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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】バッテリユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241112BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241112BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20241112BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20241112BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241112BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20241112BHJP
   H01M 50/569 20210101ALI20241112BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20241112BHJP
【FI】
H01M10/48 A
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/6563
H01M50/204
H01M50/505
H01M50/569
H01M50/50 101
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021058637
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155231
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】千葉 一毅
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-049139(JP,A)
【文献】特開2011-023180(JP,A)
【文献】特開2020-167049(JP,A)
【文献】特開2019-032249(JP,A)
【文献】特開2008-256673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H01M 10/60-10/667
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセルを有するバッテリモジュールを備えるバッテリユニットであって、
前記バッテリセルおよび前記バッテリユニットの熱量を検出するバッテリ熱量検出部と、
前記バッテリユニットの熱量を基準熱量として検出する基準熱量検出部と、
前記バッテリ熱量検出部によって検出された熱量から前記基準熱量検出部によって検出された基準熱量を減算した前記バッテリセルの熱量に基づいて、前記バッテリセルの状態を推定するバッテリ状態推定部と、
を備え、
前記基準熱量検出部は、前記バッテリユニットにおいて、温度変動が小さくかつ熱容量が大きい箇所に配置されている、
バッテリユニット。
【請求項2】
前記バッテリ熱量検出部および前記基準熱量検出部は、熱量として温度を検出する温度センサを含む、請求項1に記載のバッテリユニット。
【請求項3】
前記バッテリモジュールは、
複数のバッテリセルが積層された積層体と、
前記積層体を挟み込むエンドプレートと、
を有し、
前記バッテリ熱量検出部は、前記複数のバッテリセルのうちの少なくとも1つに配置されている、
請求項1または2に記載のバッテリユニット。
【請求項4】
前記基準熱量検出部は、前記エンドプレートに配置されている、請求項3に記載のバッテリユニット。
【請求項5】
前記基準熱量検出部は、前記エンドプレートにおいて、前記バッテリセルと対向しない面側に配置されている、請求項4に記載のバッテリユニット。
【請求項6】
前記バッテリモジュールを冷却するための冷却プレートを更に備え、
前記基準熱量検出部は、前記冷却プレートに配置されている、請求項3に記載のバッテリユニット。
【請求項7】
前記基準熱量検出部は、前記冷却プレートにおいて、前記バッテリセルと対向しない面側に配置されている、請求項6に記載のバッテリユニット。
【請求項8】
前記バッテリモジュールは、前記複数のバッテリセルを接続するバスバーを更に有し、
前記基準熱量検出部は、前記バスバーに配置されている、請求項3に記載のバッテリユニット。
【請求項9】
前記基準熱量検出部は、前記バスバーにおいて、前記バッテリセルと対向しない面側に配置されている、請求項8に記載のバッテリユニット。
【請求項10】
複数の前記バッテリモジュールと、前記複数のバッテリモジュールを接続するバスバーを更に備え、
前記基準熱量検出部は、前記バスバーに配置されている、請求項3に記載のバッテリユニット。
【請求項11】
前記基準熱量検出部は、前記バスバーにおいて、前記バッテリセルと対向しない面側に配置されている、請求項10に記載のバッテリユニット。
【請求項12】
前記基準熱量検出部は、前記バッテリモジュールを固定するフランジに配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリユニット。
【請求項13】
前記基準熱量検出部は、前記バッテリユニット内の空間に、浮かした状態で配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリユニット。
【請求項14】
前記基準熱量検出部は、高圧導線を保護するパイプの中もしくは外に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリユニット。
【請求項15】
前記バッテリ熱量検出部は、前記複数のバッテリセルのうちの前記エンドプレートに隣接するバッテリセルに配置されている、請求項3に記載のバッテリユニット。
【請求項16】
前記バッテリ熱量検出部は、更に、バッテリモジュールの中心に位置するバッテリセルに配置されている、請求項15に記載のバッテリユニット。
【請求項17】
前記バッテリ熱量検出部は、前記複数のバッテリセルのうちの前記エンドプレートに隣接するバッテリセルに配置されており、
前記基準熱量検出部は、前記複数のバッテリセルのうちの前記バッテリ熱量検出部が配置されたバッテリセル以外のバッテリセルに配置されている、
請求項3に記載のバッテリユニット。
【請求項18】
前記バッテリ熱量検出部および前記基準熱量検出部の少なくとも一方が配置される位置には、熱電対が設置されている、請求項1~17のいずれか1項に記載のバッテリユニット。
【請求項19】
前記バッテリセルの状態は、充電状態SOCまたは劣化状態SOHである、請求項1~18のいずれか1項に記載のバッテリユニット。
【請求項20】
前記バッテリ熱量検出部および前記基準熱量検出部は、ペルチェ素子である、請求項1~5および15~17のいずれか1項に記載のバッテリユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリユニットにおいて、SOC(State Of Charge)またはSOH(State Of Health)等のバッテリセルの状態を推定する技術がある。例えば、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態とバッテリセルの電圧とには相関があることが知られている。そこで、バッテリセルの電圧に基づいて、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開-5287844号公報
【文献】特開-5044511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負極の材料としてハードカーボンを用いたリチウムイオンバッテリ(二次電池)のように、容量の変化に対して電圧が傾斜しているバッテリセルでは、バッテリセルの電圧に基づいて、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態を精度よく推定することができる。近年、負極の材料としてグラファイトを用いたリチウムイオンバッテリ(二次電池)のように、容量の変化に対して電圧の変化が小さいバッテリセルがある。このようなバッテリセルを備えるバッテリユニットにおいて、バッテリセルの電圧に基づいて、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態を推定すると、推定精度が低下することが予想される。
【0005】
本発明は、バッテリセルの状態の変化に対して電圧の変化が小さいバッテリセルであっても、バッテリセルの状態の推定精度の低下を抑制可能なバッテリユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者(ら)は、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態と電極材料の活物質の相転移に伴うバッテリセルの熱量(Heat Flow)とにも相関があるとの知見を得ている。また、本願発明者(ら)は、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態の変化に対して電圧の変化が小さいバッテリセルであっても、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態の変化に対して、バッテリセルの熱量の変化が比較的に大きいとの知見を得ている。そこで、本願発明者(ら)は、バッテリセルの熱量に基づいて、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態を推定する手法を考案する。
【0007】
ここで、単にバッテリセルの熱量を検出するだけでは、検出した熱量は、バッテリセルの熱量のみならず、バッテリユニット内の様々な熱量の影響、すなわちノイズの影響を受けていることが予想される。そのため、このように単に検出した熱量に基づいて、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態を推定すると、推定精度が低いことが予想される。
【0008】
(1)そこで、本発明に係るバッテリユニットは、バッテリセルを有するバッテリモジュールを備えるバッテリユニットであって、前記バッテリセルおよび前記バッテリユニットの熱量を検出するバッテリ熱量検出部と、前記バッテリユニットの熱量を基準熱量として検出する基準熱量検出部と、前記バッテリ熱量検出部によって検出された熱量から前記基準熱量検出部によって検出された基準熱量を減算した前記バッテリセルの熱量に基づいて、前記バッテリセルの状態を推定するバッテリ状態推定部と、を備え、前記基準熱量検出部は、前記バッテリユニットにおいて、温度変動が小さくかつ熱容量が大きい箇所に配置されている。
【0009】
(2)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリ熱量検出部および前記基準熱量検出部は、熱量として温度を検出する温度センサを含んでもよい。
【0010】
(3)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリモジュールは、複数のバッテリセルが積層された積層体と、前記積層体を挟み込むエンドプレートと、を有してもよく、前記バッテリ熱量検出部は、前記複数のバッテリセルのうちの少なくとも1つに配置されていてもよい。
【0011】
(4)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記基準熱量検出部は、前記エンドプレートに配置されていてもよい。
【0012】
(5)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記基準熱量検出部は、前記エンドプレートにおいて、前記バッテリセルと対向しない面側に配置されていてもよい。
【0013】
(6)本発明に係るバッテリユニットは、前記バッテリモジュールを冷却するための冷却プレートを更に備えてもよく、前記基準熱量検出部は、前記冷却プレートに配置されていてもよい。
【0014】
(7)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記基準熱量検出部は、前記冷却プレートにおいて、前記バッテリセルと対向しない面側に配置されていてもよい。
【0015】
(8)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリモジュールは、前記複数のバッテリセルを接続するバスバーを更に有してもよく、前記基準熱量検出部は、前記バスバーに配置されていてもよい。
【0016】
(9)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記基準熱量検出部は、前記バスバーにおいて、前記バッテリセルと対向しない面側に配置されていてもよい。
【0017】
(10)本発明に係るバッテリユニットは、複数の前記バッテリモジュールと、前記複数のバッテリモジュールを接続するバスバーを更に備えてもよく、前記基準熱量検出部は、前記バスバーに配置されていてもよい。
【0018】
(11)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記基準熱量検出部は、前記バスバーにおいて、前記バッテリセルと対向しない面側に配置されていてもよい。
【0019】
(12)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記基準熱量検出部は、前記バッテリモジュールを固定するフランジに配置されていてもよい。
【0020】
(13)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記基準熱量検出部は、前記バッテリユニット内の空間に、浮かした状態で配置されていてもよい。
【0021】
(14)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記基準熱量検出部は、高圧導線を保護するパイプの中もしくは外に配置されていてもよい。
【0022】
(15)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリ熱量検出部は、前記複数のバッテリセルのうちの前記エンドプレートに隣接するバッテリセルに配置されていてもよい。
【0023】
(16)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリ熱量検出部は、更に、バッテリモジュールの中心に位置するバッテリセルに配置されていてもよい。
【0024】
(17)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリ熱量検出部は、前記複数のバッテリセルのうちの前記エンドプレートに隣接するバッテリセルに配置されていてもよく、前記基準熱量検出部は、前記複数のバッテリセルのうちの前記バッテリ熱量検出部が配置されたバッテリセル以外のバッテリセルに配置されていてもよい。
【0025】
(18)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリ熱量検出部および前記基準熱量検出部の少なくとも一方が配置される位置には、熱電対が設置されていてもよい。
【0026】
(19)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリセルの状態は、充電状態SOCまたは劣化状態SOHであってもよい。
【0027】
(20)本発明に係るバッテリユニットにおいて、前記バッテリ熱量検出部および前記基準熱量検出部は、ペルチェ素子であってもよい。
【発明の効果】
【0028】
(1)~(18)に記載の発明によれば、バッテリセルの熱量に基づいて、バッテリセルの状態を推定するので、バッテリセルの状態の変化に対して電圧の変化が小さいバッテリセルであっても、バッテリセルの状態の推定精度の低下を抑制することができる。
また、バッテリ熱量検出部によって検出された熱量から基準熱量検出部によって検出された基準熱量を減算したバッテリセルの熱量に基づいて、バッテリセルの状態を推定するので、バッテリユニット内の様々な熱量の影響、すなわちノイズの影響を除去したバッテリセルの熱量に基づいて、バッテリセルの状態を推定することができる。これにより、バッテリセルの状態の推定精度の低下を抑制することができる。
【0029】
(4)~(14)に記載の発明によれば、基準熱量検出部が、バッテリユニットにおいて、温度変動が小さくかつ熱容量が大きい箇所に適切に配置される。
【0030】
(20)に記載の発明によれば、バッテリセルの冷却のためのペルチェ素子を、熱量検出と冷却とで兼用することができる。例えば、熱量検出時にはペルチェ素子を熱量センサとして用い、それ以外では冷却として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係るバッテリユニットを分解して示す分解斜視図である。
図2A図1に示すバッテリユニットにおけるバッテリモジュールの一例の側面図である。
図2B図1に示すバッテリユニットにおけるバッテリモジュールの他の一例の側面図である。
図3】本実施形態の熱量HF-SOC特性の一例を示す図である。
図4】本実施形態の基準熱量減算後の熱量HF-SOC特性と基準熱量減算前の熱量HFx-SOC特性との一例を示す図である。
図5】比較例の閉回路電圧CCV-SOC特性の一例を示す図である。
図6】比較例の閉回路電圧CCV-SOCの基準特性(例えば初期特性)のテーブルマップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0033】
(バッテリユニット)
図1は、本実施形態に係るバッテリユニットを分解して示す分解斜視図であり、図2Aは、図1に示すバッテリユニットにおけるバッテリモジュールの一例の側面図である。図1に示すバッテリユニット100は、ハイブリット式電動自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)、外部給電機能付きハイブリット式電動自動車(Plug-in Hybrid Vehicle:PHEV)、または、バッテリ式電動自動車(Battery Electric Vehicle:BEV)等の電動車両に搭載されるバッテリパック(Intelligent Power Unit:IPUともいう。)である。
【0034】
図1および図2Aに示すように、バッテリユニット100は、主に、バッテリモジュール110と、バッテリ熱量検出部120と、基準熱量検出部130と、電圧検出部141と、電流検出部142と、温度検出部143と、バッテリマネジメントシステム(BMS)200とを備える。図1の例では、バッテリユニット100の構成要素は、ケース101に収容されて、カバー102で覆われている。
【0035】
また、図1の例では、バッテリユニット100は、下部フレーム103と上部フレーム104とを備えている。また、バッテリユニット100は、バッテリモジュール110を冷却するための下部冷却プレート105を備えている。また、バッテリユニット100は、バッテリモジュール110を冷却するために空気を導入する機構(例えば、ファン、導風ダクトおよび吸気ダクト等)106を備えている。
【0036】
図2Aに示すように、バッテリモジュール110は、主に、複数のバッテリセル111が積層された積層体112と、積層体112を積層方向において挟み込む一対のエンドプレート113と、複数のバッテリセル111を接続するセルバスバー114とを有する。なお、図1に示すように、複数のバッテリモジュール110がモジュールバスバー119によって接続された構成であってもよい。
【0037】
バッテリセル111としては、特に限定されないが、例えばリチウムイオンバッテリが挙げられる。リチウムイオンバッテリの中でも、負極の材料としてグラファイトのような相転移に伴う熱量が生じる材料を用いたリチウムイオンバッテリ、または正極の材料として層状化合物のコバルト酸リチウム(Lithium Cobalt Oxide:LCO)またはニッケル酸リチウム(Lithium Nickel Oxide:LNO)のような相転移に伴う熱量が生じる材料を用いたリチウムイオンバッテリが好ましい。
【0038】
バッテリ熱量検出部120は、バッテリセル111およびバッテリユニット100の熱量、すなわちバッテリセル111の熱量のみならず、バッテリユニット100内の様々な熱量の影響、すなわちノイズの影響を受けている熱量、を検出する熱量センサである。
【0039】
熱量センサとしては、特に限定されないが、例えば、ペルチェ素子、サーモパイル、熱電対等の温度センサが挙げられる。これらの中でも、ペルチェ素子が好ましい。図2Aに示すように、バッテリセル111の冷却のために、バッテリセル111と冷却プレート105との間にペルチェ素子を設けることがある。このような場合に、このペルチェ素子を、熱量検出と冷却とで兼用することができる。例えば、熱量検出時にはペルチェ素子を熱量センサとして用い、それ以外では冷却として用いることができる。
【0040】
バッテリ熱量検出部120は、バッテリモジュール110におけるバッテリセル111のうちの少なくとも1つに配置されていればよい。なお、図2Aに示すように、バッテリ熱量検出部120は、バッテリセル111のうちのエンドプレート113に隣接する2つのバッテリセル111にそれぞれ配置されてもよい。また、バッテリ熱量検出部120は、エンドプレート113に隣接する2つのバッテリセル111に加え、更にバッテリセル111の積層方向における中央に位置するバッテリセル111に配置されてもよい。
【0041】
基準熱量検出部130は、バッテリユニット100の熱量、すなわちバッテリユニット100内の様々な熱量、すなわちノイズの熱量、を基準熱量として検出する熱量センサである。
【0042】
上述同様に、熱量センサとしては、特に限定されないが、例えば、ペルチェ素子、サーモパイル、熱電対等の温度センサが挙げられる。これらの中でも、ペルチェ素子が好ましい。これにより、バッテリセル111の冷却のためのペルチェ素子を、熱量検出と冷却とで兼用することができる。
【0043】
基準熱量検出部130は、バッテリユニット100において、温度変動が小さくかつ熱容量が大きい箇所に配置されている。例えば、基準熱量検出部130の配置箇所としては、以下の(A)~(F)のいずれかが挙げられる。
【0044】
(A)バッテリモジュール110を冷却するための冷却プレート105
例えば、図1に示すように、冷却プレート105はバッテリモジュール110の底面に接して配置されており、基準熱量検出部130は、冷却プレート105において、バッテリセル111の底面と対向しない面側に配置されている。複数のバッテリセル111に対する配置は、特に限定されないが、例えばバッテリセル111の積層方向における中央に位置するバッテリセル111に対応して配置されてもよい。
【0045】
(B)バッテリモジュール110におけるエンドプレート113
図2Bは、図1に示すバッテリユニットにおけるバッテリモジュールの他の一例の側面図である。図2Bに示すように、例えば、基準熱量検出部130は、エンドプレート113において、バッテリセル111と対向しない面側に配置されてもよい。
【0046】
(C)バッテリモジュール110におけるバスバー114,119
例えば、基準熱量検出部130は、バッテリセル111同士を接続するセルバスバー114において(図2A参照)、バッテリセル111と対向しない面側に配置されてもよい。また、例えば、基準熱量検出部130は、バッテリモジュール110同士を接続するモジュールバスバー119において(図1参照)、バッテリセル111と対向しない面側に配置されてもよい。複数のバッテリセル111に対する配置は、特に限定されないが、例えばバッテリセル111の積層方向における中央に位置するバッテリセル111に対応して配置されてもよい。
【0047】
(D)バッテリユニット100内のフランジ
図1に示すように、例えば、基準熱量検出部130は、バッテリユニット100内のバッテリモジュールを固定するフランジ(継ぎ手)に配置されてもよい。
【0048】
(E)バッテリユニット100内の空間
図1に示すように、例えば、基準熱量検出部130は、バッテリユニット100内の空間に、浮かした状態で配置されてもよい。
【0049】
(F)高圧導線を保護するパイプ
図1に示すように、例えば、基準熱量検出部130は、高圧導線を保護するパイプの中もしくは外(例えば、外気に暴露されていれば中、外気に暴露されていなければ外)に配置されてもよい。
【0050】
なお、バッテリ熱量検出部120が、バッテリセル111のうちのエンドプレート113に隣接する2つのバッテリセル111に配置され、基準熱量検出部130が、バッテリセル111のうちのバッテリ熱量検出部120が配置されたバッテリセル111以外のバッテリセル111、例えばバッテリセル111の積層方向における中央に位置するバッテリセル111に配置されてもよい。
【0051】
電圧検出部141は、バッテリセル111の閉回路電圧を検出する電圧センサである。電圧検出部141の配置は、特に限定されないが、例えば図2Aに示すように、バッテリモジュール110に配置されてもよい。
【0052】
電流検出部142は、バッテリセル111の電流を検出する電流センサである。電流検出部142の配置は、特に限定されないが、例えば図2Aに示すように、バッテリモジュール110に配置されてもよい。
【0053】
温度検出部143は、各部温度を検出する温度センサである。温度センサとしては、特に限定されないが、例えば熱電対が挙げられる。図2Aに示すように、温度検出部143は、各バッテリセル111に配置され、各バッテリセル111の温度を検出する。また、温度検出部143は、バッテリ熱量検出部120が配置された位置に配置され、熱量検出位置の温度を検出する。また、図1および図2Bに示すように、温度検出部143は、基準熱量検出部130が配置された位置に配置され、熱量検出位置の温度を検出する。
【0054】
(バッテリマネジメントシステム:バッテリ状態推定部)
バッテリマネジメントシステム(BMS)200は、バッテリセル111の充放電制御、過充電保護、過放電保護、SOC(State Of Charge)またはSOH(State Of Health)等のバッテリの状態の監視等のバッテリセル111の全体制御を行う(Electronic Control Unit:ECUともいう)。バッテリマネジメントシステム200は、主に、バッテリ状態推定部210と、記憶部220とを備える。
【0055】
バッテリ状態推定部210は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。バッテリ状態推定部210の各種機能は、例えば記憶部220に格納された所定のソフトウェア(プログラム)を実行することで実現される。バッテリ状態推定部210の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0056】
記憶部220は、例えばEEPROM等の書き換え可能なメモリである。記憶部220は、上述したバッテリ状態推定部210の各種機能を実行するための所定のソフトウェア(プログラム)を格納する。
【0057】
また、記憶部220は、図3に示すように、バッテリセル111の初期状態における熱量HFとSOCとの相関に関する特性(熱量HF-SOCの初期特性)であって、バッテリセル111の温度ごとおよび電流ごとの複数の特性を、テーブルマップ形式で記憶する(例えば、後述する図3の閉回路電圧CCVと同様)。
【0058】
バッテリ状態推定部210は、バッテリ熱量検出部120によって検出された熱量から基準熱量検出部130によって検出された基準熱量を減算したバッテリセル111の熱量HFに基づいて、SOCまたはSOH等のバッテリセルの状態を推定する。
【0059】
(SOC推定)
まず、バッテリ状態推定部210による、バッテリセル111の熱量に基づくバッテリセル111のSOC推定の一例について説明する。
【0060】
バッテリ状態推定部210は、バッテリ熱量検出部120の検出結果からバッテリセル111およびバッテリユニット100の熱量を算出し、基準熱量検出部130の検出結果からバッテリユニット100の基準熱量を算出する。例えば、ペルチェ素子の場合、ペルチェ素子の感度に基づいて検出電圧(V)を熱量(W)に変換する。ペルチェ素子の感度は温度に依存して変動する特性を有するため、対応の温度検出部143によって検出された温度に基づいて、適切な感度を選択する。
【0061】
バッテリ状態推定部210は、バッテリセル111およびバッテリユニット100の熱量からバッテリユニット100の基準熱量を減算して、バッテリセル111の熱量HF(HFp、HFn)を算出する。これにより、バッテリユニット100内の様々な熱量の影響、すなわちノイズの影響を除去したバッテリセル111の熱量を得ることができる。なお、図3に示すように、正極側のバッテリセル111の熱量HFpと負極側のバッテリ111の熱量HFnとを平均化してバッテリセル111の熱量HFとしてもよい。
【0062】
バッテリ状態推定部210は、図3に示すように予め記憶した熱量-SOCの基準特性(例えば、初期特性)であって、検出した温度および検出した電流に対応する熱量-SOCの基準特性(テーブルマップ)を参照して、検出した熱量HFに対応するSOCを推定する。なお、図3には、参考のために、閉回路電圧CCV-SOCの基準特性も示されている。また、図4には、バッテリ熱量検出部120によって検出されたバッテリセル111およびバッテリユニット100の熱量から基準熱量検出部130によって検出されたバッテリユニット100の基準熱量を減算したバッテリセル111の熱量HF(基準熱量減算後)に関する熱量HF-SOC特性と、バッテリ熱量検出部120によって検出されたバッテリセル111およびバッテリユニット100の熱量HFxそのもの(基準熱量減算前)に関する熱量HFx-SOC特性とを示している。図4に示すように、基準熱量検出部130によって検出されたバッテリユニット100の基準熱量を減算しないバッテリセル111およびバッテリユニット100の熱量HFxそのものでは、ベースラインが安定せず正確な値が出力されない。このため、CCVに対する熱量の形状も異なり、さらにはSOCの検知精度が低下する。
【0063】
ここで、比較例の閉回路電圧CCV-SOCの基準特性(テーブルマップ)に基づくSOC推定について説明する。図5は、比較例の閉回路電圧CCV-SOC特性の一例を示す図であり、図6は、比較例の閉回路電圧CCV-SOCの基準特性のテーブルマップの一例を示す図である。比較例では、図5および図6に示すように予め記憶したCCV-SOCの基準特性(例えば、初期特性)であって、検出した温度および検出した電流に対応するCCV-SOCの基準特性(テーブルマップ)を参照して、検出した閉回路電圧CCVに対応するSOCを推定する。
【0064】
負極の材料としてハードカーボンを用いたリチウムイオンバッテリのように、容量の変化に対して電圧が傾斜しているバッテリセルであれば、比較例のように、バッテリセルの電圧に基づいてSOCを精度よく推定することができる。
【0065】
近年、負極の材料としてグラファイトを用いたリチウムイオンバッテリのように、容量の変化に対して電圧の変化が小さいバッテリセルがある。このようなバッテリセルを備えるバッテリユニットにおいて、比較例のようにバッテリセルの電圧に基づいてSOCを推定すると、推定精度が低下することが予想される。
【0066】
本願発明者(ら)は、負極の材料としてグラファイトを用いたリチウムイオンバッテリセルでは、グラファイトの相転移に伴う熱量(Heat Flow)が生じ、SOCの変化に対してバッテリセルの熱量の変化が比較的に大きいとの知見を得ている。
【0067】
本実施形態のバッテリユニット100によれば、バッテリセル111の熱量HFに基づいて、SOC(バッテリセルの状態)を推定するので、SOCの変化に対して電圧の変化が小さいバッテリセルであっても、SOC(バッテリセルの状態)の推定精度の低下を抑制することができる。
【0068】
また、バッテリ熱量検出部120によって検出された熱量から基準熱量検出部130によって検出された基準熱量を減算したバッテリセル111の熱量HFに基づいて、SOC(バッテリセルの状態)を推定するので、バッテリユニット100内の様々な熱量の影響、すなわちノイズの影響を除去したバッテリセル111の熱量に基づいて、SOC(バッテリセルの状態)を推定することができる。これにより、SOC(バッテリセルの状態)の推定精度の低下を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態のバッテリユニット100によれば、基準熱量検出部130が、以下の(A)~(F)のいずれかに配置される。
(A)バッテリモジュール110を冷却するための冷却プレート105
(B)バッテリモジュール110におけるエンドプレート113
(C)バッテリモジュール110におけるバスバー114,119
(D)バッテリユニット100内のフランジ
(E)バッテリユニット100内の空間
(F)高圧導線を保護するパイプ
これにより、基準熱量検出部130が、バッテリユニット100において、温度変動が小さくかつ熱容量が大きい箇所に適切に配置される。
【0070】
また、本実施形態のバッテリユニット100によれば、バッテリセル111の冷却のためのペルチェ素子を、熱量検出と冷却とで兼用することができる。例えば、熱量検出時にはペルチェ素子を熱量センサとして用い、それ以外では冷却として用いることができる。
【0071】
(SOH推定)
次に、バッテリ状態推定部210による、バッテリセル111の熱量に基づくバッテリセル111のSOH推定の一例について説明する。このように、上述した熱量HF-SOC特性に基づくバッテリセルの状態の推定は、バッテリセルのSOH推定に適用可能である。
【0072】
上述したように、バッテリ状態推定部210は、バッテリ熱量検出部120の検出結果からバッテリセル111およびバッテリユニット100の熱量を算出し、基準熱量検出部130の検出結果からバッテリユニット100の基準熱量を算出する。バッテリ状態推定部210は、バッテリセル111およびバッテリユニット100の熱量からバッテリユニット100の基準熱量を減算して、図3に示すように、バッテリセル111の熱量HF(HFp、HFn)を算出する。これにより、バッテリユニット100内の様々な熱量の影響、すなわちノイズの影響を除去したバッテリセル111の熱量を得ることができる。なお、図3に示すように、正極側のバッテリセル111の熱量HFpと負極側のバッテリ111の熱量HFnとを平均化してバッテリセル111の熱量HFとしてもよい。
【0073】
バッテリ状態推定部210は、実使用における充電時、定期的に、熱量HF-SOCの現在特性を測定し、測定した熱量HF-SOCの現在特性と、記憶部220に記憶された熱量HF-SOCの初期特性とに基づいて、バッテリセルのSOC推定を行う。
【0074】
本実施形態のバッテリユニット100によれば、バッテリセル111の熱量HFに基づいて、SOH(バッテリセルの状態)を推定するので、SOHの変化に対して電圧の変化が小さいバッテリセルであっても、SOH(バッテリセルの状態)の推定精度の低下を抑制することができる。
【0075】
また、バッテリ熱量検出部120によって検出された熱量から基準熱量検出部130によって検出された基準熱量を減算したバッテリセル111の熱量HFに基づいて、SOH(バッテリセルの状態)を推定するので、バッテリユニット100内の様々な熱量の影響、すなわちノイズの影響を除去したバッテリセル111の熱量に基づいて、SOH(バッテリセルの状態)を推定することができる。これにより、SOH(バッテリセルの状態)の推定精度の低下を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態のバッテリユニット100によれば、基準熱量検出部130が、以下の(A)~(F)のいずれかに配置される。
(A)バッテリモジュール110を冷却するための冷却プレート105
(B)バッテリモジュール110におけるエンドプレート113
(C)バッテリモジュール110におけるバスバー114,119
(D)バッテリユニット100内のフランジ
(E)バッテリユニット100内の空間
(F)高圧導線を保護するパイプ
これにより、基準熱量検出部130が、バッテリユニット100において、温度変動が小さくかつ熱容量が大きい箇所に適切に配置される。
【0077】
また、本実施形態のバッテリユニット100によれば、バッテリセル111の冷却のためのペルチェ素子を、熱量検出と冷却とで兼用することができる。例えば、熱量検出時にはペルチェ素子を熱量センサとして用い、それ以外では冷却として用いることができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 バッテリユニット
101 ケース
102 カバー
103 下部フレーム
104 上部フレーム
105 冷却プレート
106 空気導入機構
110 バッテリモジュール
111 バッテリセル
112 積層体
113 エンドプレート
114 セルバスバー
119 モジュールバスバー
120 バッテリ熱量検出部
130 基準熱量検出部
141 電圧検出部
142 電流検出部
143 温度検出部
200 バッテリマネジメントシステム(BMS)
210 バッテリ状態推定部
220 記憶部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6