組み合わせる方向)を「軸方向」と適宜称する。軸方向のうち、内部空間S1側を「内側」、側壁部42側を「外側」と適宜称する。
【0030】
ベース部81は、側壁部42に固定される部材である。ベース部81は、円筒部811と、軸部812と、リング813と、を有する。円筒部811は、側壁部42から内部空間S1に突出する部分である。円筒部811は、軸方向内側に向かって開口する内周面811aを有する。軸部812は、円筒部811の軸方向外側に設けられた軸方向に延びる部分である。円筒部811及び軸部812は、例えば一体形成されたステンレス製の部材である。
【0031】
リング813は、軸部812の軸方向内側に設けられ、円筒部811と側壁部42との間の隙間を止水するための部材である。リング813は、例えばゴム製又は樹脂製の部材である。側壁部42に設けられた貫通孔421(
図6)へ軸部812を挿入した状態で、ナット等を軸部812に締結することで、ベース部81が側壁部42に固定される。
【0032】
バー取付部82は、バー52を取り付ける部材である。バー取付部82は、ベース部81に着脱可能に取り付けられる。バー取付部82は、例えばゴム製又は樹脂製の部材であり、略円筒形状を有する。バー取付部82の天面821には、バー52の一部を収容するための凹み822が形成されている。
【0033】
図6を参照する。天面821は水平方向から下向きに角度θ1だけ傾き、下面823は水平方向から角度θ2だけ傾く。角度θ1,θ2は、例えば5度以上90度未満であり、好ましくは5度程度(5度以上10度以下)である。このように、バー取付部82の天面821及び下面823が内部空間S1から側壁部42に向かうにつれて下向きに傾斜することで、天面821及び下面823に付着した水が流れやすくなり、ピン51の清掃性を向上させることができる。
【0034】
図4(a)を参照する。バー取付部82の内周面824は、軸方向の両側に開口している。内周面824は、軸方向内側の第1内周面824aと、軸方向外側の第2内周面824b(
図6)とを含む。第2内周面824bの内径は、第1内周面824aの内径よりも大きい。第2内周面824bの内径は、ベース部81の円筒部811の外径とほぼ同じか、当該外径よりもわずかに大きい。このため、
図6に示すように、第2内周面824bに円筒部811を挿入することで、ベース部81にバー取付部82を取り付けることができる。バー取付部82をベース部81に取り付けた状態で、ベース部81の内周面811aは第1内周面824a内に露出している。
【0035】
キャップ部83は、バー取付部82をベース部81に取り付けるための部材である。キャップ部83は、例えばステンレス製、ゴム製又は樹脂製の部材である。キャップ部83は、第1軸部831と、第2軸部832と、蓋部833と、を有する。第1軸部831及び第2軸部832は、いずれも軸方向に延びる部分であり、第2軸部832は第1軸部831の軸方向外側に設けられている。蓋部833は、バー取付部82の軸方向内側の面を塞ぐための部分であり、軸方向よりも軸方向に直交する方向(径方向)に長い、扁平な円筒形状を有する。
【0036】
第1軸部831の外径は、バー取付部82の第1内周面824aの内径とほぼ同じか、当該内径よりもわずかに小さい。第2軸部832の外径は、ベース部81の内周面811aの内径とほぼ同じか、当該内径よりもわずかに小さい。このため、
図6に示すように、第1内周面824aに第1軸部831を挿入し、内周面811aに第2軸部832を挿入することで、ベース部81及びバー取付部82にキャップ部83を取り付けることができる。
【0037】
図6を参照する。蓋部833の上端833aは、実施形態のピン51の最も上方に位置する部分である。このため、上端833aはピン51の上端でもある。
図6に示すように、凹み822に収容されたバー52の上端521は、上端833aよりも高さH1だけ上方に位置する。すなわち、バー52がピン51に取り付けられた状態において、バー52の上端521はピン51の上端833aよりも上方に突出する。
【0038】
より具体的には、凹み822の上端833aからのバー52の収容可能深さH2は、バー52の高さH3よりも浅い(H2<H3)。このため、凹み822にバー52を収容すると、高さH3と収容可能深さH2との差分(H1=H3-H2)だけ、バー52が上端833aから上方に突出する。ここで、収容可能深さH2は、上端833aから凹み822にバー52を収容した際のバー52の下端522までの上下方向の距離を意味する。凹み822の形状によっては、バー52の下端522が凹み822の底822aに達しない場合がある。この場合、収容可能深さH2は、上端833aから底822aまでの深さよりも浅くなる。
【0039】
なお、バー52が複数のピン51に支持された状態において、バー52の上端521は、少なくとも1つのピン51の上端833aよりも上方に突出していればよく、全てのピン51の上端833aよりも上方に突出していなくてもよい。例えば、バー52の上端521は、ピン51b,51cの上端833aよりも上方に位置し、ピン51aの上端833aよりも下方に位置していてもよい。
【0040】
図4(b)に示すように、ベース部81、バー取付部82及びキャップ部83を組み合わせた状態で、ベース部81は軸部812及びリング813が外部に露出し、キャップ部83は蓋部833のみが外部に露出する。
図4(b)の状態において、キャップ部83を手で軸方向内側に引くことで、ベース部81及びバー取付部82からキャップ部83を取り外すことができる。また、キャップ部83を取り外した状態で、バー取付部82を手で軸方向内側に引くことで、ベース部81からバー取付部82を取り外すことができる。
【0041】
このように、ベース部81からバー取付部82及びキャップ部83を取り外し可能とすることで、経年使用によりバー取付部82又はキャップ部83が汚損された場合に、例えばアフターメンテナンスを行う業者がバー取付部82又はキャップ部83を清掃又は交換しやすくなる。すなわち、本実施形態では、ベース部81からバー取付部82及びキャップ部83を着脱可能とすることで、ピン51のメンテナンス性を向上させることができる。
【0042】
<ピンへのバーの着脱方法>
図5を参照する。
図5(a)に示すようにバー52をピン51の上方に位置させた状態で、バー52を下方に降ろすと、
図5(b)に示すようにバー52の一部がピン51の凹み822に収容されることで、バー52がピン51に取り付けられる。すなわち、バー52は、バー取付部82の天面821のうち凹み822が形成されている部分に載置されることで、ピン51に取り付けられる。
図5(b)に示す状態において、バー52を上方に持ち上げると、凹み822からバー52が抜け出し、ピン51からバー52を取り外すことができる。
【0043】
図5に示すように、バー52は、固定具(例えば、ネジ等)を用いることなく、ピン51に取り付けられる。このため、より容易にピン51に取り付けることができる。また、固定具を用いていないため、バー52は、ピン51からより容易に取り外すことができる。
【0044】
図3を参照する。例えば、バー52がピン51b,51cのみに取り付けられ、ピン51aに取り付けられていない場合、バー52はピン51b,51cに載置された状態で、左右方向に移動可能となる。このため、例えば、収納ラック7をバー52に取り付ける際や、収納ラック7にスポンジ等を収納する際に、バー52が左方向に移動し、バー52の右端がピン51cから脱落するおそれがある。また、バー52がピン51cから脱落しないとしても、例えばバー52の左端が左壁部42aに当接して、左壁部42aを傷つけるおそれがある。
【0045】
これに対し、本実施形態の固定部材5は、略L字形状のバー52の各辺をピン51により支持する。具体的には、ピン51aがバー52の第1部分52aを支持し、ピン51b,51cが第1部分52aが延びる方向(前後方向)と交差する方向(左右方向)に延びる第2部分52bを支持する。このため、固定具を用いることなく、ピン51に取り付けられたバー52の前後方向及び左右方向への移動を規制することができる。
【0046】
<収納ラックの構成>
図3を参照する。収納ラック7は、上枠71と、下枠72と、上枠71及び下枠72と結合する複数の(
図3の例では、5本の)縦枠73と、を有する。下枠72には、それぞれほぼ平行に並ぶ複数の支持枠74が含まれる。上枠71の側壁部42側の中央には、下方に凸となるほぼU字形状の掛かり部75が形成されている。
【0047】
図7は、収納ラック7をバー52に取り付けた様子を模式的に示す斜視図である。
図8は、
図7の矢印VIIIから見た収納ラック7を模式的に示す側面図である。
図7及び
図8に示すように、収納ラック7の掛かり部75をバー52と側壁部42との隙間S2に挿入することで、収納ラック7をバー52に取り付けることができる。このとき、掛かり部75がバー52及び側壁部42に支持され、上枠71のうち掛かり部75の左右外側に位置する部分P1,P2がバー52(具体的には、上端521)に支持されることで、収納ラック7はバー52に固定される。
【0048】
また、バー52に取り付けられた収納ラック7は、上方に持ち上げることで、バー52から取り外すことができる。このように、収納ラック7は、固定具を用いることなく、バー52に取り付け、及び取り外すことができる。また、固定具を用いていないため、収納ラック7は、バー52に取り付けられた状態で、左右方向に移動可能である。
【0049】
図7及び
図8では、収納ラック7をバー52の第2部分52bに取り付けた様子を示している。しかしながら、収納ラック7は、バー52の第1部分52aに取り付けてもよい。
図9は、収納ラック7をバー52の第1部分52aに取り付けた様子を模式的に示す斜視図である。収納ラック7の前後方向の幅D1は、左壁部42aの前後方向の幅D2よりも小さい(D1<D2)。このように構成することで、収納ラック7を第1部分52aに取り付けた状態であっても、シンク本体4の手前側に空間S3を確保することができるため、シンク3の作業性を向上させることができる。
【0050】
<底部の構成>
図2、
図7及び
図8を参照して、シンク本体4の底部41を説明する。
底部41は、第1底部41aと、第2底部41bと、段差部41cと、を有する。第1底部41aは、底部41の大部分を占める。第2底部41bは、第1底部41aよりも奥壁部42c側において、第1底部41aよりも低い位置に形成されている部分である。段差部41cは、左右方向に延び、第1底部41a及び第2底部41bを接続する部分である。段差部41cの角度θ3は、30度以上90度以下であり、好ましくは45度程度(40度以上50度以下)である。
【0051】
図8に示すように、段差部41cは、第2部分52bに取り付けられている収納ラック7と上下方向に重複する。より具体的には、段差部41cの位置X1から鉛直方向に仮想線VL1を描くと、仮想線VL1の一部は収納ラック7と重複する。
【0052】
排水口45は、第1底部41a、第2底部41b及び段差部41cと左右方向に重複する位置に設けられている。このため、排水口45には、第1底部41a及び第2底部41bの両方から水が流れ込む。
【0053】
第1底部41aよりも第2底部41bの方が低いため、第1底部41aを流れる水は、段差部41cを通って第2底部41bに引き込まれやすい。このように、第2底部41bは、第1底部41aの水を奥壁部42c側へ誘導する機能を有する。すなわち、第2底部41bによれば、残菜等の異物を含む水を底部41の奥壁部42c側に集めることができる。
【0054】
また、第2底部41bに引き込まれた水は、左右方向に移動して、排水口45に流れ込む。第2底部41bは第1底部41aと比べて前後方向(水の移動方向に対し、直交する方向)の幅が狭いため、第2底部41bにおいて左右方向に流れる水の流速は、第1底部41aを流れる水の流速よりも速くなる傾向がある。これにより、底部41の奥壁部42c側に集められた水に含まれる異物を、より確実に排水口45へ流すことができる。さらに、段差部41cは、角度θ3が30度以上の急峻な段差であるため、段差部41cに異物や水が付着しにくくなり、底部41が汚れることを抑制することができる。
【0055】
調理台1の使用者は、残菜等の異物が第2底部41bを流れる様子を目にすると嫌悪感を示す場合がある。本実施形態では、収納ラック7と段差部41cとが上下方向に重複することで、第2底部41bの少なくとも一部を収納ラック7により隠すことができる。これにより、例えば使用者がシンク3にて洗い物をしている際に、異物が第2底部41bを流れる様子が見えにくくなり、使用者が調理台1を気持ちよく使用することができる。
【0056】
<収納ラックの移動範囲>
図10は、比較例における固定部材9と収納ラック7との関係を説明する図である。
図11は、本実施形態の固定部材5と収納ラック7との関係を説明する図である。
図10及び
図11を参照して、収納ラック7の移動範囲について説明する。
【0057】
図10(a)は、比較例の固定部材9を示す側面図である。固定部材9は、ピン90と、バー52と、を有する。固定部材9は、ピン90の構造が本実施形態の固定部材5と異なる。固定部材5は、
図6に示すようにピン51の上端833aよりもバー52の上端521の方が上方に位置する。これに対し、固定部材9では、ピン90の凹み91が凹み822よりも深く、バー52の上端521よりもピン90の上端92の方が高さH9だけ上方に位置する。
【0058】
図10(b)は、固定部材9及び収納ラック7を前側から見た正面図である。収納ラック7は、
図7及び
図8の状態と同様に、掛かり部75をバー52に引っ掛けることで、バー52に取り付けられている。この状態で、収納ラック7を
図10(b)の右側に移動させると、上枠71の右端71aは位置Y1においてピン90と接触する。そして、上枠71がピン90と干渉するため、収納ラック7は、バー52に安定して取り付けられた状態で、位置Y1よりも右側に移動させることができない。すなわち、収納ラック7を無理やり位置Y1よりも右側に移動させると、上枠71がピン90の上端92に載り上がり、収納ラック7は左右方向に傾いた不安定な状態となる。
【0059】
図11(a)は、固定部材5及び収納ラック7を前側から見た正面図である。本実施形態において、バー52はピン51の上端833aよりも上方に突出する。収納ラック7は、バー52に支持され、収納ラック7を左右方向に移動させる際には上枠71がバー52の上端521を摺動する。そして、ピン51は上端521よりも下方に位置するため、上枠71の右端71aは、位置Y1においてピン51と接触しない。このため、収納ラック7は、位置Y1よりも右側に移動させることができる。
【0060】
図11(b)に示すように、収納ラック7は、掛かり部75がピン51に接触するまで、位置Y1から右側へ移動することができる。掛かり部75は、位置Y1においてピン51に接触する。ここで、掛かり部75がピン51と接触する際の右端71aの位置Y2とし、位置Y1から位置Y2までを距離W1とする。本実施形態の固定部材5によれば、比較例の固定部材9と比べ、収納ラック7の左右一方側への移動範囲を距離W1だけ拡大することができる。
【0061】
すなわち、固定部材5は、バー52がピン51の上端833aよりも上方に突出する構成を有するため、収納ラック7の移動範囲を拡大することができる。これにより、収納ラック7の設置の自由度が向上し、使用者の好みの位置に収納ラック7を取り付けやすくなる。
【0062】
<固定部材と水栓の位置関係>
図12は、シンク3の平面図である。中心線C1は、シンク本体4の左右方向の中心を示す線である。中心線C1は、より具体的には、左壁部42aと右壁部42bとの中間に位置する線である。
【0063】
バー52は、中心線C1よりも左側に位置する。具体的には、バー52の第1部分52aは、左壁部42aに対向し、バー52の第2部分52bは中心線C1よりも左側の奥壁部42cに対向している。なお、バー52のうち第2部分52bの右端が中心線C1よりも右側にはみ出してもよい。
【0064】
水栓取付部44は、シンク本体4のうち左右方向の中心よりも右側に位置する。すなわち、水栓取付部44は、中心線C1を挟んで、バー52の反対側に位置する。より具体的には、水栓取付部44から左壁部42a(バー52の第1部分52aが対向する壁部)までの左右方向の距離D3は、水栓取付部44から右壁部42b(第1部分52aが対向する壁部と反対側の壁部)までの左右方向の距離D4よりも長い(D3>D4)。
【0065】
バー52が中心線C1よりも左側に位置するため、シンク本体4の内部空間S1の右半分には、収納ラック7が位置しない。このため、内部空間S1の右半分は、空間を広く使うことができ、洗い物を行う空間として活用しやすい。そして、水栓取付部44を中心線C1よりも右側に設けることで、洗い物を主に行う空間に水栓6(
図1)から水を供給しやすくなり、シンク3での作業性を向上させることができる。
【0066】
また、水栓取付部44を中心線C1よりも右側に設けることで、バー52に取り付けられる収納ラック7と水栓6とをより離すことができる。これにより、収納ラック7に汚水(例えば、水栓6から供給された後、食器や底部41で跳ねた水)がかかることを抑制することができ、収納ラック7が汚れることを抑制することができる。
【0067】
なお、シンク3の各部の配置は、本実施形態の内容に限られない。例えば、本実施形態とは左右対称となり、バー52が中心線C1よりも右側に位置し、水栓取付部44が中心線C1よりも左側に位置してもよい。
【0068】
また、本実施形態の水栓取付部44はシンク本体4に設けられているが、本発明の実施に関してはこれに限られない。例えば、水栓取付部44は、天板22に設けられてもよい。この場合にも、水栓取付部44から左壁部42aまでの左右方向の距離D3を、水栓取付部44から右壁部42bまでの左右方向の距離D4よりも長くすることで、収納ラック7が汚れることを抑制することができる。
【0069】
<作用>
本実施形態のシンク3は、底部41及び側壁部42を有し、上方に開口する内部空間S1が形成されたシンク本体4と、収納ラック7を着脱可能に取り付けるための固定部材5と、を備え、固定部材5は、側壁部42から内部空間S1に突出する複数のピン51と、複数のピン51に対して着脱可能な状態で、複数のピン51を接続するバー52と、を有し、バー52には、収納ラック7が着脱可能に取り付けられる。
【0070】
従来、シンクの側壁部に固定されたバー状の固定部材(例えば、特許文献1,2)には、清掃しにくいという課題があった。本実施形態のシンク3によれば、バー52をピン51から取り外すことができるため、清掃しやすい。すなわち、シンク3によれば、バー状の固定部材の利点(例えば、収納ラックを取り付ける自由度が高い、等)を享受しつつ、バー状の固定部材の課題である清掃しにくさを解決することができる。
【0071】
また、本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 調理台 2 本体部 21 キャビネット部
22 天板 23 引き出し 24 加熱調理器
3 シンク 4 シンク本体 41 底部
41a 第1底部 41b 第2底部 41c 段差部
42 側壁部 421 貫通孔 42a 左壁部
42b 右壁部 42c 奥壁部 42d 前壁部
43 デッキ部 44 水栓取付部 45 排水口
5 固定部材 51 ピン 51a ピン
51b ピン 51c ピン 52 バー
521 上端 522 下端 52a 第1部分
52b 第2部分 52c 屈曲部 6 水栓
7 収納ラック 71 上枠 71a 右端
72 下枠 73 縦枠 74 支持枠
75 掛かり部 81 ベース部 811 円筒部
812 軸部 813 リング 82 バー取付部
821 天面 822 凹み 822a 底
823 下面 824 内周面 824a 第1内周面
824b 第2内周面 83 キャップ部 831 第1軸部
832 第2軸部 833 蓋部 833a 上端
9 固定部材 90 ピン 91 凹み
92 上端 S1 内部空間 S2 隙間
S3 空間 θ1 角度 θ2 角度
θ3 角度 P1 部分 P2 部分
D1 幅 D2 幅 D3 距離
D4 距離 X1 位置 Y1 位置
Y2 位置 W1 距離 VL1 仮想線
C1 中心線