(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241112BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20241112BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20241112BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20241112BHJP
B62D 107/00 20060101ALN20241112BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D119:00
B62D113:00
B62D107:00
B62D101:00
(21)【出願番号】P 2021051992
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】飯田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 正治
(72)【発明者】
【氏名】並河 勲
(72)【発明者】
【氏名】玉泉 晴天
(72)【発明者】
【氏名】小寺 隆志
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083059(JP,A)
【文献】特開2004-338657(JP,A)
【文献】特開平03-200474(JP,A)
【文献】特開2013-252804(JP,A)
【文献】特開2012-076651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0367084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 119/00
B62D 113/00
B62D 107/00
B62D 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって操作される操作部材と、
電動モータである転舵モータを有し、その転舵モータの力によって、車輪を転舵する転舵装置と、
前記操作部材に、それの操作に対する反力である操作反力を付与する操作反力付与装置と、
前記転舵装置と前記操作反力付与装置とを制御するコントローラと
を備えたステアバイワイヤ型のステアリングシステムであって、
前記コントローラが、
前記操作部材の操作に応じた車輪の転舵を実現させるとともに、
前記転舵モータへ電流を供給する電源の電圧である電源電圧が低い場合に高い場合に比較して前記操作反力を大きくしつつ、車輪の転舵に対して大きな出力が必要な状況である大転舵出力状況下において、車輪の転舵に対して小さな出力しか必要とされない小転舵出力状況下に比較して、操作反力を大きくするように構成され
、
電源電圧の高低と、必要な転舵出力についての状況の程度とを項目軸としたマトリクス図に従って抽出された操作反力の程度に関する指標を用いて、操作反力を決定するように構成されたステアリングシステム。
【請求項2】
前記コントローラが、
車輪の転舵量の変化速度である転舵速度が高い場合、低い場合を、それぞれ、大転舵出力状況下、小転舵出力状況下であると認定するように構成された請求項1に記載のステアリングシステム。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記操作部材の操作量に対する転舵量の比であるステアリングギヤ比を変更するとともに、
ステアリングギヤ比が高い場合、低い場合を、それぞれ、大転舵出力状況下、小転舵出力状況下であると認定するように構成された請求項1に記載のステアリングシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、
車速が低い場合、高い場合を、それぞれ、大転舵出力状況下、
小転舵出力状況下であると認定するように構成された請求項1に記載のステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるステアバイワイヤ型のステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステアバイワイヤ型のステアリングシステムでは、一般的に、運転者がステアリングホイール等の操作部材に加える操作力に依らずに、転舵装置が有する電動モータ(以下、「転舵モータ」という場合がある)の出力である転舵出力、すなわち、転舵装置の発揮する転舵力によって車輪を転舵する。そのため、転舵モータに電流を供給する電源の電圧が降下した場合には、その電源の負担が大きくなるため、その電源電圧の降下に対して何らかの処置を講じることが望ましい。そのことを考慮して、下記特許文献に記載されているステアリングシステムでは、上記電源の電圧が降下した場合に、ステアリング操作に対する反力である操作反力を操作部材に付与するための電動モータ(以下、「反力モータ」という場合がある)の力を利用して、転舵力を補助するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電源電圧の降下への対処手段(以下、「電圧降下対処手段」という場合がある)として、種々の手段が考えられる。例えば、電源電圧が降下した場合に、上記操作反力を大きくすることで、つまり、運転者による操作部材の操作感を重くすることで、転舵出力が過大となることを防止することができる。ところが、いたずらに操作反力を大きくすれば、比較的小さい転舵出力しか必要とされないときにも操作反力が大きくなり、適切な転舵が行われない、適切な操作感を運転者に与えることができないといった事態をも招きかねない。つまり、電圧降下対処手段には改良の余地が多分に残されており、何らかの改良を施すことによりステアバイワイヤ型のステアリングシステムの実用性を向上させることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いステアバイワイヤ型のステアリングシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のステアリングシステムは、
運転者によって操作される操作部材と、
電動モータである転舵モータを有し、その転舵モータの力によって、車輪を転舵する転
舵装置と、
前記操作部材に、それの操作に対する反力である操作反力を付与する操作反力付与装置
と、
前記転舵装置と前記操作反力付与装置とを制御するコントローラと
を備えたステアバイワイヤ型のステアリングシステムであって、
前記コントローラが、
前記操作部材の操作に応じた車輪の転舵を実現させるとともに、
前記転舵モータへ電流を供給する電源の電圧である電源電圧が低い場合に、高い場合に
比較して、前記操作反力を大きくしつつ、車輪の転舵に対して大きな出力が必要な状況で
ある大転舵出力状況下において、車輪の転舵に対して小さな出力しか必要とされない小転
舵出力状況下に比較して、操作反力を大きくするように構成され、
電源電圧の高低と、必要な転舵出力についての状況の程度とを項目軸としたマトリクス図に従って抽出された操作反力の程度に関する指標を用いて、操作反力を決定するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明のステアリングシステムによれば、電源電圧と、転舵モータの出力である転舵出力(車輪を転舵するための力である「転舵力」と考えることもできる)との両方に依拠して操作反力が制御される。端的に言えば、電源電圧が比較的低く、かつ、大転舵出力状況下にあるときには、操作反力が比較的大きくされるものの、電源電圧が比較的高い場合や、小転舵出力状況下では、操作反力が過大となることが抑制される。そのため、本発明によれば、電源電圧の降下に適切に対処可能なステアバイワイヤ型のステアリングシステムが実現されることとなる。
【発明の態様】
【0007】
本発明における「大転舵出力状況」,「小転舵出力状況」は、「必要な転舵出力についての状況」と総称することができ、相対的に程度の違いのある状況と考えることができる。これらの状況は、後に詳しく説明するが、例えば、転舵速度,操作部材の操作量に対する転舵量の比であるステアリングギヤ比,車両の走行速度である車速等によって認定すればよい。なお、大転舵出力状況,小転舵出力状況,必要な転舵出力についての状況は、「大転舵力状況」,「小転舵力状況」は、「必要な転舵力についての状況」と考えることもできる。
【0008】
必要な転舵出力についての状況に関する具体的な態様を例示すれば、例えば、一般的に、転舵速度が高い程、転舵モータが発生させる力が大きくなることに鑑み、コントローラが、車輪の転舵量の変化速度である転舵速度が高い場合、低い場合を、それぞれ、大転舵出力状況下、小転舵出力状況下であると認定するようにすればよい。この態様においては、大転舵出力状況は、必要な転舵出力が実際に大きい状況と、小転舵出力状況は、必要な転舵出力が実際に低い状況と、それぞれ考えることができる。「転舵速度」は、実際の転舵速度を採用しても、コントローラが、操作部材の操作に基づいて、車輪の転舵において目標となる転舵量である目標転舵量を決定するように構成されているのであれば、その目標転舵量の変化速度である目標転舵速度を採用しても、操作部材の操作の程度、具体的には、操作部材の操作量の変化速度である操作速度を採用してもよい。
【0009】
また、例えば、コントローラが、操作部材の操作量に対する転舵量の比であるステアリングギヤ比を変更するように構成されていれば、そのステアリングギヤ比が高い場合、低い場合を、それぞれ、大転舵出力状況下、小転舵出力状況下であると認定するようにしてもよい。ステアリングギヤ比が高い場合には、低い場合と比べて、操作部材の操作速度が同じであっても、転舵速度は高くなる。したがって、この態様においては、大転舵出力状況は、転舵速度が高くなりそうな状況、すなわち、必要な転舵出力が大きくなりそうな状況と、小転舵出力状況は、転舵速度が低くなりそうな状況、すなわち、必要な転舵出力が低くなりそうな状況と、それぞれ考えることができる。
【0010】
さらに言えば、いわゆる据え切り時や、車庫入れ等、車速が相当に低い場合には、車輪の転舵に対して路面の摩擦の影響が大きい。つまり、路面の摩擦を考慮すれば、車速が低くなる程、大きな転舵出力が必要となる。そのことに鑑み、車速が低い場合、高い場合を、それぞれ、大転舵出力状況下、小転舵出力状況下であると認定するようにしてもよい。この態様においても、大転舵出力状況は、必要な転舵出力が大きくなりそうな状況と、小転舵出力状況は、必要な転舵出力が低くなりそうな状況と、それぞれ考えることができる。なお、ステアリングギヤ比が、車速が低い場合に高い場合に比較して大きくなるようにされていれば、先に説明した理由から、車速が低い場合を、大転舵出力状況下であると、高い場合を、小転舵出力状況下であると認定することが可能である。
【0011】
本発明における「電源電圧の高い場合」と「電源電圧の低い場合」,「大転舵出力状況」と「小転舵出力状況」は、いずれも相対的な概念である。したがって、本発明のステアリングシステムでは、例えば、例えば、電源電圧と、必要な転舵出力についての状況との一方若しくは両方に応じて連続的に操作反力を制御してもよい。また、何らかの閾値を挟んで、電源電圧が高いか低いか、および、大転舵出力状況であるか小転舵出力状況であるかを認定し、その認定に基づいて、操作反力を段階的に制御してもよい。その場合、電源電圧と必要な転舵出力についての状況との一方若しくは両方に対して、閾値を複数設定し、3段階以上に操作反力を制御してもよい。
【0012】
本発明のステアリングシステムでは、電源電圧,必要な転舵出力についての状況という2つのパラメータに従って、操作反力が制御されると考えることができる。そのことに鑑みれば、操作反力を制御するための具体的な態様として、コントローラは、電源電圧の高低と、必要な転舵出力についての状況の程度とを項目軸としたマトリクス図に従って抽出された操作反力の程度に関する指標を用いて、操作反力を決定するようにしてもよい。この態様によれば、電源電圧の降下に適切に対処可能な操作反力の制御を、簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例のステアリングシステムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】車速に対するステアリングギヤ比の変化を示すグラフである。、および、操作反力の程度に関する指標である反力トルク補正係数を抽出するためのマトリクス図である。
【
図3】操作反力の程度に関する指標である反力トルク補正係数を抽出するためのマトリクス図である。
【
図4】コントローラにおいて実行される転舵制御プログラムのフローチャートである。
【
図5】コントローラにおいて実行される反力制御プログラムのフローチャートである。
【
図6】反力制御プログラムを構成する反力トルク補正サブルーチンのフローチャートである。
【
図7】変形例としての反力トルク補正サブルーチンの一部分のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例であるステアリングシステムを、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【実施例】
【0015】
[A]ステアリングシステムのハード構成
車両に搭載される実施例のステアリングシステムは、
図1に模式的に示すように、それぞれが転舵輪である左右2つの車輪10を転舵するためのシステムであり、機械的に互いに独立した操作装置12および転舵装置14を備えたステアバイワイヤ型のステアリングシステムである。
【0016】
操作装置12は、a)運転者によって操舵操作されるステアリング操作部材としてのステアリングホイール20と、b)先端にそのステアリングホイール20が取り付けられたステアリングシャフト22と、c)そのステアリングシャフト22を回転可能に保持するとともに、インパネリインフォースメント(図示を省略)に支持されるステアリングコラム24と、d)そのステアリングコラム24に支持された電動モータである反力モータ26を力源として、操舵操作に対する反力である操作反力としての反力トルクTqcを、ステアリングシャフト22を介して、ステアリングホイール20に付与する反力付与機構28とを含んで構成されている。この反力付与機構28は、減速機等を含む一般的な構造のものであるため、反力付与機構28の具体的な構造についての説明は、省略する。なお、この反力付与機構28は、操作反力付与装置として機能する。
【0017】
操作装置12は、ステアリングホイール20の操作角δをステアリング操作量として検出する操作角センサ30を有している。ちなみに、車両の直進状態においてステアリングホイール20がとる姿勢を中立姿勢とした場合に、その中立姿勢からの回転角が、ステアリングホイール20の操作角δである。また、ステアリングシャフト22には、トーションバー32が組み込まれており、そのトーションバー32の捩じれ量に基づいて、運転者によってステアリングホイール20に加えられる操作力としての操作トルクTqoを検出するための操作トルクセンサ34を有している。
【0018】
車輪10の各々は、ステアリングナックル40を介して転向可能に車体に支持されている。転舵装置14は、2つのステアリングナックル40を共に回動させることで、2つの車輪10を一体的に転舵する。転舵装置14は、主要構成要素として、転舵アクチュエータ42を有している。転舵アクチュエータ42は、a)両端がリンクロッド44を介して左右のステアリングナックル40にそれぞれ連結されるステアリングロッド(一般的に、ラックバーと呼ばれるものである)46と、b)そのステアリングロッド46を左右に移動可能に支持するとともに、車体に固定的に保持されたハウジング48と、c)電動モータである転舵モータ50を駆動源として、ステアリングロッド46を左右に移動させるためのロッド移動機構52とを含んで構成されている。ロッド移動機構52は、ステアリングロッド46に螺設されたボール溝と、そのボール溝とベアリングボールを介して螺合するとともに転舵モータ50によって回転させられるナットとによって構成されるボールねじ機構を主体とするものであり、一般的な構造のものであるため、ロッド移動機構52についてのここでの詳しい説明は省略する。
【0019】
転舵装置14は、ステアリングロッド46の中立位置(車両の直進状態において位置する位置)からの移動量を検出することで、車輪10の転舵量としての転舵角θを検出するための転舵角センサ54を有している。
【0020】
操作装置12の制御、詳しくは、反力トルクTqcの制御、すなわち、操作装置12の反力モータ26の制御は、当該操作装置12のコントローラである操作コントローラとしての操作電子制御ユニット(以下、「操作ECU」と言う場合がある)60によって実行される。操作ECU60は、CPU,ROM,RAM等を有するコンピュータや、反力モータ26のドライバ(反力モータ26は3相ブラシレスモータであるため、具体的には、インバータである)等によって構成されている。
【0021】
同様に、転舵装置14の制御、詳しくは、転舵角θの制御、すなわち、転舵装置14の転舵モータ50の制御は、当該転舵装置14のコントローラである転舵コントローラとしての転舵電子制御ユニット(以下、「転舵ECU」と言う場合がある)62によって実行される。転舵ECU62は、CPU,ROM,RAM等を有するコンピュータや、転舵モータ50のドライバ(転舵モータ50は3相ブラシレスモータであるため、具体的には、インバータである)等によって構成されている。なお、転舵ECU62は上記ドライバの温度T(厳密には、ドライバの基板の温度であるため、以下、「基板温度T」という場合がある)を検出するための温度センサ64を有している。
【0022】
本車両には、転舵モータ50,反力モータ26に電流を供給するための電源としてのバッテリ66と、そのバッテリ66の電圧Vを電源電圧として検出する電圧センサ68とが配設されている。この電圧センサ68は、転舵ECU62に接続されている。
【0023】
後に詳しく説明するが、操作ECU60,転舵ECU62は、互いに情報を送受信しながら制御処理を実行する。そのため、操作ECU60,転舵ECU62は、通信線としてのCAN(car area network or controllable area network)70に接続させられている。また、車両には、当該車両の走行速度である車速vを検出するための車速センサ72が設けられており、その車速センサ72も、CAN70に繋げられている。なお、車速センサ72の代わりに、ブレーキシステムからの車速vに関する信号がCAN70を流れるようにしてもよい。
【0024】
[B]ステアリングシステムの制御
実施例のステアリングシステムでは、一般的なステアバイワイヤ型のステアリングシステムと同様に、操舵操作に応じた車輪の転舵制御(以下、単に「転舵制御」と略す場合がある)と、操作反力の制御(以下、単に「反力制御」という場合がある)とを実行する。但し、本実施例のステアリングシステムでは、上述の電圧降下対処手段として、反力制御において反力トルクTqcを大きくするための補正処理を実行する。以下に、転舵制御,基本的な反力制御である基本反力制御,電源電圧降下対処手段について説明し、その後に、それらの制御のフローを簡単に説明する。
【0025】
(a)転舵制御
転舵制御は、ステアリングホイール20に対する操舵操作であるステアリング操作に応じた車輪10の転舵を実現させるための制御であり、転舵ECU62によって実行される。操作ECU60は、操作角センサ30を介し、操作部材の操作量として、ステアリングホイール20の操作角δを検出しており、転舵ECU62は、操作ECU60からCAN70を介して取得した操作角δに基づいて、次式に従って、その操作角δに、ステアリングギヤ比γを乗ずることによって、車輪10の転舵角θの目標となる目標転舵角θ*を決定する。
θ*=γ・δ
【0026】
本ステアリングシステムは、ステアリングギヤ比可変機能を有している。ステアリングギヤ比γは、ステアリングホイール20の操作角δに対する転舵角θの比であり、当該車両の走行速度である車速vに応じて、
図2のグラフに示すように、車速vが高くなればなる程小さくなるように決定される。つまり、車速vが高くなれば、いわゆるスローに、車速が低くなれば、いわゆるクイックな状態が実現される。転舵ECU62は、車速センサ72によって検出された車速vに基づいて、ステアリングギヤ比γを決定する。
【0027】
転舵ECU62は、転舵角センサ54を介して、実際の転舵量である実際の車輪10の転舵角θ(以下、「実転舵角θ」という場合がある)を検出し、目標転舵角θ*に対する実転舵角θの偏差である転舵角偏差Δθを、次式に従って認定する。
Δθ=θ*-θ
そして転舵ECU62は、転舵角偏差Δθに基づくフィードバック制御則に従って、つまり、次式に従って、車輪10を目標転舵角θ*に転舵するために必要な転舵トルクとして、必要転舵トルクTqsを決定する。ちなみに、下記式の第1項,第2項,第3項は、それぞれ、比例項,積分項,微分項であり、Gp,Gi,Gdは、それぞれ、比例項ゲイン,積分項ゲイン,微分項ゲインである。
Tqs=Gp・Δθ+Gi・∫Δθdt+Gd・(dΔθ/dt)
【0028】
転舵ECU62は、決定した必要転舵トルクTqsに基づいて、次式に従って、転舵モータ50に供給される電流である転舵電流Isの目標となる目標転舵電流Is*を決定する。ちなみに、次式のKsは、目標転舵電流をIs*を必要転舵トルクTqsに基づいて決定するための転舵電流決定係数である。
Is*=Ks・Tqs
そして、転舵ECU62は、決定した目標転舵電流をIs*に基づいて、転舵モータ50に電流を供給する。
【0029】
(b)基本反力制御
反力制御は、運転者にステアリング操作に対する適切な操作感を感じさせるべく、操作反力である反力トルクを、ステアリングホイール20に付与するための制御であり、操作ECU60によって実行される。基本反力制御においては、操作ECU60は、ステアリングホイール20に付与すべき反力トルクである必要反力トルクTqcを、2つの成分である転舵トルク依拠成分Tqcs,操作トルク依拠減少成分Tqcoに基づいて、次式に従って決定する。
Tqc=Tqcs-Tqco
【0030】
転舵トルク依拠成分Tqcsは、車輪10を転舵するために実際に発揮されている転舵トルクTqsに関する成分である。先に説明したように、実際の転舵トルクTqsは、実際に転舵モータ50に供給されている電流である実転舵電流Is に比例するため、操作ECU60は、次式に従って、転舵トルク依拠成分Tqcsを決定する。なお、実転舵電流Is は、転舵ECU62によって常時検出されてCAN70を介して送られてくる情報に基づいて取得される。ちなみに、次式におけるJsは、転舵トルク依拠成分Tqcsを決定するための反力トルク成分決定係数である。
Tqcs=Js・Is
【0031】
操作トルク依拠減少成分Tqcoは、いわゆるパワーステアリングの操作感を運転者に付与するための成分と考えることができる。パワーステアリングでは、一般的には、操作トルクTqoに応じたアシストトルクを、ステアリングシャフト22に付与するようにされている。そのアシストトルクを模すようにして、操作ECU60は、操作トルク依拠減少成分Tqcoを、次式に従って決定する。なお、操作ECU60は、操作トルクTqoとして、トーションバー32の捩じれ量に基づいて操作トルクセンサ34によって検出された操作トルクTqoを用いる。ちなみに、次式におけるJoは、操作トルク依拠減少成分Tqcoを決定するための反力トルク成分決定係数であり、あたかも操作トルクTqoが大きい程大きなアシスト力が発揮されているような操作感を実現するように設定されている。
Tqco=Jo・Tqo
【0032】
以上のようにして決定した必要反力トルクTqcに基づき、操作ECU60は、反力モータ26に供給される電流である反力電流Icの目標となる目標反力電流Ic*を、次式に従って決定する。ちなみに、次式のKcは、目標反力電流をIc*を必要反力トルクTqcに基づいて決定するための反力電流決定係数である。
Ic*=Kc・Tqc
そして、操作ECU60は、その決定した目標反力電流Ic*に基づいて、反力モータ26に電流を供給する。
【0033】
(c)電源電圧降下対処手段
転舵モータ50に電流を供給するための電源であるバッテリ66は、例えば、充電量が低下した場合、言い換えれば、残存電気量が減少した場合等において、電圧Vが降下し、その電圧Vは、充電量が少なくなればなる程大きく降下する。したがって、バッテリ電圧Vが降下した状態において、大きな転舵電流Isを転舵モータ50に供給することは、バッテリ66の過度な負担ともなりかねず、また、バッテリ電圧Vが相当に降下した状態では、満足な転舵電流Isを供給することができない。そこで、本ステアリングシステムでは、バッテリ電圧Vが低い場合に高い場合に比較して、操作反力、すなわち、ステアリングホイール20に付与する反力トルクTqcを大きくすることで、運転者によるステアリングホイール20の操作に制限を加えるようにようにされている。
【0034】
しかしながら、電源電圧Vが降下している場合に、常に反力トルクTqcを大きくすると、不適切な事態を招きかねない。詳しく言えば、例えば、反力トルクTqcが大きいと、ステアリング操作において運転者に引っ掛かり感(操作に対する阻害感)を与えることにもなり、安心な操作感が担保されないことが予想される。一方で、先に説明した転舵制御からも解るように、転舵角θの変化速度である転舵速度dθ、詳しくは、目標転舵角θ*の変化速度である転舵速度dθ*が高い場合、実転舵角θが追従し難く、上記転舵角偏差Δθが大きくなることで、転舵電流Isが大きくなってしまう。つまり、転舵力(「転舵出力」と考えることもできる)である転舵トルクTqsが大きくなってしまうのである。逆に言えば、転舵速度dθ*が低い場合には、転舵電流Isが大きくならず、つまり、転舵トルクTqsは大きくならず、敢えて、反力トルクTqcを大きくすることによるステアリング操作への制限を加える必要はないのである。
【0035】
そこで、本ステアリングシステムでは、バッテリ電圧Vが低い場合に高い場合に比較して、操作反力、すなわち、ステアリングホイール20に付与する反力トルクTqcを大きくすることに加えて、転舵速度dθ*が高い場合を、大転舵出力状況下であると認定し、その大転舵出力状況下において、転舵速度dθ*が低い場合であると認定した小転舵出力状況下に比較して、反力トルクTqcを大きくするようにされている。逆に言えば、小転舵出力状況下において、大転舵出力状況下と比較して、反力トルクTqcが小さくなるようにされているのである。
【0036】
詳しく説明すれば、本ステアリングシステムでは、操作ECU60は、次式に従って、反力トルクTqcを大きくするための反力トルク補正係数Hを、上述のようにして決定された反力トルクTqcに乗ずることによって、反力トルクTqcを補正する。反力トルク補正係数Hは、操作反力の程度に関する指標として機能する。
Tqc=H・Tqc
【0037】
反力トルク補正係数Hは、
図3(a)に示すように、横軸であるバッテリ電圧Vと、縦軸である転舵速度dθ
*とを2つの項目軸としたマトリクス図上に設定されている。言い換えれば、バッテリ電圧Vと転舵速度dθ
*とを2つのパラメータとして、それらのパラメータによって決定される。詳しく説明すれば、マトリクス図では、バッテリ電圧V,転舵速度dθ
*に関して、それぞれ3つの領域が設定されることで、9つの領域が設定されており、9つの領域のそれぞれに対応する反力トルク補正係数Hが設定されている。バッテリ電圧Vに関する3つの領域は、バッテリ電圧Vが第1閾電圧Vth1未満となる第1電圧領域Rv1、第1閾電圧Vth1以上第2閾電圧Vth2(第1閾電圧Vth1より高く設定されている)未満となる第2電圧領域Rv2,第2閾電圧Vth2以上となる第3電圧領域Rv3であり、転舵速度dθ
*に関する領域は、転舵速度dθ
*が第1閾速度dθ1以上となる第1転舵領域Rs1,第1閾速度dθ1未満第2閾速度dθ2(第1閾速度dθ1より低く設定されている)以上となる第2転舵領域Rs2,第2閾速度dθ2未満となる第3転舵領域Rs3である。
【0038】
反力トルク補正係数Hは、1+x1,1+x2,1+x3,1+0(x1>x2>x3>0)の4つが設定されており、その順で、値が小さくなる。つまり、値が大きい程、反力トルクTqcが大きくなるような補正が行われる。ちなみに、1+0は、実質的な補正が行われないことを意味している。
【0039】
詳しく説明すれば、バッテリ電圧Vが高い第3電圧領域Rv3では、上述のようにして決定された反力トルクTqcがそのまま付与されることになるが、バッテリ電圧Vが第3電圧領域Rv3より低い第2電圧領域Rv2では、転舵速度dθ*が低い第3転舵領域Rs3において、決定された反力トルクTqcがそのまま付与されることになるが、転舵速度dθ*が段階的に高くなる第2転舵領域Rs2,第1転舵領域Rs1では、決定された反力トルクTqcよりも段階的に大きな反力トルクTqcが付与される。そして、バッテリ電圧Vがさらに低い第1電圧領域Rv1では、第3転舵領域Rs3,第2転舵領域Rs2,第1転舵領域Rs1と転舵速度dθ*が段階的に高くなるにつれて、第2電圧領域Rv2と比較してより大きく、かつ、上記決定された反力トルクTqcよりも段階的に大きな反力トルクTqcが付与されることになる。
【0040】
上述のような反力トルクTqcの補正処理によって、本ステアリングシステムでは、バッテリ電圧Vが比較的低く、かつ、大転舵出力状況下にあるときには、反力トルクTqcが比較的大きくされるものの、バッテリ電圧Vが比較的高い場合や、小転舵出力状況下では、反力トルクTqcが過大となることが抑制される。したがって、本ステアリングシステムは、電源電圧の降下に適切に対処可能なステアバイワイヤ型のステアリングシステムとされているのである。
【0041】
なお、転舵速度dθ
*に代えて、例えば、ステアリングギヤ比γをパラメータとして採用し、そのステアリングギヤ比γの高さに応じて、反力トルクTqcを補正してもよい。具体的に言えば、
図3(a)に示すマトリクス図に代えて、
図3(b)のように設定されたマトリクス図を用いて、反力トルクTqcを補正するのである。ちなみに、
図3(b)のマトリクス図では、第1閾ギヤ比γ1,第2閾ギヤ比γ2(<γ1)によって、第1,第2,第3転舵領域Rs1,Rs2,Rs3が設定されている。つまり、ステアリングギヤ比γが高い場合、低い場合に、それぞれ、大転舵出力状況下、小転舵出力状況下であると認定されるのである。ステアリングギヤ比γをパラメータとして採用した反力トルクTqcの補正処理によれば、ステアリングギヤ比γが高くなることによって必要な転舵トルクTqsが大きくなりそうな状況において、反力トルクTqcが比較的大きくされることになる。
【0042】
また、転舵速度dθ
*に代えて、例えば、車速vをパラメータとして採用し、その車速vの高さに応じて、反力トルクTqcを補正してもよい。具体的に言えば、
図3(a)に示すマトリクス図に代えて、
図3(c)のように設定されたマトリクス図を用いて、反力トルクTqcを補正するのである。ちなみに、
図3(c)のマトリクス図では、第1閾車速v1,第2閾車速v2(>v1)によって、第1,第2,第3転舵領域Rs1,Rs2,Rs3が設定されている。つまり、路面の摩擦等を考慮して、車速vが低い場合、高い場合に、それぞれ、大転舵出力状況下、小転舵出力状況下であると認定されるのである。車速vをパラメータとして採用した反力トルクTqcの補正処理によれば、車速vが低くなることによって必要な転舵トルクTqsが大きくなりそうな状況において、反力トルクTqcが比較的大きくされることになる。
【0043】
(d)制御フロー
本ステアリングシステムでは、上述の転舵制御,電源電圧降下対処手段としての処理を含む反力制御は、それぞれ、転舵ECU62,操作ECU60が、
図4,
図5にフローチャートを示す転舵制御プログラム,反力制御プログラムを、短い時間ピッチ(例えば、数m~数十msec)で繰り返し実行することによって行われる。以下にそれらのプログラムに沿った処理を説明することで、本ステアリングシステムにおける制御の流れについて、簡単に説明する。
【0044】
転舵ECU62によって実行される転舵制御プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様である。)において、車速センサ72によって検出されCAN70を介して送られてくる車速vについての情報に基づいて、当該車両の車速vが取得される。S2では、その車速vに基づいて、
図2に示すようなマップを参照されて、ステアリングギヤ比γが決定される。
【0045】
操作角センサ30によって検出された操作角δについての情報は、操作ECU60から送信されてきており、S3において、その情報に基づいて操作角δが取得される。続くS4において、その操作角δと決定されたステアリングギヤ比γとに基づいて、目標転舵角θ*が決定される。S5では、転舵角センサ54を介して、実転舵角θが検出され、S6において、決定された目標転舵角θ*と検出された実転舵角θとに基づいて、転舵角偏差Δθが認定される。
【0046】
次のS7において、転舵角偏差Δθに基づくフィードバック制御則に従って、必要転舵トルクTqsが決定され、S8において、その必要転舵トルクTqsに基づいて目標転舵電流Is*が決定され、S9において、その目標転舵電流Is*に基づいて転舵モータ50に電流が供給される。実転舵電流Isは検出されており、S10において、その検出されている実転舵電流Isの情報、上記決定されたステアリングギヤ比γの情報、および、目標転舵角θ*の変化速度として認定された転舵速度dθ*の情報が送信されて、当該転舵制御プログラムに従う処理の1回の実行が終了する。
【0047】
操作ECU60によって実行される反力制御プログラムに従う処理では、まず、S11において、操作角センサ30を介して操作角δが検出され、S12において、その操作角δについての情報が、転舵ECU62に送信される。
【0048】
次のS13において、転舵ECU62から送られてくる情報に基づいて、実転舵電流Isが取得され、S14において、その実転舵電流Isに基づいて、転舵トルク依拠成分Tqcsが、決定される。続くS15において、操作トルクセンサ34を介して操作トルクTqoが検出され、S16において、その操作トルクTqoに基づいて、操作トルク依拠減少成分Tqcoが決定される。そして、S17において、転舵トルク依拠成分Tqcsから操作トルク依拠減少成分Tqcoが減じられることによって、必要反力トルクTqcが決定される。
【0049】
続いて、S18において、決定された必要反力トルクTqcの補正処理が、
図6にフローチャートを示す反力トルク補正サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S21において、電圧センサ68を介してバッテリ電圧Vが検出される。そして、S22,S23において、検出されたバッテリ電圧Vと第1閾電圧Vth1,第2閾電圧Vth2とを比較することによって、そのバッテリ電圧Vが、先に説明した第1電圧領域Rv1,第2電圧領域Rv2,第3電圧領域Rv3のいずれに属するかが判定される。バッテリ電圧Vが第1閾電圧Vth1未満である場合には、S24において、電圧領域Rvが第1電圧領域Rv1と、バッテリ電圧Vが第1閾電圧Vth1以上第2閾電圧Vth2未満である場合には、S25において、電圧領域Rvが第2電圧領域Rv2と、バッテリ電圧Vが第2閾電圧Vth2以上である場合には、S26において、電圧領域Rvが第3電圧領域Rv3と、それぞれ判定される。
【0050】
次のS27において、転舵ECU62から送られてくる情報に基づいて、転舵速度dθ*が取得される。そして、S28,S29において、転舵速度dθ*と第1閾速度dθ1,第2閾速度dθ2とを比較することによって、その転舵速度dθ*が、先に説明した第1転舵領域Rs1,第2転舵領域Rs2,第3転舵領域Rs3のいずれに属するかが判定される。転舵速度dθ*に関する領域を転舵領域Rsとすれば、転舵速度dθ*が第1閾速度dθ1以上である場合には、S30において、転舵領域Rsが第1転舵領域Rs1と、転舵速度dθ*が第1閾速度dθ1未満第2閾速度dθ2以上である場合には、S31において、転舵領域Rsが第2転舵領域Rs2と、転舵速度dθ*が第2閾速度dθ2未満である場合には、S32において、転舵領域Rsが第3転舵領域Rs3と、それぞれ判定される。
【0051】
続くS33において、判定された電圧領域Rv,転舵領域Rsに基づいて、
図3(a)にマトリクス図として示すマップデータを参照しつつ、反力トルク補正係数Hが抽出され、S34において、決定されている必要反力トルクTqcが補正される。このような補正処理を行って、反力トルク補正サブルーチンに従う処理が終了する。
【0052】
反力トルク補正サブルーチンの実行の後、S19において、補正後の必要反力トルクTqcに基づいて、目標反力電流Ic*が決定され、S20において、その目標反力電流Ic*に基づいて、反力モータ26に電流が供給される。このようにして、当該反力制御プログラムに従う処理の1回の実行が終了する。
【0053】
なお、転舵速度dθ
*に代えて、ステアリングギヤ比γをパラメータとして必要反力トルクTqcを補正する場合には、反力トルク補正サブルーチンのS27~S32の処理に代えて、
図7(a)に示すS27’~S32’の処理を実行すればよい。この処理について詳しく説明すれば、S27’において、転舵ECU62から送られてくる情報に基づいて、ステアリングギヤ比γが取得される。そして、S28’,S29’において、ステアリングギヤ比γと第1閾ギヤ比γ1,第2閾ギヤ比γ2とを比較することによって、そのステアリングギヤ比γが、先に説明した第1転舵領域Rs1,第2転舵領域Rs2,第3転舵領域Rs3のいずれに属するかが判定される。ステアリングギヤ比γに関する領域を転舵領域Rsとすれば、ステアリングギヤ比γが第1閾ギヤ比γ1以上である場合には、S30’において、転舵領域Rsが第1転舵領域Rs1と、ステアリングギヤ比γが第1閾ギヤ比γ1未満第2閾ギヤ比γ2以上である場合には、S31’において、転舵領域Rsが第2転舵領域Rs2と、ステアリングギヤ比γが第2閾ギヤ比γ2未満である場合には、S32’において、転舵領域Rsが第3転舵領域Rs3と、それぞれ判定される。ちなみに、S33の反力トルク補正係数Hの抽出の際には、
図3(b)にマトリクス図として示すマップデータが参照される。
【0054】
また、転舵速度dθ
*に代えて、車速vをパラメータとして必要反力トルクTqcを補正する場合には、反力トルク補正サブルーチンのS27~S32の処理に代えて、
図7(b)に示すS27”~S32”の処理を実行すればよい。この処理について詳しく説明すれば、S27”において、車速vが取得される。そして、S28”,S29”において、車速vと第1閾車速v1,第2閾車速v2とを比較することによって、その車速vが、先に説明した第1転舵領域Rs1,第2転舵領域Rs2,第3転舵領域Rs3のいずれに属するかが判定される。車速vに関する領域を転舵領域Rsとすれば、車速vが第1閾車速v1未満である場合には、S30”において、転舵領域Rsが第1転舵領域Rs1と、車速vが第1閾車速v1以上第2閾車速v2未満である場合には、S31”において、転舵領域Rsが第2転舵領域Rs2と、車速vが第2閾車速v2以上である場合には、S32”において、転舵領域Rsが第3転舵領域Rs3と、それぞれ判定される。ちなみに、S33の反力トルク補正係数Hの抽出の際には、
図3(c)にマトリクス図として示すマップデータが参照される。
【符号の説明】
【0055】
10:車輪 12:操作装置 14:転舵装置 20:ステアリングホイール〔ステアリング操作部材〕 26:反力モータ 28:反力付与機構〔操作反力付与装置〕 30:操作角センサ 34:操作トルクセンサ 42:転舵アクチュエータ 50:転舵モータ 52:ロッド移動機構 54:転舵角センサ 60:操作電子制御ユニット(操作ECU)〔操作コントローラ〕 62:転舵電子制御ユニット(転舵ECU)〔転舵コントローラ〕 66:バッテリ〔電源〕 68:電圧センサ 72:車速センサ