IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化成品工業株式会社の特許一覧

特許7586750ポリスチレン系樹脂発泡シートおよびポリスチレン系樹脂発泡容器
<>
  • 特許-ポリスチレン系樹脂発泡シートおよびポリスチレン系樹脂発泡容器 図1
  • 特許-ポリスチレン系樹脂発泡シートおよびポリスチレン系樹脂発泡容器 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂発泡シートおよびポリスチレン系樹脂発泡容器
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20241112BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20241112BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20241112BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20241112BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241112BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08J9/14 CET
C08J9/36
B29C48/10
B29C48/32
B29C44/00 E
B29C51/14
B32B27/30 B
B32B5/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021054749
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152105
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】長谷 真之介
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205761(JP,A)
【文献】特開2016-113580(JP,A)
【文献】特開2019-210439(JP,A)
【文献】特開2014-227459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0299152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
B29C 48/00-48/96
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を含むポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
該耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、ポリスチレン系樹脂(I)と発泡剤を含む樹脂組成物を押出発泡させて得られ、
該ポリスチレン系樹脂(I)100質量部に対する該発泡剤の含有量が0.5質量部~3.5質量部であり、
該ポリスチレン系樹脂(I)が、ビカット軟化温度が110℃以上の耐熱性ポリスチレン系樹脂(i)を含み、
該耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の発泡倍率が13倍以下であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートの押出流れ方向をMD方向、該ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面における該MD方向と直交する幅方向をTD方向、該MD方向と該TD方向の両方と直交する厚み方向をVD方向とし、
該耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡のMD方向の平均気泡径をdM(mm)、TD方向の平均気泡径をdT(mm)、VD方向の平均気泡径をdV(mm)としたときに、式(1)および式(2)を満足し、且つ、式(3)または式(4)を満足する、
ポリスチレン系樹脂発泡シート。
0≦(dM-dV)/dM<0.6 ・・・(1)
0≦(dT-dV)/dT<0.6 ・・・(2)
0≦(dM-dT)/dM<0.2(ただし、dM≧dT) ・・・(3)
0<(dT-dM)/dT<0.2(ただし、dT>dM) ・・・(4)
【請求項2】
厚みが0.5mm~4.0mmである、請求項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
坪量が80g/m2~400g/m2である、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の見掛け密度が0.05g/cm3~0.30g/cm3である、請求項1からまでのいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡の全体の平均気泡径が0.05mm~0.50mmである、請求項1からまでのいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなる、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シートまたは請求項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形された、ポリスチレン系樹脂発泡容器。
【請求項8】
発泡剤の含有量が3.1質量%以下である、請求項に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シートおよびポリスチレン系樹脂発泡容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られる容器は、トレー、弁当箱、丼、カップ等の各種容器として、コンビニエンストア等で広く使用されている。その中でも、近年、調理済食品が包装された状態で電子レンジによって加熱されることを想定した、いわゆるレンジアップ容器の需要が高まっている。このようなレンジアップ容器としては、耐熱性を有するポリスチレン系樹脂発泡シートが熱成形されたものが広く使用されている。このようなポリスチレン系樹脂発泡シートは、通常、ポリスチレン系樹脂と発泡剤を含む樹脂組成物を押出発泡させて得られた発泡シートに、必要に応じて他の機能性フィルムを積層して製造される。
【0003】
レンジアップ容器を成形するために用いられるポリスチレン系樹脂発泡シートは、軽量性やコスト低減の観点から、見掛け密度が低いことが好ましい。しかし、見掛け密度の低いポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られる容器を、パスタ等の食品が包装された状態で電子レンジにより加熱した場合、容器の表面に部分的な膨れ(ブリスター)やみみずばれ(3次発泡)等が発生する問題がある。これは、食品からの伝熱によって容器の表面が局所的に加熱される等が原因であると推察される。
【0004】
上記のような問題を解消するため、発泡剤として、ブタンとジメチルエーテルを含む発泡剤を用いるポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法が報告されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の製造方法においては、引火性、爆発性、および有害性の高い可燃性高圧ガスであるジメチルエーテルを用いるため、この製造方法によってポリスチレン系樹脂発泡シートを大量生産することは、極めて危険性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-210312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ジメチルエーテルを極力用いることなく、加熱によって表面にブリスターや3次発泡が発生し難いポリスチレン系樹脂発泡容器を熱成形し得るポリスチレン系樹脂発泡シートを提供すること、および、加熱によって表面にブリスターや3次発泡が発生し難いポリスチレン系樹脂発泡容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を含むポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
該耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、ポリスチレン系樹脂(I)と発泡剤を含む樹脂組成物を押出発泡させて得られ、
該ポリスチレン系樹脂(I)100質量部に対する該発泡剤の含有量が0.5質量部~3.5質量部であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートの押出流れ方向をMD方向、該ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面における該MD方向と直交する幅方向をTD方向、該MD方向と該TD方向の両方と直交する厚み方向をVD方向とし、
該耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡のMD方向の平均気泡径をdM(mm)、TD方向の平均気泡径をdT(mm)、VD方向の平均気泡径をdV(mm)としたときに、式(1)および式(2)を満足し、且つ、式(3)または式(4)を満足する。
0≦(dM-dV)/dM<0.6 ・・・(1)
0≦(dT-dV)/dT<0.6 ・・・(2)
0≦(dM-dT)/dM<0.2(ただし、dM≧dT) ・・・(3)
0<(dT-dM)/dT<0.2(ただし、dT>dM) ・・・(4)
【0009】
一つの実施形態としては、上記ポリスチレン系樹脂(I)が、ビカット軟化温度が110℃以上の耐熱性ポリスチレン系樹脂(i)を含む。
【0010】
一つの実施形態としては、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、厚みが0.5mm~4.0mmである。
【0011】
一つの実施形態としては、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、坪量が80g/m~400g/mである。
【0012】
一つの実施形態としては、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の発泡倍率が13倍以下である。
【0013】
一つの実施形態としては、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の見掛け密度が0.05g/cm~0.30g/cmである。
【0014】
一つの実施形態としては、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡の全体の平均気泡径が0.05mm~0.50mmである。
【0015】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなる。
【0016】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたものである。
【0017】
一つの実施形態としては、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器は、発泡剤の含有量が3.1質量%以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ジメチルエーテルを極力用いることなく、加熱によって表面にブリスターや3次発泡が発生し難いポリスチレン系樹脂発泡容器を熱成形し得るポリスチレン系樹脂発泡シート、および、加熱によって表面にブリスターや3次発泡が発生し難いポリスチレン系樹脂発泡容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の製造方法の一つの実施形態を示す概略説明図である。
図2】本発明のポリスチレン系樹脂発泡容器の一つの実施形態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0021】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0022】
≪≪ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を含むポリスチレン系樹脂発泡シートである。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0023】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、例えば、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)のみからなっていてもよい。
【0024】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を含んでいれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を含んでいてもよい。このような他の層としては、例えば、他のポリスチレン系樹脂発泡層が挙げられる。他のポリスチレン系樹脂発泡層は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0025】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの厚みは、好ましくは0.5mm~4.0mmであり、より好ましくは0.8mm~3.5mmであり、さらに好ましくは1.0mm~3.0mmであり、特に好ましくは1.1mm~2.5mmである。
【0026】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの坪量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの坪量は、好ましくは80g/m~400g/mであり、より好ましくは90g/m~350g/mであり、さらに好ましくは100g/m~300g/mであり、特に好ましくは110g/m~250g/mである。
【0027】
≪耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)≫
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、代表的には、ポリスチレン系樹脂(I)を発泡させて形成したものである。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、代表的には、ポリスチレン系樹脂(I)と発泡剤を含む樹脂組成物を押出発泡させて得られる。より具体的には、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、代表的には、ポリスチレン系樹脂(I)と発泡剤と、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤とを、共に押出機内で加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからシート状に押し出すと共に発泡させ、直ちに冷却して形成される。
【0028】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の厚みは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.5mm~4.0mmであり、より好ましくは0.8mm~3.5mmであり、さらに好ましくは1.0mm~3.0mmであり、特に好ましくは1.1mm~2.5mmである。
【0029】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の坪量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な坪量を採り得る。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の坪量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは80g/m~400g/mであり、より好ましくは90g/m~350g/mであり、さらに好ましくは100g/m~300g/mであり、特に好ましくは110g/m~250g/mである。
【0030】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の発泡倍率は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡倍率を採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の発泡倍率は、好ましくは13倍以下であり、より好ましくは2倍~13倍であり、さらに好ましくは3倍~12倍であり、特に好ましくは4倍~11倍である。
【0031】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の見掛け密度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な見掛け密度を採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の見掛け密度は、好ましくは0.05g/cm~0.30g/cmであり、より好ましくは0.08g/cm~0.25g/cmであり、さらに好ましくは0.08g/cm~0.20g/cmであり、特に好ましくは0.08g/cm~0.18g/cmである。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の見掛け密度は、例えば、JIS K7222:1999「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の測定」に記載されている方法により測定される。
【0032】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の表層部(表面から200μmの厚み部分)の密度(以下、表層密度ということがある)は、全体の見掛け密度よりも大きいことが好ましい。表層密度が全体の見掛け密度よりも大きいことで、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の耐衝撃性が高められる。全体の見掛け密度よりも大きい密度の表層部は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。表層密度は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を製造する際に、冷却用のエアーの温度や風量を調節したり、サーキュラーダイの温度やマンドレルでの冷却温度を調節したりする等により、任意の範囲に調整することができる。(表層密度/全体の見掛け密度)で表される比(以下、表層密度比ということがある)は、好ましくは1.5~2.5であり、より好ましくは1.8~2.2である。表層密度比が上記範囲内にあれば、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の耐衝撃性が高められるとともに、成形に適した発泡性が発現できる。
【0033】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の中間点ガラス転移温度(Tmg)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは105℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは115℃以上である。
【0034】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、ASTM D2856-87に準拠して1-1/2-1気圧法により測定される体積(V)と発泡層の見掛け上の体積(V)から下記式に基づいて測定される連続気泡率が、好ましくは20%以下であり、より好ましく15%以下であり、さらに好ましく12%以下であり、特に好ましく10%以下である。
連続気泡率(%)=100×[(V-V)/V
【0035】
ポリスチレン系樹脂(I)は、1種のポリスチレン系樹脂であってもよいし、2種以上のポリスチレン系樹脂の混合物であってもよい。
【0036】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートにおいては、本発明の効果をより発現し得る点で、ポリスチレン系樹脂(I)100質量部に対する発泡剤の含有量が、好ましくは0.5質量部~3.5質量部であり、より好ましくは1.0質量部~3.4質量部であり、さらに好ましくは1.5質量部~3.4質量部であり、特に好ましくは2.0質量部~3.4質量部である。ポリスチレン系樹脂(I)100質量部に対する発泡剤の含有量が上記範囲を外れて多すぎると、ポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られるポリスチレン系樹脂発泡容器を加熱した場合に、容器表面にブリスターや3次発泡が発生するおそれがある。ポリスチレン系樹脂(I)100質量部に対する発泡剤の含有量が上記範囲を外れて少なすぎると、ポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られるポリスチレン系樹脂発泡容器の発泡状態が悪くなり、靭性低下や割れの発生などのおそれがある。
【0037】
ポリスチレン系樹脂(I)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体;上記スチレン系モノマーの共重合体;上記スチレン系モノマーとカルボン酸エステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートなど)との共重合体;上記スチレン系モノマーと二官能性モノマー(例えば、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなど)との共重合体;ブタジエンやイソプレンなどのゴム成分ブロックとスチレンブロックとを有するブロック共重合体、上記ゴム成分ブロックをスチレンからなる分子鎖にグラフトさせたグラフト共重合体などのハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン、HIPS);などが挙げられる。ポリスチレン系樹脂(I)は、リサイクル原料のポリスチレン系樹脂であってもよい。スチレン系モノマーは、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系モノマーの全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0038】
ポリスチレン系樹脂(I)としては、他の樹脂と混合された市販品を採用してもよい。他の樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0039】
ポリスチレン系樹脂(I)は、他の樹脂と併用して、ポリスチレン系樹脂(I)と発泡剤を含む樹脂組成物としてもよい。他の樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0040】
本発明の効果をより発現させ得る点で、ポリスチレン系樹脂(I)と発泡剤を含む樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂(I)の含有割合は、好ましくは30質量%~100質量%であり、より好ましくは50質量%~100質量%であり、さらに好ましくは70質量%~100質量%であり、特に好ましくは90質量%~100質量%である。
【0041】
上記のような他の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ(2,6-ジメチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジエチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジクロルフェニレン-1,4-エーテル)等のポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SIPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体ゴム(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SEPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体などが挙げられる。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂としては、具体例には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm~0.94g/cmであり、より好ましくは0.91g/cm~0.93g/cmである。高密度は、好ましくは0.95g/cm~0.97g/cmであり、より好ましくは0.95g/cm~0.96g/cmである。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0043】
ポリスチレン系樹脂(I)としては、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、ビカット軟化温度が110℃以上の耐熱性ポリスチレン系樹脂(i)を含む。ビカット軟化温度は、代表的には、JIS K7206に規定されている。耐熱性ポリスチレン系樹脂(i)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。耐熱性ポリスチレン系樹脂(i)としては、例えば、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテルとの混合樹脂(例えば、サビック社製の商品名「ノリルEFN4230」など)、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイミド共重合体、ポリパラメチルスチレン樹脂が挙げられる。
【0044】
ポリスチレン系樹脂(I)中の耐熱性ポリスチレン系樹脂(i)の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、ポリスチレン系樹脂(I)中の耐熱性ポリスチレン系樹脂(i)の含有割合は、好ましくは10質量%~50質量%であり、より好ましくは10質量%~45質量%であり、さらに好ましくは10質量%~40質量%であり、特に好ましくは10質量%~30質量%である。
【0045】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、該耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡のMD方向の平均気泡径をdM(mm)、TD方向の平均気泡径をdT(mm)、VD方向の平均気泡径をdV(mm)としたときに、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、式(1)および式(2)を満足し、且つ、式(3)または式(4)を満足する。
0≦(dM-dV)/dM<0.6(ただし、dM≧dV) ・・・(1)
0≦(dT-dV)/dT<0.6 ただし、dT≧dV) ・・・(2)
0≦(dM-dT)/dM<0.2(ただし、dM≧dT) ・・・(3)
0<(dT-dM)/dT<0.2(ただし、dT>dM) ・・・(4)
【0046】
ここで、上記MD方向は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの押出流れ方向であり、上記TD方向は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面におけるMD方向と直交する幅方向であり、VD方向は、MD方向とTD方向の両方と直交する厚み方向である。
【0047】
式(1)は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡のMD方向の気泡径dMとVD方向の気泡径dVを平面に見た時の扁平率であり、式(2)は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡のTD方向の気泡径dTとVD方向の気泡径dVを平面に見た時の扁平率の歪みを反映した扁平率である。式(1)および式(2)を満足することにより、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡が真球状に近い形状となり、これによって、発泡剤の量を少なくしても、ポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られるポリスチレン系樹脂発泡容器を加熱した場合に、容器表面にブリスターや3次発泡が発生し難くなり得る。
【0048】
式(3)は、dM≧dTの場合のMD方向とTD方向のなす面における真円度であり、式(4)は、dT>dMの場合のMD方向とTD方向のなす面における真円度であり、式(3)または式(4)を満足することにより、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡のMD方向とTD方向のなす面における真円度が真円に近くなり、これによって、発泡剤の量を少なくしても、ポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られるポリスチレン系樹脂発泡容器を加熱した場合に、容器表面にブリスターや3次発泡が発生し難くなり得る。
【0049】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡の全体の平均気泡径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な平均気泡径を採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡の全体の平均気泡径は、好ましくは0.05mm~0.50mmであり、より好ましくは0.08mm~0.45mmであり、さらに好ましくは0.10mm~0.40mmであり、特に好ましくは0.15mm~0.36mmである。
【0050】
なお、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡の全体の平均気泡径は、MD方向の平均気泡径dM(mm)、TD方向の平均気泡径dT(mm)、VD方向の平均気泡径dV(mm)を用いて、(dM×dT×dV)の3乗根によって算出される。
平均気泡径d(mm)=(dM(mm)×dT(mm)×dV(mm))(1/3)
【0051】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、代表的には、ポリスチレン系樹脂(I)と発泡剤を含む樹脂組成物を押出発泡させて得られる。
【0052】
発泡剤としては、発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を採用し得る。このような発泡剤としては、例えば、プロパン、i-ブタン、n-ブタン、i-ペンタン、n-ペンタン、N、CO、N/CO、水、水と-OH、-COOH、-CN、-NH、-OSOH、-NH、CO、NH、-CONH、-COOR、-CHSOH、-SOH、-COONHなどの基を持つ化合物との混合物、これらの混合物、から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、発泡剤としては、好ましくは、i-ブタンおよびn-ブタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0053】
本発明においては、発泡剤がジメチルエーテルを極力含まないことが好ましい。発泡剤がジエチルエーテルを極力含まないことにより、引火性、爆発性、および有害性の高い可燃性高圧ガスであるジメチルエーテルを用いないでポリスチレン系樹脂発泡シートを安全に大量生産することが可能である。発泡剤中のジメチルエーテルの含有割合は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは実質的に0質量%である。
【0054】
ポリスチレン系樹脂(I)と発泡剤を含む樹脂組成物には、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料も含み)、消臭剤、発泡核剤、造核剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤が含まれていてもよい。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0055】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末;多価カルボン酸の酸性塩;多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの反応混合物;などが挙げられる。
【0056】
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤などが挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0058】
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、フラーレンなどが挙げられる。
【0059】
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤などが挙げられる。
【0060】
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物などが挙げられる。
【0061】
≪耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の製造≫
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法により製造し得る。
【0062】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の製造方法の一つの実施形態を、図1を参照して説明する。図1の製造装置1は、押出成形により耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を得る装置であり、押出機10と、発泡剤供給源18と、サーキュラーダイ20と、マンドレル30と、2つの巻取機40とを備える。
【0063】
押出機10は、いわゆるタンデム型押出機であり、第一の押出部11と第二の押出部12とが配管16で接続された構成となっている。第一の押出部11はホッパー14を備え、第一の押出部11には、発泡剤供給源18が接続されている。第二の押出部12には、サーキュラーダイ20が接続され、サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
【0064】
まず、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を構成する原料をホッパー14から第一の押出部11に投入する。ホッパー14から投入される原料は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を構成する樹脂、および、必要に応じて配合される添加剤である。
【0065】
第一の押出部11では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を第一の押出部11に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して混合物とする。加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して適宜決定される。
【0066】
混合物は、第一の押出部11から配管16を経て第二の押出部12に供給され、さらに混合され、任意の温度に冷却された後、サーキュラーダイ20内の樹脂流路に導かれる。樹脂流路に導かれた混合物は、サーキュラーダイ20から押し出され、発泡剤が発泡して円筒状の発泡シート2aとなる。
【0067】
円筒状の発泡シート2aは、冷却用送風機から送風された冷却用のエアーが吹き付けられつつ、マンドレル30に案内される。円筒状の発泡シート2aは、マンドレル30の外面を通過し、任意の温度に冷却され、カッター32によって2枚に切り裂かれて、シート状の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)2となる。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)2は、各々ガイドロール42とガイドロール44とに掛け回され、巻取機40に巻き取られて、ロール状の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)4となる。
【0068】
本発明の効果をより発現させ得る点で、下記のような条件で耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を製造することが好ましい。下記のような条件で耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を製造することにより、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)が有する気泡のMD方向の平均気泡径をdM(mm)、TD方向の平均気泡径をdT(mm)、VD方向の平均気泡径をdV(mm)としたときに、式(1)および式(2)を満足し得るとともに、式(3)または式(4)を満足し得る。
0≦(dM-dV)/dM<0.6 ・・・(1)
0≦(dT-dV)/dT<0.6 ・・・(2)
0≦(dM-dT)/dM<0.2(ただし、dM≧dT) ・・・(3)
0<(dT-dM)/dT<0.2(ただし、dT>dM) ・・・(4)
【0069】
(ブローアップ比)
マンドレルの口径をサーキュラーダイのダイリップ口径で割った比(ブローアップ比)を、好ましくは3.0~4.5とし、より好ましくは3.5~4.5とする。
【0070】
(ダイリップクリアランス)
ダイリップクリアランスを、好ましくは0.20mm~1.0mmとし、より好ましくは0.25mm~1.0mmとする。
【0071】
(押出機温度)
押出機温度を、好ましくは90℃~310℃とする。
【0072】
(せん断速度)
せん断速度を、好ましくは1000sec-1~8000sec-1とし、より好ましくは1500sec-1~8000sec-1とする。
【0073】
(金型出口付近での溶融樹脂の温度)
金型出口付近での溶融樹脂の温度を、好ましくは145℃~200℃とする。
【0074】
(押出量)
押出量を、好ましくは75kg/h~800kg/hとする。
【0075】
(エアー温度)
サーキュラーダイから押出して筒状に発泡成形した後に用いるエアーのエアー温度を、好ましくは10℃~80℃とする。
【0076】
(エアー量)
サーキュラーダイから押出して筒状に発泡成形した後に用いるエアーのエアー量を、好ましくは0.1m/m~5.0m/mとする。
【0077】
(エアーのタイミング)
サーキュラーダイから押出して筒状に発泡成形した直後から、好ましくは5秒以内に行う。
【0078】
≪他のポリスチレン系樹脂発泡層≫
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)以外に、他のポリスチレン系樹脂発泡層を含んでいてもよい。
【0079】
他のポリスチレン系樹脂発泡層は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)とは別の発泡層であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリスチレン系樹脂発泡層を採用し得る。
【0080】
他のポリスチレン系樹脂発泡層は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)よりも耐熱性が低いポリスチレン系樹脂発泡層であり、代表的には、ポリスチレン系樹脂(I)とは異なるポリスチレン系樹脂(II)を発泡させて形成したものである以外は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)と同様のポリスチレン系樹脂発泡層である。
【0081】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートが、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)と他のポリスチレン系樹脂発泡層との積層体である場合は、その製造方法としては、代表的には、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を構成する原料を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に第一の押出機内で加熱溶融、混練し、他のポリスチレン系樹脂発泡層を構成する原料を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に第二の押出機内で加熱溶融、混練し、合流金型へ供給するなどして積層し、発泡させ、必要に応じて所定温度に冷却後、ダイから共押出すると共に直ちに冷却することにより、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)と他のポリスチレン系樹脂発泡層との積層体である本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートが製造する。製造後のポリスチレン系樹脂発泡シートは、好ましくは、しばらく放置し、残存する発泡ガスを空気置換する。
【0082】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートが、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)と他のポリスチレン系樹脂発泡層との積層体である場合は、その製造方法としては、より具体的な好ましい形態としては、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を構成する原料を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に第一の押出機に供給し、他のポリスチレン系樹脂発泡層を構成する原料を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に第二の押出機に供給し、第一の押出機から押出される溶融樹脂と第二の押出機から押出される溶融樹脂とを合流ダイで合流させ、合流ダイで合流された溶融樹脂を外周側と内周側とに分けて筒状に押出発泡させ、サーキュラーダイなどを用いて2層構造の筒状発泡体を形成させ、サーキュラーダイの円環状の吐出口から押出発泡させた円筒状の発泡体をサーキュラーダイの下流側(押出方向前方)に配した直径が吐出口よりも径大な冷却用マンドレルに供し、発泡体の内面を冷却用マンドレルの外周面に摺接させつつ発泡体に引取りをかけ、冷却用マンドレルで発泡体を拡径するとともに発泡体を内側から冷却し、冷却用マンドレルの下流側に設けたカッターで発泡体を押出方向に向けて連続的に切断して平坦なシートとなるように展開し、長尺帯状となるようにして、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)と他のポリスチレン系樹脂発泡層との積層体である本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートが製造する。製造後のポリスチレン系樹脂発泡シートは、好ましくは、しばらく放置し、残存する発泡ガスを空気置換する。
【0083】
≪≪ポリスチレン系樹脂積層発泡シート≫≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなる。
【0084】
非発泡樹脂フィルムとしては、例えば、非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムなどが挙げられる。
【0085】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で製造し得る。このような製造方法としては、代表的には、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムをラミネートすることにより製造し得る。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、具体的には、例えば、非発泡樹脂フィルムを構成する原料を、必要に応じて加えられる各種の添加剤と共に押出機に供給し、加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからフィルム状に押し出し、冷却しきらないうちに、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの表面に積層し、該積層の際に熱処理を行う。これにより、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされる。
【0086】
非発泡樹脂フィルムを構成する原料に必要に応じて加えられる各種の添加剤としては、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料も含み)、消臭剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。これらの説明については、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の製造において添加し得る添加剤の説明を援用し得る。
【0087】
≪非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム≫
非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは、各種目的を鑑みると、好ましくは80μm~180μmであり、より好ましくは80μm~170μmであり、さらに好ましくは80μm~150μmであり、特に好ましくは100μm~145μmである。非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは、好ましくは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)の厚みよりも小さい。
【0088】
非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムは、代表的には、ポリスチレン系樹脂(III)とゴム変性ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物から形成される。
【0089】
ポリスチレン系樹脂(III)については、本発明の効果を損なわない範囲で、前述の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)を形成するポリスチレン系樹脂(I)や他のポリスチレン系樹脂発泡層を形成するポリスチレン系樹脂(II)と同様のポリスチレン系樹脂を援用することができる。なお、ポリスチレン系樹脂(III)は、ポリスチレン系樹脂(I)やポリスチレン系樹脂(II)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0090】
ポリスチレン系樹脂(III)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0091】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂としては、分子自身を変性したものであってもよいし、バルクの状態で変性させたものであってもよい。このようなゴム変性ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系モノマーの1種以上とゴム成分モノマーの1種以上との共重合体や、ポリスチレン系樹脂の1種以上とゴムの1種以上とのブレンド品が挙げられる。
【0092】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂としては、具体的には、例えば、いわゆる耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS:ハイインパクトポリスチレン)と汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)などと呼ばれるスチレンホモポリマーとの混合樹脂が挙げられる。
【0093】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂として耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)と汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)との混合樹脂を採用する場合には、耐衝撃性付与の観点等から、該混合樹脂中に耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)を40質量%以上含有させることが好ましい。
【0094】
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)を採用し得る。このような耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体がサラミ構造状に分散し、その粒径が0.3μm~10μmのものを含むものが挙げられる。さらに、ポリスチレン系樹脂層を形成するポリスチレン系樹脂(II)としては、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレンホモポリマー、エチレン・プロピレンランダムポリマー、エチレン・プロピレンブロックポリマー、エチレン・プロピレン-ブテン-ターポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体(例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合体)、エチレン-不飽和カルボン酸金属塩共重合体(例えば、エチレン-アクリル酸マグネシウム(又は亜鉛)共重合体)、プロピレン-塩化ビニルコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、プロピレン-無水マレイン酸コポリマー、プロピレン-オレフィン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体)ポリエチレン又はポリプロピレンの不飽和カルボン酸(例えば、無水マレイン酸)変性物、エチレン-プロピレンゴム、アタクチックポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、これらの混合物などが挙げられる。
【0095】
≪熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルム≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)から見て非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムと反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを備えていてもよい。また、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムから見て耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを備えていてもよい。
【0096】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを積層することで、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの表面がより美麗になり、また剛性がより高くなり、また耐熱、耐油性がより向上する。
【0097】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等が挙げられる。これらは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0098】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムは、1層であっても2層以上であってもよい。2層以上の場合、例えば、各層をドライラミネート等で積層したものであってもよい。
【0099】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムは、着色料(顔料、染料など)が添加されていてもよい。着色料(顔料、染料など)が添加されることで、様々な色調に着色しでき、表面に印刷を施すなどを行うことで様々な模様やデザインを表示できる。
【0100】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは10μm~150μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みが上記範囲を外れて薄すぎると、加熱成形時にフィルムが伸びにくくなるおそれがあり、欠損が生じやすくなるおそれがある。熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みが上記範囲を外れて厚すぎると、コストアップとなるおそれがあり、フィルム積層時に低温で積層できずに光沢性が失われるおそれがある。
【0101】
≪≪ポリスチレン系樹脂発泡容器≫≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたものである。
【0102】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器を製造するには、ロール状に巻き取られた本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを成形機の加熱ゾーンで一定温度に加熱した後、成形ゾーンで所望の容器形状に成形して製造される。この容器形状としては、例えば、丼形、コップ形、箱形、トレー形などの種々の形状とすることができる。
【0103】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器は、代表的には、図2に示すように、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが、ポリスチレン系樹脂発泡シートが内側、非発泡ポリスチレン系樹脂フィルムが内側となるように容器形状に成形されたものである。図2において、ポリスチレン系樹脂発泡容器1000の容器内側が200、容器外側が300である。
【0104】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器は、発泡剤の含有量が、好ましくは3.1質量%以下であり、より好ましくは2.8質量%以下であり、さらに好ましくは2.6質量%以下であり、特に好ましくは2.4質量%以下であり、最も好ましくは2.2質量%以下である。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器中の発泡剤の含有量が上記範囲内にあれば、熱によって表面にブリスターや3次発泡が発生し難いポリスチレン系樹脂発泡容器を提供する。
【実施例
【0105】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0106】
<厚み>
幅方向(押出流れ方向に直交する方向)における任意の21箇所の位置を測定点とした。この測定点を厚み測定器(株式会社テクロック社製、型式:SM-125)で、0.01mm単位で測定した。この測定値の相加平均を厚みとした。
【0107】
<坪量>
幅方向(押出流れ方向に直交する方向)の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定した。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、坪量(g/m)とした。
【0108】
<見かけ密度>
気泡構造を変えないように、50cmのシートを切り出して試験片とし、この試験片の質量と体積を測定し、下記式により全体の見掛け密度を算出した。ただし、試験片は、製造後72時間以上経過(最大90日間)したシートから切り出され、23℃±2℃、50RH%±5RH%の雰囲気条件に24時間放置されたものとした。
見掛け密度(g/cm)=試験片の質量(g)÷試験片の体積(cm
【0109】
<表層密度>
スライサー(フォーチュナ社(ドイツ)製スプリッティングマシン、型式AB-320-D)にて、シートを表面から200μmの厚みにスライスし、これを幅25mm、長さ150mmにカットして、表層を得た。得られた表層の質量および体積を測定し、下記式により表層密度を算出した。ただし、表層は、製造後72時間以上経過(最大90日間)した発泡シートから切り出され、23℃±2℃、50RH%±5RH%の雰囲気条件に24時間放置されたものとした。
表層密度(g/cm)=表層の質量(g)÷表層の体積(cm
【0110】
<連続気泡率>
発泡層の連続気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により測定した。
【0111】
<ガラス転移温度(Tg)>
(前処理)
ガラス転移温度の測定に先立ち、発泡層を5~6g天秤で量り取り、2枚のポリテトラフロロエチレンシートの間に挟みこんで下記の要領でプレスして脱泡する前処理を実施した。
プレス装置:東洋精機社製、小型プレス装置「ラボプレス10T」
上ヒータ温度:180℃
下ヒータ温度:180℃
プレス工程:0.54MPaで3分間プレスし、「0.54MPaで2秒間プレス」および「圧力開放2秒間」を1サイクルとして5サイクルのプレスを実施し、その後、15.5MPaで2分間プレスした。
(ガラス転移温度:Tg)
上記のようにして脱泡を行った試料に対するガラス転移温度(中間点ガラス転移温度)(Tg)の測定は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定した。
ただし、サンプリング方法と温度条件に関しては以下のように行った。
示差走査熱量計装置としてDSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/minのもと、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温し、10分間保持後速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線より、中間点ガラス転移温度を算出した(9.3「ガラス転移温度の求め方」)。基準物質としてはアルミナを用いた。
【0112】
<平均気泡径d、MD方向の平均気泡径dM、TD方向の平均気泡径dT(mm)、VD方向の平均気泡径dV>
シートの原反の幅方向中央部からMD方向(押出流れ方向)およびTD方向(シートの表面におけるMD方向と直交する幅方向)に沿ってシートの原反の表面に垂直に切リ出した。
断面を走査型電子顕微鏡(SU1510、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、50倍に拡大して撮影した。このとき、顕微鏡画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影した。
具体的には、画像上に、MD方向、TD方向の各方向に平行する60mmの任意の直線および各方向に直交する方向(VD方向)に60mmの直線を描き、MD方向に沿って切断した断面(MD断面)およびTD方向に沿って切断した断面(TD断面)のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影し、A4用紙に印刷した。MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描くと共に、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描いた。また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描き、MD方向、TD方向、およびVD方向に平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描いた。なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。MD方向、TD方向、およびVD方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数Dを算術平均し、各方向の気泡数とした。気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から、各方向の気泡の平均弦長tを次式より算出した。
平均弦長t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)
(MD方向の平均弦長tM(mm)=60/(MD方向の気泡数×画像倍率))
(TD方向の平均弦長tT(mm)=60/(TD方向の気泡数×画像倍率))
(VD方向の平均弦長tV(mm)=60/(VD方向の気泡数×画像倍率))
画像倍率は画像上のスケールバーをデジマチックキャリパ(ミツトヨ社製)にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
次式により各方向における気泡径を算出した。
MD方向の平均気泡径dM(mm)=tM(mm)/0.616
TD方向の平均気泡径dT(mm)=tT(mm)/0.616
VD方向の平均気泡径dV(mm)=tV(mm)/0.616
さらに、それらの積の3乗根を平均気泡径とした。
平均気泡径d(mm)=(dM(mm)×dT(mm)×dV(mm))(1/3)
【0113】
<パスタ容器の成形>
巾方向4個×流れ方向5個で、口径φ200、高さ45mmの内嵌合蓋を嵌め込み可能な形状のパスタ容器成形型が配置された、標準的なパスタ容器の金型を用いて、2ゾーン加熱、4.5秒/1ショットの条件(合計加熱時間9秒)で、パスタ容器を成形した。加熱ヒータは上下ともに280℃とした。
【0114】
<ブリスター評価、3次発泡評価>
パスタ容器に「スパゲッティナポリタン(内容量:約400g)」を入れて、専用蓋で容器を蓋い、1600W、91秒の条件で電子レンジにより加熱した。加熱後の容器底部について、下記の基準で評価を行った。
(ブリスター評価)
◎:全くブリスターが発生しない
〇:ブリスターの発生はほぼないとみなせ外観も許容範囲内である。
×:ブリスターの発生があり、外観も悪い。
(3次発泡評価)
◎:全く3次発泡が発生しない。
〇:3次発泡の発生はほぼないとみなせ外観も許容範囲内である。
×:3次発泡の発生があり、外観も悪い。
【0115】
<容器中の発泡剤含有量>
容器の底部から切り出した試験片10~20mgを20ml専用ガラスバイアルに精秤密封し、パーキンスエルマー社製ヘッドスペースサンプラー「TurboMatrix HS40」にセットし、160℃で20分間加熱後、パーキンスエルマー社製ガスクロマトグラフ「Clarus500GC」(検出器:FID)を用いてMHE法にて定量した。非発泡フィルムが含まれる場合は、非発泡フィルムの質量の影響を避けるため、発泡シートに対する濃度に換算した。
ヘッドスペースサンプラーにおける測定条件は、ニードル温度160℃、試料導入時間0.8 分、トランスファーライン温度180℃とした。ガスクロマトグラフにおける測定条件は、カラムをJ&W社製のDB-1(0.25mmφ×60m、膜厚1μm、カラム温度:50℃で6分間、40℃/分で270℃まで昇温、270℃で1分間)、キャリアガスをヘリウム(導入条件:18psiで10分間、0.5psi/分で24psiまで増量)、注入口温度を200℃、検出器温度を250℃、レンジ=20、Att=1とした。
【0116】
[実施例1~3、比較例1~5]
図1の製造装置を用い、表1の組成に従い、ポリスチレン樹脂(PS)(商品名:XC-515、ゴム分:0質量%、DIC社製)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)とPSとの混合物(商品名:ノリルEFN4230、PPE/PS=70/30(質量比)、ゴム分:0質量%、サビック社製)を混合した樹脂と、発泡核剤(商品名:DSM1401A、東洋スチレン社製)とを混合し、混合物を得た。
上記の混合物をホッパーから第一の押出部(スクリュー径:115mm)に供給し、最高到達温度315℃で加熱し溶融混練して樹脂溶融物とした。
第一の押出部に発泡剤(イソブタン:ノルマルブタン=70:30(質量比)の混合物)を供給し、樹脂溶融物と発泡剤を混合して混合物とした。発泡剤の配合量は、樹脂100質量部対して、表1に示す質量部とした。
混合物を第一の混合部から第二の混合部(スクリュー径:180mm)に供給し、180℃に冷却し、サーキュラーダイ(口径160mm)で押し出し、発泡させて円筒状の発泡シートを得た。この際、サーキュラーダイから押し出された直後に、円筒状の発泡シートの内面及び外面に冷却用のエアー(30℃)を吹き付けて冷却した。
冷却後の円筒状の発泡シートを押出方向に沿って切り裂いて、幅1050mmの、表1に記載の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)~(3)、(C1)~(C5)の原反を得た。
発泡ガスの置換のため、上記の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)~(3)、(C1)~(C5)の原反は製造後14日間保管した。
この発泡シートの片面(作製する容器の内側となる面)にポリスチレン樹脂フィルムと無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムとが貼り合わされてなるドライラミフィルム(ポリスチレン樹脂フィルム層/ポリプロピレン樹脂フィルム層=30μm/40μm、total:70μm)(CPPS)をドライラミネートし、さらに反対面(作製する容器の外側となる面)にPSフィルム(CPSフィルム、厚み35μm)を熱ラミネートして、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1)~(3)、(C1)~(C5)を作製した。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1)~(3)、(C1)~(C5)を使用してパスタ容器を成型し、ポリスチレン系樹脂発泡容器(1)~(3)、(C1)~(C5)を得た。
結果を表1に示した。
【0117】
[実施例4、比較例6]
実施例4、比較例6において、発泡層が、第1発泡層と第2発泡層を有する2層となっている。
第1発泡層のベースポリマーとしてスチレン-メタクリル酸共重合体樹脂(スチレン単量体含有量=92質量%、メタクリル酸単量体含有量=8質量%)(商品名「T080」、東洋スチレン社製)と、スチレン-ブタジエンブロック共重合体樹脂(SBS:スチレンブロック共重合体)(商品名「タフプレン125」、旭化成ケミカルズ社製)とを、92:8(T080:タフプレン125)の質量割合で混合した混合樹脂を用意するとともに、そのベースポリマーとは別に、タルク(気泡調整剤)練り込みマスターバッチ(商品名「DSM1401M」)を用意した。
表1に記載した平均気泡径となるようにマスターバッチの量を設定し、ブレンドしてバッチ式連続混合装置に投入し、十分に混合した後に、スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとのタンデム押出機の内の上流側押出機(スクリュー径90mm)のホッパーに供給した。
上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を280℃とし、発泡剤として混合ブタン約2.3質量部(対混合樹脂100質量部)を途中で加え、混合樹脂などとともに溶融混練し、下流側の押出機に供給するようにした。
下流側の押出機では、上流側の押出機から供給された溶融混練物を120kg/hの割合で合流金型へと供給させるようにした。
その一方で、別の、スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとのタンデム押出機において、第2発泡層の形成材料を溶融混練し、上記の合流金型へと供給させた。
第2発泡層の形成材料としては、ベースポリマーとしてGPPS(商品名「HRM12」、東洋スチレン社製)を用意するとともに、そのベースポリマーとは別に、タルク(気泡調整剤)練り込みマスターバッチ(商品名「DSM1401M」)を用意した。
表1に記載した平均気泡径になるようにマスターバッチの量を設定し、ブレンドしてバッチ式連続混合装置に投入し、十分に混合した後に、スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとのタンデム押出機の内の上流側押出機(スクリュー径90mm)のホッパーに供給した。
上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を260℃とし、発泡剤として混合ブタン約2.1質量部(対GPPS100質量部)を途中で加え、上記GPPSとともに溶融混練し、下流側の押出機に供給するようにした。
下流側の押出機では、上流側の押出機から供給された溶融混練物を120kg/hの割合で合流金型へと供給させるようにした。
合流金型に供給された上記2種類の溶融混練物を当該合流金型内で合流、積層した後に発泡後の混合物を直径175mm、スリットクリアランス0.5mmの環状ダイに供給し、ダイのスリットを通して円筒状の発泡体を形成した。その直後に、円筒状の発泡体にエアー(30℃)をかけて調整して冷却するとともに、直径675mmの冷却装置(マンドレル)の外面に沿って引取り、さらに押出方向に沿って2枚に切り開き、幅1050mm、表1に記載の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(4)、(C6)の原反を得た。
発泡ガスの置換のため、上記の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(4)、(C6)の原反は製造後14日間保管した。
この耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(4)、(C6)の原反の第2発泡層に、CPSフィルム(厚み20μm)をラミネートし、その後、積層する耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムとして、ハイインパクトポリスチレン樹脂(商品名「E-641」、東洋スチレン社製)100質量部を、最高温度240℃に設定された直径120mm押出機で溶融し、Tダイよりフィルム状に押出し、冷却しきらないうちに、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(4)、(C6)の原反の第1発泡層側に厚み100μmで積層し、直後に、CPPフィルム(厚み25μm)とCPSフィルム(厚み20μm)がドライラミネートによって積層されたフィルム「CPP/PS45μm無地」をラミネートし、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(4)、(C6)を作製した。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シート(4)、(C6)を使用してパスタ容器を成型し、ポリスチレン系樹脂発泡容器(4)、(C6)を得た。
結果を表1に示した。
【0118】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形して得られる容器は、トレー、弁当箱、丼、カップ等の各種容器として、コンビニエンストア等で広く利用でき、例えば、レンジアップ容器に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0120】
1 製造装置
2 耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)
2a 発泡シート
4 ロール状の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A)
10 押出機
11 第一の押出部
12 第二の押出部
14 ホッパー
16 配管
18 発泡剤供給源
20 サーキュラーダイ
30 マンドレル
32 カッター
40 巻取機
42 ガイドロール
44 ガイドロール
1000 発泡容器
200 容器内側
300 容器外側
図1
図2